特許第6779293号(P6779293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6779293イムノアッセイにおける干渉を低減するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779293
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】イムノアッセイにおける干渉を低減するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20201026BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   G01N33/543 501J
   G01N33/536 A
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-528341(P2018-528341)
(86)(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公表番号】特表2019-502110(P2019-502110A)
(43)【公表日】2019年1月24日
(86)【国際出願番号】EP2016079170
(87)【国際公開番号】WO2017093271
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年11月15日
(31)【優先権主張番号】15197192.6
(32)【優先日】2015年12月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ウプマイアー,バルバラ
(72)【発明者】
【氏名】ツァルント,トラルフ
(72)【発明者】
【氏名】レスラー,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ポルツ,ヨハネス
【審査官】 西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−172324(JP,A)
【文献】 特開平08−327548(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0059682(US,A1)
【文献】 特表2012−513426(JP,A)
【文献】 特表2018−501483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物を含有する疑いのある単離した試料中の分析物を検出するためのイムノアッセイ法であって、試料を複数の結合パートナーと共にインキュベートし、それらのうちの1つは検出可能な標識を保有し、その際、標識を保有せず、検出可能な標識に結合する、標識特異的結合パートナーを添加することによるイムノアッセイ法。
【請求項2】
a.試料を下記のものと共にインキュベートする:
i.分析物に結合し、検出可能な標識を保有する、第1結合パートナー;
ii.固相に結合させることができ、かつ分析物に結合する、第2結合パートナー;
iii.第1結合パートナーの検出可能な標識に結合する第3結合パートナーであって、標識を保有しない第3結合パートナー;
b.試料を第1、第2および第3結合パートナーと混合することにより免疫反応混合物を形成する;
c.体液試料中に分析物が存在するならばそれを第1および第2結合パートナーと免疫反応させて免疫反応生成物を形成させるのに十分な、かつ第3結合パートナーを第1結合パートナーの検出可能な標識と免疫反応させるのに十分な期間、免疫反応混合物を保持する;
d.いずれかの免疫反応生成物の存在および/または濃度を検出する
ことを含む、請求項1に記載のイムノアッセイ法。
【請求項3】
a.試料を下記のものと共にインキュベートする:
i.分析物に結合し、検出可能な標識を保有しない、第1結合パートナー;
ii.第1結合パートナーに結合し、第1結合パートナーへの結合について分析物と競合する特定子であって、検出可能な標識を保有する特定子;
iii.固相に結合させることができ、第1結合パートナーに結合し、第1結合パートナーへの結合について分析物および特定子と競合する、第2結合パートナー;
iv.特定子の検出可能な標識に結合する第3結合パートナーであって、標識を保有しない第3結合パートナー;
b.試料を第1、第2および第3結合パートナーならびに特定子と混合することにより免疫反応混合物を形成する;
c.体液試料中に分析物が存在するならばそれを第1結合パートナーへの結合について特定子および第2結合パートナーと競合させるのに十分な、かつ第3結合パートナーを特定子の検出可能な標識と免疫反応させてそれにより免疫反応生成物を形成させるのに十分な期間、免疫反応混合物を保持する;
d.いずれかの免疫反応生成物の存在および/または濃度を検出する
ことを含む、請求項1に記載のイムノアッセイ法。
【請求項4】
分析物が、感染症、炎症性、敗血症性、代謝性、心臓性または腫瘍性の事象または疾患に関連する生体分子または化学分子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイムノアッセイ法。
【請求項5】
分析物がホルモン、抗原または抗体である、請求項4に記載のイムノアッセイ法。
【請求項6】
分析物が、
a.トキソプラズマ属生物、ある態様においてトキソプラズマ・ゴンディイ(Toxoplasma gondii);
b.肝炎ウイルス、ある態様においてA型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV);
c.ヘルペスウイルス、ある態様においてヒト単純ヘルペスウイルス1および2(HHV1およびHHV2)、水痘−帯状疱疹ウイルス(HHV3)、エプスタイン−バーウイルス(HHV4/EBV)またはヒト−サイトメガロウイルス(HHV5)、ならびにヒト−ヘルペスウイルス6、7および8;
d.風疹ウイルス;
e.レトロウイルス、ある態様においてHIV1および2ならびにHTLV1および2;
f.パラミクソウイルス、ある態様において麻疹ウイルスおよび流行性耳下腺炎ウイルス;
g.ボレリア属生物
からなる群から選択される病原体に対する抗体である、請求項5に記載のイムノアッセイ法。
【請求項7】
分析物がIgMクラスの抗体である、請求項6に記載のイムノアッセイ法。
【請求項8】
分析物が、トキソプラズマ・ゴンディイ(Toxoplasma gondii)、サイトメガロウイルス(CMV)、風疹、A型肝炎およびB型肝炎からなる群から選択される病原体の感染に対する反応として存在するIgMクラスの抗体である、請求項7に記載のイムノアッセイ法。
【請求項9】
検出可能な標識が酵素性、放射性、蛍光性、化学発光性または電気化学発光性の標識である、前記請求項のいずれか1項に記載のイムノアッセイ法。
【請求項10】
イムノアッセイにより分析物を検出するための試薬キットであって、複数の結合パートナーを含み、その際、結合パートナーのうちの少なくとも1つが分析物に結合し、結合パートナーのうちの1つが検出可能な標識を保有し、結合パートナーのうちの1つが標識特異的であって検出可能な標識に結合するけれども検出可能な標識を保有しない、試薬キット。
【請求項11】
インビトロ診断検査において試料中に存在する抗標識抗体により起きる干渉を排除するための、検出可能な標識を保有しない標識特異的結合パートナーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノアッセイにおいて分析物(analyte)の直接または間接検出に用いられる検出可能な標識に結合する干渉因子により起きる干渉を低減するための方法に関する。より具体的には、本発明は、分析物を含有する疑いのある単離した試料中の分析物、ある態様において抗原または抗体を検出するためのイムノアッセイ法であって、試料を複数の結合パートナーと共にインキュベートし、それらのうちの1つは検出可能な標識を保有し、その際、標識を保有せず、検出可能な標識に結合する標識特異的結合パートナーを添加することによる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫診断アッセイにおいて干渉を排除するための方法は当技術分野で周知であり、詳細に記載されている。総説については、たとえばPark and Kricka (The Immunoassay Handbook Elsevier Ltd. 2013, Chapter 5.3, pages 403-415)を参照されたい。特に、固相ベースのイムノアッセイ、いわゆる不均一アッセイは、偽陽性または偽陰性のアッセイ結果、高いバックグラウンド信号、低いアッセイ感度および動態、試薬安定性の欠如、ならびにこれらの試薬の保存寿命の短縮をもたらす可能性がある種々の干渉を受ける。非特異的干渉はしばしば、分析物の存在とは無関係に、固相材料へのアッセイ成分の非特異的な結合により起きる。干渉の他の原因は、リウマチ因子、抗IgM抗体または抗−動物抗体(異好抗体(heterophilic antibody))、たとえばヒト−抗マウス抗体(HAMA)の存在である。
【0003】
しばしばみられる干渉の他の原因は、イムノアッセイに用いる信号発生成分である。既知の信号発生化合物は、たとえば酵素であるか、あるいは蛍光、比色、化学発光または電気化学発光の原理に基づいて光を発する標識である。特に、電気化学発光性化合物について、信号発生化合物への非特異的結合による干渉が先行技術において記載されている(Ando et al. Intern Med 2007, 46(15): 1225-1229; Sapin et al., Clin Chem Lab Med 2007; 45(3):416-418)。
【0004】
信号発生成分に基づく干渉を避けるために、しばしば、その信号発生成分に連結する過剰量のキャリヤータンパク質がイムノアッセイ混合物に添加される。その結果、干渉性の化合物または因子は遊離キャリヤータンパク質に付着したその信号発生成分に結合する。この措置が干渉を排除するのに不十分である場合、真の信号発生成分に類似しているけれどもそれ自体はいかなる信号も生じない物質をイムノアッセイ混合物に添加することもできる。その結果、試料中に存在する干渉因子はこの過剰の類似化合物に定量的に結合し、真のターゲット、すなわち信号発生化合物には結合しない。こうして干渉を抑制できる。そのような方法は、たとえばUS patent no. 5,888,745およびそれに相当するDE 195 19 973に記載されている。これらの文書には分析物を決定するための方法が開示され、その場合、分析物特異的な結合物質は発光信号を与えることができる金属含有錯体に付着している。その方法では、第1の金属含有錯体に関係があるけれども分析物には結合しない第2の金属含有錯体を、被験試料に添加する。この第2の金属含有錯体は第1の金属含有錯体の信号の減弱を低減するのに役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US patent no. 5,888,745
【特許文献2】DE 195 19 973
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Park and Kricka (The Immunoassay Handbook Elsevier Ltd. 2013, Chapter 5.3, pages 403-415)
【非特許文献2】Ando et al. Intern Med 2007, 46(15): 1225-1229
【非特許文献3】Sapin et al., Clin Chem Lab Med 2007; 45(3):416-418
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、干渉を排除するための措置はあるけれども、イムノアッセイは信号発生化合物に類似する追加量の競合化合物をアッセイ混合物に添加するだけでは排除できない干渉を示す傾向がある。
【0008】
したがって、解決すべき問題は検出可能な信号の発生に基づくイムノアッセイの特異度を増大させることにある。
本発明者らが、問題を引き起こす標識自体に結合する化合物をイムノアッセイに添加した際、干渉は低減した。本発明者らの予想は、標識自体がマスクおよびシールドされ、したがってシールドされた標識によって検出可能な光信号はもはや全く発生できないかあるいは不十分に発生できるにすぎないというものであったので、これは意外であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、信号発生化合物、または検出可能な標識、特に結合パートナーに付着した発光性標識は、標識特異的な結合パートナーの添加によりそれの環境からマスクおよびシールドされるという知見に基づく。
【0010】
本発明は、分析物を含有する疑いのある単離した試料中の分析物、ある態様において抗原または抗体を検出するためのイムノアッセイ法であって、試料を複数の結合パートナーと共にインキュベートし、それらのうちの1つは検出可能な標識を保有し、その際、標識を保有せず、検出可能な標識に結合する、標識特異的結合パートナーを添加することによる方法に関する。
【0011】
本方法は多種多様な分析物に適用でき、病原体の感染により試料中に存在するIgGおよびIgMクラスの被分析抗体に特に有用であることが証明された。
本発明はさらに、複数の結合パートナーを含み、それらのうちの少なくとも1つが分析物に結合し、それらのうちの1つが検出可能な標識を保有し、それらのうちの1つが標識特異的結合パートナーであって検出可能な標識に結合するけれどもそれ自体は検出可能な標識を保有しない、前記方法に有用な試薬キットに関する。
【0012】
さらに、本発明は、試料中に存在する抗標識抗体により起きる干渉を排除するためのインビトロ診断検査における、検出可能な標識を保有しない標識特異的結合パートナーの使用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a図1aは、実施例2および3に記載するトキソプラズマ・ゴンディイ(Toxoplasma gondii)IgMイムノアッセイの結果を示す。
図1b図1bは、実施例2および3に記載するトキソプラズマ・ゴンディイ(Toxoplasma gondii)IgMイムノアッセイの結果を示す。
図2図2は、種々の濃度の標識特異的な結合パートナーを抗干渉成分として用いたトキソプラズマIgMイムノアッセイの結果を示す(参照:実施例3)。
図3図3は、最適濃度の標識特異的な結合パートナーを抗干渉成分として用いた抗B型肝炎コア−イムノアッセイの結果を示す。詳細については実施例4を参照。
図4図4は、非競合アッセイ原理の模式図を示す。このフォーマットにおいて、検出された信号は分析物の量に正比例する;すなわち、低濃度の分析物は低い測定信号を生じ、これに対し高濃度の分析物は高い信号をもたらす。分析物が存在しなければ、前決定したバックグラウンドまたはカットオフ値を超える信号を検出できない。 a)特定クラスの抗体、ある態様においてIgM抗体を検出するためのフォーマット(μ捕獲);第1結合パートナーは、検出可能な標識を保有する分析物特異的な抗原である; b)a)と同様であるが、第1結合パートナーは、第1結合パートナーを結合する標識された追加の結合パートナーを添加することにより間接標識されている; c)抗体を検出するための二重抗原サンドイッチ(double-antigen sandwich)(DAGS)フォーマット;第1および第2結合パートナーは両方とも分析物を結合する。第1結合パートナーはそれ自体が検出可能な標識を保有するか、あるいはそれはb)に示すように標識を保有しかつ第1結合パートナーに結合する追加の結合パートナーを添加することにより間接標識されていてもよい。
図5図5(態様a))は、競合アッセイフォーマットの模式図を示す。競合フォーマットにおいては、検出された信号と分析物の存在との関係は逆転する;すなわち、態様a)については、分析物の非存在下で特定子(specifier)は分析物特異的な結合パートナーに結合でき、測定可能な信号を生じる。他方、分析物の存在下では、分析物特異的な結合パートナーへの特定子の結合は分析物との競合によって抑制される。分析物が存在すれば、分析物特異的な結合パートナーへの第2結合パートナーの結合も低減する。その結果、無信号またはより低い信号は分析物が被験試料中に存在することを示す。
図6図6は、本発明による競合アッセイフォーマットの2つの追加態様b)およびc)を示す。この場合も同様に、検出信号と分析物の存在との関係は逆転する;すなわち、分析物の非存在下では標識により発せられる検出可能な信号は高く、すなわち分析物の存在下(測定可能な信号が低減する)より高い。 b)この態様において、第1結合パートナーが標識を保有し、特定子は用いられない。第2結合パートナーは、標識された第1結合パートナーへの結合について分析物と競合する。 c)この態様において、第1結合パートナーは標識を保有せず、固相に結合させることができる。固相へ免疫複合体を付着させるために第2結合パートナーを用いることはない。特定子が標識を保有する。分析物は、第1結合パートナーへの結合について特定子と競合する。 態様b)およびc)の両方において、第1結合パートナー(b))または特定子(c))のいずれかが保有する標識に結合する第3結合パートナーを添加する。
図7図7は、甲状腺ホルモンTSHの検出のためのイムノアッセイ(非競合サンドイッチフォーマット)において、標識特異的な結合パートナーを添加することによる干渉排除を示す。詳細を実施例5に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、分析物を含有する疑いのある単離した試料中の分析物、ある態様において抗原または抗体を検出するためのイムノアッセイ法であって、試料を複数の結合パートナーと共にインキュベートし、それらのうちの1つは検出可能な標識を保有し、その際、標識を保有せず、検出可能な標識に結合する、標識特異的結合パートナーを添加することによる方法に関する。イムノアッセイは、アミノ酸から構成された結合パートナーの使用により、生物体液中に存在する生体分子の存在および/または量を検出する生化学的試験である;これらの結合パートナーは抗体および/または抗原から誘導される。
【0015】
イムノアッセイの種々のフォーマットおよび変法、たとえば均一および不均一イムノアッセイが当技術分野で広く知られている。均一イムノアッセイでは、試薬と試料を混合し、たとえば比濁法により直接測定する。
【0016】
本発明は、不均一イムノアッセイに関する。不均一イムノアッセイは多工程で行なわれ、その際、検出可能な標識を保有する試薬、ある態様においては結合パートナー、他の態様においては分析物特異的な結合パートナーを、被験試料に添加する。これらのアッセイは液相と固相の2相が必要であるので“不均一”と呼ばれる。溶液中での分析物と特異的結合パートナー −免疫複合体を構成する− との免疫反応の前、途中または後に、その免疫複合体を固相、ある態様においてはマイクロタイタープレート ラテックスまたはポリスチロールビーズに付着させる。その結果、2つの“不均一”相、液相および固相が生じる。液相と固相を分離した後、分析物特異的な結合パートナーに付着した標識から発せられる信号を固相もしくは液相のいずれかまたは両方の相において検出する。
【0017】
イムノアッセイは競合または非競合フォーマットのいずれかで実施できる。競合フォーマットでは、試料に含有される分析物が、捕獲化合物(しばしば抗体であるか、あるいは血清試料中の被験病原性物質に対する抗体が存在する場合はその病原性物質の抗原である)への結合について標識された結合パートナー(分析物と類似または同一である)と競合する。
【0018】
本発明のある態様において、イムノアッセイ法は非競合フォーマットをとっている(種々の特定のフォーマットの説明については図4を参照)。この場合、分析物は、分析物に結合する化合物、すなわち分析物特異的な結合パートナーと分析物を接触させることにより検出される。この分析物特異的な結合パートナーは、それ自体が検出可能な標識を保有するか、あるいは検出可能な標識を保有する他の結合パートナーのターゲットである。用語“検出可能な標識を保有する”には、直接結合した標識、および分析物特異的な結合パートナーに結合する他の標識された結合パートナーを添加することにより間接的に付与された標識(説明については、たとえば図4bを参照))の両方が含まれる。よって、非競合イムノアッセイでは、分析物と標識を保有する検出化合物との間で形成された複合体の量を決定することにより分析物の量を決定する。周知の非競合イムノアッセイフォーマットは、古典的なサンドイッチフォーマット(分析物は2つの分析物特異的な抗体の間に捕獲される)、二重抗原サンドイッチフォーマット(分析物は、2つの特異的抗原の間に捕獲される抗体である)、およびIgM−抗体がヒト−IgM抗体に対して特異的な抗体により捕獲されるμ−捕獲フォーマットである。このいわゆるμ−捕獲フォーマットでは、通常は、分析物であるIgM−抗体はμ−捕獲されたIgM分析物に結合する標識抗原を用いて検出される。
【0019】
より詳細には、非競合フォーマットで実施されるイムノアッセイ法は下記の工程を含む:
a.試料を下記のものと共にインキュベートする:
i.分析物に結合し、検出可能な標識を保有する、第1結合パートナー;
ii.固相に結合させることができ、かつ分析物に結合する、第2結合パートナー;
iii.第1結合パートナーの検出可能な標識に結合する第3結合パートナーであって、標識を保有しない第3結合パートナー;
b.試料を第1、第2および第3結合パートナーと混合することにより免疫反応混合物を形成する;
c.体液試料中に分析物が存在するならばそれを第1および第2結合パートナーと免疫反応させて免疫反応生成物を形成させるのに十分な、かつ第3結合パートナーを第1結合パートナーの検出可能な標識と免疫反応させるのに十分な期間、免疫反応混合物を保持する;
d.いずれかの免疫反応生成物の存在および/または濃度を検出する。
【0020】
非競合フォーマットの態様を図4にさらに説明する。本発明によれば、複数の結合パートナーを適用し、それらのうちの少なくとも1つは分析物特異的な結合パートナーである。
【0021】
結合パートナーは、アミノ酸から構成されるポリペプチドを基礎とする生体分子である。用語“アミノ酸から構成される”は、結合パートナーの主成分が、ポリペプチドを形成するアミノ酸であることを意味する。それには、1以上の残基が糖部分または脂質残基により修飾されたアミノ酸からなる主鎖をもつポリペプチドも含まれる。しかし、主成分としての核酸または炭水化物から構成される結合パートナーは含まれない。ある態様において、結合パートナーは糖残基による修飾を含む。ある態様において、結合パートナーは、追加部分(ある態様においては、標識、またはその結合パートナーを固相に付着させるために用いられる化合物)を付着させるための化学的リンカー分子を含む。これの例はビオチンであり、それはたとえばポリエチレングリコール単位を基礎とする化学的リンカーにより結合パートナーに結合させることができる。
【0022】
分析物特異的な結合パートナーは、アミノ酸から構成されるポリペプチドを基礎とする生体分子であって分析物に結合するものである。結合パートナーについて前記に詳述した特徴は、分析物特異的な結合パートナーにも適用される。分析物特異的な結合パートナーを第1結合パートナーとして適用する。そのような分析物特異的な結合パートナーは、分析物に結合する抗体またはそのフラグメントであってもよい。分析物が抗原であれば、抗体または抗体フラグメントは分析物特異的な結合パートナーとして特に有用である。分析物が抗体であれば、一般にその被分析抗体に結合する抗原を分析物特異的な結合パートナーとして適用する。非競合アッセイフォーマットにおいては、第1結合パートナー(分析物特異的な結合パートナー)が標識を保有する。
【0023】
具体例として、トキソプラズマ・ゴンディイに対するIgM抗体を検出するためのアッセイにおいては、試料中に存在するトキソプラズマ・ゴンディイ抗体に結合する抗原であるToxo p30抗原を、分析物特異的な結合パートナーとして適用する。Toxo p30抗原は検出可能な標識を保有する。本発明のある態様は、分析物がトキソプラズマ・ゴンディイに対する抗体である前記の非競合フォーマットによるイムノアッセイ法である。
【0024】
さらなる具体例として、分析物としてのホルモン、ある態様においては糖タンパク質である甲状腺刺激ホルモン(TSH)を検出するためのイムノアッセイにおいて、TSH特異的な抗体を被験試料中の抗原である分析物TSHに結合する分析物特異的な結合パートナーとして適用する。そのTSH特異的抗体は検出可能な標識を保有する。分析物は、固相に結合させることができる第2のTSH特異的抗体とのサンドイッチを形成する。本発明のある態様は非競合フォーマットに従ったイムノアッセイ法であり、その際、分析物はホルモン、ある態様においては糖タンパク質ホルモン、さらに他の態様においてはTSHである。
【0025】
i.、ii.、およびiii.の表示は記述用語であるにすぎず、時間的または段階的な順序が免疫反応混合物への個々の結合パートナーの添加に関連すると解釈すべきではない。たとえば、第3結合パートナー(参照:工程iii)を最後に添加する必要はなく、最初に添加してもよく、あるいはi.、ii.、およびiii.に挙げたすべての結合パートナーを同時に添加してもよい、など。
【0026】
分析物への第1および第2結合パートナーの結合、ならびに標識(第1結合パートナーが保有するもの)への第3結合パートナーの結合は、特異的に起き、それは高アフィニティーでの排他的結合と述べることもできる。これは、第1結合パートナーが分析物に特異的に結合し、第2結合パートナーも分析物に特異的に結合し、第3結合パートナーも第1結合パートナーに付着している標識に同様に特異的に結合することを意味する。これは、たとえば分析物がトキソプラズマ・ゴンディイに対するIgM分子である態様においては、第1結合パートナーは分析物IgMにより認識されてそれに結合する抗原、ある態様においてはToxo p30抗原であることを意味する。この態様において、固相に結合させることができる第2結合パートナーはIgM抗体のFc部(μ−鎖)に対する抗体である。その結果、第2結合パートナーはIgM抗体のFc部に特異的に結合し、標識を保有する第1結合パートナー(Toxo p30抗原)は分析物IgM抗体のパラトープに特異的に結合する。
【0027】
用語“特異的”または“特異的に結合する”は、試料中に存在する他の化合物、一般に生体分子が、分析物、結合パートナー類および標識(ターゲット分子としてまとめる)に有意には結合しないことをも示す。これは、分析物、結合パートナー類および標識との相互作用に関与しないターゲット分子領域への他の化学物質の結合を除外しない。
【0028】
本発明によれば、固相に結合させることができる第2結合パートナーを適用する。この結合パートナーは抗体またはそのフラグメントであってもよい。被分析抗体を検出するために使用できるいわゆる二重抗原サンドイッチ(DAGS)フォーマットにおいては、第2結合パートナーは被分析抗体に結合する抗原である。この抗原は、たとえばその抗原をビオチンとコンジュゲートさせ、それをストレプトアビジン−コートした固相に付着させることにより、固相に結合させることができる。
【0029】
前記に説明したように、μ−捕獲フォーマットに従ったアッセイにおいては、追加の結合パートナー(第2結合パートナー)としてヒトIgMに結合する抗体を適用する。この第2結合パートナーは、IgM分析物のパラトープに反映されるそれらの抗原特異性に関係なくIgM分子類を結合する(それは試料中のすべてのIgM分子類に結合するであろう)。第2結合パートナーを固相に結合させることができる。固相への生体分子の結合メカニズムは当技術分野で周知であり、最も容易な方法はプラスチック表面、たとえばマイクロタイタープレートへのタンパク質の直接コーティングである。ある態様において、固相への結合はビオチン−ストレプトアビジン相互作用により行なわれ、その際、第2結合パートナーはビオチン部分を保有し、固相がストレプトアビジンでコートされる。
【0030】
本発明によれば、被分析試料および複数の結合パートナーを含有するインキュベーション混合物に、標識特異的な結合パートナーを第3結合パートナーとして添加する。この標識特異的な結合パートナーはアミノ酸から構成されるポリペプチドを基礎とする生体分子であり、結合パートナーのうちの1つが保有する検出のために適用された標識に結合する。さらに前記の結合パートナーの定義は標識特異的な結合パートナーにも適用される。非競合フォーマットにおいて、標識を通常は分析物特異的な結合パートナーのうちの1つに直接または間接的に付着させる。ある態様において、それを第1結合パートナーに付着させる。競合アッセイフォーマット(さらに後記を参照)のある態様においては、インキュベーション混合物中に存在する他の結合パートナーへの結合について分析物と競合する特定子に標識を付着させる。
【0031】
好ましくは、その標識特異的な結合パートナーは、標識に結合する抗体またはそのフラグメントである。標識特異的な結合パートナー自体は標識を保有せず、標識以外の他のアッセイ成分と相互作用しないか、あるいは有意には相互作用しないことが重要である。言い換えると、当技術分野で既知の検出概念である、特異的結合パートナーの標識をそれ自体も標識を保有する標識特異的な結合パートナー(たとえば、ジゴキシン/ジゴキシゲニンと抗ジゴキシン/ジゴキシゲニン抗体)により認識する方法に基づくものは含まれない;それらの概念は、抗標識抗体から生じる干渉を低減するためには適用されないからである。
【0032】
標識の量と比較した第3結合パートナーとして作用する標識特異的な結合パートナーの量についての厳密な化学量論的量は重要ではないので、絶対的な最大および最小濃度範囲は本発明の作業を行なうために本質的ではない。満たす必要がある唯一の条件は、アッセイ試薬が機能性を維持することである。
【0033】
第3結合パートナー(標識特異的な結合パートナー)のモル比を比較およびカウントするために、標識をマスキングするのに使われる実際の結合部位を決定しなければならない。これは、たとえばFabフラグメントは1つのパラトープをもち、したがって1つの結合部位としてカウントすることを意味する;これに対し、たとえば完全IgG抗体またはFabフラグメントは2つのパラトープ(結合部位)をもち、よって2つの結合部位としてカウントする。
【0034】
特定のアッセイにおいては、標識のモル量と比較して過剰の標識特異的な結合パートナー(=第3結合パートナー)を供給することが有益な可能性がある。他のアッセイにおいては状況が逆転する可能性があり、標識特異的な結合パートナーの量と比較して過剰モルの標識を添加することが有益な可能性がある。たとえば、1:10(標識特異的な結合パートナーの結合部位と標識の比)の態様においては、標識特異的な結合パートナーの結合部位と比較してシールドすべき標識の過剰モルは10倍である;これは、10分の1の標識分子が標識特異的な結合パートナーの結合部位により結合およびカバーされる可能性があることを意味する。たとえば、10:1、すなわち標識特異的な結合パートナーの結合部位が10倍過剰に存在する他の態様においては、状況が逆転するであろう。さらに他の態様において、標識特異的な結合パートナーの結合部位と標識のモル比は少なくとも1:20、他の態様において1:10、他の態様において1:5、他の態様において1:3、他の態様において1:2、他の態様において1:1.5、他の態様において1:1、他の態様において2:1、他の態様において3:1、他の態様において5:1、他の態様において10:1、他の態様において20:1、他の態様において50:1、さらに他の態様において少なくとも100:1である。
【0035】
標識特異的な結合パートナーをイムノアッセイ混合物に添加すると、それは標識に結合し、それにより標識を試料中に存在する干渉化合物との相互作用からカバーおよびシールドする。同時に、標識特異的な結合パートナーはそれのサイズおよび三次元構造のため、標識に結合したリンカーを干渉性である試料化合物との相互作用から立体的にシールドおよびブロックすることもできる。その結果、リンカー配列への試料成分の非特異的な結合により起きる干渉も避けられる。それ自体は標識を保有しない標識特異的な結合パートナーを添加することにより、干渉成分(すなわち標識)を意図的にマスクし、それによって、試料中に存在する可能性のあるさらなる抗標識成分が標識に結合するのを阻止する。
【0036】
標識特異的な結合パートナーを添加しなければ、かなり頻繁に偽陽性結果が観察される可能性がある。たとえば、μ捕獲フォーマットに基づくアッセイフォーマットにおいて、これらの干渉は非特異的なIgMクラスの抗体の存在によってしばしば起きる。μ−捕獲フォーマットに基づくアッセイデザインにおいて、これらの干渉性の抗−標識IgM類は固相に捕獲される。抗−標識IgM類は標識された特異的化合物にも結合するので、真の分析物が試料中に存在しないにもかかわらず、標識された分析物特異的な結合パートナーは固相に結合する。その結果、偽陽性信号が観察される。
【0037】
検出可能な標識も専門家に広く知られている。本発明のある態様によれば、検出可能な標識は、酵素であるか、あるいは光、ある態様においては蛍光、発光、化学発光、電気化学発光または放射能を発生する標識である。好ましい態様において、標識は電気化学発光性標識、ある態様においてはトリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)−錯体(Ru(bpy))である。干渉は自己抗体および類似の干渉分子を引き付ける標識分子の三次元構造により起きるのであってその標識の信号発生メカニズム、たとえば光または放射能により起きるのではないので、前記の標識はすべて本発明に使用できる。
【0038】
検出可能な標識という用語には、標識に結合して標識と分析物特異的な結合パートナーとを連結しているリンカー配列も含まれる。通常は、リンカー配列は天然または合成アミノ酸1〜100個のペプチド主鎖を基礎とする。
【0039】
他の態様において、下記の工程を含む競合フォーマットでイムノアッセイ法を実施することができる:
a.試料を下記のものと共にインキュベートする:
i.分析物に結合し、検出可能な標識を保有しない、第1結合パートナー;
ii.第1結合パートナーに結合し、第1結合パートナーへの結合について分析物と競合する特定子であって、検出可能な標識を保有する特定子;
iii.固相に結合させることができ、第1結合パートナーに結合し、第1結合パートナーへの結合について分析物および特定子と競合する、第2結合パートナー;
iv.特定子の検出可能な標識に結合する第3結合パートナーであって、標識を保有しない第3結合パートナー;
b.試料を第1、第2および第3結合パートナーならびに特定子と混合することにより免疫反応混合物を形成する;
c.体液試料中に分析物が存在するならばそれを第1結合パートナーへの結合について特定子および第2結合パートナーと競合させるのに十分な、かつ第3結合パートナーを特定子の検出可能な標識と免疫反応させてそれにより免疫反応生成物を形成させるのに十分な期間、免疫反応混合物を保持する;
d.いずれかの免疫反応生成物の存在および/または濃度を検出する。
【0040】
競合イムノアッセイフォーマットの態様を図5に示す。競合イムノアッセイフォーマットにおいて、干渉問題を下記のように説明できる:本発明による標識特異的な結合パートナーが存在しない場合、標識への干渉化合物の結合が測定信号の低減を生じる。競合フォーマットにおける信号の解釈について、真の分析物との競合も信号の低減を生じるので、これは低減した信号が(偽)陽性結果として理解および解釈される可能性があることを意味する。この干渉を避けるために、本発明による標識特異的な結合パートナーをイムノアッセイ混合物に添加し、したがって干渉化合物に対する潜在的な結合部位は既に占有およびブロックされている。その結果、全体的な信号範囲は低減する。ところが意外にも、真の陽性試料中に存在する分析物はなおアッセイ成分と競合し、したがってこの真の陽性試料をなお信頼性をもって検出できる。
【0041】
競合イムノアッセイフォーマットに用いる複数の結合パートナーの特性は、ある側面において非競合フォーマットに用いるものと異なる。分析物に結合する第1結合パートナーは、その競合フォーマットにおいては標識を保有しない。その代わり、検出可能な標識は適用される特定子に結合している。特定子は第1結合パートナーに結合し、構造的に分析物に類似する。したがって、その特定子は第1結合パートナーへの結合について分析物と競合する。第2結合パートナーを固相に結合させることができ、そこまでは非競合フォーマットについて前記にさらに記載した第2結合パートナーの特性に対応する。しかし、競合フォーマットでは、第2結合パートナーは第1結合パートナーに(分析物にではなく)結合し、第1結合パートナーへの結合について分析物および特定子と競合する。
【0042】
それ自体は標識を保有せず、特定子の標識に結合する、第3結合パートナーの特性は、非競合フォーマットのものと同じである。i.、ii.、iii.およびブロックiv.の表示は記述用語であるにすぎず、時間的または段階的な順序が免疫反応混合物への個々の結合パートナーの添加に関連すると解釈すべきではない。たとえば、第3結合パートナー(参照:工程iv)を最後に添加する必要はなく、最初に添加してもよく、あるいはi.、ii.、iii.およびブロックiv.に挙げたすべての結合パートナーを同時に添加してもよい、など。
【0043】
競合イムノアッセイの例は抗B型肝炎コア抗体の検出のためのアッセイである;実施例4を参照。
他の態様において、単離した試料中の分析物を検出するための方法は図6 態様b)に説明する競合フォーマットで実施でき、その場合、特定子を添加せず、第1結合パートナーが標識を保有する(この場合には存在しない特定子の代わりに)。その方法は下記の工程を含む:
a.単離した試料を下記のものと共にインキュベートする:
i.分析物に結合し、検出可能な標識を保有する、第1結合パートナー;
ii.固相に結合させることができ、第1結合パートナーに結合し、第1結合パートナーへの結合について分析物と競合する、第2結合パートナー;
iii.第1結合パートナーの検出可能な標識に結合する第3結合パートナーであって、標識を保有しない第3結合パートナー;
b.試料を第1、第2および第3結合パートナーと混合することにより免疫反応混合物を形成する;
c.体液試料中に分析物が存在するならばそれを第1結合パートナーへの結合について第2結合パートナーと競合させるのに十分な、かつ第3結合パートナーを第1結合パートナーの検出可能な標識と免疫反応させてそれにより免疫反応生成物を形成するのに十分な期間、免疫反応混合物を保持する;
d.いずれかの免疫反応生成物の存在および/または濃度を検出する。
【0044】
さらに他の態様において、図6 態様c)に説明する競合フォーマットで実施でき、その場合、第2結合パートナーを添加せず、第1結合パートナーを固相に結合させることができる(この場合には存在しない第2結合パートナーを用いる代わりに)。その方法は下記の工程を含む:
a.単離した試料を下記のものと共にインキュベートする:
i.分析物に結合し、固相に結合させることができ、検出可能な標識を保有しない、第1結合パートナー;
ii.第1結合パートナーに結合し、第1結合パートナーへの結合について分析物と競合する特定子であって、検出可能な標識を保有する特定子;
iii.第1結合パートナーの検出可能な標識に結合する第3結合パートナーであって、標識を保有しない第3結合パートナー;
b.試料を第1および第2結合パートナーならびに特定子と混合することにより免疫反応混合物を形成する;
c.体液試料中に分析物が存在するならばそれを第1結合パートナーへの結合について特定子と競合させるのに十分な、かつ第3結合パートナーを特定子の検出可能な標識と免疫反応させてそれにより免疫反応生成物を形成するのに十分な期間、免疫反応混合物を保持する;
d.いずれかの免疫反応生成物の存在および/または濃度を検出する。
【0045】
競合および非競合イムノアッセイのための分析物は共に、イムノアッセイにより検出するのに十分な大きさであるいずれかの化学分子または生体分子、ある態様においては抗原、抗体およびホルモンであってよい。ある分析物は、感染症、炎症性、敗血症性、代謝性、心臓または癌の事象または疾患の結果として試料中に出現する。他の分析物は、患者が摂取する薬物であってこの薬物の濃度をモニターする必要があるもの、たとえば臓器移植後の免疫抑制のための薬物である(療法薬物モニタリング)。ある分析物(大部分はホルモン)は妊娠検査において判定される。
【0046】
さらに他の態様において、分析物は酵素、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、ワクチン、抗体などである。より具体的には、分析物は下記のものであってもよい:甲状腺ホルモン、ある態様においてトリヨードチロニン(T3)およびそれのプロホルモンであるチロキシン(T4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)およびTSH受容体自己抗体、エリスロポエチン、インスリン、ソマトトロピン、成長ホルモン放出因子、増殖因子、ある態様において血小板由来増殖因子、上皮増殖因子、トランスフォーミング増殖因子α、トランスフォーミング増殖因子、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、神経増殖因子、インスリン様増殖因子I、インスリン様増殖因子II、凝固因子VIII、スーパーオキシドジスムターゼ、インターフェロン、y−インターフェロン、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−5、インターロイキン−6、顆粒球コロニー刺激因子、多系統コロニー刺激因子、顆粒球−マクロファージ刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、T細胞増殖因子、リンホトキシンなど。ある態様において、分析物は心臓マーカー、ある態様においてトロポニンTおよびI、NT−proBNP、BNP、ならびに敗血症マーカーである。
【0047】
ある態様において、分析物は単離した試料中に存在するポリペプチド、ある態様において抗原または抗体である。ある態様において、分析物は、病原体、ならびにその病原体の感染により存在する検出可能なタンパク質および抗原である。分析物はウイルス性、細菌性または原虫性の病原体に由来するものであってもよく、それは感染の結果として検出可能な免疫反応、すなわち抗体、特にIgM抗体の生成を引き起こす可能性がある。たとえば、病原体は下記のものからなる群から選択される:
i.トキソプラズマ属生物、ある態様においてトキソプラズマ・ゴンディイ;
ii.肝炎ウイルス、ある態様においてA型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV);
iii.ヘルペスウイルス、ある態様においてヒト単純ヘルペスウイルス1および2(HHV1およびHHV2)、水痘−帯状疱疹ウイルス(HHV3)、エプスタイン−バーウイルス(HHV4/EBV)またはヒト−サイトメガロウイルス(HHV5)、ならびにヒト−ヘルペスウイルス6、7および8;
iv.風疹ウイルス;
v.レトロウイルス、ある態様においてHIV1および2ならびにHTLV1および2;
vi.パラミクソウイルス、ある態様において麻疹ウイルスおよび流行性耳下腺炎ウイルス;
vii.ボレリア属生物。
【0048】
他の態様において、分析物は前記に挙げたいずれかの病原体の感染の結果として存在するIgMまたはIgGクラスの抗体である。分析物がIgMまたはIgG抗体である場合、分析物は、病原体自体の構造または非構造タンパク質、ある態様において病原体内に存在するカプシド/コア抗原またはエンベロープ抗原または可溶性抗原に由来する、エピトープに結合する。
【0049】
ある態様において、分析物は、トキソプラズマ・ゴンディイ、サイトメガロウイルス(CMV)、風疹、A型肝炎およびB型肝炎からなる群から選択される病原体の感染に対する反応として存在するIgMクラスの抗体である。
【0050】
当業者に既知であるすべての生物体液を本発明のイムノアッセイ法のために単離した試料として使用できる。通常用いられる試料は、全血、血清、血漿、尿または唾液などの体液である。試料としては、脊椎動物から単離したいかなる生物体液も使用できる。ある態様において、試料は哺乳動物、特にヒトに由来する。
【0051】
本発明のさらに他の側面は、イムノアッセイにより分析物を検出するための試薬キットであって、複数の結合パートナーを含み、それらのうちの少なくとも1つは分析物に結合し、それらのうちの1つは検出可能な標識を保有し、標識特異的結合パートナーは検出可能な標識に結合するけれどもそれ自体は検出可能な標識を保有しない。ある態様において、分析物特異的な結合パートナーがその標識を保有する。本発明のさらに他の主題は、トキソプラズマ・ゴンディイに対するIgM抗体を検出するための試薬キットであって、複数の結合パートナーを含み、それらのうちの少なくとも1つは固相に結合させることができる抗ヒトIgM抗体であり、それらのうちの1つは検出可能な標識を保有するトキソプラズマ・ゴンディイ特異的抗原であり、標識特異的結合パートナーは検出可能な標識に結合するけれどもそれ自体は検出可能な標識を保有しない。
【0052】
さらに、前記に定めた試薬キットは、対照および基準溶液、ならびに平均的な当業者が用いる一般的な添加剤、緩衝剤、塩類、界面活性剤などを含む1以上の溶液中における試薬、ならびに使用のための指示を収容している。
【0053】
本発明のさらなる態様は、インビトロ診断検査において試料中に存在する抗標識抗体により起きる干渉を排除するための、検出可能な標識を保有しない標識特異的結合パートナーの使用である。
【0054】
以下の例により本発明を説明する。
【実施例】
【0055】
実施例1:
ルテニウム標識に対するモノクローナル抗体の作製
モノクローナル抗体を作製するための一般法は当業者に周知である。予め配合した融合ポリペプチド免疫原を実験動物、たとえばマウス、ラット、ヒツジまたはハムスターに、種々の用量で腹腔内投与する。B細胞の採集前に、ブースト免疫化を実施する。B細胞ハイブリドーマをKoehlerおよびMilsteinの方法(Koehler, G. and Milstein, C., Nature 256 (1975) 495-497)に従って得ることができる。得られたハイブリドーマは、単一のクローンまたは細胞としてマルチウェルプレートのウェル内に沈着する。初代培養上清を免疫原に対する反応性についてELISAにより試験する。
【0056】
先行技術に記載された方法に従って、免疫原であるキーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)−コンジュゲートしたルテニウム(II) トリス−ビピリジン N−ヒドロキシスクシンイミド(BPRu−KLH)をマウスに投与することにより、電気化学発光性標識ルテニウム(II) トリス−ビピリジン N−ヒドロキシスクシンイミドに対する特異性をもつモノクローナルマウス抗体を作製した。免疫化により得られた細胞を、ELISAを用いてルテニウム(II) トリス−ビピリジン N−ヒドロキシスクシンイミドに対するそれらの特異性について分析した。
【0057】
それぞれ8〜12週齢のBalb/cマウスに、免疫原であるキーホールリンペットヘモシアニン−コンジュゲートしたルテニウム(II) トリス−ビピリジン N−ヒドロキシスクシンイミド(BPRu−KLH)100μgによる反復腹腔内免疫化を施した。マウスを3回、すなわち初回免疫化の後、6週および10週の時点でも免疫化した。初回免疫化は完全フロイントアジュバント(Freund’s adjuvant)を用いて実施され、2回目および3回目の免疫化は不完全フロイントアジュバントを用いて行なわれた。マウス血清力価を12週後に下記に従ってELISA法により試験した。ELISAをマイクロプレートリーダー上で実施した。0.5μgの抗原/mlを含む溶液の適用により、ELISAプレートを、免疫原であるキーホールリンペットヘモシアニン−コンジュゲートしたルテニウム(II) トリス−ビピリジン N−ヒドロキシスクシンイミド(BPRu−KLH)でコートした。その後、PBS中に1%のRPLAを含む溶液を室温で1時間適用することにより、空いている結合部位をブロックした。0.9%(w/v)の塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v)のTween 20を含む溶液でウェルを3回洗浄した。マウス血清をPBSで1:50希釈し、試料として用いた。インキュベーション時間は室温で1時間であった。0.9%(w/v)の塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v)のTween 20を含む溶液でウェルを3回洗浄した。検出抗体として、ペルオキシダーゼ−コンジュゲートしたターゲット抗体の定常ドメインに対するポリクローナル抗体(PAK<M−Fcγ>S−F(ab’)−POD)を用いた。1%(w/v)のRSAを含むPBS中、80ng/mlの濃度で検出抗体を適用した。インキュベーション時間は室温で1時間であった。0.9%(w/v)の塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v)のTween 20を含む溶液でウェルを3回洗浄した。その後、ウェルをABTS溶液と共に室温で15分間インキュベートした。発現した色の強度を測光法により決定した。
【0058】
脾細胞の調製および骨髄腫細胞系との融合の3日前に、免疫原であるキーホールリンペットヘモシアニン−コンジュゲートしたルテニウム(II) トリス−ビピリジン N−ヒドロキシスクシンイミド(BPRu−KLH)100μgの静脈内注射により、最終ブースター免疫化を実施した。
【0059】
ハイブリドーマのELISAスクリーニング
初代培養上清を、ELISAにより、それぞれ、免疫原であるキーホールリンペットヘモシアニン−コンジュゲートしたルテニウム(II) トリス−ビピリジン N−ヒドロキシスクシンイミド(BPRu−KLH)およびブランクプレートに対する反応性について試験した。ELISAプレートを、免疫原であるキーホールリンペットヘモシアニン−コンジュゲートしたルテニウム(II) トリス−ビピリジン N−ヒドロキシスクシンイミド(BPRu−KLH)0.5μg/mlでコートした。その後、空いている結合部位をPBS中の1%RPLAにより室温で1時間ブロックした。0.9%(w/v)の塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v)のTween 20を含む溶液でウェルを3回洗浄した。希釈していないハイブリドーマ上清を試料として用いた。インキュベーション時間は室温で1時間であった。0.9%(w/v)の塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v)のTween 20を含む溶液でウェルを3回洗浄した。検出抗体として、ペルオキシダーゼにコンジュゲートしたターゲット抗体の定常ドメインに対するポリクローナル抗体(PAK<M−Fcγ>S−F(ab’)−POD)を用いた。1%(w/v)のRSAを含むPBS中、80ng/mlの濃度で検出抗体を適用した。インキュベーション時間は室温で1時間であった。0.9%(w/v)の塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v)のTween 20を含む溶液でウェルを3回洗浄した。その後、ウェルをABTS溶液と共に室温で15分間インキュベートした。発現した色の強度を405nmで測光法により決定した。基準波長は492nmであった。キーホールリンペットヘモシアニン−コンジュゲートしたルテニウム(II) トリス−ビピリジン N−ヒドロキシスクシンイミド(BPRu−KLH)に結合した際にELISAにおいて堅牢な強い発色を示している初代ハイブリドーマ上清を選択した。この方法を用いて、実施例3および4で適用したMab<BPRu>M−1 IgGを同定した。
【0060】
実施例2:
トキソプラズマ・ゴンディイに対するIgM抗体の検出
トキソプラズマ・ゴンディイに対するIgM抗体のインビトロ定性判定のためのイムノアッセイを、自動Elecsys(登録商標) 2010分析計(Roche Diagnostics GmbH)で製造業者の指示に従って実施した。Elecsys(登録商標)はRocheグループの登録商標である。
【0061】
Elecsys(登録商標) 2010における信号検出は電気化学発光に基づく。ビオチンコンジュゲート(すなわち、捕獲抗原)をストレプトアビジンコートした磁性ビーズ上に固定化し、一方で検出抗原は錯化ルテニウムカチオン(レドックス状態2+と3+の間でスイッチングする)を信号発生部分として保有する。特異的な免疫グロブリン分析物の存在下では、クロモゲンであるルテニウム錯体が固相に架橋され、白金電極で励起された後に620nmで発光する。信号出力は任意の光単位による。
【0062】
このアッセイはいわゆるμ−捕獲原理に基づき、その際、抗トキソプラズマ・ゴンディイIgM抗体を含有する疑いのある試料を、ルテニウム化されたトキソプラズマ・ゴンディイ特異的な組換え抗原およびビオチニル化した抗ヒトIgMマウスモノクローナル抗体と共にインキュベートする。トキソプラズマ・ゴンディイ特異的なIgM抗体がその試料中に存在すれば、抗IgMはこれらの抗体を捕獲する。ストレプトアビジンコートした固相を添加し、過剰の液体を除去した後、ルテニウム錯体標識から発生する電気化学発光信号を検出することができる。
【0063】
詳細には、下記の工程を実施した;アッセイの総期間は18分間であった:
・ 1回目のインキュベーション:10μLの試料をDiluent Universalで自動的に1:20に予備希釈した。ルテニウム錯体(R1;Ru錯体:トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)−錯体(Ru(bpy))で標識したトキソプラズマ・ゴンディイ組換え抗原を添加した。試料中に存在する抗トキソプラズマ・ゴンディイIgM抗体は、ルテニウム標識したトキソプラズマ・ゴンディイ組換え抗原と反応した;
・ 2回目のインキュベーション:ビオチニル化したモノクローナルh−IgM特異的抗体(R2)およびストレプトアビジンコートしたマイクロ粒子(M)を添加した。複合体はビオチンとストレプトアビジンの相互作用により固相に結合した状態になった;
・ 反応混合物を測定セル内へ吸引し、そこでマイクロ粒子は電極表面に磁気捕獲された。結合しなかった物質を次いでProCellで除去した。次いで電極に電圧を印加して化学発光を誘導し、それを光電子増倍管により測定した;
・ 試料の反応生成物から得られた電気化学発光信号を予めキャリブレーションにより得たカットオフ値の信号と比較することにより、結果をソフトウェアにより自動的に判定した。
【0064】
陰性キャリブレーターとして、抗−Toxo IgMについて陰性であるCal1ヒト血清を用いた。陽性キャリブレーターとして、ヒト血清中のCal2 抗Toxo IgM(ヒト)約130U/mL(Roche単位)を適用した。
【0065】
実施例3:
トキソプラズマ・ゴンディイに対するIgM抗体についてのイムノアッセイにおける干渉の低減
市販のヒト血清試料をin.vent Diagnostica GmbH(ヘニッヒスドルフ/ドイツ、ベルリン)から購入し、干渉性についてスクリーニングした。これらの試料を、自社の偽陽性試料、ならびに真のToxo IgMおよびIgG陽性試料と一緒に試験した。Toxo IgMおよびIgG陽性試料では、2つのサブグループの試料、すなわち高アビディティーのIgGを含む1グループ(後期感染症)および低アビディティーのIgGを含む1グループ(早期または一次感染症)も試験した。すべての試料をElecsys Toxo IgM(Roche Diagnostics GmbH Germany)で前記方法に従って試験した。陰性対照としてPC1[抗Toxo抗体を含まないヒト血清];陽性対照としてPC2[Toxo−IgM陽性ヒト血清]を用いた。信号−対−カットオフ比(S/CO)<0.8を非反応性(陰性)とみなした;信号−対−カットオフ比(S/CO)≧0.8<1.0を判定されないとして分類し、信号−対−カットオフ比(S/CO)≧1.0を反応性(陽性)として分類した。
【0066】
結果を図1に示す。“C21”で始まり“SN947(16)”までの干渉試料として分類した、干渉を排除するための標識特異的な結合パートナーの非存在下の血清では、これらの試料は偽陽性として示される。標識に結合する標識特異的な結合パートナー(Mab<BPRu>M−1 IgG)を添加した場合、真の陽性を含めたすべての試料について全体的信号は低減する。しかし、カットオフ指数は一定のままである。真の陽性試料はなお正確に陽性として検出される。興味深いことに、意外にも干渉試料についての信号は陰性キャリブレーション値まで低減する。言い換えると、標識特異的な結合パートナーを添加した場合、偽陽性が避けられ、結果としてより高いアッセイ特異度になる。
【0067】
図2は、種々の濃度の標識特異的な結合パートナーにおける干渉排除作用の結果を示す。市販の陰性試料およびトキソプラズマ・ゴンディイ抗体を含有しない自社試料を、Elecsys 抗−Toxo IgMアッセイで陽性結果について調べた。基準欄は8つの被験試料すべてがカットオフ値を超える陽性信号を提示することを示し、これらの試料がToxo−IgM抗体を含有すると誤って指示している。
【0068】
漸増量(0.25、0.5および10μg/ml)の干渉排除化合物をアッセイ混合物(R1)に添加した;すなわち、この例では、信号を発生するルテニウム錯体に結合する抗ルテニウム錯体モノクローナル抗体Mab<BPRu>M−1 IgGが組換えToxo抗原に付着した。予想どおり、絶対信号強度はその標識特異的な結合パートナーを添加することによって減弱する。しかし、意外にも、抗標識特異的な結合パートナーを十分に添加した場合、干渉を抑制することができ、カットオフより低くかつカットオフ指数より低い正確な結果が提示される(参照:R1中10μg/mlの欄)。この例では、標識と比較した標識特異的結合パートナー(それは2つのパラトープをもつ)の過剰モルまたは割合は約1:10であり、すなわち標識は約10倍のアクセスで存在し、したがって10分の1の標識が標識特異的な結合パートナーでカバーされる。
【0069】
R1中1μg/mlの濃度(それは、よりさらに小さな割合の標識がシールドされることを意味する)ですら、満足すべき干渉排除を観察できる(データを示していない)。言い換えると、分析物が存在するか否かを指示することを意図した標識に結合する標識特異的な結合パートナーを添加することにより、干渉を効果的に抑制し、したがって偽陽性アッセイ結果を避けることができる。同時に、陽性対照(参照:列PC1,陰性対照、およびPC2,Toxo−IgMを含有する陽性対照)はなお正確な陰性または陽性結果を提示する。
【0070】
実施例4
抗B型肝炎コアIgGおよびIgM抗体の検出(競合フォーマット)
B型肝炎コア抗原に対するIgGおよびIgM抗体のインビトロ定性判定のためのイムノアッセイを、自動Elecsys(登録商標) 2010分析計(Roche Diagnostics GmbH)で製造業者の指示に従って実施した。Elecsys(登録商標)はRocheグループの登録商標である。この分析計についての全般的検出原理は実施例1(抗−Toxo IgM)に記載したものと同様に作動する。
【0071】
詳細には、抗HBcアッセイは競合原理に従って作動し、その場合、分析物(抗−HBc抗体)は混合物中のHBc抗原への結合についてビオチニル化したルテニウム標識抗体と競合する。アッセイの総期間は27分間であった。
【0072】
・ 1回目のインキュベーション:40μLの試料の前処理を還元剤で行なった(R0);
・ 2回目のインキュベーション:HBcAg組換え抗原(R1)を添加した後、試料中の抗HBc抗体との複合体が形成された;
・ 3回目のインキュベーション:HBcAgに対するビオチニル化した抗体およびルテニウム錯体標識した抗体(R2;Ru錯体:トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)−錯体(Ru(bpy))を、ストレプトアビジンコートしたマイクロ粒子(M)と一緒に添加した後、HBc抗原上のまだ空いていた結合部位は占有された。複合体全体がビオチンとストレプトアビジンの相互作用により固相に結合した;
・ 反応混合物を測定セル内へ吸引し、そこでマイクロ粒子は電極表面に磁気捕獲された。結合しなかった物質を次いでProCellで除去した。次いで電極に電圧を印加して化学発光を誘導し、それを光電子増倍管により測定した;
・ 試料の反応生成物から得られた電気化学発光信号を予めキャリブレーションにより得たカットオフ値の信号と比較することにより、結果をソフトウェアにより自動的に判定した。
【0073】
陰性キャリブレーターとして、抗−Toxo IgMについて陰性であるCal1ヒト血清(B型肝炎に感染していないもの)を用いた。陽性キャリブレーターとして、ヒト血清中のCal2 AntiHBc(ヒト)>8 WHO IU/mLb)を用いた。WHO IUはWHO国際単位を意味する。
【0074】
図3は、B型肝炎コア抗原に対する抗体の検出のためのイムノアッセイにおける標識特異的な結合パートナーの添加により、干渉が排除されたことを示す。このアッセイは競合フォーマットで実施されている;それは、高い信号および信号−対−カットオフ比>1.0は非反応性(陰性)試料を指示し、それに対し、低い信号および信号−対−カットオフ比≦1.0は反応性(陽性)試料の指標であることを意味する。
【0075】
試料SE−0064_18(Trina A−HBc陰性血清)は、カットオフにきわめて近似するカットオフ値1.02の信号を提示する。標識特異的な結合パートナーを添加した場合、試料はその試料中に抗HBc抗体が存在しないことを指示する測定結果(S/CO=1.80)を提示する。この例でも、標識特異的な結合パートナーの添加はアッセイの特異度の増大をもたらす。
【0076】
実施例5
甲状腺刺激ホルモンの検出(TSH,チロトロピン,古典的サンドイッチフォーマット)
TSHのインビトロ定量測定のためのイムノアッセイを、自動Elecsys(登録商標) cobas分析計(Roche Diagnostics GmbH)で製造業者の指示に従って実施した。Elecsys(登録商標)はRocheグループの登録商標である。この分析計についての全般的検出原理は実施例1(抗−Toxo IgM)に記載したものと同様に作動する。
【0077】
詳細には、TSHアッセイは、ビオチニル化したTSH特異的モノクローナル抗体(R1)およびルテニウム錯体で標識したTSH特異的モノクローナル抗体(R2)を含む試薬R1を用いるサンドイッチ原理に従って作動し、それらは反応してサンドイッチ複合体を形成する。第1インキュベーション工程として、30μlの試料を両方の抗体と共に9分間インキュベートした。第2工程で、ストレプトアビジンコートしたマイクロ粒子を含む試薬R2を添加し、さらに9分間インキュベートした。その後、反応混合物を測定セル内へ吸引し、そこでマイクロ粒子は電極表面に磁気捕獲された。次いで電極に電圧を印加して化学発光を誘導し、それを光電子増倍管により測定した。2点キャリブレーションにより計測器特異的に作成したキャリブレーション曲線により結果を判定した。
【0078】
それぞれの試料について、2つのアリコートを測定した。1つのアリコートは干渉低減用の結合パートナーを添加せずに標準法で測定された(非処理基準)。第2アリコートは比較アリコートとしてR1およびR2と共にインキュベートされたが、第2アリコートのためのR2試薬(ルテニウム化抗体)はさらに標識特異的な結合パートナー(この場合:20μg/mlのMab<BPRu>M−1 IgG,ルテニウム錯体に特異的に結合する)、すなわちルテニウム標識錯体に結合するマウスモノクローナル抗体を含有していた。
【0079】
図7から分かるように、キャリブレーター(低TSH濃度についてのCal1、より高いTSH濃度についてのCal2)についての絶対カウントは、非処理基準と比較して抗干渉剤を適用したセットアップについて低減する。しかし、Cal2についての信号カウントは50%低減するけれどもなお妥当な測定範囲が得られる。一定の目標TSH濃度範囲をもつ対照(1.25〜1.79μIU/mlをもつPCU_1、および7.59〜10.3μIU/mlをもつPCU_2)に注目すると、これらの目標範囲は標識特異的な結合パートナーの添加後に十分に満たされている。
【0080】
次の工程として、干渉試料1〜4を標識特異的な結合パートナーの添加なしで測定すると、これらの試料はあるTSH濃度を指示するように思われた。これらの試料は非処理TSH基準アッセイにおいてきわめて高い信号を示した;それは −これらの患者の病歴によれば− 彼らの甲状腺ホルモン分析の個々の病像に当てはまらなかった。しかし、本発明による標識特異的な結合パートナーを添加した場合、干渉がかなり低減し、それにより4試料中の3つが正確なTSH目標範囲内にみられた。たとえば、干渉試料3は −非処理状態で測定した場合には− 143,728の信号を提示した。標識特異的な抗体を添加すると、その干渉を完全に低減して782カウントにすることができ、それはCal1キャリブレーション信号にきわめて近似していた(100%の干渉低減)。閾値測定においてきわめて高かった干渉試料1、2および4のTSH濃度は、標識特異的な結合パートナーの添加によって大幅に低減して、それぞれ78%、90%および69%の干渉低減となった。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7