特許第6779296号(P6779296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日精樹脂工業株式会社の特許一覧

特許6779296油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置
<>
  • 特許6779296-油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置 図000004
  • 特許6779296-油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置 図000005
  • 特許6779296-油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置 図000006
  • 特許6779296-油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置 図000007
  • 特許6779296-油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置 図000008
  • 特許6779296-油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置 図000009
  • 特許6779296-油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置 図000010
  • 特許6779296-油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置 図000011
  • 特許6779296-油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779296
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20201026BHJP
   B29C 45/67 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   B29C45/76
   B29C45/67
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-533843(P2018-533843)
(86)(22)【出願日】2017年12月22日
(86)【国際出願番号】JP2017046083
(87)【国際公開番号】WO2018117250
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-249907(P2016-249907)
(32)【優先日】2016年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 啓行
(72)【発明者】
【氏名】榊 里美
(72)【発明者】
【氏名】林 謙一
(72)【発明者】
【氏名】駒村 勇
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−114203(JP,A)
【文献】 特開平11−235741(JP,A)
【文献】 特開2009−202366(JP,A)
【文献】 特開2009−202365(JP,A)
【文献】 特開平04−173209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B22D 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプにより油圧駆動アクチュエータを駆動して可動部を移動させるとともに、可動部の移動中に、減速開始点に達したなら設定した停止位置に停止させる減速制御処理を行い、かつ設定した目標位置に達したなら減速終了処理を行う油圧式射出成形機の制御方法において、予め、設定した移動速度により前記可動部を移動させる定速移動区間,この定速移動区間の終了点から漸次減速させる減速移動区間,及びこの減速移動区間が終了する目標位置,を含む所定の速度制御パターンを設定するとともに、実際の定速移動区間における前記設定した移動速度により前記可動部を移動させた際に検出した移動速度と移動位置に基づき、演算により所定の時間間隔毎に順次予測した仮想停止位置で移動速度がゼロになる定速移動区間の終了点を減速開始点として設定し、成形工程における前記可動部の移動中に、前記減速開始点に達したなら前記油圧駆動アクチュエータのメータイン側を流量制御することにより減速制御処理を開始し、前記可動部の移動位置を検出して、当該移動位置に対応した速度指令により前記油圧駆動アクチュエータに対するメータイン制御を行うとともに、前記可動部の移動速度を求め、当該移動速度に対して前記速度指令に一致するように前記油圧駆動アクチュエータに対するメータアウト制御によるフィードバック制御を行うことを特徴とする油圧式射出成形機の制御方法。
【請求項2】
前記油圧駆動アクチュエータには、型締装置の型開閉シリンダを適用するとともに、前記可動部には、前記型締装置における可動型を支持する可動盤を適用することを特徴とする請求項1記載の油圧式射出成形機の制御方法。
【請求項3】
前記可動部は、移動に係わる移動抵抗に基づく負荷の大きさが一定の大きさ以下の負荷状態であることを特徴とする請求項1又は2記載の油圧式射出成形機の制御方法。
【請求項4】
前記速度指令は、検出した前記可動部の移動位置から前記速度制御パターンに基づいて求めることを特徴とする請求項1記載の油圧式射出成形機の制御方法。
【請求項5】
前記型開閉シリンダの型閉方向における前油室の油圧及び前記型開閉シリンダの型開方向における後油室の油圧を監視し、型開動作の際に、前記後油室の油圧が前記前油室の油圧よりも大きいときは、前記メータアウト制御によるフィードバック制御の速度指令に、前記後油室の油圧と前記前油室の油圧の差圧に対応する大きさの速度指令を加算する制御を行うことを特徴とする請求項2記載の油圧式射出成形機の制御方法。
【請求項6】
前記型開閉シリンダの型閉方向における前油室の油圧,前記型開閉シリンダの型開方向における後油室の油圧及び前記油圧ポンプの吐出圧を監視し、型閉動作の際に、前記前油室の油圧が前記後油室の油圧よりも大きく、かつ前記前油室の油圧が前記油圧ポンプの吐出圧よりも大きいときは、前記メータイン制御の圧力制御ループにおける圧力指令を、前記前油室の油圧の大きさに切換える制御を行うことを特徴とする請求項2記載の油圧式射出成形機の制御方法。
【請求項7】
前記型開閉シリンダの型閉方向における前油室の油圧を監視し、当該油圧が負圧のときは、メータイン制御における流量を増加させるとともに、メータイン制御における開度を絞る制御を行うことを特徴とする請求項2記載の油圧式射出成形機の制御方法。
【請求項8】
油圧ポンプにより油圧駆動アクチュエータを駆動して可動部を移動させるとともに、可動部の移動中に、減速開始点に達したなら設定した停止位置に停止させる減速制御処理を行い、かつ設定した目標位置に達したなら減速終了処理を行う機能を備える油圧式射出成形機の駆動制御装置において、前記油圧駆動アクチュエータに接続したメータイン回路と、当該油圧駆動アクチュエータに接続したメータアウト回路と、設定した移動速度により前記可動部を移動させる定速移動区間,この定速移動区間の終了点から漸次減速させる減速移動区間,及びこの減速移動区間が終了する目標位置,を含む所定の速度制御パターンを設定するとともに、実際の定速移動区間における前記設定した移動速度により前記可動部を移動させた際に検出した移動速度と移動位置に基づき、演算により所定の時間間隔毎に順次予測した仮想停止位置で移動速度がゼロになる定速移動区間の終了点を減速開始点として設定し、成形工程における前記可動部の移動中に前記減速開始点に達したなら前記油圧駆動アクチュエータに対するメータイン回路を流量制御することにより減速制御処理を開始し、前記可動部の移動位置を検出して、当該移動位置に対応した速度指令により前記メータイン回路に対するメータイン制御を行うとともに、前記可動部の移動速度を求め、当該移動速度が前記速度指令に一致するように前記メータアウト回路に対するメータアウト制御によるフィードバック制御を行う制御部とを具備してなることを特徴とする油圧式射出成形機の駆動制御装置。
【請求項9】
前記油圧駆動アクチュエータには、型締装置の型開閉シリンダを適用するとともに、前記可動部には、型締装置における可動型を支持する可動盤を適用することを特徴とする請求項8記載の油圧式射出成形機の駆動制御装置。
【請求項10】
前記型締装置は、前記可動部を、移動に係わる移動抵抗に基づく負荷の大きさが一定の大きさ以下の負荷状態に支持する可動部支持機構を備えることを特徴とする請求項9記載の油圧式射出成形機の駆動制御装置。
【請求項11】
前記可動部支持機構は、前記可動部を接触状態により直接摺動可能に支持する支持面を備えることを特徴とする請求項10記載の油圧式射出成形機の駆動制御装置。
【請求項12】
前記可動部支持機構は、前記可動部をスライド変位自在に支持するリニアガイド機構部を備えることを特徴とする請求項10記載の油圧式射出成形機の駆動制御装置。
【請求項13】
前記メータアウト回路は、メータアウト制御により流量を可変制御可能な流量制御弁を備えることを特徴とする請求項8記載の油圧式射出成形機の駆動制御装置。
【請求項14】
前記油圧ポンプは、ポンプモータの回転数を可変することにより吐出流量を制御可能な可変吐出型油圧ポンプであることを特徴とする請求項8記載の油圧式射出成形機の駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプにより油圧駆動アクチュエータを駆動して可動部を移動させる際の制御に用いて好適な油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧式射出成形機は電動式射出成形機に比べて正確な位置制御や速度制御を行いにくい側面を有している。即ち、油圧式射出成形機の場合、作動油及び油圧駆動アクチュエータを用いるため、温度により作動油の粘性や体積等が変動したり、油圧駆動アクチュエータに慣性力が生じ、これらの物理的挙動が制御精度や応答性に直接影響する。また、油圧ポンプに、ポンプモータの回転数を可変して吐出流量を制御可能な可変吐出型油圧ポンプを用いた場合には、油圧ポンプから油圧駆動アクチュータに至る油圧回路の長さが長くなる傾向があり、作動油の粘性や体積の変動等が大きく影響する。例えば、油圧駆動アクチュータとして、型締装置に搭載する型開閉シリンダを想定した場合、位置に対するフィードバック制御を行ったとしても、型締位置(金型閉鎖位置)或いは型閉じ時間のショット毎のバラツキが大きくなり、可動型が固定型に衝突して破損や損傷を招くトラブルなども発生する。そして、この問題は、生産性を高めるため、型閉速度を高速化して型閉じ時間(成形サイクル時間)を短縮しようとする際に、より大きな問題となる。
【0003】
従来、この問題に対応するため、本出願人は、既に、特許文献1及び2により、油圧式の型締装置に用いて好適な制御方法を提案した。特許文献1は、型締工程の高速化を図る場合でも金型の衝突を防止し、同時に成形品質(均質化)の低下要因及び生産性の変動要因を排除するとともに、油圧系回路のコストダウン,回路構成の単純化及び小型化に寄与する型締装置の制御方法の提供を目的としたものであり、具体的には、所定の速度制御パターンを設定し、型締工程時に、型閉区間では、型閉速度により型閉制御を行い、かつ検出した現型閉速度及び現型閉位置に基づき仮想停止位置で現型閉速度がゼロになる減速区間の減速開始位置を所定時間間隔毎に演算により順次予測し、この減速開始位置に達したなら減速区間を開始するとともに、この減速区間では、検出した現型閉位置に基づき速度制御パターンに対応する速度指令値を順次演算により求め、この速度指令値により減速制御を行い、型締移行速度に達したなら、低圧低速区間を経て所定の型締処理を行うようにしたものである。
【0004】
また、特許文献2は、型開位置のショット毎のバラツキを低減し、型の無用なオーバランの発生等を確実に回避するとともに、同時に、一定の成形サイクル時間の確保と高速化を図れる型締装置の制御方法の提供を目的としたものであり、具体的には、所定の速度制御パターンを設定し、型開制御時に、型開区間では、型開速度により型開制御を行い、かつ検出した現型開速度及び現型開位置に基づき仮想停止位置で現型開速度がゼロになる減速区間の減速開始位置を所定時間間隔毎に演算により順次予測し、この減速開始位置に達したなら減速区間を開始するとともに、この減速区間では、検出した現型開位置に基づき速度制御パターンに対応する速度指令値を順次演算により求め、この速度指令値により減速制御を行い、終期移行速度に達したなら所定の停止制御処理を行うようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−202365号公報
【特許文献2】特開2009−202366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来における型締装置の制御方法は、次のような解決すべき課題も残されていた。
【0007】
即ち、型締装置における可動型を支持する可動盤は、四本のタイバーに支持される構造を有しているが、タイバーには、可動型及び可動盤を含むかなりの重量が付与されるため、下方へ撓みを生じる。したがって、可動盤が円滑にスライド変位できない問題を生じるため、通常は、可動盤の下面を基台の上面等により支持する構造を有している。また、可動盤を移動させる型開工程及び型閉工程おける停止処理を行う減速区間では、速度制御パターンを設定し、この速度制御パターンに沿って減速処理を行なっているが、上述した可動盤の下面は基台の上面等に接触しているため、この状態(接触摩擦)がある程度のブレーキ機能として作用している。したがって、特許文献1及び2のように、可動盤を移動させる油圧駆動アクチュエータに対してメータイン制御を行ったとしても、正常な減速処理を行うことができる。
【0008】
しかし、型締装置の場合、ショット毎に可動盤の反復移動を行う型開閉動作を繰り返すとともに、可動盤の下面が基台の上面等に接触している状態(摩擦接触状態)では、稼働時におけるエネルギーロスが無視できないとともに、制御精度の低下により成形品質にも悪影響が生じる。このため、これらの不具合を排除する観点からは、当該摩擦接触状態を低減し、より低負荷化することが望ましいが、反面、上述したブレーキ機能が無くなるため、慣性力により的確な減速処理ができなくなり、制御の不安定化を招いてしまう。
【0009】
具体的には、図7に示すように、油圧駆動アクチュエータの場合、設定した目標位置Xoまでに可動盤の移動が減速するように、速度制御パターンにより、予め設定した減速時間Tdにより求められる減速開始位置Xsからメータイン回路の流量を絞り、図7に示す減速パターンPsをトレースするように減速制御を行うが、可動盤の移動に対する低負荷化を図った場合、ブレーキ機能が働かないことによる可動盤の慣性力により、減速区間Zdにおいて十分な減速を行うことができず、図7に示す仮想線Prのように、目標位置XoをオーバランしてXorの位置まで行き過ぎてしまうとともに、減速時間Tdxで示すように、到達するまでの時間は長くなる。この結果、全体の成形サイクルを長くせざるを得ず、生産性及び量産性の低下を招くとともに、制御精度の低下及び制御の不安定化による目標位置のバラツキにより成形品質にも悪影響を生じる。
【0010】
なお、メータアウト回路により油圧駆動アクチュエータから流出する流量を絞ることにより、ブレーキ機能と同様の作用を付加することも考えられるが、この場合、切換時に、圧縮された油圧力による急減速及び油圧解放時における飛び出し等が発生しやすいとともに、機械的な振動が発生する虞れもあるため、十分な解決策とはいえない。
【0011】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した油圧式射出成形機の制御方法及び駆動制御装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る油圧式射出成形機1の制御方法は、上述した課題を解決するため、油圧ポンプ2により油圧駆動アクチュエータ3を駆動して可動部4を移動させるとともに、可動部4の移動中に、減速開始点Xsに達したなら設定した停止位置Xeに停止させる減速制御処理を行い、かつ設定した目標位置Xoに達したなら減速終了処理を行うに際し、予め、設定した移動速度により可動部4を移動させる定速移動区間Zc,この定速移動区間Zcの終了点(Xs)から漸次減速させる減速移動区間Zd,及びこの減速移動区間Zdが終了する目標位置Xo,を含む所定の速度制御パターンDpを設定するとともに、実際の定速移動区間Zcにおける設定した移動速度により可動部4を移動させた際に検出した移動速度と移動位置に基づき、演算により所定の時間間隔毎に順次予測した仮想停止位置Xesで移動速度がゼロになる定速移動区間Zcの終了点(Xs)を減速開始点Xsとして設定し、成形工程における可動部4の移動中に、減速開始点Xsに達したなら油圧駆動アクチュエータ3のメータイン側を流量制御することにより減速制御処理を開始し、可動部4の移動位置を検出して当該移動位置に対応した速度指令により油圧駆動アクチュエータ3に対するメータイン制御を行うとともに、可動部4の移動位置を検出して当該可動部4の移動速度を求め、当該移動速度に対して速度指令に一致するように油圧駆動アクチュエータ3に対するメータアウト制御によるフィードバック制御を行うようにしたことを特徴とする。
【0013】
一方、本発明に係る油圧式射出成形機1の駆動制御装置Cは、上述した課題を解決するため、油圧ポンプ2により油圧駆動アクチュエータ3を駆動して可動部4を移動させるとともに、可動部4の移動中に、減速開始点Xsに達したなら設定した停止位置Xeに停止させる減速制御処理を行い、かつ設定した目標位置Xoに達したなら減速終了処理を行う機能を備える駆動制御装置を構成するに際して、油圧駆動アクチュエータ3に接続したメータイン回路5と、油圧駆動アクチュエータ3に接続したメータアウト回路6と、設定した移動速度により可動部4を移動させる定速移動区間Zc,この定速移動区間Zcの終了点(Xs)から漸次減速させる減速移動区間Zd,及び減速移動区間Zdが終了する目標位置Xo,を含む所定の速度制御パターンDpを設定するとともに、実際の定速移動区間Zcにおける設定した移動速度により可動部4を移動させた際に検出した移動速度と移動位置に基づき、演算により所定の時間間隔毎に順次予測した仮想停止位置Xesで移動速度がゼロになる定速移動区間Zcの終了点(Xs)を減速開始点Xsとして設定し、成形工程における可動部4の移動中に減速開始点Xsに達したなら油圧駆動アクチュエータ3に対するメータイン回路5を流量制御することにより減速制御処理を開始し、可動部4の移動位置を検出して当該移動位置に対応した速度指令によりメータイン回路5に対するメータイン制御を行うとともに、可動部4の移動位置を検出して当該可動部4の移動速度を求め、当該移動速度が速度指令に一致するようにメータアウト回路6に対するメータアウト制御によるフィードバック制御を行う制御部7とを具備してなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は好適な実施の態様により、油圧駆動アクチュエータ3には、型締装置1cの型開閉シリンダ3c…を適用することができるとともに、可動部4には、型締装置1cにおける可動型4cmを支持する可動盤4mを含ませることができる。さらに、型開閉シリンダ3c…の型閉方向Fcにおける前油室3cf…の油圧Pf及び型開閉シリンダ3c…の型開方向Foにおける後油室3cr…の油圧Prを監視し、型開動作の際に、後油室3cr…の油圧Prが前油室3cf…の油圧Pfよりも大きいときは、メータアウト制御によるフィードバック制御の速度指令に、後油室3cr…の油圧Prと前油室3cf…の油圧Pfの差圧に対応する大きさの速度指令を加算する制御を行うことができるとともに、型開閉シリンダ3c…の型閉方向Fcにおける前油室3cf…の油圧Pf,型開閉シリンダ3c…の型開方向Foにおける後油室3cr…の油圧Pr及び油圧ポンプ2の吐出圧Ppを監視し、型閉動作の際に、前油室3cf…の油圧Pfが後油室3cr…の油圧Prよりも大きく、かつ前油室3cf…の油圧Pfが油圧ポンプ2の吐出圧Ppよりも大きいときは、メータイン制御の圧力制御ループにおける圧力指令を、前油室3cf…の油圧Pfの大きさに切換える制御を行うことができる。加えて、型開閉シリンダ3c…の型閉方向Fcにおける前油室3cf…の油圧Pfを監視し、当該油圧Pfが負圧のときは、メータイン制御における流量を増加させるとともに、メータイン制御における開度を絞る制御を行うことができる。一方、型締装置1cとして、可動部4を、移動に係わる移動抵抗に基づく負荷の大きさが一定の大きさ以下の負荷状態に支持する可動部支持機構11を備えた型締装置に適用して好適であり、可動部支持機構11としては、可動部4を接触状態により直接摺動可能に支持する支持面11fを設けた構成であってもよいし、可動部4をスライド変位自在に支持するリニアガイド機構部11rを設けた構成であってもよい。なお、メータアウト回路6には、メータアウト制御により流量を可変制御可能な流量制御弁13を用いるとともに、油圧ポンプ2には、ポンプモータ12の回転数を可変することにより吐出流量を制御可能な可変吐出型油圧ポンプ2sを用いることが望ましい。
【0015】
さらに、型開閉シリンダ3c…の型閉方向Fcにおける前油室3cf…の油圧Pf及び型開閉シリンダ3c…の型開方向Foにおける後油室3cr…の油圧Prを監視し、型開動作の際に、後油室3cr…の油圧Prが前油室3cf…の油圧Pfよりも大きいときは、メータアウト制御によるフィードバック制御の速度指令に、後油室3cr…の油圧Prと前油室3cf…の油圧Pfの差圧に対応する大きさの速度指令を加算する制御を行うことができるとともに、型開閉シリンダ3c…の型閉方向Fcにおける前油室3cf…の油圧Pf,型開閉シリンダ3c…の型開方向Foにおける後油室3cr…の油圧Pr及び油圧ポンプ2の吐出圧Ppを監視し、型閉動作の際に、前油室3cf…の油圧Pfが後油室3cr…の油圧Prよりも大きく、かつ前油室3cf…の油圧Pfが油圧ポンプ2の吐出圧Ppよりも大きいときは、メータイン制御の圧力制御ループにおける圧力指令を、前油室3cf…の油圧Pfの大きさに切換える制御を行うことができる。加えて、型開閉シリンダ3c…の型閉方向Fcにおける前油室3cf…の油圧Pfを監視し、当該油圧Pfが負圧のときは、メータイン制御における流量を増加させるとともに、メータイン制御における開度を絞る制御を行うことができる。一方、型締装置1cとして、可動部4を、移動に係わる移動抵抗に基づく負荷の大きさが一定の大きさ以下の負荷状態に支持する可動部支持機構11を備えた型締装置に適用して好適であり、可動部支持機構11としては、可動部4を接触状態により直接摺動可能に支持する支持面11fを設けた構成であってもよいし、可動部4をスライド変位自在に支持するリニアガイド機構部11rを設けた構成であってもよい。なお、メータアウト回路6には、メータアウト制御により流量を可変制御可能な流量制御弁13を用いるとともに、油圧ポンプ2には、ポンプモータ12の回転数を可変することにより吐出流量を制御可能な可変吐出型油圧ポンプ2sを用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明に係る油圧式射出成形機1の制御方法及び駆動制御装置Cによれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0017】
(1) 減速開始点Xsに達したなら油圧駆動アクチュエータ3のメータイン側を流量制御することにより減速制御処理を開始し、可動部4の移動位置を検出して、当該移動位置に対応した速度指令により油圧駆動アクチュエータ3に対するメータイン制御を行うとともに、可動部4の移動速度を求め、当該移動速度に対して速度指令に一致するように油圧駆動アクチュエータ3に対するメータアウト制御によるフィードバック制御を行うようにしたため、可動部4の移動に係わる目標位置Xoに対する制御精度及び安定性を高めることにより成形品質の向上を図れるとともに、可動部4が移動する際における減速処理の高速化による成形サイクルの短縮化を実現し、生産性及び量産性を高めることができ、特に、可動部4の移動に係わる負荷を小さくして省エネルギー性を高める際に用いて最適となる。
【0018】
(2) 停止位置Xeに、仮想停止位置Xesを含ませたため、この仮想停止位置Xesを適用することにより、移動時に、正確な目標位置Xoをリアルタイムで予測でき、より正確な目標位置Xoに到達させることができるなど、多様性のある減速制御に利用できる。
【0019】
(3) 減速開始点Xs設定するに際し、予め、設定した移動速度により可動部4を移動させる定速移動区間Zcと、この定速移動区間Zcの終了点(Xs)から漸次減速させる減速移動区間Zdと、この減速移動区間Zdが終了する目標位置Xoを含む所定の速度制御パターンDpを設定し、実際の定速移動区間Zcでは、設定した移動速度により可動部4を移動させ、かつ検出した移動速度と移動位置に基づき、所定の時間間隔毎に演算により順次予測した仮想停止位置Xesで移動速度がゼロになる定速移動区間Zcの終了点(Xs)を、減速開始点Xsとして設定したため、目標位置Xoに対する制御精度を高め、移動する可動部4の位置や時間のバラツキを飛躍的に低減できる。これにより、可動部4の高速化を図る場合でも、可動部4のオーバラン等のトラブルを回避できるととともに、同時に成形品質(均質化)の低下要因及び生産性の変動要因を排除できるという基本的な作用効果を享受できる。しかも、ソフトウェア処理により実現できるため、追加的なハードウェア、例えば、ブレーキ動作に必要なブレーキバルブや関連する回路要素などが不要となるため、油圧系回路のコストダウンに寄与できるとともに、回路構成の単純化及び小型化にも寄与できる。
【0020】
(4) 好適な態様により、油圧駆動アクチュエータ3として、型締装置1cの型開閉シリンダ3c…を適用するとともに、可動部4に、型締装置1cにおける可動型4cmを支持する可動盤4mを含ませれば、型開閉毎に重量の大きい可動盤4m及び可動型4cmを含む可動部4を反復移動させる型締装置1cに対して、本発明に係る制御方法を適用できるため、本発明の望ましい作用効果を得る観点から最適な形態として実施できる。
【0021】
(5) 好適な態様により、速度指令を、検出した可動部4の移動位置から速度制御パターンDpに基づいて求めるようにすれば、減速を含む移動制御時には、速度制御パターンDpを正確にトレースする速度指令を設定できるため、常にバラツキの少ない正確な速度指令を確保できる。
【0022】
(6) 好適な態様により、型開閉シリンダ3c…の型閉方向Fcにおける前油室3cf…の油圧Pf及び型開閉シリンダ3c…の型開方向Foにおける後油室3cr…の油圧Prを監視し、型開動作の際に、後油室3cr…の油圧Prが前油室3cf…の油圧Pfよりも大きいときは、メータアウト制御によるフィードバック制御の速度指令に、後油室3cr…の油圧Prと前油室3cf…の油圧Pfの差圧に対応する大きさの速度指令を加算する制御を行うようにすれば、型開時に後油室3cr…に生じる無用な差圧を解消できるため、型開閉シリンダ3c…の破損等のトラブルを回避できるとともに、急激な挙動変化を抑制できる。
【0023】
(7) 好適な態様により、型開閉シリンダ3c…の型閉方向Fcにおける前油室3cf…の油圧Pf,型開閉シリンダ3c…の型開方向Foにおける後油室3cr…の油圧Pr及び油圧ポンプ2の吐出圧Ppを監視し、型閉動作の際に、前油室3cf…の油圧Pfが後油室3cr…の油圧Prよりも大きく、かつ前油室3cf…の油圧Pfが油圧ポンプ2の吐出圧Ppよりも大きいときは、メータイン制御の圧力制御ループにおける圧力指令を、前油室3cf…の油圧Pfの大きさに切換える制御を行うようにすれば、型閉時に前油室3cf…に生じる無用な差圧に対して速度指令を絞ることができるため、負荷が大きすぎることにより駆動力が不足する不具合を解消できる。
【0024】
(8) 好適な態様により、型開閉シリンダ3c…の型閉方向Fcにおける前油室3cf…の油圧Pfを監視し、当該油圧Pfが負圧のときは、メータイン制御における流量を増加させるとともに、メータイン制御における開度を絞る制御を行うようにすれば、負圧による流量の一時的増減を解消できるため、移動中の可動盤4mが停止してしまうなどの不具合を回避できる。
【0025】
(9) 好適な態様により、型締装置1cとして、可動部4を、移動に係わる移動抵抗に基づく負荷の大きさが一定の大きさ以下の負荷状態に支持する可動部支持機構11を備えた型締装置に適用すれば、可動部4を低負荷状態で移動させる可動部支持機構11の搭載を可能にして、省エネルギー性を向上させることができるとともに、可動型4cmを支持する可動盤4mを移動させる際における型開閉制御を高精度かつ安定に行うことができる。
【0026】
(10) 好適な態様により、可動部支持機構11を構成するに際し、可動部4を接触状態により直接摺動可能に支持する支持面11fを設けて構成すれば、特に、構成の簡易化及びコスト面を考慮した汎用的な可動部支持機構11として構成できる。
【0027】
(11) 好適な態様により、可動部支持機構11を構成するに際し、可動部4をスライド変位自在に支持するリニアガイド機構部11rを設けて構成すれば、リニアガイド機構部11rによるほとんど負荷が生じない低負荷状態にも対応できるため、この種のリニアガイド機構部11rの使用を可能にするとともに、最も望ましい省エネルギー効果を得ることができる。
【0028】
(12) 好適な態様により、メータアウト回路6に、メータアウト制御により流量を可変制御可能な流量制御弁13を用いれば、精度の高い流量制御を行うことができる比例電磁弁やサーボ弁等を使用できるため、応答性及び精度の高い制御を実現できる。
【0029】
(13) 好適な態様により、油圧ポンプ2に、ポンプモータ12の回転数を可変することにより吐出流量を制御可能な可変吐出型油圧ポンプ2sを用いれば、油圧ポンプ2に対するインバータ制御により、メータイン制御を行うことができるため、別途のメータイン回路を不要にできる。これにより、コスト低減及び更なる省エネルギー性の向上に寄与できるとともに、特に、本発明に係る制御方法は、このような作動油における温度等の物理的な変動が大きく影響を受ける可変吐出型油圧ポンプ2sを搭載した型締装置1cに適用して、より大きな効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の好適実施形態に係る油圧式射出成形機の制御方法の処理手順を説明するためのフローチャート、
図2】本発明の好適実施形態に係る油圧式射出成形機に備える駆動制御装置の油圧回路図、
図3】同油圧式射出成形機における可動部支持機構を備える型締装置の機械的構成図、
図4】同油圧式射出成形機における他の可動部支持機構を備える型締装置の機械的構成図、
図5】同油圧式射出成形機の駆動制御装置の型開動作時におけるバルブ切換状態を示す油圧回路図、
図6】同油圧式射出成形機の駆動制御装置の型閉動作時におけるバルブ切換状態を示す油圧回路図、
図7】同油圧式射出成形機の制御方法に用いる速度制御パターン図、
図8】同油圧式射出成形機の変更例に係る駆動制御装置の要部を抽出して示す油圧回路図、
図9】同変更例に係る駆動制御装置の制御方法の処理手順を説明するためのフローチャート、
【符号の説明】
【0031】
1:油圧式射出成形機,1c:型締装置,2:油圧ポンプ,2s:可変吐出型油圧ポンプ,3:油圧駆動アクチュエータ,3c…:型開閉シリンダ,3cf…:型開閉シリンダにおける前油室,3cr…:型開閉シリンダにおける後油室,4:可動部,4m:可動盤,4cm:可動型,5:メータイン回路,6:メータアウト回路,7:制御部,11:可動部支持機構,11f:支持面,11r:リニアガイド機構部,12:ポンプモータ,13:流量制御弁,C:駆動制御装置,Xs:減速開始点,(Xs):定速移動区間の終了点,Xe:停止位置,Xes:仮想停止位置,Xo:目標位置,Zc:定速移動区間,Zd:減速移動区間,Dp:速度制御パターン,Fc:型閉方向,Fo:型開方向
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明に係る最良実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0033】
まず、本実施形態に係る制御方法を用いて好適な油圧式射出成形機1に備える型締装置1cの構成について、図2図4を参照して説明する。
【0034】
図2中、1は油圧式射出成形機であり、型締装置1cと仮想線で一部を示す射出装置1iを備える。図3及び図4に、本実施形態に係る制御方法を用いて好適な型締装置1c…、特に、異なる可動部支持機構11…を備える二つのタイプの型締装置1c,1cをそれぞれ示す。
【0035】
図3に示す型締装置1cは、基本構成として、成形機ベッド21に固定した固定盤22と、成形機ベッド21の上面上に、可動部支持機構11により型開方向Fo及び型閉方向Fcに変位自在に支持及びガイドされる受圧盤23及び可動盤4mと、固定盤22と受圧盤23間に架設し、一端を固定盤22に固定するとともに、他端側を受圧盤23に挿通させた複数(例示は4本)のタイバー24…とを備える。そして、固定盤22により仮想線で示す固定型4ccを支持するとともに、可動盤4mにより仮想線で示す可動型4cmを支持する。この固定型4ccと可動型4cmにより金型4cが構成される。これにより、可動型4cmを支持する可動盤4mは、本発明における可動部4として機能する。さらに、図2に示すように、受圧盤23には型締シリンダ25を設け、この型締シリンダ25に内蔵する駆動ラム25rは可動盤4mに結合する。
【0036】
また、受圧盤23とタイバー24…間には各タイバー24…毎に第一ロック機構部26…をそれぞれ備える。任意の第一ロック機構部26(他の第一ロック機構部26…も同じ)は、タイバー24の他端から軸方向の所定範囲に形成した被係止部26sと、受圧盤23に設けた係止部26cを備え、この係止部26cをロックモード又はロック解除モードに切換えることにより、被係止部26sの任意の位置と受圧盤23の位置をロックし、又はロック解除することができる。
【0037】
さらに、受圧盤23と可動盤4m間には、複数の第二ロック機構部27…を配設する。例示する任意の第二ロック機構部27(他の第二ロック機構部27…も同じ)は、一端を可動盤4mに固定し、かつ他端から軸方向の所定範囲に形成した被係止部27rsを有する被係止ロッド27rと、受圧盤23に設けた係止部27cとを備え、この係止部27cをロックモード又はロック解除モードに切換えることにより、被係止部27rsの任意の位置、即ち、可動盤4mの任意の位置と受圧盤23の位置をロックし、又はロック解除することができる。
【0038】
一方、成形機ベッド21の上面に配設する可動部支持機構11は、可動盤4mの移動に係わる移動抵抗による負荷の大きさが一定の大きさ以下の負荷状態に支持する機能を備える。これにより、特に、重量物となる可動型4cmを支持する可動盤4mを、低負荷状態で移動させることができるため、摩擦抵抗等によるエネルギーロスを低減し、省エネルギー性をより向上させることができる。
【0039】
図3に示す可動部支持機構11は、リニアガイド機構部11rを用いたものであり、比較的大型の主リニアガイド31と比較的小型の副リニアガイド31の組合わせからなる。具体的には、成形機ベッド21の上面に配設した左右一対のレールメンバからなる主ガイドレール部31rと、この主ガイドレール部31rに沿ってスライド自在に支持され、かつ主架台33の下面に取付けた左右一対のスライダメンバからなる主前スライダ部31sf及び主後スライダ部31srにより構成した主リニアガイド31を備えるとともに、主架台33の上面における型閉方向Fc側に配設した左右一対のレールメンバからなる副ガイドレール部32rと、この副ガイドレール部32rに沿ってスライド自在に支持され、かつ副架台34の下面に取付けた左右一対のスライダメンバからなる副前スライダ部32sf及び副後スライダ部32srにより構成した副リニアガイド32を備える。
【0040】
そして、主架台33の上面における型開方向Fo側に受圧盤23を載置して固定するとともに、副架台34の上面に可動盤4mを載置して固定する。このように、可動部支持機構11を構成するに際し、可動部4をスライド変位自在に支持するリニアガイド機構部11rを設けて構成すれば、特に、リニアガイド機構部11rによるほとんど負荷が生じない低負荷状態にも対応できるため、この種のリニアガイド機構部11rの使用を可能にするとともに、最も望ましい省エネルギー効果を得れる利点がある。
【0041】
また、固定盤22には、左右一対の型開閉シリンダ3c,3c(図2参照)を固定するとともに、各型開閉シリンダ3c,3cから突出するピストンロッド3p…の先端は、主架台33に結合して固定する。この型開閉シリンダ3c…は、本発明の油圧駆動アクチュエータ3を構成する。
【0042】
このように、油圧駆動アクチュエータ3に、型締装置1cの型開閉シリンダ3c…を適用するとともに、可動部4に、上述した可動型4cmを支持する可動盤4mを適用すれば、型開閉毎に重量の大きい可動盤4m及び可動型4cmを含む可動部4を反復移動させる型締装置1cに対して、本発明に係る制御方法を適用できるため、本発明の望ましい作用効果を得る観点から最適な形態として実施できる。
【0043】
これにより、型開工程では、第一ロック機構部26をロック解除モードに切換え、かつ第二ロック機構部27をロックモードに切換えるとともに、型開閉シリンダ3c,3cを型開方向Foに駆動すれば、可動盤4m及び受圧盤23を一体として型開方向Foにスライド移動させる高速型開を行なうことができる。
【0044】
これに対して、型閉工程では、第一ロック機構部26をロック解除モードに維持し、かつ第二ロック機構部27をロックモードに維持したままで、型開閉シリンダ3c,3cを型閉方向Fcに駆動すれば、可動盤4m及び受圧盤23を一体として型閉方向Fcにスライド移動させる高速型閉を行なうことができる。そして、所定の型閉位置に移動したなら、停止処理(減速処理)を行うとともに、型締工程では、第一ロック機構部26をロックモードに切換え、かつ第二ロック機構部27をロック解除モードに切換えるとともに、型締シリンダ25を駆動すれば、受圧盤23は位置が固定され、可動盤4mはスライド変位が許容されるため、高圧型締を行うことができる。
【0045】
他方、図4に示す型締装置1cは、図3に示した型締装置1cに対して基本構成は同じであるが、可動部支持機構11として、成形機ベッド21の上面に、低摩擦の支持面11fを有する低摩擦プレート35を敷設し、タイバー24…により可動盤4mを支持及びガイドする構成とした点が異なる。したがって、図4における図3と同一部分には同一符号を付して、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0046】
図3に示す可動部支持機構11では、可動盤4mの下面が、支持面11fの上面に接触状態により直接摺動可能に支持されるとともに、受圧盤23の下面も同様に、支持面11fの上面に接触状態により直接摺動可能に支持される。一方、固定盤22に固定した左右一対の型開閉シリンダ3c,3cから突出するピストンロッド3p…の先端は、可動盤4mに設けた開口部を挿通させ、受圧盤23に結合して固定する。これにより、図4に示した型締装置1cと同様の動作を行なわせることができる。このように、可動部支持機構11を構成するに際し、可動部4を接触状態により直接摺動可能に支持する支持面11fを設けて構成すれば、特に、構成の簡易化及びコスト面を考慮した汎用的な可動部支持機構11として構成できる利点がある。
【0047】
その他、図2に示す型締装置1cにおいて、36,36は補助シリンダ、37vはサブタンク37tに備えるプレフィルバルブをそれぞれ示す。なお、射出装置1iは、射出ノズル1inを金型4c(固定型4cc)にノズルタッチすることにより金型4cのキャビティ内に溶融樹脂を射出充填する機能を備える。
【0048】
次に、型締装置1cに用いる本実施形態に係る駆動制御装置Cの構成について、図2及び図5を参照して説明する。
【0049】
駆動制御装置Cは、大別して、型締装置1cを駆動する図2に示す油圧駆動部Cdとこの油圧駆動部Cdを制御する図5に示す制御部7(成形機コントローラCc)により構成する。
【0050】
最初に、油圧駆動部Cdの構成について説明する。油圧駆動部Cdは、油圧駆動源となる油圧ポンプ2と、この油圧ポンプ2から吐出する作動油が供給される油圧回路51とを備える。
【0051】
まず、油圧ポンプ2の構成について説明する。使用する油圧ポンプ2は可変吐出型油圧ポンプ2s(以下、油圧ポンプ2sと略記する)である。油圧ポンプ2sは、図2に示すように、ポンプ本体41とこのポンプ本体41を回転駆動するサーボモータ12s(ポンプモータ12)を備える。サーボモータ12sは、成形機コントローラCcの出力ポートに接続した交流サーボモータを用いる。サーボモータ12sには、このサーボモータ12sの回転数を検出するロータリエンコーダ12eが付設され、このロータリエンコーダ12eは成形機コントローラCcの入力ポートに接続する。
【0052】
また、ポンプ本体41は斜板型ピストンポンプにより構成する。したがって、ポンプ本体41は、斜板42を備え、斜板42の傾斜角(斜板角)を大きくすれば、ポンプ本体41におけるポンプピストンのストロークが大きくなり、吐出流量が増加するとともに、斜板角を小さくすれば、同ポンプピストンのストロークが小さくなり、吐出流量が減少する。よって、斜板角を所定の角度に設定することにより、吐出流量が所定の大きさに固定される固定吐出流量を設定することができる。さらに、斜板42には、コントロールシリンダ43及び戻しスプリング44を付設するとともに、コントロールシリンダ43は、切換弁(電磁弁)45、絞り46、逆止弁47を介してポンプ本体41の吐出口に接続する。これにより、斜板42の角度(斜板角)は、コントロールシリンダ43を制御することにより変更することができる。なお、48はポンプ圧センサ(吐出圧センサ)を示す。
【0053】
そして、ポンプ本体41の吸入口は、オイルタンク49に接続するとともに、ポンプ本体41の吐出口は、後述する油圧回路51に接続する。このような可変吐出型油圧ポンプ2sは、サーボモータ12sの回転数を可変して吐出流量を制御可能、即ち、型開閉シリンダ3c,3cに流入させる作動油の流量を可変制御できるため、実質的なメータイン回路5として機能する。
【0054】
このように、油圧ポンプ2に、ポンプモータ12(サーボモータ12s)の回転数を可変することにより吐出流量を制御可能な油圧ポンプ2sを用いれば、油圧ポンプ2に対するインバータ制御により、メータイン制御を行うことができるため、別途のメータイン回路を不要にできる。これにより、コスト低減及び更なる省エネルギー性の向上に寄与できるとともに、特に、本発明に係る制御方法は、作動油における温度等の物理的な変動により大きく影響を受ける、このような油圧ポンプ2sを搭載した型締装置1cに適用して、より大きな効果を得ることができる。
【0055】
次に、油圧ポンプ2sから吐出する作動油が供給される油圧回路51の構成について説明する。
【0056】
油圧回路51は、主要動作を切換える電磁方向切換弁M1、電磁チェック弁M2、絞りを内蔵する流量制御弁13、オイルタンクTo…を備え、図2に示すように接続して油圧回路51を構成する。この場合、流量制御弁13は、型開閉シリンダ3c,3cから流出する作動油の流量を可変制御可能となるため、メータアウト回路6として機能する。なお、図2に示す流量制御弁13は比例電磁弁を例示するが、より精度の高い制御を行うことができるサーボ弁等であってもよい。このように、メータアウト回路6を構成するに際し、メータアウト制御により流量を可変制御可能な流量制御弁13を用いれば、精度の高い流量制御を行うことができる比例電磁弁やサーボ弁等を使用できるため、応答性及び精度の高い制御を実現できる利点がある。
【0057】
次に、このような構成を有する油圧ポンプ2及び油圧回路51を制御する制御部7を構成する成形機コントローラCcについて、図5を参照して説明する。
【0058】
成形機コントローラCcは油圧式射出成形機1の全体の制御を司る機能を備えるとともに、特に、本実施形態に係る駆動制御装置Cとの関係では制御部7として機能する。したがって、図5に示すように、油圧回路51を構成する、電磁方向切換弁M1、電磁チェック弁M2、流量制御弁13は、それぞれ成形機コントローラCcの出力ポートに接続する。また、前述したように、油圧ポンプ2sに備えるサーボモータ12sは、成形機コントローラCcの出力ポートに接続するとともに、ロータリエンコーダ12eは、成形機コントローラCcの入力ポートに接続する。
【0059】
次に、このような構成を有する型締装置1cにおける型開閉動作を含む本実施形態に係る制御方法について、図5及び図6を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0060】
なお、型開閉動作に際しては、予め、設定した所定の移動速度により可動盤4mを移動させる定速移動区間Zcと、この定速移動区間Zcの終了点(Xs)から漸次減速させる減速移動区間Zdと、この減速移動区間Zdが終了する仮想停止位置Xesを含む速度制御パターンDpが、一例として示す図7のように設定されているものとする。また、図示を省略したが、可動盤4mの移動位置及び移動時間等を検出する位置センサ及びタイマー等の制御に必要な検出手段を備えている。
【0061】
最初に、型開工程及び型閉工程における図7に示す定速移動区間Zcの動作について、図5及び図6を参照して説明する。図5は型開工程における油圧回路51の切換状態を示すとともに、図6は型閉工程における油圧回路51の切換状態を示す。
【0062】
まず、型開工程では、図5に示すように、成形機コントローラCcから付与される弁切換信号により、流量制御弁13はシンボルaに、電磁方向切換弁M1はシンボルaに、電磁チェック弁M2はシンボルaに、それぞれ切換えられる。これにより、油圧ポンプ2sから吐出した作動油は、図5中、矢印方向Koに流れ、電磁方向切換弁M1のシンボルaを介して型開閉シリンダ3c,3cの前油室3cf,3cfに流入して駆動ピストンロッドを型開方向Foに移動させる。また、型開閉シリンダ3c,3cの後油室3cr,3crから流出する作動油は、図5中、矢印方向Krに流れ、電磁チェック弁M2のシンボルa,電磁方向切換弁M1のシンボルa,流量制御弁13のシンボルaを介して型開閉シリンダ3c,3cの前油室3cf,3cfに流入する作動油の供給ラインに合流する。したがって、定速移動区間Zcでは、設定された型開速度となるように、移動速度に対するフィードバック制御が行われる。
【0063】
一方、型閉工程では、図6に示すように、成形機コントローラCcから付与される弁切換信号により、流量制御弁13はシンボルbに、電磁方向切換弁M1はシンボルbに、電磁チェック弁M2はシンボルbに、それぞれ切換えられる。これにより、油圧ポンプ2sから吐出した作動油は、図6中、矢印方向Koに流れ、電磁方向切換弁M1のシンボルb,電磁チェック弁M2のシンボルbをそれぞれ介して型開閉シリンダ3c,3cの後油室3cr,3crに流入して駆動ピストンロッドを型閉方向Fcに移動させる。
【0064】
また、型開閉シリンダ3c,3cの前油室3cf,3cfから流出する作動油は、図6中、矢印方向Krに流れ、第一の経路となる、電磁方向切換弁M1はシンボルb、流量制御弁13のシンボルbを介してオイルタンクToに排出されるとともに、第二の経路となる、流量制御弁13のシンボルbを介してオイルタンクToに排出される。したがって、定速移動区間Zcでは、設定された型閉速度となるように、移動速度に対するフィードバック制御が行われる。
【0065】
次に、本発明の要部となる減速移動区間Zdの制御方法について、図1に示すフローチャートに従って具体的に説明する。
【0066】
今、油圧式射出成形機1では、所定の製品に対する成形工程が継続して行われているものとする(ステップS1)。そして、型開工程又は型閉工程に移行し、型開指令又は型閉指令が出力した場合を想定する(ステップS2)。これにより、型開閉シリンダ3c,3cが駆動され、可動型4cmを支持する可動盤4mが型開方向Fo又は型閉方向Fcに移動を開始するとともに、上述した定速移動区間Zcにより、予め設定された移動速度となるように定速制御される(ステップS3)。
【0067】
また、この定速移動区間Zcでは、可動盤4mの移動速度と移動位置を検出するとともに、検出した移動速度と移動位置に基づき、所定の時間間隔毎に演算により順次予測した、仮想停止位置Xesで移動速度がゼロになる定速移動区間の終了点(Xs)を求め、この定速移動区間Zcの終了点(Xs)を減速開始点Xsとして設定する。即ち、減速区間Zdの距離Ldは、Ld=(移動速度・移動時間)/2と推定されるため、(Xes−Ld)≦移動位置の条件に達したなら、減速開始点(減速開始位置)Xsに達したものと判断する。
【0068】
減速開始位置Xsに達したなら減速区間Zdに移行し、まず、メータイン回路5により流量の抑制(絞り)を開始する(ステップS4,S5)。この減速区間Zdでは、可動盤4m(可動型4cm)の移動位置を一定のサンプリング間隔により順次検出し、検出した移動位置に基づき、移動速度を求める(ステップS6,S7)。そして、検出した移動位置における目標となる移動速度(速度指令値)を前述した速度制御パターンDpに基づき演算により求め、この移動位置における実際の移動速度が目標となる移動速度になるように、メータイン回路5をメータイン制御する(ステップS8)。即ち、油圧ポンプ2sの流量制御を行うことにより移動速度の制御を行う。このように、速度指令(速度指令値)を、検出した可動盤4mの移動位置から速度制御パターンDpに基づいて求めれば、減速を含む移動制御時には、速度制御パターンDpを正確にトレースするため、常にバラツキの少ない正確な速度指令を設定できる。
【0069】
この場合の速度指令値Dmは、次の〔数1〕式により求めることができる。なお、〔数1〕中、Xrsは減速切換位置(図7ではXc)、Xdは検出した移動位置、Vdsは減速開始位置Xsにおける移動速度、Tdは減速区間の移動時間、Vmは減速前の移動速度(速度指令値)である。
【0070】
【数1】
【0071】
また、減速区間Zdでは、移動位置における実際の移動速度と目標となる移動速度(速度指令)の偏差を検出し、この偏差に基づき流量制御弁13に対するフィードバック制御(PID制御)を行う。具体的には、偏差に基づく制御指令をメータアウト回路6を構成する流量制御弁13に付与し、特に、移動速度が速すぎる場合における抑制制御を行う(ステップS9)。
【0072】
この場合の流量制御弁13に付与される制御出力(操作量)Doは、〔数2〕式により得られる。なお、〔数2〕中、SVは設定値(目標速度)、PVtは検出した移動速度、etは偏差(SV−PVt)、Kpは比例ゲイン、Tiは積分時間、Tdは微分時間である。
【0073】
【数2】
【0074】
これにより、可動盤4mの移動速度に対しては、型開閉シリンダ3c…の流入側におけるメータイン回路5による速度制御パターンDpに基づく流量制御(オープンループ制御)と、型開閉シリンダ3c…の流出側におけるメータアウト回路6によるフィードバック制御(クローズドループ制御)のいわば双方向による複合制御が行われ、図7に示す速度制御パターンDpにおける減速移動区間Zcを正確にトレースする形で減速処理が行われることになる。
【0075】
そして、定速移動区間Zcの移動速度の概ね10〜60〔%〕の低速となる移動速度まで低下、即ち、図7にXcで示す切換位置に到達したなら減速移動区間Zdを終了して後続工程となる型締工程に移行する(ステップS10,S11,S12)。なお、例示は、停止位置Xeとして仮想停止位置Xesを設定し、減速移動区間Zdが終了する切換位置Xcを目標位置Xoとしたが、この切換位置Xcを実際に停止させる正規停止位置Xeとして設定してもよい。したがって、停止位置Xeを、仮想停止位置Xesとして設定した場合、目標位置Xoと停止位置Xeは異なるが、停止位置Xeを、実際の正規停止位置Xeとして設定する場合、目標位置Xoと停止位置Xeは同じになる。この目標位置Xeが、本実施形態における型開位置又は型閉位置となる。
【0076】
このように、停止位置Xeとして、正規停止位置Xe又は仮想停止位置Xesを含ませることができるため、通常の停止処理に適用すれば、汎用性のある停止制御に利用できるとともに、仮想停止位置Xesを適用すれば、移動時に、正確な目標位置Xoをリアルタイムで予測でき、より正確な目標位置Xoに到達可能になるなど、多様性のある減速制御に適用できる。
【0077】
特に、仮想停止位置Xesを適用すれば、減速開始点Xs設定するに際し、予め、設定した移動速度により可動部4を移動させる定速移動区間Zcと、この定速移動区間Zcの終了点(Xs)から漸次減速させる減速移動区間Zdと、この減速移動区間Zdが終了する目標位置Xoを含む所定の速度制御パターンDpを設定し、実際の定速移動区間Zcでは、前記設定した移動速度により可動部4を移動させ、かつ検出した移動速度と移動位置に基づき、所定の時間間隔毎に演算により順次予測した仮想停止位置Xesで移動速度がゼロになる定速移動区間Zcの終了点(Xs)を、減速開始点Xsとして設定すれば、目標位置Xoに対する制御精度を高め、移動する可動部4の位置や時間のバラツキを飛躍的に低減できるため、可動部4の高速化を図る場合でも、可動部4のオーバラン等のトラブルを回避できるととともに、同時に成形品質(均質化)の低下要因及び生産性の変動要因を排除できるという基本的な作用効果を享受できる。しかも、ソフトウェア処理により実現できるため、追加的なハードウェア、例えば、ブレーキ動作に必要なブレーキバルブや関連する回路要素などが不要となるため、油圧系回路のコストダウンに寄与できるとともに、回路構成の単純化及び小型化にも寄与できる利点がある。
【0078】
次に、本実施形態の変更例に係る制御方法及び駆動制御装置Cについて、図8及び図9を参照して説明する。
【0079】
図8は、変更例に係る駆動制御装置Cの要部を抽出して示す油圧回路図を示す。変更例に係る駆動制御装置Cは、図2に示した基本形態の駆動制御装置Cの油圧回路51に対して、型開閉シリンダ3c,3cにおける前油室3cf…の油圧Pfを検出する油圧センサ71fを接続するとともに、型開閉シリンダ3c,3cにおける後油室3cr…の油圧Prを検出する油圧センサ71rを接続したものである。各油圧センサ71f,71rは制御部7(成形機コントローラCc)に接続する。48は前述したポンプ圧センサ(吐出圧センサ)であり、油圧ポンプ2sの吐出圧Ppを検出して制御部7に付与する機能を備える。変更例は、以上の油圧Pf,Pr及び吐出Ppを監視した制御を行うものである。したがって、図8において省略した他の駆動制御装置Cにおける油圧回路51の構成は、図2と同じとなる。このため、図8における図2と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0080】
図9は、変更例に係る駆動制御装置Cの制御方法の処理手順を説明するためのフローチャートを示す。
【0081】
油圧式射出成形機1では、所定の製品に対する成形工程が継続して行われているものとする(ステップS21)。そして、今、型開工程に移行し、型開工程が行われている場合を想定する(ステップS22)。なお、型開工程では、前述した図1に示すフローチャートに基づく制御処理が行われる。また、型開工程では、変更例に係る制御方法に従って、型開閉シリンダ3c…の型閉方向Fcにおける前油室3cf…の油圧Pf及び型開閉シリンダ3c…の型開方向Foにおける後油室3cr…の油圧Prを検出し、制御部7により油圧PfとPrの大きさを監視する(ステップS23)。そして、型開動作の際に、後油室3cr…の油圧Prが前油室3cf…の油圧Pfよりも大きいとき、即ち、Pr>Pfのときは、油圧PrとPfの差圧を算出する(ステップS24,S25)。そして、算出した油圧PrとPfの差圧に対応する大きさの速度指令をメータアウト制御によるフィードバック制御の速度指令に加算する制御を行う(ステップS6)。これにより、型開時に後油室3cr…に生じる無用な差圧を解消できるため、型開閉シリンダ3c…の破損等のトラブルを回避できるとともに、急激な挙動変化を抑制できる。
【0082】
一方、型閉工程に移行し、型閉工程が行われている場合を想定する(ステップS27)。なお、型閉工程でも、前述した図1に示すフローチャートに基づく制御処理が行われる。また、型開工程では、変更例に係る制御方法に従って、型開閉シリンダ3c…の型閉方向Fcにおける前油室3cf…の油圧Pf,型開閉シリンダ3c…の型開方向Foにおける後油室3cr…の油圧Pr及び油圧ポンプ2の吐出圧Ppを検出し、制御部7により油圧PfとPrの大きさ及び油圧ポンプ2の吐出圧Ppの大きさを監視する(ステップS28)。そして、型閉動作の際に、前油室3cf…の油圧Pfが負圧のとき、即ち、Pf<0のときは、メータイン制御における流量を増加させるとともに、メータイン制御における開度を絞る制御を行う(ステップS29,S30)。これにより、負圧による流量の一時的増減を解消できるため、移動中の可動盤4mが停止してしまう不具合を回避できる。
【0083】
また、型閉動作の際に、前油室3cf…の油圧Pfが後油室3cr…の油圧Prよりも大きいとき、即ち、Pr<Pfのとき(ステップS31)であって、前油室3cf…の油圧Pfが油圧ポンプ2の吐出圧Ppよりも大きいとき、即ち、Pf>Ppのとき(ステップS32)は、メータイン制御の圧力制御ループにおける圧力指令を、前油室3cf…の油圧Pfの大きさに切換え、型閉時に前油室3cf…に生じる無用な差圧に対して速度指令を絞る制御を行う(ステップS33,S34)。これにより、負荷が大きすぎることにより駆動力が不足する不具合を解消できる。
【0084】
そして、以上の圧力差が生じない場合又は解消した場合は、前述した図1に示したフローチャートに従って成形工程が継続して行われる(ステップS35)。
【0085】
このように、本実施形態に係る油圧式射出成形機の制御方法によれば、基本的な手法として、減速開始点Xsに達したなら型開閉シリンダ3c,3c(油圧駆動アクチュエータ3)のメータイン側を流量制御することにより減速制御処理を開始し、可動型4cmを支持する可動盤4m(可動部4)の移動位置を検出して当該移動位置に対応した速度指令により型開閉シリンダ3c,3cに対するメータイン制御を行うとともに、可動盤4mの移動位置を検出して当該可動盤4mの移動速度を求め、当該移動速度に対して速度指令に一致するように型開閉シリンダ3c,3cに対するメータアウト制御によるフィードバック制御を行うようにしたため、可動盤4mの移動に係わる目標位置Xoに対する制御精度及び安定性を高めることにより成形品の向上を図れるとともに、可動盤4mが移動する際の減速処理の高速化による成形サイクルの短縮化を実現し、生産性及び量産性を高めることができ、特に、可動盤4mの移動に係わる負荷を小さくして省エネルギー性を高める際に用いて最適となる。
【0086】
以上、変更例を含む好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0087】
例えば、可動部支持機構11として、可動部4を接触状態により直接摺動可能に支持する支持面11f及び可動部4をスライド変位自在に支持するリニアガイド機構部11rを例示したが、ローラ用いた構成など、同様の機能を有する他の構成を用いた可動部支持機構11であってもよい。また、メータアウト回路6として流量制御弁13を例示したが、同様のメータアウト制御を実現できる他の油圧回路部品等により置換できる。さらに、油圧ポンプ2として可変吐出型油圧ポンプ2sを例示したが、他型式の油圧ポンプ2を排除するものではない。したがって、この場合、メータイン回路5は別途の油圧回路として構成できる。一方、速度制御パターンDpは、理解を容易にするため、最もシンプルなパターンを一例として挙げたが、複雑なパターンを含む各種パターンを適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、油圧式射出成形機における型締装置をはじめ、射出装置やエジェクタ装置等の各種油圧駆動アクチュエータの制御方法及び駆動制御装置として利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9