【課題を解決するための手段】
【0014】
そのため、本発明は、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との間に鉛直方向隙間を提供し、好ましくは、検出装置の上流に位置付けられる視準トンネルの支援で、第1の画像と第2の画像との間で少なくとも交差散乱を大幅に低減する。
【0015】
本発明の実施形態は、標準的な患者と太り過ぎおよび肥満の患者とにおいて、同時の正面視野および側面視野の向上された良好な臨床品質の画像を作る能力を大幅に高めるように専用とされており、空間分解能、信号対雑音比、および画像のコントラストを向上させる一方で、同時に、好ましくはX線の放射である交差散乱および自己散乱の放射による画像品質の損失を低減する。
【0016】
この目的は、患者の器官のX線撮影の方法であって、前記器官の第1の二次元画像を作るために協働する第1の放射線発生源および第1の検出装置による前記器官の第1の鉛直方向走査と、前記器官の第2の二次元画像を作るために協働する第2の放射線発生源および第2の検出装置による前記器官の第2の鉛直方向走査とを含み、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とは同調して実施され、前記第1の画像および前記第2の画像は、異なる角度の入射に応じて前記患者の前記器官を写し、X線撮影の前記方法は、太り過ぎの患者または肥満の患者で実施され、前記第1の画像と前記第2の画像との間の交差散乱を低減するように、第1の視準トンネルが前記第1の検出装置の上流に位置付けられ、第2の視準トンネルが前記第2の検出装置の上流に位置付けられ、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とが同調して実施されるがそれらの間に時間のずれを伴うように、一方における前記第1の発生源および前記第1の検出装置と、他方における前記第2の発生源および前記第2の検出装置との間に鉛直方向隙間がある、患者の器官のX線撮影の方法で達成される。
【0017】
交差散乱のレベルがそれほど高くないとき、または、装置の全高に対して低すぎる閾によって制限されない大きい鉛直方向隙間に対して余裕があり得るとき、この目的は、患者の器官のX線撮影の方法であって、前記器官の第1の二次元画像を作るために協働する第1の放射線発生源および第1の検出装置による前記器官の第1の鉛直方向走査と、前記器官の第2の二次元画像を作るために協働する第2の放射線発生源および第2の検出装置による前記器官の第2の鉛直方向走査とを含み、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とは同調して実施され、前記第1の画像および前記第2の画像は、異なる角度の入射に応じて前記患者の前記器官を写し、前記第1の画像と前記第2の画像との間の交差散乱を低減するように、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とが同調して実施されるがそれらの間に時間のずれを伴うように、一方における前記第1の発生源および前記第1の検出装置と、他方における前記第2の発生源および前記第2の検出装置との間に鉛直方向隙間がある、患者の器官のX線撮影の方法でも達成される。
【0018】
時間のずれは、所与の遅れを伴って前記第1の鉛直方向走査の後に前記器官の各々の高さに到着する前記第2の鉛直方向走査に対応し、その逆も然りである。
【0019】
入射の異なる角度は、例えば患者の器官の正面視野および側面視野に対応する、例えば2つの直角に交わる方向として、異なる方向(したがって、平行ではない)に対応する。
【0020】
この目的は、患者の器官の第1の鉛直方向走査を実施することで、前記患者の前記器官の第1の二次元画像を作るために協働する第1の放射線発生源および第1の検出装置と、前記患者の前記器官の第2の鉛直方向走査を実施することで、前記患者の前記器官の第2の二次元画像を作るために協働する第2の放射線発生源および第2の検出装置とを備え、前記発生源および前記検出装置は、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とを同調して実施するように協働し、前記第1の画像および前記第2の画像は、異なる角度の入射に応じて前記患者の前記器官を写し、前記第1の画像と前記第2の画像との間の交差散乱を低減するように、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とが同調して実施されるがそれらの間に時間のずれを伴うように、一方における前記第1の発生源および前記第1の検出装置と、他方における前記第2の発生源および前記第2の検出装置との間に鉛直方向隙間がある、X線撮影装置でなおも達成される。
【0021】
好ましい実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み、それらの特徴は、先に提示した本発明のいずれかの目的との組み合わせで、部分的な組み合わせで、または、全体の組み合わせで、別々または一緒に持たせることができる。
【0022】
好ましくは、X線撮影の前記方法は、太り過ぎの患者または肥満の患者で実施される。
【0023】
本発明によるX線撮影の方法は、交差散乱のレベルが高い場合においてより一層興味深い。そのため、太り過ぎの患者の場合、または、肥満の患者の場合ですら、交差散乱のレベルは非常に高く、このX線撮影の方法は非常に興味を引くことになる。
【0024】
好ましくは、各々の画像における交差散乱をさらに低減するように、視準トンネルが各々の検出装置の上流に位置付けられる。
【0025】
好ましくは、前記第1の画像と前記第2の画像との間の交差散乱をさらに低減するように、前記第1の検出装置の上流に位置付けられる第1の視準トンネルと、前記第1の画像と前記第2の画像との間の交差散乱をさらに低減するように、前記第2の検出装置の上流に位置付けられる第2の視準トンネルとがある。
【0026】
そのようにして、両方の放射ビームの鉛直方向隙間と両方の検出装置の有効開口の縮小との間の協調により、交差散乱レベルがさらに低減される。実際、両方の検出装置の有効開口を縮小することで、両方のビームの間の鉛直方向隙間の効果は増幅され、限定された鉛直方向隙間は価値のある交差散乱レベルの低下をすでにもたらしていることになる。
【0027】
好ましくは、前記視準トンネルは、20mm超の深さを有し、好ましくは、40mm超の深さを有する、
【0028】
視準トンネルの深さがより長くなると、交差散乱レベルの低減がより良好になる。
【0029】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は100mm未満であり、好ましくは80mm未満であり、より好ましくは60mm未満である。
【0030】
視準トンネルの深さがより短くなると、キャビン内での患者の利用可能な空間はより重要となり、患者での走査される幅が最も有用となる。
【0031】
そのため、一方における交差散乱レベルの低減と、他方における患者での走査される幅の有用な部分の増加、および、キャビン内での患者の十分に重要な利用可能な空間の維持との間に、妥協点が見出されている。この妥協点は20mmから100mmまでの範囲であり、さらにより良い妥協点は40mmから60mmまでの範囲である。
【0032】
鉛直方向隙間の値と、検出装置による視準トンネルの深さとの間には、相互作用もある。そのため、これらの妥協点は、本発明によって開示された鉛直方向隙間の最良の範囲が使用されることが、なお一層良い。
【0033】
好ましくは、散乱阻止グリッドがいずれの検出装置の上流にも位置付けられない。
【0034】
検出装置の上流の視準トンネルの配置は、第1の画像と第2の画像との間の交差散乱を低減するだけでなく、第1の画像と第2の画像との両方における自己散乱も低減し、それによって、検出装置の上流に位置付けられる通常存在する散乱阻止グリッドを除去することを可能にする。そのようにして、検出装置の上流の視準トンネルの存在は、第一に交差散乱を低減し、第二に自己散乱を低減し、第三に散乱阻止グリッドを除去するという3つの恩恵を可能にする。
【0035】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は、検出装置のいずれの感受面の高さよりも大きく、好ましくは前記高さの2倍よりも大きく、より好ましくは前記高さの4倍よりも大きい。
【0036】
そのようにして、検出装置の感受面の鉛直方向の寸法に対して鉛直方向隙間の寸法を大きくすることによって、第1の画像と第2の画像との間で実際に起こる交差散乱を確実に極めて小さくすることになる。
【0037】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は10mm超であり、好ましくは20mm超であり、より好ましくは30mm超である。
【0038】
鉛直方向隙間がより大きくなると、交差散乱レベルの低減がより良好となる。
【0039】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は、100mm未満であり、より好ましくは60mm未満であり、例えば20mmから50mmまでの好ましい範囲を有し、そのため、両方の鉛直方向走査の間の遅れは限定され、そのため、患者がこの遅れの間に相当に動く可能性は少なく、そのため、第1の画像と第2の画像との間に良好な対応が維持され、そのため、第1の画像と第2の画像との両方からの包括的な三次元再構成の良好な品質が維持される。
【0040】
好ましくは、両方の検出装置の感受面の高さが、2mm〜8mmの範囲であり、好ましくは3mm〜6mmの範囲である。
【0041】
そのようにして、検出装置によって受信される信号の十分なレベルを確保するだけの検出装置の十分な有効開口と、第1の画像と第2の画像との間の高すぎるレベルの交差散乱を回避するためのあまり重要でない有効開口との間で、良好な妥協点が満たされる。
【0042】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は固定される。
【0043】
この実施形態では、この同調を可能にするために要求される放射線機構が単純であるが、時間をずらす走査が主に実施されている。
【0044】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は調整可能である。
【0045】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は、患者の形態に応じて、および/または、患者の器官に応じて、調整可能である。
【0046】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は、前記発生源のそれぞれの有効開口に応じて、および、前記検出装置のそれぞれの有効開口に応じて、調整可能あり、前記有効開口はさらに、患者の形態に応じて、および/または、患者の器官に応じて、調整可能である。
【0047】
この他の実施形態では、患者の形態に関して、および、患者の器官に関して、多くの異なる可能な状況に対して有用である放射線方法の実施の柔軟性が実現されている。
【0048】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は、前記第1の鉛直方向走査の最初には存在せず、前記第2の鉛直方向走査の最初には存在し、前記鉛直方向隙間は、前記第2の鉛直方向走査の最後には存在せず、前記第1の鉛直方向走査の最後には存在する。
【0049】
この実施形態では、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との両方が同じ鉛直方向進路を正確に追従するが、互いとの間に後れを伴ってその経路を追従する。使用していないとき、一方の側にある第1の発生源および第1の検出装置と、他方の側にある第2の発生源および第2の検出装置とは、両方とも同じ鉛直方向高さにある。そのため、第1の鉛直方向走査および第2の鉛直方向走査のために必要とされる進路の各々1つに等しい包括的な必要とされる鉛直方向進路のための全体の要求される高さをより低く保つという利点がある。このように、要求される移動機構の包括的な高さと、放射線装置の全高とは、より低くなる。
【0050】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は、前記第1の鉛直方向走査も前記第2の鉛直方向走査も実施されないときであっても常に存在する。
【0051】
この他の実施形態では、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との両方は、最初と最後とを除いて、同じ鉛直方向進路をその大部分においてのみ追従するが、それらの間に後れを伴って追従する。使用していないとき、一方の側にある第1の発生源および第1の検出装置と、他方の側にある第2の発生源および第2の検出装置とは、同じ鉛直方向高さにない。そのため、機械的により単純なシステムによって、一方の側にある第1の発生源および第1の検出装置と、他方の側にある第2の発生源および第2の検出装置との間に永久的な鉛直方向隙間を確保することができるという利点がある。このように、包括的な要求される移動機構の構造と、放射線装置全体の構造とは、より単純となる。
【0052】
好ましくは、前記患者の形態は、好ましくは離散した選択の数のうちから、前記X線撮影の方法の使用者によって選択される。
【0053】
この実施形態では、患者の形態の種類と、患者の器官の種類とを選択することは、実施者に委ねられる。この手作業の選択は、システム全体をより単純にするが、実施者による補足的なステップを要求し、起こりそうもない誤りであるが可能性はあることの原因となり得る。
【0054】
好ましくは、前記患者の形態は、低減された放射のレベルにおける探査視野走査によって決定される。
【0055】
この他の実施形態では、患者の形態の種類を選択することは、非常に低い放射の線量におけるプレビュー走査の種類を用いることで、自動的に実施される。この自動的な選択は、システム全体を少しだけより複雑にするが、実施者による補足的なステップを回避し、それによって、システムを全体としてより安全にする。しかしながら、ほとんど起こり得ないとしても実施者による誤りが常に可能性として残っている。
【0056】
加えて、探査視野を利用可能にすることで、患者の種類をその患者の厚さを介して選択することを可能にするだけでなく、各々の鉛直方向高さにおける最大厚さを、器官の各々の画像について選択することも可能にする。それによって、電圧およびフィルタ機能が選択できるだけでなく、発生源の管内の電流の値も選択できる。
【0057】
好ましくは、前記検出装置は幾何学的に線形の検出装置であり、前記検出装置は幾何学的に複数のラインでの線形の検出装置である。幾何学的に線形の検出装置は、単一の列またはいくつかの列の並べられた基本の検出ユニットを有する検出装置である。幾何学的に複数のラインの線形の検出装置は、少なくとも2つであるいくつかの平行な列の並べられた基本の検出ユニットを有する検出装置である。複数のラインの線形の検出装置は、その入力信号の線形機能、または、その入力信号の非線形機能のいずれかである出力信号を有し得る。
【0058】
そのようにして、走査画像画素の動力学と画像の信号対雑音比とが向上される。水平方向の平面における1つのラインの検出装置での検討されている鉛直方向の走査を実施することも、可能なままである。
【0059】
使用される検出装置は、より大きな走査画像画素の動力学と画像の信号対雑音比とを得るために、いくつかのフレーム画像を取得するために使用できる、または、特定のTDS(Time Delay Summation: 時間遅れ合計)もしくはTDI(Time Delay Integration: 時間遅れ積分)の速度に従って合計できる、典型的には1本から100本までのいくつかの検出ラインを提示できる。そのため、このような検出装置の有効開口は、典型的には0.1mmから10mmまでの範囲である単一のライン検出装置より大きい。TDSまたはTDIのモードのこの特徴は、同じX線発生源の出力について単一の検出ラインを装備する検出装置と比較して、臨床品質の画像において相当の向上をしばしば提供する。例えば二次元検出装置など、他の種類の検出装置が使用されてもよい。検出装置は、一次元の検出装置であれ二次元の検出装置であれ、固体または気体のいずれかの検出装置であり得る。
【0060】
好ましくは、コリメータが前記発生源の下流に位置付けられる。
【0061】
そのようにして、放出された放射ビームを、より視準の合わせられたもの、つまり、より方向性のあるものにした場合に、交差散乱または自己散乱のいずれかである散乱の包括的なレベルが、さらに低減され得る。
【0062】
好ましくは、前記第1の画像および前記第2の画像は、前記器官の垂直視野であり、好ましくは正面視野および側面視野である。
【0063】
そのため、患者の器官のより信頼できる三次元のモデル化が、これらの第1の画像と第2の画像との両方で再構成され得る。
【0064】
好ましくは、前記放射線発生源はX線発生源であり、前記検出装置はX線検出装置である。
【0065】
交差散乱および自己散乱はX線の放射で特に高くなり、本発明による放射線方法をより一層興味深くする。
【0066】
第1の画像と第2の画像との間の交差散乱は、他方の画像に専用とされた信号から来る一方の画像における散乱である。より正確には、第1の発生源によって放出され、第1の検出装置ではなく第2の検出装置の感受面へと来る特定の方向で患者の器官によって散乱される放射が、交差散乱である。同じようにして、第2の発生源によって放出され、第2の検出装置ではなく第1の検出装置の感受面へと来る特定の方向で患者の器官によって散乱される放射が、交差散乱である。これらの交差散乱された信号は、雑音レベルを上昇させ、そのため信号対雑音比を悪化させる。さらに、交差散乱は、空間分解能、コントラスト、検出量子効率(DQE: Detection Quantum Efficiency)、および他のパラメータを悪化させる。
【0067】
画像における自己散乱は、この画像に専用とされた信号から来るこの画像における散乱である。より正確には、第1の発生源によって放出され、第1の検出装置の感受面へと来る特定の方向で患者の器官によって散乱される放射と、第1の検出装置自体によって散乱される放射とが、自己散乱された信号である。同じようにして、第2の発生源によって放出され、第2の検出装置の感受面へと来る特定の方向で患者の器官によって散乱される放射と、第2の検出装置自体によって散乱される放射とが、自己散乱された信号である。この自己散乱された信号は、雑音レベルを上昇させ、そのため信号対雑音比を悪化させる。さらに、自己散乱は、空間分解能、コントラスト、検出量子効率(DQE)、および他のパラメータを悪化させる。
【0068】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下に列記されている添付の図面を参照しつつ、非限定的な例として提供されている本発明の実施形態の以下の記載から明らかとなる。