特許第6779303号(P6779303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779303
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】患者の器官のX線撮影の方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/02 20060101AFI20201026BHJP
   A61B 6/06 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   A61B6/02 351C
   A61B6/06
【請求項の数】24
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-543105(P2018-543105)
(86)(22)【出願日】2016年2月10日
(65)【公表番号】特表2019-504721(P2019-504721A)
(43)【公表日】2019年2月21日
(86)【国際出願番号】IB2016000273
(87)【国際公開番号】WO2017137792
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】518284905
【氏名又は名称】イオス・イメージング
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ブッシェ
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104095643(CN,A)
【文献】 特開平05−168616(JP,A)
【文献】 特開2010−124832(JP,A)
【文献】 特表2013−525053(JP,A)
【文献】 特開2009−297314(JP,A)
【文献】 実開平03−024300(JP,U)
【文献】 国際公開第99/030615(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/006986(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の器官のX線撮影の方法であって、
前記器官の第1の二次元画像を作るために協働する第1の放射線発生源(1)および第1の検出装置(3)による前記器官の第1の鉛直方向走査と、
前記器官の第2の二次元画像を作るために協働する第2の放射線発生源(2)および第2の検出装置(4)による前記器官の第2の鉛直方向走査と
を含み、
前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とは同調して実施され、
前記第1の二次元画像および前記第2の二次元画像は、異なる角度の入射に応じて前記患者の前記器官を写し、
X線撮影の前記方法は、太り過ぎの患者または肥満の患者で実施され、
前記第1の二次元画像と前記第2の二次元画像との間の交差散乱を低減するように、
第1の視準トンネル(7)が前記第1の検出装置(3)の上流に位置付けられ、
第2の視準トンネル(8)が前記第2の検出装置(4)の上流に位置付けられ、
前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とが同調して実施されるがそれらの間に時間のずれを伴うように、一方における前記第1の放射線発生源(1)および前記第1の検出装置(3)と、他方における前記第2の放射線発生源(2)および前記第2の検出装置(4)との間に鉛直方向隙間(h)がある、患者の器官のX線撮影の方法。
【請求項2】
患者の器官のX線撮影の方法であって、
前記器官の第1の二次元画像を作るために協働する第1の放射線発生源(1)および第1の検出装置(3)による前記器官の第1の鉛直方向走査と、
前記器官の第2の二次元画像を作るために協働する第2の放射線発生源(2)および第2の検出装置(4)による前記器官の第2の鉛直方向走査と
を含み、
前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とは同調して実施され、
前記第1の二次元画像および前記第2の二次元画像は、異なる角度の入射に応じて前記患者の前記器官を写し、
前記第1の二次元画像と前記第2の二次元画像との間の交差散乱を低減するように、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とが同調して実施されるがそれらの間に時間のずれを伴うように、一方における前記第1の放射線発生源(1)および前記第1の検出装置(3)と、他方における前記第2の放射線発生源(2)および前記第2の検出装置(4)との間に鉛直方向隙間(h)がある、患者の器官のX線撮影の方法。
【請求項3】
太り過ぎの患者または肥満の患者で実施される、請求項2に記載のX線撮影の方法。
【請求項4】
各々の二次元画像における交差散乱をさらに低減するように、視準トンネル(7、8)が各々の検出装置(3、4)の上流に位置付けられる、請求項2または3に記載のX線撮影の方法。
【請求項5】
前記視準トンネル(7、8)は、20mm超の深さを有し、または40mm超の深さを有する、請求項1または4に記載のX線撮影の方法。
【請求項6】
散乱阻止グリッドがいずれの検出装置(3、4)の上流にも位置付けられない、請求項4または5に記載のX線撮影の方法。
【請求項7】
前記鉛直方向隙間(h)は、前記検出装置(3、4)のいずれの感受面の高さよりも大きく、または前記高さの2倍よりも大きく、あるいは前記高さの4倍よりも大きい、請求項1から6のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項8】
前記鉛直方向隙間(h)は10mm超であり、または20mm超であり、あるいは30mm超である、請求項1から7のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項9】
前記鉛直方向隙間(h)は100mm未満であり、または80mm未満であり、あるいは60mm未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項10】
両方の検出装置の感受面の高さが、2mm〜8mmの範囲であり、または3mm〜6mmの範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項11】
前記鉛直方向隙間(h)は固定される、請求項1から10のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項12】
前記鉛直方向隙間(h)は調整可能である、請求項1から10のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項13】
前記鉛直方向隙間(h)は、患者の形態に応じて、および/または、患者の器官に応じて、調整可能である、請求項12に記載のX線撮影の方法。
【請求項14】
前記鉛直方向隙間(h)は、前記放射線発生源(1、2)のそれぞれの有効開口に応じて、および、前記検出装置(3、4)のそれぞれの有効開口に応じて、調整可能あり、前記有効開口はさらに、患者の形態に応じて、および/または、患者の器官に応じて、調整可能である、請求項13に記載のX線撮影の方法。
【請求項15】
前記鉛直方向隙間(h)は、前記第1の鉛直方向走査の最初には存在せず、前記第2の鉛直方向走査の最初には存在し、
前記鉛直方向隙間(h)は、前記第2の鉛直方向走査の最後には存在せず、前記第1の鉛直方向走査の最後には存在する、請求項1から14のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項16】
前記鉛直方向隙間(h)は、前記第1の鉛直方向走査も前記第2の鉛直方向走査も実施されないときであっても常に存在する、請求項1から14のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項17】
前記患者の形態は、前記X線撮影の方法の使用者によって選択され、または離散した選択の数のうちから前記X線撮影の方法の使用者によって選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項18】
前記患者の形態は、低減された放射のレベルにおける探査視野走査によって決定される、請求項1から16のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項19】
前記検出装置(3、4)は幾何学的に線形の検出装置(3、4)であり、または前記検出装置(3、4)は幾何学的に複数のラインでの線形の検出装置(3、4)である、請求項1から18のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項20】
コリメータ(5、6)が前記放射線発生源(1、2)の下流に位置付けられる、請求項1から19のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項21】
前記第1の二次元画像および前記第2の二次元画像はそれぞれ前記器官の正面視野および側面視野ある、請求項1から20のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項22】
前記放射線発生源(1、2)はX線放射線発生源(1、2)であり、前記検出装置(3、4)はX線検出装置(3、4)である、請求項1から21のいずれか一項に記載のX線撮影の方法。
【請求項23】
患者の器官の第1の鉛直方向走査を実施することで、前記患者の前記器官の第1の二次元画像を作るために協働する第1の放射線発生源(1)および第1の検出装置(3)と、
前記患者の前記器官の第2の鉛直方向走査を実施することで、前記患者の前記器官の第2の二次元画像を作るために協働する第2の放射線発生源(2)および第2の検出装置(4)と
を備え、
前記放射線発生源(1、2)および前記検出装置(3、4)は、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とを同調して実施するように協働し、
前記第1の二次元画像および前記第2の二次元画像は、異なる角度の入射に応じて前記患者の前記器官を写し、
前記第1の二次元画像と前記第2の二次元画像との間の交差散乱を低減するように、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とが同調して実施されるがそれらの間に時間のずれを伴うように、一方における前記第1の放射線発生源(1)および前記第1の検出装置(3)と、他方における前記第2の放射線発生源(2)および前記第2の検出装置(4)との間に鉛直方向隙間(h)がある、X線撮影装置。
【請求項24】
前記第1の二次元画像と前記第2の二次元画像との間の交差散乱をさらに低減するように、前記第1の検出装置(3)の上流に位置付けられる第1の視準トンネル(7)と、
前記第1の二次元画像と前記第2の二次元画像との間の交差散乱をさらに低減するように、前記第2の検出装置(4)の上流に位置付けられる第2の視準トンネル(8)と
を更に備える、請求項23に記載のX線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の器官のX線撮影の方法と、関連する装置とに関し、詳細には、患者が太り過ぎまたは肥満の患者である場合の、患者の器官のX線撮影の方法と、関連する装置とに関する。詳細には、X線撮影のこの方法は、好ましくは、立体X線撮影方法である。
【背景技術】
【0002】
本発明の分野は、医療用途のための好ましくは骨格である患者の器官の低線量三次元再構成のために、好ましくは正面視野画像と側面視野画像とである少なくとも2つの同時の視野を取得するために、好ましくはX線である放射線、散乱阻止、および修正を最適化するための好ましくは立体X線撮影である二重の走査のシステムおよび方法を取り扱う。
【0003】
このシステムおよび方法は、好ましくはX線である少なくとも2つの放射線の送信に基づく撮像能力を含む医療用放射線装置内で使用されるように専用とされている。これらの能力は、例えば、20keVから200keVの間から成るより高いエネルギーを有するX線スペクトルを放射するX線放射源に少なくとも基づく。典型的な撮像される物体は、体重を支える位置にある患者である。
【0004】
EP2309462に記載されているものなどの走査立体X線撮影システムは、コンピュータ断層撮影走査と比較して600までの線量低減を伴い、また、コンピュータX線撮影システムまたはデジタルX線撮影システムと比較して、単一の視野の画像について10までの線量低減を伴う、脊柱または骨盤などの骨格の解剖学的部位の三次元再構成のための同時の正面画像および側面画像を作るための良好な能力を実証している。しかし、このシステムの最大で利用可能な線量率は、太り過ぎおよび肥満の患者の十分に臨床品質の画像を生成するためにはより大きな制約となるが、そうであっても、太り過ぎおよび肥満の患者は今日では非常に一般的な患者である。
【0005】
太り過ぎおよび肥満の患者においていくらか良好な臨床品質の放射線画像を作るための1つの重要な問題は、直接的なX線ビームがかなり減衰される一方で、大量の散乱されたX線が作り出されることである。そのため、送信される直接的なX線信号が、直接的な二次元の撮像システムにおける散乱されたX線の信号と比較して、典型的には10分の1〜20分の1と、非常に小さくなる可能性がある。
【0006】
一部の散乱阻止グリッドが、この問題を解決するために一般的に使用されるが、それだけで用いられ、それらの効率は十分ではなく、そのため太り過ぎおよび肥満の患者への線量は、臨床品質の画像を得るためには非常に高くなる可能性がある。
【0007】
EP2309462に記載されているものなどの走査立体X線撮影システムは、非常に薄い物体および検出装置の視準を用いて、効率的な散乱されたX線の阻止を実証している。しかし、画像を作るための有用な線量率の比率は、太り過ぎの患者にとって小さすぎることになる。理由のうちの一部は、X線管の限られた出力パワー、および、非常に小さい視準開口である。
【0008】
例えばEP2309462に記載されているこのような先行技術によれば、鉛直方向の走査を実施する放射線方法が記載されている。この放射線方法は、検出装置の上流に位置付けられたコリメータを使用しており、それによって交差散乱および自己散乱の阻止を向上させている。しかしながら、高い阻止率が狭い視準により達成されるが、それによって、検出装置の感受面における受信される放射信号のレベルをかなり低下させる。そのため、少なくとも一部の患者の器官について、散乱阻止の高い比率と、同時に、検出装置の感受面における受信される放射信号の十分なレベルとの間の良好な妥協点を見出すことは、ある程度太り過ぎの患者で使用される場合には難しく、実際に太り過ぎまたは肥満でさえある患者で使用される場合には不可能である。
【0009】
WO2011/138632に記載されているような別の先行技術に記載されているものなど、患者の形態に応じて視準の開口を調整するためのシステムが、EP2309462に記載されている走査立体X線撮影システムの太り過ぎの患者に対する臨床品質の画像を作る能力を高めるために使用できる。
【0010】
しかし、この場合、X線管の出力パワーと検出装置の利用可能な視準開口とは、太り過ぎおよび肥満の患者のうちの全体で増えている異なる形態の人々を網羅するには十分ではない。開口の制約は、検出装置の空間分解能の損失、および、X線撮像の正面視野と側面視野との両方から来る散乱されたX線の量と直接的に結び付けられることになる。同一平面上の同時の正面および側面のX線の視野の使用は、各々の視野の自己散乱の汚染に加えて、交差散乱の特定の問題を作り出すことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP2309462
【特許文献2】WO2011/138632
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、前述の欠点を少なくとも部分的に緩和することである。
【0013】
より具体的には、本発明は、すべての種類またはほとんどの種類の患者の器官について、太り過ぎ患者、および、好ましくは肥満の患者を含むすべての種類またはほとんどの種類の患者の形態に対して、良好な信号対雑音比と良好な画像品質とを得るために、検出装置の感受面における受信される信号のレベルと、十分に高い交差散乱の阻止率との両方を同時に達成することを可能にする放射線方法を提供することを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのため、本発明は、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との間に鉛直方向隙間を提供し、好ましくは、検出装置の上流に位置付けられる視準トンネルの支援で、第1の画像と第2の画像との間で少なくとも交差散乱を大幅に低減する。
【0015】
本発明の実施形態は、標準的な患者と太り過ぎおよび肥満の患者とにおいて、同時の正面視野および側面視野の向上された良好な臨床品質の画像を作る能力を大幅に高めるように専用とされており、空間分解能、信号対雑音比、および画像のコントラストを向上させる一方で、同時に、好ましくはX線の放射である交差散乱および自己散乱の放射による画像品質の損失を低減する。
【0016】
この目的は、患者の器官のX線撮影の方法であって、前記器官の第1の二次元画像を作るために協働する第1の放射線発生源および第1の検出装置による前記器官の第1の鉛直方向走査と、前記器官の第2の二次元画像を作るために協働する第2の放射線発生源および第2の検出装置による前記器官の第2の鉛直方向走査とを含み、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とは同調して実施され、前記第1の画像および前記第2の画像は、異なる角度の入射に応じて前記患者の前記器官を写し、X線撮影の前記方法は、太り過ぎの患者または肥満の患者で実施され、前記第1の画像と前記第2の画像との間の交差散乱を低減するように、第1の視準トンネルが前記第1の検出装置の上流に位置付けられ、第2の視準トンネルが前記第2の検出装置の上流に位置付けられ、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とが同調して実施されるがそれらの間に時間のずれを伴うように、一方における前記第1の発生源および前記第1の検出装置と、他方における前記第2の発生源および前記第2の検出装置との間に鉛直方向隙間がある、患者の器官のX線撮影の方法で達成される。
【0017】
交差散乱のレベルがそれほど高くないとき、または、装置の全高に対して低すぎる閾によって制限されない大きい鉛直方向隙間に対して余裕があり得るとき、この目的は、患者の器官のX線撮影の方法であって、前記器官の第1の二次元画像を作るために協働する第1の放射線発生源および第1の検出装置による前記器官の第1の鉛直方向走査と、前記器官の第2の二次元画像を作るために協働する第2の放射線発生源および第2の検出装置による前記器官の第2の鉛直方向走査とを含み、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とは同調して実施され、前記第1の画像および前記第2の画像は、異なる角度の入射に応じて前記患者の前記器官を写し、前記第1の画像と前記第2の画像との間の交差散乱を低減するように、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とが同調して実施されるがそれらの間に時間のずれを伴うように、一方における前記第1の発生源および前記第1の検出装置と、他方における前記第2の発生源および前記第2の検出装置との間に鉛直方向隙間がある、患者の器官のX線撮影の方法でも達成される。
【0018】
時間のずれは、所与の遅れを伴って前記第1の鉛直方向走査の後に前記器官の各々の高さに到着する前記第2の鉛直方向走査に対応し、その逆も然りである。
【0019】
入射の異なる角度は、例えば患者の器官の正面視野および側面視野に対応する、例えば2つの直角に交わる方向として、異なる方向(したがって、平行ではない)に対応する。
【0020】
この目的は、患者の器官の第1の鉛直方向走査を実施することで、前記患者の前記器官の第1の二次元画像を作るために協働する第1の放射線発生源および第1の検出装置と、前記患者の前記器官の第2の鉛直方向走査を実施することで、前記患者の前記器官の第2の二次元画像を作るために協働する第2の放射線発生源および第2の検出装置とを備え、前記発生源および前記検出装置は、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とを同調して実施するように協働し、前記第1の画像および前記第2の画像は、異なる角度の入射に応じて前記患者の前記器官を写し、前記第1の画像と前記第2の画像との間の交差散乱を低減するように、前記第1の鉛直方向走査と前記第2の鉛直方向走査とが同調して実施されるがそれらの間に時間のずれを伴うように、一方における前記第1の発生源および前記第1の検出装置と、他方における前記第2の発生源および前記第2の検出装置との間に鉛直方向隙間がある、X線撮影装置でなおも達成される。
【0021】
好ましい実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み、それらの特徴は、先に提示した本発明のいずれかの目的との組み合わせで、部分的な組み合わせで、または、全体の組み合わせで、別々または一緒に持たせることができる。
【0022】
好ましくは、X線撮影の前記方法は、太り過ぎの患者または肥満の患者で実施される。
【0023】
本発明によるX線撮影の方法は、交差散乱のレベルが高い場合においてより一層興味深い。そのため、太り過ぎの患者の場合、または、肥満の患者の場合ですら、交差散乱のレベルは非常に高く、このX線撮影の方法は非常に興味を引くことになる。
【0024】
好ましくは、各々の画像における交差散乱をさらに低減するように、視準トンネルが各々の検出装置の上流に位置付けられる。
【0025】
好ましくは、前記第1の画像と前記第2の画像との間の交差散乱をさらに低減するように、前記第1の検出装置の上流に位置付けられる第1の視準トンネルと、前記第1の画像と前記第2の画像との間の交差散乱をさらに低減するように、前記第2の検出装置の上流に位置付けられる第2の視準トンネルとがある。
【0026】
そのようにして、両方の放射ビームの鉛直方向隙間と両方の検出装置の有効開口の縮小との間の協調により、交差散乱レベルがさらに低減される。実際、両方の検出装置の有効開口を縮小することで、両方のビームの間の鉛直方向隙間の効果は増幅され、限定された鉛直方向隙間は価値のある交差散乱レベルの低下をすでにもたらしていることになる。
【0027】
好ましくは、前記視準トンネルは、20mm超の深さを有し、好ましくは、40mm超の深さを有する、
【0028】
視準トンネルの深さがより長くなると、交差散乱レベルの低減がより良好になる。
【0029】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は100mm未満であり、好ましくは80mm未満であり、より好ましくは60mm未満である。
【0030】
視準トンネルの深さがより短くなると、キャビン内での患者の利用可能な空間はより重要となり、患者での走査される幅が最も有用となる。
【0031】
そのため、一方における交差散乱レベルの低減と、他方における患者での走査される幅の有用な部分の増加、および、キャビン内での患者の十分に重要な利用可能な空間の維持との間に、妥協点が見出されている。この妥協点は20mmから100mmまでの範囲であり、さらにより良い妥協点は40mmから60mmまでの範囲である。
【0032】
鉛直方向隙間の値と、検出装置による視準トンネルの深さとの間には、相互作用もある。そのため、これらの妥協点は、本発明によって開示された鉛直方向隙間の最良の範囲が使用されることが、なお一層良い。
【0033】
好ましくは、散乱阻止グリッドがいずれの検出装置の上流にも位置付けられない。
【0034】
検出装置の上流の視準トンネルの配置は、第1の画像と第2の画像との間の交差散乱を低減するだけでなく、第1の画像と第2の画像との両方における自己散乱も低減し、それによって、検出装置の上流に位置付けられる通常存在する散乱阻止グリッドを除去することを可能にする。そのようにして、検出装置の上流の視準トンネルの存在は、第一に交差散乱を低減し、第二に自己散乱を低減し、第三に散乱阻止グリッドを除去するという3つの恩恵を可能にする。
【0035】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は、検出装置のいずれの感受面の高さよりも大きく、好ましくは前記高さの2倍よりも大きく、より好ましくは前記高さの4倍よりも大きい。
【0036】
そのようにして、検出装置の感受面の鉛直方向の寸法に対して鉛直方向隙間の寸法を大きくすることによって、第1の画像と第2の画像との間で実際に起こる交差散乱を確実に極めて小さくすることになる。
【0037】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は10mm超であり、好ましくは20mm超であり、より好ましくは30mm超である。
【0038】
鉛直方向隙間がより大きくなると、交差散乱レベルの低減がより良好となる。
【0039】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は、100mm未満であり、より好ましくは60mm未満であり、例えば20mmから50mmまでの好ましい範囲を有し、そのため、両方の鉛直方向走査の間の遅れは限定され、そのため、患者がこの遅れの間に相当に動く可能性は少なく、そのため、第1の画像と第2の画像との間に良好な対応が維持され、そのため、第1の画像と第2の画像との両方からの包括的な三次元再構成の良好な品質が維持される。
【0040】
好ましくは、両方の検出装置の感受面の高さが、2mm〜8mmの範囲であり、好ましくは3mm〜6mmの範囲である。
【0041】
そのようにして、検出装置によって受信される信号の十分なレベルを確保するだけの検出装置の十分な有効開口と、第1の画像と第2の画像との間の高すぎるレベルの交差散乱を回避するためのあまり重要でない有効開口との間で、良好な妥協点が満たされる。
【0042】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は固定される。
【0043】
この実施形態では、この同調を可能にするために要求される放射線機構が単純であるが、時間をずらす走査が主に実施されている。
【0044】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は調整可能である。
【0045】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は、患者の形態に応じて、および/または、患者の器官に応じて、調整可能である。
【0046】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は、前記発生源のそれぞれの有効開口に応じて、および、前記検出装置のそれぞれの有効開口に応じて、調整可能あり、前記有効開口はさらに、患者の形態に応じて、および/または、患者の器官に応じて、調整可能である。
【0047】
この他の実施形態では、患者の形態に関して、および、患者の器官に関して、多くの異なる可能な状況に対して有用である放射線方法の実施の柔軟性が実現されている。
【0048】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は、前記第1の鉛直方向走査の最初には存在せず、前記第2の鉛直方向走査の最初には存在し、前記鉛直方向隙間は、前記第2の鉛直方向走査の最後には存在せず、前記第1の鉛直方向走査の最後には存在する。
【0049】
この実施形態では、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との両方が同じ鉛直方向進路を正確に追従するが、互いとの間に後れを伴ってその経路を追従する。使用していないとき、一方の側にある第1の発生源および第1の検出装置と、他方の側にある第2の発生源および第2の検出装置とは、両方とも同じ鉛直方向高さにある。そのため、第1の鉛直方向走査および第2の鉛直方向走査のために必要とされる進路の各々1つに等しい包括的な必要とされる鉛直方向進路のための全体の要求される高さをより低く保つという利点がある。このように、要求される移動機構の包括的な高さと、放射線装置の全高とは、より低くなる。
【0050】
好ましくは、前記鉛直方向隙間は、前記第1の鉛直方向走査も前記第2の鉛直方向走査も実施されないときであっても常に存在する。
【0051】
この他の実施形態では、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との両方は、最初と最後とを除いて、同じ鉛直方向進路をその大部分においてのみ追従するが、それらの間に後れを伴って追従する。使用していないとき、一方の側にある第1の発生源および第1の検出装置と、他方の側にある第2の発生源および第2の検出装置とは、同じ鉛直方向高さにない。そのため、機械的により単純なシステムによって、一方の側にある第1の発生源および第1の検出装置と、他方の側にある第2の発生源および第2の検出装置との間に永久的な鉛直方向隙間を確保することができるという利点がある。このように、包括的な要求される移動機構の構造と、放射線装置全体の構造とは、より単純となる。
【0052】
好ましくは、前記患者の形態は、好ましくは離散した選択の数のうちから、前記X線撮影の方法の使用者によって選択される。
【0053】
この実施形態では、患者の形態の種類と、患者の器官の種類とを選択することは、実施者に委ねられる。この手作業の選択は、システム全体をより単純にするが、実施者による補足的なステップを要求し、起こりそうもない誤りであるが可能性はあることの原因となり得る。
【0054】
好ましくは、前記患者の形態は、低減された放射のレベルにおける探査視野走査によって決定される。
【0055】
この他の実施形態では、患者の形態の種類を選択することは、非常に低い放射の線量におけるプレビュー走査の種類を用いることで、自動的に実施される。この自動的な選択は、システム全体を少しだけより複雑にするが、実施者による補足的なステップを回避し、それによって、システムを全体としてより安全にする。しかしながら、ほとんど起こり得ないとしても実施者による誤りが常に可能性として残っている。
【0056】
加えて、探査視野を利用可能にすることで、患者の種類をその患者の厚さを介して選択することを可能にするだけでなく、各々の鉛直方向高さにおける最大厚さを、器官の各々の画像について選択することも可能にする。それによって、電圧およびフィルタ機能が選択できるだけでなく、発生源の管内の電流の値も選択できる。
【0057】
好ましくは、前記検出装置は幾何学的に線形の検出装置であり、前記検出装置は幾何学的に複数のラインでの線形の検出装置である。幾何学的に線形の検出装置は、単一の列またはいくつかの列の並べられた基本の検出ユニットを有する検出装置である。幾何学的に複数のラインの線形の検出装置は、少なくとも2つであるいくつかの平行な列の並べられた基本の検出ユニットを有する検出装置である。複数のラインの線形の検出装置は、その入力信号の線形機能、または、その入力信号の非線形機能のいずれかである出力信号を有し得る。
【0058】
そのようにして、走査画像画素の動力学と画像の信号対雑音比とが向上される。水平方向の平面における1つのラインの検出装置での検討されている鉛直方向の走査を実施することも、可能なままである。
【0059】
使用される検出装置は、より大きな走査画像画素の動力学と画像の信号対雑音比とを得るために、いくつかのフレーム画像を取得するために使用できる、または、特定のTDS(Time Delay Summation: 時間遅れ合計)もしくはTDI(Time Delay Integration: 時間遅れ積分)の速度に従って合計できる、典型的には1本から100本までのいくつかの検出ラインを提示できる。そのため、このような検出装置の有効開口は、典型的には0.1mmから10mmまでの範囲である単一のライン検出装置より大きい。TDSまたはTDIのモードのこの特徴は、同じX線発生源の出力について単一の検出ラインを装備する検出装置と比較して、臨床品質の画像において相当の向上をしばしば提供する。例えば二次元検出装置など、他の種類の検出装置が使用されてもよい。検出装置は、一次元の検出装置であれ二次元の検出装置であれ、固体または気体のいずれかの検出装置であり得る。
【0060】
好ましくは、コリメータが前記発生源の下流に位置付けられる。
【0061】
そのようにして、放出された放射ビームを、より視準の合わせられたもの、つまり、より方向性のあるものにした場合に、交差散乱または自己散乱のいずれかである散乱の包括的なレベルが、さらに低減され得る。
【0062】
好ましくは、前記第1の画像および前記第2の画像は、前記器官の垂直視野であり、好ましくは正面視野および側面視野である。
【0063】
そのため、患者の器官のより信頼できる三次元のモデル化が、これらの第1の画像と第2の画像との両方で再構成され得る。
【0064】
好ましくは、前記放射線発生源はX線発生源であり、前記検出装置はX線検出装置である。
【0065】
交差散乱および自己散乱はX線の放射で特に高くなり、本発明による放射線方法をより一層興味深くする。
【0066】
第1の画像と第2の画像との間の交差散乱は、他方の画像に専用とされた信号から来る一方の画像における散乱である。より正確には、第1の発生源によって放出され、第1の検出装置ではなく第2の検出装置の感受面へと来る特定の方向で患者の器官によって散乱される放射が、交差散乱である。同じようにして、第2の発生源によって放出され、第2の検出装置ではなく第1の検出装置の感受面へと来る特定の方向で患者の器官によって散乱される放射が、交差散乱である。これらの交差散乱された信号は、雑音レベルを上昇させ、そのため信号対雑音比を悪化させる。さらに、交差散乱は、空間分解能、コントラスト、検出量子効率(DQE: Detection Quantum Efficiency)、および他のパラメータを悪化させる。
【0067】
画像における自己散乱は、この画像に専用とされた信号から来るこの画像における散乱である。より正確には、第1の発生源によって放出され、第1の検出装置の感受面へと来る特定の方向で患者の器官によって散乱される放射と、第1の検出装置自体によって散乱される放射とが、自己散乱された信号である。同じようにして、第2の発生源によって放出され、第2の検出装置の感受面へと来る特定の方向で患者の器官によって散乱される放射と、第2の検出装置自体によって散乱される放射とが、自己散乱された信号である。この自己散乱された信号は、雑音レベルを上昇させ、そのため信号対雑音比を悪化させる。さらに、自己散乱は、空間分解能、コントラスト、検出量子効率(DQE)、および他のパラメータを悪化させる。
【0068】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下に列記されている添付の図面を参照しつつ、非限定的な例として提供されている本発明の実施形態の以下の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との間に組み込まれた鉛直方向隙間がなく、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との両方が検出装置の上流に視準トンネルを含み、なおも高すぎる交差散乱レベルをもたらす放射線方法の実施に専用とされた放射線装置の例を示す図である。
図2】第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との間に組み込まれた鉛直方向隙間があり、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との両方が検出装置の上流に視準トンネルを含み、劇的に低減された交差散乱レベルをもたらす放射線方法の実施に専用とされた放射線装置の例を示す図である。
図3】検出装置によって受信された信号の散乱の比率を、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との間に存在する鉛直方向隙間の関数として示す、放射線方法を実施するときの異なる実験条件で得られた異なる曲線の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との間に組み込まれた鉛直方向隙間がなく、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との両方が検出装置の上流に視準トンネルを含み、なおも高すぎる交差散乱レベルをもたらす放射線方法の実施に専用とされた放射線装置の例を示している。
【0071】
患者が体重を支える位置におり、これは、患者が鉛直方向で立っており、水平方向で横たわっていないことを意味する。走査が鉛直方向Zにおいて実施される。実際、X方向において正面画像を提供する正面走査と、Y方向において側面画像を提供する側面走査とがあることになる。
【0072】
放射線装置は、2つの鉛直方向のスライド部11および12を備えている。第1の鉛直方向スライド部11は、正面の鉛直方向走査を実施するために配置されており、第2の鉛直方向スライド部12は、側面の鉛直方向走査を実施するために配置されている。正面の鉛直方向走査は第1の鉛直方向スライド部11に沿って実施され、側面の鉛直方向走査は第2の鉛直方向スライド部12に沿って実施される。
【0073】
第1の鉛直方向スライド部11に沿って、第1の検出チェーンが移動させられ、第2の鉛直方向スライド部12に沿って、第2の検出チェーンが移動させられる。
【0074】
第1の検出チェーンは、放出されたビーム9を患者の器官に向けて狭めるための第1のコリメータ5と関連付けられた第1の放射線発生源1を備えている。明確性のためにここでは描写されていない患者の器官を通過した後、ビーム9は第1の視準トンネル7に入り、その後に第1の検出装置3の感受面に到達する。ビーム9の一部は、第2の視準トンネル8に入る方へと交差散乱された後、第2の検出装置4の感受面に到達する。第1の走査の終了の後、第1の検出装置3の出力には、患者の器官の正面画像である第1の画像がある。考慮されているビーム9の高さは、第1の検出装置3の感受面に到達する前に第1の視準トンネル7に入ることになるビーム9の高さであるため、非常に小さい。ビーム9は、事実上は、平面状のビームとして考慮されてもよい。
【0075】
第2の検出チェーンは、放出されたビーム10を患者の器官に向けて狭めるための第2のコリメータ6と関連付けられた第2の放射線発生源2を備えている。明確性のためにここでは描写されていない患者の器官を通過した後、ビーム10は第2の視準トンネル8に入り、その後に第2の検出装置4の感受面に到達する。ビーム10の一部は、第1の視準トンネル7に入る方へと交差散乱された後、第1の検出装置3の感受面に到達する。第2の走査の終了の後、第2の検出装置4の出力には、患者の器官の側面画像である第2の画像がある。考慮されているビーム10の高さは、第2の検出装置4の感受面に到達する前に第2の視準トンネル8に入ることになるビーム10の高さであるため、非常に小さい。ビーム10は、事実上は、平面状のビームとして考慮されてもよい。
【0076】
検出装置3および4の上流に位置付けられた視準トンネル7および8の存在により、交差散乱された信号の実質的な部分が阻止されるが、この交差散乱された信号の非常に影響する部分は依然として阻止されておらず、検出装置3および4の感受面に到達し、それによって、信号対雑音比と、第1の正面画像および第2の側面画像の両方の品質とを悪化させる。さらに、空間分解能、コントラスト、検出量子効率(DQE)、および他のパラメータも悪化させられる。
【0077】
少なくとも太り過ぎもしくは肥満の患者、少なくとも一部の器官については、トンネル視準7および8のいずれも非常に幅広く、交差散乱のレベルが高すぎ、または、少なくとも太り過ぎもしくは肥満の患者、少なくとも一部の器官については、トンネル視準7および8は非常に狭く、交差散乱のレベルは受け入れ可能であるが、検出装置3および4の感受面における受信される信号が低すぎる。
【0078】
図2は、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との間に組み込まれた鉛直方向隙間があり、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との両方が検出装置の上流に視準トンネルを含み、劇的に低減された交差散乱レベルをもたらす放射線方法の実施に専用とされた放射線装置の例を示している。
【0079】
ここで、ビーム9および10は互いに対して同じ高さにない。ビーム9および10の中間平面同士の高さの間に鉛直方向隙間hがある。この鉛直方向隙間hにより、検出装置3および4の感受面に到達した交差散乱された信号の大部分は、ここで事前に阻止または偏向のいずれかが行われることになる、または、視準トンネル7および8に入ることさえできない。
【0080】
第1のコリメータ5によって狭く視準の合わせられた第1の発生源1によって放出されたビーム9は、鉛直方向隙間hにより、実質的な交差散乱された信号を、第2の視準トンネル8および第2の検出装置4に向けてもはや偏向させることはない。
【0081】
第2のコリメータ6によって狭く視準の合わせられた第2の発生源2によって放出されたビーム10は、鉛直方向隙間hにより、実質的な交差散乱された信号を、第1の視準トンネル7および第1の検出装置3に向けてもはや偏向させることはない。
【0082】
第1の検出チェーンおよび第2の検出チェーンの両方は、第1の鉛直方向スライド部11および第2の鉛直方向スライド部12に沿ってそれぞれ鉛直方向でスライドすることで、上から下へ、または、下から上へと、撮像される患者の器官のそれぞれの走査を実施することになる。
【0083】
典型的な走査速度は、1秒間あたり約7.5cmとでき、これは、19000本のラインに相当する190cmの身長について、約25秒間の走査時間とする。
【0084】
最大の走査速度は、1秒間あたり30cmに近づけることができ、これは、19000本のラインに相当する190cmの身長について、約6.3秒間の走査時間とする。
【0085】
図3は、検出装置によって受信された信号の散乱の比率を、第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との間に存在する鉛直方向隙間の関数として示す、放射線方法を実施するときの異なる実験条件で得られた異なる曲線の例を示している。
【0086】
第1の曲線C1は、検出装置によって受信された信号の百分率で表現された散乱の比率を示しており、これは、mmで表現された第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との間に存在する鉛直方向隙間の関数としての、受信された信号の無用な部分である。
【0087】
検出装置の上流に位置付けられる視準トンネルはない。検出装置の感受面の高さの値は6mmである。放射線発生源における管の電圧は120kVである。太り過ぎの患者をシミュレーションするために、40cmの直径を呈する水バケツが使用された。
【0088】
この曲線C1は、散乱の比率の総計が非常に高いことを示している。この散乱された比率は、例えば10cm超といった鉛直方向隙間の高い値について、少しだけ低下する。これらの条件では、鉛直方向隙間だけに由来する向上は限定される。
【0089】
第2の曲線C2は、検出装置によって受信された信号の百分率で表現された散乱の比率を示しており、これは、mmで表現された第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との間に存在する鉛直方向隙間の関数としての、受信された信号の無用な部分である。
【0090】
検出装置の上流に位置付けられる視準トンネルはない。検出装置の感受面の高さの値は3mmである。放射線発生源における管の電圧は120kVである。太り過ぎの患者をシミュレーションするために、40cmの直径を呈する水バケツが使用された。
【0091】
この湾曲C2は、散乱の比率の総計が非常に高いが、曲線C1の場合ほど高くはないことを示している。そのため、検出装置の感受面の高さを制限することは、結果として、この散乱の比率の低減を伴う。この散乱された比率は、例えば10cm超といった鉛直方向隙間の高い値についてのみ、実質的に低下する。これらの条件では、鉛直方向隙間だけに由来する向上はなおもやや限定される。
【0092】
第3の曲線C3は、検出装置によって受信された信号の百分率で表現された散乱の比率を示しており、これは、mmで表現された第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との間に存在する鉛直方向隙間の関数としての、受信された信号の無用な部分である。
【0093】
検出装置の上流に位置付けられた視準トンネルがある。それらの視準トンネルは、50mmの値を有する深さを呈する。検出装置の感受面の高さの値は3mmである。放射線発生源における管の電圧は120kVである。太り過ぎの患者をシミュレーションするために、40cmの直径を呈する水バケツが使用された。
【0094】
この曲線C3は、鉛直方向隙間が実質的になるとすぐに、なおもまだ非常に低くても、散乱の比率の総計が非常に低くなる。例えば、鉛直方向隙間が2cmより高くなってすぐの時点で、この散乱の比率はすでに非常に低く、20%未満である。しかしながら、鉛直方向隙間がまったくない場合、つまり、鉛直方向隙間が0mmの値の場合、この散乱の比率ははるかに高くなり、実際50%を超える。6mmの検出装置の感受面の高さの場合、あまり価値がないとしても、この肯定的な効果はなおもある。
【0095】
第3の曲線C3のこれらの条件では、視準トンネルと組み合わされた鉛直方向隙間に由来する向上が、鉛直方向隙間だけ、または、視準トンネルだけのいずれかよりもはるかにより良好に現れる。
【0096】
第4の曲線C4は、検出装置によって受信された信号の百分率で表現された散乱の比率を示しており、これは、mmで表現された第1の鉛直方向走査と第2の鉛直方向走査との間に存在する鉛直方向隙間の関数としての、受信された信号の無用な部分である。
【0097】
検出装置の上流に位置付けられた視準トンネルがある。それらの視準トンネルは、50mmの値を有する深さを呈する。検出装置の感受面の高さの値は3mmである。放射線発生源における管の電圧は95kVである。標準的な患者をシミュレーションするために、30cmの直径を呈する水バケツが使用された。
【0098】
この曲線C4は、散乱の比率の総計が、鉛直方向隙間がないときであっても比較的低いが、直方向隙間が実質的になるとすぐに、なおもまだ非常に低くても、さらにより低くなることを示している。例えば、鉛直方向隙間が2cmより高くなるとすぐに、この散乱の比率は15%から5%へと低下する。6mmの検出装置の感受面の高さの場合、あまり価値がないとしても、この肯定的な効果はなおもある。
【0099】
第4の曲線C4のこれらの条件において、視準トンネルと組み合わされた鉛直方向隙間に由来する向上は、鉛直方向隙間だけ、または、視準トンネルだけのいずれかよりも良好に現れるが、この効果は、第4の曲線C4において描写されているような標準的な患者については、第3の曲線C3において描写されているような太り過ぎの患者についてより大幅に小さい。
【0100】
曲線C1〜C4から、第一に、鉛直方向隙間と視準トンネルとの組み合わせが非常に興味深く、鉛直方向隙間だけおよび視準トンネルだけの分離された効果より、散乱の比率を低減するためにはるかに良好であることと、第二に、この散乱の比率の低減が、患者が太り過ぎである場合により一層価値があることとが推定される。
【0101】
本発明は好ましい実施形態を参照して記載されている。しかしながら、多くの変形が本発明の範囲内で可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 第1の放射線発生源
2 第2の放射線発生源
3 第1の検出装置
4 第2の検出装置
5 第1のコリメータ
6 第2のコリメータ
7 第1の視準トンネル
8 第2の視準トンネル
9 ビーム
10 ビーム
11 第1の鉛直方向スライド部
12 第2の鉛直方向スライド部
h 鉛直方向隙間
図1
図2
図3