特許第6779319号(P6779319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779319
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/48 20060101AFI20201026BHJP
   B23Q 1/64 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   B23Q1/48 F
   B23Q1/64 D
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-566674(P2018-566674)
(86)(22)【出願日】2017年2月7日
(86)【国際出願番号】JP2017004442
(87)【国際公開番号】WO2018146728
(87)【国際公開日】20180816
【審査請求日】2019年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴俊
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2000/051779(WO,A2)
【文献】 特開2004−338007(JP,A)
【文献】 特開2003−225806(JP,A)
【文献】 特開昭60−167729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/48
B23Q 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具の姿勢を制御する2つの回転送り軸と、工具に対してワークの位置を相対的に移動する直線送り軸とを有した工作機械において、
先端部に工具を装着する主軸と、
前記主軸を主軸回転軸線周りに回転可能に支持する主軸頭と、
前記主軸頭を前記主軸回転軸線に対して垂直に延びる第1の軸線周りに回転可能に支持する主軸頭支持部と、
前記主軸頭支持部に設けられ、前記主軸頭を前記第1の軸線周りに回転送りする第1の回転送り軸装置と、
前記主軸頭支持部を前記第1の軸線に対して垂直、かつ、前面側から背面側へ斜め上方に鉛直方向に対して傾斜して延びた第2の軸線周りに回転可能に支持するサドルと、
前記サドルの前面側に設けられ、前記主軸頭支持部を前記第2の軸線周りに回転送りする第2の回転送り軸装置と、
を具備することを特徴とした工作機械。
【請求項2】
ベッドと、該ベッドに設けられ前記サドルを水平な左右方向に往復動可能に支持するコラムとを更に具備し、
前記コラムが前記第2の軸線と略平行に延びる傾斜面を有しており、前記サドルが前記傾斜面の上方に配置される請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記主軸頭支持部は、前記サドルの前面に鉛直方向に往復動可能に取り付けられたZ軸スライダに前記第2の軸線周りに回転可能に支持されたC軸回転送り軸に形成された左右一対の腕部を有している請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第2の回転送り軸装置は、前記主軸頭支持部に組み込まれ、前記C軸回転送り軸に結合されたサーボモータを具備する請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記主軸頭は、前記左右一対の腕部に水平な第1の軸線周りに回転可能に支持された旋回軸を有している請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記第1の回転送り軸装置は、前記左右一対の腕部の一方に組み込まれ、前記主軸頭の旋回軸に結合されたサーボモータを具備する請求項5に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具の姿勢を制御する2つの回転送り軸と、工具に対してワークの位置を相対的に移動する3つの直線送り軸とを有した工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
直交3軸の直線送り軸に加えて少なくとも1の回転送り軸を備えた多軸の工作機械には、送り軸の構成によって様々なタイプの工作機械がある。特許文献1には、工具の姿勢を制御する2つの回転送り軸と、工具に対してワークの位置を相対的に移動する3つの直線送り軸とを有した工作機械の一例が記載されている。こうした工作機械では、2つの回転送り軸が、工具を装着する主軸を回転可能に支持する主軸頭と共にワークに対して直線方向に相対送りされる。従って、2つの回転送り軸と主軸頭とを含めた移動体の重量が増加し、該移動体を工作機械のベッドのような固定部に対して移動可能に支持する例えばコラムが変形する。
【0003】
特に、特許文献1の工作機械では、移動体を構成する送り台、サドル、ヘッドホルダおよび主軸ヘッドは、コラムの上端部付近に横架されたクロスレールから、X軸方向に大きなオーバーハングで突出している。そのため、特許文献1の工作機械では、コラムおよびクロスレールが捩じれ変形し、加工精度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−182170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、工具の姿勢を制御する2つの回転送り軸と、工具に対してワークの位置を相対的に移動する3つの直線送り軸とを有した工作機械において、工具を装着する主軸を回転可能に支持する主軸頭を含めた移動体の重心位置を、工作機械のベッドのような固定部からのオーバーハングを小さくした工作機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、工具の姿勢を制御する2つの回転送り軸と、工具に対してワークの位置を相対的に移動する直線送り軸とを有した工作機械において、先端部に工具を装着する主軸と、前記主軸を主軸回転軸線周りに回転可能に支持する主軸頭と、前記主軸頭を前記主軸回転軸線に対して垂直に延びる第1の軸線周りに回転可能に支持する主軸頭支持部と、前記主軸頭支持部に設けられ、前記主軸頭を前記第1の軸線周りに回転送りする第1の回転送り軸装置と、前記主軸頭支持部を前記第1の軸線に対して垂直、かつ、前面側から背面側へ斜め上方に鉛直方向に対して傾斜して延びた第2の軸線周りに回転可能に支持するサドルと、前記サドルの前面側に設けられ、前記主軸頭支持部を前記第2の軸線周りに回転送りする第2の回転送り軸装置とを具備する工作機械が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、工具の姿勢を制御する2つの回転送り軸と、工具に対してワークの位置を相対的に移動する3つの直線送り軸とを有した工作機械において、前記2つの回転送り軸の一方を傾斜させたことによって、2つの回転送り軸と、主軸頭とを含めた移動体のオーバーハングを小さくすることが可能となり、移動体の重量による工作機械の変形を低減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の好ましい実施形態による工作機械の一部を破断して示す側面図である。
図2図1の工作機械の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1、2を参照すると、工具の姿勢を制御する2つの回転送り軸と、工具に対してワークの位置を相対的に移動する3つの直線送り軸とを有した工作機械の一例が示されている。工作機械10は、工場の床面に固定された基台としてのベッド12、ベッド12の後端側(図1では右側)で同ベッド12の上面に立設、固定されたコラム14、ベッド12の前方部分(図1では左側)の上面で前後方向またはY軸方向(図1では左右方向)に移動可能に設けられワークWが固定されるテーブル26、テーブル26の上方に設けられ主軸24を回転可能に支持する主軸頭22、コラム14の頂部で左右方向またはX軸方向(図1では紙面に垂直な方向)に移動可能に設けられたサドル16、サドル16に設けられ主軸頭22を回転軸線Oaを中心として回転可能に支持する主軸頭支持部60を具備している。主軸頭支持部60は、サドル16の前面で上下方向またはZ軸方向に移動可能に取り付けられZ軸スライダ18と、Z軸スライダ18に第2の回転軸線としての傾斜軸線Ocを中心としてC軸方向に回転可能に支持されたC軸旋回軸20とを具備している。
【0010】
コラム14の上端部には一対のX軸ガイドレール28が水平なX軸方向(図1の紙面に垂直な方向)に延設されており、コラム14には、該X軸ガイドレール28上を摺動可能なガイドブロック30が取り付けられている。サドル16をX軸ガイドレール28に沿って往復駆動するX軸送り装置として、X軸方向に延設されたボールねじ32と、該ボールねじの一端に連結されたX軸サーボモータ34が設けられており、サドル16には、ボールねじ32に係合するナット(図示せず)が取り付けられている。また、コラム14の上端には傾斜面14aが形成されている。傾斜面14aはX軸に対して平行に工作機械10の前面側から背面側へ斜め上方に延びている。傾斜面14aの角度は、例えば水平面(XY平面)に対して45°とすることができる。
【0011】
サドル16の前面には、一対のZ軸ガイドレール36が鉛直方向であるZ軸方向に(図1、2では上下方向)に延設されており、Z軸スライダ18には、該Z軸ガイドレール36上を摺動可能なガイドブロック38が取り付けられている。サドル16には、Z軸スライダ18をZ軸ガイドレール36に沿って往復駆動するZ軸送り装置として、Z軸方向に延設されたボールねじ40と、該ボールねじ40の一端に連結されたZ軸サーボモータ44が設けられており、Z軸スライダ18には、ボールねじ40に係合するナットが取り付けられている(図1には、該ナットを取り付けるブラケット42が図示されている)。
【0012】
Z軸スライダ18の下端部には、C軸旋回軸20が軸受50によって傾斜軸線Ocを中心として回転可能に支持されている。傾斜軸線Ocは、X軸に対して垂直に工作機械10の前面側から背面側へ斜め上方に、傾斜面14aに対して略平行に延びている。傾斜軸線Ocと傾斜面14aは同じ方向に傾斜していればよいが、平行に近い方が一層効果的である。Z軸スライダ18は、また、C軸旋回軸20を回転駆動するC軸送り装置または第2の回転送り装置としてC軸サーボモータ52を内蔵している。C軸旋回軸20の正面側の先端部には、傾斜軸線Ocに対して平行に延びる左右一対の腕部20a、20bが形成されている。
【0013】
主軸頭22は、主軸24を主軸軸線Os周りに回転可能に支持し、該主軸24の先端部に工具Tが装着される。C軸旋回軸20の左右一対の腕部20a、20bの間に主軸頭22が配設される。主軸頭22は、両側部に形成されたA軸旋回軸22a、22bによって、傾斜軸線Ocに対して垂直な第1の回転軸線としての回転軸線Oaを中心としてA軸方向に回転可能に主軸頭支持部60のC軸旋回軸20の腕部20a、20bに支持される。A軸送り装置または第1の回転送り装置として、腕部20a、20bの一方(本実施形態では腕部20a)にA軸旋回軸22a、22bの一方(本実施形態ではA軸旋回軸22a)に結合されたA軸サーボモータ21が組み込まれている。
【0014】
なお、傾斜軸線Ocは、主軸24の主軸軸線Osと回転軸線Oaとの交点Oの近傍を通過する。また、図2に示すように、回転軸線Oaが水平のX軸と平行となるC軸送り装置の回転位置をC軸の原点位置とする。更に、C軸が原点位置にあるとき、主軸24の主軸軸線Osが鉛直となるA軸送り装置の回転位置をA軸の原点位置とする。
【0015】
A軸およびC軸が原点位置にあるとき、主軸24端面および該主軸24に装着された工具Tは、ワーク(図示せず)を取り付けるテーブル26に対面する。ベッド12の上面には、一対のY軸ガイドレール46が水平なY軸方向(図1の左右方向)に延設されており、テーブル26には、該Y軸ガイドレール46上を摺動可能なガイドブロック48が取り付けられている。ベッド12には、また、テーブル26をY軸ガイドレール46に沿って往復駆動するY軸送り装置として、Y軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたY軸サーボモータ(図示せず)が設けられており、テーブル26には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。
【0016】
本実施形態によれば、工具の姿勢を制御する2つの回転送り軸と、工具に対してワークの位置を相対的に移動する3つの直線送り軸とを有した工作機械において、前記2つの回転送り軸の一方を形成するC軸旋回軸20をコラム14側に傾斜させたことによって、A軸送り装置とC軸送り装置の2つの回転送り軸と、主軸頭22とを含めた移動体のコラム14に対するオーバーハングを小さくすることが可能となり、該移動体の重心位置をコラム14側にシフトすることが可能となる。これによって、コラム14や、サドル16の変形を低減可能となる。また、前記移動体を送るとき、加減速時にサドル16やZ軸スライダ18の変形が低減される。
【0017】
好ましくは、サドル16の前面に凹部16bを形成し、該凹部16b内にZ軸のボールねじ40を配置するようにできる。更に、主軸頭支持部60の少なくとも一部をサドル16の凹部16b内に配置するようにできる。これによって、前記移動体のコラム14に対するオーバーハングを一層小さくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0018】
10 工作機械
12 ベッド
14 コラム
14a 傾斜面
16 サドル
16b 凹部
18 Z軸スライダ
20 C軸旋回軸
20a 腕部
20b 腕部
21 A軸サーボモータ
22 主軸頭
22a A軸旋回軸
22b A軸旋回軸
24 主軸
26 テーブル
28 X軸ガイドレール
34 X軸サーボモータ
36 Z軸ガイドレール
42 ブラケット
44 Z軸サーボモータ
46 Y軸ガイドレール
50 軸受
52 C軸サーボモータ
60 主軸頭支持部
図1
図2