(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779340
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】レッドシフトを有する新規なベンゾトリアゾール紫外線吸収剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07D 249/20 20060101AFI20201026BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20201026BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
C07D249/20 502
C07D249/20 503
C07D249/20CSP
G02B5/22
G02C7/10
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-104673(P2019-104673)
(22)【出願日】2019年6月4日
(65)【公開番号】特開2019-210289(P2019-210289A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年6月4日
(31)【優先権主張番号】107119280
(32)【優先日】2018年6月5日
(33)【優先権主張国】TW
(31)【優先権主張番号】108109341
(32)【優先日】2019年3月19日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514093464
【氏名又は名称】エバーライト ケミカル インダストリアル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】チェン チ−レン
(72)【発明者】
【氏名】リン ジン−ウェン
(72)【発明者】
【氏名】イェン メン−ホワン
(72)【発明者】
【氏名】ホワン ヤオ−シン
(72)【発明者】
【氏名】チェン コ−ルン
(72)【発明者】
【氏名】チェン チー−ウェイ
【審査官】
安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−105958(JP,A)
【文献】
特開2000−219818(JP,A)
【文献】
米国特許第03738837(US,A)
【文献】
国際公開第2016/021664(WO,A1)
【文献】
特許第6162906(JP,B2)
【文献】
特表平06−505743(JP,A)
【文献】
特表2002−535319(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0065341(US,A1)
【文献】
特表2012−508171(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第03236296(EP,A1)
【文献】
米国特許第07803359(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0236418(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第03173826(EP,A1)
【文献】
特開2015−084891(JP,A)
【文献】
特表2017−503905(JP,A)
【文献】
特表平06−505744(JP,A)
【文献】
Paluszkiewicz, Joanna; Czajkowski, Wojciech; Kazmierska, Mariola; Stolarski, Roland,Reactive dyes for cellulose fibres including UV absorbers,Fibres & Textiles in Eastern Europe,2005年,13(2),76-80
【文献】
Evans, N. A.; Rosevear, J.; Waters, P. J.; Wilshire, J. F. K.,Photoprotection of wool with sulfonated 2-(2'-hydroxyaryl)-2H-benzotriazoles,Polymer Degradation and Stability,1986年,14(3),263-84
【文献】
Collection of Czechoslovak Chemical Communications,1972年,37(9),2967-2971
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
G02B
G02C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式(I)により表される化合物:
【化35】
式中、X
1は‐S‐、
又は‐SO
2‐であり、
R
1はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、
又は1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキ
ルであり、
R
2は‐OR
4であり、ここでR
4はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキル、1個以上の‐OH、‐OC(=O)R
7、‐OR
8、‐NCO、‐C(=O)R
9、‐OC(=O)OR
10若しくは‐NR
11R
12で置換されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又は非置換の若しくは1個以上の‐OH、‐OR
8若しくは‐NH
2で置換された、1個以上の‐O‐、‐NH‐若しくは‐NR
8‐が挿入されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル若しくはC
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニルであり、ここでR
7はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
5〜12シクロアルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、フェニル、ナフチル、C
7〜15フェニルアルキル、又は‐NR
13R
14であり、ここでR
13及びR
14はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
8はC
1〜24直鎖又は分岐アルキルであり、R
9は‐OH、‐OR
15、又は‐NR
16R
17であり、ここでR
15はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル又は1個以上の‐O‐が挿入されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
16及びR
17はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
10はH又はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
11はH又はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
12はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又は‐C(=O)R
18であり、ここでR
18は直鎖若しくは分岐C
2〜18アルケニル、‐OR
19、又は‐NR
20R
21であり、R
19はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル又はC
6〜15アリールであり、R
20及びR
21はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、
R
3はC1〜24直鎖
又は分岐アルキ
ルである。
【請求項2】
R1がH、C1〜15直鎖若しくは分岐アルキル、C2〜10直鎖若しくは分岐アルケニル、C5〜12シクロアルキル、C6〜15アリール、C7〜15フェニルアルキル、又は1〜4個のC1〜4アルキルで置換されたフェニル環を有するC6〜15アリール若しくはC7〜15フェニルアルキルである請求項1の化合物。
【請求項3】
R1がH、C1〜15直鎖若しくは分岐アルキル、C6〜15アリール、C7〜15フェニルアルキル、又は1〜4個のC1〜4アルキルで置換されたフェニル環を有するC6〜15アリール若しくはC7〜15フェニルアルキルである請求項2の化合物。
【請求項4】
R1がH、C1〜15直鎖若しくは分岐アルキル、フェニル、又はナフチルである請求項3の化合物。
【請求項5】
R4がH、C1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、C2〜10直鎖若しくは分岐アルケニル、C5〜12シクロアルキル、C6〜15アリール、C7〜15フェニルアルキル、1〜4個のC1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC6〜15アリール若しくはC7〜15フェニルアルキル、1個以上の‐OH、‐OC(=O)R7、‐OR8、‐NCO、‐C(=O)R9、‐OC(=O)OR10若しくは‐NR11R12で置換されたC1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又は非置換の若しくは1個以上の‐OH、‐OR8若しくは‐NH2で置換された、1個以上の‐O‐、‐NH‐若しくは‐NR8‐が挿入されたC1〜10直鎖若しくは分岐アルキル若しくはC2〜10直鎖若しくは分岐アルケニルであり、ここでR7はH、C1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、C5〜12シクロアルキル、C2〜10直鎖若しくは分岐アルケニル、フェニル、ナフチル、C7〜15フェニルアルキル、又は‐NR13R14であり、ここでR13及びR14はそれぞれH、C1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又はC6〜15アリールであり、R8はC1〜10直鎖又は分岐アルキルであり、R9は‐OH、‐OR15、又は‐NR16R17であり、ここでR15はC1〜10直鎖若しくは分岐アルキル又は1個以上の‐O‐が挿入されたC1〜10直鎖若しくは分岐アルキルであり、R16及びR17はそれぞれH、C1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又はC6〜15アリールであり、R10はH又はC1〜10直鎖若しくは分岐アルキルであり、R11はH又はC1〜10直鎖若しくは分岐アルキルであり、R12はH、C1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又は‐C(=O)R18であり、ここでR18は直鎖若しくは分岐C2〜10アルケニル、‐OR19、又は‐NR20R21であり、R19はC1〜10直鎖若しくは分岐アルキル又はC6〜15アリールであり、R20及びR21はそれぞれH、C1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又はC6〜15アリールである請求項1の化合物。
【請求項6】
R4がH、C1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、C7〜15フェニルアルキル、又は1個以上の‐OH、‐OR8若しくは‐NR11R12で置換されたC1〜10直鎖若しくは分岐アルキルであり、ここでR8はC1〜10直鎖又は分岐アルキルであり、R11及びR12はそれぞれH又はC1〜10直鎖若しくは分岐アルキルである請求項5の化合物。
【請求項7】
R3がC1〜10直鎖又は分岐アルキルである請求項1の化合物。
【請求項8】
R3がtert‐ブチルである請求項7の化合物。
【請求項9】
下記の化学式(I‐1)〜
(I‐5)、(I‐7)及び(I‐10)のいずれかにより表される請求項1の化合物。
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化42】
【化45】
【請求項10】
(A)光誘起劣化を受ける有機材料と、
(B)下記の化学式(I)により表される化合物と、を備える光誘起劣化に対して安定な組成物:
【化46】
式中、X
1は‐S‐、
又は‐SO
2‐であり、
R
1はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、
又は1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキ
ルであり、
R
2は‐OR
4であり、ここでR
4はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキル、1個以上の‐OH、‐OC(=O)R
7、‐OR
8、‐NCO、‐C(=O)R
9、‐OC(=O)OR
10若しくは‐NR
11R
12で置換されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又は非置換の若しくは1個以上の‐OH、‐OR
8若しくは‐NH
2で置換された、1個以上の‐O‐、‐NH‐若しくは‐NR
8‐が挿入されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル若しくはC
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニルであり、ここでR
7はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
5〜12シクロアルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、フェニル、ナフチル、C
7〜15フェニルアルキル、又は‐NR
13R
14であり、ここでR
13及びR
14はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
8はC
1〜24直鎖又は分岐アルキルであり、R
9は‐OH、‐OR
15、又は‐NR
16R
17であり、ここでR
15はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル又は1個以上の‐O‐が挿入されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
16及びR
17はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
10はH又はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
11はH又はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
12はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又は‐C(=O)R
18であり、ここでR
18は直鎖若しくは分岐C
2〜18アルケニル、‐OR
19、又は‐NR
20R
21であり、R
19はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル又はC
6〜15アリールであり、R
20及びR
21はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、
R
3はC1〜24直鎖
又は分岐アルキ
ルである。
【請求項11】
コーティング層を形成するために用いられる請求項10の組成物。
【請求項12】
前記コーティング層が基材上に形成され、前記基材が380nmより大きい波長を有する電磁放射に対して敏感である請求項11の組成物。
【請求項13】
前記化合物の含有量が前記有機材料の全重量に基づき0.1wt%〜30wt%の範囲にある請求項10の組成物。
【請求項14】
下記の化学式(I)により表される化合物を備える青色光遮断メガネ用レンズ:
【化47】
式中、X
1は‐S‐、
又は‐SO
2‐であり、
R
1はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、
又は1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキ
ルであり、
R
2は‐OR
4であり、ここでR
4はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキル、1個以上の‐OH、‐OC(=O)R
7、‐OR
8、‐NCO、‐C(=O)R
9、‐OC(=O)OR
10若しくは‐NR
11R
12で置換されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又は非置換の若しくは1個以上の‐OH、‐OR
8若しくは‐NH
2で置換された、1個以上の‐O‐、‐NH‐若しくは‐NR
8‐が挿入されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル若しくはC
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニルであり、ここでR
7はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
5〜12シクロアルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、フェニル、ナフチル、C
7〜15フェニルアルキル、又は‐NR
13R
14であり、ここでR
13及びR
14はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
8はC
1〜24直鎖又は分岐アルキルであり、R
9は‐OH、‐OR
15、又は‐NR
16R
17であり、ここでR
15はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル又は1個以上の‐O‐が挿入されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
16及びR
17はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
10はH又はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
11はH又はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
12はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又は‐C(=O)R
18であり、ここでR
18は直鎖若しくは分岐C
2〜18アルケニル、‐OR
19、又は‐NR
20R
21であり、R
19はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル又はC
6〜15アリールであり、R
20及びR
21はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、
R
3はC1〜24直鎖
又は分岐アルキ
ルである。
【請求項15】
下記の化学式(I)により表される化合物を備える抗青色光スクリーンプロテクタ:
【化48】
式中、X
1は‐S‐、
又は‐SO
2‐であり、
R
1はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、
又は1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキ
ルであり、
R
2は‐OR
4であり、ここでR
4はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキル、1個以上の‐OH、‐OC(=O)R
7、‐OR
8、‐NCO、‐C(=O)R
9、‐OC(=O)OR
10若しくは‐NR
11R
12で置換されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又は非置換の若しくは1個以上の‐OH、‐OR
8若しくは‐NH
2で置換された、1個以上の‐O‐、‐NH‐若しくは‐NR
8‐が挿入されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル若しくはC
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニルであり、ここでR
7はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
5〜12シクロアルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、フェニル、ナフチル、C
7〜15フェニルアルキル、又は‐NR
13R
14であり、ここでR
13及びR
14はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
8はC
1〜24直鎖又は分岐アルキルであり、R
9は‐OH、‐OR
15、又は‐NR
16R
17であり、ここでR
15はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル又は1個以上の‐O‐が挿入されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
16及びR
17はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
10はH又はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
11はH又はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
12はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又は‐C(=O)R
18であり、ここでR
18は直鎖若しくは分岐C
2〜18アルケニル、‐OR
19、又は‐NR
20R
21であり、R
19はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル又はC
6〜15アリールであり、R
20及びR
21はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、
R
3はC1〜24直鎖
又は分岐アルキ
ルである。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2018年6月5日及び2019年3月19日付けでそれぞれ出願された台湾特許出願第107119280号及び108109341号の利益を主張し、その主題は参照としてここに組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、レッドシフトを有する新規なベンゾトリアゾール紫外線吸収剤及びその用途を提供する。より具体的には、本開示は、優れた紫外線吸収能力を有する新規なベンゾトリアゾール紫外線吸収剤並びにそれを含有する組成物、メガネレンズ、及びスクリーンプロテクタを提供する。
【背景技術】
【0003】
紫外線吸収剤は光安定剤であり、太陽光又は蛍光光源における紫外光を吸収して、紫外線吸収剤を添加した物質を紫外光による損傷から保護することができる。代替的には、紫外線吸収剤を含有するコーティング層が基材上に形成される場合、コーティング層もまた、紫外光による損傷から基材を保護することができる。
【0004】
最近では、既知の紫外線吸収剤は、主としてベンゾトリアゾール紫外線吸収剤、サリチル酸塩紫外線吸収剤、ベンゾフェノン紫外線吸収剤、置換アクリロニトリル紫外線吸収剤、トリアジン紫外線吸収剤、及びヒンダードアミン紫外線吸収剤に分類することができる。これらの紫外線吸収剤のうち、ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤は、高い安定性を有する紫外線吸収剤であり、ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有する物質又は基材を紫外光により生じる損傷から有効に保護することができる。
【0005】
その一方で、市販のベンゾトリアゾール紫外線吸収剤は依然としてそれらの吸収限界を有し、これは約400nmである。従って、新規なベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を提供することが望ましく、その吸収スペクトルはレッドシフトを有するので、ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤の用途を拡大することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、優れた紫外線吸収能力を有する新規化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示により提供される新規化合物は、下記の化学式(I)により表される構造を有する:
【化1】
式中、X
1は‐S‐、‐SO‐、‐SO
2‐、又は‐SO
3‐であり、
R
1はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキル、‐OH、又はアルカリ金属であり、
R
2は‐OR
4又は‐NR
5R
6であり、ここでR
4、R
5、及びR
6はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキル、1個以上の‐OH、‐OC(=O)R
7、‐OR
8、‐NCO、‐C(=O)R
9、‐OC(=O)OR
10若しくは‐NR
11R
12で置換されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又は非置換であり得る若しくは1個以上の‐OH、‐OR
8若しくは‐NH
2で置換され得る、1個以上の‐O‐、‐NH‐若しくは‐NR
8‐が挿入された(interrupted)C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル若しくはC
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニルであり、ここでR
7はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
5〜12シクロアルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、フェニル、ナフチル、C
7〜15フェニルアルキル、又は‐NR
13R
14であり、ここでR
13及びR
14はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
8はC
1〜24直鎖又は分岐アルキルであり、R
9は‐OH、‐OR
15、又は‐NR
16R
17であり、ここでR
15はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル又は1個以上の‐O‐が挿入されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
16及びR
17はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
10はH又はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
11はH又はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
12はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又は‐C(=O)R
18であり、ここでR
18は直鎖若しくは分岐C
2〜18アルケニル、‐OR
19、又は‐NR
20R
21であり、R
19はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル又はC
6〜15アリールであり、R
20及びR
21はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、
R
3はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、又は1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキルであり、
ここでX
1が‐S‐、‐SO‐、又は‐SO
2‐である場合、R
1はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、又は1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキルであり、X
1が‐SO
3‐である場合、R
1はH又はアルカリ金属である。
【0008】
本開示により提供される新規化合物はベンゾトリアゾール化合物であり、紫外線吸収剤として用いることができる。化学式(I)のベンゾ環上のX
1基はS含有基である。化学式(I)のフェニル環上のR
2基は、O含有基又はN含有基である。X
1基とR
2基が協働することにより、この化合物はその吸収スペクトルにおけるレッドシフトを有するので、この化合物はより広い吸収範囲を有するようになる。特に、本開示により提供される新規化合物は、380nm〜430nmの長波長領域において高い吸収作用を有し、最大吸収波長は382nmである。また、本開示により提供される新規化合物はより広い吸収範囲を有し、吸収範囲を450nm以上に拡大することができる。更に、本開示の新規化合物はまた、現在の紫外線吸収剤が290nm〜340nmの領域に有する吸収ピークを有する。従って、本開示により提供される新規化合物は、メガネレンズ又はコンタクトレンズ等の抗青色光材料に適用することができ、更には航空宇宙産業又は自動車産業で用いられる炭素繊維複合材料に適用することができる。
【0009】
本開示の一側面において、X
1は‐S‐、‐SO‐、‐SO
2‐、又は‐SO
3‐であり得る。好ましくは、X
1は‐S‐又は‐SO
2‐である。
【0010】
本開示の一側面において、R
1はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキル、‐OH、又はアルカリ金属であり得る。好ましくは、R
1はH、C
1〜15直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜10直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、又は1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたフェニル環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキルである。より好ましくは、R
1はH、C
1〜15直鎖若しくは分岐アルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、又は1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたフェニル環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキルである。最も好ましくは、R
1はH、C
1〜15直鎖若しくは分岐アルキル、フェニル、又はナフチルである。本開示の一実施例において、R
1はフェニル又はドデシルであるが、本開示はこれに限定されない。
【0011】
本開示の一側面において、R
2は‐OR
4又は‐NR
5R
6であり得、ここでR
4、R
5、及びR
6はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキル、1個以上の‐OH、‐OC(=O)R
7、‐OR
8、‐NCO、‐C(=O)R
9、‐OC(=O)OR
10若しくは‐NR
11R
12で置換されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又は非置換であり得る若しくは1個以上の‐OH、‐OR
8若しくは‐NH
2で置換され得る、1個以上の‐O‐、‐NH‐若しくは‐NR
8‐が挿入された(interrupted)C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル若しくはC
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニルであり、ここでR
7はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
5〜12シクロアルキル、C
2〜18直鎖若しくは分岐アルケニル、フェニル、ナフチル、C
7〜15フェニルアルキル、又は‐NR
13R
14であり、ここでR
13及びR
14はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
8はC
1〜24直鎖又は分岐アルキルであり、R
9は‐OH、‐OR
15、又は‐NR
16R
17であり、ここでR
15はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル又は1個以上の‐O‐が挿入されたC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
16及びR
17はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
10はH又はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
11はH又はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
12はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又は‐C(=O)R
18であり、ここでR
18は直鎖若しくは分岐C
2〜18アルケニル、‐OR
19、又は‐NR
20R
21であり、R
19はC
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル又はC
6〜15アリールであり、R
20及びR
21はそれぞれH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールである。
【0012】
本開示の一側面において、R
2は‐OR
4であり得、R
4はH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜10直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキル、1個以上の‐OH、‐OC(=O)R
7、‐OR
8、‐NCO、‐C(=O)R
9、‐OC(=O)OR
10若しくは‐NR
11R
12で置換されたC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又は非置換であり得る若しくは1個以上の‐OH、‐OR
8若しくは‐NH
2で置換され得る、1個以上の‐O‐、‐NH‐若しくは‐NR
8‐が挿入されたC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル若しくはC
2〜10直鎖若しくは分岐アルケニルであり得、ここでR
7はH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、C
5〜12シクロアルキル、C
2〜10直鎖若しくは分岐アルケニル、フェニル、ナフチル、C
7〜15フェニルアルキル、又は‐NR
13R
14であり、ここでR
13及びR
14はそれぞれH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
8はC
1〜10直鎖又は分岐アルキルであり、R
9は‐OH、‐OR
15、又は‐NR
16R
17であり、ここでR
15はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル又は1個以上の‐O‐が挿入されたC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
16及びR
17はそれぞれH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
10はH又はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
11はH又はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
12はH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又は‐C(=O)R
18であり、ここでR
18は直鎖若しくは分岐C
2〜10アルケニル、‐OR
19、又は‐NR
20R
21であり、R
19はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル又はC
6〜15アリールであり、R
20及びR
21はそれぞれH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールである。好ましくは、R
2は‐OR
4であり、R
4はH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜10直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキル、又は1個以上の‐OH、‐OR
8若しくは‐NR
11R
12で置換されたC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルであり、ここでR
8はC
1〜10直鎖又は分岐アルキルであり、R
11及びR
12はそれぞれH又はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルである。より好ましくは、R
2は‐OR
4であり、R
4はH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、C
7〜15フェニルアルキル、又は1個以上の‐OH、‐OR
8若しくは‐NR
11R
12で置換されたC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルであり、ここでR
8はC
1〜10直鎖又は分岐アルキルであり、R
11及びR
12はそれぞれH又はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルである。本開示の一実施例において、R
2は‐OR
4であり、R
4はH、ベンジル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又は1個の‐OH、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基若しくはジブチルアミノ基で置換されたメチル、エチル若しくはプロピルであるが、本開示はこれらに限定されない。
【0013】
本開示の一側面において、R
2は‐NR
5R
6であり得、R
5及びR
6はそれぞれH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、C
2〜10直鎖若しくは分岐アルケニル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキル、1個以上の‐OH、‐OC(=O)R
7、‐OR
8、‐NCO、‐C(=O)R
9、‐OC(=O)OR
10若しくは‐NR
11R
12で置換されたC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又は非置換の若しくは1個以上の‐OH、‐OR
8若しくは‐NH
2で置換された、1個以上の‐O‐、‐NH‐若しくは‐NR
8‐が挿入されたC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル若しくはC
2〜10直鎖若しくは分岐アルケニルであり、ここでR
7はH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、C
5〜12シクロアルキル、C
2〜10直鎖若しくは分岐アルケニル、フェニル、ナフチル、C
7〜15フェニルアルキル、又は‐NR
13R
14であり、ここでR
13及びR
14はそれぞれH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
8はC
1〜10直鎖又は分岐アルキルであり、R
9は‐OH、‐OR
15、又は‐NR
16R
17であり、ここでR
15はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル又は1個以上の‐O‐が挿入されたC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
16及びR
17はそれぞれH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールであり、R
10はH又はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
11はH又はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルであり、R
12はH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又は‐C(=O)R
18であり、ここでR
18は直鎖若しくは分岐C
2〜10アルケニル、‐OR
19、又は‐NR
20R
21であり、R
19はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル又はC
6〜15アリールであり、R
20及びR
21はそれぞれH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、又はC
6〜15アリールである。好ましくは、R
2は‐NR
5R
6であり、R
5及びR
6はそれぞれH又はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルである。より好ましくは、R
2は‐NR
5R
6であり、R
5及びR
6は同一であり、H又はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルである。本開示の一実施例において、R
2は‐NR
5R
6であり、R
5及びR
6は同一であり、H、メチル、エチル、プロピル、又はブチルであるが、本開示はこれらに限定されない。
【0014】
本開示の一側面において、R
3はH、C
1〜24直鎖若しくは分岐アルキル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、又は1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキルであり得る。好ましくは、R
3はH、C
1〜10直鎖若しくは分岐アルキル、C
5〜12シクロアルキル、C
6〜15アリール、C
7〜15フェニルアルキル、又は1〜4個のC
1〜4アルキルで置換されたアリール環を有するC
6〜15アリール若しくはC
7〜15フェニルアルキルである。より好ましくは、R
3はH又はC
1〜10直鎖若しくは分岐アルキルである。最も好ましくは、R
3はH又はC
1〜6直鎖若しくは分岐アルキルである。本開示の一実施例において、R
3はH又はtert‐ブチルであるが、本開示はこれに限定されない。
【0015】
本開示の一側面において、化学式(I)の化合物は、下記の化学式(I‐1)〜(I‐10)のいずれかにより表され得る。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0016】
本開示において、用語「アルキル」は、直鎖又は分岐アルキルを含み、例えば、C
1〜24アルキル、C
1〜15アルキル、C
1〜10アルキル、C
1〜8アルキル、又はC
1〜6アルキルを含む。アルキルの例としては、アルキル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチル、sec‐ブチル、tert‐ブチル、ペンチル、ネオペンチル、及びヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本開示において、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を有する直鎖又は分岐炭化水素基を含み、例えば、少なくとも1つの二重結合を有する直鎖若しくは分岐C
2〜18炭化水素基、少なくとも1つの二重結合を有する直鎖若しくは分岐C
2〜10炭化水素基、少なくとも1つの二重結合を有する直鎖若しくは分岐C
2〜8炭化水素基、又は少なくとも1つの二重結合を有する直鎖若しくは分岐C
2〜6炭化水素基を含む。アルケニルの例としては、ビニル、プロペニル、及びブテニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本開示において、用語「シクロアルキル」は、一価又は二価の環状飽和炭化水素基を含み、例えば、5〜12個の炭素原子(C
5〜12)、5〜10個の炭素原子(C
5〜10)、又は5〜8個の炭素原子(C
5〜8)を含む。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1,4‐シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、及びアダマンチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本開示において、用語「アリール」は、6員の単芳香環、10員の二重芳香環、又は14員の三重芳香環を含む。アリールの例としては、フェニル、ナフチル、ピレニル、アントリル、及びフェナントリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本開示において、用語「フェニルアルキル」は、本開示において定義されるアルキルが1つのフェニル基と共に付加されている基を参照する。フェニルアルキルの例としては、メチルフェニル(ベンジル)、エチルフェニル、及びプロピルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本開示において、用語「アルカリ金属」は、Li、Na、又はKを含む。
【0022】
加えて、本開示は、更に、(A)光誘起劣化を受ける有機材料と(B)前述の本開示の新規化合物とを備える光誘起劣化に対して安定な組成物を提供する。ここで、その化合物の含有量は、有機化合物の全重量に基づき0.1wt%〜30wt%の範囲にあり得る。
【0023】
本開示の一側面において、前述の組成物は、コーティング層を形成するために用いられる。特に、このコーティング層は基材上に形成され、この基材は380nmより大きい波長を有する電磁放射に対して敏感である。ここで、基材の材料は特に限定されず、ガラス、プラスチック、ポリマー、シリコーンヒドロゲル、樹脂、炭素繊維複合材、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0024】
本開示は、更に、前述の本開示の新規化合物を備える青色光遮断メガネ用レンズを提供する。ここで、そのレンズを形成するための基材を本開示の新規化合物でコーティングすることで、抗紫外線コーティング層又は青色光遮断コーティング層が形成される。
【0025】
加えて、本開示は、更に、前述の本開示の新規化合物を備える抗青色光スクリーンプロテクタを提供する。ここで、そのスクリーンプロテクタを形成するための基材を本開示の新規化合物でコーティングすることで、抗紫外線コーティング層又は青色光遮断コーティング層が形成される。
【0026】
本開示の他の目的、利益、又は新規な特徴は、以下の詳細な説明からより明らかになるはずである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施形態は、添付の図面と共に読まれるときに、本開示の上記及び他の技術的内容、特徴、及び/又は効果を明確に示すために作成されている。特定の実施形態による説明を通して、人々は、本開示が上記の目的を達成するために採用する技術的手段及び効果を更に理解するであろう。また、ここに開示された内容は当業者によって容易に理解されるはずであり実施され得るので、本開示の概念から逸脱しない全ての均等な変更又は修正は添付の請求の範囲により包含されるべきである。
【0028】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲において用いられる単数形の単語「a」及び「the」は、1つ又は複数の対象を含む。
【0029】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲において用いられる単数形の単語「a」及び「the」は、1つ又は複数の対象を含む。
【0030】
本開示は、以下の実施例により説明されるが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するために用いられるものではない。特に明記しない限り、以下の実施例及び比較例において、成分の含有量又は量を表すのに用いられる単位「%」は、その成分の重量に基づく。
【0031】
原料化合物(1a)の合成
【化12】
856.8gのtert‐ブチルヒドロキノンを2.5Lのメタノールに溶解し、続いて206.2gのNaOH、1Lの水、482.3gのクロロプロパノール、及び6.3gのKIを加えた。混合物を還流温度にてN
2雰囲気下で48時間加熱した。混合物を室温まで冷却した後、5.6Lの水を加えて混合物を希釈した。希釈した混合物を4Lのジクロロメタンで抽出し、結合した(combined)ジクロロメタン層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残留物を減圧下で蒸留し、蒸留物をトルエンでの再結晶化により更に精製して396.0gの白色の固体を得た(mp=78.5〜80.5℃)。
【0032】
化合物(1b)の合成
【化13】
《工程(a)》
90.6gの4‐クロロ‐2‐ニトロアニリン及び180mLの濃HClを室温で1時間撹拌し、続いて160mLの水及び300gの氷で希釈した。−5℃でこの混合物に37.7gのNaNO
2(140mLの水に溶解)を滴下して加え、続いて0℃で1時間撹拌した。ヨウ化カリウム‐デンプン試験の結果が陰性を示すまで、スルファミン酸を混合物に加えた。次いで混合物を濾過し、濾液を−5℃〜0℃にて、112.2gの化合物(1a)、60gのNaOH、及び2Lの水を含む混合溶液に滴下して加えた。ジアゾニウム溶液の約1/3を加えた後、400mLのNaOH溶液(10%)をジアゾニウム溶液と共に反応混合物に滴下して加え、ジアゾニウム溶液及びNaOH溶液の添加を同時に終了した。滴下添加工程の間、反応混合物の温度を0℃未満に維持した。滴下添加の終了後、反応混合物を同じ温度に維持して2時間攪拌した後、反応混合物の温度を室温に戻した。アゾ染料をHClでの酸性化並びにそれに続く濾過及び水での洗浄により分離した。アゾ染料は精製せずに次の工程で直接使用した。
【0033】
《工程(b)》
工程(a)で得られたアゾ染料を1.5Lのエタノールに溶解した。グルコース溶液(1.5LのNaOH水溶液(2N)に溶解した180gのグルコース)を反応溶液にゆっくり加え、反応溶液の温度を30℃未満に維持した。反応が完了するまで薄層クロマトグラフィーを保持して反応を追跡した。次いで、165gの活性亜鉛粉末を加えた。混合物を室温で3時間撹拌した後、混合物を1Lの水で希釈し、15時間撹拌した。1時間放置した後、混合物を濾過し、得られた沈殿物を水で洗浄した。次いで、濾過ケーキ中に亜鉛のみが残るまで、濾過ケーキを2Lの熱エタノールで抽出した。抽出物を室温まで冷却し、固体を濾別し、冷エタノールで洗浄した。真空乾燥の後、67.8gの黄色の固体を得た(mp=134.7℃)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 11.35(1H)、7.92(1H)、7.87(1H)、7.80(1H)、7.43(1H)、7.02(1H)、4.20(2H)、3.91(2H)、2.10(2H)、1.80(1H)、1.49(9H)
TGA(5%重量減少):246.23℃
【0034】
化合物(1c)の合成(実施例1、化学式(I‐1))
【化14】
5.9gの化合物(1b)を10.5gのN‐メチルピロリドンに溶解した。この溶液に90℃で4.43gのKOH水溶液(45%)をゆっくり加え、続いて2.04gのチオフェノールを滴下して加えた。次いで、溶液を170℃に加熱した。24時間の水除去の後、溶液を100℃まで冷却した。溶液を75mLのキシレンで抽出し、続いて75mLの水で洗浄した。水の層を15%のHClで酸性化した後、水の層を除去し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。放置後、2.58gの黄色の固体が沈殿した(mp=128.3℃)。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値450.1851、実測値450.1850
1H NMR(400MHz、DMSO‐d6):δ 10.79(1H)、8.07(1H)、7.85(1H)、7.55(1H)、7.55〜7.40(6H)、6.95(1H)、4.56(1H)、4.05(2H)、3.57(2H)、1.88(2H)、1.43(9H)
TGA(5%重量減少):310.77℃
【0035】
化合物(1d)の合成(実施例2、化学式(I‐2))
【化15】
2.58gの化合物(1c)を4.28gのキシレンに溶解し、続いて0.038gのNa
2WO
4及び0.85gのギ酸(90%)を加えた。この溶液を50℃に加熱し、続いて2.54gの過酸化水素(30%)を滴下により加えた。過酸化水素を加えている間の反応温度は85℃を超えることはなく、反応が完了するまで薄層クロマトグラフィーを保持して反応を追跡した。次いで、キシレンと水を加えた後、抽出、乾燥、及び濃縮を行った。メタノール中での再結晶化の後、1.98gの黄色の固体を得た(mp=125.1℃)。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値482.1750、実測値482.1748
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 11.24(1H)、8.71(1H)、7.95〜8.10(3H)、7.90(1H)、7.81(1H)、7.50〜7.70(3H)、7.06(1H)、4.21(2H)、3.91(2H)、2.10(2H)、1.80(1H)、1.48(9H)
TGA(5%重量減少):341.01℃
【0036】
原料化合物(2a)の合成
【化16】
化合物(2a)の合成方法は化合物(1a)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は856.8gのtert‐ブチルヒドロキノン及び706.3gのブロモブタンであり、590.1gの淡黄色の液体を得た。
【0037】
原料化合物(2b)の合成
【化17】
化合物(2b)の合成方法は化合物(1b)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は450.0gの原料化合物(2a)であり、159.6gの黄色の固体を得た(mp=101.6℃)。
HRMS ESI [M−H]
−:計算値372.1479、実測値372.1477
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 11.31(1H)、7.91(1H)、7.85(1H)、7.75(1H)、7.41(1H)、7.02(1H)、4.03(2H)、1.81(2H)、1.54(2H)、1.49(9H)、1.00(3H)
【0038】
化合物(2d)の合成(実施例3、化学式(I‐3))
【化18】
化合物(2d)の合成方法は、化合物(1c)及び化合物(1d)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は40.0gの化合物(2b)及び200mLの1‐ドデカンチオールであり、40.6gの黄色の液体を得た。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値572.3522、実測値572.3531
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 11.24(1H)、8.63(1H)、8.11(1H)、7.92(1H)、7.81(1H)、7.07(1H)、4.05(2H)、3.18(2H)、1.70〜1.90(4H)、1.10〜1.70(20H)、1.00(3H)、0.85(3H)
【0039】
化合物(3d)の合成(実施例4、化学式(I‐4))
【化19】
化合物(3d)の合成方法は、化合物(1c)及び化合物(1d)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は40.0gの化合物(2b)であり、35.4gの黄色の固体を得た(mp=148.3℃)。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値480.1957、実測値480.1964
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 11.21(1H)、8.71(1H)、7.95〜8.05(3H)、7.90(1H)、7.77(1H)、7.40〜7.70(3H)、7.06(1H)、4.03(2H)、1.81(2H)、1.54(2H)、1.48(9H)、1.00(3H)
【0040】
原料化合物(3a)の合成
【化20】
化合物(3a)の合成方法は、化合物(1a)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は856.8gのtert‐ブチルヒドロキノン及び960.0gの臭化ベンジルであり、670.0gの黄色の液体を得た。
【0041】
化合物(4b)の合成
【化21】
化合物(4b)の合成方法は、化合物(1b)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は450.0gの原料化合物(3a)であり、138.0gの黄色の固体を得た(mp=130.7℃)。
HRMS ESI [M−H]
−:計算値406.1322、実測値406.1324
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 11.36(1H)、7.80〜8.00(3H)、7.49(2H)、7.30〜7.45(4H)、7.10(1H)、5.11(2H)、1.48(9H)
【0042】
化合物(4d)の合成(実施例5、化学式(I‐5))
【化22】
化合物(4d)の合成方法は、化合物(1c)及び化合物(1d)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は40.0gの化合物(4b)であり、34.7gの黄色の固体を得た(mp=157.4℃)。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値514.1801、実測値514.1807
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 11.25(1H)、8.71(1H)、7.95〜8.05(3H)、7.80〜7.95(2H)、7.30〜7.70(8H)、7.13(1H)、5.12(2H)、1.48(9H)
【0043】
化合物(5b)の合成(実施例6、化学式(I‐6))
【化23】
《工程(a)》
ここでは化合物(1b)の合成法を用い、出発物質は128.5gの4‐スルホ‐2‐ニトロアニリン及び120.0gの化合物(1a)であった。生成物は精製せずに次の工程で直接使用した。
【0044】
《工程(b)》
工程(a)で得られたアゾ染料を300mLのイソプロパノール及び300mLの水に溶解した。この溶液に30gのNaOHを0℃で加え、続いて60gのホルムアミジンスルフィン酸をゆっくり加えた。80℃で6時間反応させた後、反応溶液の温度を室温に戻した。次いで、70mLのHClを用いて反応溶液を中性に調整した。200mLの溶媒を減圧蒸留で除去し、固体塩を濾別した。抽出及び100mLのトルエンでの洗浄の後、溶液を0℃にて50mLのHClで酸性化し、続いて1gのNaClで再結晶化させた。固体を0℃で濾別して集め、固体の表面を冷エタノールで洗浄した。真空乾燥の後、67.8gの黄色の固体を得た(mp=243.0℃)。
HRMS ESI [M■H]
−:計算値420.1229、実測値420.1243
1H NMR(400MHz、CD
3OD):δ 8.44(1H)、8.03(1H)、7.97(1H)、7.79(1H)、7.00(1H)、4.12(2H)、3.78(2H)、2.04(2H)、1.49(9H)
【0045】
化合物(6b)の合成
【化24】
7.52gの化合物(1b)を20mLのジクロロメタンに溶解し、続いて1.38gのイミダゾール及び5.25gのトリフェニルホスフィンを加えた。全て溶解した後、溶液を0℃まで冷却した。5.10gのヨウ素を加えた後、溶液の温度を室温に戻し、4時間撹拌した。次いで、10mLの飽和Na
2SO
3溶液を加えた後、20mLの0.1N‐HClを加えた。乾燥及び濃縮の後、10mLのアセトニトリル及び1.62gのジ‐n‐ブチルアミンを加えた。50℃で2時間撹拌した後、20mLのトルエン及び20mLの0.1N‐HClを抽出のために加え、続いて減圧蒸留して6.8gの黄色の油状物を得た。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値487.2840、実測値487.2850
1H NMR(400MHz、CD
3OD):δ 11.32(1H)、7.91(1H)、7.86(1H)、7.77(1H)、7.42(1H)、7.02(1H)、4.08(2H)、2.62(2H)、2.43(4H)、1.94(2H)、1.49(9H)、1.42(4H)、1.30(4H)、1.91(6H)
【0046】
化合物(6c)の合成(実施例7、化学式(I‐7))
【化25】
化合物(6c)の合成方法は、化合物(1c)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は3.0gの化合物(6b)であり、2.92gの黄色の油状物を得た。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値561.3263、実測値561.3267
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 11.39(1H)、7.81(1H)、7.75(1H)、7.68(1H)、7.45〜7.50(2H)、7.25〜7.41(4H)、7.00(1H)、4.06(2H)、2.62(2H)、2.43(4H)、1.94(2H)、1.48(9H)、1.43(4H)、1.30(4H)、1.91(6H)
【0047】
化合物(7b)の合成
【化26】
化合物(7b)の合成方法は、化合物(1b)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は500.0gのアセトアミノフェンであり、110.2gの白色の固体を得た。
HRMS ESI [M‐H]
−:計算値301.0492、実測値301.0500
1H NMR(400MHz、d6‐DMSO):δ 10.30(1H)、10.05(1H)、8.24(2H)、8.11(1H)、7.55(1H)、7.50(1H)、7.12(1H)、2.05(3H)
【0048】
化合物(7d)の合成(実施例8、化学式(I‐8))
【化27】
化合物(7d)の合成方法は、化合物(1c)及び化合物(1d)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は40.0gの化合物(7b)であり、41.5gのアセチル保護中間体を得た。アセチル保護を取り除く工程の間、6.5gのNaOHを加え、反応溶液を100mLのエタノール中で5時間還流した。1N‐HClを用いて反応溶液のpHを中性に調整し、反応溶液を氷中に加えて濾過した。最終的に、33.9gのオレンジ色の固体を得た(mp=188.0℃)。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値367.0865、実測値367.0867
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 10.36(1H)、8.72(1H)、8.00〜8.04(3H)、8.89(1H)、7.70(1H)、7.50〜7.63(3H)、7.04(1H)、6.79(1H)、3.66(2H)
【0049】
化合物(8d)の合成(実施例9、化学式(I‐9))
【化28】
化合物(8d)の合成方法は、化合物(1b)〜(1d)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は500.0gの4‐(ジメチルアミノ)フェノールであり、81.1gのオレンジ色の固体を得た(mp=175.8℃)。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値395.1178、実測値395.1177
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 10.35(1H)、8.72(1H)、8.00〜8.04(3H)、7.89(1H)、7.70(1H)、7.50〜7.61(3H)、7.11(1H)、6.90(1H)、2.99(6H)
【0050】
化合物(9d)の合成(実施例10、化学式(I‐10))
【化29】
25.6gの化合物(4d)をオートクレーブ内に置き、300mLのトルエンに溶解させた。反応溶液に0.26gの炭素上パラジウム(10%)を加えた。200psiのH
2を導入した。反応溶液を50℃で6時間攪拌した。反応溶液の温度を室温に戻した後、反応溶液を濾過し、500mLの冷メタノールで再結晶化して、18.6gの黄色の固体を得た(mp=151.4℃)。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値424.1326、実測値424.1345
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 11.14(1H)、8.70(1H)、7.98〜8.05(3H)、7.89(1H)、7.77(1H)、7.50〜7.63(3H)、7.00(1H)、4.70(1H)、1.47(9H)
【0051】
化合物(10b)の合成(比較例1)
【化30】
化合物(10b)の合成方法は、化合物(1b)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は73.2gの2‐ニトロアニリン及び112.2gの化合物(1a)であり、67.8gの黄色の固体を得た(mp=140.6℃)。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値342.1818、実測値342.1821
1H NMR(400MHz、DMSO‐d6):δ 11.04(1H)、8.08(2H)、7.55〜7.65(3H)、6.96(1H)、4.58(1H)、4.08(2H)、3.58(2H)、1.90(2H)、1.45(9H)
TGA(5%重量減少):250.01℃
【0052】
化合物(11c)の合成(比較例2)
【化31】
化合物(11c)の合成方法は、化合物(1c)の合成方法と同様である。ここで用いた出発物質は10gのEversorb(登録商標)73であり、11.5gの白色の固体を得た(mp=134.0℃)。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値390.1640、実測値390.1631
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 11.54(1H)、8.02(1H)、7.81(1H)、7.68(1H)、7.45〜7.55(2H)、7.30〜7.45(4H)、7.16(1H)、2.37(3H)、1.48(9H)
TGA(5%重量減少):269.79℃
【0053】
化合物(11d)の合成(比較例3)
【化32】
化合物(11d)の合成方法は、化合物(1d)の合成方法と同様である。化合物(1d)の合成に用いた出発物質である化合物(1b)を5.3gの化合物(11c)に変化させ、4.7gの淡黄色の固体を得た(mp=142.5℃)。
HRMS ESI [M+H]
+:計算値422.1538、実測値422.1531
1H NMR(400MHz、DMSO‐d6):δ 10.55(1H)、8.85(1H)、8.27(1H)、8.00〜8.15(2H)、7.97(1H)、7.60〜7.80(4H)、7.25(1H)、2.32(3H)、1.44(9H)
TGA(5%重量減少):309.50℃
【0054】
比較例4:BASF社製Tinuvin(登録商標)CarboProtect(登録商標)
【化33】
【0055】
比較例5:Everlight Chemical社製Eversorb(登録商標)73
【化34】
【0056】
試験例1:紫外線吸収スペクトルの比較
実施例1〜9及び比較例1〜3のベンゾトリアゾール化合物並びに比較例4及び5の紫外線吸収剤を20ppmの溶液(メタノール:THF=90:10)へと配合した(formulated)。次いで、溶液の吸光度を紫外可視分光光度計(UV‐2600;島津インスツルメンツ社)で測定し、その結果を下記の表1に示した。最大吸収波長(λ
max)は、長波長領域における吸収ピーク(nm)の吸収波長であり、有効吸収限界は、吸光度が0.05である吸収波長(nm)である。
【0058】
表1に示す結果から、実施例1〜9の化合物の有効吸収限界は420nmに達し、より広い吸収範囲を有することができ、実施例1〜9の化合物は、市販の紫外線吸収剤が波長290nm〜340nmの領域において有する吸収ピークを有する。また、実施例9の化合物の有効吸収限界は、500nm以上に最も広がり得る。比較例5の化合物と比較して、フェニル環上にO含有基又はベンゾ環上にS含有基を有する比較例1〜3の化合物は、それらの吸収スペクトル上でわずかにレッドシフトを有する。しかし、フェニル環上のO含有基とベンゾ環上のS含有基は協働しないので、比較例1〜3の化合物の最大吸収波長は、実施例1〜9の化合物の最大吸収波長よりも短い。
【0059】
試験例2:透過率試験
0.2gの実施例1及び2並びに比較例1〜3で調製されたベンゾトリアゾール紫外線吸収剤と比較例5の紫外線吸収剤とをそれぞれ10gの混合溶媒(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート:トルエン:酢酸n‐ブチル:酢酸エチル=20:50:20:10、重量比で調製)に溶解した。室温で撹拌した後、紫外線吸収剤を含有する透明な溶液を得た。主成分としての20gのポリウレタン(製品モデル:A‐7121)と10gの硬化剤(製品モデル:バイエルN75)とを予め混合し、続いて室温で攪拌して二液型ポリウレタンワニス(2K PU)を得た。前述の透明溶液をそれぞれ2K PUワニスに加えた。室温で撹拌した後、紫外線吸収剤を含有する透明なワニスを得た。
【0060】
複数のガラス基材をコーティング機(KCC101;RK Print‐Coat Instruments Ltd.)上に置き、スプレッディングロッド(Rodタイプ#18)を用いて前述の透明ワニスをそれぞれガラス基材の表面上に塗布し、約40μmの厚みを有する湿潤被膜を形成した。室温で8時間乾燥した後、それぞれのベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有する透明コーティング層でコーティングしたガラス基材を得た。次に、得られたガラス基材の透過率(T%)を、紫外可視分光光度計(UV‐2600;島津インスツルメンツ社)を用いて測定した。その結果を下記の表2に示す。表2には、遮断波長(透過率=99%)及び420nmで測定された透過率を示した。
【0061】
表2:透明コーティング層でコーティングしたガラス基材の透過率の測定結果
【表2】
【0062】
表2に示す結果から、420nmにおける実施例1及び2の化合物の透過率は、比較例1〜3の化合物の透過率よりはるかに低かった。これらの結果は、実施例1及び2の化合物の吸収がレッドシフトを有していることを示す。
【0063】
結論として、本開示により提供される新規化合物の吸収スペクトルはレッドシフトを示す。380nmを超える波長を有する電磁放射に敏感な基材に本開示の新規化合物を塗布してコーティング層を形成する場合、そのコーティング層は380nmを超える波長を有する光を効果的に吸収することができる。従って、本開示により提供される新規化合物を用いて青色光遮断コーティング層又は抗紫外線コーティング層を形成することにより、青色光遮断効果又は抗紫外線効果を有するメガネレンズ又はスクリーンプロテクタ等の製品を提供することができる。
【0064】
本開示をその好ましい実施形態に関連して説明してきたが、以下に特許請求される本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの他の可能な修正及び変形がなされ得ることが理解されるべきである。