(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779360
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】可変伝動装置のための遊星可変装置
(51)【国際特許分類】
F16H 15/38 20060101AFI20201026BHJP
【FI】
F16H15/38
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-502141(P2019-502141)
(86)(22)【出願日】2016年4月4日
(65)【公表番号】特表2019-510950(P2019-510950A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】EP2016057323
(87)【国際公開番号】WO2017174106
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2019年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】518349916
【氏名又は名称】マザロ・エンフェー
【氏名又は名称原語表記】MAZARO NV
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリプ・デ・マジエール
(72)【発明者】
【氏名】ルカス・プレセント
【審査官】
小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−082659(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/040523(WO,A1)
【文献】
特開昭55−063048(JP,A)
【文献】
実開昭48−033984(JP,U)
【文献】
中国特許出願公開第104776180(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 15/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変速度及びトルク比を具現化する可変伝動装置に適用可能な遊星可変装置であって、リングホイール(16)、少なくとも2つの遊星ホイール(19)、及び太陽ホイール(17)を含み、
・前記リングホイール及び前記太陽ホイールは、共通の中心対称軸(18)に対して配置された軸対称体であり、
・前記遊星ホイール(19)は、シャフト部分(14)と、前記シャフト部分の周りで回転可能なホイール部分(12)とを含み、前記シャフト部分は、長手方向中心軸(25)を有し、前記長手方向中心軸は、前記ホイール部分(12)の回転軸でもあり、
・前記遊星ホイール(19)それぞれは、前記中心対称軸(18)と前記遊星ホイール(19)の前記ホイール部分(12)の前記回転軸(25)とによって形成される平面に対して基本的に垂直に向けられるヒンジ軸(24)の周りで自由に回転可能であり、
・前記リングホイールと前記遊星ホイールと前記太陽ホイールとの間の相互作用は、前記リングホイール(16)及び前記太陽ホイール(17)に設けられた回転面(20、21)上における、前記遊星ホイールのホイール部分(12)それぞれに設けられた回転面の回転動作を通じて生じ、遊星ホイール(19)との接線接点で前記リングホイール及び前記太陽ホイールの前記回転面(20、21)に接する2つの平面(26、27)は、前記ヒンジ軸(24)の周りの前記遊星ホイール(19)の角度位置に無関係に、前記中心対称軸(18)の点(28)で前記遊星ホイール(19)の前記ホイール部分(12)の前記回転軸(25)と交差し、
前記遊星ホイール(19)それぞれの前記ヒンジ軸(24)は、一定の偏心量で前記中心対称軸(18)に対して偏心しており、
前記ホイール部分(12)と前記ヒンジ軸(24)との距離が、一定とされ、
前記遊星可変装置が、前記リングホイール(16)と前記太陽ホイール(17)との相対的な移動によって前記遊星ホイール(19)の角度位置(γ)と変速比とを変化させるように構成されている、遊星可変装置。
【請求項2】
前記ヒンジ軸(24)は、前記遊星ホイール(19)の前記回転軸(25)と交差する、請求項1に記載の遊星可変装置。
【請求項3】
前記ヒンジ軸(24)は、前記遊星ホイール(19)の前記ホイール部分(12)と、前記遊星ホイールの前記回転軸(25)と前記中心対称軸(18)との前記点(28)との間に配置される、請求項1又は2に記載の遊星可変装置。
【請求項4】
半径方向拡張部(30)が設けられた中心シャフト(15)を含み、前記遊星ホイール(19)の前記シャフト部分(14)は、ヒンジ継手(23)を介して前記半径方向拡張部に回転可能に接続される、請求項3に記載の遊星可変装置。
【請求項5】
前記遊星ホイール(19)の前記シャフト部分(14)は、前記半径方向拡張部(30)に対して前記ヒンジ継手(23)の周りで回転可能なフォーク(22)が設けられる、請求項4に記載の遊星可変装置。
【請求項6】
前記フォーク(22)は、本体(33)と、中央脚部分(31)と、2つの側部脚部分(32)とを有し、前記中央脚部分(31)と2つの前記側部脚部分(32)とは、前記本体(33)から離れて延び、かつ前記ヒンジ継手(23)に接続される、請求項5に記載の遊星可変装置。
【請求項7】
前記ヒンジ軸(24)は、前記遊星ホイールの前記回転軸(25)と前記中心対称軸(18)との前記点(28)から見て、前記遊星ホイールの前記ホイール部分(12)を越えて配置される、請求項1又は2に記載の遊星可変装置。
【請求項8】
前記リングホイール(16)及び前記太陽ホイール(17)と同軸に取り付けられたサポートホイール(40)を含み、前記遊星ホイールの前記シャフト部分(14)は、ヒンジ継手(41)を介して前記サポートホイールに回転可能に接続される、請求項7に記載の遊星可変装置。
【請求項9】
前記ヒンジ継手は、前記サポートホイール(40)に組み込まれる、請求項8に記載の遊星可変装置。
【請求項10】
前記遊星ホイール(19)の少なくとも1つの前記ホイール部分(12)の前記回転面は、前記ホイール部分の前記回転軸(25)を通る平面による断面で見て円形の形状を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の遊星可変装置。
【請求項11】
前記遊星ホイール(19)の少なくとも1つの前記ホイール部分(12)の前記回転面は、前記ホイール部分の前記回転軸(25)を通る平面による断面で見て非円形形状を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の遊星可変装置。
【請求項12】
前記遊星ホイール(19)の少なくとも1つの前記ホイール部分(12)は、1つ又は複数の軸受(13、13’)を介して前記シャフト部分(14)の周りで回転し、前記1つ又は複数の軸受は、インナーリング及びアウターリングを有し、前記ホイール部分(12)は、前記軸受の少なくとも1つの前記アウターリングに直接取り付けられる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の遊星可変装置。
【請求項13】
前記遊星ホイール(19)の前記ホイール部分(12)は、1つ又は複数の軸受(13、13’)を介して前記シャフト部分(14)の周りで回転し、前記1つ又は複数の軸受は、インナーリング及びアウターリングを有し、前記ホイール部分(12)は、前記軸受の少なくとも1つの前記アウターリングと共に単一の部片を形成する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の遊星可変装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の1つ又は複数の遊星可変装置を含む可変又は両方向性可変伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路車両、オフロード車両、農業機械、車両の駆動補助装置、ならびに静止装置又は可動装置の発電機及びコンプレッサなどの産業用構成要素を駆動するための可変伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドリルのない遊星可変装置に基づく幾つかの可変伝動装置システムを開示している。この可変装置は、互いに逆回転することで動力を伝達し、必要なトルクを伝達するために十分な力で互いに押し付けられるトラクションホイールを含む。回転面は、いわゆるドリルのない回転動作、すなわち接触領域で回転面の滑りがない回転を得るように設計される。
【0003】
特許文献1の遊星可変装置が
図1に示されている。システム自体は、より複雑な可変伝動装置のサブシステムとして機能する。可変装置は、主シャフト1、リング
ホイール2、遊星
ホイール3のセット、及び太陽
ホイール4を含む。1つの遊星
ホイール3のみが図面に示されている。リング
ホイール、主シャフト、及び太陽
ホイールは、同軸に、すなわち共通中心軸5に対して取り付けられる。リング
ホイール及び太陽
ホイールは、例えば、油圧力によって互いに押し付けられる。遊星
ホイールに収容され、主シャフトとの幾何学的連結を具現化する機械構成要素は、遊星フォーク7と呼称され、この遊星フォーク7は、ヒンジ8を介して主シャフトに接続される。ヒンジ軸9は、主シャフトの軸5と交差し、主シャフトの軸5に直角である。リング
ホイール及び太陽
ホイールの回転面は、遊星
ホイールの旋回位置に関係なく、ドリルのない回転動作が保証されるように設計される。
図1の実施形態では、これは、トラクトリックス曲線に基づいて回転面を具現化することで達成される。リング
ホイール及び太陽
ホイールの軸に対する遊星
ホイールの角度位置を変えることで変速比が変わる。これは、主シャフトをリング
ホイール及び太陽
ホイールに対して軸方向に移動させる一方、リング
ホイール及び/又は太陽
ホイールの軸方向移動も可能にすることで達成し得る。
図1に示す距離Lは、
図1の可変装置において一定である。距離Lは、一方の点が遊星
ホイールとリング
ホイール又は太陽
ホイールとの間の接点であり、他方の点が主軸5とヒンジ軸9との交点である2つの点間の距離である。
【0004】
ヒンジ軸9が共通中心軸5に交差し、及び同じ点を通って共通中心軸5と交差するヒンジ軸をすべて有する複数の遊星フォークがあるため、遊星フォークの構造は、遊星
ホイールのすべての傾斜角で互いの干渉を回避するように構成されなければならない。さらに、変速比を極値に変えるとき、リング
ホイール2又は太陽
ホイール4のいずれかが遊星フォークに接近する。異なる速度で回転する遊星フォークとリング
ホイール又は太陽
ホイールとの間の接触を回避しなければならない。これらの構成要素間の接触を回避するという観点からのより厳しい要求は、より小型のフォーク設計によって満たし得るが、フォークの大きさは、フォークに作用する力に耐えるのに十分に大きくなければならない。
【0005】
従って、
図1のシステムのフォークは、複数の相反する要求を満たす必要があることが明白である。従って、フォークの設計は複雑なものになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/146748号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、添付の特許請求の範囲に記載した遊星可変装置に関する。本発明は、例えば、可変速度及びトルク比を具現化する可変伝動装置に適用可能な遊星可変装置であって、リング
ホイール、少なくとも2つの遊星
ホイール、及び太陽
ホイールを含み、
・リング
ホイール及び太陽
ホイールは、共通の中心対称軸に対して配置された軸対称体であり、
・遊星
ホイールは、シャフト部分と、シャフト部分の周りで回転可能な
ホイール部分とを含み、シャフト部分は、長手方向中心軸を有し、前記長手方向中心軸は、
ホイール部分の回転軸でもあり、
・各遊星
ホイールは、共通中心軸と遊星
ホイールの
ホイール部分の回転軸とによって形成される平面に対して基本的に垂直に向けられるヒンジ軸の周りで自由に回転可能であり、
・
ホイール間の相互作用は、リング
ホイール及び太陽
ホイールに設けられた回転面上における、遊星
ホイールの
ホイール部分それぞれに設けられた回転面の回転動作を通じて生じ、遊星
ホイールとの接線接点でリング
ホイール及び太陽
ホイールの回転面に接する2つの平面は、ヒンジ軸の周りの前記遊星
ホイールの角度位置に無関係に、共通中心軸の点で前記遊星
ホイールの
ホイール部分の回転軸と交差し、
遊星
ホイールそれぞれのヒンジ軸は、共通中心軸から外れた位置にある、遊星可変装置に関する。
【0008】
遊星
ホイールの角度位置に無関係に、接平面が中心軸の点で
ホイール部分の回転軸と交差するという条件から、リング
ホイール及び遊星
ホイールの回転面の形状が決まる。この形状は円形ではない。従って、遊星
ホイールの角度位置の変化は、中心軸の方向のリング
ホイールと太陽
ホイールとの間の相対距離の変化に対応する。これは、リング
ホイール及び太陽
ホイールが、前記方向に互いに相対的に移動可能であるように構成されることで対処される。動作時、太陽
ホイール及びリング
ホイールは、軸方向に、すなわち中心軸の方向に互いに押し付けられる。機械式スロープ、又は油圧式若しくは空気式ピストン、又はそれ自体当技術分野で公知である、この目的のために適切な他の任意の手段など、太陽
ホイール及びリング
ホイールを互いに押し付ける手段は、遊星可変装置の一部又は可変装置が組み込まれるトランスミッションの一部であり得る。
【0009】
実施形態によれば、ヒンジ軸は、遊星
ホイールの回転軸と交差する(すなわち遊星
ホイールの回転軸と共有の点を有する)。
【0010】
さらなる実施形態によれば、ヒンジ軸は、遊星
ホイールの
ホイール部分と、遊星
ホイール回転軸と中心軸との交点との間に配置される。
【0011】
後者の場合、可変装置は、半径方向拡張部が設けられた中心シャフトを含み、遊星
ホイールのシャフト部分は、ヒンジ継手を介して半径方向拡張部に回転可能に接続される。遊星
ホイールのシャフト部分は、半径方向拡張部に対してヒンジ継手の周りで回転可能なフォークが設けられ得る。
【0012】
実施形態によれば、フォークは、本体と、中央脚部分と、2つの側部脚部分とを有し、3つの脚部分は、本体から離れて延び、かつヒンジ継手に接続される。
【0013】
さらなる実施形態によれば、ヒンジ軸は、遊星
ホイール回転軸と中心軸との交点から見て、遊星
ホイールの
ホイール部分を越えて配置される。
【0014】
後者の場合、可変装置は、リング
ホイール及び太陽
ホイールと同軸に取り付けられたサポート
ホイールを含み得、遊星
ホイールのシャフト部分は、ヒンジ継手を介してサポート
ホイールに回転可能に接続される。ヒンジ継手は、サポート
ホイールに組み込まれ得る。
【0015】
さらなる実施形態によれば、遊星
ホイールの少なくとも1つの
ホイール部分の回転面は、前記
ホイール部分の回転軸を通る平面による断面で見て円形の形状を有する。あるいは、遊星
ホイールの少なくとも1つの
ホイール部分の回転面は、前記
ホイール部分の回転軸を通る平面による断面で見て非円形形状を有し得る。
【0016】
実施形態によれば、遊星
ホイールの少なくとも1つの
ホイール部分は、1つ又は複数の軸受を介してシャフト部分の周りで回転し、前記1つ又は複数の軸受は、インナーリング及びアウターリングを有し、
ホイール部分は、軸受の少なくとも1つのアウターリングに直接取り付けられる。
【0017】
さらなる実施形態によれば、遊星
ホイールの
ホイール部分は、1つ又は複数の軸受を介してシャフト部分の周りで回転し、前記1つ又は複数の軸受は、インナーリング及びアウターリングを有し、
ホイール部分は、軸受の少なくとも1つのアウターリングと共に単一の部片を形成する。
【0018】
本発明は、同様に、本発明による1つ又は複数の遊星可変装置を含む可変又は両方向性可変伝動装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】特許文献1に開示された遊星可変装置を示す。
【
図2】本発明の第1の実施形態による遊星可変装置を示す。
【
図3】
図2に示すものと同様の実施形態の3D図である。
【
図4】本発明の好ましい実施形態によるリング
ホイール及び太陽
ホイールの回転面の形状を計算するのに使用される幾何学パラメータを示す。
【
図5】本発明の好ましい実施形態によるリング
ホイール及び太陽
ホイールの回転面の形状を計算するのに使用される幾何学パラメータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、特許文献1の可変装置と同様の構成要素を有するが、ヒンジ軸が中心軸に交差しない遊星可変装置に関する。本発明者らは、それでもなお、基本的にドリルのない回転動作が生じるようにリング
ホイール及び太陽
ホイールの回転面を設計することが可能であることを見出した。幾つかの好ましい実施形態に基づいて説明するように、ヒンジを偏心位置に配置することで上記の制約が解消される。
【0021】
図2は、本発明による遊星可変装置の第1の実施形態を示す。先行技術の設計と同様に、可変装置は、主シャフト15と、共通中心軸18の周りに同軸に配置された軸対称体であるリング
ホイール16及び太陽
ホイール17と、リング
ホイール及び太陽
ホイールの回転面20及び21上で基本的にドリルなく回転するように構成された遊星
ホイール19のセットとを含む。機械式スロープ又は油圧式若しくは空気式ピストンなどの適切な手段(図示せず)により、リング
ホイール16及び太陽
ホイール17が互いに押し付けられる。各遊星
ホイール19は、シャフト部分14と、スラスト軸受13及びラジアル軸受13’を介してシャフト14の周りで回転する
ホイール部分12とが設けられる。シャフト部分の長手軸25は、遊星
ホイール19の
ホイール部分12の回転軸でもある。遊星
ホイールのシャフト部分14は、ヒンジ継手23の周りで旋回可能なフォーク22で終端するため、遊星
ホイールは、全体としてヒンジ軸24の周りで自由に回転可能である。先行技術のシステムと異なり、ヒンジ軸24は、共通中心軸18から外れた位置にある。換言すると、ヒンジ軸24は、共通中心軸18に交差せず、すなわち、ヒンジ軸24は、中心軸18に対して偏心して配置される。
図2の実施形態では、これは、主シャフト15に固定され、好ましくは主シャフト15と共に単一体を形成する半径方向拡張部30のリムにフォーク22を取り付けることで達成される。ヒンジ軸24は、交差する遊星
ホイールの回転軸25と中心軸18とによって形成される平面に対して垂直に向けられる。それにもかかわらず、設計者は、遊星可変装置が動作時に負荷を受けた場合、構成要素の小変形を補償するためにこの垂直な向きからわずかにずらすことができる。換言すると、垂直な向きは、少なくとも可変装置の動作中に達成される。
【0022】
図3は、3つの遊星
ホイール19及びリング
ホイール16を示し、遊星
ホイール19が見えるようにするために、太陽
ホイールを削除したこの実施形態の3D図を示す。この実施形態では、半径方向拡張部は、主シャフト15を取り囲む円形拡張部30である。
図3に示すように、ここで、異なる遊星
ホイール19のためのフォーク22は、主シャフト15の円周の周りの異なる地点に配置される。これは、フォーク22がもはや先行技術の設計に見られるように互いに接近して配置される必要がないことから、フォーク22の構造及び設計をより容易にする。単純化されたフォークの構造のため、これらの要素は、負荷に耐えるために必要な大きさ及び機械特性の観点から最適化され得、一方で同時に、対象とすることができる傾斜角の範囲の拡大を可能にし、これは、達成可能なトルク及び速度比の範囲の拡大につながる。例えば、
図3に示す実施形態のように、フォークは、本体33と、本体から離れて延び、かつヒンジ継手23に接続された3つの脚部分、すなわち中央脚部分31及び2つの側部脚部分32とを設けられ得る。この構造は、主として複数のフォークを組み込まなければならない空間が制限されるため、2つの脚部分のみを装備した
図1の先行技術の設計のフォークと異なる。
図3に示す3脚構造は、遊星
ホイール19の軸に沿った重要な引張り力に耐え、ならびに回転接触時のトラクション力に起因する傾倒モーメントに耐える能力を高める。
【0023】
図2の実施形態では、線26及び27は、それぞれ遊星
ホイール19との接点におけるリング
ホイール16及び太陽
ホイール17の回転面20及び21への接線である。図面に示すように、これらの接線及び遊星
ホイールの回転軸25は、共通中心軸18の点28で交差し、これは、基本的にドリルのない回転運動を得るための条件である。より一般的には、これらの回転面20/21との遊星
ホイールの2つの接線接点における回転面20/21への接平面26/27は、ヒンジ軸24の周りの遊星
ホイール19の角度位置に関係なく、中心軸18の点28で遊星
ホイール回転軸25と交差する。「接線接点」とは、遊星
ホイールの
ホイール部分12の回転面がリング
ホイール16及び太陽
ホイール17の回転面に接する点を意味する。この場合にも、負荷下での構成要素の変形を補償するために、中心軸18の点28で交差するというこの条件からわずかに逸脱することができ、すなわち、点28で交差するという条件は、少なくとも可変装置の動作時に達成される。
【0024】
先行技術のシステムと異なり、交点28と2つの回転面20/21上の接点との間の距離Lは、本発明による遊星可変装置においてもはや一定ではない。それにもかかわらず、以下に示すように、ドリルのない回転動作を行うための回転面20及び21の形状を計算することが可能である。
【0025】
図4は、計算に必要な複数の寸法を示す、
図2の実施形態の構成要素の幾何学像を示す。出発点は、
図2の図面の平面で見たとき、遊星
ホイールの回転面の断面が半径R
poの円形形状を有するという仮定である。従って、遊星
ホイールは、ディスクを囲む半径R
poのトーラス形状の面を設けられ、ヒンジ軸24までの長さL
pの中心接続部(遊星
ホイールシャフト14をモデル化したもの)をさらに設けられた半径R
piのディスクとして
図4にモデル化される。さらに、説明において、円形面の代わりに遊星
ホイールの回転面の代替の面形状が可能であるが、ここで提示する計算のために、円形断面の遊星
ホイールの回転面から始めることを指摘しておく。
【0026】
計算に必要なさらなるパラメータは、以下の通りである。
・Eは、ヒンジの偏心距離、すなわちヒンジ軸24と共通中心軸18との間の距離である。
・Lは、上記の可変長さである。
・γは、変速比を制御するパラメータとして使用される遊星
ホイールの回転軸25の傾きである。
【0027】
図4は、図の平面に断面で示す太陽
ホイールの回転面の曲線21の形状を計算するために必要とされる角度及び距離をさらに示す。様々なパラメータは、直行するX−Yの平面内で規定され、X=0は、ヒンジ軸24の位置によって規定される。
【0028】
長さLの接線が遊星
ホイールの回転軸25と同じ点28で中心軸に交差するという必要条件を表すことにより、太陽
ホイールの回転面21の形状を規定する式のセットは、以下の通りである。
【0030】
これらの式は、
図4に示す幾何形状から導出できる以下の関係を適用することにより、変数γの関数として記述することができる。
【0032】
これらの関係を式(1)及び(2)に代入することにより、連立方程式を解くことができる。好ましくは、これは、数値法により、γの連続する増分(step)に対する曲線の点の座標を計算し、y座標のy
Zの増分Δy
Zを得ることで行われる。
【0034】
当業者には公知のように、上記の方法で式を解くために適切なソフトウェアを利用することができる。本発明者らは、この計算から得られた
図2に示す曲線形状が、太陽
ホイールにわたる遊星
ホイールの基本的にドリルのない回転動作を実際に可能にすることを見出した。
【0035】
図5は、リング
ホイールの回転面20の計算に必要とされる角度及び寸法を示す。ここで、解かれる式は、以下の通りである。
【0037】
式(3)及び(4)を数値的に解くことは、式(1)及び(2)と同様に以下の方法で行われる。
【0039】
これにより、
図2に示す曲線20が得られる。
【0040】
角度βは、γと共に変わるため、遊星
ホイールの接点の位置は、変速比が変わるときに移動する。この特徴により、設計者は、半径R
poをβに依存させることが可能になる。換言すると、遊星
ホイールの回転面の断面は、必ずしも円形である必要はなく、例えば、楕円形などの別の曲線を選択することもできる。同じ式が有効なままで、R
poのみがγと共に変わる。角度βは、90°−γ−α
Zに等しい。そのため、
図4及び
図5は、β及びR
poが回転面を極座標として規定することを示すことから、遊星
ホイールの面は、βの関数としてR
poを再計算することで規定される。
【0041】
ヒンジ軸24の周りの遊星
ホイール19の傾倒動作により、すなわち遊星
ホイール19の傾斜角γの変化により変速比が変わる。これは、傾倒により、共通中心軸18と、リング
ホイール16及び太陽
ホイール17上の遊星
ホイール19の接点との間の距離が変わるためである。リング
ホイール及び太陽
ホイールの回転面20/21は円形断面を有さないため、変速比が変わるときにリング
ホイール16と太陽
ホイール17との間の距離が変わる。これは、動作時、リング
ホイール16及び太陽
ホイール17の相対軸方向移動、すなわち中心軸18の方向の相対移動が可能であることを意味する。これは、両方の
ホイール16/17を移動可能に取り付けるか、又は一方の
ホイールを固定した状態に保ち、他方の移動を可能にすることで達成することができる。傾倒動作は、幾つかの方法で、例えば中心シャフト15をリング
ホイール又は太陽
ホイールに対して軸方向に移動させることで行うことができる。あるいは、変速比は、主シャフト15を軸方向に固定した状態に保ち、リング
ホイール16及び/又は太陽
ホイール17を軸方向に移動させることで変えることができる。
【0042】
図2の実施形態では、パラメータL
p、すなわち遊星
ホイールのシャフト部分14の長さは正の値である。しかし、L
pが負又はゼロの場合、これは、角度β
i=arctan(R
pi/L
p)がそれぞれ負又は90°になることを意味する。この場合、式を解き、リング
ホイール及び太陽
ホイールの回転面を求めることは依然として意味がある。L
p<0の事例は、
図6に示す実施形態である。
【0043】
図6では、この場合にも以下の構成要素、すなわちリング
ホイール16と、太陽
ホイール17と、遊星
ホイール19と、共通中心軸18と、リング
ホイール及び太陽
ホイールそれぞれの回転面20及び21と、遊星
ホイールシャフト14と、遊星
ホイールの
ホイール部分12と、遊星
ホイールのローラ軸受13と、点28で中心軸18及び遊星
ホイール19の回転軸25に交差する接線26/27とが存在し、
図2と同じ参照数字を付けられている。
【0044】
しかし、
図6の実施形態では、ヒンジ軸24は、遊星
ホイール回転軸25と中心軸18との交点28から見て、遊星
ホイールの
ホイール部分12を越えて配置され、それに対して、
図2の実施形態では、ヒンジ軸24は、交点28と
ホイール部分12との間に位置する。
図6に示す特定のシステムでは、遊星
ホイール19は、サポート
ホイール40に旋回可能に取り付けられ、サポート
ホイール40自体は、リング
ホイール16及び太陽
ホイール17と同軸に取り付けられる。これは、実際上、
図2の状況となるが、遊星
ホイールのシャフト14は、
ホイール部分12の向こう側に延びている。ここで、遊星
ホイールのシャフト14は、
図2と同様に、遊星
ホイールの回転軸25と中心軸18とによって形成される平面に対して垂直に向けられる一方、中心軸から外れた位置にあるヒンジ軸24の周りで旋回できるように、サポート
ホイール40に対して旋回可能に取り付けられる。
図6の実施形態に示すように、遊星
ホイールのシャフト14は、サポート
ホイール40に組み込まれたヒンジ継手41に直接的に旋回可能に取り付けられるのが好ましい。この実施形態では、可変装置の中心部分に中心シャフトもフォークもない。従って、この中心部分において、遊星
ホイールの角度範囲を制限し得る物理的な制約は何ら存在しない。
【0045】
図2の実施形態と同様に、遊星
ホイール19の傾倒は、リング
ホイール及び太陽
ホイールの相対軸方向移動を伴う変速比の変化をもたらす。サポート
ホイール40は、リング
ホイール又は太陽
ホイールに対して軸方向に移動可能であり得るか、又はサポート
ホイールは、固定した状態を維持することができ、リング
ホイール及び太陽
ホイールは軸方向に移動可能であり得る。サポート
ホイール40は、中心軸18の周りで回転することができる。その場合、サポート
ホイール40は、遊星可変装置の外側に配置されて図面に示されていない軸受に取り付けられる。
図6に示す態様で遊星
ホイールを支持するために、サポート
ホイール40の代わりに代替の任意の支持体を使用することができる。
【0046】
事例L
p=0は、本発明の範囲に同様に含まれ、遊星
ホイールのシャフト部分14が、遊星
ホイールと回転面20/21との間の接点と同一平面上にある軸の周りでヒンジ動作する実施形態に対応する。
【0047】
図2及び
図6の実施形態では、ヒンジ軸24は、遊星
ホイール19の
ホイール部分12の回転軸25と交差する。しかし、本発明はこれらの実施形態に限定されない。ヒンジ軸24は、基本的に、回転軸25と中心軸18とによって形成される平面に垂直なままであるが、交差することなく、すなわち共有の点を有することなく回転軸25を越えることができる。
図2及び
図6に示す構造は、このように、ヒンジ軸24が、例えば、遊星
ホイールの回転軸25に対して上下左右のいずれかに移動できるという点で修正することができる。ヒンジ軸24が回転軸25に交差しない場合、基本的にドリルのない回転のための条件に基づいて、すなわち遊星
ホイール19との接線接点で回転面20/21に接する2つの平面26/27が、前記遊星
ホイール19のヒンジ軸24の周りの角度位置に無関係に、共通中心軸18の点28で前記遊星
ホイール19の
ホイール部分12の回転軸25と交差するための条件に基づいて、リング
ホイール及び太陽
ホイールの回転面20/21の形状を計算することが依然として可能である。
【0048】
ヒンジ軸24が遊星
ホイールの回転軸25に交差せず、ヒンジ軸24と遊星
ホイールの回転軸25との間の共通垂直線が、遊星
ホイール19の
ホイール部分12と、遊星
ホイール回転軸25と中心軸18との交点28との間の点で遊星
ホイール回転軸25に交差する場合、前記ヒンジ軸は、「遊星
ホイール19の
ホイール部分12と、遊星
ホイール回転軸25と中心軸18との交点28との間」に位置すると定義される。さらに、ヒンジ軸24が遊星
ホイールの回転軸25に交差せず、ヒンジ軸24と遊星
ホイール回転軸25との間の共通垂直線が、遊星
ホイール回転軸25と中心軸18との交点28から見て、遊星
ホイールの
ホイール部分12を越えて配置された点で遊星
ホイールの回転軸25に交差する場合、ヒンジ軸は、遊星
ホイール回転軸25と中心軸18との交点28から見て、遊星
ホイールの
ホイール部分12を越えて」位置すると定義される。
【0049】
図2及び
図6に示す遊星
ホイール19は、このタイプの現在公知のシステムに適用される遊星
ホイールと異なる構造上の特徴を有する。
図2を参照すると、遊星
ホイール19の
ホイール部分12は、スラスト軸受13及びラジアル軸受13’のアウターリングに直接取り付けられていることが分かる。同様に、
図6では、遊星
ホイール部分12は、ローラ軸受13のアウターリングに直接取り付けられる。
ホイール部分を軸受に直接取り付けるこの特徴は、単純化された遊星
ホイール設計を可能にする。しかし、これは、遊星
ホイールの大きさが既存の設計と比較して縮小される場合にのみ適用可能である。本発明による偏心ヒンジを有する可変装置は、リング
ホイールと太陽
ホイールとの間のより小さい空間で済ますことができるため、遊星
ホイール部分は、直径を比較的小さくすることができる。この理由のため、
ホイール部分が軸受リングに直接取り付けられた遊星
ホイール設計は、本発明による可変装置に特に適している。特定の実施形態によれば、遊星
ホイールの
ホイール部分、及び1つ若しくは複数の軸受13又は1つ若しくは複数の軸受13’は、単一の部片として製造される。
ホイール部分12が1つの軸受のアウターリングに直接取り付けられ、一方で第2の軸受のアウターリングと一体品を形成する他の実施形態が可能である。
【0050】
特許文献1のシステムで公知の任意の構成は、本発明の可変装置で具現化することもできる。従って、本発明は、同様に、本発明による1つ又は複数の遊星可変装置を含む可変伝動装置又は両方向性可変伝動装置に関する。任意のかかるトランスミッションは、特許文献1に記載の可変又は両方向性可変伝動装置に本発明の遊星可変装置を組み込むことで具現化することができる。
【0051】
本発明が図面及び前述の説明で詳細に図示及び説明されたが、そのような図示及び説明は、説明又は例示するためのものであり、限定的ではないとみなされるべきである。当業者は、特許請求される本発明を実施する上で、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、開示される実施形態とは別の変形形態を解明及び実施することができる。特許請求の範囲において、「含む」という文言は、他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」という文言は複数を排除しない。特定の方策が相互に異なる従属請求項に記載されることのみでは、これらの方策の組み合わせが有利に使用できないことを示さない。特許請求の範囲の任意の参照符号は、範囲を限定すると解釈すべきでない。
【符号の説明】
【0052】
[先行技術の可変装置(
図1)]
1 主シャフト
2 リング
ホイール
3 遊星
ホイール
4 太陽
ホイール
5 中心軸
7 遊星フォーク
8 ヒンジ
9 ヒンジ軸
[本発明による可変装置(
図2〜
図6)]
12 遊星
ホイールの
ホイール部分
13 軸受
13’ ラジアル軸受
14 遊星
ホイールのシャフト部分
15 主シャフト
16 リング
ホイール
17 太陽
ホイール
18 中心軸
19 遊星
ホイール
20 リング
ホイール上の回転面
21 太陽
ホイール上の回転面
22 フォーク
23 ヒンジ継手
24 ヒンジ軸
25 遊星
ホイールの
ホイール部分の回転軸(本明細書の幾つかの実施例では、「遊星
ホイールの回転軸」とも呼称される)
26 遊星
ホイールとの接点でのリング
ホイールの回転面への接線
27 太陽
ホイールとの接点での太陽
ホイールの回転面への接線
28 接線と中心軸との交点
30 半径方向拡張部
31 フォークの中央脚
32 フォークの側部脚
40 サポート
ホイール
41 サポート
ホイールのヒンジ継手