(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記二次電池から前記冷凍機への電力の供給を行っているときに、前記二次電池の充電率が所定の第2閾値より小さくなると、前記二次電池から前記冷凍機への電力の供給を停止する、
請求項1に記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態による空調機を
図1〜
図7を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態における輸送用冷凍システムを備える車両の一例を示す図である。
車両Aは、例えば、冷凍機が搭載されたトラックである。図示するように車両Aは、車両Aを駆動するエンジン2と、荷室に搭載された保冷庫3と、エンジン2によって駆動する冷凍機用の発電機10と、エンジン2によって駆動する車両用の発電機11と、冷凍機用のバッテリ20と、車両用のバッテリ21と、冷凍ユニット30とを備える。車両用の発電機11と車両用のバッテリ21とは、車両Aの走行や車両Aが備える電装設備に電力を供給する目的で搭載されている。一方、冷凍機用の発電機10と冷凍機用のバッテリ20とは、冷凍ユニット30に電力を供給する目的で搭載される。冷凍ユニット30は、発電機10が発電する電力(発電電力)、又は、発電機10の発電電力およびバッテリ20が蓄電する電力を電源として動作し、保冷庫3内の温度をユーザ所望の温度に冷却する。発電機10およびバッテリ20の定格電圧は、例えば12Vまたは24Vである。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態における輸送用冷凍システムの一例を示すブロック図である。
輸送用冷凍システム1は、発電機10と、バッテリ20と、冷凍ユニット30とを備える。
発電機10は、エンジン2の回転によって発電する定電圧の発電機である。発電機10は、冷凍ユニット30に接続されており、発電機10が発電した電力は、冷凍ユニット30へ供給される。
冷凍ユニット30は、保冷庫3を所望の温度に冷却する。冷凍ユニット30は、コンバータ31と、インバータ32と、冷凍機33と、コントローラ40とを備える。コンバータ31は、発電機10から供給された電力を昇圧する。コンバータ31は昇圧した直流電力をインバータ32に出力する。インバータ32は、コンバータ31からの直流電力を冷凍負荷に応じた周波数の三相交流電力に変換し、冷凍機33の電動圧縮機34に供給する。冷凍機33は、電動圧縮機34をはじめとする図示しない凝縮器、蒸発器、膨張弁などで構成される冷媒回路を備える。インバータ32から供給された電力により、電動圧縮機34が駆動すると、電動圧縮機34により、冷媒が冷媒回路中に送出され循環する。これにより、冷凍機33は、保冷庫3内の空間をユーザが設定した温度に冷却する。コントローラ40は、冷凍機33の運転を制御する。例えば、コントローラ40は、インバータ32を介して冷凍機33に供給する電力を制御する。
【0025】
ここで、
図3を用いて、発電機10の出力特性について説明する。
図3は、本発明の一実施形態における発電機の出力特性の一例を示す図である。
図3の縦軸は発電機10からの出力電流、横軸は発電機10の回転数である。図中、IDは車両Aがアイドリング中の発電機10の回転数(例えば、1200〜1600rpm)を示し、その場合の出力電流は、例えば40A程度である。また、図中、MAXは車両Aのエンジンの回転数が最大となっているときの発電機10の回転数(例えば、5000〜6000rpm)を示し、その場合の出力電流は、例えば90A程度である。このように車両Aの走行状態に応じて、発電機10が出力する電流の大きさは倍以上変動する。このため、保冷庫3の目標温度(冷凍機33が要求する負荷)、あるいは、車両Aの走行状態によっては、発電機10の発電により冷凍ユニット30に供給される電力だけでは不足する可能性がある。これを補うため、輸送用冷凍システム1は、補助電源としてバッテリ20を備える。
【0026】
バッテリ20は、発電機10が発電した電力を蓄電し、蓄電した電力を冷凍ユニット30に供給する二次電池である。バッテリ20は、コントローラ40の指示によりコンバータ31で変換された直流電力のうち、冷凍ユニット30が消費する電力(負荷電力)の余剰分の電力を蓄電できるよう構成されている。また、発電機10が発電電力だけでは足りない場合、バッテリ20に蓄電された電力は、コントローラ40の指示により放電され、インバータ32へと供給されるよう構成されている。インバータ32は、バッテリ20からの直流電力を冷凍機33が要求する負荷電力に応じた周波数の三相交流電力に変換し、電動圧縮機34に供給する。
【0027】
ここで、
図4を用いて充電電流とSOCとの関係について説明する。
図4は、本発明の一実施形態におけるバッテリの定電圧充電特性の一例を示す図である。
図4の縦軸は充電電流の値、横軸は二次電池のSOCである。上記のとおり、発電機10の出力は定電圧(例えば14Vまたは28V)である。
図4より、バッテリ20のSOCが低いときには、バッテリ20には大電流が流れ、SOCが高くなると流れる電流が小さくなる。例えば、SOCが0付近では充電電流は50A程度だが、SOCが90%を超えると2〜3Aに低下する。
【0028】
バッテリ20と冷凍ユニット30の間には電圧センサ22、電流センサ23が設けられ、電圧センサ22が計測した電圧値、電流センサ23が計測した電流値は、コントローラ40へ出力される。バッテリ20には温度センサ24が設けられ、温度センサ24が計測した温度は、コントローラ40へ出力される。コントローラ40は、各センサから取得した電圧値、電流値、温度の情報を用いてバッテリ20のSOC(State of charge:充電率)を算出する。コントローラ40は、冷凍機33の運転を制御しつつ、バッテリ20のSOC、発電機10の発電電力、冷凍ユニット30が要求する負荷電力に応じて、バッテリ20の充放電を制御する。
【0029】
輸送用冷凍システム1はさらに外部電源から供給される電力によってバッテリ20を充電する手段、及び冷凍機へ電力を供給する手段を備えていても良い。例えば、輸送用冷凍システム1はさらに充電装置50を備え、充電スタンドSは交流電源Vからの電力を受電して直流電力に変換する。そして、車両Aと充電スタンドSとを充電用ケーブルで接続すると、充電スタンドSから直流電力が車両A側へと供給され、充電装置50がバッテリ20を充電するよう構成されている。このような構成を備えることで、発電機10が起動していない状態でも、バッテリ20への充電と冷凍機への電力の供給を行うことができる。
【0030】
次にコントローラ40について
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の一実施形態における輸送用冷凍システムが備えるコントローラの一例を示す機能ブロック図である。
コントローラ40は、例えばマイコン等のコンピュータである。コントローラ40は、センサ情報取得部41と、充電率推定部42と、発電電力算出部43と、負荷電力情報取得部44と、充放電制御部45と、目標負荷設定部46と、入力部47と、冷凍機制御部48と、記憶部49と、を備える。
【0031】
センサ情報取得部41は、電圧センサ22が計測した電圧値、電流センサ23が計測した電流値、温度センサ24が計測した温度を取得する。センサ情報取得部41は、発電機10の回転数を計測する図示しない回転センサ(またはエンジン2の回転数を計測する回転センサ)から回転数を取得する。
【0032】
充電率推定部42は、センサ情報取得部41が取得した電圧値と電流値に基づいて、バッテリ20のSOCを算出する。例えば、充電率推定部42は、冷凍機33の運転が停止してから所定時間が経過し、バッテリ20が平衡状態にあるときに電圧センサ22が計測した開放電圧(OCV:open circuit voltage)と、バッテリ20の開放電圧とSOCとの関係を示す関数等に基づいて、バッテリ20のSOC(初期SOCとする)を算出する。冷凍機33が運転を開始すると、充電率推定部42は、初期SOCに、電流センサ23が計測した電流値(充電電流や放電電流)を積算してバッテリ20の現在のSOCを算出する(電流積算法)。また、バッテリ20は温度によって抵抗値が変化するため、算出したSOCに対して温度補正を行っても良い。例えば、充電率推定部42は、バッテリ20の温度に応じたSOCの補正量を規定する所定のSOC補正値算出モデルを用いて、温度センサ24が計測した温度に応じた補正量を算出し、その補正量を電流積算法により算出したSOCに加算して、SOCを補正する。
【0033】
発電電力算出部43は、発電機10の発電電力を算出する。例えば、発電電力算出部43は、センサ情報取得部41が取得した発電機10の回転数から、
図3で例示したグラフに基づいて出力電流を求め、出力電圧(例えば24V)と乗じることで発電電力(W)を算出する。
【0034】
負荷電力情報取得部44は、冷凍機33の運転に必要な電力の情報を取得する。例えば、負荷電力情報取得部44は、インバータ32から消費電力の情報を取得する。例えば、負荷電力情報取得部44は、冷凍機33による消費電力の検出値を取得する。
【0035】
充放電制御部45は、発電機10による発電電力が、冷凍機33の負荷電力より小さい場合であって、バッテリ20のSOCが所定の閾値(第1閾値)以上であれば、バッテリ20の蓄電した電力をインバータ32へ供給する。このとき、充放電制御部45は、バッテリ20のSOCが低下する負荷電力を許容し、負荷電力から発電電力を減算した不足分に見合う電力をバッテリ20からインバータ32へ供給する。充放電制御部45は、バッテリ20の蓄電した電力をインバータ32へ供給しているときに、バッテリ20のSOCが所定の閾値(第2閾値)より小さくなると、バッテリ20からインバータ32への電力の供給を停止する。充放電制御部45は、バッテリ20が蓄電した電力をインバータ32へ供給しない状況において、発電機10が発電した電力の余剰分をバッテリ20へ供給して、バッテリ20を充電する。
【0036】
目標負荷設定部46は、バッテリ20からインバータ32への電力の供給を行っているときに、バッテリ20のSOCが第2閾値より小さくなると、発電機10が発電する電力量より負荷が消費する電力量が小さくなるよう負荷を引き下げる。例えば、発電機10の発電電力が、冷凍機33の負荷電力より小さい場合であって、バッテリ20のSOCが第2閾値より小さくなると、目標負荷設定部46は、冷凍機33の負荷電力が、発電機10の発電電力よりも小さくなるように負荷電力を引き下げる。または、目標負荷設定部46は、所定の充電電流(例えば、
図4で例示した充放電電流に基づく、SOCに応じた充電電流)が、バッテリ20へ流入するように負荷電力を引き下げてもよい。その他、例えば、できるだけ長時間それまでの負荷を維持し、その後、急激に負荷を低下させるようにして、SOCが第2閾値を下回ってから所定時間が経過するまでの負荷による消費電力量が、発電機10が発電する電力量より小さくなるよう制御してもよい。一方、バッテリ20のSOCが第2閾値以上であって、発電機10の発電する電力量とバッテリ20から供給する電力量の合計が、負荷が消費する電力量を満たすことができる場合、目標負荷設定部46は、負荷を現状のまま維持する。
【0037】
入力部47は、ユーザから保冷庫3の目標温度の情報や、冷凍機33の起動、停止を指示する情報の入力を受け付ける。
冷凍機制御部48は、冷凍機33の運転を制御する。例えば、ユーザが、冷凍機33の運転を開始する操作を行うと、冷凍機制御部48が、起動を指示する制御信号を、インバータ32を介して、冷凍機33側へ出力する。冷凍機33では、その制御信号に基づいて電動圧縮機34が起動し、冷凍機33は運転を開始する。ユーザが、保冷庫3の目標温度を設定すると、冷凍機制御部48は、保冷庫3内の温度、外気温などに基づいて目標温度に応じた制御信号を生成し、インバータ32の周波数調整を行うなどして冷凍機33の運転状態を制御する。例えば、ユーザが、冷凍機33の動作を停止する操作を行った場合、冷凍機制御部48は、冷凍機33の動作を停止する制御信号を出力し、冷凍機33はその制御信号に従って動作を停止する。
記憶部49は、第1閾値、第2閾値など種々の情報を記憶する。
【0038】
次に本実施形態の充放電制御について
図6を用いて説明する。
図6は、本発明の一実施形態における輸送用冷凍システムの充放電制御を説明する図である。
図6に発電機10の回転数の時系列のグラフ(
図6(a))と、冷凍機33による負荷電力の時系列のグラフ(
図6(b))と、バッテリ20の充放電電流の時系列のグラフ(
図6(c))と、バッテリ20のSOCの時系列のグラフ(
図6(d))との関係を示す。各グラフの横軸は時間の経過を示し、各グラフの横軸の同じ位置は同じ時刻を示している。
【0039】
(時刻0〜T0)
まず、時刻0の時点で車両Aのエンジン2が起動する。エンジン2が起動すると、エンジン2の回転数に応じて発電機10の回転数が上昇し、アイドリング状態で一定の回転数を維持する(
図6(a))。このとき、冷凍機33は運転しておらず、従って負荷電力は0である(
図6(b))。負荷電力が0のため、冷凍機用の発電機10の発電電力は全て余剰分となる。充放電制御部45は、発電機10の発電電力を全てバッテリ20の充電に割り当てる(
図6(c))。この間、バッテリ20のSOCは、上昇する(
図6(d))。
【0040】
(時刻T0〜T1)
時刻T0で車両Aが走行を開始すると、発電機10の回転数は上昇し、しばらくの間、変動する(
図6(a))。引き続き、冷凍機33は停止しており負荷電力は0である(
図6(b))。充放電制御部45は、発電機10の発電電力を全てバッテリ20の充電に割り当てる(
図6(c))。バッテリ20のSOCは上昇し続ける(
図6(d))。
【0041】
(時刻T1〜T2)
その後、車両Aは、一定の速度で走行する。発電機10の回転数は一定となる(
図6(a))。一方、時刻T1で冷凍機33は運転を開始し、ユーザが設定した目標温度に対して、一定の負荷電力w1で運転を行う(
図6(b))。この例では、発電機10の発電電力が、冷凍機33の運転による負荷電力w1より大きいとする。この場合、充放電制御部45は、発電機10の発電電力の余剰分(発電電力−負荷電力w1)をバッテリ20の充電に割り当てる(
図6(c))。この例の場合、時刻T1以降もそれまでと同じ電力を充電することができる。引き続きバッテリ20のSOCは上昇し続ける(
図6(d))。バッテリ20のSOCは時刻T1´で第1閾値となる。第1閾値とは、本実施形態の充放電制御においてバッテリ20の放電の開始が許容されるSOCの閾値である。
【0042】
バッテリ20のSOCが第1閾値以上となって、且つ、負荷電力w1が発電電力を上回ると、充放電制御部45は、バッテリ20から冷凍ユニット30への電力の供給を開始する。また、以下説明するように充放電制御部45は、バッテリ20のSOCが、第2閾値(例えば、冷凍機33が運転を開始するときのSOC)を下回らないように充放電の制御および負荷電力の制御を行う。冷凍機33が運転を開始したときのSOC(時刻T1でのSOC)を第2閾値とする。第2閾値とは、本実施形態の充放電制御においてバッテリ20が取り得るSOCの最低値である。つまり、バッテリ20が放電中でも、バッテリ20のSOCは、充放電制御部45により、第2閾値以上を維持するように制御される。冷凍機33の運転開始時点で、バッテリ20のSOCが第2閾値以上となっていることを条件としても良い。
【0043】
(時刻T2〜T5)
その後、車両Aは減速し、それに伴い、発電機10の回転数も低下する(
図6(a))。冷凍機33は同じ負荷電力w1での運転を継続する(
図6(b))。発電機10が発電した電力の低下に伴って、時刻T3において、充放電制御部45によるバッテリ20に流れる充電電流値が低下し始める(
図6(c))。
時刻T4において、発電機10が発電した電力の大きさと冷凍機33の負荷電力w1の大きさが等しくなる。時刻T4以降は、発電機10が発電した電力が冷凍機33の負荷電力w1よりも小さくなる。そして、時刻T5となると車両Aの走行はアイドリング状態となる。これに伴い、充放電制御部45は、バッテリ20への充電を時刻T4で停止する。時刻T4以降は、発電機10による発電電力が冷凍機33が要求する負荷電力w1に対して足りなくなる為、充放電制御部45は、この不足分(負荷電力w1−発電電力)をバッテリ20からの放電で賄う。このとき、バッテリ20のSOCが第1閾値以上となっていることが条件であるが、本例では、時刻T4において、バッテリ20のSOCが第1閾値以上となっている(
図6(d))のでこの条件を満たす。充放電制御部45は、バッテリ20を放電させ(
図6(c))、バッテリ20の蓄電した電力をインバータ32を介して、冷凍機33へ供給する。これにより時刻T4以降、バッテリ20のSOCは低下し始める(
図6(d))。
バッテリ20からの電力の供給が開始されても、SOCが第2閾値以上である間は、目標負荷設定部46により負荷電力はw1に維持されるため、冷凍機33の運転が制限されることは無い。従って、時刻T4以降も、保冷庫3の温度は、ユーザ所望の目標温度に制御される。
【0044】
(時刻T5〜T6)
時刻T5からしばらくの間、車両Aはアイドリング状態のまま停車する。その間、発電機10の回転数は一定である(
図6(a))。この間、発電機10の発電電力は負荷電力w1を下回り、一方、バッテリ20のSOCは第2閾値以上であるので、充放電制御部45は、バッテリ20の放電を継続する(
図6(c))。これに伴いバッテリ20のSOCは低下し続ける(
図6(d))。目標負荷設定部46により、負荷電力はw1に維持される(
図6(b))。この間も、保冷庫3の温度は、ユーザ所望の目標温度に制御される。
【0045】
(時刻T6〜T8)
時刻T6となると、車両Aは走行を開始し、発電機10の回転数、発電電力は上昇していく。発電機10の発電電力の上昇に伴い、充放電制御部45は、バッテリ20の放電電力を低下させ(
図6(c))、発電機10の発電電力とバッテリ20の放電電力の合計が、負荷電力w1と等しくなるよう制御する。
その後、時刻T7において、発電機10の発電電力と冷凍機33の負荷電力w1が等しくなると(
図6(a))、充放電制御部45は、バッテリ20の放電を時刻T7に停止する(
図6(c))。発電機10の回転数は、その後も上昇し続け、発電電力も上昇し、負荷電力w1を上回るようになる。これに伴い、時刻T7以降、充放電制御部45は、発電機10の発電電力の余剰分をバッテリ20に供給しバッテリ20を充電する(
図6(c))。これにより、バッテリ20のSOCは上昇する。
【0046】
(時刻T8以降)
時刻T8で車両Aは再び減速し、アイドリング状態となる。発電機10の回転数、発電電力は低下する(
図6(a))。やがて、発電機10による発電電力が負荷電力w1以下となると、充放電制御部45は、バッテリ20のSOCが第1閾値以上であることに基づいて、バッテリ20から放電させ、発電電力の負荷電力に対する不足分を補う(
図6(c))。これにより、バッテリ20のSOCは低下する(
図6(d))。
この間も、バッテリ20のSOCが第2閾値以上であることに基づき、冷凍機33の運転が制限されることは無く、保冷庫3の温度は、ユーザ所望の目標温度に制御される。
【0047】
時刻T9になると、バッテリ20のSOCは第2閾値に至る。すると、充放電制御部45は、時刻T9にバッテリ20の放電を停止する(
図6(c))。車両Aは、時刻T9以降もアイドリング状態を続けるため、発電機10の発電電力も負荷電力w1を下回ったままである。SOCが低下し第2閾値に至ったことに基づいて、バッテリ20の放電を停止したので、このまま負荷電力w1を維持することができない。従って、目標負荷設定部46は、負荷が消費する電力量が、発電機10が発電する電力量以下となるように負荷を引き下げる。例えば、目標負荷設定部46は、負荷電力をw1からw2まで引き下げる(
図6(b))。例えば、目標負荷設定部46により、負荷電力w2は、車両Aがアイドリング状態となっているときの発電機10の発電電力よりも小さな値に設定される。負荷電力をw2まで引き下げたことにより、発電機10の発電電力を冷凍機33に供給しても、余剰の電力が生じる。充放電制御部45は、この余剰の電力をバッテリ20に供給し、バッテリ20を充電する。これにより、バッテリ20のSOCは上昇し、やがて第1閾値以上に回復する。バッテリ20のSOCが第1閾値以上に回復すると、充放電制御部45は、バッテリ20からの放電が可能になる。バッテリ20のSOCが、第1閾値以上に回復すると、目標負荷設定部46は、負荷電力をw2から元のw1に戻してもよい。例えば、保冷庫3の温度が十分冷却されている場合など、負荷電力w2を大幅に引き下げ(例えば、一時的にw2=0としてもよい)、なるべく多くの充電電流(例えば、
図4に例示したグラフに基づくSOCに応じた最大の充電電流)がバッテリ20に流れるようにして急速にバッテリ20のSOCを回復させ、なるべく短時間で元の目標温度に戻すような制御を行ってもよい。
なお、負荷電力をw2に低下することで冷凍能力が低下し、保冷庫3の温度が上昇してしまう可能性があるが、本実施形態の充放電制御を行うことで、ユーザ所望の目標温度に応じた負荷電力w1を維持したまま冷凍機33を運転する時間を長くすることができる。
【0048】
従来、バッテリからの電力で冷凍機を運転する状況では、バッテリ上がりを防止するために冷凍機33の冷凍能力をセーブする(目標温度を引き上げる)制御が行われることが多い。このような制御の場合、発電電力が不足する時間が長く続くと、この間中、継続して冷凍機33の冷凍能力がセーブされることになる。これにより、保冷庫3の温度が上昇する可能性が高くなる。これに対し、本実施形態の充放電制御によれば、バッテリ20を利用する運転状態であっても、バッテリ20のSOCに応じて冷凍機33の冷凍能力をセーブすることなく、最大限に活用する時間を長くすることができる。これにより、保冷庫3の庫内温度が、ユーザ所望の目標温度から乖離するリスクを低減することができる。
【0049】
次にエンジン2が駆動している状態であるとして、本実施形態の充放電制御の処理の流れについて説明する。
図7は、本発明の一実施形態における輸送用冷凍システムの充放電制御の一例を示すフローチャートである。
まず、センサ情報取得部41が、冷凍機33が起動していない無負荷とみなせる状態で電圧センサ22が計測したバッテリ20の開放電圧を取得する。次に充電率推定部42が、取得した電圧に基づいて、バッテリ20の初期SOCを算出する(ステップS11)。充電率推定部42は、算出した初期SOCの値を記憶部49に記録する。
次に冷凍機33が運転を開始する(ステップS12)。冷凍機33が運転を開始すると、冷凍機制御部48がインバータ32を介して電動圧縮機34を駆動する。冷凍機制御部48は、保冷庫3の庫内温度、庫外温度など種々の運転条件に応じて、保冷庫3の庫内温度が、ユーザが入力部47を介して設定した目標温度となるよう、インバータ32の周波数を制御して冷凍機33を運転する。
【0050】
発電電力算出部43は、センサ情報取得部41が取得した発電機10の回転数から、例えば
図3のグラフに基づいて出力電流を求め、電圧を乗じて発電電力を算出する(ステップS13)。発電電力算出部43は、算出した発電電力の値を充放電制御部45へ出力する。負荷電力情報取得部44は、インバータ32から負荷電力の値を取得する(ステップS14)。負荷電力情報取得部44は、取得した負荷電力の値を充放電制御部45へ出力する。充放電制御部45は、発電電力と負荷電力とを比較する(ステップS15)。発電電力が負荷電力以上の場合(ステップS15;Yes)、充放電制御部45は、発電電力から負荷電力を減算して得られる発電電力の余剰分をバッテリ20に供給し、バッテリ20を充電する(ステップS16)。センサ情報取得部41は、電流センサ23が計測したバッテリ20へ流れる充電電流の値を取得する。充電率推定部42は、電流センサ23が計測した電流値を積算し、積算した値を初期SOCに加算して、充電中のバッテリ20のSOCを算出する(ステップS17)。このとき、充電率推定部42は、温度センサ24が計測したバッテリ20の内部温度に基づいて、SOCに対する補正を行っても良い。充電率推定部42は、算出したSOCの値を記憶部49に記録する。
【0051】
発電電力が負荷電力より小さい場合(ステップS15;No)、充放電制御部45は、バッテリ20のSOCが第1閾値以上かどうかを判定する(ステップS18)。バッテリ20のSOCが第1閾値以上の場合(ステップS18;Yes)、充放電制御部45は、バッテリ20を放電させ、負荷電力から発電電力を減算して得られる電力の不足分をバッテリ20からインバータ32に供給する(ステップS19)。センサ情報取得部41は、電流センサ23が計測したバッテリ20から流れる放電電流の値を取得する。充電率推定部42は、電流センサ23が計測した電流値を積算し、放電中のバッテリ20のSOCを算出する(ステップS20)。ステップS17と同様、充電率推定部42は、SOCの温度による補正を行ってもよい。
【0052】
バッテリ20のSOCが第1閾値未満の場合(ステップS18;No)、続いて、充放電制御部45は、バッテリ20のSOCが第2閾値以上かどうかを判定する(ステップS21)。バッテリ20のSOCが第2閾値以上の場合(ステップS21;Yes)、ステップS15以降の処理を繰り返す。バッテリ20のSOCが第2閾値未満の場合(ステップS21;No)、充放電制御部45は、バッテリ20からの放電を停止する(ステップS22)。発電機10による発電電力だけでは、冷凍機33の負荷を賄うことができないので、目標負荷設定部46が、負荷の消費する電力量が発電機10の発電する電力量より小さくなるよう負荷を引き下げる(ステップS23)。例えば、目標負荷設定部46は、車両Aの走行状態に関わらず、発電機10の発電電力以下となるような負荷電力の目標値を設定し、新たに設定した負荷電力の目標値を冷凍機制御部48へ出力する。あるいは、例えば、
図4のグラフに基づいてバッテリ20への充電電流の基準値を設け、電流センサ23が計測する充電電流の値がこの基準値以上となるように負荷電力を設定してもよい。
冷凍機制御部48は、目標負荷設定部46が設定した負荷電力に応じてインバータ32の周波数を低下させる。これにより、冷凍機33の運転による負荷電力を低下することができる。
【0053】
次に冷凍機制御部48が、冷凍機33の運転を停止するかどうかを判定する(ステップS24)。例えば、ユーザが入力部47を介して冷凍機33の運転を停止する操作を入力すると、冷凍機制御部48は、冷凍機33の運転を停止すると判定する。冷凍機33の運転を停止する場合(ステップS24;Yes)、フローチャートを終了する。
【0054】
冷凍機33の運転が継続される場合(ステップS24;No)、ステップS13からの処理を繰り返す。例えば、ステップS23の処理で負荷を引き下げた場合、負荷が低下したことにより電動圧縮機34の回転数は低下し、保冷庫3に対する冷凍能力は低下するが、ステップS15の判定で発電電力は負荷電力以上となり、充放電制御部45は、バッテリ20を充電する。これにより、バッテリ20のSOCは徐々に回復し、やがて第1閾値以上となると、再び放電が可能な状態となる。
【0055】
本実施形態によれば、負荷電力に対する発電機10による発電電力の過不足を、バッテリ20により補うことができるので、例えば、車両Aの走行状態の急激な変化(発停、走行速度の変化など)などにより、発電機10の発電電力の変動が大きい場合でも、安定した冷凍機33の運転を行うことができる。例えば、車両Aがアイドリング状態で停車している間も走行時と変わらない冷凍能力を発揮することが可能である。
特に、バッテリ20のSOCが高い状態では、発電機10による発電電力を超える負荷電力を供給することが可能となり、大きな冷凍能力を提供することができる。また、バッテリ20のSOCが第2閾値以上であれば、最終的にSOCが第2閾値以下に低下し、バッテリ20からの放電を停止するまでの間、発電機10による発電電力以上の負荷電力を継続して供給することができる。従って、バッテリからの放電を行う場合には冷凍能力をセーブするような従来の制御に比べ、長時間、冷凍能力を発揮させることができるので、保冷庫3の庫内温度を所望の温度に制御しやすい。
【0056】
また、発電電力が負荷電力を上回る状況では、その余剰電力でバッテリ20を充電しバッテリ20のSOCを高く保つことで、バッテリ20からの電力供給が可能な状態を維持しやすく、より安定した運転を実現することができる。
また、バッテリ20からの放電が多大となる場面でも、SOCを第2閾値以上に保つことができるので、過放電によるバッテリ20の早期劣化(サルフェーション)を防ぐことができる。
また、負荷電力に対する発電電力の過不足をバッテリ20への充放電電流値により間接的に把握することができる。
【0057】
また、上記制御を実行するにあたっては、バッテリ20のSOCに基づいて充放電を制御したり、冷凍機33の要求負荷を引き下げたりするが、そのためには、バッテリ20のSOCを正確に検出する必要がある。本実施形態の充電率推定部42によれば、バッテリ20からの充放電電流に基づいて、リアルタイムにバッテリ20のSOCを算出することができる。
【0058】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、輸送用冷凍システム1は、車両だけではなく、航空機、船舶に適用することができる。コントローラ40は制御装置の一例である。車両Aは、移動体の一例である。エンジン2は、移動体の動力源の一例である。移動体の動力源の他の例として例えば、モータが挙げられる。