(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
実施の形態
図1は、本発明の一実施形態に係るATM(本人確認装置)10の外観を示す図である。ATM10は、メイン表示部101、キャッシュカード等の磁気カードを受け付けるカード読取部102、紙幣の入出を行う紙幣入出金部103、利用者が操作する操作部104、バーコードや2次元コード等のコードを読み取るコード読取部105、光学読取部106、置き台107、サブ表示部108、非接触IC通信部109、カメラ110を備えている。
【0014】
メイン表示部101は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示手段と、利用者からの入力を受け付けるタッチパネル等の入力手段とを有する。表示手段に利用者の操作を誘導する画面や入力キーを表示し、この入力キーを利用者がタッチパネル上から押下することにより、入力キーに対応する情報を入力することができる。なお、利用者は、メイン表示部101に表示される入力手段の代わりに、操作部104の入力手段を操作しても同様の情報を入力することができる。
【0015】
光学読取部106は、例えばイメージスキャナであって、置き台107に載置されたICカード等の券面に添付された写真や文字を画像として読み取ることができる。置き台107は、地面に対して略水平な表面を有しており、光学読取部106は、手振れ等による影響を受けることなく、一定品質の画像を得ることができる。
【0016】
サブ表示部108は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示手段を有し、置き台107の表面に設置されている。サブ表示部108は、表示手段のみを有していてもよいし、メイン表示部101と同様に、表示手段に加えて入力手段を有していてもよい。サブ表示部108には、例えば、光学読取部106によって読み取られるICカード等を載置する位置をガイドする画面を表示するようにしてもよい。これにより、ATM10における操作に不慣れな利用者であっても、迷うことなくスムーズに操作を行うことができる。
【0017】
非接触IC通信部109は、例えば非接触ICリーダライタであって、置き台107の内部に設置されている。非接触IC通信部109は、ICカード等に搭載された非接触ICチップと非接触通信を行い、非接触ICチップに記憶される情報の読み取りや書き込みを行うことができる。非接触IC通信部109は、ICカード等が置き台107に載置されることにより、非接触ICチップと通信を行うことができる。
【0018】
カメラ110は、動画または静止画を撮影することができるカメラ装置である。カメラ110は、ATM10を操作する利用者の顔画像が撮影できるように設置されている。なお、
図1にはカメラ110が1つ図示されているが、カメラ110は複数実装されていてもよい。複数のカメラ110で顔画像を撮影することで、顔画像の照合精度の向上や不正利用の防止を実現することができる。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態に係るATM10の機能構成を示すブロック図である。ATM10は、筐体内部に制御装置20と記憶装置30を備えている。制御装置20は、ハードウェアとして、CPU、ROMやRAM等のメモリ、入力インタフェース、出力インタフェース、通信インタフェース及びこれらを結ぶバス等を備えている。制御装置20は、CPUがROM等に格納されたプログラムを実行することにより各種機能を実現する。制御装置20によって実現される機能モジュールには、
図2に示すように、媒体顔画像取得部201、撮影顔画像取得部202、媒体真贋判定部203、顔画像照合部204、本人判定部205、取引種類取得部206、媒体種類決定部207、媒体撮影方向決定部208、取引コード生成部209、コード情報取得部210、本人確認結果送信部211が含まれる。
【0020】
記憶装置30は、ハードディスクドライブ等であり、本人確認方法記憶部301を実装している。本人確認方法記憶部301には、取引の種類に応じた、本人確認方法の情報が記憶されている。具体的には、取引の種類毎に、必要な本人確認媒体の種類(運転免許証、マイナンバーカード、在留カード等)、媒体からの本人確認情報の取得方法(表面に貼付された写真、ICチップに記録された画像データ等)、媒体の真贋判定に必要な画像の種類(表面、裏面、厚み等)、カメラによる利用者の撮影の要否等の情報が記憶されている。取引の種類は、口座開設、クレジットカード発行申し込み等である。また、取引の種類は、金融機関(提携先)毎に登録されていてもよい。
【0021】
次に、本実施形態によるATM10を操作する利用者の本人確認処理の流れについて、
図3のフローチャートと
図4の画面遷移図を用いて説明する。ATM10による本人確認を行う利用者は、以下のように本人確認処理を行って取引コード(本人確認ができていることを証明するコード)の発行を受けた後、自身のスマートフォン等(携帯端末)を用いて金融機関等に各種取引の申し込みを行う。その際、取引コードを提示することによって、本人確認手続きの代わりとすることができる。なお、後述するように、先に自身のスマートフォン等を用いて金融機関等に各種取引の申し込みを行っておき、その後、ATM10において本人確認処理を行って、手続きを完了させることもできる。
【0022】
ATM10のメイン表示部101には、初期画面として案内画面が表示されている。案内画面には、
図4(A)に示すように、希望する手続きを選択するボタンが表示される。利用者は、「本人確認手続き」を選択する。「本人確認手続き」を選択すると、
図4(B)に示すように、本人確認が必要な取引の種類(例えば、口座開設、クレジットカード発行等)を選択する画面が表示され、利用者は所望の取引を選択する(ステップS101)。
【0023】
ATM10は、本人確認方法記憶部301を参照し、選択された取引の種類に基づいて、本人確認に必要な本人確認媒体の種類を決定する(ステップS102)。例えば、口座開設の場合には、運転免許証と判断される。
【0024】
次に、ATM10は、決定した本人確認媒体を所定の方向から撮影し、画像データを取得する(ステップS103)。撮影の方向は、選択された取引の種類毎に本人確認方法記憶部301に記憶されている。例えば、口座開設の場合は、運転免許証の表面、裏面、および厚みの3種類の画像を取る必要がある。
【0025】
ATM10は、メイン表示部101に、置き台107の上に運転免許証を載置するよう促すメッセージを表示する。利用者は、メッセージにしたがって、置き台107の上に運転免許証を載置する。ATM10は、
図5(A)に示すように、まず運転免許証の表面(写真の付いている面)を上にして置くように促すメッセージを表示する。置き台107に運転免許証が表面を上にして載置されると、光学読取部106によって顔写真を含む表面の画像が読み込まれる。表面の画像が読み込まれると、
図5(B)に示すように、運転免許証の裏面を上にして置くように促すメッセージが表示される。置き台107に運転免許証が裏面を上にして載置されると、光学読取部106によって裏面の画像が読み込まれる。裏面の画像が読み込まれると、
図5(C)に示すように、運転免許証の厚みを撮影するように促すメッセージが表示される。光学読取部106は、運転免許証の厚み(横方向からの画像)を取得する。
【0026】
さらに、ATM10は、非接触IC通信部109によって、運転免許証の非接触ICチップに記録されている顔写真を含むデータを読み込む(ステップS104)。なお、取引の種類や媒体の種類によっては、非接触ICチップのデータの取得を行わない場合もある。なお、非接触ICチップのデータを読み取る際には、暗証番号を入力させるようにしてもよい。また、暗証番号が不明な場合には、非接触ICチップのデータ取得を省略(スキップ)するようにしてもよい。
【0027】
次に、ATM10は、カメラ110によって、利用者の顔写真を撮影する(ステップS105)。撮影のタイミングは、利用者が置き台107の上に運転免許証を載置したことが検知された時でもよいし、運転免許証の画像やデータの取得が完了した時でもよい。また、利用者が、取引種類の選択を行った時でもよいが、撮影のタイミングはこれらに限られない。
【0028】
ATM10は、ステップS103で取得した、運転免許証の3種類の画像に基づいて、運転免許証の真贋判定を行う(ステップS106)。具体的には、表面、裏面それぞれの券面の特徴(記載されている項目や配置、券面の色等)、厚み(正しい厚さかどうか)等に基づいて、偽造されたものではないかどうかを判定する。
【0029】
さらに、ATM10は、運転免許証から取得した利用者の顔画像(媒体顔画像)と、ステップS105でカメラ110によって撮影した利用者の顔画像(撮影顔画像)の一致率を判定する(ステップS107)。媒体顔画像は、運転免許証の表面に貼付された顔写真の画像と、非接触ICチップに記録されている顔写真データのどちらかまたは両方を使用することができる。媒体顔画像として何を使用するかは、取引の種類によって決まっており、本人確認方法記憶部301に記憶されている。
【0030】
一致率の判定は、例えば2つの顔画像から複数の特徴点を抽出し、特徴点同士の比較を行う。両画像で一致する特徴点が一定数以上存在する場合には、両画像が同一人物のものであると判定する。3つ以上の顔画像を照合する場合には、それぞれの顔写真の画像から複数の特徴点を抽出し、特徴点同士の比較を行う。全ての画像で一致する特徴点が一定数以上存在する場合には、それらの画像が同一人物の顔写真であると判定する。
【0031】
ATM10は、ステップS106で本人確認媒体が偽造ではないと判断され(真)、ステップS107で、顔画像が同一人物のものであると判定された場合には(一致)、利用者が本人であると判定する(ステップS108)。ステップS106で本人確認媒体が偽造と判断された場合、またはステップS107で、顔画像が同一人物のものではないと判定された場合(不一致)には、本人確認に失敗した旨のメッセージ等を表示して処理を終了する。
【0032】
また、ATM10は、利用者が本人であると判定された場合には、
図4(C)に示すように取引先選択画面を表示する。利用者が取引先の機関(本人確認情報を提供する取引先)を選択すると、選択された取引先に撮影した媒体の画像や顔画像を送信する。さらに、
図4(D)に示すように、取引コードを生成して表示する。利用者は、自身のスマートフォン等にて表示された取引コードを読み取る(ステップS109)。取引コードには、本人確認結果と、指定された取引の種類(例えば、口座開設)の情報が含まれる。取引コードは、例えば二次元コードであるが、バーコードや数字等であってもよい。利用者は、金融機関等のウェブサイトにおいて、口座開設の申し込み手続きの際、受信した取引コードを本人確認結果として利用することができる。なお、取引先の選択は、利用者が本人であると判定される前に行うようにしてもよい。例えば、
図4(B)取引種類の選択画面の前後に取引先選択画面を表示し、取引先と取引内容(取引商品)に基づいて、以降の手続きを制御するようにしてもよい。
【0033】
なお、上記の実施形態では、先にATM10において本人確認手続きを行い、その際発行された取引コードを用いて、利用者自身のスマートフォンを用いて金融機関等に取引の申し込みを行う。一方、先に金融機関等のサイト(外部システム)で申し込み手続きを行ってから、ATM10による本人確認を利用することもできる。
【0034】
この場合には、利用者はまず自身のスマートフォンを利用して、金融機関等のサイトにアクセスし、取引(口座開設、クレジットカード発行等)の申し込みを行う。スマートフォン上では、必要事項(氏名、住所等の登録など)の登録などを行い、本人確認手続きを保留にした状態で、取引内容の情報を含むコードを受領する。利用者は、ATM10で本人確認を行う際、
図4(A)の画面にて「本人確認手続き」を選択した後、画面上で取引の種類を選択する代わりに、
図6(A)に示すように、受領したコードをスマートフォンに表示し、コード読取部105に読み取らせる。
【0035】
ATM10は、
図6(B)に示すように、コードから取得した取引内容の情報(取引の種類、取引先名称、利用者の氏名等)を、メイン表示部101に表示する。また、取引の種類や取引先に基づいて、本人確認に必要な本人確認媒体の種類や撮影方法を決定する。ATM10は、
図3のステップS103〜S107と同様の流れで本人確認媒体の真偽の判定と、顔画像の照合を行う。判定の結果、利用者が本人であると判定された場合には、取引先に、撮影した媒体の画像や顔画像を送信する。ATM10は、利用者のスマートフォンに、取引が完了した旨のメールを送信する。また、取引先の金融機関等からも、利用者宛に、申し込みが完了した旨の通知等が送信される。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、ATM10において、利用者の本人確認媒体から取得した顔画像と、カメラによって撮影した利用者の顔画像を照合することにより、本人確認を行い、本人確認結果を各種の取引や手続きで利用できるようにした。また、本人確認媒体については、異なる2以上の方向から撮影した画像に基づいて、真贋判定を行うようにした。これにより、取引の申し込みは自身のスマートフォンを用いて金融機関等のサイトで行い、本人確認は、近所などにあるATM10を利用して行うことができる。また、運転免許証などの本人確認媒体の真贋判定も行うようにしたので、安全で利便性の高い本人確認の方法を提供することができる。特に、利用者自身のスマートフォンやPCのカメラを利用した本人確認に比べ、なりすましやデータ偽装、データ改ざんなどのリスクが低いため、信頼性の高い本人確認サービスを提供することができる。
【0037】
また、本人確認媒体からは、表面に貼付された顔写真とICチップに記録された顔写真データの少なくとも一方を取得して照合を行うようにしたので、犯罪収益移転防止法にも準拠した高い精度の本人認証を効率よく行うことができる。なお、ICチップに記録された氏名、年齢などの属性情報を読み取り、それらの情報を本人確認のために利用するようにしてもよい。また、上記の実施例では、ステップS103で本人確認媒体の撮影をした後、非接触ICチップのデータを取得するステップに移行しているが、非接触ICチップのデータ取得を先に行うようにしてもよい。また、非接触ICチップのデータを読み取る際に暗証番号の入力を促し、暗証番号が不明な場合には、非接触ICチップのデータ取得をスキップして本人確認媒体の撮影を行うようにしてもよい。
【0038】
また、利用者が指定した取引の種類に応じて、使用する本人確認媒体の種類と、真贋判定のために本人確認媒体を撮影する方向を決定するようにしたので、取引の種類に応じて本人確認の方法や精度を決めることができる。これにより、特定の法律や制度に準拠した本人確認のみでなく、取引内容や提携先の要望に合わせた柔軟な本人確認のサービスを提供することができる。
【0039】
例えば、高度な安全性が求められる取引(口座開設、大口の現金取引等)が選択された場合には、本人確認媒体を3方向(表面、裏面、厚み)から撮影し、それほど高度な安全性が要求されない取引(比較的少額の現金取引等)が選択された場合には、2方向(表と裏、表と厚み等)から撮影するようにしてもよい。また、高度な安全性が求められる取引の場合には、2種類の本人確認媒体の提示を求めるようにしてもよい。
【0040】
なお、高度な安全性が求められる取引であるかどうかの判断基準は、犯罪収益移転防止法の規定に基づくものであってもよいし、その他の基準(例えば、提携先の金融機関毎の基準)に基づくものであってもよい。
【0041】
また、利用者が本人であることが確認された場合には、取引コードを発行し、利用者が、金融機関等のサイトでの手続きを行う際に、本人確認結果として利用できるようにした。これにより、本人確認の結果を、提携先の金融機関等に簡単かつ安全に提供することができる。
【0042】
また、利用者が先に提携先の金融機関等で手続きを行い、取引内容のコードを取得するようにしてもよい。この場合には、まず当該コードの情報をATM10に読み取らせ、コードに含まれる取引内容に応じて、本人確認処理を実行する。本人であることが確認された場合には、提携先の金融機関に本人確認結果を提供することにより、取引が成立するようにしてもよい。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述した各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更し、または並列に実行することができる。
【解決手段】利用者の本人確認を行う本人確認装置であって、利用者の本人確認媒体から、利用者の媒体顔画像を取得する媒体顔画像取得部と、カメラによって利用者の顔を撮影し、利用者の撮影顔画像を取得する撮影顔画像取得部と、本人確認媒体を異なる2以上の方向から撮影し、撮影した画像に基づいて、本人確認媒体の真贋を判定する媒体真贋判定部と、媒体顔画像と撮影顔画像を照合し、両画像の一致率を判定する顔画像照合部と、本人確認媒体の真贋の判定結果と、両画像の一致率に基づいて、利用者が本人であるか否かを判定する本人判定部を備える。