特許第6779400号(P6779400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6779400樹脂ビーズ、樹脂ビーズの製造方法、及び樹脂ビーズを用いた製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6779400
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】樹脂ビーズ、樹脂ビーズの製造方法、及び樹脂ビーズを用いた製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20201026BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20201026BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20201026BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20201026BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61Q1/12
   A61Q17/04
   C08L1/02
   C08J3/16
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-36983(P2020-36983)
(22)【出願日】2020年3月4日
【審査請求日】2020年3月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】安部 隆士
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2019/156116(WO,A1)
【文献】 特開2014−224183(JP,A)
【文献】 特開2002−205917(JP,A)
【文献】 特開2006−131875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/73
A61Q 1/12
A61Q 17/04
C08J 3/16
C08L 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズであって、
前記セルロース誘導体が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種であり、
体積平均粒子径が、50μm以下であり、
真球度が、0.7〜1.0であり、
表面平滑度が、80〜100%であり、
アセチル基の含有率が、15質量%以下であり、
プロピオニル基の含有率が、10質量%以上である樹脂ビーズ。
【請求項2】
前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートプロピオネートである請求項1に記載の樹脂ビーズ。
【請求項3】
中実度が、70〜100体積%である請求項1又は2に記載の樹脂ビーズ。
【請求項4】
前記樹脂ビーズが、顔料及び染料の少なくともいずれかを含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂ビーズ。
【請求項5】
前記樹脂ビーズが、顔料と、界面活性剤及び分散剤及び高分子分散剤の少なくともいずれかと、を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂ビーズ。
【請求項6】
前記顔料が、シリコーン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸、及びアミノ酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種で処理された処理顔料である請求項4又は5に記載の樹脂ビーズ。
【請求項7】
前記樹脂ビーズが、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤の少なくともいずれかを含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂ビーズ。
【請求項8】
前記樹脂ビーズが、シリコーン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸、及びアミノ酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種で処理された処理ビーズである請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂ビーズ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法であって、
前記セルロース誘導体及び前記セルロース誘導体を溶解する、25℃における水100gに対する溶解度が0.1〜50.0gである有機溶剤を含有する油相と、分散安定化剤を含有する水相と、を混合して、前記セルロース誘導体及び前記有機溶剤を含有する油滴を含む懸濁液を調製する工程と、
前記懸濁液に水を添加して前記油滴を収縮させる工程と、
を有する樹脂ビーズの製造方法。
【請求項10】
前記懸濁液に30分以上かけて前記水を添加する請求項9に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項11】
前記懸濁液に添加する前記水の液量が、前記懸濁液の液量に対して、質量基準で0.5倍以上である請求項9又は10に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項12】
前記水相が、第2の有機溶剤をさらに含有する請求項9〜11のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項13】
前記水相の液量が、前記油相の液量に対して、質量基準で3.0倍以下である請求項9〜12のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項14】
前記有機溶剤が、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール類、グリコール類、エーテル系溶剤、ハロゲン化アルキル、及びニトロ化アルキルからなる群より選択される少なくとも一種である請求項9〜13のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項15】
前記有機溶剤の液量が、前記セルロース誘導体の量に対して、質量基準で2.0倍以上である請求項9〜14のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項16】
前記分散安定化剤が、水溶性高分子である請求項9〜15のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項17】
前記水相中の前記分散安定化剤の含有量が、30質量%以下である請求項9〜16のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項18】
樹脂ビーズを含有する、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、及び樹脂組成物のいずれかの製品であって、
前記樹脂ビーズが、請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂ビーズである製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース誘導体を主成分とする樹脂ビーズ、この樹脂ビーズの製造方法、及びこの樹脂ビーズを用いて得られる化粧料などの製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂ビーズは、その球状特性から、艶消し剤、滑り剤、及びブロッキング防止剤等の様々な分野で用いられている。さらに、メーキャップ用の化粧料の伸展性等の特性を向上させるべく、樹脂ビーズ等の種々の樹脂粉体(樹脂粒子)が用いられている。しかし、近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染等の問題などから、化粧料に配合される樹脂ビーズの構成材料が、石油由来の合成系素材から天然系素材へと移行しつつある。
【0003】
天然系素材からなる球状樹脂粒子としては、例えば、スクラブ剤として有用な粉末状セルロースが提案されている(特許文献1)。さらに、診断薬に用いられるセルロース誘導体微粒子(特許文献2)や、化粧料に用いられる球状セルロース粉体(特許文献3)が提案されている。また、クロマトグラフィー用の充填剤として用いられる多孔性セルロース粒子(特許文献4及び5)や、真球度が高い生分解性の酢酸セルロース粒子(特許文献6)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−052909号公報
【特許文献2】国際公開第2009/123148号
【特許文献3】特開2013−221000号公報
【特許文献4】国際公開第2016/013568号
【特許文献5】国際公開第2015/029790号
【特許文献6】特許第6609726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2、4、及び5で提案された粉末状セルロース等は、メーキャップ用又はスキンケア用の化粧料に配合する剤としては粒径が適当なものではなかった。また、特許文献2で提案されたセルロース誘導体微粒子は、製造時に銅アンモニアを用いる必要があるため、重金属類を可能な限り低減したい化粧料用の材料としては、必ずしも適当なものであるとはいえなかった。
【0006】
さらに、特許文献3〜6で提案された球状セルロース粉体等は、真球度が低いとともに、粒子表面がさほど平滑ではない。このため、化粧料に配合しても肌に対する伸びがさほど良好であるとはいえず、ざらつきを感じやすいものであった。さらに、粒子表面の粗さや非中実構造に起因して光散乱が生じやすく、粉体の濡れや溶液中への使用に伴って質感が大きく変化しやすかった。
【0007】
また、特許文献4及び5で提案された多孔性セルロース粒子等は、多孔質であるために水分を吸着しやすい。このため、化粧料に配合すると化粧料自体が不安定化しやすくなるので、化粧料用の材料としては必ずしも適当なものであるとはいえなかった。
【0008】
さらに、特許文献6で提案された酢酸セルロース粒子は、乾いた触感があるため、触感改良剤として使用する場合、市場で要求される「しっとりとした触感」を示す材料には、必ずしも適当なものであるとはいえなかった。また、酢酸セルロース粒子は、経時的に加水分解しやすく、加水分解によって生じた酢酸が異臭を放つため、化粧料用の材料として必ずしも適当であるとはいえなかった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、臭気が発生しにくく、優れた触感及び肌への伸びを有する化粧料等の各種製品を提供可能な、石油由来の合成系素材からなる樹脂粒子と代替可能な樹脂ビーズ、及びそれを用いた化粧料等の各種製品を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、臭気が発生しにくく、優れた触感及び肌への伸びを有する化粧料等の各種製品を提供可能な、石油由来の合成系素材からなる樹脂粒子と代替可能な樹脂ビーズの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す樹脂ビーズが提供される。
[1]セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズであって、前記セルロース誘導体が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種であり、体積平均粒子径が、50μm以下であり、真球度が、0.7〜1.0であり、表面平滑度が、80〜100%であり、アセチル基の含有率が、15質量%以下であり、プロピオニル基の含有率が、10質量%以上である樹脂ビーズ。
[2]前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートプロピオネートである前記[1]に記載の樹脂ビーズ。
[3]中実度が、70〜100体積%である前記[1]又は[2]に記載の樹脂ビーズ。
[4]前記樹脂ビーズが、顔料及び染料の少なくともいずれかを含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂ビーズ。
[5]前記樹脂ビーズが、顔料と、界面活性剤及び分散剤及び高分子分散剤の少なくともいずれかと、を含有する前記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂ビーズ。
[6]前記顔料が、シリコーン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸、及びアミノ酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種で処理された処理顔料である前記[4]又は[5]に記載の樹脂ビーズ。
[7]前記樹脂ビーズが、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤の少なくともいずれかを含有する前記[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂ビーズ。
[8]前記樹脂ビーズが、シリコーン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸、及びアミノ酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種で処理された処理ビーズである前記[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂ビーズ。
【0011】
また、本発明によれば、以下に示す樹脂ビーズの製造方法が提供される。
[9]前記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂ビーズの製造方法であって、前記セルロース誘導体及び前記セルロース誘導体を溶解する、25℃における水100gに対する溶解度が0.1〜50.0gである有機溶剤を含有する油相と、分散安定化剤を含有する水相と、を混合して、前記セルロース誘導体及び前記有機溶剤を含有する油滴を含む懸濁液を調製する工程と、前記懸濁液に水を添加して前記油滴を収縮させる工程と、を有する樹脂ビーズの製造方法。
[10]前記懸濁液に30分以上かけて前記水を添加する前記[9]に記載の樹脂ビーズの製造方法。
[11]前記懸濁液に添加する前記水の液量が、前記懸濁液の液量に対して、質量基準で0.5倍以上である前記[9]又は[10]に記載の樹脂ビーズの製造方法。
[12]前記水相が、第2の有機溶剤をさらに含有する前記[9]〜[11]のいずれかに記載の樹脂ビーズの製造方法。
[13]前記水相の液量が、前記油相の液量に対して、質量基準で3.0倍以下である前記[9]〜[12]のいずれかに記載の樹脂ビーズの製造方法。
[14]前記有機溶剤が、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール類、グリコール類、エーテル系溶剤、ハロゲン化アルキル、及びニトロ化アルキルからなる群より選択される少なくとも一種である前記[9]〜[13]のいずれかに記載の樹脂ビーズの製造方法。
[15]前記有機溶剤の液量が、前記セルロース誘導体の量に対して、質量基準で2.0倍以上である前記[9]〜[14]のいずれかに記載の樹脂ビーズの製造方法。
[16]前記分散安定化剤が、水溶性高分子である前記[9]〜[15]のいずれかに記載の樹脂ビーズの製造方法。
[17]前記水相中の前記分散安定化剤の含有量が、30質量%以下である前記[9]〜[16]のいずれかに記載の樹脂ビーズの製造方法。
【0012】
さらに、本発明によれば、以下に示す製品が提供される。
[18]樹脂ビーズを含有する、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、及び樹脂組成物のいずれかの製品であって、前記樹脂ビーズが、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂ビーズである製品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、臭気が発生しにくく、優れた触感及び肌への伸びを有する化粧料等の各種製品を提供可能な、石油由来の合成系素材からなる樹脂粒子と代替可能な樹脂ビーズ、及びそれを用いた化粧料等の各種製品を提供することができる。また、本発明によれば、臭気が発生しにくく、優れた触感及び肌への伸びを有する化粧料等の各種製品を提供可能な、石油由来の合成系素材からなる樹脂粒子と代替可能な樹脂ビーズの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で製造した樹脂ビーズの表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
図2】実施例1で製造した樹脂ビーズの断面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。なお、本明細書中の各種物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
【0016】
本発明者は、優れた触感、肌への伸び、透明性、及び製品安定性が付与された化粧料等の各種製品を提供しうる、天然系素材からなる樹脂ビーズ、及びその製造方法について種々検討した。その結果、以下に示す構成とすることで、天然系素材により実質的に形成された、上記各種の特性が付与された化粧料等の各種製品を提供可能な樹脂ビーズが得られることを見出した。すなわち、本発明の樹脂ビーズは、セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズである。そして、本発明の樹脂ビーズの体積平均粒子径は50μm以下であり、真球度は0.7〜1.0であり、表面平滑度は80〜100%であり、アセチル基の含有率は25質量%以下であり、プロピオニル基の含有率は10質量%以上である。
【0017】
樹脂ビーズの体積平均粒子径は50μm以下であり、好ましくは0.5〜40μm、さらに好ましくは1〜30μmである。体積平均粒子径を上記の範囲とすることで、化粧料等に配合される樹脂ビーズに要求される滑り性やソフトフォーカス性を有効に発現させることができる。
【0018】
樹脂ビーズの真球度は0.7以上1.0以下であり、好ましくは0.75〜1.0以下、さらに好ましくは0.8〜1.0以下、特に好ましくは0.85〜0.99以下である。真球度を上記の範囲としたことで、化粧料等に配合される樹脂ビーズに要求される良好な触感及び肌への伸びを有効に発現させることができる。
【0019】
樹脂ビーズが真球状であるか否の指標となる真球度は、以下に示す手順にしたがって測定及び算出することができる。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した樹脂ビーズのSEM画像を画像解析し、下記式(1)より、個々の樹脂ビーズの円形度Cを算出する。そして、任意に選択した100個以上の樹脂ビーズの円形度Cの相加平均値を真球度とする。
C=(4πS)/(L) ・・・(1)
【0020】
上記式(1)中、Sは、画像中に占める樹脂ビーズの面積(投影面積)を示し、Lは、画像中における樹脂ビーズの外周部の長さを示す。円形度Cの値が1に近いほど、粒子の形状は真球に近い。
【0021】
樹脂ビーズの表面平滑度は80〜100%であり、好ましくは85〜100%、さらに好ましくは90〜99%である。表面平滑度を上記の範囲としたことで、化粧料等に配合される樹脂ビーズに要求される良好な触感及び肌への伸びを有効に発現させることができる。
【0022】
樹脂ビーズの表面平滑度は、以下に示す手順にしたがって測定することができる。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した樹脂ビーズのSEM画像(×5,000)を観察し、下記式(2)より、個々の樹脂ビーズの平滑度Mを算出する。そして、任意に選択した100個以上の樹脂ビーズの平滑度Mの相加平均値を表面平滑度とする。平滑度Mの値が1に近いほど、粒子の表面は平滑に近い。
M=(1−(S)/(S))×100 ・・・(2)
【0023】
上記式(2)中、Sは、画像中に占める樹脂ビーズの面積(投影面積)を示し、Sは、樹脂ビーズとそれに近似した円を重ねた際に、樹脂粒子の輪郭で形成されたエリアと、重ねた円の輪郭より内側にある面積と外部にある面積の総和を示す。
【0024】
セルロース誘導体のなかでもセルロースエステル類は、一部加水分解して遊離酸を生ずることがある。このため、セルロースエステル類で形成された樹脂ビーズは、適応する製品によっては遊離酸の臭気が問題となる場合がある。セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズについては、アセチル基(CHCO−)の含有率を制御する(低減する)ことで、加水分解によって生ずる酢酸の遊離を抑制し、臭気の発生を抑えることができる。具体的には、本発明の樹脂ビーズのアセチル基の含有率は25質量%以下であり、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。アセチル基の含有率を上記の範囲とすることで、経時的に発生する酢酸臭等の異臭を抑制し、化粧料等に好適に配合しうる樹脂ビーズとすることができる。
【0025】
樹脂ビーズ中のアセチル基の含有率は、例えば、アセチル基含有率が所定の範囲内のセルロース誘導体を原料として用いることで調整することができる。セルロース誘導体は、市販のセルロース誘導体をそのまま用いてもよいし、常法にしたがって加水分解又はエステル化してアセチル基の含有率を調整したものを用いてもよい。さらに、アセチル基含有率の異なる複数の樹脂ビーズを混合して、樹脂ビーズ全体のアセチル基含有率が所定の範囲内となるように制御してもよい。
【0026】
樹脂ビーズのプロピオニル基(CHCHCO−)の含有率は10質量%以上であり、好ましくは15〜60質量%、さらに好ましくは20〜50質量%である。プロピオニル基の含有率を上記の範囲とすることで、化粧料等に配合される樹脂ビーズに要求される「しっとりとした触感」を有する樹脂ビーズとすることができる。
【0027】
セルロース誘導体のなかでもセルロースエステル類は、エステル部分の置換基の種類が、樹脂ビーズの触感に大きな影響を及ぼす。また、樹脂ビーズの触感は、エステル部分の置換基固有の性質の他、後述する製造方法で用いる有機溶剤へのセルロースエステル類の溶解度や、懸濁液中の分子の配向性等によって発現すると推測される。なかでも、原料として用いるセルロース誘導体のプロピオニル基の含有率を適切に設定することで、「しっとりとした触感」を発現させることができる。
【0028】
樹脂ビーズ中のプロピオニル基の含有率は、例えば、プロピオニル基含有率が所定の範囲内のセルロース誘導体を原料として用いることで調整することができる。セルロース誘導体は、市販のセルロース誘導体をそのまま用いてもよいし、常法にしたがって加水分解又はエステル化してプロピオニル基の含有率を調整したものを用いてもよい。さらに、プロピオニル基含有率の異なる複数の樹脂ビーズを混合して、樹脂ビーズ全体のプロピオニル基含有率が所定の範囲内となるように制御してもよい。
【0029】
樹脂ビーズの中実度は、70〜100体積%であることが好ましく、75〜100体積%であることがさらに好ましく、80〜99体積%であることが特に好ましい。中実度を上記の範囲内とすることで、化粧料等に配合される樹脂ビーズに要求される透明性を有効に発現させることができる。樹脂ビーズの中実度が70体積%未満であると、空域によって光散乱が生じ、透明性が低下しやすくなる。また、中実度が低下すると吸油量も変化する。このため、中実度が低い樹脂ビーズを化粧料等の製品に配合すると、製品の安定性がやや低下することがある。
【0030】
樹脂ビーズの中実度は、以下に示す手順にしたがって測定及び算出することができる。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した樹脂ビーズの断面のSEM画像を画像解析し、個々の樹脂ビーズの、樹脂で満たされた部分の体積を算出する。そして、任意に選択した20個以上の樹脂ビーズの、樹脂で満たされた部分の体積の平均値を中実度(体積%)とする。
【0031】
本発明の樹脂ビーズを構成する樹脂は、セルロース誘導体を主成分とする。樹脂ビーズを構成する樹脂は、セルロース誘導体のみからなることが好ましい。セルロース誘導体は、1ユニット中に3つのヒドロキシ基を有するセルロースを変性したものである。セルロース誘導体は、セルロース中の1つのヒドロキシ基が特定の置換基で置換されたものであってもよく、2つのヒドロキシ基が特定の置換基で置換されたものであってもよく、3つのヒドロキシ基が特定の置換基で置換されたものであってもよい。置換基の構造は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。また、セルロース誘導体は塩であってもよい。セルロース誘導体としては、樹脂ビーズの使用目的を勘案し、公知のセルロース誘導体を適宜選択して用いることができる。なかでも、天然系のセルロース誘導体として化粧料等の製品に用いられているセルロースエステル類が好ましい。
【0032】
セルロース誘導体の具体例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、カルボキシメチルセルロース、セルロースグリコール酸エーテル等を挙げることができる。なお、セルロースアセテートとしては、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びトリアセチルセルロースを挙げることができる。これらのセルロース誘導体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
セルロース誘導体のうち、セルロースエステル類の具体例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどを挙げることができる。なかでも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが好ましい。
【0034】
樹脂ビーズは、用途に応じて、顔料及び染料の少なくともいずれかを含有していてもよい。顔料や染料を含有する樹脂ビーズを得るには、例えば、顔料及び染料の少なくともいずれかをさらに含有する油相を用いて懸濁液を調製すればよい。顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄(ベンガラ)、黄酸化鉄、黒酸化鉄等の金属酸化物の他、法定色素和名の黄色4号、赤色202号、青色1号、カーボンブラック等を挙げることができる。また、マイカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の体質顔料を用いることもできる。染料としては、赤色104号、黄色5号、青色1号等を挙げることができる。
【0035】
樹脂ビーズは、顔料と、界面活性剤及び分散剤及び高分子分散剤の少なくともいずれかと、を含有することが好ましい。また、顔料は、シリコーン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸、及びアミノ酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種で処理された処理顔料であることが好ましい。
【0036】
樹脂ビーズは、用途に応じて、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤の少なくともいずれかを含有していてもよい。紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を含有する樹脂ビーズを得るには、例えば、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤の少なくともいずれかをさらに含有する油相を用いて懸濁液を調製すればよい。紫外線吸収剤等としては、例えば、微粒子二酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤などを挙げることができる。
【0037】
樹脂ビーズは、シリコーン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸、及びアミノ酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種で処理された処理ビーズであることが好ましい。
【0038】
次に、上述の樹脂ビーズを製造する方法について説明する。本発明の樹脂ビーズの製造方法は、上述の樹脂ビーズの製造方法であり、セルロース誘導体及びセルロース誘導体を溶解する有機溶剤を含有する油相(第1の液体)と、分散安定化剤を含有する水相(第2の液体)と、を混合して、セルロース誘導体及び有機溶剤を含有する油滴を含む懸濁液を調製する工程(懸濁液調製工程)を有する。
【0039】
懸濁液調製工程では、セルロース誘導体及びセルロース誘導体を溶解する有機溶剤を含有する油相と、分散安定化剤を含有する水相とを混合する。油相と水相を混合し、必要に応じて撹拌することで、セルロース誘導体及び有機溶剤を含有する油滴が水中に分散した懸濁液を得ることができる。この油滴は水中に分散した状態で存在するため、油滴中の有機溶剤は水中へと徐々に移動する。そして、有機溶剤の移動に伴って油滴が収縮し、有機溶剤に溶解していたセルロース誘導体が徐々に析出する。析出したセルロース誘導体は、図1に示すような平滑な表面を維持しながら成長する。最終的には、析出したセルロース誘導体が固定化され、実質的に中実な樹脂ビーズが形成される。油滴の収縮が生じているか否かは、光学顕微鏡や電子顕微鏡等を用いて観察した画像を解析することで判断することができる。このような油滴の収縮が生ずることで、真球性(真球度)が高く、実質的に中実であり、平滑な表面を有する、所望とする粒子径の樹脂ビーズを得ることができる。そして、このようにして得られた樹脂ビーズを用いることで、臭気が発生しにくく、優れた触感及び肌への伸びを有する化粧料等の各種製品を提供することができる。
【0040】
油相に含まれる有機溶剤(第1の有機溶剤)としては、セルロース誘導体を溶解可能な公知の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤の具体例としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;エタノール、n−ブタノール等のアルコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエタン等の塩素系溶剤;ニトロメタン;炭酸プロピレン等を用いることができる。これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
有機溶剤としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール類、グリコール類、エーテル系溶剤、ハロゲン化アルキル、ニトロ化アルキルが好ましい。なかでも、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ブタノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがさらに好ましい。
【0042】
懸濁液に含まれる油滴中の有機溶剤は、水相へと徐々に移動する。但し、有機溶剤の水溶解度が高すぎると、油滴から水相へと急激に有機溶剤が移動しやすくなるため、油滴が収縮して形成される樹脂ビーズが真球形状になりにくくなる場合や、平滑な表面が形成されにくくなる場合がある。また、有機溶剤の水溶解度が高すぎると、油滴に水相が部分的に入り込みやすくなり、中実な樹脂ビーズが形成されにくくなる場合もある。一方、有機溶剤の水溶解度が低すぎると、油滴から水相への有機溶剤の移動速度が低下するとともに、多量の水相を用いることが必要となる傾向にあるので、製造コストの面で不利になる場合がある。また、有機溶剤の水溶解度が低すぎると、樹脂ビーズ内に有機溶剤が残りやすくなる場合がある。このため、25℃における有機溶剤の水100gに対する溶解度(水溶解度)は、0.1〜50.0gであり、0.5〜40.0gであることが好ましく、1.0〜30.0gであることがさらに好ましい。
【0043】
油相(第1の液体)に含有される有機溶剤の液量は、セルロース誘導体の量に対して、質量基準で2.0倍以上であることが好ましく、2.5〜15.0倍であることがさらに好ましい。油相中の有機溶剤の液量が少なすぎると、油滴中の有機溶剤が水相へと移動した際に、セルロース誘導体が急速に析出しやすくなる。このため、得られる樹脂ビーズが真球形状になりにくくなる場合や、平滑な表面が形成されにくくなる場合がある。
【0044】
懸濁液調製工程で用いる水相は、分散安定化剤が脱イオン水等の水に溶解した液体(第2の液体)である。分散安定化剤としては、水溶性セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子;ハイドロキシアパタイト、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機塩類を用いることができる。これらの分散安定化剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの分散安定化剤のなかでも、水溶性セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子を用いることが好ましい。
【0045】
懸濁液中の油滴が移送中に破壊されたり、合一したりするのを抑制すべく、水相に用いる分散安定化剤の種類や濃度を適宜設定することが好ましい。水相中の分散安定化剤の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
水相は、第2の有機溶剤をさらに含有することが好ましい。油相中の有機溶剤(第1の有機溶剤)は、その種類により、水相へと急速に移動することがある。そこで、第2の有機溶剤を含有する水相を油相と混合することで、油相中の第1の有機溶剤の水相への急速な移動を抑制することが可能となり、より真球度が高く、表面がさらに平滑な樹脂ビーズを製造することができる。第2の有機溶剤としては、好適なものを含め、油相に用いる前述の有機溶剤(第1の有機溶剤)と同様のものを用いることができる。なお、第1の有機溶剤と第2の有機溶剤は、同種であってもよく、異種であってもよい。
【0047】
懸濁液調製工程では、油相と水相を混合して懸濁液を調製する。油相と水相を混合するには、撹拌下の水相に油相を添加してもよく、撹拌下の油相に水相を添加してもよい。必要に応じて、ディスパーやホモジナイザーなどの乳化装置を使用し、形成される油滴の粒径を調整することが好ましい。例えば、ホモジナイザーの回転数を変えてせん断力を調整することで、形成される油滴の粒子径を容易に調整することができる。その結果、得られる樹脂ビーズの粒子径を所望の範囲となるように適宜に調整することができる。
【0048】
水相の液量は、油相の液量に対して、質量基準で3.0倍以下とすることが好ましく、0.2〜2.8倍とすることがさらに好ましい。水相の液量を上記の範囲とすることで、油滴中の有機溶剤の水相への急速な移動を抑制することができ、より真球度が高く、表面がさらに平滑な樹脂ビーズを製造することができる。
【0049】
本発明の樹脂ビーズの製造方法は、懸濁液に水を添加して油滴を収縮させる工程(収縮工程)をさらに有する。懸濁液に水を添加することで、懸濁液中の油滴をより速やかに収縮させることができる。懸濁液に追加する水の液量は、懸濁液の液量に対して、質量基準で0.5倍以上であることが好ましく、1〜40倍であることがさらに好ましい。
【0050】
収縮工程では、ある程度の時間をかけて懸濁液に水を添加することが好ましい。ある程度の時間をかけて水を添加することで、油滴中の有機溶剤の水相への急速な移動を抑制することができ、より真球度が高く、表面がさらに平滑な樹脂ビーズを製造することができる。具体的には、30分以上かけて懸濁液に水を添加することが好ましく、45分以上かけて水を添加することがさらに好ましく、60〜150分かけて水を添加することが特に好ましい。
【0051】
懸濁液調製工程の後は、例えば、生成した樹脂ビーズをろ過及び洗浄し、分散安定化剤等の不要な成分を除去する。次いで、必要に応じて洗浄を複数回繰り返した後、乾燥及び解砕処理すれば、目的とする樹脂ビーズを得ることができる。
【0052】
上述の樹脂ビーズは、真球性(真球度)が高く、平滑な表面を有し、しっとりとした触感を持ち、経時安定性が良好で異臭が生じにくい、天然系素材を構成材料とする樹脂粒子である。このため、上記の樹脂ビーズを含有させることで、石油由来の合成系素材からなる樹脂粒子を用いなくても、優れた触感、肌への伸び、及び製品安定性が付与された化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、及び樹脂組成物等の各種製品を提供することができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0054】
<樹脂ビーズの製造>
(実施例1)
セルロースアセテートプロピオネート(商品名「CAP−482−0.5」、イーストマンケミカル社製)100部を酢酸エチル(水溶解度:8g/100g)350部に溶解して油相を調製した。また、ポリビニルアルコール24部をイオン交換水300部に溶解して水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて1,800rpmで10分間撹拌して、油滴が均一に分散した懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した油滴の体積平均粒子径は、15μmであった。
【0055】
ディゾルバーを用いて得られた懸濁液を500rpmで撹拌しながら、イオン交換水4,500部を75分かけて注入し、樹脂粒子分散液(樹脂ビーズ分散液)を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。さらに、ろ過及び洗浄した後、乾燥及び解砕処理して樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズの表面の状態を示す電子顕微鏡写真を図1に示す。また、得られた樹脂ビーズの断面の状態を示す電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0056】
(実施例2)
セルロースアセテートプロピオネート(商品名「CAP−482−0.5」、イーストマンケミカル社製)100部を酢酸エチル(水溶解度:8g/100g)350部及び酢酸メチル(水溶解度:24.4g/100g)50部に溶解して油相を調製した。また、ポリビニルアルコール42部をイオン交換水400部に溶解して水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて1,600rpmで10分間撹拌して、油滴が均一に分散した懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した油滴の体積平均粒子径は、18μmであった。
【0057】
ディゾルバーを用いて得られた懸濁液を500rpmで撹拌しながら、イオン交換水5,000部を60分かけて注入し、樹脂粒子分散液(樹脂ビーズ分散液)を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。さらに、ろ過及び洗浄した後、乾燥及び解砕処理して樹脂ビーズを得た。
【0058】
(実施例3)
セルロースアセテートプロピオネート(商品名「CAP−504−0.2」、イーストマンケミカル社製)100部を酢酸エチル(水溶解度:8g/100g)500部に溶解して油相を調製した。また、ポリビニルアルコール56部をイオン交換水560部に溶解させた後、酢酸エチル40部を加えて水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて1,500rpmで10分間撹拌して、油滴が均一に分散した懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した油滴の体積平均粒子径は、23μmであった。
【0059】
ディゾルバーを用いて得られた懸濁液を500rpmで撹拌しながら、イオン交換水7,000部を65分かけて注入し、樹脂粒子分散液(樹脂ビーズ分散液)を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。さらに、ろ過及び洗浄した後、乾燥及び解砕処理して樹脂ビーズを得た。
【0060】
参考例4)
セルロースアセテートプロピオネート(商品名「CAP−504−0.2」、イーストマンケミカル社製)50部及び、ジアセチルセルロース(商品名「CA−398−10」、イーストマンケミカル社製)50部をイソプロピルアセテート(水溶解度:4g/100g)1000部に溶解して油相を調製した。また、ポリビニルアルコール300部をイオン交換水2700部に溶解させて水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて2,000rpmで10分間撹拌して、油滴が均一に分散した懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した油滴の体積平均粒子径は、12μmであった。
【0061】
ディゾルバーを用いて得られた懸濁液を500rpmで撹拌しながら、イオン交換水22,000部を120分かけて注入し、樹脂粒子分散液(樹脂ビーズ分散液)を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。さらに、ろ過及び洗浄した後、乾燥及び解砕処理して樹脂ビーズを得た。
【0062】
(実施例5)
セルロースアセテートプロピオネート100部を、ジアセチルセルロース(商品名「CA−398−6」、イーストマンケミカル社製)35部に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズ30部と、実施例3で得た樹脂ビーズ70部とを混合して、実施例5の樹脂ビーズを得た。
【0063】
(実施例6)
実施例3で得た樹脂ビーズを常法にしたがって一部加水分解した後、ろ過、洗浄、乾燥、及び解砕処理して、実施例6の樹脂ビーズを得た。
【0064】
(実施例7)
セルロースアセテートプロピオネート(商品名「CAP−504−0.2」、イーストマンケミカル社製)89部を1−ブタノール(水溶解度:8g/100g)700部に溶解して油相を調製した。脂肪酸処理した微粒子酸化チタン(商品名「MT−100TV」、テイカ社製)10部及び、アクリルシリコーン分散剤(商品名「KP−578」、信越化学社製)1部を加えて混合・分散し、微粒子酸化チタンが分散した油相を調製した。また、ポリアクリル酸50部をイオン交換水850部に溶解させ水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて2,500rpmで20分間撹拌して、油滴が均一に分散した懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した油滴の体積平均粒子径は、10μmであった。
【0065】
ディゾルバーを用いて得られた懸濁液を500rpmで撹拌しながら、イオン交換水9,000部を60分かけて注入し、樹脂粒子分散液(樹脂ビーズ分散液)を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。さらに、ろ過及び洗浄した後、乾燥及び解砕処理して樹脂ビーズを得た。
【0066】
(実施例8)
セルロースアセテートプロピオネート(商品名「CAP−482−0.5」、イーストマンケミカル社製)80部を酢酸エチル(水溶解度:8g/100g)400部に溶解して油相を調製した。アミノ酸処理した粒子酸化チタン(商品名「NAI−チタンCR−50」、三好化成社製)20部を加えて混合・分散し、酸化チタンが分散した油相を調製した。また、ポリビニルアルコール32部をイオン交換水400部に溶解させ水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて1,600rpmで10分間撹拌して、油滴が均一に分散した懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した油滴の体積平均粒子径は、14μmであった。
【0067】
ディゾルバーを用いて得られた懸濁液を500rpmで撹拌しながら、イオン交換水8,000部を60分かけて注入し、樹脂粒子分散液(樹脂ビーズ分散液)を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。さらに、ろ過及び洗浄した後、乾燥及び解砕処理して樹脂ビーズを得た。
【0068】
(比較例1)
セルロース微粒子(商品名「CELLULOBEADS D−5」、大東化成品社製)を比較例1の樹脂ビーズとした。
【0069】
(比較例2)
ジアセチルセルロース(商品名「CA−398−6」、イーストマンケミカル社製)35部をアセトン(水溶解度:∞g/100g)350部に溶解して油相を調製した。また、ポリビニルアルコール15部をイオン交換水300部に溶解して水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて1,800rpmで10分間撹拌して、懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した懸濁液の体積平均粒子径は、80μmであった。
【0070】
ディゾルバーを用いて得られた懸濁液を500rpmで撹拌しながら、イオン交換水4,500部を45分かけて注入し、樹脂粒子懸濁液(樹脂ビーズ懸濁液)を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。さらに、ろ過及び洗浄した後、乾燥及び解砕処理して樹脂ビーズを得た。
【0071】
(比較例3)
ジアセチルセルロース(商品名「CA−398−6」、イーストマンケミカル社製)35部を酢酸エチル(水溶解度:8g/100g)350部に溶解して油相を調製した。また、ポリビニルアルコール15部をイオン交換水300部に溶解して水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて1,500rpmで10分間撹拌して、懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した懸濁液の体積平均粒子径は、16μmであった。
【0072】
ディゾルバーを用いてイオン交換水4,500部を500rpmで撹拌しながら、得られた懸濁液を10分かけて注入し、樹脂粒子懸濁液(樹脂ビーズ懸濁液)を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。さらに、ろ過及び洗浄した後、乾燥及び解砕処理して樹脂ビーズを得た。
【0073】
(比較例4)
ジアセチルセルロース(商品名「CA−398−6」、イーストマンケミカル社製)35部を酢酸エチル(水溶解度:8g/100g)350部に溶解して油相を調製した。また、ポリビニルアルコール15部をイオン交換水300部に溶解して水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて1,500rpmで10分間撹拌して、懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した懸濁液の体積平均粒子径は、16μmであった。
【0074】
ディゾルバーを用いて得られた懸濁液を500rpmで撹拌しながら、イオン交換水4,500部を一気に注入し、樹脂粒子分散液(樹脂ビーズ分散液)を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。得られた樹脂ビーズを常法にしたがって一部加水分解した後、ろ過、洗浄、乾燥、及び解砕処理して、比較例4の樹脂ビーズを得た。
【0075】
<樹脂ビーズの評価>
(体積平均粒子径)
コールターカウンター(ベックマン・コールター社製)を使用して樹脂ビーズの体積平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
(真球度)
走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した樹脂ビーズのSEM画像を画像解析し、下記式(1)より、個々の樹脂ビーズの円形度Cを算出する。そして、任意に選択した100個以上の樹脂ビーズの円形度Cの相加平均値を真球度とした。結果を表1に示す。
C=(4πS)/(L) ・・・(1)
【0077】
上記式(1)中、Sは、画像中に占める樹脂ビーズの面積(投影面積)を示し、Lは、画像中における樹脂ビーズの外周部の長さを示す。円形度Cの値が1に近いほど、粒子の形状は真球に近い。
【0078】
(表面平滑度)
走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した樹脂ビーズのSEM画像(×5,000)を観察し、下記式(2)より、個々の樹脂ビーズの平滑度Mを算出する。そして、任意に選択した100個以上の樹脂ビーズの平滑度Mの相加平均値を表面平滑度とした。結果を表1に示す。平滑度Mの値が1に近いほど、粒子の表面は平滑に近い。
M=(1−(S)/(S))×100 ・・・(2)
【0079】
上記式(2)中、Sは、画像中に占める樹脂ビーズの面積(投影面積)を示し、Sは樹脂ビーズとそれに近似した円を重ねた際に、樹脂粒子の輪郭で形成されたエリアと、重ねた円の輪郭より内部にある面積と外部にある面積の総和を示す。
【0080】
(中実度)
走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した樹脂ビーズの断面のSEM画像を画像解析し、個々の樹脂ビーズの、樹脂で満たされた部分の体積を算出する。そして、任意に選択した20個以上の樹脂ビーズの、樹脂で満たされた部分の体積の平均値を中実度(体積%)とした。結果を表1に示す。
【0081】
(アセチル基及びプロピオニル基の含有率)
特表2006−523752号公報の記載内容(主として、段落[0136]〜[0145]の記載内容)に準じて、樹脂ビーズのアセチル基の含有率及びプロピオニル基の含有率を測定及び算出した。結果を表1に示す。
【0082】
(触感)
樹脂ビーズの触感について、10人のパネルテストによる官能評価を行った。樹脂ビーズに触れ、「滑らかさ」、「肌への伸びの良さ」、及び「しっとり感」を総合的に判断し、以下に示す評価基準にしたがって5点満点で採点し、10人の平均点を算出した。結果を表1に示す。
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
【0083】
(臭気(製品安定性))
樹脂ビーズの臭気について、5人のパネルテストによる官能評価を行った。樹脂ビーズ4.0g、及び樹脂ビーズの水分量が10%となる量の純水を30mL容の密封可能なガラス瓶に入れ、密封して70℃の恒温槽で7日間促進試験を行った。室温まで冷却した後、蓋を開けて臭気の変化を確認した。促進試験前の樹脂ビーズの臭気を基準臭として比較し、以下に示す評価基準にしたがって5点満点で採点し、5人の平均点を算出した。結果を表1に示す。
5:変化を感じない
4:やや変化を感じる
3:変化を感じる
2:やや強い変化を感じる
1:強い変化を感じる
【0084】
【0085】
<化粧料の製造>
(化粧料−1)
化粧料の原料として従来用いられている各種成分を混合して化粧料−1を製造した。具体的には、まず、シリコーン処理された各粉体(マイカ、タルク、微粒子酸化チタン、及び硫酸バリウム)と、各樹脂ビーズとを、表2に示す配合量で配合し、均一になるまで混合して粉体混合物を得た。次いで、ワセリン、スクワラン、及びトリオクタン酸グリセリルを混合して得た混合物(その他の成分)を粉体混合物に加え、均一なるまで混合した後、容器に充填し、必要に応じてプレス成型して化粧料−1を得た。
【0086】
【0087】
(化粧料−2)
化粧料の原料として従来用いられている各種成分を混合して、サンカット乳液である化粧料−2を製造した。具体的には、まず、シリコーンオイル、紫外線防御剤、乳化剤、分散剤、イソノナン酸イソトリデシル、及び各樹脂ビーズを表3に示す配合量で配合し、混合して油相成分を調製した。また、精製水、ジプロピレングリコール、塩化ナトリウム、及びクエン酸ナトリウムを表3に示す配合量で配合し、混合して水相成分を調製した。次いで、調製した油相成分に水相成分を撹拌しながら添加して乳化させ、化粧料−2を得た。
【0088】
【0089】
<化粧料−1の評価>
(触感、肌への伸び)
化粧料−1の触感及び肌への伸びについて、10人のパネルテストによる官能評価を行った。「触感の良さ」及び「肌への伸び」を判断し、以下に示す評価基準にしたがってそれぞれ5点満点で採点し、10人の平均点を算出した。結果を表4に示す。
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
【0090】
(臭気(製品安定性))
化粧料−1の臭気について、5人のパネルテストによる官能評価を行った。化粧料−1(粉体)4.0gを30mL容の密封可能なガラス瓶に入れ、密封して70℃の恒温槽で7日間促進試験を行った。室温まで冷却した後、蓋を開けて臭気の変化を確認した。促進試験前の粉体の臭気を基準臭として比較し、以下に示す評価基準にしたがって5点満点で採点し、5人の平均点を算出した。結果を表4に示す。
5:変化を感じない
4:やや変化を感じる
3:変化を感じる
2:やや強い変化を感じる
1:強い変化を感じる
【0091】
【0092】
<化粧料−2の評価>
(触感、肌への伸び、透明性)
化粧料−2の触感、肌への伸び、及び透明性について、10人のパネルテストによる官能評価を行った。「触感の良さ」、「肌への伸び」、及び「透明性」を判断し、以下に示す評価基準にしたがってそれぞれ5点満点で採点し、10人の平均点を算出した。結果を表5に示す。
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
【0093】
(臭気(製品安定性))
化粧料−2の臭気について、5人のパネルテストによる官能評価を行った。化粧料−2(液体)4.0gを30mL容の密封可能なガラス瓶に入れ、密封して70℃の恒温槽で7日間促進試験を行った。室温まで冷却した後、蓋を開けて臭気の変化を確認した。促進試験前の液体の臭気を基準臭として比較し、以下に示す評価基準にしたがって5点満点で採点し、5人の平均点を算出した。結果を表5に示す。
5:変化を感じない
4:やや変化を感じる
3:変化を感じる
2:やや強い変化を感じる
1:強い変化を感じる
【0094】
【0095】
表4及び5に示すように、実施例の樹脂ビーズを用いることで、触感、肌への伸び、透明性、及び製品安定性に優れた化粧料を製造できたことがわかる。また、実施例の樹脂ビーズを用いることで、化粧料だけでなく、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、及び樹脂組成物などの各種製品に対しても、優れた触感、透明性、伸び、及び製品安定性などの特性を付与できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の樹脂ビーズは、石油由来の合成系素材で形成された樹脂ビーズと同等以上の特性を有する。このため、本発明の樹脂ビーズを用いれば、石油由来の合成系素材で形成された樹脂ビーズを用いなくても、良好な触感で、肌への伸びが良く、透明感があり、かつ、品質の安定した化粧品などの製品を提供することができる。したがって、本発明の樹脂ビーズは、例えば、化粧料、外皮用剤、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、及び樹脂組成物などの各種製品の構成材料として有用である。

【要約】
【課題】臭気が発生しにくく、優れた触感及び肌への伸びを有する化粧料等の各種製品を提供可能な、石油由来の合成系素材からなる樹脂粒子と代替可能な樹脂ビーズ、及びそれを用いた化粧料等の各種製品を提供する。
【解決手段】セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズである。体積平均粒子径が、50μm以下であり、真球度が、0.7〜1.0であり、表面平滑度が、80〜100%であり、アセチル基の含有率が、25質量%以下であり、プロピオニル基の含有率が、10質量%以上である。また、この樹脂ビーズを含有する、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、及び樹脂組成物のいずれかの製品である。
【選択図】図1
図1
図2