(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン試験装置に設置されたエンジンのエンジンシリンダの筒内温度を計測する温度計と、前記エンジンシリンダの筒内圧力を計測する圧力計と、前記エンジンシリンダに流入される空気流量を計測する流量計と、温度計特性情報を算出する計測装置とを備えた温度計特性情報生成システムであって、
前記計測装置は、
前記エンジン試験装置が前記エンジンを燃焼させずに、前記エンジンシリンダに空気を流入して圧縮動作を行わせている最中に、前記温度計が計測した筒内温度、前記圧力計が計測した筒内圧力、及び前記流量計が計測した空気流量を取得するデータ取得部と、
予め記憶している理想気体の状態方程式と、前記取得した筒内圧力及び空気流量とを用いて、前記エンジンシリンダ内の温度の真値としてリファレンス温度を算出し、該リファレンス温度及び前記取得した筒内温度を用いて前記温度計特性情報として前記温度計の伝達関数を算出する温度計特性算出部とを有することを特徴とする温度計特性情報生成システム。
前記温度計特性算出部は、前記リファレンス温度を入力値とし、該リファレンス温度に対応する前記温度計が計測した筒内温度を出力値として、フーリエ解析演算を行い前記温度計の伝達特性を算出し、該算出した伝達特性から前記伝達関数を算出するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の温度計特性情報生成システム。
第1バルブ及び第2バルブが設置された配管を備え且つ該配管に加圧空気を供給すると共に前記第1、第2バルブの開閉動作を制御して該配管の管内の圧力をステップ状に変化させる圧力ステップ応答装置と、該配管の管内温度を計測する第1温度計と、該配管の管内圧力を計測する第1圧力計と、該配管の管壁温度を計測する第2温度計と、外気温を計測する第3温度計と、外気圧を計測する第2圧力計と、温度計特性情報を算出する計測装置とを備えた温度計特性情報生成システムであって、
前記計測装置は、
前記配管の寸法情報と、前記加圧空気の組成情報と、該配管の管内の初期圧力及び初期温度と、前記第1、第2バルブの流路抵抗を示すバルブ情報とが含まれるシミュレーション条件情報を記憶していると共に、
前記圧力ステップ応答装置が前記配管の圧力をステップ状に変化させている最中に、前記第1温度計が計測した管内温度と、前記第1圧力計が計測した管内圧力と、前記第2温度計が計測した管壁温度と、前記第3温度計が計測した外気温と、前記第2圧力計が計測した外気圧とを取得するデータ取得部と、
前記シミュレーション条件情報と、前記取得した管壁温度、外気温及び外気圧とを用いた一次元の流体解析を用いたシミュレーションにより前記配管を流れる熱流体モデルを生成し、前記取得した管内圧力と、前記シミュレーションにより生成した熱流体モデルとを用いて、前記配管内の温度の真値としてリファレンス温度を算出する流体解析処理部と、
前記算出したリファレンス温度及び前記取得した管内温度を用いて前記温度計特性情報として前記温度計の伝達関数を算出する温度計特性算出部とを有することを特徴とする温度計特性情報生成システム。
エンジン試験装置に設置されたエンジンのエンジンシリンダの筒内温度を計測する温度計と、前記エンジンシリンダの筒内圧力を計測する圧力計と、前記エンジンシリンダに流入される空気流量を計測する流量計と、温度計特性情報を算出する計測装置とを用いた温度計特性情報生成方法であって、
前記エンジン試験装置が、前記エンジンを燃焼させずに前記エンジンシリンダに空気を流入して圧縮動作を行わせるステップと、
前記計測装置が、前記エンジンシリンダに空気を流入して圧縮動作を行わせている最中に、前記温度計が計測した筒内温度、前記圧力計が計測した筒内圧力、及び前記流量計が計測した空気流量を取得するステップと、
前記計測装置が、予め記憶している理想気体の状態方程式と、前記取得した筒内圧力及び空気流量とを用いて、前記エンジンシリンダ内の温度の真値としてリファレンス温度を算出し、該リファレンス温度及び前記取得した筒内温度を用いて前記温度計特性情報として前記温度計の伝達関数を算出するステップとを実行することを特徴とする温度計特性情報生成方法。
第1バルブ及び第2バルブが設置された配管を備え且つ該配管に加圧空気を供給すると共に前記第1、第2バルブの開閉動作を制御して該配管の管内の圧力をステップ状に変化させる圧力ステップ応答装置と、該配管の管内温度を計測する第1温度計と、該配管の管内圧力を計測する第1圧力計と、該配管の管壁温度を計測する第2温度計と、外気温を計測する第3温度計と、外気圧を計測する第2圧力計と、温度計特性情報を算出する計測装置とを用いた温度計特性情報生成方法であって、
前記計測装置には、前記配管の寸法情報と、前記加圧空気の組成情報と、該配管の管内の初期圧力及び初期温度と、前記第1、第2バルブの流路抵抗を示すバルブ情報とが含まれるシミュレーション条件情報が記憶されており、
前記圧力ステップ応答装置が、前記配管の管内の圧力をステップ状に変化させるステップと、
前記計測装置が、前記配管の管内の圧力がステップ状に変化している最中に、前記第1温度計が計測した管内温度と、前記第1圧力計が計測した管内圧力と、前記第2温度計が計測した管壁温度と、前記第3温度計が計測した外気温と、前記第2圧力計が計測した外気圧とを取得するステップと、
前記計測装置が、前記シミュレーション条件情報と、前記取得した管壁温度、外気温及び外気圧とを用いた一次元の流体解析を用いたシミュレーションにより前記配管を流れる熱流体モデルを生成し、前記取得した管内圧力と、前記シミュレーションにより生成した熱流体モデルとを用いて、前記配管内の流体の温度の真値としてリファレンス温度を算出するステップと、
前記計測装置が、前記算出したリファレンス温度及び前記取得した管内温度を用いて前記温度計特性情報として前記温度計の伝達関数を算出するステップとを実行することを特徴とする温度計特性情報生成方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態(第1実施形態、第2実施形態)の温度計特性情報生成システムについて図面に基づいて説明する。
【0019】
《第1実施形態》
先ず、本発明の第1実施形態の温度計特性情報生成システムの構成について、
図1〜4を参照しながら説明する。
【0020】
ここで、
図1は、第1実施形態の温度計特性情報生成システムの構成を示した模式図である。
図2は、第1実施形態の温度計特性情報生成システムの温度計特性情報生成処理の手順を示したフローチャートである。
図3は、第1実施形態の温度計特性情報生成システムが算出する温度計の伝達特性の入出力の関係を示した模式図である。
図4は、1実施形態の温度計特性情報生成システムが温度計の伝達特性に伝達関数をフィッテングして同定する処理を説明するためのイメージ図である。
【0021】
図1に示すように、第1実施形態の温度計特性情報生成システムW1は、エンジンベンチ(エンジン試験装置)1に設置されたエンジンEのエンジンシリンダ11の筒内の温度(筒内温度(T’))を計測する温度計101と、エンジンシリンダ11の筒内の圧力(筒内圧力(P))を計測する圧力計102と、エンジンシリンダ11に流入される空気流量(n)を計測する流量計103と、各センサ(温度計101、圧力計102及び流量計103)が計測した計測値を用いて、温度計101の温度計特性情報(伝達関数、回帰伝達関数)を算出する計測装置110とを有している。
なお、エンジンベンチ1は、温度計101の温度計特性情報(伝達関数、回帰伝達関数)を算出するための計測値を各センサ(温度計101、圧力計102及び流量計103)で計測する工程において、エンジンEを燃焼させずに、エンジンEに空気を流入してエンジンシリンダ11をダイナモ回転制御によって、圧縮させる動作を行わせるようになっている。
【0022】
また、温度計101、圧力計102及び流量計103は、それぞれ、計測装置110と有線或いは無線で接続されており、計測装置110との間で信号の授受が行えるようになっている。
また、温度計101は、エンジンシリンダ11の筒内に設置されており、エンジンEのエンジンシリンダ11の筒内温度(T’)を計測して、計測装置110に、計測した筒内温度(T’)を送信する。また、圧力計102は、エンジンシリンダ11の筒内に設置されており、エンジンEのエンジンシリンダ11の筒内圧力(P)を計測して、計測装置110に、計測した筒内圧力(P)を送信する。また、流量計103は、エンジンシリンダ11に空気を送り込むインテークマニホールド3に接続されたインテークパイプ(吸気管)5の管内に設置されており、エンジンEに流入される空気の空気流量(n)を計測して、計測装置110に、計測した空気流量(n)を送信する。
【0023】
なお、温度計101は、エンジン試験等において汎用的に用いられているものであれば、どのようなものでもかまわないが、第1実施形態では、一例として、温度計101に、上述した非特許文献1に示した温度計を用いている。
また、図中の符号7がスロットルバルブを示し、符号9がエンジンEから空気を排出させる排出管を示している。
【0024】
計測装置110は、各センサ(温度計101、圧力計102及び流量計103)からそれぞれ送信されてくる計測値(筒内温度(T’)、筒内圧力(P)、空気流量(n))を受信する。また、制御装置110は、受信した計測値のうち、筒内圧力(P)、空気流量(n)と、予め記憶している「理想気体の状態方程式(以下、単に「状態方程式」という)」とを用いて、リファレンス温度(T)を算出する。
【0025】
また、後段で詳細に説明するが、計測装置110は、上記のリファレンス温度(T)と、温度計101から取得した筒内温度(T’)とを用いて温度計101の伝達関数(Gx(s))を算出し、その伝達関数(Gx(s))から回帰伝達関数(Gy(s))を生成して記憶する。このように、温度計101の回帰伝達関数(Gy(s))を求めて、計測装置110に設定しておけば、その後に行う、エンジンEの性能試験等において、温度計101が計測した筒内温度(T’)に対して、回帰伝達関数(Gy(s))を用いて補正することで、応答性が良い筒内温度が得られるようになる。
【0026】
また、エンジンベンチ1は、試験対象であるエンジンEに負荷を与えるダイナモメータ10と、ダイナモメータ10の回転軸とエンジンEの回転軸とを連結するシャフト15と、ダイナモメータ10の動作を制御するダイナモ制御装置11と、エンジンの動作を制御するエンジン制御装置(図示せず)とを備えている。
なお、エンジンベンチ1は、周知技術のものを用いているため、詳細な説明は省略する。また、試験対象となるエンジンEは、周知の構成のものであるため、図中においては、第1実施形態の温度計特性情報生成システムW1に直接的に関係する部分だけを示している。
【0027】
次に、第1実施形態の温度計特性情報生成システムW1を構成する計測装置110の機能構成について説明する。
計測装置110は、制御部111と、データ取得部112と、温度計特性算出部113と、温度補正部114とを有している。
【0028】
なお、計測装置110のハードウェア構成について特に限定しないが、計測装置110は、例えば、CPU、補助記憶装置、主記憶装置、ネットワークインターフェース及び入出力インターフェースを備えるコンピュータ(1台或いは複数台のコンピュータ)により構成することができる。この場合、入出力インターフェースには、各センサ(温度計101、圧力計102及び流量計103)が接続されている。また、補助記憶装置には、「制御部111、データ取得部112、温度特性算出部113及び温度補正部114」の機能を実現するためのプログラムが記憶されている。そして、「制御部111、データ取得部112、温度特性算出部113及び温度補正部114」の機能は、前記CPUが前記プログラムを前記主記憶装置にロードして実行することにより実現される。
【0029】
また、上記の制御部111は、計測装置110の全体の動作を制御するもので、ユーザからの各種設定や入力を受け付けたり、温度計特性情報生成システムW1の操作要求を受け付けたりする。
【0030】
データ取得部112は、所定の計測タイミングで、各センサ(温度計101、圧力計102及び流量計103)が計測した計測値(筒内温度(T’)、筒内圧力(P)、空気流量(n))を取得する。
【0031】
また、温度計特性算出部113には、下記の(式1)に示す状態方程式を記憶している。
〔数1〕
PV=nRT・・・(式1)
R:気体定数
そして、温度計特性算出部113は、データ取得部112が取得した計測値(筒内温度(T’)、筒内圧力(P)、空気流量(n))のうち、「筒内圧力(P)及び空気流量(n)」と、(式1)に示す状態方程式とを用いてリファレンス温度(T)を算出する。
また、温度計特性算出部113は、算出したリファレンス温度(T)及び筒内温度(T’)を用いて温度計の伝達関数(Gx(s))を算出する。また、温度特性算出部113、その伝達関数(Gx(s))から回帰伝達関数(Gy(s))を生成して記憶する。
【0032】
また、温度補正部114は、温度計101の回帰伝達関数(Gy(s))が算出された後、別途で行うエンジン試験等において、算出された回帰伝達関数(Gy(s))を用いて、温度計101が計測したエンジンシリンダ11の筒内温度(T’)の補正を行う。
【0033】
次に、第1実施形態の温度計特性情報生成システムW1が行う、温度計特性情報生成処理の手順について、
図1〜
図4を参照しながら説明する。
【0034】
図2に示すように、先ず、温度計特性情報生成システムW1は、データ計測処理(S1)を行う。
このデータ計測処理(S1)では、エンジンベンチ1を駆動させて、エンジンベンチ1に設置されたエンジンEを燃焼させずに、エンジンEに空気を流入してエンジンシリンダ11の筒内をダイナモ回転制御によって圧縮させる動作を行わせる。なお、エンジンシリンダ11の筒内圧縮中は略断熱状態であると仮定できる。
そして、エンジンシリンダ11の筒内を圧縮させる動作をさせている最中に、温度計特性情報生成システムW1を構成する計測装置110のデータ取得部112が、エンジンシリンダ11の筒内温度(T’)及び筒内圧力(P)と、エンジンEに流入される空気(流体)の空気流量(n)とを取得する。
【0035】
具体的には、S1では、計測装置110のデータ取得部112が、所定の計測タイミングで、所定の計測時間(モニタリング時間)、エンジンシリンダ11の筒内に設置された温度計101からエンジンシリンダ11の筒内温度(T’)を取得し、エンジンシリンダ11の筒内に設置された圧力計102からエンジンシリンダ11の筒内圧力(P)を取得し、インテークパイプ(吸気管)5の管内に設置された流量計103からエンジンEに流入される空気流量(n)を取得する。
また、データ取得部112は、計測時間毎に、取得した計測値(筒内温度(T’)、筒内圧力(P)、空気流量(n))を対応付けて記憶する(例えば、図示しないメモリ(計測装置110の補助記憶装置及び主記憶装置)に記憶させる)。
【0036】
次に、温度計特性情報生成システムW1は、リファレンス温度の算出処理を行う(S2)。
このリファレンス温度の算出処理(S2)では、温度計特性情報生成システムW1を構成する計測装置110の温度計特性算出部113が、データ取得部112が取得し、計測時間毎に対応付けて記憶している計測値(筒内温度(T’)、筒内圧力(P)、空気流量(n))のうち、「筒内圧力(P)及び空気流量(n)」と、幾何学計算で算出されるエンジンシリンダ11の容積(V)と、上述した状態方程式(PV=nRT)とを用いてリファレンス温度(T)を算出する(リファレンス温度(T)を計測時間毎に算出する)。
【0037】
なお、上述したように、エンジンシリンダ11の筒内圧縮中は略断熱状態になっていると仮定できるため、状態方程式により算出された算出値(T)が真値(リファレンス温度)になると推定している。
【0038】
また、温度計特性算出部113には、予め「エンジンシリンダ11の機械的情報(形状、寸法等の機械的情報)と、下記の(式2)、(式3)、(式4)、(式5)とが設定されている。
そして、エンジンシリンダ11の容積(ピストン15よりも上方(図中における上方)の領域の容積(V(V(θ)))は、エンジンシリンダの機械的情報と、下記の(式2)、(式3)、(式4)、(式5)に示す計算式を用いた幾何学計算により算出される。
〔数2〕
V : シリンダー容積 [m
3]
L : コンロッド長 [m]
R : クランク半径 [m]
Q : 全オフセット長 [m]
Θ : 修正クランク角度 [deg ATDC]
B : ボア径[m]
CR : 圧縮比
V
Disp : 変位容積[m
3]
O
Pin : スラスト方向を正としたピストンピンオフセット [m]
O
Crank : スラスト方向を正としたクランクオフセット [m]
また、データ取得部112が取得した空気流量(n)は、体積流量で計測された値[L/s]であるため、温度計特性算出部113は、以下の計算をした上で、状態方程式に空気流量(n)を代入している。具体的には、温度計特性算出部113は、体積流量で計測された空気流用(n)の値[L/s]に対して、大気圧、大気温度、湿度から算出した密度を乗算することで質量流量[g/s]に変換し、その後、空気の分子量(モル質量) 28.966[g/mol]で変換した上で状態方程式に代入している。
【0039】
次に、温度計特性情報生成システムW1は、伝達関数の算出処理を行う(S3)。
この伝達関数の算出処理(S3)では、温度計特性情報生成システムW1を構成する計測装置110の温度計特性算出部113が、
図3に示すように、状態方程式から算出したリファレンス温度(T)を入力値とし、当該リファレンス温度(T)に対応する計測時間に温度計101が計測した筒内温度(T’)を出力値として、フーリエ解析演算を行い、温度計の伝達特性(Gx’(s))を算出する。
なお、
図4のゲイン図において、上記のフーリエ解析演算により得られた伝達特性(Gx’(s))の一例を示している。
【0040】
さらに、S3では、温度特性算出部113は、算出した伝達特性(Gx´(s))に、下記の(式6)に示す任意の伝達関数(Gx(s))でフィッテングして、「Gx´(s)=Gx(s)」になるように、(式6)に示すパラメータ(α、β)を同定する(
図3参照)。
〔数3〕
【0041】
次に、温度計特性情報生成システムW1は、回帰伝達関数の算出処理を行う(S4)。
この回帰伝達関数の算出処理(S4)では、温度計特性情報生成システムW1を構成する計測装置110の温度計特性算出部113が、S3で算出した伝達関数(Gx(s))を用いて、下記の(式7)に示す回帰伝達関数(Gy(s))を算出する。
なお、「Lowpassfilter」は、Gx(s)の帯域より、より高周波にカットオフを設定したフィルタを用いることでGx(s)に干渉しない特性とする。
〔数4〕
なお、温度計特性算出部113は、図示しないメモリ(計測装置110の補助記憶装置及び主記憶装置)に、S3で算出した「伝達特性(Gx’(s))、伝達関数(Gx(s))」と、S4で算出した回帰伝達関数(Gy(s))に記憶させる。
【0042】
続いて、温度計101の回帰伝達関数(Gy(s))が算出された後、第1実施形態の温度計特性情報生成システムW1が行う、温度補正処理について説明する。
【0043】
この温度補正処理では、先ず、計測装置110のデータ取得部112が、エンジンベンチ1に設置されたエンジンEの性能試験において、エンジンシリンダ11の筒内に設置された温度計101が計測した筒内温度(T’)を取得する。
次に、計測装置110の温度補正部114が、図示しないメモリ(計測装置110の補助記憶装置及び主記憶装置)に記憶している「回帰伝達関数(Gy(s))」を読み出し、データ取得部112に取得した筒内温度(T’)に、読み出した「回帰伝達関数(Gy(s))」を印加することにより、温度計101が測定した筒内温度(T’)を補正筒内温度(Th)に補正する。
【0044】
このように、第1実施形態の温度計特性情報生成システムW1によれば、温度計が高応答に温度を計測できるようにするための温度計特性情報「伝達関数(Gx(s))、回帰伝達関数(Gy(s))」を生成することができる。そのため、例えば、エンジン試験のような環境における温度計測においても、この回帰伝達関数(Gy(s))を用いて温度計101による計測値を補正することにより、高応答で温度計測を行うことができる。
【0045】
《第2実施形態》
次に、本発明の第2実施形態の温度計特性情報生成システムの構成について、
図5〜
図7を参照しながら説明する。
【0046】
ここで、
図5は、第2実施形態の温度計特性情報生成システムの構成を示した模式図である。また、
図6は、第2実施形態の温度計特性情報生成システムの温度計特性情報生成処理の手順を示したフローチャートである。
図7は、第2実施形態の温度計特性情報生成システムが算出する温度計の伝達特性の入出力の関係を示した模式図である。
なお、第2実施形態の構成のうち、第1実施形態と同じ構成(或いは相当する構成)には、同じ符号を付して、説明を簡略化或いは省略し、主に、第1実施形態と異なる内容について詳細に説明する。
【0047】
図5に示すように、第2実施形態の温度計特性情報生成システムW2は、配管(円管)20を備え且つ配管20に加圧空気を供給して配管20の管内の圧力をステップ状に変化させる圧力ステップ応答装置Zと、配管20の管内の温度(管内温度(T’))を計測する温度計(第1温度計)101と、配管20の管内の圧力(管内圧力(P))を計測する圧力計(第1圧力計)102と、配管20の管壁温度(Tw)を計測する温度計(第2温度計)105と、外気温(Tо)を計測する温度計(第3温度計)106と、外気圧(Pо)を計測する圧力計(第2圧力計)107と、温度計101の温度計特性情報(伝達関数、回帰伝達関数)を算出する計測装置120とを有している。
【0048】
圧力ステップ応答装置Zは、両端が貫通している配管(円管)20と、配管20に加圧空気を供給する加圧空気供給装置30と、配管20の一端部側(加圧空気の流入口側)の管内に設置された第1バルブ21と、配管20の他端部側(加圧空気の流出口側)の管内に設置された第2バルブ22と、各バルブ(第1、第2バルブ21、22)の開閉動作を制御するバルブ操作装置40とを備えている。
【0049】
また、加圧空気供給装置30は、配管20の一端部に接続されており、配管20の一端部から配管20の管内に所定圧力の加圧空気を流入する。
また、配管20は、両端が貫通していると共に、加圧空気供給装置30に接続され且つ第1方向(図中のY方向)に延びる第1直管部20aと、第1直管部20aから略直角に屈曲して第2方向(図中のX方向)に延びる第2直管部20bとを備えた略L字状に形成されている。また、配管20の外部が大気圧になっている。
【0050】
また、2つのバルブ(第1、第2バルブ21、22)は、配管20のうちの第2方向に延びる第2直管部20bに設けられている。
具体的には、第1バルブ21は、配管20を構成する第2直管部20bの一端部側(加圧空気供給装置30側)に設けられている。また、第2バルブ22は、配管20を構成する第2直管部20bの他端部に設けられており、第2バルブ22を開状態にすると、配管20の他端部の開口が外部に開放される。
【0051】
また、バルブ操作装置40は、バルブ(第1、第2バルブ21、22)に、開閉制御信号を送信して、2つのバルブ(第1、第2バルブ21、22)の開閉状態を制御することにより、2つのバルブ(第1、第2バルブ21、22)の間に、加圧空気供給装置30から供給された加圧空気を閉じ込め、その後、第2バルブ22の開閉状態を制御して、配管20の加圧空気(流体)の圧力をステップ状に変化させる。
【0052】
計測装置120は、圧力ステップ応答装置Zが配管20の加圧空気(流体)の圧力をステップ状に変化させている最中に、センサ(温度計101、圧力計102)から当該センサが計測した配管20の管内の計測値(管内温度(T’)、管内圧力(P))を取得する。また、計測装置120は、圧力ステップ応答装置Zが配管20の加圧空気(流体)の圧力をステップ状に変化させている最中に、センサ(温度計105、温度計106、圧力計107)から当該センサが計測した計測値(管壁温度(Tw)、外気温(Tо)、外気圧(Pо))を取得する。
また、計測装置120は、後述するシミュレーション条件情報と、取得した「管壁温度(Tw)、外気温(Tо)、外気圧(Pо)」とを用いた一次元の流体解析を用いたシミュレーション(コンピュータシミュレーション)により配管20を流れる熱流体モデルを生成し、圧力計101が計測した管内圧力(P)と、シミュレーションにより生成した熱流体モデルとを用いて、配管20内の温度の真値(リファレンス温度(T))を算出する。また、計測装置110は、シミュレーションにより算出した配管20内の温度の真値(リファレンス温度(T))と、温度計101が計測した管内温度(T’))とを用いて、温度計特性情報(伝達関数、回帰伝達関数)を算出する。
【0053】
なお、温度計101は、加圧空気の流入口側の第1バルブ21の近傍で且つ配管20の壁・近傍に設置されており、流速が「0(m/s)」付近のポイント(レイノルズ数が2000以下のポイント)の温度が計測できるようになっている。
このようにするのは、流速が「0(m/s)」付近以外の他のポイントでは、「流速=0(m/s)」と、「流速>0(m/s)」とが混在した計測値になるため、シミュレーションにおいて、高精度に流体解析ができなくなるためである。
また、図示する例では、圧力計102は、第1バルブの近傍に設置されているが、これは一例に過ぎない。圧力計102は、配管20の管内において、2つのバルブ(第1、第2バルブ21、22)の間の位置に設置されていれば良い。
また、温度計105は、配管20の外周側面で且つ第1バルブ21と第2バルブ22の間の位置に設置されており、配管20の管壁温度(Tw)を計測できるように設定されている。また、温度計106及び圧力計107は、配管20の外部の位置(例えば、温度計特性情報生成システムW2が設置されている試験室内の任意の位置)に設置されており、外気温(Tо)、外気圧(Pо)を計測できるように設定されている。
【0054】
次に、第2実施形態の温度計特性情報生成システムW2を構成する計測装置120の機能構成について説明する。
計測装置120は、制御部111と、データ取得部112と、流体解析処理部121と、温度計特性算出部122と、温度補正部114とを有している。
なお、制御部111及び温度補正部114は、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0055】
また、計測装置120のハードウェア構成について特に限定しないが、第1実施形態の計測装置110と同様、計測装置120は、例えば、CPU、補助記憶装置、主記憶装置、ネットワークインターフェース及び入出力インターフェースを備えるコンピュータ(1台或いは複数台のコンピュータ)により構成することができる。この場合、入出力インターフェースには、各センサ(温度計101、圧力計102、温度計105、温度計106、圧力計107)が接続されている。また、補助記憶装置には、「制御部111、データ取得部112、流体解析処理部121、温度特性算出部122及び温度補正部114」の機能を実現するためのプログラムが記憶されている。そして、「制御部111、データ取得部112、流体解析処理部121、温度特性算出部122及び温度補正部114」の機能は、前記CPUが前記プログラムを前記主記憶装置にロードして実行することにより実現される。
【0056】
データ取得部112は、所定の計測タイミングで、各センサ(温度計101、圧力計102、温度計105、温度計106、圧力計107)が計測した計測値(管内温度(T’)、管内圧力(P)、管壁温度(Tw)、外気温(Tо)、外気圧(Pо))を取得する。
【0057】
また、流体解析処理部121には、温度計特性情報生成処理の前段階の処理において、シミュレーション条件情報が設定されている(前段階の処理において、計測装置120に、シミュレーション条件情報を記憶させている)。
このシミュレーション条件情報には、配管20の寸法情報(厚さ寸法、長さ寸法、径寸法等の寸法情報)と、配管20に流入される空気の組成情報と、配管20内の初期圧力及び初期温度と、バルブ(第1バルブ21、第2バルブ22)の流路抵抗を示すバルブ情報とが含まれている。なお、上記のバルブの流路抵抗は圧力挙動から同定する。
そして、流体解析処理部121は、「シミュレーション条件情報」及び「管壁温度(Tw)、外気温(Tо)、外気圧(Pо)」を用いた一次元の流体解析処理によるシミュレーションにより配管20を流れる熱流体モデル(数学的な熱流体モデル)を生成する。なお、管壁温度(Tw)、外気温(Tо)及び外気圧(Pо)は、熱流体モデルの境界条件として使用されている。
また、流体解析処理部121は、データ取得手段112が取得した「圧力計101が計測した管内圧力(P)」と、シミュレーションにより生成した熱流体モデルとを用いて、配管20内の温度の真値(リファレンス温度(T))を算出する。
【0058】
なお、流体解析処理部121の機能は、市販されている「一次元の流体解析処理を用いたコンピュータシミュレーションソフトウェア」により実現される。例えば、流体解析処理部121の機能は、「米国 Gamma Technologies社」が開発した「GT‐POWER」」により実現される。また、流体解析処理部121の機能は、周知技術であるため、詳細な説明は省略するが、Navier-Stokesを方程式として、運動量、エネルギーの式等を連立して計算を実行している。また、一次元解析として離散化は、流体の流れの方向のみであり、断面内にて圧力、流速、温度などの物理量は分布しないものとして計算を実行するようになっている。
【0059】
また、温度計特性算出部122は、流体解析処理部121が算出したリファレンス温度(T)と、データ取得部112が取得した管内温度(T’)を用いて温度計の伝達関数(Gx(s))を算出する。また、温度特性算出部113、その伝達関数(Gx(s))から回帰伝達関数(Gy(s))を生成して記憶する。
【0060】
次に、第2実施形態の温度計特性情報生成システムW2が行う、温度計特性情報生成処理の手順について、
図6〜
図7を参照しながら説明する。
【0061】
図6に示すように、先ず、温度計特性情報生成システムW2は、データ計測処理(S11)を行う。
このデータ計測処理(S11)では、圧力ステップ応答装置Zを駆動させて、配管20の管内の加圧空気(流体)の圧力をステップ状に変化させる。具体的には、圧力ステップ応答装置Zのバルブ操作装置40により、第1バルブ21を「開」にして、第2バルブ22を「閉」にした状態にして、加圧空気供給装置30を駆動させて配管20に、所定時間、加圧空気を流入させる。また、バルブ操作装置40は、所定時間経過すると、第1バルブ21を「閉」にして、2つのバルブ(第1、第2バルブ21、22)の間に、加圧空気供給装置30から供給された加圧空気(流体)を閉じ込める。その後、バルブ操作装置40が、第2バルブ22の開閉状態を制御して、配管20の加圧空気(流体)の圧力をステップ状に変化させる。
また、計測装置120のデータ取得部112は、配管20の加圧空気(流体)の圧力をステップ状に変化させている最中に、温度計101が計測した配管20の管内温度(T’)と、圧力計102が計測した配管20の管内圧力(P)とを取得する。また、データ取得部112は、圧力ステップ応答装置Zが配管20の加圧空気(流体)の圧力をステップ状に変化させている最中に、センサ(温度計105、温度計106、圧力計107)から当該センサが計測した(管壁温度(Tw)、外気温(Tо)、外気圧(Pо))を取得する。
なお、データ取得部112は、計測時間毎に、取得した計測値(管内温度(T’)、菅内圧力(P)、管壁温度(Tw)、外気温(Tо)、外気圧(Pо))を対応付けて記憶する(例えば、図示しないメモリ(計測装置110の補助記憶装置及び主記憶装置)に記憶させる)。
【0062】
次に、温度計特性情報生成システムW2は、リファレンス温度の算出処理を行う(S12)。
このリファレンス温度の算出処理(S12)では、計測装置120の流体解析処理部121が、予め設定されている「シミュレーション条件情報(配管20の寸法情報、配管に流入する空気の組成情報、配管20内の初期圧力及び初期温度、バルブ情報)」と、S11で取得した「管壁温度(Tw)、外気温(Tо)、外気圧(Pо)」とを用いた一次元の流体解析処理によるシミュレーションにより配管20を流れる熱流体モデルを生成する。また、流体解析処理部121は、データ取得手段112が取得した「圧力計102が計測した管内圧力(P)」と、シミュレーションにより生成した熱流体モデルとを用いて、配管20内の温度の真値(リファレンス温度(T))として、熱流体モデルの温度(T)を算出する。
【0063】
なお、S12において、配管20内の温度の真値(リファレンス温度(T))として、シミュレーションで生成した熱流体モデルの温度(T)を用いているのは以下の理由による。
温度計101及び圧力計102が設置されているは、流速が「0(m/s)」に近いポイント(レイノルズ数が2000以下のポイント)であり、このポイントでの熱伝達率に寄与するヌッセルト数Nuは、円筒状の管内の層流条件におけるヌッセルト数Nu=3.66(Constant(一定))になると推定できる。
そのため、温度計101が計測する温度の応答性の緩いポイントでヌッセルト数Nuを微調整し熱流体モデルと計測値を合わせる。圧力変化が出ているポイントも同現象のため、ヌッセルト数Nuは同じ値となり、熱伝達率は外挿補間される。すなわち、シミュレーションで生成した熱流体モデルの温度(T)を配管20内の温度の真値(リファレンス温度(T))として取り扱うことができる。
【0064】
次に、温度計特性情報生成システムW2は、伝達関数の算出処理を行う(S13)。
この伝達関数の算出処理(S13)では、計測装置120の温度計特性算出部122が、
図7に示すように、S12においてシミュレーションの熱流体モデルを用いて算出したリファレンス温度(T)を入力値とし、当該リファレンス温度(T)に対応する計測時間に温度計101が計測した管内温度(T’)を出力値として、フーリエ解析演算を行い、温度計の伝達特性(Gx’(s))を算出する。また、S13では、温度特性算出部122は、算出した伝達特性(Gx´(s))に、任意の伝達関数(Gx(s))でフィッテングして、「Gx´(s)=Gx(s)」になるように、伝達関数(Gx(s))のパラメータ(α、β)を同定する。
なお、S13の上記処理は、上述した第1実施形態のS3の処理と同じ手順であるため、詳細な説明を省略する。
【0065】
次に、温度計特性情報生成システムW2は、上述した第1実施形態のS4の処理と同じ手順で、回帰伝達関数の算出処理を行う(S14)。
この回帰伝達関数の算出処理(S14)では、計測装置120の温度計特性算出部122が、S13で算出した伝達関数(Gx(s))を用いて、回帰伝達関数(Gy(s))を算出する(第1実施形態で示した(式7)参照)。
【0066】
このように、第2実施形態の温度計特性情報生成システムW2においても、上述した第1実施形態と同様、温度計101の回帰伝達関数(Gy(s))が得られるため、エンジン試験のような環境における温度計測においても、この回帰伝達関数(Gy(s))を用いて温度計101による計測値を補正することにより、高応答で温度計測を行うことができる。
【0067】
さらに、第2実施形態の温度計特性情報生成システムW2では、第1実施形態のように、実際のエンジンEを用いることなく、配管20を備える圧力ステップ応答装置Zにより、配管20内の加圧空気(流体)の圧力をステップ状に変化させる物理環境を作り、その物理環境下の温度(T’)及び圧力(P)を計測している。
【0068】
具体的には、第2実施形態では、一次元の流体解析処理によるシミュレーションにより、圧力ステップ応答装置Zの配管20を流れる加圧空気(流体)の熱流体モデルを生成して(コンピュータシミュレーションにより配管20を流れる加圧空気(流体)の熱流体を再現し)、実測した管内圧力(P)及び熱流体モデルから熱流体モデルの温度を算出し、その温度を真値(リファレンス温度(T))としている。そして、第2実施形態では、リファレンス温度(T)及び実測した管内温度(T’)を用いて、温度計101の温度計特性情報(伝達関数、回帰伝達関数)を算出している。
すなわち、第2実施形態では、第1実施形態のようにエンジンEを用いる必要がないため、第1実施形態と比べて、コストをかけずに、省スペース且つ簡易な設備により、温度計特性情報(伝達関数、回帰伝達関数)を算出することができる。その結果、第2実施形態では、省スペースで実現できる簡易な設備で且つ低コストで、温度計101の温度計測の高応答化が可能になる。
【0069】
《第2実施形態の変形例》
次に、本発明の第2実施形態の温度計特性情報生成システムの変形例の構成について、
図8を参照しながら説明する。
【0070】
ここで、
図8は、第2実施形態の変形例の温度計特性情報生成システムのシステム構成を示した模式図である。
なお、第2実施形態の変形例の構成のうち、第1、2実施形態と同じ構成(或いは相当する構成)には、同じ符号を付して、説明を簡略化或いは省略し、主に、第1、2実施形態と異なる部分を説明する。
【0071】
第2実施形態の変形例の温度計特性情報生成システムW2’は、上述した第2実施形態のものから、配管20の構成を変形すると共に、バルブ(第1バルブ21、第2バルブ22)の位置を変更し、温度計101及び圧力計102の設置位置を変更した構成になっている。
【0072】
具体的には、
図8に示すように、第2実施形態の変形例の温度計特性情報生成システムW2’は、配管(円管)20を備え且つ配管20に配管に加圧空気を供給して配管20の管内の圧力をステップ状に変化させる圧力ステップ応答装置Zと、配管20の管内の温度(管内温度(T’))を計測する温度計101と、配管20の管内の圧力(管内圧力(P))を計測する圧力計102と、配管20の管壁温度(Tw)を計測する温度計105と、外気温(Tо)を計測する温度計106と、外気圧(Pо)を計測する圧力計107と、温度計101の温度計特性情報(伝達関数、回帰伝達関数)を算出する計測装置120とを有している。
【0073】
第2実施形態の変形例では、配管20は、第1方向(図中のY方向)に延設されている第1直管部20cと、第1直管部20cの他端部に接続され且つ第1直管部20cに対して直角な第2方向(図中のX方向)に延設されている第2直管部20dとを備えている。
【0074】
また、第1直管部20cは、両端が貫通しており、その一端部(図中の下端部)が加圧空気供給装置30に接続され、加圧空気供給装置30から管内に所定圧力の加圧空気が供給されるようになっている。また、第1直管部20cは、その他端部(図中の上端部)が「第2直管部20dの他端部側の側面」に接続されており、第1直管部20cの管内と第2直管部20cの管内とが連通している。
また、第2直管部20dは、一端部が封鎖された封鎖面20d1になっており、他端部が開口している。そして、加圧空気供給装置30からの加圧空気は、第1直管部20cを経由して、第2直管部20dの管内に流入するようになっている。
【0075】
第1バルブ21は、配管20を構成する第1直管部20cの管内に設けられている。
また、第2バルブ22は、配管20を構成する第2直管部20dの他端部の管内に設けられており、他端部の開口を開閉できるようになっている。
【0076】
また、温度計101は、第2直管部20dの一端部側の封鎖面20d1の近傍(壁面の近傍)に設置される。また、圧力計102は、第2直管部20dの一端部側に設置されている。
このような位置に、温度計101を設置したのは、配管20の管内において、
図5に示した第2実施形態よりもさらに、流速が「0m/s」に近いポイントで、配管20の管内の温度を計測できるようにするためである。なお、図示する例では、圧力計102は、第2直管部20dの一端部側に設置されているが、これは一例であり、設置位置を限定するものではない。
【0077】
また、第2実施形態の変形例は、上述した
図6の第2実施形態と同様の手順にしたがい、温度計特性情報生成処理を行うようになっているため、説明を省略するが、S11のデータ計測処理では、以下のようにして配管20の管内の加圧空気(流体)の圧力をステップ状に変化させる。
【0078】
具体的には、圧力ステップ応答装置Zのバルブ操作装置40により、第1バルブ21を「開」にして、第2バルブ22を「閉」にした状態にして、加圧空気供給装置30を駆動させて配管20に、所定時間、加圧空気を流入させる。また、バルブ操作装置40は、所定時間経過すると、第1バルブ21を「閉」にする。これにより、第1直管部20cの第1バルブ11と、第1直管部20dの一端部の封鎖面20d1と、第1直管部20dの他端部の第2バルブ22との間で形成される領域に、加圧空気供給装置30から供給された加圧空気(流体)を閉じ込められる。その後、バルブ操作装置40が、第2バルブ22の開閉状態を制御して、配管20の加圧空気(流体)の圧力をステップ状に変化させる。
そして、上述した第2実施形態と同様、計測装置120のデータ取得部112は、配管20の加圧空気(流体)の圧力をステップ状に変化させている最中に、温度計101が計測した配管20の管内温度(T’)と、圧力計102が計測した配管20の管内圧力(P)と、温度計105が計測した管壁温度(Tw)と、温度計106が計測した外気温(Tо)と、圧力計107が計測した外気圧(Pо)とを取得する。
【0079】
このように、第2実施形態の変形例においても、上述した第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、第2実施形態の変形例では、第2実施形態と比べて、流速が「0m/s」に近いポイントで、配管20の管内の温度及び圧力を計測できるため、第2実施形態と比べて、より正確に、温度計101が計測した計測値(T’)を補正するための温度計特性情報(伝達関数、回帰伝達関数)を算出することができる。
【0080】
以上、説明したように、本発明の実施形態及びその変形例によれば、温度計101が高応答に温度を計測できるようにするための温度計特性情報を生成する温度計特性情報生成システム及び温度計特性情報生成方法を提供することができる。
【0081】
なお、本発明は、上述した実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。
【解決手段】温度計特性情報を算出する計測装置110を備えた温度計特性情報生成システムW1であって、計測装置110は、エンジン試験装置1がエンジンEを燃焼させずにエンジンシリンダ11に空気を流入して圧縮動作を行わせている最中に、温度計101が計測したシリンダ11の筒内温度、圧力計101が計測したシリンダ11の筒内圧力、及び流量計103が計測したエンジン11に流入する空気流量を取得するデータ取得部112と、理想気体の状態方程式と、取得した筒内圧力及び空気流量とを用いて、エンジンシリンダ11内の温度の真値としてリファレンス温度を算出し、リファレンス温度及び取得した筒内温度を用いて温度計の伝達関数を算出する温度計特性算出部112とを有している。