(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779428
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】トランスファー装置
(51)【国際特許分類】
B21D 43/05 20060101AFI20201026BHJP
B30B 13/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
B21D43/05 N
B21D43/05 H
B21D43/05 E
B30B13/00 M
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-117411(P2016-117411)
(22)【出願日】2016年5月26日
(65)【公開番号】特開2017-209722(P2017-209722A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】392017222
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 信彦
(72)【発明者】
【氏名】安江 千明
【審査官】
石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−007614(JP,A)
【文献】
特開平09−295096(JP,A)
【文献】
特開2001−001186(JP,A)
【文献】
特開2004−050263(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2015−0061313(KR,A)
【文献】
特開平08−252698(JP,A)
【文献】
特表2015−514592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/05
B21D 43/00
B30B 13/00
B23Q 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置され、被加工材を保持及び解放できる複数の保持手段を有し、前後左右或いは上下に移動可能な1対のトランスファーバーと、前記トランスファーバーを前後左右或いは上下に移動するための駆動手段とからなるトランスファー装置において、
前記複数の保持手段の各々が、前記トランスファーバーに対して水平直角方向に伸縮自在な1対のアームを備えており、
前記被加工材用のステージが平行に2列設けてあり、
前記被加工材を移動する際に、隣り合う前記保持手段の前記アームが前記アームの長さ方向に対して逆向きに動作することにより、前記被加工材を前記ステージの第1列および第2列に交互に移動するよう構成されていることを特徴とするトランスファー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属プレス機械に被加工材を供給するトランスファー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品をプレス成形して製品を製造する場合、複雑な形状になるほど多数回のプレス動作を必要とする。そのような場合、プレス金型を1列に配置し、被加工材を順次移動させることにより1台のプレス機械で複雑な形状の金属部品を製造することができる。この際に被加工材を移動させるのに使用されるのがトランスファー装置である。
【0003】
一般的な二次元トランスファー装置の構成を
図2に示した。(a)では上型が上昇した際に1列に並べられた被加工材ステージ31の各々の上に被加工材101が載置されている。それぞれの被加工材ステージ31の両側には1対のアーム21が配置されている。
【0004】
(b)では、アーム駆動手段22によりアーム21を延伸し、被加工材101を保持する。アーム21とアーム駆動手段22はトランスファーバー11上に設置されているため、(c)においてトランスファーバー11が図の下方に移動することにより、それぞれの被加工材は次の被加工材ステージ31に送られる。
【0005】
(d)において、アーム21を縮退させることによりそれぞれの被加工材101が新しい被加工材ステージ31上に載置される。この状態で(e)に示したように上型32が下降し、被加工材101をプレス成形する。このとき、(f)に示したように、トランスファーバー101は元の位置に戻る。この一連の動作を繰り返すことにより被加工材101を順次移送することができる。
【0006】
ところが、部品形状が複雑になるとプレス動作回数が多くなり、それに従ってプレス金型もより多く配置しなければならなくなるため、プレス機械が大型化するという問題点がある。
【0007】
上記の問題点を解決するため、例えば特許文献1には、トランスファースライドプレートに多列複数の溝を設け、この溝内で被加工材を保持する多列式トランスファー装置が提案されている。この技術では多列式トランスファースライドプレートを移動することにより、複数の被加工材を同時に移動させることが可能となるが、トランスファースライドプレートのそれぞれの溝内に被加工材を保持・解放する手段を複数設けなければならないため、トランスファースライドプレートの構造が複雑となり製造コストの上昇につながる。また、トランスファースライドプレートは往復形式であるため、プレス動作1回ごとに往復させると被加工材の保持個数が少なくなり、また複数回のプレス動作ごとにトランスファースライドプレートを戻すようにすると、トランスファースライドプレートの動作が非連続となり、プレス機械との連携に問題が生ずる。また、トランスファースライドプレートが移動することにより、溝内の被加工材は直線的に移動することになり、同時に多数の製品を製造することはできるが、形状が複雑で金型をいくつも使用する製品の場合、トランスファースライドプレートが長くなってしまうため、結果的にプレス機械を大型化しなければならなくなる。
【0008】
また、特許文献2には、基準プレートを複数のラインで構成し、各基準プレートに位置したワークが、移送ユニットによって同時に順次に移動するようにして、一度に複数の製品を生産することのできるトランスファー金型が提案されている。この技術においても、複数の基準プレートを設けただけで、各基準プレート上では被加工材は直線的に移動するのみである。従って特許文献1の場合と同様の問題点が残る。
【0009】
【特許文献1】特開平8−252698号公報
【特許文献2】特表2015−514592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記のような従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、被加工材を直線的ではなくジグザグに移動させることによりプレス機械の小型を実現し、それによってコストダウンを図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため本発明によるトランスファー装置においては、互いに平行に配置され、被加工材を保持及び解放できる複数の保持手段を有し、前後左右或いは上下に移動可能な1対のトランスファーバーと、前記トランスファーバーを前後左右或いは上下に移動するための駆動手段とからなるトランスファー装置において、前記保持手段が前記被加工材をジグザグに移動するよう構成されていることを特徴とする。二次元トランスファーでは、トランスファーバーは前後左右のみの移動であるのに対し、三次元トランスファーではそれに上下の移動が加わるため、本発明は二次元及び三次元トランスファーのいずれにも対応することができる。
【0012】
前記複数の保持手段の各々は、前記トランスファーバーに対して水平直角方向に伸縮自在な1対のアームを備えていることが好適である。
【0013】
被加工材を移動する際に、隣り合う前記保持手段の前記アームが前記アームの長さ方向に対して逆向きに動作することが好ましい。被加工材を移動する場合、材料自体を移動する場合と材料を治具等に載置して治具と一緒に移動する場合が考えられるが、これら両方に対応できることが望ましい。
【0014】
被加工材ステージが平行に2列設けてあり、前記アームが第1列ステージと第2列ステージに交互に被加工材を移動させるよう構成されていることも好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるトランスファー装置では、被加工材を直線的ではなくジグザグに移動させることにより、プレス成形の距離を短縮することができ、それによってプレス機械を小型化できるため、製品のコストダウンが可能となる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例に基づいて本発明の好適な実施態様を説明する。
図1に本発明によるトランスファー装置の動作説明を示した。本発明によるトランスファー装置の基本構成は従来のトランスファー装置とほぼ同じである。1対のトランスファーバー11、12の各々に複数のアーム21とこのアームの駆動手段22が配置されている。異なるのは、従来のトランスファー装置では被加工材のステージ列が1列であったのに対し、本発明によるトランスファー装置では、ステージ列が複数であることである。
【0017】
図1に基づいて、本発明によるトランスファー装置の動作を説明する。(a)では、第1ステージ列1及び第2ステージ列2の各被加工材ステージ31に被加工材101(A、B、C、D、E)が置かれており、各被加工材ステージ31に対応するアーム21が伸びて、被加工材101を保持している。
【0018】
次に(b)であるが、1対のトランスファーバー11、12が図の下方に向かって(矢印方向)移動するとともに、被加工材Aを保持しているアーム21は右側が延伸して左側が収縮することにより、第2ステージ列2側の各被加工材ステージ31に搬送する。被加工材Bを保持しているアーム21は左側が延伸して右側が収縮することにより、第1ステージ列1側の各被加工材ステージ31に搬送する。他の被加工材C、D、Eも同様にして次のステージに搬送される。
【0019】
(c)では、各アーム21が被加工材101を解放し定位置に戻る。その後、(d)において1対のトランスファーバー11、12が図の上方(矢印方向)に戻る。このように、隣接する1対のアーム21が互いに逆方向に伸縮することにより、被加工材101を第1ステージ列1と第2ステージ列2にジグザグに搬送する。
【0020】
本発明によるトランスファー装置の別の実施例を
図3に示した。
図1に示した実施例では、被加工材101を両側から支持して保持する構成であったが、この実施例ではアーム22が被加工材ステージ31の片側のみに配置されている。それに伴い、トランスファーバー21も片側のみに配置されている。この実施例においては、トランスファーバーやアーム、アーム駆動手段が片側のみに配置されるため、部材コストは低減されるが、被加工材を保持するためにアームが開閉手段を備える必要がある。
【0021】
本発明によるトランスファー装置による効果の説明図を
図4に示す。(a)は従来のトランスファー装置であり、各被加工材ステージ31を1列に配置することにより、全体では“L”の長さが必要となる。(b)は本発明によるトランスファー装置であり、各被加工材ステージ31を第1ステージ列1と第2ステージ列2に交互に、しかも互いに位置をずらして配置することにより、全体の長さが“l”となる。この図から明らかなように被加工材ステージを複数にすることにより、加工範囲を小さくすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によるトランスファー装置では、被加工材を直線的ではなくジグザグに移動させることにより、プレス成形の距離を短縮することができ、それによってプレス機械を小型化できるため、製品のコストダウンが可能となる。従って、複雑な形状の金属部品製造において大いに貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明によるトランスファー装置の動作を説明する説明図である。
【
図2】従来のトランスファー装置の動作を説明する説明図である。
【
図3】本発明によるトランスファー装置の別の実施例を示す説明図である。
【
図4】本発明によるトランスファー装置の効果を説明する図である。
【符号の説明】
【0024】
1 第1ステージ列
2 第2ステージ列
11 トランスファーバー
12 トランスファーバー
21 アーム
22 アーム駆動手段
31 被加工材ステージ
32 上型
101 被加工材