【実施例1】
【0027】
図1は、本発明が適用される磁性体検知装置10の一例を示す外観図である。
図2は、
図1に示した磁性体検知装置10のA視外観図である。
図3は、
図1に示した磁性体検知装置10のB視外観図である。
図4は、
図3に示したB視外観図におけるC−C断面図である。
図5は、
図4に示したC−C断面図におけるD−D断面図である。
図6は、磁性体検知装置10が備える各部相互の電気的な接続関係を示すブロック図である。
【0028】
図1−
図6において、磁性体検知装置10は、筐体12と、筐体12の内部に配設された、測定用センサ部14、参照用センサ部16、処理基盤18、充電モジュール20、二次電池22、及びブザー24と、筐体12に設けられた、充電用ジャック26、電源スイッチ28、ボリューム調整スイッチ30、検知実行スイッチ32、及びディスプレイ34とを備えている。
【0029】
筐体12は、操作者が磁性体検知装置10を持ちやすいように、グリップ部36を備えている。操作者は、例えば
図7に示すように、グリップ部36を握ることで磁性体検知装置10を持ち、磁性体検知装置10を被験体38の表面に近づけて動かすことで磁性体40の有無を検知する。このように、磁性体検知装置10は、手で持てるサイズの(ハンドヘルドの)磁性体検知装置である。磁性体検知装置10は、測定用センサ部14及び参照用センサ部16の外部空間の全周が磁性体40の検知範囲であるが、
図7に示すような使い方では、グリップ部36の反対側の空間に被験体38を位置させることになる。このようなことから、被験体38との距離が近くなるセンサ部を測定用センサ部14と称し、遠くなるセンサ部を参照用センサ部16と称して、二つのセンサ部を区別している。
【0030】
測定用センサ部14及び参照用センサ部16は、各々、感磁方向が相互に直交する二つのセンサを有する二軸センサ(二次元センサともいう)である。本実施例では、相互に直交する感磁方向の一方をx方向とし、他方をy方向とする。測定用センサ部14は、感磁方向がx方向である第1磁気センサ14xと、感磁方向がy方向である第2磁気センサ14yとを有している。参照用センサ部16は、感磁方向が第1磁気センサ14xと同じx方向である第3磁気センサ16xと、感磁方向が第2磁気センサ14yと同じy方向である第4磁気センサ16yとを有している。第1−第4磁気センサ14x,14y,16x,16yは、何れも、感磁方向が一方向であるベクトル型磁気センサであり、例えば磁気インピーダンスセンサ(MIセンサ)である。このように、磁性体検知装置10は、第1磁気センサ14xと第3磁気センサ16xとでの一組、及び第2磁気センサ14yと第4磁気センサ16yとでの一組のように、感磁方向が同一となる二つの磁気センサの組を二組備えている。上記一組における二つの磁気センサは、相互の間隔が所定距離pとされていると共に、相互の間の空間外に被験体38が位置するように配置されている(
図7参照)。従って、磁性体検知装置10では、上記一組における二つの磁気センサの相互の間の空間に被験体38を通過させることで磁性体40の有無を検知するものではない。よって、磁性体検知装置10を小型化することが可能である。磁性体検知装置10では、上記一組における二つの磁気センサの各々と被験体38との距離を異ならせることを利用して磁性体40の有無を検知する。上記所定距離pは、例えば磁性体40の有無を適切に検知することができるように予め実験的に或いは設計的に求められた(すなわち予め定められた)二つの磁気センサ間の距離である。
【0031】
処理基盤18は、制御装置50、駆動/検波回路60、電源回路62、及び残量監視回路64を備えている。制御装置50は駆動/検波回路60と接続されており、又、駆動/検波回路60は第1−第4磁気センサ14x,14y,16x,16yの各々と接続されている。制御装置50は、駆動/検波回路60により測定用センサ部14及び参照用センサ部16を駆動させて、駆動/検波回路60を介して第1−第4磁気センサ14x,14y,16x,16yから出力される各電気信号の処理後の各出力信号Soutを取得し、各出力信号Soutに応じた値(出力値Q
kjともいう)を用いて磁性体40の有無を検知する。出力信号Soutは出力電圧として検出される。出力値Q
kjは、例えば各出力信号Soutに応じたセンサ部14,16の位置における各磁気量(磁荷)、磁束などであるが、出力電圧そのものでも良い。出力値Q
kjにおいて、Qは測定用センサ部14であればMであり、参照用センサ部16であればRである。又、kはx方向であればxであり、y方向であればyである。jは取得した出力値Q
kjのデータを時系列で並べたときの順番を自然数で表す数値であり、最新のデータでは「j=1」であり、古いデータ程数値が大きくなる。出力値Q
kjは、第1磁気センサ14xではM
xjであり、第2磁気センサ14yではM
yjであり、第3磁気センサ16xではR
xjであり、第4磁気センサ16yではR
yjである。
【0032】
又、制御装置50は電源回路62及び残量監視回路64と接続されており、又、電源回路62及び残量監視回路64は充電モジュール20と接続されている。充電モジュール20は、充電用ジャック26に接続された充電回路66と、二次電池22に接続された保護回路68とを備えている。制御装置50は、電源回路62などにより、二次電池22の電力を用いて磁性体検知装置10を作動させる、若しくは、充電用ジャック26に接続される外部のACアダプタ70を介して家庭用電源などの外部の商用電源等からの電力を用いて磁性体検知装置10を作動させる。又、制御装置50は、電源回路62などにより、充電用ジャック26に接続されるACアダプタ70を介して商用電源等からの電力を用いて二次電池22を充電させる。二次電池22は、例えばリチウム電池である。
【0033】
又、制御装置50は、ブザー24、電源スイッチ28、ボリューム調整スイッチ30、検知実行スイッチ32、及びディスプレイ34と各々接続されている。ブザー24は、磁性体40を検知したことを知らせる為の音を出す装置である。電源スイッチ28は、磁性体検知装置10の主電源のオンとオフとを切り替える為に操作される操作部材である。ボリューム調整スイッチ30は、ブザー24が出す音の強弱を調整する為の操作部材である。検知実行スイッチ32は、磁性体検知装置10による磁性体40の検知を実行する為の操作部材である。ディスプレイ34は、グリップ部36の近傍に設けられており、出力値Q
kjの大きさ、磁性体40と磁気センサ(特には測定用センサ部14)との間の距離、磁性体40の磁気モーメントの強さなどを表示する為の表示器である。
【0034】
図8は、制御装置50の入出力系統を示す図であり、又、制御装置50による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されたコントローラである。CPUは、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより磁性体検知装置10の各種制御を実行する。
【0035】
図8において、制御装置50は、磁性体検知装置10における各種制御を実現する為に、磁性体検知手段すなわち磁性体検知部52、記憶手段すなわち記憶部54、及び出力制御手段すなわち出力制御部56を備えている。
【0036】
磁性体検知部52は、操作者によって検知実行スイッチ32がオン状態に操作されているときには、磁性体40の検知を実行する(
図7参照)。以下に、磁性体検知部52による磁性体40の検知について詳細に説明する。
【0037】
磁性体検知部52は、測定用センサ部14及び参照用センサ部16を駆動させる為のセンサ駆動パルス信号Splsを駆動/検波回路60へ出力する。磁性体検知部52は、測定用センサ部14及び参照用センサ部16の駆動と、第1−第4磁気センサ14x,14y,16x,16yから出力される各電気信号の取得とを切り替える為の切替制御信号Ssftを駆動/検波回路60へ出力する。磁性体検知部52は、第1−第4磁気センサ14x,14y,16x,16yの各々から出力される各電気信号に基づく各出力信号Soutを駆動/検波回路60から取得する。磁性体検知部52は、第1−第4磁気センサ14x,14y,16x,16yの各出力信号Soutを所定時間t毎に時間平均し、時間平均した後の各出力信号Soutに応じた値(出力値Q
kj)を時系列配列で記憶部54に格納する。上記所定時間tは、例えば出力値Q
kjのデータとして用いることが適切なものとなるように予め定められた時間である。
【0038】
磁性体検知部52は、測定用センサ部14及び参照用センサ部16における各磁気量の絶対値成分を計算し、その各磁気量の絶対値成分も時系列配列で記憶部54に格納する。従って、出力値Q
kjにおいて、kは磁界ベクトル成分に対応する「x」,「y」に加えて、絶対値成分((Q
xj2+Q
yj2)の正の平方根に相当)に対応する「a」を含んでいる。つまり、出力値Q
kjは、前述した、M
xj,M
yj,R
xj,R
yjに加えて、測定用センサ部14におけるM
ajと、参照用センサ部16におけるR
ajとを含んでいる。
【0039】
磁性体検知部52は、予め定められた次式(1)に、測定用センサ部14及び参照用センサ部16における各出力値Q
kjの磁界ベクトル成分(Q
xj、Q
yj)と絶対値成分(Q
aj)との最新のデータからmax
i個のデータを適用して、各出力値Q
kjの回帰直線の傾きである時間微分値(時間変化量、時間変化の傾きも同意)A
Qkを算出する。時間変化量A
Qkは、被験体38と磁気センサ(測定用センサ部14、参照用センサ部16)との相対位置が変化することによって生じる。本実施例では、時間変化量A
Qkとして、A
Mx,A
My,A
Ma,A
Rx,A
Ry,A
Raの6個が算出される。例えば、時間変化量A
Rxは、参照用センサ部16のx方向成分(すなわち第3磁気センサ16xの出力値R
xj)の時間変化量である。上記max
iは、磁性体40の検知の応答性を考慮して予め定められた固定値を用いれば良いが、出力値Q
kjの変動に応じて変化させても良いし、又は、磁性体検知装置10の操作速度に応じて変化させても良い。例えば、磁性体検知装置10が素早く操作されている場合にはmax
iは小さい値が適正である一方で、磁性体検知装置10がゆっくりと操作されている場合にはmax
iは大きい値が適正である。
【0040】
【数1】
【0041】
ここで、磁性体40が磁気センサ(測定用センサ部14、参照用センサ部16)の近くにないような環境磁界中であれば、二つの磁気センサの各出力値Q
kj(M
kj、R
kj)の時間変化量A
Qk(A
Mk、A
Rk)は略同じ値となる。一方で、磁気センサが磁性体40に近づくような場面では、時間変化量A
Qkの絶対値は磁性体40に近い測定用センサ部14の方が磁性体40に遠い参照用センサ部16の方よりも大きくなる。本実施例では、このような現象を利用することで、磁気センサが被る地磁気の変化の影響をできるだけ排除して磁性体40を検知する。つまり、制御装置50は、二つの磁気センサ(測定用センサ部14、参照用センサ部16)の各出力値Q
kj(M
kj、R
kj)の時間変化量A
Qk(A
Mk、A
Rk)を用いて磁性体40を検知する。特には、本実施例の磁気センサはベクトル型磁気センサであるので、制御装置50は、感磁方向が同一となる二つの磁気センサの各出力値の時間変化量である、時間変化量A
Mxと時間変化量A
Rxとを用いて、又、時間変化量A
Myと時間変化量A
Ryとを用いて、又、時間変化量A
Maと時間変化量A
Raとを用いて、磁性体40を検知する。
【0042】
具体的には、磁性体検知部52は、算出した測定用センサ部14における時間変化量A
Mkと、算出した参照用センサ部16における時間変化量A
Rkとの差分である評価値B
k(=A
Mk−A
Rk)を算出する。磁性体検知部52は、評価値B
kの絶対値が閾値THbkを超えるか否かに基づいて磁性体40の有無を検知する。つまり、磁性体検知部52は、評価値B
k(すなわちB
x,B
y,B
a)の絶対値の何れかが閾値THbk(すなわち評価値B
kの各々に対してそれぞれ設定された閾値THbkx,閾値THbky,閾値THbka)を超えるか否かに基づいて磁性体40の有無を検知する。磁性体検知部52は、評価値B
kの絶対値が閾値THbkを超えた場合には、磁性体40が有ると判断する(すなわち磁性体40を検知したと判断する)。上記閾値THbkは、例えば磁性体40が存在すると判断できる為の予め定められた評価値B
kの下限値である。このように、制御装置50は、二つの磁気センサの各出力値の時間変化量の差分である評価値B
kを用いて磁性体40を検知する。
【0043】
磁性体検知部52は、磁性体40を検知した場合には、磁性体検知モードを成立させる。又、磁性体検知部52は、磁性体40を検知した場合には、ブザー24から音を出す指令を出力制御部56へ出力する。出力制御部56は、ボリューム調整スイッチ30にて設定された音量にて音を出す為の音声信号Sbzrをブザー24へ出力する。又、磁性体検知部52は、磁性体40を検知した場合には、ディスプレイ34に磁性体40の検知の状況を表示する指令を出力制御部56へ出力する。出力制御部56は、磁性体40の検知の状況を表示する為の表示信号Sdpyをディスプレイ34へ出力する。上記磁性体40検知の状況は、例えば出力値Q
kjの大きさ、磁性体40と測定用センサ部14との間の距離、磁性体40の磁気モーメントの強さなどである。
【0044】
ところで、磁性体40の有無の判断に用いた時間変化量A
Qkは、仮に磁性体40の近くに磁性体検知装置10があったとしても、操作者が磁性体検知装置10を動かさなければゼロとなってしまう。その為、時間変化量A
Qkを用いることでは、磁性体40と測定用センサ部14との間の距離、及び磁性体40の磁気モーメントの強さを算出することはできない。一方で、出力値Q
kjを用いること(例えば出力値M
kjと出力値R
kjとの差分を用いること)も考えられる。しかしながら、測定用センサ部14や参照用センサ部16の個体ばらつきがあったり、又は、環境磁界そのものが分布をもっていたりすると、上記差分は磁性体40が存在しなくてもゼロにはならない。その為、上記差分そのものを用いることでは、算出精度が低下するおそれがある。
【0045】
そこで、本実施例では、最新の出力値Q
k1を、磁性体40が有ると判断した直前の出力値Q
kjを用いてセルフリセットし、磁性体40の磁気モーメントの強さなどを算出する。つまり、磁性体40が有ると判断した直前の出力値Q
kjを専ら磁気センサが被る地磁気によるものであるとみなし、地磁気の影響をできるだけ排除する為に、磁性体40の検知後の最新の出力値Q
k1からその直前の出力値Q
kjを減算した出力値変化量Q
k(セルフリセット値Q
kともいう)を用いて、磁性体40の磁気モーメントの強さなどを算出する。すなわち、制御装置50は、磁性体40を検知した場合には、最新の出力値Q
k1から、磁性体40を最初に検知した直前に取得した出力値Q
kjを減算した、二つの磁気センサにおける直前からの各出力値変化量としてのセルフリセット値Q
kを用いて、磁性体40と測定用センサ部14との間の距離、及び磁性体40の磁気モーメントの強さを算出する。又、磁性体40検知の状況としてディスプレイ34に表示する出力値Q
kjの大きさについては、地磁気の影響ができるだけ排除されたセルフリセット値Q
kを用いることが適切である。特に、本実施例では、セルフリセット値Q
kのうちでセルフリセット値M
aを用いる。
【0046】
具体的には、磁性体40を検知したと判断したときには、出力値Q
kjにおける最新のデータからmax
i個のデータが用いられている。その為、検知直前の出力値Q
kjとしては、(max
i+1)個目からのデータを用いる。例えば、磁性体検知部52は、予め定められた次式(2)に示すように、検知直前の出力値Q
kjとして、各出力値Q
kjの時系列データの(max
i+1)個目からn個分のデータの平均値(過去平均値Average(Q
k)という)を用いる。上記nは、例えば検知直前の出力値Q
kjのノイズを除去するように平均化する為に十分である個数として予め定められた値であり、max
iと同等程度であっても良い。磁性体検知部52は、最初に磁性体検知モードを成立させたときの一度だけ過去平均値Average(Q
k)を算出し、その磁性体検知モードの継続中には、その過去平均値Average(Q
k)を更新せずにそのまま用いる。その為、磁性体検知部52は、磁性体検知モードを成立させた最初であるか否かを判定し、磁性体検知モードを成立させた最初であると判定した場合には、次式(2)を用いて過去平均値Average(Q
k)を算出する。磁性体検知部52は、磁性体検知モードの成立中には、最新の出力値Q
k1から過去平均値Average(Q
k)を減算することでセルフリセット値Q
k(=Q
k1−Average(Q
k))を算出する。本実施例では、セルフリセット値Q
kとして、M
x,M
y,M
a,R
x,R
y,R
aの6個が算出される。
【0047】
【数2】
【0048】
セルフリセット値Q
k(本実施例では絶対値成分に対応するQ
aを用いる)を1つの磁気双極子(磁気モーメント)が作る磁場とみなして、次式(3)の一般式を用いて磁気モーメントを近似する。次式(3)において、b
iはz方向(本実施例では、磁性体検知装置10と磁性体40との距離方向)に配置した磁気センサのi番目の出力であり、M
zは最も磁性体40と近接した磁気センサと磁性体40との距離であり、k
iを吸収したmは磁気モーメントの強さに比例した値であり、Δzは磁気センサ間の間隔である。磁性体検知装置10における各数値を次式(3)に当てはめると、次式(4)及び次式(5)に示す関係式が成立する。本実施例では、次式(3)における「i」は1であり、「Δz」はp(つまり前記所定距離p)である。次式(4)及び次式(5)に示す連立方程式を解くと、次式(6)及び次式(7)に示す関係式が導かれる。磁性体検知部52は、次式(6)及び次式(7)に示す関係式を用いて、距離M
zと、磁気モーメントの強さに比例した値mとを算出する。距離M
zは、磁性体40と測定用センサ部14との間の距離に相当する。又、値mは、磁性体40の磁気モーメントの強さに相当する。但し、値mについては、磁気モーメント量に比例する値であり、絶対値ではない。その為、ディスプレイ34への表示では、絶対値としての表示ではなく、磁気モーメントの強さを段階的に示すようなレベル値での表示が好適である。
【0049】
【数3】
【0050】
磁性体検知部52は、磁性体40検知時に、磁性体40の信号の強さ(例えば測定用センサ部14の位置における磁気量の大きさ)としてのセルフリセット値M
aをディスプレイ34に表示する指令を出力制御部56へ出力する。出力制御部56は、例えば
図9に示すように、セルフリセット値M
aをバーグラフに対応付けて表示する為の表示信号Sdpyをディスプレイ34へ出力する。又、磁性体検知部52は、磁性体40検知時に、磁性体40の磁気モーメントの強さとしての値m、及び磁性体40と測定用センサ部14との間の距離としての距離M
zをディスプレイ34に表示する指令を出力制御部56へ出力する。出力制御部56は、例えば
図10に示すように、値mに応じたレベル値(
図10中の「LV1」参照)、及び距離M
zを示す数値(
図10中の「100mm」参照)を表示する為の表示信号Sdpyをディスプレイ34へ出力する。磁性体40検知時には、例えば
図9に示すような表示と
図10に示すような表示とを所定間隔で交互に表示しても良いし、又は、検知実行スイッチ32がオン状態に操作されているときには
図9に示すような表示を行う一方で、検知実行スイッチ32がオフ状態であるときには
図10に示すような表示を行っても良い。
【0051】
次に、磁性体40の検知後に、磁性体40から磁性体検知装置10が離れたこと(つまり磁性体検知装置10の近くに磁性体40がないこと)を判断する方法について説明する。
【0052】
制御装置50は、磁性体40を検知した場合には、セルフリセット値Q
kがそのセルフリセット値Q
kの最大値(セルフリセット最大値MAX
Qkともいう)に対して所定割合Th未満となったか否かに基づいて、検知した磁性体40が磁気センサから遠ざかったか否かを判定する。制御装置50は、磁性体検知モードの成立時に、セルフリセット値Q
kがセルフリセット最大値MAX
Qkに対して所定割合Th未満となった場合には、磁性体検知モードを解除する。上記所定割合Thは、例えば磁性体40が磁気センサから離れたと判断する為の予め定められた閾値である。
【0053】
具体的には、磁性体検知モードの解除を判断する際に用いるセルフリセット値Q
kとしては、測定用センサ部14におけるセルフリセット値M
kとする。セルフリセット値M
kにおける「k」としては、磁界ベクトル成分に対応する「x」,「y」、及び絶対値成分に対応する「a」のうちで、磁性体検知モードが成立したと判断したときの成分に対応する「k」とする。本実施例では、この磁性体検知モードが成立したと判断したときの成分に対応する「k」を「u」とする。磁性体検知モードの解除を判断する際に用いるセルフリセット値Q
kは、セルフリセット値M
uである。
【0054】
磁性体検知部52は、磁性体検知モードの成立中には、セルフリセット値M
uの最大値(セルフリセット最大値MAX
Muともいう)を必要に応じて更新する。磁性体検知部52は、次式(8)を用いて、磁性体検知モードの解除を判断する。次式(8)中の「ABS」は絶対値を表している。磁性体検知部52は、次式(8)が成立した場合には(すなわちセルフリセット値M
uがセルフリセット最大値MAX
Muに対して所定割合Th未満となった場合には)、磁性体検知モードを解除する。尚、磁性体検知部52は、検知実行スイッチ32がオン状態からオフ状態とされた場合にも、磁性体検知モードを解除する。
【0055】
【数4】
【0056】
図11は、制御装置50の制御作動の要部すなわち二つの磁気センサの各出力値Q
kjを用いて磁性体40を検知する際に磁性体40の検知精度を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば検知実行スイッチ32がオン状態とされているときに繰り返し実行される。
【0057】
図11において、先ず、磁性体検知部52の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、第1−第4磁気センサ14x,14y,16x,16yの各出力信号Soutが所定時間t毎に時間平均され、時間平均された後の各出力信号Soutに応じた出力値Q
xj(M
xj,R
xj),Q
yj(M
yj,R
yj)が時系列配列で記憶部54に格納される。次いで、磁性体検知部52の機能に対応するS20において、測定用センサ部14及び参照用センサ部16における各磁気量の絶対値成分が計算され、その各磁気量の絶対値成分の出力値Q
aj(M
aj,R
aj)が時系列配列で記憶部54に格納される。次いで、磁性体検知部52の機能に対応するS30において、前記式(1)に、測定用センサ部14及び参照用センサ部16における各出力値Q
kjの磁界ベクトル成分(Q
xj、Q
yj)と絶対値成分(Q
aj)との最新のデータからmax
i個のデータが適用されて、各時間微分値(時間変化量)A
Qk(A
Mk、A
Rk)が算出される。次いで、磁性体検知部52の機能に対応するS40において、各評価値B
k(=A
Mk−A
Rk)の絶対値の何れかが各々の閾値THbkを超えるか否かに基づいて磁性体40の有無が検知される。このS40の判断が否定される場合(すなわち磁性体40が無いと判断される場合)は本ルーチンが終了する。このS40の判断が肯定される場合(すなわち磁性体40が有ると判断される場合)は磁性体検知部52の機能に対応するS50において、磁性体検知モードの成立中であるとされる。次いで、磁性体検知部52の機能に対応するS60において、磁性体検知モードを成立させた最初であるか否かが判定される。このS60の判断が肯定される場合は磁性体検知部52の機能に対応するS70において、前記式(2)を用いてセルフリセット用の過去平均値Average(Q
k)が算出される。上記S60の判断が否定される場合は、又は、上記S70に次いで、磁性体検知部52の機能に対応するS80において、最新の出力値Q
k1から過去平均値Average(Q
k)が減算されることでセルフリセット値Q
kが算出される。次いで、磁性体検知部52の機能に対応するS90において、磁性体検知モードが成立したと判断したときの成分に対応する測定用センサ部14におけるセルフリセット値M
uの最大値MAX
Muが必要に応じて更新される。次いで、磁性体検知部52の機能に対応するS100において、M
u/MAX
Muの絶対値が閾値(所定割合Th)未満となった否かが判定される(前記式(8)参照)。このS100の判断が否定される場合は磁性体検知部52の機能に対応するS110において、前記式(6)及び前記式(7)に示す関係式を用いて、磁性体40の磁気モーメントの強さに相当する値m、及び磁性体40と測定用センサ部14との間の距離に相当する距離M
zが算出される。次いで、磁性体検知部52及び出力制御部56の機能に対応するS120において、例えば
図9に示されるように、測定用センサ部14におけるセルフリセット値M
kのうちの絶対値成分に対応するセルフリセット値M
aがバーグラフに対応付けてディスプレイ34に表示される。次いで、磁性体検知部52の機能に対応するS130において、上記S10と同様に、時間平均された後の各出力信号Soutに応じた出力値Q
xj,Q
yjが時系列配列で記憶部54に格納される。このS130では、上記S20と同様に、絶対値成分の出力値Q
ajも時系列配列で記憶部54に格納される。次いで、上記S50に戻される。一方で、上記S100の判断が肯定される場合は磁性体検知部52の機能に対応するS140において、磁性体検知モードから脱出される(すなわち磁性体検知モードが解除される)。この際、セルフリセット値M
uの最大値MAX
Muがゼロにリセットされる。次いで、磁性体検知部52及び出力制御部56の機能に対応するS150において、例えば
図10に示されるように、値mに応じたレベル値、及び距離M
zを示す数値がディスプレイ34に表示される。
【0058】
上述のように、本実施例によれば、相互の間隔が所定距離pとされていると共に、相互の間の空間外に被験体38が位置するように配置されている二つの磁気センサ(測定用センサ部14、参照用センサ部16)の各出力値Q
kj(M
kj、R
kj)の時間変化量A
Qk(A
Mk、A
Rk)を用いて磁性体40が検知されるので、磁気センサが被る地磁気の変化の影響をできるだけ排除して磁性体40を検知することができる。具体的には、磁性体40が磁気センサの近くにないような環境磁界中であれば、二つの磁気センサの時間変化量A
Qkは略同じ値となる一方で、磁気センサが磁性体40に近づくような場面では、時間変化量A
Qkの絶対値は磁性体40に近い測定用センサ部14の方が磁性体40に遠い参照用センサ部16の方よりも大きくなる、というような現象を利用することで、磁気センサが被る地磁気の変化の影響をできるだけ排除して磁性体40を検知することができる。よって、二つの磁気センサの各出力値Q
kjを用いて磁性体40を検知する際に、磁性体40の検知精度を向上することができる。
【0059】
また、本実施例によれば、感磁方向が同一となる二つのベクトル型磁気センサの各出力値Q
kjの時間変化量A
Qkを用いて磁性体40が検知されるので、磁性体40を適切に検知することができる。
【0060】
また、本実施例によれば、二つの磁気センサの各出力値の時間変化量の差分である評価値B
kを用いて磁性体40が検知されるので、前述したような現象を利用することで、磁気センサが被る地磁気の変化の影響をできるだけ排除して磁性体40を検知することができる。
【0061】
また、本実施例によれば、磁性体40を検知した場合には、最新の出力値Q
k1から、磁性体40を最初に検知した直前に取得した出力値Q
kjを減算した、二つの磁気センサにおける直前からの各出力値変化量としてのセルフリセット値Q
kを用いて、磁性体40と測定用センサ部14との間の距離、及び磁性体40の磁気モーメントの強さが算出されるので、磁性体40の検知時には、磁性体40と磁気センサとの相対位置の変化がなくても(つまり磁気センサの各出力値Q
kjの時間変化量A
Qkがゼロであっても)、磁性体40と磁気センサとの間の距離、及び磁性体40の磁気モーメントの強さを算出することができる。この際、磁性体40の検知直前の専ら磁気センサが被る地磁気による磁気センサの出力値Q
kjが減算されたセルフリセット値Q
kを用いることで、磁気センサが被る地磁気の影響をできるだけ排除することができる。
【0062】
また、本実施例によれば、磁性体40を検知した場合には、セルフリセット値Q
kがセルフリセット最大値MAX
Qkに対して所定割合Th未満となったか否かに基づいて、検知した磁性体40が磁気センサから遠ざかったか否かが判定されるので、磁性体40の検知後に磁性体40と磁気センサとが離れたことが適切に判断される。
【0063】
また、本実施例によれば、磁性体検知モードの成立時に、セルフリセット値Q
kがセルフリセット最大値MAX
Qkに対して所定割合Th未満となった場合には、磁性体検知モードが解除されるので、磁性体検知モードの成立後にその磁性体検知モードを適切に解除することができる。
【0064】
又、磁性体検知装置10は、パッシブ型の磁性体検知装置であり、金属探知機と違って、他の機器に影響を与えない為、ペースメーカを付けた人のスクリーニングが可能である。又、磁性体検知装置10の使用用途としては、MRI室に入る前の人のスクリーニング、空港などでの検査などが想定される。又、磁性体検知装置10は、磁性体40を検知した後、磁性体検知装置10が磁性体40の近傍にある限り、磁性体検知装置10又は磁性体40が動いていなくても磁性体40が近傍にあることを検知し続けることが可能である。又、磁性体検知装置10では、測定用センサ部14及び参照用センサ部16の外部空間の全周を磁性体40の検知範囲とすることが可能である。又、磁性体検知装置10では、測定用センサ部14における出力値M
kjの時間変化量A
Mkの絶対値が参照用センサ部16よりも相対的に大きい場合に磁性体40の検知を有効とするなどにより、測定用センサ部14側の空間のみを検知範囲とすることができる。又、磁性体検知装置10を用いることで、磁性体40の位置を特定することが容易となる。又、磁性体検知装置10は、二次電池22を内蔵しているので、ポータブルとして使用することが可能である。又、磁性体検知装置10は、ACアダプタ70を接続したままでの使用も可能である。
【0065】
次に、本発明の他の実施例を説明する。
【実施例2】
【0066】
前述の実施例1では、磁性体検知部52は、前記式(1)に、測定用センサ部14及び参照用センサ部16における各出力値Q
kjの最新のデータからmax
i個のデータを適用して、各出力値Q
kjの時間変化量A
Qkを算出した。この出力値Q
kjは所定時間t毎に時系列配列で記憶部54に格納される値であり、又、上記max
iは一種類の所定値である。従って、前述の実施例1では、制御装置50は、同じ時点を起点とする同じ長さの時間間隔における二つの磁気センサ(測定用センサ部14、参照用センサ部16)の各出力値Q
kj(M
kj、R
kj)の時間変化量A
Qk(A
Mk、A
Rk)を長さが同じ一種類の時間間隔で算出し、その同じ長さの時間間隔における時間変化量A
Qkを用いて磁性体40を検知した。このように、制御装置50は、同じ時点を起点とする同じ長さの時間間隔における二つの磁気センサ(測定用センサ部14、参照用センサ部16)の各出力値Q
kj(M
kj、R
kj)の時間変化量A
Qk(A
Mk、A
Rk)を用いて磁性体40を検知した。
【0067】
本実施例では、前述の実施例1とは異なり、上記max
iとして複数種類の所定値を用いる。従って、本実施例では、制御装置50は、同じ時点を起点とする同じ長さの時間間隔における二つの磁気センサ(測定用センサ部14、参照用センサ部16)の各出力値Q
kj(M
kj、R
kj)の時間変化量A
Qk(A
Mk、A
Rk)を長さが異なる複数種類の時間間隔毎に各々算出する。磁性体検知部52は、複数種類の時間間隔毎に、評価値B
k(=A
Mk−A
Rk)を各々算出し、それらの評価値B
kの絶対値が閾値THbk(すなわち評価値B
kの各々に対してそれぞれ設定された閾値)を超えるか否かを各々判定し、それらの評価値B
kの絶対値の何れかが閾値THbkを超えるか否かに基づいて磁性体40の有無を検知する。磁性体検知部52は、それらの評価値B
kの絶対値の何れか一つでも閾値THbkを超えた場合には、磁性体40が有ると判断する。つまり、制御装置50は、複数種類の時間間隔のうちの同じ長さの時間間隔における時間変化量A
Qkを用いて磁性体40を検知する。このように、本実施例でも、制御装置50は、同じ時点を起点とする同じ長さの時間間隔における二つの磁気センサ(測定用センサ部14、参照用センサ部16)の各出力値Q
kj(M
kj、R
kj)の時間変化量A
Qk(A
Mk、A
Rk)を用いて磁性体40を検知する。
【0068】
上記max
iとして用いる複数種類の所定値は、例えば比較的大きな値のmax
iと比較的小さな値のmax
iとの二種類の予め定められた値である。max
iの値の大小は、上記時間間隔の長短に対応する。各出力値Q
kjの変動によっては、長い時間間隔よりも短い時間間隔の方が時間変化量A
Qkが大きくなったり、又は、長い時間間隔よりも短い時間間隔の方が時間変化量A
Qkが小さくなったりする。このようなことから、上記max
iが複数種類の所定値とされる場合は、上記max
iが一種類の所定値とされる場合と比較して、時間変化量A
Qkの傾向がより捉えられ易くされる。上記時間間隔の長短は、磁性体検知装置10が操作されたときの磁性体検知装置10の操作速度又は移動距離に関連する。従って、複数種類の時間間隔すなわちmax
iを設定することで、操作者による磁性体検知装置10の操作速度に違いがあっても磁性体40をより精度良く検知できる。
【0069】
図11においては、特に、磁性体検知部52の機能に対応するS30において、時間変化量A
Qkが算出される際のmax
iが一種類の値でなく複数種類の値であることが、前述の実施例1と異なる。又、磁性体検知部52の機能に対応するS40において、各評価値B
kの絶対値は一種類のmax
iに対応した値でなく、複数種類のmax
i毎に対応した値であることが、前述の実施例1と異なる。このS40の判断が否定される場合(すなわち磁性体40が無いと判断される場合)は、前述の実施例1と同様に、本ルーチンが終了する。又、このS40の判断が肯定される場合(すなわち磁性体40が有ると判断される場合)は、S50以降が実行される。このS50以降は、基本的には前述の実施例1と同様であるが、S50以降におけるmax
iとしては、磁性体40が有ると判断された評価値B
kの絶対値が対応するmax
iが用いられる。
【0070】
上述のように、本実施例によれば、同じ時点を起点とする同じ長さの時間間隔における二つの磁気センサの各出力値Q
kjの時間変化量A
Qkが長さが異なる複数種類の時間間隔毎に各々算出され、その同じ長さの時間間隔における時間変化量A
Qkを用いて磁性体40が検知されるので、磁性体検知装置10が操作されるときの速さの違いに応じた適切な時間変化量A
Qkが算出されて、磁性体40の検知精度を一層向上することができる。
【0071】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0072】
例えば、本発明は、磁性体検知装置10が有すると同様の、二つの磁気センサの各出力値Q
kjの時間変化量A
Qkを用いて磁性体40の有無を検知する磁性体検知機能(つまり制御装置50が有する磁性体検知部52に対応する磁性体検知機能)を、
図12に示すような、駆動/検波回路60などが接続されたコンピュータ80に実現させる為のプログラムProgramを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体90にも適用され得る。
図12において、コンピュータ80は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた制御装置50と同様の所謂マイクロコンピュータ、及び読み取り装置82などを含んで構成されている。コンピュータ80は、記録媒体90に予め記録されたプログラムProgramを読み取り装置82によって読み込むことでそのプログラムProgramを実行することが可能である。つまり、本発明は、制御装置50が有する磁性体検知部52に対応する磁性体検知機能をコンピュータ80に実現させる為のプログラムProgramを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体90にも適用され得る。このようにしても前述の実施例と同様の効果が得られることは言うまでもない。又、記録媒体90は、CD、DVD等の光ディスク、フロッピーディスク、ハードディスクドライブ等の記憶装置、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリなどの、プログラムProgramを記録することができる媒体である。又、サーバ(これも一種の記録媒体90)に保存されたプログラムProgramを通信を介してダウンロードすることでそのプログラムProgramをコンピュータ80が実行する態様など、プログラムProgramをコンピュータ80に実現させる態様は種々の態様がある。従って、本発明は、制御装置50が有する磁性体検知部52に対応する磁性体検知機能をコンピュータ80に実現させる為のプログラムProgramにも適用され得る。このようにしても前述の実施例と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0073】
また、前述の実施例では、磁性体検知装置10は、感磁方向が同一となる二つの磁気センサの組を二組備えていたが、この態様に限らない。例えば、磁性体検知装置10は、第1磁気センサ14xと第3磁気センサ16xとでの一組、及び第2磁気センサ14yと第4磁気センサ16yとでの一組のうちの少なくとも一組を備えていれば良い。又、磁性体検知装置10は、ベクトル型磁気センサではなく、磁界の絶対値を検出するようなスカラー型の磁気センサを二個備えていても良い。このように、少なくとも二つの磁気センサを備える磁性体検知装置10であれば、本発明を適用することができる。
【0074】
また、前述の実施例では、磁性体検知装置10を被験体38の表面に近づけて動かすことで磁性体40の有無を検知したが、被験体38を動かすことで磁性体40の有無を検知しても良い。
【0075】
また、前述の実施例では、測定用センサ部14におけるセルフリセット値M
uを用いて磁性体検知モードの解除を判断したが、この態様に限らない。例えば、常に、測定用センサ部14における絶対値成分のセルフリセット値M
aを用いて磁性体検知モードの解除を判断しても良い。このセルフリセット値M
aを用いる場合には、セルフリセット値M
aの最大値MAX
Maが必要に応じて更新され、M
a/MAX
Maが閾値(所定割合Th)未満となった否かに基づいて、磁性体検知モードを解除するか否かが判断される。又は、測定用センサ部14におけるセルフリセット値M
kと参照用センサ部16におけるセルフリセット値R
kとの差分S
k(=M
k−R
k)を用いて、磁性体検知モードの解除を判断しても良い。又は、セルフリセット値M
kを用いた判断と、差分S
kを用いた判断とを組み合わせて、磁性体検知モードの解除を判断しても良い。
【0076】
また、前述の実施例では、第1−第4磁気センサ14x,14y,16x,16yは、磁気インピーダンスセンサ(MIセンサ)とされたが、感磁方向が一方向であるベクトル型磁気センサであれば、他の形式の磁気センサであってもよい。
【0077】
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。