特許第6779438号(P6779438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779438
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】制震パッド
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20201026BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20201026BHJP
   A47B 97/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   F16F15/04 A
   F16F15/08 B
   A47B97/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-207574(P2016-207574)
(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公開番号】特開2018-71555(P2018-71555A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】506190005
【氏名又は名称】株式会社安震
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】杉田 規久男
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−013171(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/172819(WO,A1)
【文献】 特開平08−224185(JP,A)
【文献】 特開2015−137728(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3000843(JP,U)
【文献】 実開平03−052446(JP,U)
【文献】 特開2015−085682(JP,A)
【文献】 特開昭59−200833(JP,A)
【文献】 実開平06−073493(JP,U)
【文献】 実開昭59−007935(JP,U)
【文献】 特開2012−141015(JP,A)
【文献】 特開2015−072062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
A47B 97/00
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾粘性材料からなるゲル状弾性体と、
前記ゲル状弾性体に埋設された重量物支持体と、
前記ゲル状弾性体の表面又は裏面のいずれか一方又はその両方に前記支持体の一部に被さるように形成された隆起部を備え
前記隆起部が、十文字状、米印状、複数の長円形を放射状に設けた形状、又は、複数の弓形を円周方向に配列した形状に形成されたことを特徴とする制震パッド。
【請求項2】
前記支持体は前記ゲル状弾性体より硬質の複数の芯材からなり、前記隆起部は前記複数の芯材に架け渡すように形成されていることを特徴とする請求項1記載の制震パッド。
【請求項3】
前記支持体の周囲において前記ゲル状弾性体の前記隆起部と同じ面に、1つ以上の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の制震パッド。
【請求項4】
前記ゲル状弾性体を包む包装部材をさらに備え、前記包装部材に前記弾粘性材料で前記ゲル状弾性体を形成するためのキャビティが設けられ、前記キャビティの一部に前記隆起部を成形する部分が形成されていることを特徴とする請求項1または2〜3の何れか一項に記載の制震パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状弾性体により重量物の振動エネルギーを吸収する制震パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
重量物を巨大地震等の振動による転倒から守るため、一番簡単な方法として重量物をアンカーにより接地面に打ち付けて固定する方法が広く用いられている。しかしながら、接地面に穴を開けて重量物を固定する必要があることから、衛生面から定期的な清掃を必要とする食品工場のラインや、頻繁に大型機器を移動させる必要がある工場等においては、当該方法の採用は難しい。
【0003】
このような問題を解決する方法としてゲル状弾性体を利用した制震パッド及び免震施工方法が特許文献1に提案されている。図7(a)に示すように、重量物である設備機器1の脚部30と床面Fとの間に制震パッド50および加圧プレート60を介装する。図7(b)に示すように、制震パッド50は、設備機器1の振動を吸収するシリコンゴムなどを材料とする弾粘性を有したゲル状弾性体70と、設備機器1の荷重を支承する高減衰ゴムなどを材料とする支持体80とを備え、制震パッド50の使用状態では、支持体80が設備機器1の荷重を受け、平常時にゲル状弾性体70が押し潰されないように支え、振動発生時にゲル状弾性体70がその弾粘性をもって振動を吸収することができるようになっている。この方法であれば、設置面に穴を開けることなく重量物を設置面に固定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−72062公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の制震パッド50を製造する際には、図8(a)で示すように、制震パッド製造用のトレイ100にあらかじめ支持体80を配置し、液状の弾粘性材料を注ぎ入れてゲル状弾性体70を成形する。ゲル状弾性体70は弾粘性によりべとつくため、制振パッド50は成形後の状態のまま施工時までトレイ100に取り置かれ、耐震施工の施工場所において作業者によりトレイ100から取り出される。
【0006】
上述の製造工程からも分かるように、支持体80は片方の面がトレイ100に接した状態で弾粘性材料が流し込まれることから、支持体80の片面が成形後のゲル状弾性体70から露出する。この状態で、トレイ100から制震パッド50を取り出すために、ゲル状弾性体70の一部を引っ張ってトレイ100から剥がし取ろうとすると、図8(b)で示すように、ゲル状弾性体70の湾曲に伴って、弾粘性材料よりも硬質の材料からなる支持体80がゲル状弾性体70から脱落し、耐震パッド50から分離・剥離してしまう場合がある。支持体80が分離・剥離して取れてしまった制震パッド50はもはや施工に使用することができず、新たな制震パッドを用意する必要が生ずる。
【0007】
一方、制震パッド50のゲル状弾性体70を重量物の荷重により押し潰されないように保持するためには、支持体80の硬さや量を調整する必要がある。例えば、図9に示すように、支持体80を内外二重の円環状にして配置するなど複数用意することがある。この際に、ゲル状弾性体70より硬く、トレイ100との接着面積が大きくなった支持体80が制震パッド50から容易に分離してしまうという問題があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、振動を吸収するゲル状弾性体と重量物を支持する支持体からなる制震パッドにおいて、施工時に包装部材から取り出す際に、ゲル状弾性体から支持体が分離・剥離しない制震パッドを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、次のような制震パッドを提供する。
【0010】
(1)弾粘性材料からなるゲル状弾性体と、ゲル状弾性体に埋設された重量物支持体と、ゲル状弾性体の表面又は裏面のいずれか一方又はその両方に支持体の一部に被さるように形成された隆起部を備え、隆起部が、十文字状、米印状、複数の長円形を放射状に設けた形状、又は、複数の弓形を円周方向に配列した形状に形成されたことを特徴とする制震パッド。
【0011】
(2)支持体はゲル状弾性体より硬質の複数の芯材からなり、隆起部は複数の芯材に架け渡すように形成されていることを特徴とする(1)記載の制震パッド。
【0012】
(3)支持体の周囲においてゲル状弾性体の隆起部と同じ面に、1つ以上の凹部が形成されていることを特徴とする(1)又は(2)記載の制震パッド。
【0013】
(4)ゲル状弾性体を包む包装部材をさらに備え、包装部材に弾粘性材料でゲル状弾性体を成形するためのキャビティが設けられ、キャビティの一部に隆起部を成形する部分が形成されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一つに記載の制振パッド。
【発明の効果】
【0014】
本発明の制震パッドは、ゲル状弾性体の表面又は裏面のいずれか一方又はその両方に支持体の一部に被さるように隆起部が十文字状、米印状、複数の長円形を放射状に設けた形状、又は、複数の弓形を円周方向に配列した形状に形成されているので、隆起部により支持体をゲル状弾性体中にしっかりと保持し、制震パッドを包装部材から取り出す際に支持体が剥がれ落ちることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の制震パッドを示す斜視図である。
図2】本発明の制震パッドを示す図1のA−A線断面図である。
図3】本発明の制震パッドを示す平面図である。
図4】本発明の制震パッドの包装部材を示す斜視図である。
図5】本発明の制震パッドを包装部材から取り出す状態を示す説明図である。
図6】本発明の制震パッドを使用した免震施工方法を示す説明図である。
図7】従来の制震パッド及び制震パッドを使用した免震施工方法を示す説明図である。
図8】従来の制震パッド及びその包装容器の使用状態を示す説明図である。
図9】複数の支持体を備えた制震パッドの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の制震パッド5を示す。制震パッド5は、設備機器(図示せず)の振動を吸収するシリコンゴムなどの弾粘性のある素材を材料とするゲル状弾性体7と、設置された際に設備機器の荷重を支承する高減衰ゴムなど、ゲル状弾性体7よりも硬質の材料からなる支持体8とで構成されている。支持体8はゲル状弾性体7よりも小さい厚さで形成され、ゲル状弾性体7の中に埋設されている。ゲル状弾性体7の一部には、隆起部11が支持体8の一部に被さるように形成されている。隆起部11の高さは制震パッド5の厚さの6%〜100%程度であり、例えば、厚さが5mm程度の制震パッド5であれば、高さ0.3〜5mm程度の隆起部11が形成される。
【0017】
支持体8の数は支える設備機器1の大きさや重さによって変化し、単数でも複数でもよい。図1図3に示したものは内外2つの円環状の芯材からなり、隆起部11はこれらの支持体8に架け渡すように形成されている。
【0018】
図2は制震パッド5の断面図である。図2(a)に示すように、隆起部11はゲル状弾性体7の表面又は裏面のいずれか一方に設けられていてもよく、図2(b)に示すように、ゲル状弾性体7の両面に、支持体8の一部に被さるように形成されていてもよい。
【0019】
図3は、制震パッド5の平面図である。図3(a)で示した制震パッド5の隆起部11は十文字を形成しているが、支持体8の一部を覆うように、そして、複数の支持体8に架け渡されるように形成すれば、隆起部11の数や大きさ、形状は問わない。例えば、デザイン性を考えて、図3(b)に示すように、隆起部11を米印状、または、制震パッド5の中心部と周縁部を除く範囲に放射状に形成したり、図3(c)に示すように、弓形の隆起部11を円周方向に複数配列したりすることもできる。
【0020】
図4は、制震パッド5の製造にも兼用される包装部材10を示したものである。包装部材10は型部10aと蓋部10bを備え、型部10aに弾粘性材料で制震パッド5を成形するためのキャビティ20が設けられ、キャビティ20の一部には隆起部11を形成する隆起部形成部21が成形時に支持体8の一部に被さるように設けられている。
【0021】
図3(a)で示したように、隆起部11と同じ面のゲル状弾性体7には、1つ以上の凹部9が支持体8の周囲に位置するように形成されている。この凹部9は、図4に示すように、制震パッド5の製造時に支持体8を包装部材10の型部10aに対して位置決めするために、型部10aの凸部91によって成形される。これにより、支持体8を正確な位置に配置した状態で弾粘性材料を型部10aのキャビティ20に流し入れ、包装部材10を利用して制震パッド5を容易に製造することができる。凸部91は支持体8の位置を決めることができればよいことから、少なくとも3つあれば足り、形状や大きさについても問われない。
【0022】
図5は制震パッド5の使用状態を示す断面図である。梱包・運搬時には、包装部材10がゲル状弾性体7のべたつきを防止する。施工時には、制震パッド5が包装部材10から剥がして取り出される。この際にゲル状弾性体7に内包された状態にある支持体8は隆起部11により弾粘性材料中に繋ぎ止められているため、支持体8を分離・剥離することなく、制振パッド5を包装部材10から取り出すことができる。
【0023】
包装部材10から取り出された制振パッド5は、図6で示すように、設備機器1の脚部3と床面Fとの間に加圧プレート6と一緒に介装される。この際ゲル状弾性体7の隆起部11は加圧プレート6を介して設備機器1の荷重により押しつぶされるが、支持体8が設備機器1の荷重を受け、平常時に制震パッド5が押し潰れないように支え、振動発生時にゲル状弾性体7がその弾粘性をもって振動を吸収することができるように機能するので、制震性に影響を与えることなく設備機器1を耐震設置することができる。
【0024】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含される。
【符号の説明】
【0025】
1 設備機器
3 脚部
5 制震パッド
6 加圧プレート
7 ゲル状弾性体
8 支持体
9 凹部
10 包装部材
11 隆起部
20 キャビティ
21 隆起部形成部
91 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9