(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属を含む混合物を溶融炉で溶融して、溶融混合物を溶融炉からレードルへ払い出し、レードルから溶融金属を鋳造装置又は冷却装置へ出湯して、溶融金属とスラグとに分離する方法において、
溶融炉からレードルへの溶融混合物の払い出し時から、レードルから鋳造装置又は冷却装置への溶融金属の出湯時までの、レードルで溶融混合物を貯留しておく貯留時間を1分以上として、溶融金属とスラグとに比重分離させ、
レードルから鋳造装置又は冷却装置へ出湯する溶融金属出湯重量のレードル内の溶融混合物全重量に対する比率である出湯比率を90%以下とすることを特徴とする溶融金属とスラグの分離方法。
【背景技術】
【0002】
金属を含む混合物を溶融して溶融金属とスラグとに分離して溶融金属を鋳型に出湯し冷却して金属材を得るプロセスにおいて、金属材の中にスラグ等の介在物が混入した場合には、金属材の強度・加工性・耐疲労性の低下などを引き起こすため、溶融金属からできるだけスラグを分離し、溶融金属の出湯に際して溶融金属へのスラグの混入が少ない状態とすることが望ましい。レードルからの出湯の際の溶融金属へのスラグの混入を抑制する方法としては、溶融金属とスラグの比重差を利用し、スラグを浮上分離した状態でレードルの下部から溶融金属を出湯することが一般的である。溶融金属とスラグの間の大きな比重差を利用して、レードルにて溶融金属とスラグとを比重分離させるように静置しその静置の後、レードルの底から溶融金属を出湯することにより、出湯する溶融金属へのスラグの混入を抑制することが可能である。
【0003】
出湯時の溶融金属へのスラグの混入を防止するため、溶融金属の出湯の際、レードル内に、溶融金属とともにスラグが混在した溶融混合物を残した状態で出湯を停止する方法が開示されている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、レードル内に溶融混合物を残した状態で出湯を中止することとしており、レードル内に残す溶融混合物の量を残鋼量として、該残鋼量の好適な値を提案している。特許文献1では、この残鋼量の一例として、出湯前のレードル内の溶融混合物の量が150tの場合、残鋼量を5t〜10tとすることが示されている。溶融炉からレードルへ溶融混合物を移したとき、その直後の溶融混合物は、レードル内で溶融金属とスラグとが互いに入り混じっており、或る程度の時間経過後に、両者は比重差によって分離する。しかしながら、特許文献1では、レードル内の残鋼量の例示はあるものの、溶融混合物のレードル内での出湯までの貯留時間をどの位にすべきか、何ら言及していない。溶融混合物は、溶融炉からレードルへ移された(払い出された)時点では、レードル内で溶融金属とスラグとが入り混じった状態にあり、レードル内での貯留時間の経過に伴い、比重差によりスラグが溶融金属から次第に分離されて溶融金属の上に層を形成するようになる。したがって、貯留時間が十分でないと、スラグがまだ溶融金属へ混入している状態にあり、溶融金属をレードル下部から出湯しても、出湯された溶融金属にスラグが混入されてしまう。その結果、溶融金属を冷却して得る金属材を利用する際、金属材の特性、品質に影響をもたらすこととなる。このように、特許文献1では、溶融混合物のレードル内での貯留時間を特定していないので、上記金属材の特性、品質に支障が生じない程度までに出湯溶融金属へのスラグの混入を抑制することができない虞れがある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、溶融混合物のレードル内での貯留時間を考慮して、溶融金属とスラグとを確実に分離する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、溶融金属とスラグの分離方法にあっては、金属を含む混合物を溶融炉で溶融して、溶融混合物を溶融炉からレードルへ払い出し、レードルから溶融金属を鋳造装置又は冷却装置へ出湯する。
【0008】
かかる溶融金属とスラグとの分離方法において、本発明では、溶融炉からレードルへの溶融混合物の払い出し時から、レードルから鋳造装置又は冷却装置への溶融金属の出湯時までの、レードルで溶融混合物を貯留しておく貯留時間を1分以上として、溶融金属とスラグとに比重分離させ、
レードルから鋳造装置又は冷却装置へ出湯する溶融金属出湯重量のレードル内の溶融混合物全重量に対する比率である出湯比率を90%以下とすることを特徴としている。
【0009】
このような構成の本発明によれば、溶融混合物はレードル内での貯留時間を1分以上とすることで、溶融金属とスラグが比重差により十分に分離され、出湯比率を90%以下とすることで、スラグが混入していない溶融金属が出湯される。
【0010】
本発明において、レードルで溶融混合物を貯留する貯留時間を1分以上11分以下とすることが好ましい。
【0011】
スラグの溶融金属からの十分な分離には、貯留時間を1分以上とすることが必要であるが、11分を超えると、過剰な貯留時間となるとともに、溶融金属の温度低下にもつながるので、11分以下が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明では、溶融炉から溶融混合物を受け出湯するまでのレードルにおける溶融混合物の貯留時間を1分以上確保することとしたので、レードル内で溶融金属からスラグを十分に浮上分離させることができ、さらには、レードルからの溶融金属の出湯比率を90%以下としたので、溶融金属へのスラグの混入を確実に防止することができ、該溶融金属から得られる金属材の特性、品質を大幅に改善させる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1において、黒塗り矢印はレードルの位置移動を示し、白抜き矢印は部材における溶融混合物等の状態の変化を示し、斜線を施した小矢印は溶融金属の流れを示している。また、
図1では、本発明方法の実施におけるプロセス中の各状態を[I]ないし[V]に示している。
【0016】
図1において、符号1は、金属を含む混合物を溶融して溶融混合物とする溶融炉、例えば高周波誘導炉、低周波誘導炉、転炉、キュポラ炉、アーク炉、プラズマ炉、真空誘導炉、電気抵抗式溶融炉である。
【0017】
状態[I]は、上記溶融炉1で金属を含む混合物が溶融されている状態である。溶融炉1は、上部縁に供給口1Aを有していて、状態[II]に示すように、傾動して上記供給口1Aから溶融炉1内の溶融混合物を、溶融炉1の近くに配置されたレードル2へ向け払い出すようになっている。状態[II]は、溶融混合物をレードルへ払い出す状態である。
【0018】
レードル2は、底壁に出湯口2Aが形成されていて、該出湯口2Aには、抜出可能な棒状の栓体2Bが差し込まれている。該栓体2Bは、レードル2の上部開口よりも上方まで延びている。溶融炉1から溶融混合物がレードル2へ払い出された後、レードル2はそのまま所定時間の間、静置される。状態[III]は、レードル2内で溶融混合物が静置され溶融金属とスラグとに分離される状態である。
【0019】
さらに、
図1にて、状態[IV]に示されているように、上記レードル2がこの状態[IV]の位置まで移動してきたときに、該レードル2の下方に位置して鋳造装置として鋳型3が配置されていて、状態[IV]として、溶融金属Mをレードル2から鋳型3へ出湯する状態となる。次に、状態[V]で、鋳型3で溶融金属Mが冷却され金属材となる。
【0020】
次に、本実施形態における、溶融炉1からレードル2への溶融混合物の払い出し、レードル2から鋳型3への溶融金属の出湯について、それらの要領を説明する。
【0021】
先ず、溶融炉1で金属を含む混合物を溶融して溶融混合物Bを生成する(状態[I])。
【0022】
しかる後、溶融混合物Bを収容する上記溶融炉1をレードル2上で傾けて該溶融炉1の供給口1Aから溶融混合物Bをレードル2へ流下し払い出す(状態[II])。該レードル2は、その底壁の出湯口2Aが栓体2Bにより塞がれており、溶融混合物Bは出湯口2Aから出湯されることなく該レードル2内に貯留される。溶融混合物Bがレードル2内に払い出されときには、溶融金属M中にスラグSの一部が混入した状態をなしている。
【0023】
本実施形態では、溶融炉1から溶融混合物Bを受け終わった上記レードル2はそのまま所定時間の間、静置される(以下、静置される時間を「静置時間」とする)(状態[III])。レードル2は静置時間経過後に状態[IV]として示される鋳型3の上方位置へと移動する(この移動に要する時間を「移動時間」とする)。レードル2は、状態[IV]で示される上記鋳型3の上方位置に達した後、速やかに栓体2Bが上方に抜かれ、出湯口2Aが開かれ、レードル2内から溶融金属Mが出湯され、鋳型3へ注入される。しかる後、鋳型3内で溶融金属Mは冷却された(状態[V])後に、金属材として鋳型3から取り出される(状態[V])。
【0024】
レードル2への溶融混合物Bの払い出し完了時から、状態[III]に示されるように静置され、状態[IV]に示す位置への移動が完了して出湯が開始されるまでの時間、すなわち上記「静置時間」と「移動時間」とを加えた時間が、溶融混合物Bのレードル2内での「貯留時間」となり、この貯留時間内に溶融混合物Bは、レードル2内で、比重差から溶融金属MとスラグSとに分離され、溶融金属Mよりも軽いスラグSが溶融金属Mよりも上方に位置して層を形成し、溶融金属MとスラグSとに十分に分離される。その結果、状態[IV]でレードル2の底壁の出湯口2Aから出湯される溶融金属MにはスラグSは殆ど混入していないようになる。
【0025】
本実施形態では、通常「移動時間」に1分近くを要する場合が多いが、これを考慮して、上記「静置時間」と「移動時間」との合計時間を「貯留時間」として、貯留時間を1分以上に設定し、好ましくは、1分以上11分以下に設定する。貯留時間が1分以上であると、溶融金属MからスラグSが十分に分離される。一方、貯留時間が11分を超えると、レードル2内の溶融金属Mの温度の低下を招き問題が生じる虞があるので、11分以下に留めることが好ましい。
【0026】
以下、本実施形態の具体的一例としての実施例を示すこととする。
【0027】
<実施例>
本実施形態では、レードル2から出湯された溶融金属Mを鋳型3にて冷却して金属材とし、その一部を採取することで、金属中のスラグ濃度を測定した。
【0028】
金属中スラグ濃度を測定するため、スラグ由来の介在物の量を選択的に定量的に求める必要がある。本実施形態では、スラグ由来の介在物にのみカルシウム(以下、Ca)が含まれることを利用し、介在物中のCa濃度を測定し、別途分析したレードルに残されたスラグ中のCa濃度で割戻すことで、金属中スラグ濃度を定量した。金属中スラグ濃度の算出式を式(1)に示す。
【0029】
C1=(C2×C3)/C4………(1)
ここで、
C1:金属中スラグ濃度(ppm)
C2:金属中に混入している介在物の濃度(ppm)
C3:介在物中のCa濃度(%)
C4:レードルに残されたスラグ中のCa濃度(%)
である。
【0030】
この算出方法においては、金属中スラグ濃度を介在物中Ca濃度から算出するため、Caも溶解してしまう酸溶解は介在物の濃度の定量に適用できない。そのため、Caを溶解しない臭素-メタノール抽出法を用い、金属中の介在物を残渣として採取し、金属中の介在物の濃度と介在物中のCa濃度を分析して測定する。これに、別途レードルに残されたスラグ中のCa濃度を分析して測定したものを式(1)に当てはめ、で算出される数値を金属中スラグ濃度とすることとした。
【0031】
本実施形態では、レードル内にて溶融金属とスラグを比重分離し、鋳型への出湯時の溶融金属へのスラグの混入を防止するために必要なレードルでの分離のための貯留時間、出湯比率(残湯比率)の関係を確認する目的で、以下に示す試験を行った。
【0032】
(1)試験設備およびフロー
図1に示されるような設備において、溶融炉1としては4t/バッチ高周波誘導炉を用い、鋳型3は、上方に広がる台形形状のものを用いた。該鋳型3の内寸法は、底幅が300mm、上幅が500mm、高さが200mm、奥行きが440mmであり、かかる鋳型3で金属材としての分析用検体インゴットを製作し、これから一部を分析用サンプルとして切り出し採取した。分析用サンプルはインゴット中央部分から採取され、一辺が約50mmの立方体とした。試験プロセスフローは
図1に示されている通りである。試験では金属を含む混合物を模した鋼材と高炉スラグとの混合物を高周波誘導炉にて溶融して溶融混合物とした後、レードルへ払い出し貯留した。その後、レードルの底の出湯口から溶融金属を鋳型へ出湯し、分析用検体(インゴット)を製作した。冷却凝固後、分析用検体から分析用サンプルを採取し金属中スラグ濃度を測定した。
【0033】
(2)試験条件
高周波溶融炉で溶融されて試験に供する金属を含む混合物のうち鋼材は、炭素鋼(SM490B相当)のスクラップ材とした。溶融炉からの出湯温度は、鋼材の融点(約1530℃)に対し、レードル内での貯留時間中の温度降下を考慮した過熱度とした。スラグが多い場合の分離について検討するため、溶融する鋼材約2.5tに対し、溶融金属量の10%に当たる約250kgのスラグを添加して試験用の金属含有混合物として、金属含有混合物を溶融炉にて加熱して溶融し溶融混合物とした。レードルから鋳型へ出湯する溶融金属出湯重量のレードル内の溶融混合物全重量に対する比率を出湯比率と定義し、鋳型へ出湯し製作した分析用検体(インゴット)の重量を測定して、出湯比率を求めた。各試験水準にて、出湯比率を変化させた複数個の分析用検体を製作した。
【0034】
レードルにおける静置時間を0分、4分、10分の3水準で分析用検体を製作した。ここでは、溶融炉よりレードルへの溶融混合物の払い出し完了時から鋳型上部へ向けて移動を開始するまでの時間を静置時間としている。この静置時間の後、溶融炉からレードルへ払い出した場所から鋳型上部へレードルを移動そしてレードルから鋳型への溶融金属の出湯を開始するまでに、1分ほど移動時間がかかっており、その時間にも溶融金属とスラグの浮上分離が進むこととなっている。レードルで溶融混合物を貯留する貯留時間は静置時間と移動時間の合計である。
【0035】
(3)分析用サンプルの採取
分析用検体の中央部分を50mm幅で切断した後、断面の高さ方向の中心付近より一辺が50mmの立方体形状に切出し、分析用サンプルを採取した。鋳型内で溶融金属が冷却される際溶存ガスが析出したり偏析が生じてインゴット中に巣が発生することがあるが、分析用サンプルの採取は、スラグ成分が多いと予想される巣の近傍が分析用サンプルに入るように採取箇所を微調整した。分析は前述した測定方法で実施し、金属中スラグ濃度を測定した。なお、数個の分析用検体にて、分析用サンプル採取箇所の上下の位置における金属中スラグ濃度を測定し、分析用検体内の金属中スラグ濃度がほぼ一様であることを確認した。
【0036】
(4)出湯比率と金属中スラグ濃度の関係
出湯比率と金属中スラグ濃度の関係を表1に示す。出湯比率が10%程度であるレードルからの溶融金属の出湯の初期から出湯比率が90%以下までは、金属中スラグ濃度は10ppm以下の低い値であって大きな変化はない。しかし、出湯比率が90%を超える場合には、金属中スラグ濃度が急上昇していることが確認できた。これは溶融金属の上に浮いているスラグを巻き込んだことによる上昇と考えられる。出湯比率を90%以下とすれば、言い換えれば、レードル内に残留する溶融混合物重量のレードル内の溶融混合物全重量に対する比率を残湯比率と定義し場合に残湯比率を10%を超えるようにすれば、低い金属中スラグ濃度となる。実際にレードルから鋳型へ出湯する操業の際には、レードルに設けたロードセル等の重量測定装置により溶融金属出湯重量とレードル内の溶融混合物全重量を測定して出湯比率を算出し、出湯比率を90%以下とするように操業することができる。
【0037】
(5)貯留時間と金属中スラグ濃度の関係
それぞれの試験水準で静置時間を変化させて採取した分析用検体の、静置時間と移動時間を合わせた貯留時間と金属中スラグ濃度の関係を表1に示す。出湯比率が90%以下の場合には貯留時間の長さと金属中スラグ濃度とに有意な相関は見られず、いずれの試験水準でも10ppmを下回る金属中スラグ濃度となることが確認できた。これは、貯留時間が1分(移動時間を1分とすると静置時間が0分)であっても高周波誘導炉からレードルへの払い出し完了後、この貯留時間にはレードルを鋳型の上まで移動させるのに約1分の移動時間を含んでいるので、その移動時間にスラグが浮上分離したためと考えられる。従って、静置時間と移動時間との合計時間である貯留時間を1分以上とすることにより溶融金属とスラグとを確実に分離できる。溶融炉からレードルへの払い出しから出湯鋳込みまでの間に1分以上の貯留時間を確保できれば、10ppmを下回る金属中スラグ濃度までスラグを分離することができ、溶融金属とスラグとを確実に分離できることが確認できた。
【0038】
(6)貯留時間の上限
貯留時間を11分以下とすることが好ましい。上述したように貯留時間を1分以上とすることにより、溶融金属とスラグとを分離できることが確認でき、表1に示すように貯留時間の長さと金属中スラグ濃度とに有意な相関は見られず、いずれの試験水準でも10ppmを下回る金属中スラグ濃度となることが確認でき、貯留時間を11分を超えるように設定することは必要でないことも判明した。貯留時間を1分以上11分以下とすることにより、以下の効果を得ることができる。
【0039】
以上のように貯留時間を11分以下とすることにより、貯留時間中のレードル内の溶融金属の過度な温度低下が回避される。そのため、溶融炉からの出湯温度を高めにする必要がなく低くすることが可能となり電力原単位の低減、レードルの耐火材の損耗低減が見込まれ、また、運転コストを低減できる。
【0040】
上記の実施の形態では、レードルから鋳造装置としての鋳型に溶融金属を出湯し冷却して金属材を得ることとしたが、これに限らず、鋳造装置としての連続鋳造機に出湯するようにしてもよいし、溶融金属を冷却水に投入し水砕するような冷却装置に出湯するようにしてもよい。
【0041】
また、溶融炉から溶融金属を一時的に受け、溶融混合物をレードルに供給するために取鍋等の供給容器を用いてもよく、その場合には、供給容器からレードルへ溶融混合物を払い出すときから、レードルから鋳型へ溶融金属を出湯するときまでを、貯留時間とする。
【0042】
本発明は金属を含む混合物を溶融し溶融金属とスラグに分離する際に適用するものであるが、放射性物質に汚染された金属混合物の処理に適用すると有用である。放射性物質に汚染された金属混合物を溶融する場合は、複雑な大規模設備を用いるとそれらの機器にも放射性物質が付着し、汚染が拡大する危険性があり、管理が煩雑になる。しかし、本発明のように、溶融炉とレードルと鋳型のみを用いて、放射性物質に汚染された金属混合物を溶融し溶融金属とスラグに分離するシンプルなプロセスを実行するだけで、放射性物質がスラグに集約されるので、金属材は汚染物質を含まなくなり、金属材の使用に際しても制限が緩和され、処理時の汚染の拡大の抑制、及び、汚染した設備のメンテナンスによる作業員の被爆可能性が低減するという効果がある。このように、複雑な設備を使うことが好ましくない「放射性物質を含む金属廃棄物からの金属とスラグとの分離」に活用できる溶融金属とスラグとの分離方法として用いることができる。
【0043】
また、放射性物質に汚染された金属混合物を溶融し溶融金属とスラグに分離して、放射性物質をスラグに集約させる際に、分離して得るスラグ量が僅少ではスラグに含まれる放射性物質の濃度が高くなりすぎ、スラグの取扱いが困難になる可能性がある。この問題を解決するために、放射性物質に汚染された金属混合物を溶融する際にスラグを添加し、溶融して得られるスラグ量を増加してスラグ中の放射性物質濃度を低下して取扱い可能なレベルに抑制することが好ましい。添加するスラグの組成は、主成分がSiO
2/CaO/Al
2O
3であり、塩基度が0.5〜5のものが好ましい。