(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6779507
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】スチームトラップ
(51)【国際特許分類】
F16T 1/40 20060101AFI20201026BHJP
F16T 1/38 20060101ALI20201026BHJP
F16T 1/00 20060101ALI20201026BHJP
F16T 1/34 20060101ALN20201026BHJP
【FI】
F16T1/40
F16T1/38 Z
F16T1/00 E
!F16T1/34
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-52907(P2020-52907)
(22)【出願日】2020年3月24日
【審査請求日】2020年3月24日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 製造依頼先 畑中特殊バルブ工業株式会社 依頼内容開示日 平成31年4月10日 納入先 高砂熱学工業株式会社(株式会社三越伊勢丹・伊勢丹新宿店事業所) 納入日 令和1年6月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520102783
【氏名又は名称】伊能 芳彦
(73)【特許権者】
【識別番号】520102794
【氏名又は名称】日東礦工商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520101362
【氏名又は名称】株式会社ゼットサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085084
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高英
(72)【発明者】
【氏名】伊能 芳彦
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−145897(JP,U)
【文献】
特開2005−172090(JP,A)
【文献】
特開2020−041656(JP,A)
【文献】
特開2005−24088(JP,A)
【文献】
特開平7−55095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/40
F16T 1/38
F16T 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管状通路に弁室を備える配管ケースと、
前記弁室内に弁軸を中心として回動自在に配設され、前記直管状通路内の一次側と二次側とを連通可能に形成された球弁体と、
を備えるスチームトラップであって、
前記球弁体には、
前記弁軸と直交させて形成された該球弁体を貫通する直管の小径の孔路と、前記弁軸と直交させて形成された該球弁体を貫通する直管の大径の孔路とが、相互に交わらないようにして形成されており、
前記球弁体の回動位置に応じて、
前記小径の孔路の一方の開放端を前記直管状通路内の一次側に位置させて前記直管状通路内を連通させる第1モード、
前記第1モードの回動位置から前記弁軸を中心として180°回動し、前記小径の孔路の他方の開放端を前記直管状通路内の一次側に位置させて前記直管状通路内を連通させる第2モード、
前記第1モードの回動位置と第2モードの回動位置との中間位置であって、前記小径の孔路が前記直管状通路内の一次側と二次側とを連通させていない状態において前記大径の孔路により前記直管状通路内を連通させる第3モード
を切り替え可能に構成されていることを特徴とするスチームトラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側と二次側とを連通させる孔路が形成されたボール弁を内蔵するスチームトラップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蒸気使用機器や蒸気輸送管などの蒸気の配管系には、蒸気から復水(ドレン)を分離して系外へ排出するスチームトラップが配設されており、スチームトラップには、配管内に板材等を用いて小径のオリフィス孔が形成された板材や球状部材を配設して、蒸気から復水(ドレン)を分離することがなされている。
【0003】
オリフィス孔を有するスチームトラップは、弁が作動したときに生蒸気を流出させる「間欠式(機械式)」のスチームトラップに対して「連続式」のスチームトラップとして分類されており、可動部を持たず、一次側の圧力変動がない為にそれを原因とするスチームハンマーが発生しないという利点を有する一方で、一次側から通過する流体中に混入しているゴミ等の異物による詰まり(噛込み)が発生することがあるという問題点を有していた。弁口となるオリフィス孔が塞がれてしまうと、スチームトラップは機能しないので、やがては蒸気使用機器や蒸気輸送管などに復水が溜まり、加熱効率は低下することとなる。
【0004】
そして、このオリフィス孔の詰まりを解消するべく、オリフィス孔の直前にストレーナを設け、このストレーナでゴミ等を濾し取って詰まりを防止する構造のスチームトラップも開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−027389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ストレーナを設けた場合においては、ストレーナで濾し取った異物を配管内から取り除くために、配管系からスチームトラップを取り外してストレーナを洗浄するといったメンテナンスの手間がかかる。
【0007】
そして、オリフィス孔の径よりも大きな異物はストレーナで濾して取ることができるが、現実には、ストレーナを通過した小さな異物が一次側で凝縮し、オリフィス孔に詰まりが発生し、スチームトラップの本来の効率を低下させてしまう事例が多い。
【0008】
ここで、前述の凝縮する異物には粘性や固着性がない。故に、一次側と二次側の圧力を逆転させれば、一次側に位置していたオリフィス孔に詰まった異物を到来した方向へ押し戻し、取り除くことができる。その点に着目し、
図4に示すように、オリフィス孔が配設された通常作動時に用いるメインの配管に対し、一次側と二次側とを結ぶ2系統のバイパスの配管を互い違いに連接するとともにメインの配管やバイパスの配管に開閉弁を配設した逆洗浄配管を用い、それぞれの開閉弁の開閉を制御することにより、一次側と二次側との圧力を入れ替え、一次側に位置していたオリフィス孔の異物を取り除く技術も採用されている。
【0009】
しかしながら、この逆洗浄配管を設置する場合には配設スペースや施工コストの問題が新たに生じる。
【0010】
そこで、本発明は、蒸気から復水(ドレン)を分離するための連通孔に詰りが生じ、スチームトラップ自体や蒸気の配管系の効率が低下した場合であっても、簡便な操作でその詰りを解消することができ、短時間で蒸気使用機器や蒸気輸送管などの蒸気の配管系を本来の良好な効率の駆動に戻すことができるスチームトラップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のスチームトラップは、直管状通路に弁室を備える配管ケースと、前記弁室内に弁軸を中心として回動自在に配設され、前記直管状通路内の一次側と二次側とを連通可能に形成された球弁体とを備えるスチームトラップであって、前記球弁体には、前記弁軸と直交させて形成された該球弁体を貫通する直
管の小径の孔路と
、前記弁軸と直交させて形成された該球弁体を貫通する直管の大径の孔路とが、相互に交わらないようにして形成されており、前記球弁体の回動位置に応じて、前記小径の孔路の一方の開放端を前記直管状通路内の一次側に位置させて前記直管状通路内を連通させる第1モード、前記第1モード回動位置から前記弁軸を中心として180°回動し、前記小径の孔路の他方の開放端を前記直管状通路内の一次側に位置させて前記直管状通路内を連通させる第2モード、前記第1モードの回動位置と第2モードの回動位置との中間位置であって、前記小径の孔路が前記直管状通路内の一次側と二次側とを連通させていない状態におい
て前記大径の孔路により前記直管状通路内を連通させる第3モードを切り替え可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のスチームトラップは、前記球弁体を前記弁軸を中心として180°回動させて第1モードと第2モードとを切り替え、前記小径の孔路の両端の開口を前記直管状通路内の一次側と二次側とで入れ替えることで、前記小径の孔路の二次側に位置していたオリフィス孔から前記小径の孔路内を通過する蒸気等の流体を通して、前記小径の孔路の一次側に位置していたオリフィス孔近傍に付着して詰まりを生じさせる異物を二次側へ排出して取り除くことができる。
【0013】
さらに、前記球弁体を前記弁軸を中心として180°回動させて第1モードと第2モードとを切り替える際に経由する第3モードにおいては、大径の孔路を以て前記差圧を減少させて勢いを弱めた状態で一次側に滞留する蒸気等を強制的に二次側へ流出させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、オリフィス孔に詰まりが生じ、スチームトラップ自体や蒸気の配管系の効率が低下した場合であっても、球弁体の弁軸周りの回動のみでボール弁のオリフィス孔の詰りを短時間で解消することができ、スチームトラップとしての本来の性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態のスチームトラップの第1モードにおけるボール弁の連通状態を説明する(1)上面図、(2)(1)のII-II断面図、(3)(2)の左方向視野図、(4)(1)の配管ケース内における球弁体の小径の孔路と大径の孔路との位相を異ならせた位置関係を説明する一部透過上面図、(5)(4)の配管ケースの右方向視野図
【
図2】
図1のスチームトラップの第3モードにおけるボール弁の連通状態を説明する(1)上面図、(2)(1)のII-II断面図、(3)(2)の左方向視野図、(4)(1)の配管ケース内における球弁体の小径の孔路と大径の孔路との位相をを異ならせた位置関係を説明する一部透過上面図、(5)(4)の配管ケースの右方向視野図
【
図3】
図1のスチームトラップの第2モードにおけるボール弁の連通状態を説明する(1)上面図、(2)(1)のII-II断面図、(3)(2)の左方向視野図、(4)(1)の配管ケース内における球弁体の小径の孔路と大径の孔路との位相を異ならせた位置関係を説明する一部透過上面図、(5)(4)の配管ケースの右方向視野図
【
図4】従来のスチームトラップの詰まりを解消するための逆洗浄配管であって、(1)は通常時の流れ、(2)は詰まり発生を除去するメンテナンス時の流れを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のスチームトラップの一実施形態について、
図1乃至
図3を用いて説明する。
【0017】
本実施形態のスチームトラップは、直管状通路を構成する管状の配管ケース1と、配管ケース1の直管状通路内の一次側と二次側とを連通可能に形成され、配管ケース1内に弁軸3を中心として回動自在に配設された球弁体10とを備える。
【0018】
前記配管ケース1の直管状通路内には球弁体10が内蔵される弁室2が形成されており、球弁体10は、
気密部材により
気密にされた弁室2内において定位置に配設された一次側管状パッキン4と二次側管状パッキン5との間で摺接回動可能に挟持されている。
【0019】
球弁体10には、配管ケース1の直管状通路の延出方向に直交させて配管ケース1と弁室2とを連通させて形成された軸穴6に挿入された弁軸3の一端を嵌合させて固定する弁軸連結部が穿設されている。
【0020】
また、球弁体10には、弁軸3と直交させ、球弁体10を貫通させて形成され、直管状通路内の一次側と二次側とを連通させ、その差圧により蒸気からドレンを分離可能とされた
直管の小径の孔路12が形成されている。ここで、孔路とは、板材に穿った穴のような深さの無い、浅いものを意味するものではなく、例えば、ある程度の深さ(長さ)、具体的には孔径1mmに対し5mm以上、即ち、孔径の5倍程度の長さ、を有する通路状の孔を意味する。本実施形態のように、球弁体10に、穴としてのオリフィスを設けるのではなく、球弁体10の直径寸法と同程度の長さを有する通路状の孔路(柱状オリフィス)を設け、一次側と二次側とを連通させることにより、上記の流出速度を抑制し、結果として、蒸気の漏れを軽減・抑止する能力を高めることができる。
【0021】
本実施形態において、小径の孔路12は直径0.9mmで、配管ケース1の直管状通路の中心軸に対して弁軸3から延出させた仮想回動軸上を通り、かつ、直管状通路内の反弁軸配設側、つまり、直管状通路内底部側に形成されている。
【0022】
さらに、球弁体10には、弁軸3と直交させ、球弁体10を貫通させて形成され、小径の孔路12が直管状通路内の一次側と二次側とを連通させていない状態において直管状通路に沿って位置してその一次側と二次側とを連通させ、差圧を減少させて一次側の流体を二次側へ流出する
直管の大径の孔路13が形成されている。つまり、小径の経路12と大径の経路13は同時に開口することはないような位置関係で形成されている。
【0023】
本実施形態において、大径の孔路13は直径2.5mmで、弁軸3から延出させた仮想回動軸上を通り、小径の孔路12と位相を異ならせて、具体的には、小径の孔路12と
弁軸方向視野において直交し、かつ、直管状通路内の弁軸配設側、つまり、直管状通路内上部側に形成されている。
【0024】
配管ケース1から外方へ突出する弁軸3の他端には、一次側管状パッキン4や二次側管状パッキン5に摺動させつつ回動させる操作部としてのハンドル14が接続されている。
【0025】
そして、本実施形態のスチームトラップにおいては、ハンドル14は、
図1に示す第1モードの回動位置から、さらに90°ほど右回りに回動した、
図2に示す第3モードの回動位置、さらに90°ほど右回りに、つまりは、第1モードの回動位置からは180°の対向位置に回動した
図3に示す第2モードの回動位置との間を回動し、第1モードにおいては、小径の孔路12の一方の開放端を直管状通路内の一次側に位置させて直管状通路内を連通させ、第2モードにおいては、小径の孔路12の他方の開放端(開口)を直管状通路内の一次側に位置させて直管状通路内を連通させ、第3モードにおいては、小径の孔路12が直管状通路内の一次側と二次側とを連通させていない状態において弁軸3の大径の孔路13により直管状通路内を連通させるように構成されている。
【0026】
そして、
図1に示すように、小径の孔路12の一方の開放端を管状通路内の一次側に位置させて前記直管状通路内を連通させ、小径の孔路12を一次側の蒸気やドレンを一次側と二次側との差圧を利用して分離していた第1モードにおいてその小径の孔路12の一次側に詰まった異物を取り除くメンテナンスを行う場合、ハンドル14を把持し、
図3に示すように、弁軸3を介して球弁体10を右回りに180°回動させて、いままで二次側に位置していた小径の孔路12の開放端を直管状通路内の一次側に位置させて直管状通路内を連通させる第2モードとする。
【0027】
第2モードとなり、小径の孔路12に一次側から流体が流れ込むことで、小径の孔路12の一次側近傍に付着して詰まりを生じさせる異物を二次側へ排出して取り除くことができる。
【0028】
また、第2モードで駆動中に、その小径の孔路12の一次側に詰まった異物を取り除くメンテナンスを行う場合には再びハンドル14を回動操作し、第1モードとすればよい。
【0029】
なお、
図2に示すように、ハンドル14の回動操作の途中であって、第1モードと第2モードとの間に設けられた第3モードの回動位置においては、小径の孔路12ではなく、大径の孔路13により直管状通路内を連通させる。よって、本実施形態の場合、一次側において直管状通路内に滞留するドレンや異物を強制的に二次側へ流出させる。
【0030】
このように、ハンドル14を回動操作し、球弁体10を弁軸3の周りに回動させ、第1モード乃至第3モードを切り替えることで、球弁体10の開口の詰りを短時間で解消することができ、スチームトラップとしての本来の性能を維持する。
【0031】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できる。例えば、球弁体10に貫通させて形成する小径の孔路12、大径の孔路13は、本実施形態の位置に限らない。
【符号の説明】
【0032】
1 配管ケース
2 弁室
3 弁軸
4 一次側環状パッキン
5 二次側環状パッキン
6 軸穴
10 球弁体
11 弁軸連結部
12 小径の孔路
13 大径の孔路
14 ハンドル
【要約】
【課題】 簡便な操作でその詰りを解消することができ、短時間で蒸気使用機器や蒸気輸送管などの蒸気の配管系を本来の良好な効率の駆動に戻すことができるスチームトラップを提供すること。
【解決手段】
弁室2内に弁軸3を中心として回動自在に配設された球弁体10に、弁軸3と直交させて形成された
直管の小径の孔路12と、前記弁軸3と直交させ、かつ、小径の孔路12と位相を異ならせて形成された
直管の大径の孔路13とを形成し、球弁体10の回動位置に応じて、小径の孔路12の一方の開放端を一次側に位置させて直管状通路内を連通させる第1モード、他方の開放端を一次側に位置させて直管状通路内を連通させる第2モード、第1回動位置と第2モード回動位置との中間位置であっ
て、大径の孔路13により直管状通路内を連通させる第3モードを切り替え可能に構成する。
【選択図】
図1