特許第6779528号(P6779528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779528
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】ドライ真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 27/00 20060101AFI20201026BHJP
   F04C 25/02 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   F04C27/00 331
   F04C25/02 K
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-162868(P2017-162868)
(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公開番号】特開2019-39396(P2019-39396A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】591255689
【氏名又は名称】樫山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】堤 修三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀明
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 一
(72)【発明者】
【氏名】小林 良平
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/152713(WO,A1)
【文献】 特開2002−122087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 25/02
F04C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータがそれぞれ取り付けられている平行に延びる一対のロータ軸と、
前記ロータおよび前記ロータ軸が収容されたポンプ室と、
前記ポンプ室に仕切り壁を介して隣接配置され、前記ロータ軸の間で回転を伝達するギヤ列が収容されたギヤ室と、
前記仕切り壁に形成した一対の軸孔を通って前記ポンプ室から前記ギヤ室内に延びる前記ロータ軸のそれぞれの軸端部と、
前記軸孔と前記軸端部の間をシールする軸シールと、
前記仕切り壁に設けられ、前記軸孔の内周面において、前記軸シールに対して前記ギヤ室の側の部位に開口する第1開口端および前記軸シールに対して前記ポンプ室の側の部位に開口する第2開口端と、
前記仕切り壁に形成されており、前記第1開口端を備えた第1ダンパー室と、
前記仕切り壁に形成されており、前記第2開口端を備えた第2ダンパー室と、
前記仕切り壁に形成されており、前記第1ダンパー室と前記第2ダンパー室との間を連通し、前記ギヤ室には連通していない連通路と、
前記連通路に設けたオリフィスと、
前記軸孔内における前記第1開口端よりも前記ギヤ室の側の位置において、前記軸端部を支持する軸受と
を有しているドライ真空ポンプ。
【請求項2】
請求項1において、
前記連通路における前記第1ダンパー室と前記オリフィスの間の通路部分に配置したオイルフィルタを有しているドライ真空ポンプ。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1ダンパー室および前記第2ダンパー室は、それぞれ、前記軸端部を取り囲む状態に形成されており、
前記ロータ軸を水平に配置した状態において、
前記第1ダンパー室から前記オイルフィルタに至る前記連通路の部分は、前記第1ダンパー室における上端部から上方に延びているドライ真空ポンプ。
【請求項4】
ロータがそれぞれ取り付けられている平行に延びる一対のロータ軸と、
前記ロータおよび前記ロータ軸が収容されたポンプ室と、
前記ポンプ室に仕切り壁を介して隣接配置され、前記ロータ軸の間で回転を伝達するギヤ列が収容されたギヤ室と、
前記仕切り壁に形成した一対の軸孔を通って前記ポンプ室から前記ギヤ室内に延びる前記ロータ軸のそれぞれの軸端部と、
前記軸孔と前記軸端部の間をシールする軸シールと、
前記仕切り壁に設けられ、前記軸孔の内周面における前記ギヤ室の側の部位に開口する第1開口端および前記軸シールの側の部位に開口する第2開口端を備えた通気路と、
前記通気路における前記第1開口端の側に設けた圧力緩衝用の第1ダンパー室および前記第2開口端の側に設けた圧力緩衝用の第2ダンパー室と、
前記通気路における前記第1、第2ダンパー室の間の通路部分に設けたオリフィスと、
前記軸孔内における前記通気路の前記第1開口端よりも前記ギヤ室の側の位置において、前記軸端部を支持する軸受と
を有しており、
前記軸シールは、第1軸シールおよび第2軸シールを備え、
前記通気路の前記第1開口端は、前記軸受と前記第1軸シールとの間に位置し、
前記通気路の前記第2開口端は、前記第1軸シールと前記第2軸シールとの間に位置しているドライ真空ポンプ。
【請求項5】
ロータがそれぞれ取り付けられている平行に延びる一対のロータ軸と、
前記ロータおよび前記ロータ軸が収容されたポンプ室と、
前記ポンプ室に仕切り壁を介して隣接配置され、前記ロータ軸の間で回転を伝達するギヤ列が収容されたギヤ室と、
前記仕切り壁に形成した一対の軸孔を通って前記ポンプ室から前記ギヤ室内に延びる前記ロータ軸のそれぞれの軸端部と、
前記軸孔と前記軸端部の間をシールする軸シールと、
前記仕切り壁に設けられ、前記軸孔の内周面における前記ギヤ室の側の部位に開口する第1開口端および前記軸シールの側の部位に開口する第2開口端を備えた通気路と、
前記通気路における前記第1開口端の側に設けた圧力緩衝用の第1ダンパー室および前記第2開口端の側に設けた圧力緩衝用の第2ダンパー室と、
前記通気路における前記第1、第2ダンパー室の間の通路部分に設けたオリフィスと、
前記軸孔内における前記通気路の前記第1開口端よりも前記ギヤ室の側の位置において、前記軸端部を支持する軸受と
を有しており、
前記仕切り壁は、前記ギヤ室の側に位置する第1壁板と前記ポンプ室の側に位置する第2壁板とを備え、
前記第1壁板の内部には、前記通気路における前記第1開口端から前記第2ダンパー室に至る部分が形成され、
前記第1壁板と前記第2壁板の合わせ面の間には、前記通気路における前記第2ダンパー室から前記第2開口端までの部分が形成されているドライ真空ポンプ。
【請求項6】
請求項5において、
前記軸シールは、第1軸シールおよび第2軸シールを備え、
前記第1軸シールおよび前記軸受は、前記第1壁板に取り付けられ、
前記第2軸シールは、前記第2壁板に取り付けられ、
前記通気路の前記第1開口端は、前記軸受と前記第1軸シールとの間に位置し、
前記通気路の前記第2開口端は、前記第1軸シールと前記第2軸シールとの間に位置しているドライ真空ポンプ。
【請求項7】
請求項6において、
前記通気路における前記第1ダンパー室と前記オリフィスの間の通路部分に配置したオイルフィルタを有し、
前記第1ダンパー室および前記第2ダンパー室は、それぞれ、前記軸端部を取り囲む状態に形成されており、
前記ロータ軸を水平に配置した状態において、
前記第1ダンパー室から前記オイルフィルタに至る前記通気路の部分は、前記第1ダンパー室における上端部から上方に延びており、前記第1ダンパー室における下端部は、前記仕切り壁に形成した横方向に延びる下部通路を介して、前記ギヤ室の内部における下側に形成されるオイル溜め部分に連通しているドライ真空ポンプ。
【請求項8】
請求項7において、
前記ロータ軸の一方を回転駆動するモータを有し、
前記ポンプ室は、前記ロータ軸の軸線方向に配列された複数のポンプ室を備えた多段ポンプ室であり、
前記ロータは、前記ポンプ室のそれぞれの内部に位置するように、前記ロータ軸のそれぞれに取り付けた複数対のルーツロータであるドライ真空ポンプ。
【請求項9】
請求項1において、
前記ポンプ室は、ポンプ軸線方向に配列された複数のポンプ室を備えた多段ポンプ室であり、
前記一対のロータ軸は、前記多段ポンプ室を前記ポンプ軸線方向に貫通して延びる駆動軸および従動軸であり、
前記ロータは、前記ポンプ室のそれぞれの内部に位置するように、前記駆動軸および前記従動軸のそれぞれに取り付けた複数対のポンプロータであり、
前記仕切り壁は、前記多段ポンプ室におけるギヤ室側端壁であり、
前記一対の軸孔は、前記多段ポンプ室における前記ギヤ室側端壁に貫通する状態に形成した駆動軸ギヤ室側軸孔および従動軸ギヤ室側軸孔であり、
前記軸端部は、前記駆動軸ギヤ室側軸孔を貫通して延びる前記駆動軸の駆動軸ギヤ室側軸端部、および前記従動軸ギヤ室側軸孔を貫通して延びる前記従動軸の従動軸ギヤ室側軸端部であり、
前記軸シールは、前記駆動軸ギヤ室側軸孔と前記駆動軸ギヤ室側軸端部との間をシールしている駆動軸ギヤ室側軸シール、および前記従動軸ギヤ室側軸孔と前記従動軸ギヤ室側軸端部との間をシールしている従動軸ギヤ室側軸シールであり、
更に、前記多段ポンプ室を挟み、前記ポンプ軸線方向における前記ギヤ室とは反対側に配置され、前記駆動軸を回転駆動するモータを有しており、
前記駆動軸は、前記ポンプロータが取り付けられているポンプ軸部、および前記モータのモータロータが取り付けられているモータ軸部を備えているドライ真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多段ルーツポンプなどのドライ真空ポンプに関する。更に詳しくは、一対のロータ軸を逆方向に同期回転させるためのギヤ列が収容されたギヤ室からポンプ室への潤滑用のオイルの移動を防止あるいは抑制する潤滑剤流出防止構造を備えたドライ真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライ真空ポンプとして、本願出願人は、特許文献1において、ギヤ室からポンプ室へのオイルの移動を防止するための潤滑剤流出防止構造を備えた多段ルーツポンプを提案している。この多段ルーツポンプでは、ポンプ室の一方の側に、ポンプ駆動用のモータが配置され、他方の側に、駆動側のロータ軸の回転を従動側のロータ軸に伝達するためのギヤ列が収容されたギヤ室が配置されている。ポンプ室の端壁部分に形成した軸孔を貫通してギヤ室内に延びているロータ軸の軸端部には、リップシールからなる軸シールが取り付けられている。
【0003】
ポンプ運転時に、ポンプ室には、大気圧状態から真空に、急激な圧力変化が生じる。急減な圧力変化が生じると、潤滑用のオイルが、大気圧状態のギヤ室の側からポンプ室の側に移動し、軸シールを介してポンプ室に流入するおそれがある。急激な圧力変化に起因するオイルの移動を防止するために、特許文献1においては、ポンプ室とギヤ室の間を仕切っている端壁部分に、圧力緩衝用の中間室を備えた通気経路からなる潤滑剤流出防止構造が組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/152713号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ポンプ室とギヤ室の間に生じる大きな圧力変化に起因するオイルの移動を確実に防止あるいは抑制可能な改良された潤滑剤流出防止構造を備えたドライ真空ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のドライ真空ポンプは、
ロータがそれぞれ取り付けられている平行に延びる一対のロータ軸と、
前記ロータおよび前記ロータ軸が収容されたポンプ室と、
前記ポンプ室に仕切り壁を介して隣接配置され、前記ロータ軸の間で回転を伝達するギヤ列が収容されたギヤ室と、
前記仕切り壁に形成した一対の軸孔を通って前記ポンプ室から前記ギヤ室内に延びる前記ロータ軸のそれぞれの軸端部と、
前記軸孔と前記軸端部の間をシールする軸シールと、
前記仕切り壁に設けられ、前記軸孔の内周面において、前記軸シールに対して前記ギヤ室の側の部位に開口する第1開口端および前記軸シールに対して前記ポンプ室の側の部位に開口する第2開口端と、
前記仕切り壁に形成されており、前記第1開口端を備えた第1ダンパー室と、
前記仕切り壁に形成されており、前記第2開口端を備えた第2ダンパー室と、
前記仕切り壁に形成されており、前記第1ダンパー室と前記第2ダンパー室との間を連通し、前記ギヤ室には連通していない連通路と、
前記連通路に設けたオリフィスと(流量絞り孔)と、
前記軸孔内における前記第1開口端よりも前記ギヤ室の側の位置において、前記軸端部を支持する軸受とを有していることを特徴としている。
【0007】
仕切り壁の軸孔における軸シールとギヤ室との間に、第1ダンパー室、オリフィスおよび第2ダンパー室を介して連通する通気路からなる潤滑剤流出防止構造が組み込まれている。ポンプ運転時に、ポンプ室側に大気圧状態から真空に急激な圧力変化が生じることがある。ポンプ室に生じる急激な圧力変化は、オリフィスを介して連通している第1、第2ダンパー室によって大幅に緩和されるので、ギヤ室の側では、緩やかな圧力変化に変わる。この結果、急激な圧力変化に起因して、ギヤ室からポンプ室の側に向かう一時的に生じる強い吸引力によって、ギヤ室内のオイルがポンプ室の側に移動し、軸シールからポンプ室の側に流入するという弊害を、確実に防止あるいは抑制できる。
【0008】
ここで、通気路における第1ダンパー室とオリフィスの間の通路部分には、オイルフィルタが配置されていることが望ましい。
【0009】
ポンプ室の側において急激な圧力変化が生じた場合に、大気圧状態のギヤ室から真空側に変化した第1ダンパー室に移動するオイルが、圧力低下によりミスト状態になることがある。オリフィスの手前にオイルフィルタが配置されているので、ミスト状のオイルが、このオイルフィルタに付着して捕捉され、ポンプ室の側に移動することが阻止される。
【0010】
第1ダンパー室および第2ダンパー室を、それぞれ、ロータ軸の軸端部を取り囲む状態に形成できる。この場合、ロータ軸が水平となるドライ真空ポンプの設置状態において、第1ダンパー室からオイルフィルタに至る通気路の部分を、第1ダンパー室における上端部から上方に延ばす。このようにすれば、オイルフィルタに捕捉したオイルが、自重により落下するので、オイルフィルタの詰まりを防止できる。
【0011】
なお、第1ダンパー室における下端部を、仕切り壁に形成した下部通路を介して、ギヤ室の内部における下側に位置するオイル溜め部分に連通させておいてもよい。
【0012】
軸シールとして、第1軸シールおよび第2軸シールからなる2段の軸シールを用いることができる。この場合には、通気路の第1開口端を、軸受と第1軸シールとの間に位置させ、通気路の第2開口端を、第1軸シールと第2軸シールとの間に位置させる。
【0013】
このようにすれば、ギヤ室側の第1軸シールの間に生じる圧力差、およびポンプ室側の第2軸シールの間に生じる圧力差を共に低減できる。よって、軸シールの間に大きな圧力差が生じて、オイル、気体が、ギヤ室からポンプ室の側に移動するという弊害を、確実に防止あるいは抑制できる。
【0014】
ドライ真空ポンプは、例えば、多段ルーツポンプである。多段ルーツポンプは、ロータ軸の一方を回転駆動するモータを有し、ポンプ室として、ロータ軸の軸線方向に配列された複数のポンプ室を備えた多段ポンプ室を備えており、ロータとして、ポンプ室のそれぞれの内部に位置するように、ロータ軸のそれぞれに取り付けた複数対のルーツロータを備えている。
【0015】
本発明において、上記の潤滑剤流出防止構造が組み込まれた仕切り壁には、アルミニウム合金などの鋳造品が用いられる。このような場合において、仕切り壁を、ギヤ室側に位置する第1壁板とポンプ室の側に位置する第2壁板からなる2分割構造とすることが望ましい。例えば、第1壁板の内部には、通気路における第1開口端から、第1ダンパー室を介して、第2ダンパー室に至るまでの部分を形成し、第1壁板と第2壁板の合わせ面の間に、通気路における第2ダンパー室から第2開口端までの部分を形成する。第1、第2ダンパー室を備えた複雑な通気路が内部に構成された仕切り壁を、金属の鋳造品から容易に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の実施の形態に係る多段ルーツポンプを、そのポンプ中心軸線を含む水平面で切断した場合の概略断面図、および、ポンプ中心軸線を含む垂直面で切断した場合の概略断面図である。
図2】(a)および(b)は、それぞれ、図1(a)、(b)の多段ルーツポンプにおける多段ポンプ室とギヤ室の間に設けた潤滑剤流出防止構造が組み込まれている部分を示す概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る多段ルーツポンプを説明する。図1(a)は、本実施の形態に係る多段ルーツポンプを、そのポンプ中心軸線を含む水平面で切断した場合の概略断面図であり、図1(b)は、ポンプ中心軸線を含む垂直面で切断した場合の概略断面図である。
【0018】
(全体構成)
本実施の形態に係る多段ルーツポンプ1は、多段ポンプ室2、モータ3およびギヤ室4を備えている。多段ポンプ室2を挟み、ポンプ中心軸線1aの方向の一方の側にモータ3が配置され、他方の側にギヤ室4が配置されている。多段ポンプ室2は、筒状のポンプハウジング5と、その両側に取り付けたモータ側軸受ハウジング6およびギヤ室側軸受ハウジング7とによって区画形成されている。ギヤ室側軸受ハウジング7は、多段ポンプ室2とギヤ室4との間を仕切る仕切り壁である。ギヤ室4は、ギヤ室側軸受ハウジング7に取り付けたカップ形状のギヤ室ハウジング8の内部に形成されている。多段ルーツポンプ1は、想像線で示すように、ケーシング9によって全体が覆い隠されている。また、ポンプ中心軸線1aが水平となる横置き状態で使用される。
【0019】
多段ポンプ室2は、ポンプ中心軸線1aの方向に、複数のポンプ室に区画されている。本例では4段のポンプ室を備えており、ギヤ室4の側(第2の側)からモータ3の側(第1の側)に向けて、真空側のポンプ室11、中段のポンプ室12、13および大気側のポンプ室14が、この順序に配列されている。真空側のポンプ室11が最大容積のポンプ室であり、大気側のポンプ室14が最小容積のポンプ室であり、上流側の中段のポンプ室12は大気側のポンプ室11よりも小さな容積のポンプ室であり、下流側の中段のポンプ室13は、それよりも更に小さな容積のポンプ室である。各ポンプ室11〜14の配列順は、本例に限定されるものではない。
【0020】
真空側のポンプ室11は中段のポンプ室12に連通し、ポンプ室12はポンプ室13に連通し、ポンプ室13は大気側のポンプ室14に連通している。また、真空側のポンプ室11はポンプ吸気口15に連通し、大気側のポンプ室14はポンプ排気口16に連通している。ポンプ吸気口15は、ポンプハウジング5におけるギヤ室側軸受ハウジング7の側の端部の上側部分に形成されている。ポンプ排気口16は、ポンプハウジング5におけるモータ側軸受ハウジング6の側の端部の上側部分に形成されている。
【0021】
多段ポンプ室2の内部を、駆動軸17および従動軸18(一対のロータ軸)が貫通して延びている。駆動軸17および従動軸18は、水平方向に一定の間隔を開けて、平行に延びている。駆動軸17の中心軸線がポンプ中心軸線1aである。駆動軸17は、多段ポンプ室2を貫通して延びるポンプ軸部17Aおよびモータ3を貫通して延びるモータ軸部17Bが一体形成された1本の軸である。駆動軸17のポンプ軸部17Aの部分、および従動軸18には、各ポンプ室11〜14内に位置するように複数対のまゆ型ロータ21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24bが取り付けられている。
【0022】
モータ3は例えばインダクションモータであり、筒状のモータハウジング31と、この内周面に組み付けたモータステータ32と、モータステータ32の内側に同軸に配置したモータロータ33とを備えている。モータロータ33は、その中心を貫通して延びている駆動軸17のモータ軸部17Bに同軸に固定されている。このように、本例では、モータ3として、ビルトイン・タイプのインダクションモータを用いている。
【0023】
駆動軸17におけるモータ軸部17Bの先端側の軸端部17bは、モータステータ32から突出している。この軸端部17bの先端部には、モータ冷却用のシロッコファン34が取り付けられている。
【0024】
駆動軸17は、駆動軸モータ側軸受25および駆動軸ギヤ室側軸受26によって、回転自在の状態で支持されている。駆動軸モータ側軸受25は、モータ側軸受ハウジング6に形成した軸孔6aに装着されており、駆動軸17におけるポンプ軸部17Aとモータ軸部17Bとの間の軸部分17aを支持している。駆動軸ギヤ室側軸受26は、ギヤ室側軸受ハウジング7に形成した軸孔7aに装着されており、駆動軸17におけるポンプ軸部17Aの駆動軸ギヤ室側軸端部17cを支持している。
【0025】
同様に、従動軸18は、従動軸モータ側軸受27および従動軸ギヤ室側軸受28によって回転自在の状態で支持されている。従動軸モータ側軸受27は、モータ側軸受ハウジング6に形成した軸孔6bに装着されており、従動軸18の従動軸モータ側軸端部18aを支持している。従動軸ギヤ室側軸受28は、ギヤ室側軸受ハウジング7に形成した軸孔7bに装着されており、従動軸18の従動軸ギヤ室側軸端部18bを支持している。
【0026】
本例では、固定側軸受である駆動軸モータ側軸受25および従動軸モータ側軸受27として、グリース封入式の軸受を用いている。反対側の可動側軸受である駆動軸ギヤ室側軸受26および従動軸ギヤ室側軸受28は、オイル潤滑式の軸受であり、ギヤ室4に貯留された潤滑用のオイルによって潤滑される。
【0027】
駆動軸17の駆動軸ギヤ室側軸端部17cおよび従動軸18の従動軸ギヤ室側軸端部18bの先端部は、それぞれ、ギヤ室4内に突出している。駆動軸ギヤ室側軸端部17cには駆動側タイミングギヤ42が取り付けられ、従動軸ギヤ室側軸端部18bには従動側タイミングギヤ43が取り付けられている。駆動側タイミングギヤ42および従動側タイミングギヤ43は相互にかみ合っており、駆動軸17の回転に同期して、従動軸18が反対方向に同期回転するようになっている。
【0028】
(潤滑剤流出防止構造)
図2(a)および(b)は、それぞれ、図1(a)および(b)における潤滑剤流出防止構造が組み込まれているギヤ室側の部分を示す概略部分断面図である。これらの図を参照して説明すると、ギヤ室側軸受ハウジング7に形成した一対の軸孔7a、7bを貫通して、駆動軸ギヤ室側軸端部17cおよび従動軸ギヤ室側軸端部18bがギヤ室4内に延びている。駆動軸ギヤ室側軸端部17cは駆動軸ギヤ室側軸受26によって支持され、従動軸ギヤ室側軸端部18bは従動軸ギヤ室側軸受28によって支持されている。
【0029】
駆動軸17の側において、軸孔7aと駆動軸ギヤ室側軸端部17cとの間は、一定の間隔で配置したリップシール61a(第1軸シール)およびリップシール61b(第2軸シール)からなる2段の軸シール61によって、シールされている。同様に、従動軸18の側において、軸孔7bと従動軸ギヤ室側軸端部18bとの間は、一定の間隔で配置したリップシール62a(第1軸シール)およびリップシール62b(第2軸シール)からなる2段の軸シール62によって、シールされている。
【0030】
多段ルーツポンプ1の運転時に、多段ポンプ室2の側に、大気から真空側に、急激な圧力変化が生じることがある。急激な圧力変化によって、ギヤ室4の側から多段ポンプ室2の側に向かう大きな吸引力が生じ、オイルがギヤ室4から多段ポンプ室2の側に移動するおそれがある。本例では、ギヤ室側軸受ハウジング7に潤滑剤流出防止構造を設けて、オイルがギヤ室4から多段ポンプ室2の側に移動することを防止している。
【0031】
詳細に説明すると、本例のギヤ室側軸受ハウジング7は、第1軸受ハウジング71(第1壁板)および第2軸受ハウジング72(第2壁板)からなる2分割構造のハウジングである。第2軸受ハウジング72は板状のハウジングであり、多段ポンプ室2のポンプハウジング5に取り付けられ、多段ポンプ室2の端壁部分を形成している。第1軸受ハウジング71は第2軸受ハウジング72にギヤ室4の側から取り付けられている。第1軸受ハウジング71における第2軸受ハウジングとは反対側の端面に、ギヤ室ハウジング8が取り付けられている。
【0032】
第1、第2軸受ハウジング71、72を貫通して、一対の軸孔7a、7bが形成されている。第1軸受ハウジング71の各軸孔内周面部分における第2軸受ハウジング72の側の端に、軸シール61、62の一方のリップシール61a、62aが取り付けられている。第2軸受ハウジング72の各軸孔内周面部分における第1軸受ハウジング71の側の端に、軸シール61、62の他方のリップシール61b、62bが取り付けられている。また、第1軸受ハウジング71の各軸孔内周面部分におけるギヤ室4の側の端に、駆動軸ギヤ室側軸端部17cを支持する駆動軸ギヤ室側軸受26、従動軸ギヤ室側軸端部18bを支持する従動軸ギヤ室側軸受28が取り付けられている。なお、駆動軸ギヤ室側軸端部17c、従動軸ギヤ室側軸端部18bには、それぞれ、円筒状カラーが装着されており、これらの外周面と、軸孔7a、7bとの間が、軸シール61、62によってシールされている。
【0033】
図2(b)に示すように、第1軸受ハウジング71には、各軸孔7a、7bをそれぞれ取り囲む状態に、圧力緩衝用の環状の第1ダンパー室73が形成されている(図においては、一方の第1ダンパー室73を示す。)。第1ダンパー室73は、内周側が軸孔7a、7bの内周面に開口する開口端73a(第1開口端)となっている。
【0034】
多段ルーツポンプ1を横置きに設置した状態において、第1ダンパー室73における下端に位置する部分は、第1軸受ハウジング71に形成した横方向に延びる下部連通路74を介して、ギヤ室4における下側に形成されるオイル溜め部分4aに連通している。下部連通路74を省略して、第1ダンパー室73をギヤ室4とは別個の室とすることもできる。
【0035】
多段ルーツポンプ1を横置きに設置した状態において、第1ダンパー室73における上端に位置する部分は、第1軸受ハウジング71に形成した上方に延びる上部連通路75の下端に連通している。上部連通路75の上端部には所定サイズの網目のオイルフィルタ76が取り付けられている。上部連通路75におけるオイルフィルタ76の上側部分は、オリフィス77が配置された下方に延びる連通路78を介して、第1軸受ハウジング71の側の圧力緩衝用の第2ダンパー室79に連通している。第1軸受ハウジング71におけるオイルフィルタ76が取り付けられている部分の上方には、カバー71aが取り付けられている。カバー71aを外して、オイルフィルタ76の部分に外部からアクセス可能である。
【0036】
次に、第2ダンパー室79は、第1、第2軸受ハウジング71、72における合わせ面の部分において、軸孔7a、7bを取り囲む状態に形成されている。第2ダンパー室79には、軸孔7a、7bに直交する方向に延びる連通路80の外周端が連通している。連通路80は第2ダンパー室79よりも狭い幅の通路であり、その内周端は、リップシール61a、61bの間、および、リップシール62a、62bの間を通って、軸孔7a、7bの内周面に開口した開口端80a(第2開口端)となっている。
【0037】
本例では、ギヤ室側軸受ハウジング7に、潤滑剤流出防止構造を備えた通気路が形成されている。通気路は、軸孔7a、7bにおけるギヤ室側の部分に連通する開口端73aから、第1ダンパー室73、オイルフィルタ76が配置された上部連通路75、オリフィス77が配置された連通路78、第2ダンパー室79および第2ダンパー室79を介して、軸孔7a、7bの軸シール61、62の側の部分に連通する開口端80aに至る。
【0038】
オリフィス77を介して連通する第1、第2ダンパー室73、79が配置されている。これらによる2段階の圧力緩衝効果によって、多段ポンプ室2に生じる急激な圧力変化に起因するギヤ室4の側の圧力変化が大幅に緩和される。急激な圧力変化に起因して、オイルが、ギヤ室4から多段ポンプ室2の側に移動し、軸シール61、62を介して、多段ポンプ室2の側に流入する弊害を、確実に防止あるいは抑制できる。
【0039】
また、ギヤ室4から第1ダンパー室73に移動し、圧力低下によってミスト状になったオイルは、上部連通路75に配置されているオイルフィルタ76に付着して捕捉される。オイルフィルタ76に付着したオイルは、ここから下方に落下する。ミスト状のオイルが、第2ダンパー室79の側に移動することを確実に防止できる。
【0040】
(その他の実施の形態)
上記の多段ルーツポンプ1は、モータ3としてビルトイン・タイプのインダクションモータを用いている。モータ3として、ビルトイン・タイプのインダクションモータ以外の各種のモータを使用でき、例えば、キャンドモータを使用できる。また、例えば、モータ3として汎用モータを使用し、そのモータ軸がカップリングを介して、ロータ軸に連結されている構成のルーツポンプにも、本発明を適用可能である。さらに、本発明による潤滑剤流出防止構造は、ルーツポンプ以外のドライ真空ポンプに対しても、ギヤ室からポンプ室への潤滑用のオイルの移動を防止あるいは抑制するために用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 多段ルーツポンプ
1a ポンプ中心軸線
2 多段ポンプ室
3 モータ
4 ギヤ室
4a オイル溜め部分
5 ポンプハウジング
6 モータ側軸受ハウジング
6a、6b 軸孔
7 ギヤ室側軸受ハウジング
7a、7b 軸孔
8 ギヤ室ハウジング
11、12、13、14 ポンプ室
15 ポンプ吸気口
16 ポンプ排気口
17 駆動軸
17A ポンプ軸部
17B モータ軸部
17a 軸部分
17b 軸端部
17c 駆動軸ギヤ室側軸端部
18 従動軸
18a 従動軸モータ側軸端部
18b 従動軸ギヤ室側軸端部
21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b まゆ型ロータ
25 駆動軸モータ側軸受
26 駆動軸ギヤ室側軸受
27 従動軸モータ側軸受
28 従動軸ギヤ室側軸受
31 モータハウジング
32 モータステータ
33 モータロータ
34 シロッコファン
42 駆動側タイミングギヤ
43 従動側タイミングギヤ
61 軸シール
61a、61b リップシール
62 軸シール
62a、62b リップシール
71 第1軸受ハウジング
71a カバー
72 第2軸受ハウジング
73 第1ダンパー室
73a 開口端
74 下部連通路
75 上部連通路
76 オイルフィルタ
77 オリフィス
78 連通路
79 第2ダンパー室
80 連通路
80a 開口端
図1
図2