(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記合成樹脂被覆取込部の外周部に、中心軸線方向において、前記インサート格納部側から、前記インサート格納部とは反対側の端面に向かうにつれて径が小さくなるテーパーが形成してあることを特徴とする請求項1に記載の圧着グリップ。
【背景技術】
【0002】
ロックボルトは、緊張力を導入せずに、ナットを締め付けて定着するため、施工が簡単でコストも安いという利点を有している。ロックボルトは、比較的短い長さで地山に多数挿入され、小中規模程度の崩壊が予測される場合の崩壊対策として、または切土法面を標準勾配より急勾配で掘削する場合の法面の安定対策として用いられる。
【0003】
グラウンドアンカーはPC緊張材を用いて、自由長部と定着長部を構成し、プレストレスを導入するものである。緊張材としては、PC鋼より線の外周面に合成樹脂被覆が施された、いわゆるシングルアンボンドPC鋼より線が一般に使われている。PC鋼より線の端部を部材に定着する方式として、大別すると、クサビ方式と圧着グリップ方式との2種類がある。グラウンドアンカーは、ロックボルトに比べ、PC鋼より線が任意の長さに容易に対応可能であり、また、緊張定着してプレストレスを導入できるというメリットがある。一方で、グラウンドアンカーは、緊張定着用のジャッキを駆動するための設備を必要とすることから、ナットを締め付けて定着するロックボルトに比較して手間がかかる。
【0004】
従来の圧縮型アンカーは下記特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の圧縮型アンカーは、地中に削孔されたアンカー孔内に設けられたアンカー体に複数の定着体が深さ位置を違えて配置され、その各定着体にはそれぞれ引張材がUターンさせて巻き掛けられ、その端部が前記アンカー孔の開口外で緊張定着されてなるアースアンカーであって、前記各定着体間に補強体を配設してなる、いわゆる、Uターン圧縮分散型アンカーである。各引張材は合成樹脂製のシース内に鋼線がグリース等を介して摺動自在に挿通された、いわゆるアンボンドケーブルである。なお、特許文献1に示す定着体は、耐荷体とも呼ばれる。
【0005】
また、従来の引張型アンカーが特許文献2に開示されている。引用文献2の
図1は引張分散型アンカーを示し、
図2は従来の引張型アンカーを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
地盤アンカーの場合、アンカー先端部を地盤所定深さに固定して、地盤の外に配置されるアンカー頭部で緊張材を緊張して定着具で定着し、プレストレスを地盤に導入することになる。アンカー頭部が緊張端であり、アンカー先端部が固定端であることは、従来のPC構造物と同様である。
【0008】
従来のPC構造物は、コンクリート製であるため、完成したPC構造物は、外力の要因を除いて殆ど変形しない。一方、地盤アンカーの場合は、アンカー頭部背面の軟弱地盤により、アンカーが設置された後にも地盤の緩みや流失等様々な不特定要因で地盤に微小な変形が起きるため、導入されたプレストレスが減る、又は失われる恐れがある。そのため、現行のグラウンドアンカー設計・施工基準には、地盤アンカーにおいて、自由長部と定着長部をそれぞれ設け、自由長部を4m以上とすることが定められている。これにより、地盤アンカーの緊張材が必要な伸び量を確保できるものとしている。
【0009】
例えば、A緊張材とB緊張材に同じ緊張力を導入し、A緊張材の伸び量が1mm、B緊張材の伸び量が10mmの場合、アンカー頭部背面の軟弱地盤が1mm縮み変形をしたら、A緊張材の緊張力は全てなくなるが、B緊張材の緊張力は1/10しか減らない。このため、地盤アンカーは、緊張材の伸び量が大きいほど健在性と安定性が得られやすい。
【0010】
特許文献2の明細書には自明であるため記述されていないが、従来の引張型アンカーにおいては、特許文献2の
図1、
図2に示すように、アンカー頭部から所定の長さまで自由長部を設け、その先からアンカー先端までを定着長部としている。ここで、自由長部は、特許文献2の図において緊張鋼材の径が太く表現された部分であり、PE被覆を有するアンボンド部を意味する。また、定着長部は、図において緊張鋼材の径を細く表現した部分であり、PE被覆を切除したPC鋼材の部分を意味する。このような引張型アンカーにおいては、PE被覆を有するアンボンド部を所定の基準以上の長さとすることにより、緊張鋼材の緊張力に伴う所定の伸び量が得られるようにしている。これにより、従来の引張型アンカーは、アンカー全長が長くなり、不経済であるという問題がある。
【0011】
従来の圧縮型アンカーにおいては、特許文献1の段落0008及び
図1、2、8、9、10に示すように、合成樹脂被覆されているアンボンドケーブルを定着体(耐荷体)にUターンさせて巻き掛け、アンカー頭部で緊張定着している。この場合、緊張材がアンカー全長にわたってアンボンド状態になっており、地盤内のアンカー定着力が定着体(耐荷体)とグラウトとの定着力(支圧+付着)によることになる。現行の設計基準に従って自由長部を4m以上設ければ、基準以上の伸び量が得られるため、アンカーの健在性と安定性が確保されている。しかし、従来の圧縮型アンカーは、アンカー孔の径が大きくなり、不経済であるという問題がある。
【0012】
前述のロックボルトは、単にボルトのせん断抵抗(ダボ作用)で法面の滑りを止める仕組みであり、緊張力を導入することはできない。従って、ロックボルトは、アンボンドにしないため、自由長部を設けることができないという問題と、棒鋼を用いるため、長さの調整が容易でないという問題もあり、適用範囲は非常に狭い。
【0013】
そこで、本発明は、アンカー孔の径を小さくすることが可能であり、全長を容易に変更でき、短い長さでも所要の伸び量を確保しやすいショートアンカー及びそのショートアンカーに用いる圧着グリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明の第1の態様は、
合成樹脂被覆を有するアンボンドPC鋼より線用の圧着グリップであって、
前記圧着グリップは、円筒状の圧着スリーブと、円筒状をして、内外周面に刃が形成してあり、前記圧着スリーブに挿入されるインサートとからなり、
前記圧着スリーブは、中心軸線方向において、一方の側にインサート格納部、他方の側に合成樹脂被覆取込部を形成し、
前記合成樹脂被覆取込部が、中心軸線方向の全長にわたって、前記インサート格納部の径方向の厚さ寸法よりも小さい径方向の厚さ寸法を有することを特徴とする圧着グリップである。
【0015】
本願発明の第2の態様は、
前記合成樹脂被覆取込部の外周部に、中心軸線方向において、前記インサート格納部側から、前記インサート格納部とは反対側の端面に向かうにつれて径が小さくなるテーパーが形成してあることを特徴とする第1の態様の圧着グリップである。
【0016】
本願発明の第3の態様は、
前記合成樹脂被覆取込部の内径が前記インサート格納部の内径よりも大きいことを特徴とする第1の態様の圧着グリップである。
【0017】
本願発明の第4の態様は、
合成樹脂被覆を有するアンボンドPC鋼より線と、
前記アンボンドPC鋼より線の端部に圧着した第1の態様から第3の態様のいずれかの態様の圧着グリップと、
前記圧着グリップが挿入された有底円筒状の先端キャップと、
筒状をして、前記アンボンドPC鋼より線が貫通し、前記先端キャップに隣接して配置された耐荷体と、を有するショートアンカーであって、
前記耐荷体側の前記先端キャップの内周部に雌ネジ部が形成され、
前記先端キャップ側の前記耐荷体の外周部に雄ネジ部が形成され、
前記先端キャップと前記耐荷体は、前記雌ネジ部と前記雄ネジ部の螺合により一体化され、
前記圧着グリップと前記雄ネジ部が中心軸線方向の応力を伝達可能に接触し、
前記アンボンドPC鋼より線がアンカー頭部まで延びていることを特徴とするショートアンカーである。
【0018】
本願発明の第5の態様は、
前記耐荷体の外周面に螺旋状の突起が形成されていることを特徴とする第4の態様のショートアンカーである。
【発明の効果】
【0019】
本願発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)耐荷体にネジ接続した先端キャップ内に圧着グリップを内蔵することによって、従来のネジ棒を設けなくても地盤にアンカー(定着)することができると共に、圧着グリップが防錆防食され、耐久性をする圧縮型アンカーの固定端になる。
(2)従来のUターン圧縮型アンカーは複数(偶数)のアンボンドPC鋼より線で形成する必要があるのに対し、単数のアンボンドPC鋼より線で圧縮型アンカーを形成することが可能になる。
(3)ほぼ全長にわたって合成樹脂被覆が付いたままでアンカーが形成されることによって、全長が短い場合でも伸び量を確保しやすく、健在性と安定性を高めることができる。
(4)合成樹脂被覆を有するPC鋼より線の被覆がついたままで、PC鋼より線の端部に圧着スリーブを圧着しても、圧着加工による被覆の破損が生じず、圧着スリーブと被覆が密着して止水性能が得られる。また、圧着グリップの仕口に防錆処理を施す必要がなくなり、施工の手間及びコストを減らすことができる。
(5)PC鋼より線は巻き線で供給されるため、任意の長さに切断することが容易である。このため、工場において、施工現場に対応した所要長さにPC鋼より線を切断し、圧着グリップとPC鋼より線を圧着加工によって一体化した緊張材を任意長さで容易に製作することができる。
(6)アンカー頭部において、緊張材の頭部にネジ棒を付ける圧着グリップを用いて圧着加工することで、安価なPC鋼より線を用いて、従来のロックボルトと同様に、ナットの締め付けによる緊張定着方法で緊張定着することができるようになる。これにより、緊張定着具の製造コストが低廉となり、施工も簡単でコスト削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願の出願人は、特願2019−161865号(以下「特許出願1」とする)において、PC鋼より線に緊張力を導入して、ロックボルトと同様にナットで定着できるネジ棒付き圧着グリップを提案している。また、本願の出願人は、特願2020−27155号(以下「特許出願2」とする)において、合成樹脂被覆を有するPC鋼より線(シングルアンボンド)専用のネジ棒付き圧着グリップを提案している。
【0022】
特許出願1の
図4は、PC鋼より線の両端部にそれぞれネジ棒付き圧着グリップが圧着固定された緊張材を示している。これら一対のネジ棒付き圧着グリップの一方は他方よりもネジ棒部が長い。特許出願1に記載の緊張材は、特許出願1の
図4に示すように、アンカー頭部側にネジ棒部の長いネジ棒付き圧着グリップ側を配置して、そのネジ棒付き圧着グリップに、緊張定着するための定着具として、ナットとアンカープレートを取り付けることができる。また、アンカーの先端部側に配置されるネジ棒部の短いネジ棒付き圧着グリップに、ナットとアンカープレートを取り付けて耐荷体とすることができる。このように構成することにより、圧縮型アンカーに用いることが可能な緊張材となる(特許出願1の段落0012)。
【0023】
特許出願1に記載の緊張材は、PC鋼より線を用いて、従来のロックボルトと同様に緊張力を導入せずにナット定着することもできるものとしている。しかし、緊張力を導入する場合では、自由長部を設けることが必要となるため、特許文献1に記載の緊張材は、適用できないという問題がある。
【0024】
特許出願2に記載の発明は、特許出願1の上記問題を解消するものとして提案されている。特許出願2の
図5と
図6には、アンボンドPC鋼より線の先端のPE被覆を切除して使用する引張型アンカーの応用例を示している。しかし、この場合、PE被覆を切除するために手間がかかるという問題があるだけでなく、伸び量を確保するために所定のアンカー長さが必要となり、削孔の深さの確保、緊張材の設置及びグラウトの充填に手間やコストがかかる。
【0025】
アンカー先端に定着体(耐荷体)を設けて圧縮型アンカーに応用する例については、特許出願1の
図4に既に示されているものと同様であるために、特許出願2においては省略している。特許出願1の
図4に示されているネジ棒付き圧着グリップを耐荷体として、特許出願2を圧縮型アンカーに応用する場合、ナットとアンカープレートを取り付ける必要があり、圧着グリップにネジ棒を一体的に形成することが必要となるため、手間やコストがかかる。
【0026】
鋼製部品の防錆処理方法としては、一般に、表面に亜鉛メッキ塗装を行う方法が最も安価かつ簡単である。しかし、加工した圧着グリップに高温を与えてメッキ塗装すると熱膨張してPC鋼より線に圧着する性能に悪影響を及ぼす。したがって、特許出願2に記載のアンカーに、耐荷体として特許出願1の
図4に示すネジ棒付き圧着グリップを取り付けたとしても、亜鉛メッキ塗装を採用することはできず、特殊な防錆処理が必要となるため、コストが増大する。一方で、緊張材を挿入するアンカー孔最深部の泥水やスライム等を完全に清浄して排除することはできないため、緊張材の先端部が特に防錆処理を施すことが必要となる部分といえる。
【0027】
以上のことから、特許出願1に耐荷体として開示されているネジ棒付き圧着グリップを、特許出願2の緊張材の先端に取り付けて使用することは困難となる。本願実施形態に係る圧着グリップ及びショートアンカーは、これらの問題も解決するものである。
【0028】
(第1実施形態)
以下、本願の第1実施形態に係る圧着グリップ1について、図面を参照しながら説明する。
図1は本願の第1実施形態に係る圧着グリップ1と圧着グリップ1を用いたショートアンカー2の先端部を示す図である。
【0029】
圧着グリップ1は、円筒状の圧着スリーブ3と、圧着スリーブ3の中空部に挿入されるインサート4とからなる。
図1(a)は圧着スリーブ3を中心軸線方向に切断した断面を示し、
図1(b)は圧着スリーブ3を中心軸線方向に対して垂直な方向から見た側面を示す。
【0030】
圧着スリーブ3は、中心軸線方向において、一方の側(
図1に向かって左側)にインサート格納部3a、他方の側(
図1に向かって右側)に合成樹脂被覆取込部3bを有する。
【0031】
図1(c)に示すように、インサート4は、圧着スリーブ3よりも短い円筒状をしている。インサート4は、中心軸線方向に延びる一対のスリット部4aを有する。一対のスリット部4aは、インサート4の径方向に互いに対向する位置に形成されている。一対のスリット部4aは、いずれもインサート4が圧着スリーブ3内に配置されたときに合成樹脂被覆取込部3bに隣接する側に開放している。一対のスリット部4aは、いずれも中心軸線方向においてインサート4の略中央まで延びている。インサート4の内外周面は、環状に突出した滑り止め用の刃がインサート4の中心軸線方向に等間隔に複数形成された凹凸面としてある。
【0032】
圧着スリーブ3のインサート格納部3aは、中心軸線方向において、インサート4と略同じ長さを有する。合成樹脂被覆取込部3bは、インサート4の中心軸線方向において、所定の長さにわたって形成する。
【0033】
本第1実施形態においては、合成樹脂被覆取込部3bの内径R1はインサート格納部3aの内径R2と同径であり、合成樹脂被覆取込部3bの外周部に、中心軸線方向において、インサート格納部3a側から、インサート格納部3aとは反対側の端面に向かうにつれて径が小さくなるテーパー3b1を全長にわたって形成している。
【0034】
図1(d)、(f)に示すように、圧着グリップ1にアンボンドPC鋼より線5の端部を挿入した状態で、圧着スリーブ3が不図示のダイスを通して圧着加工されると、
図1(g)に示すように、インサート格納部3aが所定の内径まで細く塑性変形して、内側のインサート4が、合成樹脂被覆5aを取り除いたアンボンドPC鋼より線5の端部5b(裸線)の表面を噛み込み、圧着スリーブ3とアンボンドPC鋼より線5の端部5bが強固に結合される。上記のように、合成樹脂被覆取込部3bの外周部にテーパー3b1を形成することにより、ダイスを通して圧着加工する際に、インサート格納部3aが受ける圧着力よりも合成樹脂被覆取込部3bが受ける圧着力の方が小さくなる。この結果、圧着スリーブ3が圧着加工された後に、合成樹脂被覆取込部3b内の合成樹脂被覆5aが破損せず、圧着スリーブ3に密着する程度に適度に変形し、圧着スリーブ3の開口端部とアンボンドPC鋼より線5の間の止水が可能な状態となる。テーパー3b1の角度は合成樹脂被覆5aの外径と厚さに応じて定めることができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、
図2を参照して、本願の第2実施形態に係る圧着グリップ1について説明する。本第2実施形態に係る圧着グリップ1は、上記第1実施形態に係る圧着グリップ1と多くの点で共通するため、第1実施形態において参照符号を付して説明した部分と対応する部分には、第1実施形態と同じ参照符号を付し、第1実施形態と重複する説明は省略する。
【0036】
本第2実施形態においては、合成樹脂被覆取込部3bの外周部にテーパー3b1を形成せず、合成樹脂被覆取込部3bの内径R1をインサート格納部3aの内径R2よりも大きく形成する。内径R1、R2の具体的な大きさは、取り込む合成樹脂被覆5aの外径と厚さに応じて適切に定める。合成樹脂被覆取込部3bの内径R1は、圧着加工前に合成樹脂被覆5aを挿入可能な寸法であり、かつ、上記第1実施形態と同様の原理により、不図示のダイスを通して圧着加工される際、インサート格納部3aが受ける圧着力よりも合成樹脂被覆取込部3bが受ける圧着力の方が小さくなり、圧着加工後に合成樹脂被覆5aが圧着スリーブ3と密着し、合成樹脂被覆5aが破損することがないように設定する。
【0037】
圧着スリーブ3をこのように構成することで、圧着スリーブ3がダイスを通して圧着加工されると、インサート4が合成樹脂被覆5aを取り除いたアンボンドPC鋼より線5の端部5bを噛み込み、圧着グリップ1とアンボンドPC鋼より線5とが強固に結合されると共に、内径R1の大きい合成樹脂被覆取込部3bにより、合成樹脂被覆5aが圧着スリーブ3に密着する程度で適度に変形して、圧着スリーブ3の端部と合成樹脂被覆5aの間の止水が可能な状態となる。これにより、本第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。以上に説明した第1実施形態と第2実施形態により、合成樹脂被覆取込部3bが、中心軸線方向の全長にわたって、インサート格納部3aの径方向の厚さ寸法よりも小さい径方向の厚さ寸法を有すれば良いことが分かる。
【0038】
(第1実施例)
図3は本願の上記第1実施形態又は第2実施形態に係る圧着グリップを用いたショートアンカー2の第1実施例を示す図である。
図3(a)はショートアンカー2の構成部品の一部を長手方向に切断した断面を示す断面図である。
図3(b)はショートアンカー2の側面図である。
図3(c)は耐荷体7を長手方向に切断した断面を示す断面図である。
図3(d)は耐荷体7の側面図である。
図3(e)は先端キャップ8を長手方向に切断した断面を示す断面図である。
図3(f)は先端キャップ8の側面図である。
【0039】
ショートアンカー2は、耐荷体7と、耐荷体7に隣接して配置された先端キャップ8とを有する。耐荷体7は、
図3(c)、(d)に示すように、筒状をして、外周部に螺旋状の突起7aを有する。また、先端キャップ8側の耐荷体7の端部には、他の部分よりも外径が小さく、外周部にネジ溝が形成された雄ネジ部7bが形成されている。雄ネジ部7bは、中心軸線方向の応力を伝達可能に圧着グリップ1と接触する。耐荷体7は、その内側にアンボンドPC鋼より線5を通す。
【0040】
先端キャップ8は、
図3(e)、(f)に示すように、有底円筒状をして、耐荷体7側の端部の内周面にネジ溝が形成された雌ネジ部8aを有する。先端キャップ8の内側には、圧着グリップ1と、圧着グリップ1が圧着したアンボンドPC鋼より線5の先端部が挿入される。耐荷体7の雄ネジ部7bと先端キャップ8の雌ネジ部8aは螺合し、耐荷体7と先端キャップ8が一体化される。これにより、圧着グリップ1が防錆防食され、耐久性を有する圧縮型アンカーの固定端とすることができる。
【0041】
アンボンドPC鋼より線5は、アンカー頭部まで延びている。長手方向において、圧着グリップ1とは反対側(アンカー頭部側)のアンボンドPC鋼より線5の端部には、ネジ棒付き圧着グリップ9が圧着されている。ネジ棒付き圧着グリップ9は、有底円筒状の圧着スリーブ9aと、圧着スリーブ9aとアンボンドPC鋼より線5の間に介在するインサート9bと、圧着スリーブ9aの底部から延びるネジ棒9cとを有する。ネジ棒付き圧着グリップ9の圧着スリーブ9aとインサート9bは、圧着スリーブ9aが底部を有する点を除いて、上記第1実施形態又は第2実施形態の圧着グリップ1の圧着スリーブ3及びインサート4と同様に構成することができる。ネジ棒9cには、穴部10aが形成されたアンカープレート10が外嵌し、アンカープレート10よりもネジ棒9cの先端側にナット11が螺合される。
【0042】
図4(a)はアンボンドPC鋼より線5の断面図、
図4(b)は全素線塗装型PC鋼より線の断面図である。
図4(a)に示すアンボンドPC鋼より線5は、7本の素線5cを有する7本よりPC鋼より線(裸線)の外周に、例えば、ポリエチレン合成樹脂被覆(PE被覆)5aを施している。素線5cと合成樹脂被覆5aの隙間には、充填剤として、グリース又はワックスが充填される。
図4(b)に示す全素線塗装型PC鋼より線12においては、樹脂被膜12aが7本よりのPC鋼より線の素線12cにそれぞれ塗布されている。本願のショートアンカー2においては、
図4(a)に示すアンボンドPC鋼より線5を用いる。
【0043】
図5(a)は本願の第1実施形態又は第2実施形態に係る圧着グリップ1を用いたショートアンカー2の第1実施例を地盤に設置した状態示す側面図である。
【0044】
ショートアンカー2は、頭部以外の部分が、地盤に削孔したアンカー孔13に挿入される。ショートアンカー2とアンカー孔13の隙間には注入材(PCグラウト)14が注入される。注入材14としては、公知のセメント系注入材又は合成樹脂系注入材を用いることができる。注入材14は、液状で注入した後、孔内で硬化する。地盤表面とアンカープレート10の間には受圧板15を配置する。アンカープレート10とナット11の間には、ネジ付きワッシャー16を配置しても良い。
【0045】
注入材14が硬化した後、ショートアンカー2に緊張力を導入する。ショートアンカー2に緊張力を導入することで、アンボンドPC鋼より線5は、弾性変形により所定の長さだけ伸びる。その状態で、ナット11を締め、定着させる。
【0046】
ショートアンカー2の緊張定着の後、ショートアンカー2の頭部の防食処理を行う。防食処理としては、例えば、ネジ棒付き圧着グリップ9のネジ棒9c、ナット11及びネジ付きワッシャー16を覆うヘッドキャップ17をアンカープレート10に取り付け、ヘッドキャップ17内に防食材を注入することにより行う。
【0047】
本第1実施例によれば、ショートアンカー2が、ほぼ全長にわたって合成樹脂被覆が付いたままの状態となるため、全長が短い場合でも、十分な伸び量を確保しやすく、健全性と安全性を有する地盤アンカーとすることができる。引張型の地盤アンカーにおいては、アンカー自由長部とアンカー定着長部がそれぞれ長手方向の異なる位置に配置され、アンカー自由長部でアンボンド状態、アンカー定着長部でボンド(裸線)状態とされる。これに対して、本第1実施例のショートアンカー2は圧縮型アンカーであり、アンカー定着長部の一部を構成する耐荷体7の内側に配置されたアンボンドPC鋼より線5の部分も伸びる。つまり、
図5(a)に示すように、アンカー自由長部とアンカー定着長部がラップした状態となっている。これにより、ショートアンカー2は、全長を短くしても、十分な伸び量を確保しやすくなっている。
【0048】
図6は上記第1実施例に係るショートアンカー2を法面補強に用いた例を示す側面図である。
図6に示すように、すべり面Sは、一般的に、下に行くほど法面から浅い位置にある。したがって、特に、低い位置に配置する地盤アンカーは、比較的短いものであっても、すべり面Sの奥にある固い地盤に定着させることができる。しかしながら、従来の地盤アンカーにおいては、緊張材の十分な伸びを確保するため、全長を長くしなければならない。これに対し、上記第1実施例に係るショートアンカー2によれば、全長を短くしても、アンボンドPC鋼より線5の十分な伸びを確保することができる。これにより、アンボンドPC鋼より線5の使用量が減り、削孔の深さも浅くなり、注入材14の量も減るため、工事の手間及びコストを削減することができる。
【0049】
また、上記第1実施例のショートアンカー2によれば、ロックボルトと同様に、アンカー断面が単数のアンボンドPC鋼より線により形成することができ、削孔径を小さくし、注入材14の量も減らすことができるため、工事の手間やコストを削減することができる。
【0050】
また、上記第1実施例に係るショートアンカー2によれば、圧着グリップ1が先端キャップ8に覆われ、先端キャップ8は耐荷体7と一体化され、耐荷体7の内側には注入材14が入り込むため、圧着グリップ1の腐食を防ぐことができる。
【0051】
(第2実施例)
図5(b)は本願の第1実施形態又は第2実施形態に係る圧着グリップ1を用いたショートアンカー2の第2実施例を示す側面図である。本第2実施例は、上記第1実施例と多くの点で共通するため、上記第1実施例において符号を付して説明した部分に対応する部分には上記第1実施例と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0052】
本第2実施例においては、上記第1実施例のネジ棒付き圧着グリップ9、ナット11及びネジ付きワッシャー16の代わりに、くさび18とアンカーヘッド19を用いている。本第2実施例においても、上記第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【課題】アンカー孔の径を小さくすることが可能であり、全長を容易に変更でき、短い長さでも所要の伸び量を確保しやすいショートアンカー及びそのショートアンカーに用いる圧着グリップを提供する。
【解決手段】合成樹脂被覆を有するアンボンドPC鋼より線5用の圧着グリップ1であって、圧着グリップは、円筒状の圧着スリーブ3と、円筒状をして、内外周面に刃が形成してあり、圧着スリーブに挿入されるインサート4とからなり、圧着スリーブは、中心軸線方向において、一方の側にインサート格納部3a、他方の側に合成樹脂被覆取込部3bを形成し、合成樹脂被覆取込部が、中心軸線方向の全長にわたって、インサート格納部の径方向の厚さ寸法よりも小さい径方向の厚さ寸法を有するものとする。