(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乗員の前方に位置する車体に設けられた容器部と、袋状に形成されこの容器部に収納されたエアバッグと、このエアバッグにガスを供給するインフレータとを具備し、このインフレータからのガスにより前記容器部から前記エアバッグの先端側を突出させて前記乗員の下肢部と前記車体との間に展開させるエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、折り畳まれた状態で、
先端側から基端側に向かって折り畳まれた第1の折畳部と、
この第1の折畳部を基端側に向かって開口するコ字状に包むように折り畳まれて基端側の上部に重ねられる第2の折畳部と、
少なくとも一部がこの第2の折畳部の開口側に対向して位置するように折り畳まれた第3の折畳部とを備え、
前記容器部は、前記第2の折畳部の開口とは反対側の位置に配置された蓋部と、前記エアバッグの展開により開裂して前記蓋部を乗員側に展開可能とする弱部と、を備えた
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなニーエアバッグ装置において、エアバッグ本体部を乗員の下肢部とダッシュパネルとの間の狭い隙間に上方に向かって確実に展開させることが求められる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、乗員の下肢部と車体との間にエアバッグを確実に展開させることが可能なエアバッグ装置及びエアバッグの折り畳み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のエアバッグ装置は、乗員の前方に位置する車体に設けられた容器部と、袋状に形成されこの容器部に収納されたエアバッグと、このエアバッグにガスを供給するインフレータとを具備し、このインフレータからのガスにより前記容器部から前記エアバッグの先端側を突出させて前記乗員の下肢部と前記車体との間に展開させるエアバッグ装置であって、前記エアバッグは、折り畳まれた状態で、先端側から基端側に向かって折り畳まれた第1の折畳部と、この第1の折畳部を基端側に向かって開口するコ字状に包むように折り畳まれて基端側の上部に重ねられる第2の折畳部と、少なくとも一部がこの第2の折畳部の開口側に対向して位置するように折り畳まれた第3の折畳部とを備え、前記容器部は
、前記第2の折畳部の開口とは反対側の位置に
配置された蓋部と、前記エアバッグの展開により開裂して前記蓋部を乗員側に展開可能とする弱部と、を備えたものである。
【0008】
請求項2記載のエアバッグ装置は、請求項1記載のエアバッグ装置において、第1の折畳部は、先端側が車体側となる面側へと基端側に向かってロール状に折り畳まれた状態となっているものである。
【0009】
請求項3記載のエアバッグ装置は、請求項1または2記載のエアバッグ装置において、第3の折畳部は、第2の折畳部を先端側に向かって開口するコ字状に包むように折り畳まれたものである。
【0010】
請求項4記載のエアバッグ装置は、請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグ装置において、容器部は、エアバッグを収納する容器部本体と、この容器部本体の一端部にて乗員の下肢部に対向して位置し蓋部により閉塞される開口部と、をさらに備え、
弱部は
、前記開口部の上縁部に対応する位置に
あるものである。
【0011】
請求項5記載のエアバッグ装置は、請求項1ないし4いずれか一記載のエアバッグ装置において、エアバッグは、展開状態での車体と乗員の下肢部との間の厚みが基端側よりも先端側で大きくなっているものである。
【0012】
請求項6記載のエアバッグの折り畳み方法は、袋状に形成され
蓋部を備える容器部に収納されるとともにインフレータからのガスにより膨張して
前記容器
部の弱部を開裂
させることで前記蓋部を乗員側に押し広げ、前記容器部から先端側が突出して乗員の下肢部と車体との間に展開するエアバッグの折り畳み方法であって、先端側を基端側に向かって折り畳んで第1の折畳部を形成する第1の折り畳み工程と、前記第1の折畳部を基端側に向かいかつ前記蓋部とは反対側に開口するコ字状に包むように前記第1の折畳部の周辺を折り畳み基端側の上側に重ねて第2の折畳部を形成する第2の折り畳み工程と、少なくとも一部が前記第2の折畳部の開口側に対向して位置するように前記第2の折畳部の周辺を折り畳んで第3の折畳部を形成する第3の折り畳み工程とを具備したものである。
【0013】
請求項7記載のエアバッグの折り畳み方法は、請求項6記載のエアバッグの折り畳み方法において、第1の折畳部は、先端側が車体側となる面側へと基端側に向かってロール状に折り畳まれた状態となっているものである。
【0014】
請求項8記載のエアバッグの折り畳み方法は、請求項6または7記載のエアバッグの折り畳み方法において、第3の折り畳み工程は、第2の折畳部を先端側に向かって開口するコ字状に包むように前記第2の折畳部の周辺を折り畳んで第3の折畳部を形成するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載のエアバッグ装置によれば、乗員の下肢部を保護可能なエアバッグ装置について、エアバッグの先端側を基端側に向かって折り畳んで第1の折畳部を形成し、この第1の折畳部を基端側に向か
いかつ容器部の蓋部とは反対側に開口するコ字状に包むように折り畳
み基端側の上側に重ねて第2の折畳部を形成し、少なくとも一部がこの第2の折畳部の開口側に対向して位置するように折り畳んで第3の折畳部を形成することで、インフレータから供給されたガスにより、まず第3の折畳部が迅速に膨張展開することにより、第2の折畳部とともに第1の折畳部を安定して容器部から押し出した後、続いて第2の折畳部が膨張展開することで第1の折畳部を上方へと押し上げ、続いて第1の折畳部が展開することで乗員の下肢部と車体との間の狭い隙間にエアバッグを確実に展開させることができる。
【0016】
請求項2記載のエアバッグ装置によれば、請求項1記載のエアバッグ装置の効果に加えて、先端側が車体側となる面側へと基端側に向かって第1の折畳部をロール状に折り畳むことにより、第2の折畳部が膨張展開することで押し上げられた第1の折畳部が車体に沿って解けるように展開するので、乗員の下肢部と車体との間の狭い隙間にエアバッグをより確実に展開させることができる。
【0017】
請求項3記載のエアバッグ装置によれば、請求項1または2記載のエアバッグ装置の効果に加えて、第3の折畳部を、第2の折畳部を先端側に向かって開口するコ字状に包むように折り畳むことにより、この第3の折畳部による第2の折畳部の包み量や第3の折畳部の大きさを変えることで第1及び第2の折畳部を押し上げる角度を制御でき、乗員の下肢部と車体との間にエアバッグをより確実に展開させることが可能になる。
【0018】
請求項4記載のエアバッグ装置によれば、請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグ装置の効果に加えて、容器部の開口部を閉塞する蓋部の開口部の上縁部に対応する位置に、エアバッグの展開により開裂する弱部を設けることで、エアバッグの展開時に弱部が開裂した蓋部が開口部に対して下方へと展開するので、エアバッグの上方への展開を蓋部により妨げにくく、乗員の下肢部と車体との間にエアバッグをより確実に展開させることが可能となる。
【0019】
請求項5記載のエアバッグ装置によれば、請求項1ないし4いずれか一記載のエアバッグ装置の効果に加えて、エアバッグの展開状態での車体と乗員の下肢部との間の厚みを基端側よりも先端側で大きくしたので、乗員の下肢部と車体との間にエアバッグを確実に展開させつつ、最もエネルギを吸収したい下肢部の膝部でのストロークを確保できる。
【0020】
請求項6記載のエアバッグの折り畳み方法によれば、エアバッグの先端側を基端側に向かって折り畳んで第1の折畳部を形成する第1の折り畳み工程と、この第1の折畳部を基端側に向か
いかつ容器部の蓋部とは反対側に開口するコ字状に包むように第1の折畳部の周辺を折り畳
み基端側の上側に重ねて第2の折畳部を形成する第2の折り畳み工程と、少なくとも一部がこの第2の折畳部の開口側に対向して位置するように第2の折畳部の周辺を折り畳んで第3の折畳部を形成する第3の折り畳み工程とを備えることで、インフレータから供給されたガスにより、まず第3の折畳部が迅速に膨張展開することにより、第2の折畳部とともに第1の折畳部を安定して容器部から押し出した後、続いて第2の折畳部が膨張展開することで第1の折畳部を上方へと押し上げ、続いて第1の折畳部が展開することで乗員の下肢部と車体との間の狭い隙間にエアバッグを確実に展開させることができる。
【0021】
請求項7記載のエアバッグの折り畳み方法によれば、請求項6記載のエアバッグの折り畳み方法の効果に加えて、第1の折り畳み工程にて、第1の折畳部を、先端側が車体側となる面側へと基端側に向かってロール状に折り畳むことにより、第2の折畳部が膨張展開することで押し上げられた第1の折畳部が車体に沿って解けるように展開するので、乗員の下肢部と車体との間の狭い隙間にエアバッグをより確実に展開させることができる。
【0022】
請求項8記載のエアバッグの折り畳み方法によれば、請求項6または7記載のエアバッグの折り畳み方法の効果に加えて、第3の折り畳み工程にて、第3の折畳部を、第2の折畳部を先端側に向かって開口するコ字状に覆うように折り畳むことにより、この第3の折畳部による第2の折畳部の包み量や第3の折畳部の大きさを変えることで第1及び第2の折畳部を押し上げる角度を制御でき、乗員の下肢部と車体との間にエアバッグをより確実に展開させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態のエアバッグ装置及びエアバッグの折り畳み方法の構成を、図面を参照して説明する。
【0025】
図1において、10はエアバッグで、このエアバッグ10を備えたエアバッグ装置11は、被取付部材としての車両である自動車の室内部としての車室12に面した車体としての取付面部であるパネル14に配置されている。そして、このエアバッグ装置11は、ニーエアバッグ装置すなわち膝保護用エアバッグ装置とも呼ばれるもので、前面衝突などの衝撃を受けた際に、
図6に示すように、乗員の足元すなわち膝A1を含む下肢部Aに対向して展開し、乗員の膝A1を含む下肢部Aを拘束して乗員を保護するようになっている。なお、以下、前後方向などの方向は、車体の直進方向を基準とし、すなわち、
図1に示すように、車両の前方(矢印F方向)がエアバッグ10の基端側となり、車両の後方(矢印R方向)がエアバッグ10の先端側及び乗員側となり、また、車両を基準として上方及び下方を説明する。さらに、車両の左右方向である幅方向が、
図7(a)などに示すように、エアバッグ10の両側方向すなわち左右方向である幅方向(矢印W方向)となる。
【0026】
そして、この車体は、
図1ないし
図6に示すように、車室12内に乗員が着座可能な両側一対の座席を備えているとともに、これら座席の前方には、フロントガラスとインストルメントパネル(図示せず)とが配置されている。さらに、このインストルメントパネルの下方の下部あるいは中段部には、インストルメントパネルを構成するダッシュパネルなどとも呼ばれるパネル14が配置され、このパネル14に、各座席に対向して、エアバッグ装置11が取り付けられている。また、図示しない一方の座席は、運転席であり、インストルメントパネルとパネル14との間には、ステアリングホイールが配置されている。また他方の座席は、助手席であり、インストルメントパネルとパネル14との間には、グローブボックスなどが配置されている。なお、上記のエアバッグ装置11の他に、この車室12には、ステアリングホイール、インストルメントパネル、座席の側部、ルーフサイドレールなどに、図示しないエアバッグ装置が備えられている。
【0027】
そして、エアバッグ装置11は、容器部としてのケース体21と、このケース体21に取り付けられるインフレータ22、リテーナ24、及びエアバッグ10などを備えている。そして、ケース体21は、ハウジングなどとも呼ばれるもので、後面を開口部21aとした略箱状をなす容器部本体としての本体部21bと、この本体部21bと別体でパネル14に対して一体的に設けられた蓋部21cとを備え、本体部21bの内側が、エアバッグ収納部28となっている。また、開口部21aは、両側方向を長手方向とする四角形状で、乗員の下肢部Aの下部(膝部A1よりも下方)に対向して後方に向かって開口されている。また、本体部21bの前面には、図示しない複数の取付孔が形成されている。
【0028】
蓋部21cは、リッドなどとも呼ばれるカバー体であり、例えば合成樹脂にて一体に形成され、例えばパネル14と面一な平板状に形成されている。この蓋部21cは、1枚の合成樹脂により、あるいは複数枚の合成樹脂が重ねられて形成されている。また、この蓋部21cは、開口部21aを閉塞するように本体部21bに取り付けられているとともに、この開口部21aの上縁部に対応する位置、すなわち蓋部21cの上縁部にて反乗員側(背面側)に、エアバッグ10の展開圧力によって破断可能な弱部であるテアライン21dが溝状に設けられている。したがって、この蓋部21cは、開口部21aの下縁部側の位置をヒンジ部として乗員側である後方に向かって下方に開くように構成されている。
【0029】
インフレータ22は、略円柱状をなすインフレータ本体部22aを備え、このインフレータ本体部22aの一端部近傍にガス噴射部が設けられているとともに、他端部に接続部が設けられている。そして、このインフレータ22は、接続部に接続される図示しないハーネスを介して制御装置に接続され、このハーネスを介して制御装置から供給される起動信号に基づき、ガス噴射部からガスを噴射する。
【0030】
リテーナ24は、ケース体21の本体部21b(取付孔)に対して取付ボルト24aを介して取り付けられている。
【0031】
また、エアバッグ10は、1枚の基布を縫い合わせあるいは複数枚の基布を縫い合わせて袋状に形成され、所定の形状に折り畳まれてケース体21のエアバッグ収納部28に収納されている。そして、本実施の形態では、エアバッグ10は、袋状の外殻を構成するエアバッグ本体部30と、このエアバッグ本体部30の内側に配置される隔壁部としての例えば第1ないし第3の隔壁31,32,33と、エアバッグ本体部30の内側に配置される図示しない単数、あるいは複数の補強布とが互いに縫製などにより接合されて構成されている。
【0032】
そして、エアバッグ本体部30は、所定の形状に切断した1枚、あるいは複数枚の基布が適宜の位置で縫製などにより接合されて、展開状態でパネル14側に位置する第1の面部としての上側面部35と展開状態で乗員の下肢部A側に位置する第2の面部としての下側面部36とが構成され、前端側の基端部38にインフレータ22が挿入される図示しない開口が設けられ、内部を気室39とした袋状に構成されている。また、このエアバッグ本体部30は、基端部38側が最も幅寸法が小さく、先端部40に向かって幅寸法が大きくなるように構成されている。そして、このエアバッグ本体部30は、基端部38を含みこの基端部38の近傍に、エアバッグ収納部28に取り付けられる基部41が形成され、この基部41の先端側に、折り畳まれた状態でエアバッグ収納部28に収納され展開状態で開口部21aから乗員側である後側へケース体21から突出する乗員拘束部である保護部42が形成されている。
【0033】
また、隔壁31,32,33は、それぞれ帯状の基布で構成され、第1の隔壁31の先端部40側に第2の隔壁32が配置され、第2の隔壁32の先端部40側に第3の隔壁33が配置されている。そして、これら第1の隔壁31、第2の隔壁32、及び第3の隔壁33により、本実施の形態では、エアバッグ本体部30の内部の気室39が、基部側気室44、第1の中間気室45、第2の中間気室46、及び先端部側気室47の4個の気室に区画されている。そして、第1の隔壁31、第2の隔壁32、及び第3の隔壁33は、エアバッグ本体部30の少なくとも気室39の幅方向の全長を区画する長さ寸法を有し、外縁部がエアバッグ本体部30に対して縫製などにより接合されている。また、各隔壁31,32,33には、それぞれ所定の間隔で、ガスが流通可能な通気部としての孔部である図示しない流通部が形成されている。そして、これら隔壁31,32,33により区画形成された4個の気室44,45,46,47については、互いに隣接する気室44,45,46,47が各隔壁31,32,33で両側方向すなわち幅方向の全幅に亘って区画され、それぞれ流通部のみで連通するように構成されている。また、エアバッグ10が展開した状態では、基部側気室44から第1の中間気室45、第2の中間気室46、及び先端部側気室47へと、換言すれば基端部38側から先端部40側へと、体積が大きくなるように設定されている。このため、エアバッグ10(エアバッグ本体部30)は、展開状態でのパネル14と乗員の下肢部Aとの間の厚み(前後ストローク)が基端側よりも先端側で大きくなっている。また、基部41は、基部側気室44に構成され、この基部側気室44の基部41に、インフレータ22が配置されるガス導入部が設定されている。
【0034】
また、エアバッグ10のガス導入部の部分には、このエアバッグ本体部30を構成する基布(及び補強布)を貫通して、例えばリテーナ24の取付ボルト24aを挿通するための図示しない取付孔が形成されている。
【0035】
次に、このエアバッグ10の折り畳み方法を説明する。
【0036】
まず、エアバッグ10、インフレータ22、及びリテーナ24などを組み合わせて、組立体を構成する。この工程は、まず、インフレータ22をリテーナ24の内側に挿入して固定する。そして、インフレータ22を取り付けたリテーナ24を、基端部38の開口からエアバッグ10の内側のガス導入部に挿入し、リテーナ24の取付ボルト24aを取付孔から引き出す。
【0037】
次いで、平面化工程として、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、エアバッグ10を平面状に広げて、上側面部35が上側、下側面部36が下側となるように形を整えた平板状態とする。
【0038】
次いで、この平板状態から、第1の折り畳み工程として、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、エアバッグ10の保護部42の先端側(先端部40)を基端側である基部41(基端部38)に向かってロール状に折り畳んで第1の折畳部51を形成する。このとき、保護部42の先端側は、展開状態でパネル14(
図1)側となる面である上側面部35へと、すなわち上側へと巻き込むように折り畳む。
【0039】
この後、第2の折り畳み工程の一部として、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、エアバッグ10の保護部42の第1の折畳部51を含む部分を基部41(基端部38)に向かって上側面部35に重ねるように谷折りして重ね部52を形成する。
【0040】
さらに、第2の折り畳み工程の一部として、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、重ね部52のうち、第1の折畳部51を含む先端部分を重ね部52に重ねるように谷折りして折り返す。
【0041】
次いで、第2の折り畳み工程の一部として、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、重ね部52のうち、第1の折畳部51を含まない余剰部分を、この第1の折畳部51の上側を覆うように屈曲させて第1の折畳部51に重ねることで、重ね部52によって第2の折畳部53を形成する。すなわち、第2の折畳部53は、第1の折畳部51の周辺のエアバッグ本体部30(保護部42)を折り畳んで形成される。このとき、第2の折畳部53は、第1の折畳部51を基端側に向かって開口するコ字状に包むように形成される。したがって、この第2の折畳部53は、第1の折畳部51を上下でくわえるいわばアリゲータ状に折り畳まれる。
【0042】
そして、第3の折り畳み工程として、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、第1の折畳部51を包む第2の折畳部53よりも基部41(基端部38)側の部分、すなわちこの第2の折畳部53の周辺のエアバッグ本体部30(保護部42及び基部41)を折り畳んで、第2の折畳部53を包む第3の折畳部54を形成する。このとき、第3の折畳部54は、第1の折畳部51を包む第2の折畳部53よりも基部41(基端部38)側の部分にて上側面部35と下側面部36とをそれぞれタック状に摘んだタック部54a,54bを第2の折畳部53の上側及び下側に重ねて形成する。したがって、この第3の折畳部54は、第1の折畳部51を包む第2の折畳部53を上下でくわえるようにいわばアリゲータ状に折り畳まれる。この結果、この第3の折畳部54は、一部であるタック部54aがこの第2の折畳部53の開口側である前側(基部41(基端部38)側)に対向して位置し、第2の折畳部53を、この第2の折畳部53の開口側である前側に対して反対方向である後側、すなわち展開先端側に向かって開口するコ字状に包むように形成される。すなわち、この第3の折畳部54は、上下のタック部54a,54bに分岐されるように形成される。このため、上側のタック部54aは、上側から後側へと屈曲するように形成され、下側のタック部54bは、後側に向かって直線状に延びるように形成される。
【0043】
なお、エアバッグ本体部30の幅方向の大きさがケース体21の開口部21aに対して大きい場合には、エアバッグ本体部30の幅方向両端をZ字状、あるいはロール状に折り畳む。
【0044】
そして、必要に応じてエアバッグ10に図示しないラッピングを被せ、
図1に示すように、エアバッグ10を所定の形状に折り畳んだ状態で保持した組立体を、開口部21aを介してケース体21の本体部21bに挿入し、ケース体21の取付孔にリテーナ24の取付ボルト24aを貫通させ、ケース体21の外側から取付ボルト24aにナットを螺合して、組立体すなわちエアバッグ10、インフレータ22、及びリテーナ24などをケース体21に固定する。次いで、蓋部21cが開口部21aすなわちエアバッグ10を覆うようにして、ケース体21の本体部21bに蓋部21cを取り付けることにより、エアバッグ装置11が構成される。
【0045】
そして、ケース体21を、適宜の取付具を用いて車体の取付部材に固定し、蓋部21cがパネル14と面一になるようにエアバッグ装置11を車体に取り付けるとともに、インフレータ22に接続したハーネスを制御装置に電気的に連結し、
図1に示すように、エアバッグ装置11が車体に設置される。
【0046】
次に、このエアバッグ装置11の動作を説明する。
【0047】
図1に示す状態から、制御装置が自動車の正面衝突などの衝撃を検出すると、この制御装置はハーネスを通じて起動信号である電力を供給し、インフレータ22を作動させる。そして、インフレータ22からエアバッグ10内にガスが供給されると、エアバッグ10は、ケース体21の内側で膨張し、まず、ラッピングを破断し、次いで、第3の折畳部54のタック部54a,54bを膨張させ、第1の折畳部51を包む第2の折畳部53を後方へと移動させて
図2に示すように蓋部21cを後方へと押し込んでテアライン21dで破断させる。より詳細には、まず、インフレータ22から供給されるガスは、リテーナ24で拡散されつつ、エアバッグ10の基部41のガス供給部に供給される。すると、まず、エアバッグ10の基部41が膨張展開を開始するが、特に、このガス供給部に直接的に連通し、かつ、ガスの流路が直線的、すなわちロールや蛇腹となっていない、第3の折畳部54の下側のタック部54bや上側のタック部54aに迅速にガスが供給され、第3の折畳部54が展開することで第2の折畳部53を後方へと移動させ、テアライン21dを開裂させて蓋部21cを、その下縁部をヒンジ部として車室12側に回動させるように展開させる。この結果、
図3に示すように、第1の折畳部51を包む第2の折畳部53が車室12内に安定して押し出される。
【0048】
このとき、第3の折畳部54に続いて第2の折畳部53にガスが供給されることで、第1の折畳部51をコ字状に包む第2の折畳部53が膨張展開し、第2の折畳部53が第1の折畳部51を上方へと、パネル14に向かって前方上側へと押し上げる。
【0049】
そして、
図4及び
図5に示すように、第2の折畳部53が膨張展開するとともに、第2の折畳部53に続いて第1の折畳部51にガスが供給されることで、この第1の折畳部51がパネル14に沿って転がるように上方に向かって解けながら展開し、パネル14と乗員の下肢部Aとの間に効率よく入り込み、下肢部Aを膝A1の部分を含んで覆い、乗員の下方への滑り込みを防止して保護する。このとき、保護部42は、第1の隔壁31、第2の隔壁32、及び第3の隔壁33により区画されているため、まず、他の部分より下側に位置する基部側気室44が展開し、次いで、基部側気室44の上側に位置して第1の中間気室45が展開し、さらに、この第1の中間気室45の上側に位置して第2の中間気室46が展開し、さらに、他の部分より上側に位置して先端部側気室47が展開する。そして、先端部側気室47の部分が、慣性で前方に移動してくる乗員の膝A1に対向して膨張展開し、乗員の膝A1を拘束して保護するとともに、結果的に乗員の腰部の移動を抑制して、乗員の車体に対する相対的な移動を効果的に抑制し、パネル14や車室12に進入してくる床面などに直接当接することなどを抑制して保護する。そして、エアバッグ10は、最終的に、
図6に示す形状に膨張展開する。
【0050】
このように、本実施の形態によれば、乗員の膝A1を含む下肢部Aを保護可能なエアバッグ装置11について、エアバッグ10の先端側を基端側に向かって折り畳んで第1の折畳部51を形成し、この第1の折畳部51を基端側に向かって開口するコ字状に包むように第1の折畳部51の周辺を折り畳んで第2の折畳部53を形成し、少なくとも一部がこの第2の折畳部53の開口側に対向して位置するように第2の折畳部53の周辺を折り畳んで第3の折畳部54を形成することで、インフレータ22から供給されたガスにより、まず第3の折畳部54が迅速に膨張展開することにより、第2の折畳部53とともに第1の折畳部51を安定してケース体21から車室12に押し出した後、続いて第2の折畳部53が膨張展開することで第1の折畳部51を車室12にて上方へと押し上げ、続いて第1の折畳部51が展開することで乗員の下肢部Aとパネル14との間の狭い隙間にエアバッグ10を確実に展開させることができ、乗員の下肢部Aを確実に保護する好ましい特性を実現できる。
【0051】
また、第1の折畳部51を、エアバッグ10の先端側をパネル14側となる上側面部35側へと基端側に向かってロール状に折り畳むことにより、第2の折畳部53が膨張展開することで押し上げられた第1の折畳部51がパネル14に沿って解けるように展開するので、乗員の下肢部Aとパネル14との間の狭い隙間にエアバッグ10をより確実に展開させることができる。
【0052】
さらに、第3の折畳部54を、第2の折畳部53を先端側に向かって開口するコ字状に包むように折り畳むことにより、この第3の折畳部54による第2の折畳部53の包み量(アリゲータ量)や第3の折畳部54の大きさを変えることで第3の折畳部54の展開するタイミングや第1及び第2の折畳部51,53を押し上げる力を変えることができる。この結果、第1及び第2の折畳部51,53を押し上げる角度を制御でき、乗員の下肢部Aとパネル14との間にエアバッグ10をより確実に展開させることが可能になるとともに、エアバッグ10の取り付け位置(ケース体21の位置)が異なる車種、すなわち必要となるエアバッグ10の上方への展開角度が異なる車種などに対しても、第3の折畳部54の形状を変えるのみで容易に対応できる。
【0053】
また、ケース体21の開口部21aを閉塞する蓋部21cの開口部21aの上縁部に対応する位置に、エアバッグ10の展開により開裂するテアライン21dを設けることで、エアバッグ10の展開時にテアライン21dが開裂した蓋部21cが開口部21aに対して下方へと展開するので、エアバッグ10の上方への展開を蓋部21cにより妨げにくいだけでなく、蓋部21cによってエアバッグ10を上方に向かってガイドする効果も有し、乗員の下肢部Aとパネル14との間にエアバッグ10をより確実に展開させることが可能となる。
【0054】
さらに、エアバッグ10の展開状態でのパネル14と乗員の下肢部Aとの間の厚みを基端側(下側)よりも先端側(上側)で大きくしたので、乗員の下肢部Aとパネル14との間にエアバッグ10を確実に展開させつつ、最もエネルギを吸収したい下肢部Aの膝部A1でのストロークを確保できる。換言すれば、下肢部Aの膝部A1でのストロークを確保するように基端側(下側)よりも先端側(上側)で厚みを大きくしたエアバッグ10であっても、乗員の下肢部Aとパネル14との狭い隙間に確実に展開させることができる。
【0055】
また、エアバッグ10の折り畳み方法により展開挙動を制御できるため、エアバッグ10あるいはエアバッグ装置11の構成を複雑にしたりエアバッグ10の形状を変えたりする必要がなく、エアバッグ装置11の製造コストを低減できる。
【0056】
さらに、保護部42は、各隔壁31,32,33により4個の気室44,45,46,47に区画したため、各気室44,45,46,47を順次膨張展開させる挙動を実現できる。
【0057】
このようにして、エアバッグ10が、低い位置に設けられた狭い空間のエアバッグ収納部28からパネル14と下肢部Aとの間に迅速に安定して膨張展開し、車両の座席に着席した乗員の下肢部Aを効果的に保護できるエアバッグ装置11を提供できる。
【0058】
なお、上記の実施の形態では、第1の折畳部51をロール状に形成したが、この構成に限定されるものではなく、例えば蛇腹状などに折り畳むことなどもできる。
【0059】
同様に、第3の折畳部54をアリゲータ状に形成したが、この構成に限定されるものではなく、例えば蛇腹状に折り畳むことなどもできる。
【0060】
また、気室39は、4つの気室44〜47に分割したが、3つ以下としてもよいし、5つ以上としてもよい。