(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の面部材は、硬質芯材と弾性材とからなる層構造を有するので、面部材をギア装置へ固定するための固定具(たとえば、ボルト)は、弾性材を貫通する。この結果、高い応力が、固定具の周囲において、弾性材に生ずる。弾性材は、硬質芯材よりも低い剛性を有するので、高い応力に耐えられず、破損しやすい。
【0006】
ギア装置は、出力軸に平行な伝達軸周りに回転する伝達歯車を有することがある。この場合、伝達歯車を収容するための広い空間がギア装置に形成される必要がある。このことは、弾性材とギア装置との間の小さな当接面積に帰結する。大きな伝達トルクが、小さな当接面積の下で、ギア装置から相手部材へ伝達されると、弾性材の強度を超えた剪断応力が、弾性材に生ずることもある。この結果、弾性材は、破損することもある。
【0007】
本発明は、シール部材の破損リスクを低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面に係るギア装置は、所定の出力軸周りの回転力を出力する。ギア装置は、前記出力軸と平行な伝達軸周りに回転するギアと、前記出力軸に直交する仮想平面に沿う端面と、前記ギア及び前記ギアを潤滑する潤滑剤が収容されるように前記端面から窪む収容空間の輪郭を前記端面上で形成する内縁面と、を含むキャリアと、前記潤滑剤の漏出を防ぐシール部材と、を備える。前記輪郭は、前記出力軸を中心として描かれた第1仮想円に沿う第1弧状輪郭と、前記伝達軸を中心として描かれ、且つ、前記第1仮想円に部分的に重畳する第2仮想円に沿う第2弧状輪郭と、を含む。前記シール部材は、前記輪郭に沿うように形成された内周縁を有し、且つ、前記端面に当接及び固定されるシール基部と、前記内周縁に沿って形成され、且つ、前記シール基部よりも低い剛性を有するシール環部と、を含む。
【0013】
上記構成によれば、シール基部は、キャリアの端面に当接及び固定されるけれども、シール環部よりも高い剛性を有するので、シール部材は破損しにくい。シール基部よりも低い剛性を有するシール環部は、収容空間の輪郭に沿うように形成されたシール基部の内周縁に沿って形成されるので、キャリアとシール基部との固定に起因する高い応力に曝されにくい。したがって、シール部材は、破損しにくくなる。
【0014】
収容空間の輪郭は、出力軸を中心として描かれた第1仮想円に沿う第1弧状輪郭と、伝達軸を中心として描かれ、且つ、第1仮想円に部分的に重畳する第2仮想円に沿う第2弧状輪郭と、を含むので、端面は、狭くなる。この結果、端面に固定されるシール基部も狭くなる。しかしながら、シール基部は、シール環部よりも高い剛性を有するので、高い剪断応力に耐えることができる。したがって、シール部材は、破損しにくい。シール環部は、収容空間の輪郭に沿うので、潤滑剤の漏出は、シール環部によって適切に妨げられる。
【0015】
上記構成に関して、前記シール部材は、前記キャリア内に突出し、前記端面に対する前記シール部材の相対位置を保つ保持部を含んでもよい。
【0016】
上記構成によれば、保持部は、キャリア内に突出し、端面に対するシール部材の相対位置を保つので、シール部材は、キャリアに容易に固定される。
【0017】
上記構成に関して、前記保持部は、前記シール基部から突出する突起を含んでもよい。前記突起は、前記端面に穿設された係合穴に挿入されてもよい。
【0018】
上記構成によれば、シール基部から突出する突起は、キャリアの端面に穿設された係合穴に挿入されるので、端面に対するシール部材の相対位置は、変化しにくい。したがって、シール部材は、キャリアに容易に固定される。
【0019】
上記構成に関して、前記シール部材は、前記突起を被覆するゴム層を含んでもよい。
【0020】
上記構成によれば、突起は、ゴム層によって被覆されるので、突起は、係合穴内で、高い摩擦力の下で保持される。端面に対するシール部材の相対位置は、変化しにくくなるので、シール部材は、キャリアに容易に固定される。
【0021】
上記構成に関して、前記保持部は、前記シール基部から前記第1弧状輪郭及び前記第2弧状輪郭のうち少なくとも一方において屈曲され、前記収容空間に挿入された爪部を含んでもよい。
【0022】
上記構成によれば、爪部は、シール基部から内周縁において屈曲され、収容空間に挿入されるので、端面に対するシール部材の相対位置は、変化しにくい。したがって、シール部材は、キャリアに容易に固定される。
【0023】
上記構成に関して、前記シール環部は、ゴム材から形成されてもよい。前記ゴム材は、前記爪部を被覆し、前記内縁面に当接してもよい。
【0024】
上記構成によれば、ゴム材は、爪部を被覆し、内縁面に当接するので、ゴム材と内縁面との間で大きな摩擦力が生ずる。端面に対するシール部材の相対位置は、変化しにくくなるので、シール部材は、キャリアに容易に固定される。
【発明の効果】
【0025】
上述の技術は、シール部材の破損リスクを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
本発明者等は、出力軸に平行な伝達軸周りに回転する伝達歯車を潤滑する潤滑剤の漏出を防止するシール部材が、大きな伝達トルクの下で、破損しやすいという課題を見出した。第1実施形態において、シール部材の破損リスクを低減する技術が説明される。
【0028】
図1は、第1実施形態のギア装置(回転体)100の概略的な断面図である。
図1を参照して、ギア装置100が説明される。
【0029】
図1は、ギア装置100と、相手部材(被回転体)CPMと、を示す。ギア装置100は、相手部材CPMに連結される。ギア装置100は、出力軸OPX周りの回転力を出力し、相手部材CPMを回転させてもよい。代替的に、相手部材CPMは、ギア装置100を固定するために用いられてもよい。
【0030】
ギア装置100は、3つの伝達歯車201(
図1は、3つの伝達歯車201のうち1つを示す)と、キャリア300と、シール部材400と、を備える。3つの伝達歯車201それぞれは、出力軸OPXに平行な伝達軸TAX周りに回転する。本実施形態において、ギアは、伝達歯車201によって例示される。
【0031】
キャリア300は、端面311と、内縁面312と、を含む。端面311は、出力軸OPXに直交する仮想平面PPNに沿う。シール部材400は、端面311と相手部材CPMとによって挟まれる。
図1に関して、仮想平面PPNは、端面311とシール部材400との境界に描かれている。
【0032】
3つの伝達歯車201が収容される収容空間313は、キャリア300に形成される。収容空間313は、端面311から窪む領域である。内縁面312は、端面311上で収容空間313の輪郭を形成する。3つの伝達歯車201は、共通の入力ギア(図示せず)と収容空間313内で噛み合う。したがって、3つの伝達歯車201及び入力ギアを潤滑するための潤滑剤も収容空間313に充填される。シール部材400は、潤滑剤の漏出を防止する。
【0033】
図2は、キャリア300の概略的な正面図である。
図1及び
図2を参照して、キャリア300が説明される。
【0034】
図2は、第1仮想円FPCと、3つの第2仮想円SPCと、出力軸OPXと、3つの伝達軸TAXと、を示す。第1仮想円FPC及び3つの第2仮想円SPCは、端面311上に描かれている。第1仮想円FPCの中心は、出力軸OPXに合致する。3つの第2仮想円SPCの中心は、3つの伝達軸TAXにそれぞれ合致する。出力軸OPXと3つの伝達軸TAXとを結ぶ線分(図示せず)は、第1仮想円FPCを略等分割する。3つの第2仮想円SPCは、第1仮想円FPCに部分的に重なる。
【0035】
内縁面312が、端面311上で描く輪郭は、3つの第1弧状輪郭FACと、3つの第2弧状輪郭SACと、を含む。3つの第1弧状輪郭FAC及び3つの第2弧状輪郭SACは交互に並び、出力軸OPX及び3つの伝達軸TAXを取り囲む。3つの第1弧状輪郭FACそれぞれは、第1仮想円FPCに沿う。3つの第2弧状輪郭SACのうち1つは、3つの第2仮想円SPCのうち1つに沿う。3つの第2弧状輪郭SACのうち他のもう1つは、3つの第2仮想円SPCのうち他のもう1つに沿う。3つの第2弧状輪郭SACのうち残りの1つは、3つの第2仮想円SPCのうち残りの1つに沿う。
【0036】
図3は、キャリア300の概略的な正面図である。
図2及び
図3を参照して、キャリア300が更に説明される。
【0037】
図3は、3つの第1弧状輪郭FAC及び3つの第2弧状輪郭SACによって囲まれた収容空間313内に配置された3つの伝達歯車201を示す。3つの伝達歯車201は、
図2を参照して説明された3つの第2仮想円SPCによって囲まれる円形領域内で、3つの伝達軸TAX周りにそれぞれ回転する。
【0038】
図3は、入力ギアIPGを示す。入力ギアIPGの回転軸は、出力軸OPXに一致する。入力ギアIPGは、3つの伝達歯車201に噛み合う。入力ギアIPGが、出力軸OPX周りに回転すると、3つの伝達歯車201は、3つの伝達軸TAX周りにそれぞれ回転する。
【0039】
図4は、シール部材400の概略的な正面図である。
図1及び
図4を参照して、シール部材400が説明される。
【0040】
シール部材400は、シール基部410と、シール環部420と、を含む。シール基部410は、外周縁411と内周縁412とを含む。外周縁411は、端面311の外形輪郭に沿う。したがって、外周縁411は、略円形である。外周縁411によって囲まれた内周縁412は、内縁面312が端面311上で描く輪郭に沿う。シール基部410は、シール環部420よりも高い剛性を有する材料から形成される。シール基部410は、内周縁412から外周縁411に向けて広がる金属板であってもよい。代替的に、シール基部410は、硬質樹脂から形成されてもよい。本実施形態の原理は、シール基部410に用いられる特定の材料に限定されない。
【0041】
図4に示される如く、シール基部410には、多数の貫通孔413が形成される。シール基部410は、端面311に当接される。シール部材400を端面311に固定するための複数の固定具は、これらの貫通孔413にそれぞれ挿通される。
図1は、複数の固定具として、2つのボルトBLTを示す。これらのボルトBLTは、相手部材CPM及びシール基部410を貫通し、端面311に形成されたネジ穴と螺合される。
【0042】
高い応力は、複数のボルトBLTの周囲において生じやすい。上述の如く、シール基部410は、比較的高い剛性を有するので、高い応力の下でも破損しにくい。ギア装置100を設計する設計者は、複数のボルトBLTの周囲で発生する最大応力を考慮して、シール基部410の材料を選択してもよい。
【0043】
図4に示される如く、シール環部420は、内周縁412に沿って配置され、閉ループを描く。シール環部420は、シール基部410よりも低い剛性を有する。たとえば、シール環部420は、ゴムから形成されてもよい。代替的に、収容空間313内の潤滑剤の漏出を防ぐのに十分なシール性能を発揮することができる他の材料から形成されてもよい。本実施形態の原理は、シール環部420に用いられる特定の材料に限定されない。
【0044】
図1に示される如く、シール環部420の環状の前縁は、相手部材CPMに圧接される。シール環部420の環状の後縁は、端面311に圧接される。したがって、潤滑剤は、収容空間313内に閉じ込められる。
【0045】
シール環部420は、内周縁412に沿って配置されるので、複数のボルトBLTの締結位置から十分に離れている。加えて、シール基部410の変形量は、僅かである。したがって、シール環部420は、複数のボルトBLTの周囲の高い応力に曝されにくい。この結果、シール環部420は、長期間に亘って、高いシール性能を維持することができる。
【0046】
<第2実施形態>
第1実施形態の原理は、様々なギア構造に適用可能である。第2実施形態において、例示的なギア構造が説明される。
【0047】
図5は、
図1に示されるA−A線に沿う概略的な断面図である。
図1、
図2及び
図5を参照して、ギア装置100が説明される。
【0048】
第1実施形態に関連して説明された如く、ギア装置100は、3つの伝達歯車201と、キャリア300と、シール部材400と、を備える。加えて、ギア装置100は、3つのクランク軸組立体200と、外筒500と、2つの主軸受501,502と、歯車部600と、を含む。3つの伝達歯車201それぞれは、3つのクランク軸組立体200それぞれの一部として用いられる。外筒500は、全体的に、円筒形状である。出力軸OPXは、外筒500の中心軸に略一致する。外筒500は、キャリア300と歯車部600とを取り囲む。外筒500が固定されるならば、キャリア300及び相手部材CPMは回転する。キャリア300が固定されるならば、外筒500は、出力軸OPX周りに回転する。2つの主軸受501,502は、キャリア300と外筒500との間に形成された環状空間に嵌め込まれる。主軸受501,502それぞれの中心は、出力軸OPXに一致する。
【0049】
外筒500は、略円筒状のケース511と、複数の内歯ピン512と、を含む。
図5に示される如く、ケース511は、複数の溝部が形成された内周面513を含む。複数の溝部は、出力軸OPXを取り囲むように、略一定の間隔で形成される。複数の溝部それぞれは、出力軸OPXに略平行である。複数の内歯ピン512は、複数の溝部にそれぞれ嵌め込まれる。したがって、複数の内歯ピン512それぞれは、ケース511によって適切に保持される。
【0050】
図5に示される如く、複数の内歯ピン512は、出力軸OPX周りに環状に略一定間隔で配置される。複数の内歯ピン512それぞれの半周面は、ケース511の内壁から出力軸OPXに向けて突出する。したがって、複数の内歯ピン512は、歯車部600と噛み合う複数の内歯として機能する。
【0051】
図1に示される如く、キャリア300は、基部321と、端板322と、を含む。基部321は、基板部323(
図1を参照)と、3つのシャフト部324(
図5を参照)と、を含む。基板部323は、第1円板部325と、第2円板部326と、を含む。第1円板部325は、第1実施形態に関連して説明された端面311及び内縁面312を含む。第1実施形態に関連して説明された収容空間313は、第1円板部325に形成される。
【0052】
第2円板部326は、第1円板部325と端板322との間に位置する。第2円板部326は、直径において、第1円板部325よりも小さい。3つのシャフト部324は、第2円板部326から端板322へ向けて延びる。
【0053】
基板部323は、出力軸OPXの延設方向において、端板322から離間する。基板部323は、端板322と略同軸である。すなわち、出力軸OPXは、基板部323及び端板322の中心軸に相当する。
【0054】
第2円板部326は、歯車部600に対向する内面327を含む。端面311は、内面327とは反対側に位置する。内面327は、端面311と略平行である。
【0055】
中央貫通孔328(
図2を参照)は、第2円板部326に形成される。中央貫通孔328は、出力軸OPXに沿って延び、収容空間313に繋がる。出力軸OPXは、中央貫通孔328の中心軸に相当する。
【0056】
3つの保持貫通孔329(
図2を参照)は、基板部323に形成される。3つの保持貫通孔329の中心は、3つの伝達軸TAXに略一致する。クランク軸組立体200の一部は、保持貫通孔329内に配置される。
【0057】
端板322は、内面381と、内面381とは反対側の外面382と、を含む。内面381は、歯車部600に対向する。内面381及び外面382は、端面311に略平行である。
【0058】
中央貫通孔373(
図1を参照)及び3つの保持貫通孔374(
図1は、3つの保持貫通孔374のうち1つを示す)は、端板322に形成される。中央貫通孔373は、出力軸OPXに沿って、内面381と外面382との間で延びる。出力軸OPXは、中央貫通孔373の中心軸に相当する。3つの保持貫通孔374それぞれは、伝達軸TAXに沿って内面381と外面382との間で延びる。伝達軸TAXは、保持貫通孔374の中心軸に相当する。クランク軸組立体200の一部は、保持貫通孔374内に配置される。端板322に形成された3つの保持貫通孔374は、基板部323に形成された3つの保持貫通孔329とそれぞれ略同軸である。
【0059】
3つのシャフト部324それぞれは、第2円板部326の内面327から端板322の内面381に向けて延びる。端板322は、3つのシャフト部324それぞれの先端面に接続される。端板322は、リーマボルト、位置決めピンや他の適切な固定技術によって、3つのシャフト部324それぞれの先端面に接続されてもよい。本実施形態の原理は、端板322と3つのシャフト部324それぞれとの間の特定の接続技術に限定されない。
【0060】
図1に示される如く、歯車部600は、第2円板部326の内面327と端板322の内面381との間に配置される。3つのシャフト部324は、歯車部600を貫通し、端板322に接続される。
【0061】
図1に示される如く、歯車部600は、2つの揺動歯車610,620を含む。揺動歯車610は、端板322と揺動歯車620との間に配置される。揺動歯車620は、基板部323と揺動歯車610との間に配置される。揺動歯車610,620は、共通の設計図面に基づいて形成されてもよい。揺動歯車610,620それぞれは、トロコイド歯車であってもよいし、サイクロイド歯車であってもよい。本実施形態の原理は、揺動歯車610,620として用いられる歯車の特定の種類に限定されない。
【0062】
揺動歯車610,620それぞれは、ケース511の内壁に向けて突出する複数の外歯630(
図5を参照)を含む。クランク軸組立体200が、伝達軸TAX周りに回転すると、揺動歯車610,620は、複数の外歯630を複数の内歯ピン512に噛み合わせながら、ケース511内で周回移動(すなわち、揺動回転)する。この間、揺動歯車610,620の中心は、出力軸OPX周りを周回することとなる。キャリア300又は外筒500の回転は、揺動歯車610,620の揺動回転によって引き起こされる。
【0063】
中央貫通孔611は、揺動歯車610の中心に形成される。中央貫通孔621は、揺動歯車620の中心に形成される。中央貫通孔611は、端板322の中央貫通孔373と揺動歯車620の中央貫通孔621とに連通する。中央貫通孔621は、第2円板部326の中央貫通孔328と揺動歯車610の中央貫通孔611とに連通する。
【0064】
図5に示される如く、3つの円形貫通孔612が、揺動歯車610に形成される。同様に、3つの円形貫通孔が、揺動歯車620に形成される。揺動歯車610の円形貫通孔612及び揺動歯車620の円形貫通孔は、基板部323及び端板322の保持貫通孔329,374と協働して、クランク軸組立体200が収容される収容空間を形成する。
【0065】
3つの台形貫通孔613(
図1は、3つの台形貫通孔613のうち1つを示す)は、揺動歯車610に形成される。3つの台形貫通孔623(
図5を参照)は、揺動歯車620に形成される。キャリア300のシャフト部324は、台形貫通孔613,623を貫通する。台形貫通孔613,623の大きさは、シャフト部324と干渉しないように定められる。
【0066】
伝達歯車201に加えて、3つのクランク軸組立体200それぞれは、クランク軸210と、2つのジャーナル軸受221,222と、2つのクランク軸受231,232と、を含む。クランク軸210は、第1ジャーナル211と、第2ジャーナル212と、第1偏心部213と、第2偏心部214と、を含む。第1ジャーナル211は、伝達軸TAXに沿って延び、端板322の保持貫通孔374に挿入される。第2ジャーナル212は、第1ジャーナル211とは反対側で、伝達軸TAXに沿って延び、基板部323の保持貫通孔329に挿入される。伝達歯車201は、第2ジャーナル212に取り付けられる。
【0067】
ジャーナル軸受221は、第1ジャーナル211と保持貫通孔374を形成する端板322の内壁との間の環状空間に嵌め込まれる。この結果、第1ジャーナル211は、端板322に連結される。ジャーナル軸受222は、第2ジャーナル212と保持貫通孔329を形成する基板部323の内壁との間の環状空間に嵌め込まれる。この結果、第2ジャーナル212は、基板部323に連結される。したがって、キャリア300は、クランク軸組立体200を支持することができる。
【0068】
第1偏心部213は、第1ジャーナル211と第2偏心部214との間に位置する。第2偏心部214は、第2ジャーナル212と第1偏心部213との間に位置する。クランク軸受231は、第1偏心部213と円形貫通孔612を形成する揺動歯車610の内壁との間の環状空間に嵌め込まれる。この結果、揺動歯車610は、第1偏心部213に取り付けられる。クランク軸受232は、第2偏心部214と円形貫通孔を形成する揺動歯車620の内壁との間の環状空間に嵌め込まれる。この結果、揺動歯車620は、第2偏心部214に取り付けられる。
【0069】
第1ジャーナル211は、第2ジャーナル212と略同軸であり、伝達軸TAX周りに回転する。第1偏心部213及び第2偏心部214それぞれは、円柱状に形成され、伝達軸TAXから偏心している。第1偏心部213及び第2偏心部214それぞれは、伝達軸TAXに対して偏心回転し、揺動歯車610,620に揺動回転を与える。キャリア300が、相手部材CPMに固定されているならば、揺動歯車610,620は、外筒500の複数の内歯ピン512と噛み合うので、揺動歯車610,620の揺動回転は、出力軸OPX周りの外筒500の回転運動に変換される。外筒500が固定されるならば、揺動歯車610,620の揺動回転は、第1ジャーナル211及び第2ジャーナル212からキャリア300へ伝達される出力軸OPX周りの回転力に変換される。この結果、キャリア300は、出力軸OPX周りに回転する。
【0070】
<第3実施形態>
ギア装置を設計する設計者は、キャリア内に突出し、キャリアの端面に対するシール部材の相対的な位置を保つ保持部を形成してもよい。第3実施形態において、例示的な保持部が説明される。
【0071】
図6は、第3実施形態のシール部材400Aの概略的な背面図である。
図3及び
図6を参照して、シール部材400Aが説明される。第1実施形態の説明は、第1実施形態と同一の符号が付された要素に援用される。
【0072】
シール部材400Aは、シール基部410Aと、シール環部420Aと、2つの突起430と、を含む。第1実施形態と同様に、シール基部410Aは、外周縁411を含む。第1実施形態の説明は、外周縁411に援用される。
【0073】
シール基部410Aは、外周縁411によって囲まれた内周縁412Aを含む。内周縁412Aによって囲まれる領域は、形状において、第1実施形態に関連して説明された内周縁412によって囲まれた領域とは相違する。シール基部410Aの内周縁412Aの形状は、キャリア(図示せず)に形成された収容空間(図示せず)に略合致するように決定されればよい。したがって、本実施形態の原理は、内周縁412Aによって囲まれる領域の特定の形状に限定されない。
【0074】
図6に示される如く、シール基部410Aには、多数の貫通孔413Aが形成される。第1実施形態と同様に、シール基部410Aをキャリアに固定するための固定具(図示せず:たとえば、ボルト)は、これらの貫通孔413Aに挿通される。
【0075】
図6に示される如く、シール環部420Aは、内周縁412Aに沿って配置され、閉ループを描く。シール環部420Aは、シール基部410Aよりも低い剛性を有する。たとえば、シール環部420Aは、ゴムから形成されてもよい。代替的に、キャリアに形成された収容空間(図示せず)内の潤滑剤の漏出を防ぐのに十分なシール性能を発揮することができる他の材料から形成されてもよい。本実施形態の原理は、シール環部420Aに用いられる特定の材料に限定されない。
【0076】
2つの突起430は、シール基部410Aから背面側に突出し、キャリア内に挿入される。2つの突起430は、上述の保持部の一例である。
【0077】
図7は、キャリア300Aと相手部材CPMとによって挟まれたシール部材400Aの概略的な断面図である。
図1及び
図7を参照して、シール部材400Aが更に説明される。
【0078】
キャリア300Aは、2つの突起430に対応して端面311から穿設された係合穴314(
図7は、2つの突起430のうち一方に対応する係合穴314のみを示す)においてのみ、
図1を参照して説明されたキャリア300と相違する。したがって、キャリア300に関する説明は、係合穴314を除いて、キャリア300Aに援用されてもよい。
【0079】
組立時において、2つの突起430は、2つの係合穴314にそれぞれ挿入される。この結果、シール部材400Aと端面311との間に位置関係は、適切に保たれる。その後、シール部材400Aは、キャリア300Aと相手部材CPMとによって圧縮されてもよい。最後に、固定具(図示せず)が、相手部材CPM及びシール部材400Aに挿通され、キャリア300Aに形成されたネジ穴(図示せず)に螺合される。
【0080】
図8は、改良された突起構造440の概略的な断面図である。
図8を参照して、改良された突起構造440が説明される。
【0081】
突起430は、ゴム層441によって覆われてもよい。ゴム層441がもたらす大きな摩擦力の結果、突起430は、係合穴(図示せず)から離脱しにくくなる。
【0082】
<第4実施形態>
第3実施形態の保持部は、キャリアへの係合穴の穿設が必要とされる。第4実施形態において、キャリアへの係合穴の穿設を必要としない例示的な保持部が説明される。
【0083】
図9は、第4実施形態のシール部材400Bの概略的な背面図である。
図9を参照して、シール部材400Bが説明される。第3実施形態の説明は、第3実施形態と同一の符号が付された要素に援用される。
【0084】
第3実施形態と同様に、シール部材400Bは、シール基部410Aを備える。第3実施形態の説明は、シール基部410Aに援用される。
【0085】
シール部材400Bは、シール環部420Bと、3つの爪部450と、を更に備える。3つの爪部450は、シール基部410Aと一体的である。シール部材400Bを製造する製造者は、金属板を打ち抜き加工し、シール基部410Aと3つの爪部450とを一体的に形成してもよい。製造者は、打ち抜き加工の後、3つの爪部450を、キャリア(図示せず)に形成された3つの第1弧状輪郭(図示せず)においてそれぞれ折り曲げてもよい。3つの爪部450は、上述の保持部の一例である。
【0086】
図9に示される如く、シール環部420Bは、内周縁412Aに沿って配置され、閉ループを描く。シール環部420Bは、シール基部410Aよりも低い剛性を有する。たとえば、シール環部420Bは、ゴムから形成されてもよい。代替的に、キャリア(図示せず)の収容空間(図示せず)内の潤滑剤の漏出を防ぐのに十分なシール性能を発揮することができる他の材料から形成されてもよい。本実施形態の原理は、シール環部420Bに用いられる特定の材料に限定されない。
【0087】
図10は、キャリア300と相手部材CPMとによって挟まれたシール部材400Bの概略的な断面図である。
図10を参照して、シール部材400Bが更に説明される。
【0088】
図10は、3つの爪部450のうち1つを示す。爪部450は、収容空間313内に挿入される。シール環部420Bは、爪部450を全体的に被覆し、キャリア300の内縁面312に当接する。シール環部420Bが、ゴム材から形成されるならば、シール環部420Bと内縁面312との間に高い摩擦力が発生する。この結果、シール部材400Bと端面311との間に位置関係は、適切に保たれる。その後、シール部材400Bは、キャリア300と相手部材CPMとによって圧縮されてもよい。最後に、固定具(図示せず:たとえば、ボルト)が、相手部材CPM及びシール部材400Bに挿通され、キャリア300に形成されたネジ穴(図示せず)に螺合される。
【0089】
<第5実施形態>
第4実施形態の爪部は、第1弧状輪郭において屈曲される。代替的に、爪部は、第2弧状輪郭において屈曲されてもよい。第5実施形態において、第2弧状輪郭で屈曲された爪部を有する例示的なシール部材が説明される。
【0090】
図11は、第5実施形態のシール部材400Cの概略的な背面図である。
図11を参照して、シール部材400Cが説明される。第4実施形態の説明は、第4実施形態と同一の符号が付された要素に援用される。
【0091】
第4実施形態と同様に、シール部材400Cは、シール基部410Aと、シール環部420Bと、を備える。第4実施形態の説明は、これらの要素に援用される。
【0092】
シール部材400Cは、3つの爪部450Bと、を更に備える。爪部450Bは、シール基部410Aと一体的である。シール部材400Cを製造する製造者は、金属板を打ち抜き加工し、シール基部410Aと3つの爪部450Bとを一体的に形成してもよい。製造者は、打ち抜き加工の後、3つの爪部450Bを、キャリア(図示せず)に形成された3つの第2弧状輪郭(図示せず)においてそれぞれ折り曲げてもよい。
【0093】
上述の様々な実施形態の原理は、ギア装置に対する要求に適合するように、組み合わされてもよい。たとえば、ギア装置は、3未満のクランク軸を有してもよい。代替的に、ギア装置は、3を超えるクランク軸を有してもよい。ギア装置は、1つの揺動歯車を有してもよい。代替的に、ギア装置は、2を超える揺動歯車を有してもよい。
【符号の説明】
【0095】
100・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ギア装置
201・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・伝達歯車
300,300A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・キャリア
311・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・端面
312・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・内縁面
313・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・収容空間
314・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・係合穴
400,400A,400B,400C・・・・・・・・・・シール部材
410,410A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シール基部
412・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・内周縁
420,420A,420B・・・・・・・・・・・・・・・シール環部
430・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・突起
441・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴム層
450,450B・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・爪部
FAC・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第1弧状輪郭
FPC・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第1仮想円
OPX・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・出力軸
PPN・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・仮想平面
SAC・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第2弧状輪郭
SPC・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第2仮想円
TAX・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・伝達軸