(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、バインダーを用いることなく不織布に機能性粉体を付与することで、機能性粉体の表面がコーティングされることなく、機能性粉体の含有量相当の効果を得ることができ、しかも、機能性粉体の脱落が起こらない不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、溶融紡糸装置の紡糸口金近傍に、圧搾空気噴射装置と粉体振り落とし装置とを配置し、紡糸口金から、溶融された熱可塑性樹脂を繊維流として水平方向に噴射するとともに、圧搾空気噴射装置から繊維流に向けて圧搾空気を噴射して、繊維流を渦状に絡み合った繊維とし、粉体振り落とし装置から、繊維に機能性粉体を振り落として絡み合わせて得られた機能性粉体を保持した不織布では、機能性粉体の表面がコーティングされることなく、機能性粉体の含有量相当の効果を得ることができ、しかも、機能性粉体の脱落が起こらないことを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布は、
溶融紡糸装置の紡糸口金近傍に、圧搾空気噴射装置と粉体振り落とし装置とを配置し、
紡糸口金から、溶融された熱可塑性樹脂を繊維流として水平方向に噴射するとともに、
圧搾空気噴射装置から繊維流に向けて圧搾空気を噴射して、繊維流を渦状に絡み合った繊維とし、
粉体振り落とし装置から、繊維に機能性粉体を振り落として絡み合わせて得られたことを特徴とする。
【0009】
第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布において、機能性粉体の保持量は、繊維100重量部に対して50重量部以上であることが好ましい。
【0010】
第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布において、繊維は平均繊維径が10μm以下であり、平均繊維長が150mm以上であることが好ましい。
【0011】
第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布において、機能性粉体は、比重が7.0以下、かつ、平均粒子径が60μm以下の粉末、顆粒又は多孔質顆粒であることが好ましい。
【0012】
本発明の機能性粉体を保持した不織布の製造方法は、
溶融紡糸装置の紡糸口金近傍に、圧搾空気噴射装置と粉体振り落とし装置とを配置し、
紡糸口金から、溶融された熱可塑性樹脂を繊維流として水平方向に噴射する工程、
圧搾空気噴射装置から繊維流に向けて圧搾空気を噴射して、繊維流を渦状に絡み合った繊維とする工程、及び、
粉体振り落とし装置から、繊維に機能性粉体を振り落として絡み合わせる工程
を含むことを特徴とする。
【0013】
第二の本発明の機能性粉体を保持した不織布は、
熱可塑性樹脂の繊維からなる不織布であって、
機能性粉体を保持し、機能性粉体の表面積の50%以上が露出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布は、機能性粉体が繊維の隙間にバインダーを使用しない状態で保持されているため、機能性粉体の表面を覆うものがなく、従来の機能性粉体を練り込む方法やバインダーを用いる方法で製造された不織布と比較して、機能性粉体が機能する表面積が大きい。これにより、機能性粉体の性能を落とすことなく、含有量相当の効果を得ることができる。
本発明の機能性粉体を保持した不織布の製造方法によれば、第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布を好適に製造することができる。
第二の本発明の機能性粉体を保持した不織布は、機能性粉体の表面積の50%以上が露出しているため、従来の機能性粉体を練り込む方法やバインダーを用いる方法で製造された不織布と比較して、機能性粉体が機能する表面積が大きい。これにより、機能性粉体の性能を落とすことなく、含有量相当の効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布>
以下、第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布について、詳細に説明する。
第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布は、溶融紡糸装置の紡糸口金近傍に、圧搾空気噴射装置と粉体振り落とし装置とを配置し、紡糸口金から、溶融された熱可塑性樹脂を繊維流として水平方向に噴射するとともに、圧搾空気噴射装置から繊維流に向けて圧搾空気を噴射して、繊維流を渦状に絡み合った繊維とし、粉体振り落とし装置から、繊維に機能性粉体を振り落として絡み合わせて得られたことを特徴とする。
【0017】
第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布は、渦状に絡み合った繊維で構成される不織布であり、繊維間に機能性粉体がバインダーを使用しない状態で保持され、機能性粉体の脱落が起こらないことを特徴とする。溶融紡糸装置の紡糸口金から噴射された熱可塑性樹脂は、紡糸口金近傍に配置された圧搾空気噴射装置からの圧搾空気により、数十から数百本の繊維流となり、且つ、それらの繊維流が渦状に絡み合うことを特徴とする。
【0018】
第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布において、機能性粉体は、紡糸口金近傍に配置された粉体振り落とし装置から繊維流が渦状に絡み合った繊維に振り落とされることで、バインダーを使用しなくても繊維の隙間に物理的に保持されるとともに、繊維の隙間から脱落しないことを特徴とする。なお、熱可塑性樹脂の種類により静電気的力が加わり機能性粉体の保持力が強化される場合もある。
【0019】
図1は、第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布の製造に使用される溶融紡糸装置、圧搾空気噴射装置及び粉体振り落とし装置の一例を示す模式図である。
図1において、熱可塑性樹脂の繊維(以下、長繊維ともいう)はメルトブロー法により作製される。溶融紡糸装置1内に設置したヒーター(図示せず)で繊維となる熱可塑性樹脂2を溶融させ、溶融押出機4の回転スクリュー(図示せず)により紡糸口金5から水平方向に噴射する。噴射された熱可塑性樹脂2は、その後、圧搾空気噴射装置6の圧搾空気噴射口7から噴射された高速の圧搾空気8を当てることで、その衡撃により分割され、その後空気の気流に乗ることで延伸され、数十〜数百本の長繊誰となる。その際、圧搾空気8の気流で押し出された長繊維は空気抵抗を受けて、カルマン渦状に移動する。そのため、長繊維同士は平行に移動するのではなく、渦状に絡み合いながら移動する。なお、本発明において、長繊維とは見かけの平均繊維長が150mm以上のものと定義する。
【0020】
紡糸口金5の数は、1個に限定されず、複数個であってもよい。生産性の観点からは、紡糸口金の数は複数個であることが好ましい。一方、押出圧を高くしてより細い繊維を作製することができるという観点からは、紡糸口金の数は1個であることが好ましい。
【0021】
圧搾空気噴射装置6は、噴射された熱可塑性樹脂2に高速の圧搾空気8を当てるために使用される。圧搾空気噴射口7の位置は紡糸口金5の周囲であれば特に限定されないが、紡糸口金5から噴射された熱可塑性樹脂2は重力により下方向に落下するため、紡糸口金5の高さより下部分に設置されることが望ましい。紡糸口金5が複数個ある場合等は、圧搾空気噴射口7を複数個設置してもよい。
【0022】
圧搾空気8の空圧は、特に限定されないが、通常0.1Mpa以上である。圧搾空気の空圧を高くすると、圧搾空気の速度は速くなる。なお、高粘度の熱可塑性樹脂を用いる揚合、空圧0.1Mpaとすると繊維径を細くすることが難しいため、一般的には0.2Mpa以上に設定することが好ましい。
【0023】
圧搾空気8の温度は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂の融点〜分解点の温度であることが好ましく、分解点−30℃までであることがより好ましい。圧搾空気の温度が熱可塑性樹脂の融点未満であると、熱可塑性樹脂の塊(ショット)が発生しやすくなったり、平均繊維径が10μmを超えて太くなることがあり、熱可塑性樹脂の分解点の温度を超えると、熱可塑性樹脂の一部が分解し歩留が悪くなり、またショットが発生しやすくなることがある。
【0024】
熱可塑性樹脂2としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、イソフタル酸及びフタル酸等の重合物、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、これらの共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの熱可塑性樹脂の中では、静電気的力により機能性粉体の保持力を強化することができるという観点から、ポリプロピレン等が好ましい。
【0025】
熱可塑性樹脂2の粘度は、特に限定されないが、MFRが10以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。ここでいうMFR(メルトフローレート)とは、押出式プラストメーターで、230℃、2.16kgで加圧し10分間で押し出される樹脂量(単位はg)のことを指す。MFRが10未満であると、粘度が高いため繊維になりにくく、繊維になった場合でも平均繊維径が10μmを超えて太くなる傾向にある。
【0026】
熱可塑性樹脂2は、紡出性の向上や繊維の機能強化目的のため、慣用的に用いられる添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の安定剤や、帯電防止剤、難燃剤、充填材、香料、蛍光増白剤、湿潤剤、可塑剤、増粘剤、分散剤、発泡剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、10μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。一般的に繊維が同じ重量の場合、平均繊維径が細いほうが、機能性粉体の保持量を多くすることができるためである。平均繊維径が10μmを超えると、紡糸口金5から噴射される繊維の数が減少するため、機能性粉体の保持が困難となることがある。なお、本発明において平均繊維径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率3000倍の写真を撮り、繊維50本の繊維径を計測した結果の平均値をいう。
平均繊維径は、熱可塑性樹脂の粘度、圧搾空気の空圧、温度等のバランスを調整することで調整することができる。一般的に、熱可塑性樹脂の粘度が低いほど、また、圧搾空気8の空圧と温度が高いほど、平均繊維径は小さく(細く)なる傾向を示す。
【0028】
繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、150mm以上であることが好ましく、200mm以上であることがより好ましい。平均繊維長が150mm未満であると、繊維の捕集にバラツキが生じやすくなったり、繊維自身が機能性粉体を保持しにくくなることがある。
【0029】
第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布を構成する繊維は、2種以上の熱可塑性樹脂を混合して得られた繊維であってもよいし、同一の熱可塑性樹脂から得られた繊維であって平均繊維径の異なる2種以上を混合したものであってもよいし、熱可塑性樹脂の種類及び平均繊維径がいずれも異なる2種以上の繊維を混合したものであってもよい。その際、複数のメルトブロー装置を用いてもよく、メルトブロー法にエレクトロスピニング法を併用してもよい。嵩高性が必要な場合は、50%未満の短繊維を混合することも可能である。
【0030】
機能性粉体9としては、特に制限されないが、例えば、活性炭、リン酸カルシウム系化合物、二酸化チタン、ゼオライト、シリカゲル、モレキュラーシーブ、無機質の脱臭剤、無機質の抗菌剤又はこれらの混合物や、色付としての顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
機能性粉体の比重は、特に限定されないが、7.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。機能性粉体の比重が7.0を超えると、機能性粉体の保持量が少なくなり、機能性粉体が有する効果を充分に得られないことがある。
【0032】
機能性粉体の平均粒子径は、特に限定されないが、100μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が100μmを超えると、機能性粉体の保持量が少なくなり、機能性粉体が有する効果を充分に得られないことがある。
【0033】
機能性粉体は、振り落とすという観点から、粉末、顆粒又は多孔質顆粒であることが好ましい。ここで、粉末とは固形物を削って出来た粉体や、モノマーの重合反応など化学合成により作製される粉体を、顆粒とは粉末を集め成型した粉体を、多孔質顆粒とは顆粒成型時に意図的に気泡を形成して作製した粉体をそれぞれ示す。
【0034】
機能性粉体9は、粉体振り落とし装置10の先端のノズルから振動によって振り落とされる。振り落とし量は、振動数とノズル径とを変化させることでコントロールすることができる。粉体振り落とし装置10の設置場所は、振り落とされた機能性粉体が圧搾空気8の流れに乗る場所であればよく、一般的には圧搾空気噴射口7より後流側が好ましい。
【0035】
機能性粉体9の保待量は、特に限定されないが、繊維100重量部に対して50重量部以上であることが好ましく、100重量部以上であることがより好ましい。機能性粉体の保持量が50重量部未満であると、機能性粉体の機能が十分に発揮されないことがある。
【0036】
本発明の機能性粉体を保持した不繊布は、紡糸口金5の上部近傍に機能性粉体を所定量振り落とす粉体振り落とし装置10を設置し、繊維が渦状に絡み合う際に機能性粉体を繊維に所定量振り落とした後、巻取りロール11等を用いて、必要な重量分回転させて捕集することで得られる。その後、表面に付着した余分な機能性粉体を振動装置(図示せず)で払い落とす。これらの操作を行うことにより、繊維間にバインダーを使用しない状態で物理的に機能性粉体が保持されるので、機能性粉体の脱落が起こらない。
【0037】
<本発明の機能性粉体を保持した不織布の製造方法>
本発明の機能性粉体を保持した不織布の製造方法は、
溶融紡糸装置の紡糸口金近傍に、圧搾空気噴射装置と粉体振り落とし装置とを配置し、
紡糸口金から、溶融された熱可塑性樹脂を繊維流として水平方向に噴射する工程、
圧搾空気噴射装置から繊維流に向けて圧搾空気を噴射して、繊維流を渦状に絡み合った繊維とする工程、及び、
粉体振り落とし装置から、繊維に機能性粉体を振り落として絡み合わせる工程
を含むことを特徴とする。
本発明の機能性粉体を保持した不織布の製造方法に用いられる溶融紡糸装置、圧搾空気噴射装置、粉体振り落とし装置、熱可塑性樹脂、繊維、機能性粉体等については、第一の本発明の機能性粉体を保持した不織布と同様である。
【0038】
<第二の本発明の機能性粉体を保持した不織布>
第二の本発明の機能性粉体を保持した不織布は、
熱可塑性樹脂の繊維からなる不織布であって、
機能性粉体を保持し、機能性粉体の表面積の50%以上が露出していることを特徴とする。
第二の本発明の機能性粉体を保持した不織布は、例えば、本発明の機能性粉体を保持した不織布の製造方法により製造することができる。
【0039】
第二の本発明の機能性粉体を保持した不織布において、機能性粉体の表面積のうち露出している面積は、50%以上である限り特に限定されないが、70%以上であることが好ましい。露出している面積が50%未満であると、従来の機能性粉体を練り込む方法やバインダーを用いる方法で製造された不織布と同様に機能性粉体の表面がコーティングされているため、機能性粉体の含有量相当の効果を得ることができないことがある。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂であるポリプロピレン樹脂(ポリミレイ社製、HP461X、MFR1100)を用い、機能性粉体として活性炭(大阪ガスケミカル社製、活性炭FP−3、平均粒子径58.7μm、比重2.0〜2.2g/ml)を用いた。ポリプロピレン樹脂の繊維化には溶融紡糸装置を用い、さらに溶融紡糸装置の紡糸口金近傍に所定量の機能性粉体を振り落とす粉体振り落とし装置を配置した。溶融紡糸装置の紡糸ロ金からポリプロピレン樹脂を噴射し、圧搾空気の空圧を0.3Mpa、温度を260℃とすることで平均繊維径1.2μm、平均繊維長200mmのポリプロピレン繊維を作製した。粉体振り落し装置から振り落す活性炭の重量は、紡糸口金から噴射されるポリプロピレン樹脂の約1.4倍に設定し、振り落としをすることで活性炭を保持した不織布を作製した。
その後、軽い振動を与えて表面に付着した余分な活性炭を振り落とし、最終的に、ポリプロピレン繊維に対し、重量比で1.3倍の量の活性炭を保持した不織布を得た。活性炭の表面積のうち露出している面積は、80%であった。
【0042】
(実施例2)
活性炭を振り落とす量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、最終的に、ポリプロピレン繊維に対し、重量比で0.6倍の量の活性炭を保持した不織布を得た。
【0043】
(実施例3)
活性炭を振り落とす量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、最終的に、ポリプロピレン繊維に対し、重量比で0.2倍の量の活性炭を保持した不織布を得た。
【0044】
(参考例1)
活性炭を振り落とさなかったこと以外、実施例1と同様にして、活性炭を保持していないポリプロピレン繊維のみからなる不織布を得た。
【0045】
(比較例1)
活性炭を振り落とさなかったこと以外、実施例1と同様にして、活性炭を保持していないポリプロピレン繊維のみからなる不織布を得た。実施例1で用いた活性炭をバインダーとなるアクリル溶液(DIC社製、DICNAL E8300K、固形分45%)に分散させ、ポリプロピレン繊維のみからなる不織布にスプレーにて含浸させ、100℃で30分乾燥することにより、活性炭をバインダーで保持させた不織布を作製した。含浸量を調整することで、ポリプロピレン繊維の量に対し、重量比で1.3倍の量の活性炭を保持した不織布を得た。なお、その際使用したバインダーのアクリル樹脂固形分重量はポリプロピレン繊維の重量比1.5倍の量であった。活性炭の表面積のうち露出している面積は、45%であった。
【0046】
(比較例2)
比較例1と同様にして、ポリプロピレン繊維の量に対し、重量比で1.3倍の量の活性炭を保持した不織布を得た。なお、その際使用したバインダーのアクリル樹脂固形分重量はポリプロピレン繊維の重量比1.0倍の量であった。
【0047】
(比較例3)
実施例1で用いたポリプロピレン樹脂と活性炭とを溶融紡糸装置に投入し、紡糸口金からポリプロピレン樹脂と活性炭を同時に噴射することで、活性炭をあらかじめ練り込んだポリプロピレン繊維を作製した。活性炭の量がポリプロピレン繊維の量に対し重量比で1.3倍になるよう調整したが、活性炭の量が多いためポリプロピレン樹脂の流動性が悪く、安定して噴射することが出来ず作製することが出来なかった。諸条件を調整した結果、作製可能な活性炭の量である、ポリプロピレン繊維の量に対し0.2倍の量の活性炭を保持した、活性炭をあらかじめ練り込んだ不織布を得た。活性炭の表面積のうち露出している面積は、20%であった。
【0048】
(比較例4)
活性炭そのものの性能評価として、実施例1で用いた活性炭を用意した。
【0049】
(実施例4)
熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂(サンアロマー社製、PLBOOA)を用い、圧搾空気の空圧を0.2Mpa、温度を240℃としたこと以外、実施例1と同様にして平均繊維径17.7μmのポリプロピレン繊維を作製した。また、活性炭を振り落とす量は、繊維の量に対し活性炭を重量比で比較例1と同等量となる1.3倍の量になるよう調整したが、得られた不織布の活性炭の量は重量比0.8倍であった。
【0050】
(比較例5)
市販のポリプロピレン短繊維(ダイワボウポリテック社製、PN2.2dtex×76mm、平均繊維径17.7μm、平均繊維長76mm)を用い、カード機でポリプロピレン繊維を紡出することでポリプロピレン繊維ウエブを作製した。そのウエブに実施例1で用いた活性炭を振り落とし、ニードルパンチ法で繊維を絡めることによりバインダーを使用せずに不織布を作製した。活性炭の量を繊維の量に対し重量比で比較例1と同等量となる1.3倍の量になるよう調整したが、構造的に保持することができず、0.5倍の量しか保持することができなかった。
【0051】
(試験1)機能性粉体の効果確認
活性炭は、においを吸収するという特徴がある。そこで、三大悪臭の一つとされるアンモニアを用いて、アンモニア吸着量を測定して比較することで効果確認を行った。具体的には、におい袋(250mm角)に試験片(100mm角)を入れ、調整済の臭気成分ガス(アンモニア濃度100ppm)を3L入れ、2時間後及び24時間後のアンモニア成分濃度を検知管により測定した。各測定数値から、同時間経過後の試験片を入れていないにおい袋の測定数値を減算し、初発濃度からのアンモニア吸着量を算出した結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
参考例1の結果から、活性炭を保持しない場合であっても、24時間後にはアンモニアの一部がポリプロピレン繊維に吸着されるが、本実験に大きく影響する値ではないことが分かる。
実施例1の結果と比較例1の結果とを比較すると、実施例1の不織布はバインダーを使用した比較例1の不織布よりもアンモニア吸着量が多く、バインダーの使用により機能性粉体の効果が半減することが分かる。
実施例1のアンモニア吸着量は、比較例4のアンモニア吸着量と略同等の数値であることから、本発明の機能性粉体を保持した不織布は活性炭の含有量相当の効果があることが分かる。
実施例3の結果と比較例3の結果とを比較すると、実施例3の不織布は、あらかじめ機能性粉体を練り込んだ比較例3の不繊布よりもアンモニアの吸着量が多いことが分かる。
以上のことから、本発明の機能性粉体を保持した不織布は、機能性粉体の性能を落とすことなく、機能性粉体の含有量相当の効果があることから、機能性粉体の効果を十分発揮させていることが分かる。
【0054】
(試験2)機能性粉体の脱落試験
20cm角の試料を両手に持ち、1秒で上下に約20cm振る動作を繰返し、10回後、20回後及び30回後の重量を測定した。初期重量からの減少量から振り落とされた活性炭の割合を算出した結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
実施例1の結果から、本発明の機能性粉体を保持した不織布では、機能性粉体である活性炭の脱落が起こらないことが分かる。同様に、比較例1のバインダーを用いた不織布や、比較例3の活性炭を練り込んだ不織布でも、活性炭の脱落が起こらないことが分かる。また、比較例2では活性炭の脱落が起きていることから、比較例1のバインダー量は適量であることが分かる。
実施例4の結果から、平均繊維径が10μmを超え、17.7μmである繊維で構成された不織布は、活性炭の保持量が少ないことが分かる。
比較例5より、平均繊維径が10μmを超え、且つ、平均繊維長が150mm未満の短繊維で構成されたニードルパンチ不織布は、活性炭の保持量が少ないだけでなく脱落も起きることが分かる。
以上の結果から、本発明の機能性粉体を保持した不織布は、繊維量に対して重量比で同量以上の機能性粉体をバインダーを使用することなく保持することができ、機能性粉体の含有量相当の効果を示していることから機能性粉体の機能を最大限に発揮し、且つ、機能性粉体の脱落も起こらない不織布であることが分かる。