特許第6779761号(P6779761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6779761-プラント運転装置 図000002
  • 特許6779761-プラント運転装置 図000003
  • 特許6779761-プラント運転装置 図000004
  • 特許6779761-プラント運転装置 図000005
  • 特許6779761-プラント運転装置 図000006
  • 特許6779761-プラント運転装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779761
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】プラント運転装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20201026BHJP
   G08B 23/00 20060101ALI20201026BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20201026BHJP
   G06F 3/0481 20130101ALI20201026BHJP
【FI】
   G05B23/02 301X
   G08B23/00 510D
   G08B25/00 510B
   G06F3/0481
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-229710(P2016-229710)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-88025(P2018-88025A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲葛▼西 良亮
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 良雄
【審査官】 牧 初
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−333185(JP,A)
【文献】 特開2010−204801(JP,A)
【文献】 米国特許第05227121(US,A)
【文献】 特開平06−266727(JP,A)
【文献】 特開2000−172327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 −23/02
G08B 23/00 −31/00
G06F 3/01
G06F 3/048−3/0489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントを複数の系統に分割したときの各系統を一括して表示し異常事象の際に警報する系統一括警報と系統ごとにこれを構成する主要な機器を表示し異常事象の際に警報する重要警報を行う運転監視補助盤と、機器状態を個別表示部に表示する端末を備えた中央運転監視盤を含み、複数の系統で構成されたプラントで異常事象が発生したときに異常発生事象を表示するプラント運転装置であって、
複数の系統で構成されたプラントで異常事象が発生したことを検知する複数の検知手段と、該検知手段の出力により前記運転監視補助盤の大型表示盤の画面表示内容を、異常事象を示す前記系統一括警報および前記重要警報の画面表示内容に切り替える切替手段と、前記大型表示盤の前記系統一括警報および前記重要警報についての画面表示内容を、警報の関連性を樹状図に整理して表示する画面表示制御手段を備え、前記画面表示制御手段は、異常事象を示す警報の関連性を樹状図に整理して表示するとともに、異常事象が発生した部位とその関連する部位を強調表示することを特徴とするプラント運転装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラント運転装置であって、
前記大型表示盤には、前記プラントの系統と、当該系統を構成する機器と、異常発生事象を示す警報の名称を関連付けて樹状図に強調表示することを特徴とするプラント運転装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラント運転装置であって、
前記大型表示盤には、前記プラントの重要警報と、原因警報と、その区分が、樹状図に整理して表示されることを特徴とするプラント運転装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプラント運転装置であって、
前記大型表示盤には、警報窓の配置・大きさ・発生時の色などを、発生事象に応じて動的に変えることを特徴とするプラント運転装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプラント運転装置であって、
前記大型表示盤には、警報発生時刻から一定期間、確認もしくは対応操作が実施されていない警報を目立つ表示に変えることを特徴とするプラント運転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電・火力発電・化学プラントなど各種プラントのプラント運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電・火力発電・化学プラントなどの各種プラントにおいては、その監視制御のために現場のプラントに対して中央建屋内に監視制御のためのプラント運転装置(中央制御室制御盤)を設けている。運転員はプラント運転装置に表示されたプラント全体のプロセス値(温度や圧力、流量など)や、警報、機器運転状態を一括して確認するとともに、適宜プラントに対して制御信号を与えてプラントを制御している。
【0003】
この場合に、プラントのプロセス値(温度や圧力、流量など)、警報、機器運転状態などの各種情報は、複数の盤で構成されるプラント運転装置(中央制御室制御盤)の各所に適宜表示されている。例えば警報の発生状態は、プラント運転装置(中央制御室制御盤)内の運転監視補助盤(以降、大型表示盤という)の重要警報窓や系統一括警報窓、中央運転監視盤(以降、主盤という)上端末の個別警報画面のランプ表示などにて、多くの場合に音声情報と共に通知され、機器状態は大型表示盤上のプラント状態表示器、主盤上端末のプラントサマリ画面に表示され、プロセス値はパラメータ表示画面や指示計器により表示される。
【0004】
係る設備を用いて、運転員は、通常運転の場合には、主にプロセス値や、機器運転状態を監視していればよいが、警報発生によるプラントの異常状態においては、音声による通知、各種警報窓の表示内容を確認し、次いで機器運転状態を確認し、さらにはプロセス値を確認することで、一連の発生事象と原因を推定し、異常回復に向けての修復作業を行う事を短時間のうちに迫られることになる。
【0005】
プロセス値や警報表示、機器運転状態の変化から現在のプラント状態を短時間で推測するには、運転員による運転技術の熟練が必要である。特に複数の警報が同時に連続的に発生した場合、主盤モニタの複数の画面表示などを確認しつつ、プラント状態把握と対応操作に追われるため、運転員の負担が大きかった。
【0006】
従来においては、警報発生によるプラントの異常状態における運転員の判断と処理を円滑に行わせることを意図して特許文献1では、「プラント10からの監視データを入力し、異常判定手段12で異常状態を判定し、異常があれば表示装置14の個別警報表示部15に異常表示するとともに、プラントの機能を細分化した機能要素を、機能的因果関係で階層に分けて表示する機能階層表示部18を設け、機能異常判定手段16が上記異常に対応する機能要素部の機能異常を判定し、該当の機能要素部に異常を表示する。」ように構成することを提案している。
【0007】
また特許文献2では、本発明の警報表示装置は、プラントの中央制御室内の操作盤に備えられる警報窓を液晶パネルで構成した液晶パネル式警報表示器とすると共にプラントの現場機器や各種装置から検出される警報原因接点を受けて液晶パネルへ表示するコントローラとからなる。」ように構成することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−320174号公報
【特許文献2】特開平7−225888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1においては、プラントの機能を細分化した機能要素部を、機能的因果関係で階層に分けて並列表示しているが、階層表示されるのは機能要素のみであると共に表示情報が固定であるため、情報に限りがあった。また、警報窓は表示が固定のため、発生している事象と関連性が薄い警報窓が表示スペースを占有してしまっており、視認性が良くなかった。
【0010】
また特許文献2は、警報窓の液晶パネル化に関するものだが、警報の表示方式は従来方式と同様となっている。
【0011】
特にプラントの異常発生状態においては、プラント状態の類推や対応操作の判断、応答の確認を行う上で、プラント運転装置からの各種情報を如何に適切に提供するかが重要であるが、これらの構成事例では、運転員に対して適切な情報を正確に短時間内に提供し、理解させるうえでの配慮が十分なものではないものであった。
【0012】
以上のことから本発明の目的は、発生事象に応じて動的に警報表示を変えることで、運転員が確認すべき情報表示をサポートし負担を軽減する観点から工夫されたプラント運転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明においては、プラントを複数の系統に分割したときの各系統を一括して表示し異常事象の際に警報する系統一括警報と系統ごとにこれを構成する主要な機器を表示し異常事象の際に警報する重要警報を行う運転監視補助盤と、機器状態を個別表示部に表示する端末を備えた中央運転監視盤を含み、複数の系統で構成されたプラントで異常事象が発生したときに異常発生事象を表示するプラント運転装置であって、複数の系統で構成されたプラントで異常事象が発生したことを検知する複数の検知手段と、該検知手段の出力により前記運転監視補助盤の大型表示盤の画面表示内容を、異常事象を示す前記系統一括警報および前記重要警報の画面表示内容に切り替える切替手段と、前記大型表示盤の前記系統一括警報および前記重要警報についての画面表示内容を警報の関連性を樹状図に整理して表示する画面表示制御手段を備え、前記画面表示制御手段は、異常事象を示す警報の関連性を樹状図に整理して表示するとともに、異常事象が発生した部位とその関連する部位を強調表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、警報を樹状図に整理し同一画面に一括して表示するため、画面を切り替えることなく個別警報を確認することができ、運転員の負担を軽減できる。
【0015】
また本発明の実施例によれば、警報窓の配置・大きさ・発生時の色などを動的に変えることで、不要な情報を低減し運転員が効率的に事象確認・対応操作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係る大型表示盤3の具体的な構成例を示す図。
図2】事象進展を予測した警報表示例を示す図。
図3】強調表示による警報表示例を示す図。
図4】一般的なプラント及びプラント運転装置の全体構成例を示す図。
図5】従来の大型表示盤3の具体的な構成例を示す図。
図6】従来の系統一括警報と重要警報の具体的な事例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
以下においては、まず図4により一般的なプラント及びプラント運転装置の全体構成を説明する。その後に本発明の構成を図示と共に説明するが、従来における構成と対比することでより理解しやすくなることから、従来の典型的な構成例を図5,図6で説明し、その後に図1図2図3を用いて本発明の実施例を説明することにする。
【0019】
図4は一般的なプラント及びプラント運転装置の全体構成例を示す図である。プラント運転装置2は、複数の盤により構成されているが、ここでは主要な盤として運転監視補助盤(大型表示盤)3と、中央運転監視盤(主盤)上の計算機端末4のみを記述している。大型表示盤3および計算機端末4には、プラント1から警報、機器状態、プロセス値などが取り込まれており、これらが運転員Mに適宜表示、提供されるように構成されている。運転員Mは、これらの提示情報からプラント1の状態を判定し、適宜機器操作を行っている。機器操作は、大型表示盤3および計算機端末4のいずれか、あるいは双方から実施可能とされている。
【0020】
図4は、従来例及び本発明に共通する設備構成であるが、このうち大型表示盤3について、従来では図5のように構成されている。なお以降の説明では、大型表示盤3に表示される各種情報の内、警報情報を主体に説明する。
【0021】
図5の大型表示盤3において警報情報は、系統一括警報窓6と重要警報窓5に表示されている。系統一括警報窓6は、プラントを複数の系統に分割したときの各系統を表示しており、重要警報窓5は系統ごとにこれを構成する主要な機器を示している。いずれの場合にも窓形式になっており、当該系統或は当該系統内の機器において異常が発生した場合にこの窓を例えば赤色フリッカ表示させることにより運転員に異常発生と異常発生個所を通知、認識せしめる。
【0022】
図6は、従来の系統一括警報と重要警報の具体的な事例を示した図であり、例えば原子力プラントの例で示すと、系統としてAPR,NB,CUW,RFC,RPS、AC,FDWC,CRD,DWCを系統例として表示している。図6は、警報が原子炉浄化系統CUWで発生し、運転員が系統一括警報窓6上の原子炉浄化系統CUWを指定したときに、重要警報窓5に表示される具体的な機器と異常事象の事例を示している。ここでは、機器としてCUWポンプ(A)とCUWポンプ(B)を取り上げており、これらについての異常事象として、吐出流量低、吐出流量高、巻線温度高、振動大を検知したセンサ信号の異常種別と共に表示している。このため、系統一括警報は代表警報、重要警報は原因か所を示す個別警報あるいは原因警報として捉えることができる。この方式では、系統一括警報から別画面の個別警報あるいは原因警報に切り替えを行い、そのうえで個別警報の内容を確認する二段階操作となっている。
【0023】
このように、従来の大型表示盤上の警報窓は、図5、6に示すようにプラントトリップ要因の重要警報表示方式と個別警報を系統毎に代表警報に表示する系統一括警報表示方式のため、個別要因となる個別警報を確認するためには主盤端末の警報画面を多段に切り替える必要があり、警報確認に手間が掛かるという課題を有する。特に同時に多数の警報が発生した場合、それぞれの警報要因を確認するには運転員の負担が大きいものである。また図5、6に示す通り、従来装置では系統一括警報(代表警報)6にて例えばCUW系の警報発報を確認後、個別警報(原因警報)5の別画面に切替しなければ警報原因を確認できなかった。
【0024】
これに対し本発明では、図5の大型表示盤3の構成を図1のように変更する。図1は、本発明の実施例に係る大型表示盤3の具体的な構成例を示す図である。図1では、まず系統一括警報窓6が廃止され、そのうえで大型表示盤3の表示部を大型モニタ90で構成している。大型モニタ90には、警報表示情報が可変に表示されている。大型モニタ90に表示される警報表示情報は、重要警報表示9もしくは系統一括警報表示10とされる。これらの表示画面では、警報間の関連性(例えば系統・機器・プロセス・警報間の因果関係など)を樹状図に整理し、同一画面に一括して警報を表示する機能と、警報窓の配置・大きさ・発生時の色などを、発生事象に応じて動的に変える機能を設けている。また、表示に際しては全体の中でどこに異常が発生しているのかが識別可能なように当該部分の強調表示が行われる。なお大型モニタ90には、通常時に何が表示されていてもよいが、プラントで発生した異常事象を示す警報を検知して、モニタの表示画面として警報間の関連性を示す画面が起動され、優先的に表示される。
【0025】
図1で示した事例の重要警報表示9では、重要警報と、原因警報と、その区分が、樹状図に整理して表示されており、該当事例部分が他の表示部分と区別して表示される。例えば重要警報としては、スクラム、MSIV弁、タービントリップ、発電機トリップなどが予め想定され、表示されており、各重要警報について原因警報と、その区分がさらに細分化されて記述、表示されているが、この事例では重要警報「スクラム」について、原因警報が「中性子束高高」である場合について、その区分「区分I」〜「区分IV」が原因で発生していることを、他の部分と区別表示している。これにより、重要警報と、原因警報と、その区分の関係が、画面遷移せずに同一画面上で確認できる。
【0026】
また系統一括警報表示10では、系統と、機器と、その警報名称が、樹状図に整理して表示されており、該当事例部分が他の表示部分と区別して表示される。例えば原子炉浄化系統CUWについて、具体的な構成機器はCUWポンプ(A)、CUWポンプ(B)、非再生熱交換機(A)、非再生熱交換機(B)などが予め想定され、表示されており、警報名称として構成機器が非再生熱交換機(A)である場合について、吐出流量低、吐出流量高、巻線温度高、振動大を上げて例示している。この表示によれば、他の部分との区別表示により、系統「CUW」では、機器「CUWポンプ(A)」について、警報名称「吐出流量高」が発生していることが画面遷移せずに同一画面上で確認できる。また、系統一括警報表示10では、警報発生時刻もしくはあらかじめ登録しておいた重要度に応じて樹上図の表示順序を並べ替えることで、運転員の警報確認をサポートすることもできる。
【0027】
図2は、事象進展を予測した警報表示例を示す図である。本発明の表示手法では、さらに図2に示すように、あらかじめ警報間の因果関係を登録しておき、現在発生している警報12から今後発生が予測される警報13を表示することで、事象進展を運転員に分かりやすく表示するとともに、表示スペースを有効活用し視認性を向上することができる。図2の例では、現在発生している警報12がHDCA(A)である場合に対して、関連して発生し得る異常事象及びその警報事例13として、(HDCA(B)、T/DRFP(B),LPCPの可能性が高いことを予め表示している。
【0028】
図3は、強調表示による警報表示例を示す図である。また本発明の表示手法では、図3に示すように、例えば運転員によって警報確認もしくは対応操作が実施されていない警報14を目立つ表示に変える警報表示の一例であり、「CUWポンプ(A)」の「吐出流量高」が確認もしくは対応操作されていないため、警報窓を大きく表示している。目立つ表示に変える方式としては、警報発生時刻からの経過時間に応じて警報窓の大きさや表示の照度・色の濃さを変更する方式が考えられる。
【0029】
なお本発明を実現するに際し、複数の系統で構成されたプラントで異常事象が発生したことを検知する複数の検知手段や、検知手段の出力により画面表示内容が異常事象を示す警報の関連性を樹状図に整理して表示する画面に切り替える切替手段や、画面表示内容を決定する画面表示制御手段を備え、画面表示制御手段が、異常事象を示す警報の関連性を樹状図に整理して表示し、異常事象が発生した部位とその関連する部位が強調表示しているように構成されることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
1:プラント
2:プラント運転装置
3:大型表示盤(制御盤)
4:計算機端末
5:重要警報窓
6:系統一括警報窓
7:系統一括警報(代表警報)
8:個別警報(原因警報)
9:本発明の重要警報表示
10:本発明の系統一括警報表示
11:系統間取り合いを考慮し事象進展を予測した警報表示
12:現在発生している警報
13:発生が予測される警報
図1
図2
図3
図4
図5
図6