【実施例】
【0018】
以下においては、まず
図4により一般的なプラント及びプラント運転装置の全体構成を説明する。その後に本発明の構成を図示と共に説明するが、従来における構成と対比することでより理解しやすくなることから、従来の典型的な構成例を
図5,
図6で説明し、その後に
図1、
図2、
図3を用いて本発明の実施例を説明することにする。
【0019】
図4は一般的なプラント及びプラント運転装置の全体構成例を示す図である。プラント運転装置2は、複数の盤により構成されているが、ここでは主要な盤として運転監視補助盤(大型表示盤)3と、中央運転監視盤(主盤)上の計算機端末4のみを記述している。大型表示盤3および計算機端末4には、プラント1から警報、機器状態、プロセス値などが取り込まれており、これらが運転員Mに適宜表示、提供されるように構成されている。運転員Mは、これらの提示情報からプラント1の状態を判定し、適宜機器操作を行っている。機器操作は、大型表示盤3および計算機端末4のいずれか、あるいは双方から実施可能とされている。
【0020】
図4は、従来例及び本発明に共通する設備構成であるが、このうち大型表示盤3について、従来では
図5のように構成されている。なお以降の説明では、大型表示盤3に表示される各種情報の内、警報情報を主体に説明する。
【0021】
図5の大型表示盤3において警報情報は、系統一括警報窓6と重要警報窓5に表示されている。系統一括警報窓6は、プラントを複数の系統に分割したときの各系統を表示しており、重要警報窓5は系統ごとにこれを構成する主要な機器を示している。いずれの場合にも窓形式になっており、当該系統或は当該系統内の機器において異常が発生した場合にこの窓を例えば赤色フリッカ表示させることにより運転員に異常発生と異常発生個所を通知、認識せしめる。
【0022】
図6は、従来の系統一括警報と重要警報の具体的な事例を示した図であり、例えば原子力プラントの例で示すと、系統としてAPR,NB,CUW,RFC,RPS、AC,FDWC,CRD,DWCを系統例として表示している。
図6は、警報が原子炉浄化系統CUWで発生し、運転員が系統一括警報窓6上の原子炉浄化系統CUWを指定したときに、重要警報窓5に表示される具体的な機器と異常事象の事例を示している。ここでは、機器としてCUWポンプ(A)とCUWポンプ(B)を取り上げており、これらについての異常事象として、吐出流量低、吐出流量高、巻線温度高、振動大を検知したセンサ信号の異常種別と共に表示している。このため、系統一括警報は代表警報、重要警報は原因か所を示す個別警報あるいは原因警報として捉えることができる。この方式では、系統一括警報から別画面の個別警報あるいは原因警報に切り替えを行い、そのうえで個別警報の内容を確認する二段階操作となっている。
【0023】
このように、従来の大型表示盤上の警報窓は、
図5、6に示すようにプラントトリップ要因の重要警報表示方式と個別警報を系統毎に代表警報に表示する系統一括警報表示方式のため、個別要因となる個別警報を確認するためには主盤端末の警報画面を多段に切り替える必要があり、警報確認に手間が掛かるという課題を有する。特に同時に多数の警報が発生した場合、それぞれの警報要因を確認するには運転員の負担が大きいものである。また
図5、6に示す通り、従来装置では系統一括警報(代表警報)6にて例えばCUW系の警報発報を確認後、個別警報(原因警報)5の別画面に切替しなければ警報原因を確認できなかった。
【0024】
これに対し本発明では、
図5の大型表示盤3の構成を
図1のように変更する。
図1は、本発明の実施例に係る大型表示盤3の具体的な構成例を示す図である。
図1では、まず系統一括警報窓6が廃止され、そのうえで大型表示盤3の表示部を大型モニタ90で構成している。大型モニタ90には、警報表示情報が可変に表示されている。大型モニタ90に表示される警報表示情報は、重要警報表示9もしくは系統一括警報表示10とされる。これらの表示画面では、警報間の関連性(例えば系統・機器・プロセス・警報間の因果関係など)を
樹状図に整理し、同一画面に一括して警報を表示する機能と、警報窓の配置・大きさ・発生時の色などを、発生事象に応じて動的に変える機能を設けている。また、表示に際しては全体の中でどこに異常が発生しているのかが識別可能なように当該部分の強調表示が行われる。なお大型モニタ90には、通常時に何が表示されていてもよいが、プラントで発生した異常事象を示す警報を検知して、モニタの表示画面として警報間の関連性を示す画面が起動され、優先的に表示される。
【0025】
図1で示した事例の重要警報表示9では、重要警報と、原因警報と、その区分が、
樹状図に整理して表示されており、該当事例部分が他の表示部分と区別して表示される。例えば重要警報としては、スクラム、MSIV弁、タービントリップ、発電機トリップなどが予め想定され、表示されており、各重要警報について原因警報と、その区分がさらに細分化されて記述、表示されているが、この事例では重要警報「スクラム」について、原因警報が「中性子束高高」である場合について、その区分「区分I」〜「区分IV」が原因で発生していることを、他の部分と区別表示している。これにより、重要警報と、原因警報と、その区分の関係が、画面遷移せずに同一画面上で確認できる。
【0026】
また系統一括警報表示10では、系統と、機器と、その警報名称が、
樹状図に整理して表示されており、該当事例部分が他の表示部分と区別して表示される。例えば原子炉浄化系統CUWについて、具体的な構成機器はCUWポンプ(A)、CUWポンプ(B)、非再生熱交換機(A)、非再生熱交換機(B)などが予め想定され、表示されており、警報名称として構成機器が非再生熱交換機(A)である場合について、吐出流量低、吐出流量高、巻線温度高、振動大を上げて例示している。この表示によれば、他の部分との区別表示により、系統「CUW」では、機器「CUWポンプ(A)」について、警報名称「吐出流量高」が発生していることが画面遷移せずに同一画面上で確認できる。また、系統一括警報表示10では、警報発生時刻もしくはあらかじめ登録しておいた重要度に応じて樹上図の表示順序を並べ替えることで、運転員の警報確認をサポートすることもできる。
【0027】
図2は、事象進展を予測した警報表示例を示す図である。本発明の表示手法では、さらに
図2に示すように、あらかじめ警報間の因果関係を登録しておき、現在発生している警報12から今後発生が予測される警報13を表示することで、事象進展を運転員に分かりやすく表示するとともに、表示スペースを有効活用し視認性を向上することができる。
図2の例では、現在発生している警報12がHDCA(A)である場合に対して、関連して発生し得る異常事象及びその警報事例13として、(HDCA(B)、T/DRFP(B),LPCPの可能性が高いことを予め表示している。
【0028】
図3は、強調表示による警報表示例を示す図である。また本発明の表示手法では、
図3に示すように、例えば運転員によって警報確認もしくは対応操作が実施されていない警報14を目立つ表示に変える警報表示の一例であり、「CUWポンプ(A)」の「吐出流量高」が確認もしくは対応操作されていないため、警報窓を大きく表示している。目立つ表示に変える方式としては、警報発生時刻からの経過時間に応じて警報窓の大きさや表示の照度・色の濃さを変更する方式が考えられる。
【0029】
なお本発明を実現するに際し、複数の系統で構成されたプラントで異常事象が発生したことを検知する複数の検知手段や、検知手段の出力により画面表示内容が異常事象を示す警報の関連性を
樹状図に整理して表示する画面に切り替える切替手段や、画面表示内容を決定する画面表示制御手段を備え、画面表示制御手段が、異常事象を示す警報の関連性を
樹状図に整理して表示し、異常事象が発生した部位とその関連する部位が強調表示しているように構成されることは言うまでもない。