(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(i)ヒト抗メソテリン結合ドメイン;(ii)膜貫通型ドメイン;および(iii)刺激ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離核酸分子であって、ここで、該抗メソテリン結合ドメインが
(a) 配列番号203の軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、配列番号227の軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、配列番号251の軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3);ならびに配列番号138の重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、配列番号156の重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および配列番号179の重鎖相補性決定領域3(HC CDR3);または
(b) 配列番号209のLC CDR1、配列番号233のLC CDR2、配列番号257のLC CDR3;ならびに配列番号144のHC CDR1、配列番号162のHC CDR2、および配列番号185のHC CDR3
を含む、
単離核酸分子。
(a) 膜貫通型ドメインがT細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137およびCD154からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通型ドメインを含む;
(b) 膜貫通型ドメインが配列番号6を含む;
(c) 膜貫通型ドメインが配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含む;
(d) 膜貫通型ドメインが配列番号6のアミノ酸配列と95〜99%同一性を有するアミノ酸配列を含む;または
(e) 膜貫通型ドメインをコードする核酸配列が配列番号17の配列または配列番号17と95〜99%同一性を有する配列を含む、
請求項1〜4のいずれかに記載の単離核酸分子。
(a) 配列番号203のLC CDR1、配列番号227のLC CDR2、配列番号251のLC CDR3;ならびに配列番号138のHC CDR1、配列番号156のHC CDR2、および配列番号179のHC CDR3;または
(b) 配列番号209のLC CDR1、配列番号233のLC CDR2、配列番号257のLC CDR3;ならびに配列番号144のHC CDR1、配列番号162のHC CDR2、および配列番号185のHC CDR3
を含む、軽鎖(LC)および重鎖(HC)CDRを含むヒト抗メソテリン結合ドメイン。
疾患が中皮腫、悪性胸膜中皮腫、非小細胞性肺癌、小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌または大細胞肺癌、膵臓癌、膵管腺癌、転移性膵臓癌、卵巣癌、結腸直腸癌および膀胱癌またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるメソテリンと関係する癌である、請求項33に記載の使用のための細胞。
疾患が中皮腫、悪性胸膜中皮腫、非小細胞性肺癌、小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌または大細胞肺癌、膵臓癌、膵管腺癌、転移性膵臓癌、卵巣癌、結腸直腸癌および膀胱癌またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるメソテリンと関係する癌である、医薬の製造のための請求項39に記載の使用。
さらに細胞内シグナル伝達ドメインからの陽性シグナルを含む第二ポリペプチドと結合した阻害分子の少なくとも一部を含む第一ポリペプチドを含む阻害分子を発現する、医薬の製造のための請求項29に記載の細胞の使用。
【発明を実施するための形態】
【0108】
詳細な記載
定義
他に定義しない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に共通して理解されているのと同じ意味を有する。
【0109】
単数表現は、不定冠詞の文法的目的である1個または1個を超えること(すなわち、少なくとも1個)を意味する。例として、“成分”は1個の成分または1個を超える成分を意味する。
【0110】
用語“約”は、量、期間などのような測定可能な値に言及するとき、特定値からの±20%またはいくつかの例においては±10%またはいくつかの例においては±5%またはいくつかの例においては±1%またはいくつかの例においては±0.1%の変動を、このような変動が開示する方法の実施に適切である限り、包含することを意図する。
【0111】
用語“キメラ抗原受容体”あるいはまた“CAR”は、概して最も単純な態様においては2個の、ポリペプチドのセットをいい、これは、免疫エフェクター細胞中にあるとき、該細胞に標的細胞、概して癌細胞への特異性および細胞内シグナル産生を提供する。ある態様において、CARは少なくとも細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインならびに下記のような刺激分子および/または共刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメイン(ここでは“細胞内シグナル伝達ドメイン”とも呼ぶ)を含む。いくつかの面において、ポリペプチドのセットは互いに隣接している。ある態様において、ポリペプチドのセットは、二量体化分子の存在下、ポリペプチドを互いに連結できる、例えば、抗原結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに連結できる、二量体化スイッチを含む。一つの面において、刺激分子は、T細胞受容体複合体と関係するゼータ鎖である。一つの面において、細胞質シグナル伝達ドメインは、下記のような少なくとも1個の共刺激分子由来の1個以上の機能的シグナル伝達ドメインをさらに含む。一つの面において、共刺激分子は、ここに記載する共刺激分子、例えば、4−1BB(すなわち、CD137)、CD27および/またはCD28から選択される。一つの面において、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。一つの面において、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインならびに共刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインおよび刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。一つの面において、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインならびに1個以上の共刺激分子由来の2個の機能的シグナル伝達ドメインおよび刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。一つの面において、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインならびに1個以上の共刺激分子由来の少なくとも2個の機能的シグナル伝達ドメインおよび刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。一つの面において、CARは、CAR融合タンパク質のアミノ末端(N−ter)に任意的なリーダー配列を含む。一つの面において、CARは、細胞外抗原結合ドメインのN末端にリーダー配列をさらに含み、ここで、該リーダー配列は、所望により細胞プロセシングおよび細胞膜へのCARの局在化の間に抗原結合ドメイン(例えば、scFv)から切断されてよい。
【0112】
用語“シグナル伝達ドメイン”は、第二メッセンジャーを産生することによりまたはこのようなメッセンジャーに応答することによりエフェクターとして機能することにより、定義されたシグナル伝達経路を介して細胞活性を制御するために細胞内で情報を伝達することにより作用する、タンパク質の機能的部分である。
【0113】
ここで使用する用語“メソテリン”は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合および巨核球増強因子(MPF)と呼ばれるアミノ末端31kDa脱落フラグメントにより細胞膜に固定されている、40kDaタンパク質であるメソテリンをいう。いずれのフラグメントもN−グリコシル化部位を含む。本用語はまた、“可溶性メソテリン/MPF関連”とも呼ばれる、40kDaカルボキシル末端フラグメントの可溶性スプライスバリアントもいう。好ましくは、本用語は、GenBank受託番号AAH03512.1のヒトメソテリンおよび、例えば、細胞膜、例えば、癌細胞膜上に発現される、その天然に切断される部分をいう。
【0114】
ここで使用する用語“抗体”は、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子由来のタンパク質またはポリペプチド配列をいう。抗体はポリクローナルまたはモノクローナル、多鎖または単鎖または完全な免疫グロブリンであってよく、天然起源または組み換え起源に由来し得る。抗体は免疫グロブリン分子の四量体であり得る。
【0115】
用語“抗体フラグメント”は、抗原のエピトープと(例えば、結合、立体障害、安定化/不安定化、空間的分布により)特異的に相互作用する能力を保持する、抗体の少なくとも一つの部分をいう。抗体フラグメントの例はFab、Fab’、F(ab’)
2、Fvフラグメント、scFv抗体フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VHドメインとCH1ドメインからなるFdフラグメント、線状抗体、sdAb(VLまたはVHのいずれか)のような単一ドメイン抗体、ラクダ類VHHドメイン、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2個のFabフラグメントを含む二価フラグメントのような抗体フラグメントから形成された多特異性抗体および単離CDRまたは抗体の他のエピトープ結合フラグメントを含むが、これらに限定されない。抗原結合フラグメントはまた単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、細胞内抗体、二重特異性抗体、トリアボディ、テトラボディ、v−NARおよびビス−scFvにも取り込まれ得る(例えば、Hollinger and Hudson, Nature Biotechnology 23:1126-1136, 2005参照)。抗原結合フラグメントはまたフィブロネクチンIII型(Fn3)のようなポリペプチドに基づくスキャフォールドに移植もできる(フィブロネクチンポリペプチドミニボディを記載する米国特許6,703,199号参照)。
【0116】
用語“scFv”は、軽鎖の可変領域を含む少なくとも1個の抗体フラグメントおよび重鎖の可変領域を含む少なくとも1個の抗体フラグメントを含む融合タンパク質をいい、ここで、軽鎖および重鎖可変領域は、例えば、合成リンカー、例えば、短可動性ポリペプチドリンカーを介して連続的に結合し、単一鎖ポリペプチドとして発現されることが可能であり、該scFvはそれが由来する完全な抗体の特異性を保持する。特に断らない限り、ここで使用するscFvは、例えば、ポリペプチドのN末端およびC末端に関していずれかの順序でVLおよびVH可変領域を含んでよく、scFvはVL−リンカー−VHを含んでよく、またはVH−リンカー−VLを含んでよい。
【0117】
抗体またはその抗体フラグメントを含む本発明のCARの部分は、抗原結合ドメインが例えば、単一ドメイン抗体フラグメント(sdAb)、単一鎖抗体(scFv)、ヒト化抗体または二重特異性抗体を含む、隣接ポリペプチド鎖の一部として発現される、多様な形態で存在し得る(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York; Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。一つの面において、本発明のCAR組成物の抗原結合ドメインは抗体フラグメントを含む。さらなる面において、CARはscFvを含む抗体フラグメントを含む。
【0118】
用語“抗体重鎖”は、天然に生じる高次構造で抗体分子に存在する2タイプのポリペプチド鎖の大きいほうをいい、これは通常該抗体が属するクラスを決定する。
【0119】
用語“抗体軽鎖”は、天然に生じる高次構造で抗体分子に存在する2タイプのポリペプチド鎖の小さいほうをいう。カッパ(κ)およびラムダ(λ)軽鎖は、2個の主要な抗体軽鎖アイソタイプをいう。
【0120】
用語“組み換え抗体”は、例えば、バクテリオファージまたは酵母発現系により発現された抗体のような、組み換えDNAテクノロジーを使用して産生される抗体をいう。本用語は、抗体をコードするDNA分子の合成により産生されている抗体も意味すると解釈すべきであり、該DNA分子は抗体タンパク質または該抗体を特定するアミノ酸配列を発現し、ここで、該DNAまたはアミノ酸配列は、当分野で利用可能であり、周知である組み換えDNAまたはアミノ酸配列テクノロジーを使用して得られている。
【0121】
用語“抗原”または“Ag”は、免疫応答を惹起する分子をいう。この免疫応答は、抗体産生または特定の免疫適格細胞の活性化のいずれかまたは両者に関与し得る。当業者は、事実上全てのタンパク質またはペプチドを含む、あらゆる巨大分子が抗原として働き得ることを理解する。さらに、抗原は組み換えまたはゲノムDNAに由来し得る。当業者は、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分的ヌクレオチド配列を含むあらゆるDNAが、それゆえに、“抗原”を、当該用語が本明細書で使用される限り、コードすることを理解する。さらに、当業者は、抗原がもっぱら遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によりコードされる必要がないことを理解する。本発明が、1個を超える遺伝子の部分的ヌクレオチド配列の使用を含むが、これに限定されず、これらのヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を誘発するポリペプチドをコードするように種々の組み合わせで配置されることは容易に明らかとなる。さらに、当業者は、抗原が“遺伝子”によりコードされる必要は全くないことを理解する。抗原が合成により製造できまたは生物学的サンプルに由来できまたはポリペプチド以外の巨大分子であるかもしれないことは容易に明らかである。このような生物学的サンプルは組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞または他の生体成分を伴う体液を含むが、これらに限定されない。
【0122】
用語“競合”は、他の抗原結合ドメイン、例えば、ここに提供する抗原結合ドメイン、例えば、ここに提供する抗体またはそのフラグメントが、標的、例えば、メソテリンに直接的または間接的に結合するのを妨害する、抗原結合ドメイン、例えば、抗体またはそのフラグメントの能力をいう。抗原結合ドメイン、例えば、抗体またはそのフラグメントが他の抗原結合ドメイン、例えば、抗体またはそのフラグメントの標的への結合を妨害する程度、それゆえに、競合と言えるか否かは、競合結合アッセイを使用して決定できる。ある態様において、競合結合アッセイは定量的競合アッセイである。例えば、ある特に適当な定量的競合アッセイは、固定化標的への結合に対するある抗体またはそのフラグメントと他の抗体またはそのフラグメントの間の結合、例えば、競合の測定に、表面プラズモン共鳴法(SPR)ベースの手法を使用する。代表的SPRベースの競合アッセイは、ここの実施例2に記載する。他の適当な定量的競合アッセイは、標的への結合に対する標識(例えば、とりわけ、Hisタグ付加、ビオチニル化または放射活性物質で標識した)抗体またはそのフラグメントと他の抗体またはそのフラグメントの間の競合を測定するためにFACSベースの手法を使用する。
【0123】
用語“抗癌効果”は、例えば、腫瘍体積の減少、癌細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の延長、癌細胞増殖の減少、癌細胞生存の減少または癌状態に付随する種々の生理学的症状の改善を含むが、これらに限定されない種々の手段により顕在化し得る、生物学的効果をいう。“抗癌効果”はまたそもそも癌の発生の予防におけるペプチド、ポリヌクレオチド、細胞および抗体の能力によっても顕在化され得る。用語“抗腫瘍効果”は、例えば、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少または腫瘍細胞生存の減少を含むが、これらに限定されない種々の手段により顕在化し得る、生物学的効果をいう。
【0124】
用語“自己”は、後に個体に再導入するのと同じ個体に由来する何らかの物質をいう。
【0125】
用語“同種”は、物質を導入する個体と同じ種の異なる動物由来の何らかの物質をいう。一箇所以上の座位の遺伝子が同一でない場合、2以上の個体は互いに同種であるというべきである。いくつかの面において、同じ種の個体由来の同種物質は、抗原性に相互作用するには、遺伝的に十分に異なっている可能性がある。
【0126】
用語“異種”は、異なる種の動物由来の移植片をいう。
【0127】
用語“癌”は、異常細胞の無制御の増殖により特徴づけられる疾患である。癌細胞は、局所的にまたは血流およびリンパ系を介して体の他の部分に拡散し得る。多様な癌の例がここに記載され、中皮腫、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳の癌、リンパ腫、白血病、肺癌などを含むが、これらに限定されない。
【0128】
用語“メソテリンの発現と関係する疾患”は、例えば、癌または悪性腫瘍のような増殖性疾患または中皮過形成のような前癌状態を含む、メソテリンを発現する細胞と関係するメソテリンの発現と関係する疾患または状態;またはメソテリンを発現する細胞と関係する非癌関連適応症を含むが、これらに限定されない。メソテリンを発現する多様な癌の例は、中皮腫、肺癌、卵巣癌、膵臓癌などを含むが、これらに限定されない。
【0129】
用語“保存的配列修飾”は、アミノ酸配列を含む抗体または抗体フラグメントの結合特徴に顕著に影響しないまたは変えないアミノ酸修飾をいう。このような保存的修飾は、アミノ酸置換、付加および欠失を含む。部位特異的変異誘発およびPCR介在変異誘発のような当分野で知られる標準法により、本発明の抗体または抗体フラグメントに修飾を導入できる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられるものである。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。それゆえに、本発明のCAR内の1個以上のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基に置き換えてよく、改変CARを、例えば、ここに記載する機能的アッセイを使用してメソテリンと結合する能力について試験し得る。
【0130】
用語“刺激”は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体またはCAR)とその同族リガンド(またはCARの場合腫瘍抗原)の結合により誘発され、それにより、TCR/CD3複合体によるシグナル伝達または適切なNK受容体によるもしくはCARのシグナル伝達ドメインによるシグナル伝達のような、しかし、これに限定されない、シグナル伝達事象を仲介する、一次応答をいう。刺激は、ある分子の発現の改変を仲介できる。
【0131】
用語“刺激分子”は、免疫細胞シグナル伝達経路の少なくともある面について刺激性の方法で免疫細胞の活性化を制御する、細胞質シグナル伝達配列を提供する免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、B細胞)により発現される分子をいう。一つの面において、シグナルは、例えば、TCR/CD3複合体とペプチドを搭載したMHC分子の結合により開始され、増殖、活性化、分化などを含むが、これらに限定されないT細胞応答の媒介に至る、一次シグナルである。刺激性様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列(“一次シグナル伝達ドメイン”とも呼ぶ)は、免疫受容体チロシン活性化モチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含み得る。本発明で特に有用である細胞質シグナル伝達配列を含むITAMの例は、CD3ゼータ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10およびDAP12に由来のものを含むが、これらに限定されない。本発明の特定のCARにおいて、本発明の任意の1個以上のCARにおける細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内シグナル伝達配列、例えば、CD3ゼータの一次シグナル伝達配列を含む。本発明の特定のCARにおいて、CD3ゼータの一次シグナル伝達配列は、配列番号9に提供される配列または非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、類人猿などからの等価な残基である。本発明の特定のCARにおいて、CD3ゼータの一次シグナル伝達配列は、配列番号10に提供される配列または非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、類人猿などからの等価な残基である。
【0132】
用語“抗原提示細胞”または“APC”は、主要組織適合抗原複合体(MHC)と複合体化した外来性抗原をその表面に示すアクセサリー細胞(例えば、B細胞、樹状細胞など)のような免疫系細胞をいう。T細胞は、T細胞受容体(TCR)を使用してこれらの複合体を認識し得る。APCは抗原を処理し、それをT細胞に提示する。
【0133】
ここで使用する用語としての“細胞内シグナル伝達ドメイン”は、分子の細胞内部分をいう。細胞内シグナル伝達ドメインは、CAR含有細胞、例えば、CAR T細胞の免疫エフェクター機能を増強するシグナルを産生する。例えば、CAR T細胞における、免疫エフェクター機能の例は、サイトカインの分泌を含む、細胞溶解性活性およびヘルパー活性を含む。
【0134】
ある態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。代表的一次細胞内シグナル伝達ドメインは、一次刺激または抗原依存性刺激を担う分子由来のものを含み得る。ある態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激細胞内ドメインを含み得る。代表的共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナルまたは抗原非依存性刺激を担う分子由来のものを含み得る。例えば、CARTの場合、一次細胞内シグナル伝達ドメインはT細胞受容体の細胞質配列を含みえて、共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは共受容体または共刺激分子からの細胞質配列を含み得る。
【0135】
一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含み得る。ITAM含有一次細胞質シグナル伝達配列の例は、CD3ゼータ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10およびDAP12由来のものを含むが、これらに限定されない。
【0136】
用語“ゼータ”あるいはまた“ゼータ鎖”、“CD3ゼータ”または“TCR−ゼータ”は、GenBan受託番号BAG36664.1として提供されるタンパク質または非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、類人猿などからの等価な残基として定義され、“ゼータ刺激ドメイン”あるいはまた“CD3ゼータ刺激ドメイン”または“TCR−ゼータ刺激ドメイン”は、T細胞活性化に必要な初期シグナルを機能的に伝達するのに十分な、ゼータ鎖の細胞質ドメイン由来のアミノ酸残基またはその機能的誘導体として定義される。一つの面において、ゼータの細胞質ドメインは、GenBank受託番号BAG36664.1の残基52〜164またはその機能的オルソログである非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、類人猿などからの等価な残基を含む。一つの面において、“ゼータ刺激ドメイン”または“CD3ゼータ刺激ドメイン”は、配列番号9として提供される配列である。一つの面において、“ゼータ刺激ドメイン”または“CD3ゼータ刺激ドメイン”は配列番号10として提供される配列である。
【0137】
用語“共刺激分子”は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、T細胞による、増殖のような、しかし、これに限定されない共刺激応答を仲介する、T細胞上の同族結合パートナーをいう。共刺激分子は、効率的免疫応答に貢献する抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子は、MHCI型分子、BTLAおよびTollリガンド受容体、ならびにOX40、CD27、CD28、CDS、ICAM−1、LFA−1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)および4−1BB(CD137)を含むが、これらに限定されない。このような共刺激分子のさらなる例は、CDS、ICAM−1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL−2Rベータ、IL−2Rガンマ、IL−7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA−6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA−1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA−1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB−A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO−3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP−76、PAG/CbpおよびCD83と特異的に結合するリガンドを含む。
【0138】
共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内部分であり得る。共刺激分子は、次のTNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ性活性化分子(SLAMタンパク質)および活性化NK細胞受容体のタンパク質ファミリーで表すことができる。このような分子の例は、CD27、CD28、4−1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、ICAM−1、リンパ球機能関連抗原−1(LFA−1)、CD2、CDS、CD7、CD287、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7−H3およびCD83と特異的に結合するリガンドなどを含む。
【0139】
細胞内シグナル伝達ドメインは、由来する分子の全細胞内部分または全天然細胞内シグナル伝達ドメインまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体を含み得る。
【0140】
用語“4−1BB”は、GenBank受託番号AAA62478.2として提供されるアミノ酸配列または非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、類人猿などからの等価な残基を有するTNFRスーパーファミリーのメンバーをいう。一つの面において、“4−1BB共刺激ドメイン”は、GenBank受託番号AAA62478.2のアミノ酸残基214〜255または非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、類人猿などからの等価な残基として定義される。一つの面において、“4−1BB共刺激ドメイン”は、配列番号7として提供される配列または非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、類人猿などからの等価な残基である。
【0141】
ここで使用する“抗原提示細胞”は、表面上で主要組織適合抗原複合体(MHC)と複合体化した外来性抗原を提示する、アクセサリー細胞(例えば、B細胞、樹状細胞など)のような免疫系細胞をいう。T細胞は、T細胞受容体(TCR)を使用してこれらの複合体を認識し得る。APCは抗原を処理し、それをT細胞に提示する。
【0142】
用語“コードする”は、生物学的過程における、ヌクレオチドの定義された配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)またはアミノ酸の定義された配列のいずれかならびにそれに由来する生物学的特性を有する他のポリマーおよび巨大分子の合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNAまたはmRNAのようなポリヌクレオチドにおけるヌクレオチドの特異的配列の固有の特性をいう。それゆえに、遺伝子、cDNAまたはRNAは、該遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が、細胞または他の生物系においてタンパク質を産生するならば、タンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常配列表に提供されるコード鎖および遺伝子またはcDNAの転写用鋳型として使用される非コード鎖の両者を、タンパク質またはその遺伝子またはcDNAの他の産物をコードするということができる。
【0143】
特に断らない限り、“アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列”は、互いの変性バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。用語タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、あるバージョンにおいてイントロンを含み得る限り、イントロンも含み得る。
【0144】
用語“有効量”または“治療有効量”は、ここでは交換可能に使用し、特定の生物学的結果を達成するのに有効な、ここに記載する化合物、製剤、物質または組成物の量をいう。用語“内在性”は、生物、細胞、組織または系由来のまたはその中で産生されるあらゆる物質をいう。
【0145】
用語“外来性”は、生物、細胞、組織または系の外から導入されたまたはこれらの外で産生されたあらゆる物質をいう。
【0146】
用語“発現”は、プロモーターにより駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳をいう。
【0147】
用語“導入ベクター”は、単離核酸を含み、単離核酸を細胞の内部に送達するのに使用できる組成物をいう。多数のベクターが当分野で知られ、線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と関係するポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを含むが、これらに限定されない。それゆえに、用語“導入ベクター”は、自己複製プラスミドまたはウイルスを含む。本用語はまた、例えば、ポリリシン化合物、リポソームなどのような、核酸の細胞内への導入を促進する非プラスミドおよび非ウイルス化合物をさらに含むとも解釈すべきである。ウイルス導入ベクターの例は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどを含むが、これらに限定されない。
【0148】
用語“発現ベクター”は、発現すべきヌクレオチド配列に操作可能に結合した発現制御配列を含む、組み換えポリヌクレオチドを含むベクターをいう。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用領域を含み、他の発現用領域は宿主細胞またはインビトロ発現系により供給され得る。発現ベクターは、組み換えポリヌクレオチドを取り込む、コスミド、プラスミド(例えば、裸のまたはリポソームに包含された)およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を含む、当分野で知られる全てを含む。
【0149】
用語“レンチウイルス”は、レトロウイルス科ファミリーのある属をいう。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染できるという点で、レトロウイルスの中で独特であり、相当量の遺伝情報を宿主細胞のDNAに送達でき、それゆえに、遺伝子送達ベクターの最も効率的方法の一つである。HIV、SIVおよびFIVは全てレンチウイルスの例である。用語“レンチウイルスベクター”は、Milone et al., Mol. Ther. 17(8):1453-1464 (2009)に提供されるような特に自己不活性化レンチウイルスベクターを含む、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来するベクターである。診療所で使用し得るレンチウイルスベクターの他の例は、例えば、Oxford BioMedicaのLENTIVECTOR(登録商標)遺伝子送達テクノロジー、LentigenのLENTIMAX
TMベクターシステムなどを含むが、これらに限定されない。非臨床タイプのレンチウイルスベクターも利用可能であり、当業者に知られる。
【0150】
用語“相同”または“同一性”は、2個の重合体分子、例えば、2個のDNA分子もしくは2個のRNA分子のような2個の核酸分子または2個のポリペプチド分子の間のサブユニット配列同一性をいう。2個の分子の両者のサブユニット位置が同じ単量体サブユニットで占拠されているならば、例えば、2個のDNA分子の各々の位置がアデニンで占拠されているならば、それらは、その位置について相同または同一である。2個の配列間の相同性は、マッチングまたは相同位置の関数であり、例えば、2個の配列の半分の位置(例えば、10サブユニット長ポリマーにおける5箇所)が相同であるならば、2個の配列は50%相同であり、位置の90%(例えば、10中9)がマッチしているかまたは相同であるならば、2個の配列は90%相同である。
【0151】
用語“ヒト化”は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合部分配列)である、非ヒト(例えば、マウス)抗体の形である。ほとんどの部分、ヒト化抗体および抗体そのフラグメントはヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体または抗体フラグメント)であり、その中で、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基と置き換えられている。ある例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体/抗体フラグメントは、レシピエント抗体にも、移入CDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体または抗体フラグメント性能をさらに洗練し、最適化し得る。一般に、ヒト化抗体またはその抗体フラグメントは、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1個、概して2個の可変ドメインのかなりの部分を含む。ヒト化抗体または抗体フラグメントは、また、概してヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含み得る。さらなる詳細について、Jones et al., Nature, 321:522-525, 1986; Reichmann et al., Nature, 332:323-329, 1988; Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596, 1992を参照のこと。
【0152】
用語“完全にヒト”は、分子全体がヒト起源であるかまたは抗体または免疫グロブリンのヒト形態と同一のアミノ酸配列からなる、抗体または抗体フラグメントのような免疫グロブリンをいう。
【0153】
用語“単離”は、天然状態から変えられたまたは除かれたことを意味する。例えば、生存動物に天然に存在する核酸またはペプチドは“単離”されていないが、その天然状態の共存物質から一部または完全に分離されている同じ核酸またはペプチドは“単離”されている。単離核酸またはタンパク質は、実質的に純粋な形態で存在でき、または、例えば、宿主細胞のような非天然環境で存在できる。
【0154】
本発明の文脈において、普通に存在する核酸塩基についての以下の略語を使用する。“A”はアデノシンをいい、“C”はシトシンをいい、“G”はグアノシンをいい、“T”はチミジンおよび“U”はウリジンをいう。
【0155】
用語“操作可能に結合”または“転写制御”は、制御配列と異種核酸配列の間の、異種核酸配列の発現を生じる機能的結合をいう。例えば、第一核酸配列が第二核酸配列と機能的相関で配置されているとき、第一核酸配列は第二核酸配列と操作可能に結合する。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響するならば、プロモーターは該コード配列と操作可能に結合する。操作可能に結合したDNA配列は、互いに隣接していてよく、2個のタンパク質コード領域を合わせることが必要であれば、同じリーディングフレーム内にある。
【0156】
免疫原性組成物の“非経腸”投与なる用語は、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、腫瘍内または胸骨内注射あるいは注入法を含む。
【0157】
用語“核酸”または“ポリヌクレオチド”は、一本鎖または二本鎖形態いずれかのデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびそのポリマーをいう。特に限定しない限り、本用語は、対照核酸と類似の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドに類似する方法で代謝される、天然ヌクレオチドの既知類似体を含む核酸を包含する。特に断らない限り、特定の核酸配列は、その保存的修飾変異体(例えば、縮重コドン置換)、アレル、オルソログ、SNPおよび相補的配列ならびに明示的に表示された配列も暗に包含する。具体的に、縮重コドン置換は、1個以上の選択した(または全)コドンの第三の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている、配列の産生により達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985);およびRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0158】
用語“ペプチド”、“ポリペプチド”および“タンパク質”は交換可能に使用し、ペプチド結合により共有結合したアミノ酸残基を含む化合物をいう。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含まなければならず、タンパク質またはペプチド配列を構成し得るアミノ酸の最大数に制限は設けられていない。ポリペプチドは、互いにペプチド結合により結合した2個以上のアミノ酸を含むあらゆるペプチドまたはタンパク質を含む。ここで使用する本用語は、当分野では通常、例えばペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとしても呼ばれる短鎖および当分野で一般にタンパク質と呼ばれる多くのタイプが存在する長鎖の両方をいう。“ポリペプチド”は、例えば、とりわけ、生物活性フラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは天然のペプチド、組み換えペプチド、組み換えペプチドまたはこれらの組み合わせを含む。
【0159】
用語“プロモーター”は、ポリヌクレオチド配列の特定の転写に必要な、細胞の合成機構により認識されるまたは合成機構に導入されるDNA配列をいう。
【0160】
用語“プロモーター/制御配列”は、該プロモーター/制御配列に操作可能に結合した遺伝子産物の発現に必要な核酸配列である。ある例において、この配列はコアプロモーター配列であってよく、他の例において、この配列はまた遺伝子産物の発現に必要なエンハンサー配列および他の調節エレメントを含み得る。プロモーター/制御配列は、例えば、遺伝子産物を組織特異的様式で発現するものである。
【0161】
用語“構成的”プロモーターは、遺伝子産物をコードするまたは特定するポリヌクレオチドと操作可能に結合したとき、細胞のほとんどのまたは全ての生理学的条件下で、該細胞に遺伝子産物を産生させる、ヌクレオチド配列である。
【0162】
用語“誘導性”プロモーターは、遺伝子産物をコードするまたは特定するポリヌクレオチドと操作可能に結合したとき、実質的にプロモーターに対応するインデューサーが細胞内に存在するときのみ、該細胞に遺伝子産物を産生させる、ヌクレオチド配列である。
【0163】
用語“組織特異的”プロモーターは、遺伝子によりコードされるまたは特定されるポリヌクレオチドと操作可能に結合したとき、実質的に細胞が該プロモーターに対応する組織タイプの細胞であるときのみ、該細胞に遺伝子産物を産生させる、ヌクレオチド配列である。
【0164】
scFvの文脈で使用する用語“可動性ポリペプチドリンカー”は、可変重鎖および可変軽鎖領域を一緒に連結するために、単独でまたは組み合わせて使用する、グリシン残基および/またはセリン残基のようなアミノ酸からなるペプチドリンカーをいう。一つの態様において、可動性ポリペプチドリンカーはGly/Serリンカーであり、アミノ酸配列(Gly−Gly−Gly−Ser)
n(配列番号38)(ここで、nは1以上の正の整数である)を含む。例えば、n=1、n=2、n=3。n=4、n=5およびn=6、n=7、n=8、n=9およびn=10。一つの態様において、可動性ポリペプチドリンカーは、(Gly
4Ser)
4(配列番号27)または(Gly
4Ser)
3(配列番号28)を含むが、これらに限定されない。他の態様において、リンカーは(Gly
2Ser)、(GlySer)または(Gly
3Ser)(配列番号29)の複数反復を含む。本発明の範囲にまた含まれるのは、WO2012/138475号(引用により本明細書に包含させる)に記載されるリンカーである。
【0165】
ここで使用する5’キャップ(RNAキャップ、RNA 7−メチルグアノシンキャップまたはRNA m
7Gキャップとも呼ぶ)は、転写の開始の直ぐ後に真核メッセンジャーRNAの“前面”または5’末端に付加されている修飾グアニンヌクレオチドである。5’キャップは、第一転写ヌクレオチドに結合した末端基からなる。その存在は、リボソームによる認識およびRNaseからの保護に重要である。キャップ付加は、転写と結びつき、互いに影響し合うように共転写的に起こる。転写の開始の直ぐ後、合成されたmRNAの5’末端は、RNAポリメラーゼと結合するキャップ合成複合体により結合される。この酵素複合体は、mRNAキャップ形成に必要な化学反応を触媒する。合成は、多工程生化学反応として進行する。キャップ形成部分を修飾して、安定性または翻訳効率のようなmRNAの機能性を調節できる。
【0166】
ここで使用する“インビトロで転写されたRNA”は、インビトロで合成されているRNA、好ましくはmRNAをいう。一般に、インビトロで転写されたRNAはインビトロ転写ベクターから産生される。インビトロ転写ベクターは、インビトロで転写されたRNAの産生に使用される鋳型を含む。
【0167】
ここで使用する“ポリ(A)”は、ポリアデニル化によりmRNAに結合した一連のアデノシンである。一過性発現のための構築物の好ましい態様において、ポリAは50〜5000(配列番号30)、好ましくは64を超え、より好ましくは100を超え、最も好ましくは300または400を超える。ポリ(A)配列は、化学的または酵素的に修飾して、局在化、安定性または翻訳効率のようなmRNA機能性を調節できる。
【0168】
ここで使用する“ポリアデニル化”は、ポリアデニリル部分またはその修飾変異体のメッセンジャーRNA分子への共有結合をいう。真核生物において、ほとんどのメッセンジャーRNA(mRNA)分子は3’末端でアデニル化されている。3’ポリ(A)テイルは、酵素であるポリアデニル酸ポリメラーゼの作用によりプレmRNAに付加されたアデニンヌクレオチドの長い配列(しばしば数百)である。高等真核生物において、ポリ(A)テイルは、特異的配列であるポリアデニル化シグナルを含む転写物に付加される。ポリ(A)テイルおよびそれに結合するタンパク質は、エキソヌクレアーゼによる分解からmRNAを保護することを助ける。ポリアデニル化はまた転写終止、mRNAの核からの排出および翻訳にも重要である。ポリアデニル化は、DNAのRNAへの転写直後に核で起こるが、さらに細胞質でも後に生じ得る。転写が終了した後、mRNA鎖はRNAポリメラーゼを付随するエンドヌクレアーゼ複合体の作用により切断される。切断部位は、通常切断部位近くの塩基配列AAUAAAの存在により特徴づけられる。mRNAが切断されたら、アデノシン残基を切断部位の遊離3’末端に付加する。
【0169】
ここで使用する“一過性”は、数時間、数日または数週の期間の非統合導入遺伝子の発現をいい、ここで、発現の期間は、ゲノムに統合されたまたは宿主細胞における安定なプラスミドレプリコン内に含まれた場合の遺伝子の発現期間より短い。
【0170】
ここで使用する用語“処置”および“処置する”は、1種以上の治療剤(例えば、本発明のCARのような1種以上の治療剤)の投与によりもたらされる、増殖性障害の進行、重症度および/または期間の減少または改善または増殖性障害の症状の1つ以上(好ましくは、認識できる症状の1つ以上)の改善をいう。特定の態様において、用語“処置”および“処置する”は、必ずしも患者により認識できるものではない、腫瘍の増殖のような増殖性障害の測定可能な物理的パラメータの少なくとも1個の改善をいう。他の態様において、用語“処置”および“処置する”は、例えば、認識できる症状の安定化により、身体的に、例えば、物理的パラメータの安定化により、生理学的にまたはその両者により増殖性障害進行を阻止することをいう。他の態様において、用語“処置”および“処置する”は、腫瘍サイズまたは癌性細胞数の減少または安定化をいう。
【0171】
用語“シグナル伝達経路”は、細胞のある部分から細胞の他の部分へのシグナルの伝達に役割を有する多様なシグナル伝達分子間の生化学的関連性をいう。用語“細胞表面受容体”は、細胞の膜を通してシグナルを受け取り、シグナルを伝達できる分子および分子の複合体をいう。
【0172】
用語“対象”は、免疫応答を惹起できる生存生物(例えば、哺乳動物、ヒト)を含むことを意図する。
【0173】
用語“実質的に精製された”細胞は、本質的に他の細胞型を含まない細胞をいう。実質的に精製された細胞はまた、天然に存在する状態では通常関係する他の細胞型と分離されている細胞もいう。ある例において、実質的に精製された細胞の集団は、細胞の同種集団をいう。他の例において、この用語は、単に天然状態では必然的に関係している細胞から分離されている細胞をいう。いくつかの面において、細胞をインビトロで培養する。他の面において、細胞をインビトロで培養しない。
【0174】
ここで使用する用語“治療”は処置を意味する。治療効果は、疾患状態の軽減、抑制、寛解または根絶により得られる。
【0175】
ここで使用する用語“予防”は、疾患または疾患状態の予防または保護的処置を意味する。
【0176】
用語“癌関連抗原”または“腫瘍抗原”は、完全にまたはフラグメントとして(例えば、MHC/ペプチド)癌細胞の表面上に発現され、癌細胞への薬物の優先的ターゲティングに有用である分子(概してタンパク質、炭水化物または脂質)を交換可能にいう。ある態様において、腫瘍抗原は、正常細胞と癌細胞の両者により発現されるマーカー、例えば、細胞系譜マーカー、例えば、B細胞上のCD19である。ある態様において、腫瘍抗原は、正常細胞と比較して癌細胞で過発現している、例えば、正常細胞と比較して、1倍過発現、2倍過発現、3倍またはそれ以上過発現している、細胞表面分子である。ある態様において、腫瘍抗原は、癌細胞において適切に合成されない細胞表面分子、例えば、正常細胞で発現される分子と比較して欠失、付加または変異を含む分子である。ある態様において、腫瘍抗原は、完全にまたはフラグメント(例えば、MHC/ペプチド)として、癌細胞の細胞表面に排他的に合成され、正常細胞の表面に合成または発現されない。ある態様において、本発明のCARは、MHC提示ペプチドに結合する抗原結合ドメイン(例えば、抗体または抗体フラグメント)を含むCARを含む。通常、内在性タンパク質由来ペプチドが主要組織適合抗原複合体(MHC)I型分子のポケットを満たし、CD8
+ Tリンパ球上のT細胞受容体(TCR)により認識される。MHCI型複合体は、全有核細胞により構成的に発現される。癌において、ウイルス特異的および/または腫瘍特異的ペプチド/MHC複合体は、免疫療法のための細胞表面標的の独特なクラスを表す。ヒト白血球抗原(HLA)−A1またはHLA−A2の状況でのウイルスまたは腫瘍抗原に由来するTCR様抗体ターゲティングペプチドが記載されている(例えば、Sastry et al., J Virol. 2011 85(5):1935-1942; Sergeeva et al., Blood, 2011 117(16):4262-4272; Verma et al., J Immunol 2010 184(4):2156-2165; Willemsen et al., Gene Ther 2001 8(21):1601-1608; Dao et al., Sci Transl Med 2013 5(176):176ra33; Tassev et al., Cancer Gene Ther 2012 19(2):84-100参照)。例えば、TCR様抗体は、ヒトscFvファージディスプレイライブラリーのようなライブラリーのスクリーニングにより同定できる。
【0177】
用語“遺伝子導入”または“形質転換”または“形質導入”は、外来核酸を宿主細胞に伝達または導入する過程をいう。“遺伝子導入”または“形質転換”または“形質導入”細胞は、外来核酸を遺伝子導入、形質転換または形質導入するものである。細胞は初代対象細胞およびその子孫を含む。
【0178】
用語“特異的に結合”は、サンプル中に存在する結合パートナー(例えば、腫瘍抗原)タンパク質を認識し、結合する抗体またはリガンドをいい、その抗体またはリガンドはサンプル中の他の分子を実質的に認識しまたは結合しない。
【0179】
“制御可能キメラ抗原受容体(RCAR)”は、該用語がここで使用される限り、RCARX細胞にあるとき、標的細胞、概して癌細胞に特異性を有し、かつ制御可能細胞内シグナル産生または増殖を有するRCARX細胞を提供し、これがRCARX細胞の免疫エフェクター特性を最適化できる、最も単純な態様においては概して2個の、ポリペプチドのセットをいう。RCARX細胞は、少なくとも一部、抗原結合ドメインに依存して、抗原結合ドメインにより結合される抗原を含む標的細胞への特異性を提供する。ある態様において、RCARは二量体化スイッチを含み、これは、二量体化分子の存在により、細胞内シグナル伝達ドメインを抗原結合ドメインに連結できる。
【0180】
“膜アンカー”または“膜係留ドメイン”は、該用語がここで使用される限り、細胞外または細胞内ドメインを原形質膜に固定するのに十分なポリペプチドまたは部分、例えば、ミリストイル基をいう。
【0181】
“スイッチドメイン”は、該用語がここで使用される限り、例えば、RCARに言及するとき、二量体化分子の存在下、他のスイッチドメインと結合するもの、概してポリペプチドベースのものをいう。該結合は、第一スイッチドメインに結合、例えば融合した第一のものおよび第二スイッチドメインに結合、例えば融合した第二のものの機能的カップリングをもたらす。第一および第二スイッチドメインを集合的に二量体化スイッチという。いくつかの態様において、第一および第二スイッチドメインは互いに同一であり、例えば、同じ一次アミノ酸配列を有するポリペプチドであり、集合的にホモ二量体化スイッチと呼ばれる。いくつかの態様において、第一および第二スイッチドメインは互いに異なり、例えば、異なる一次アミノ酸配列を有するポリペプチドであり、集合的にヘテロ二量体化スイッチと呼ばれる。いくつかの態様において、スイッチは細胞内である。いくつかの態様において、スイッチは細胞外である。いくつかの態様において、スイッチドメインはポリペプチドベース、例えば、FKBPまたはFRBベースのものであり、二量体化分子は小分子、例えば、ラパログである。いくつかの態様において、スイッチドメインは、ポリペプチドベースのもの、例えば、mycペプチドに結合するscFvであり、二量体化分子はポリペプチド、そのフラグメントまたはポリペプチドの多量体、例えば、mycリガンドまたは1個以上のmyc scFvに結合するmycリガンドの多量体である。いくつかの態様において、スイッチドメインはポリペプチドベースのもの、例えば、myc受容体であり、二量体化分子は抗体またはそのフラグメント、例えば、myc抗体である。
【0182】
“二量体化分子”は、該用語がここで使用される限り、例えば、RCARに言及するとき、第一スイッチドメインと第二スイッチドメインの結合を促進する分子をいう。いくつかの態様において、二量体化分子は対象に天然に存在しないか、または顕著な二量体化を生じる濃度で存在しない。いくつかの態様において、二量体化分子は小分子、例えば、ラパマイシンまたはラパログ、例えば、RAD001である。
【0183】
用語“生物学的同等性”は、対照化合物(例えば、RAD001)の対照用量または対照量により生じる効果と同等の効果を生じるのに必要な対照化合物(例えば、RAD001)以外の薬剤の量である。ある態様において、効果は、例えば、インビボまたはインビトロアッセイにおいて評価される、例えば、ここに記載するアッセイ、例えば、Boulayアッセイにより測定される、例えば、P70 S6キナーゼ阻害により測定される、mTOR阻害のレベルまたはウェスタンブロットによるリン酸化S6レベルの測定値である。ある態様において、効果は、細胞選別により測定した、PD−1陽性/PD−1陰性T細胞比の変更である。ある態様において、mTOR阻害剤の生物学的同等量または用量は、対照化合物の対照用量または対照量と同レベルのP70 S6キナーゼ阻害を達成する量または用量である。ある態様において、mTOR阻害剤の生物学的同等量または用量は、対照化合物の対照用量または対照量と同レベルのPD−1陽性/PD−1陰性T細胞比の変更を達成する量または用量である。
【0184】
用語“低い、免疫増強用量”は、mTOR阻害剤、例えば、アロステリックmTOR阻害剤、例えば、RAD001またはラパマイシンまたは触媒的mTOR阻害剤と組み合わせて使用するとき、例えば、P70 S6キナーゼ活性の阻害により測定して、mTOR活性を、完全にではないが、一部阻害する、mTOR阻害剤の用量である。例えば、P70 S6キナーゼの阻害により、mTOR活性を評価する方法をここに記載する。本用量は、完全な免疫抑制を生じるには不十分であるが、免疫応答の増強には十分である。ある態様において、mTOR阻害剤の低い、免疫増強用量は、PD−1陽性T細胞数の減少および/またはPD−1陰性T細胞数の増加またはPD−1陰性T細胞/PD−1陽性T細胞比の増加を生じる。ある態様において、mTOR阻害剤の低い、免疫増強用量は、ナイーブT細胞数増加を生じる。ある態様において、mTOR阻害剤の低い、免疫増強用量は、次の1個以上を生じる。
例えば、記憶T細胞、例えば、記憶T細胞前駆体における、次のマーカー、CD62L
高、CD127
高、CD27
+およびBCL2の1個以上の発現の増加;
例えば、記憶T細胞、例えば、記憶T細胞前駆体における、KLRG1発現の減少;および
記憶T細胞前駆体、例えば、次の特徴の1個または組み合わせを有する細胞の数の増加:CD62L
高増加、CD127
高増加、CD27
+増加、KLRG1減少およびBCL2増加;
ここで、上記変化のいずれかは、例えば、非処置対象と比較して、例えば、少なくとも一過性に生じる。
【0185】
範囲:本開示をとおして、本発明の種々の面を範囲の形式で表し得る。範囲の形式の記載は、単なる便宜上および簡潔さのためであり、本発明の範囲の確定的制限と解釈してはならないことは理解すべきである。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分的範囲ならびに該範囲内の個々の数値を具体的に開示すると解釈すべきである。例えば、1〜6のような範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などのような部分的範囲、ならびにその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3および6が具体的に開示されていると解釈すべきである。他の例として、95〜99%同一性のような範囲は、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有する何かを含み、96〜99%、96〜98%、96〜97%、97〜99%、97〜98%および98〜99%同一性のような部分的範囲を含む。これは、範囲の幅と無関係に適用される。
【0186】
記載
ここに提供されるのは、抗メソテリンキメラ抗原受容体(CAR)、例えば、ヒトメソテリンCARを使用する、癌のような疾患の処置に使用するための組成物および方法である。
【0187】
一つの面において、本発明は、メソテリンタンパク質への特異的結合のために操作された抗体または抗体フラグメントを含む、多数のキメラ抗原受容体を提供する。一つの面において、本発明は、CARを発現するように操作された細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)を提供し、例えば、ここで、CAR T細胞(“CART”)が抗癌特性を示す。一つの面において、細胞はCARで形質転換されており、CARを細胞表面上に発現する。ある態様において、細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)はCARをコードするウイルスベクターを形質導入されている。ある態様において、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。ある態様において、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。あるこのような態様において、細胞はCARを安定に発現し得る。他の態様において、細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)はCARをコードする核酸、例えば、mRNA、cDNA、DNAを遺伝子導入されている。あるこのような態様において、細胞はCARを一過性に発現し得る。
【0188】
一つの面において、CARのメソテリンタンパク質結合部分はscFv抗体フラグメントである。一つの面において、このような抗体フラグメントは、それが由来するIgG抗体と等価の結合親和性を保持する、すなわち同等の親和性で同じ抗原と結合する点で機能的ある。一つの面において、このような抗体フラグメントは、当業者により理解される、免疫応答の活性化、その標的抗原から起こるシグナル伝達の阻害、キナーゼ活性阻害などを含むが、これらに限定されない生物学的応答を提供する点で、機能的ある。一つの面において、CARのメソテリン抗原結合ドメインは、scFv抗体フラグメントであり、これはヒトであるかまたはそれが由来するscFvのマウス配列と比較してヒト化されている。一つの態様において、ヒト抗メソテリンscFv抗体フラグメントは、表2に提供する軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域またはそれと相当な同一性、例えば、95〜99%同一性を有する配列を含む。
【0189】
いくつかの面において、本発明の抗体はキメラ抗原受容体(CAR)に取り込まれる。一つの面において、CARは、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62としてここに提供するポリペプチド配列またはこれらと95〜99%同一性を有する配列を含む。
【0190】
一つの面において、CARのヒトscFv部分は、配列が哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化されている導入遺伝子によりコードされる。一つの面において、本発明のCAR構築物全体が、配列全体が哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化されている導入遺伝子によりコードされる。コドン最適化は、コードDNAにおける同義的コドン(すなわち、同じアミノ酸をコードするコドン)の出現頻度が、異なる種で偏っているとの発見をいう。このようなコドン縮重は、同一ポリペプチドが多様なヌクレオチド配列によりコードされることを可能とする。多様なコドン最適化方法が当分野で知られ、例えば、少なくとも米国特許5,786,464号および6,114,148号に開示の方法を含む。
【0191】
一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号39に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号40に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号41に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号42に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号43に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号44に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号45に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号46に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号47に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号48に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号49に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号50に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号51に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号52に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号53に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号54に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号55に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号56に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号57に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号58に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号59に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号60に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号61に提供されるscFv部分を含む。一つの面において、ヒトメソテリンCAR分子は、配列番号62に提供されるscFv部分を含む。
【0192】
一つの面において、ここに開示されるCARは、特異的抗体の抗原結合ドメインと細胞内シグナル伝達分子を合わせる。例えば、いくつかの面において、細胞内シグナル伝達分子は、CD3ゼータ鎖、4−1BBおよびCD28シグナル伝達モジュールおよびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。一つの面において、抗原結合ドメインはメソテリンと結合する。一つの面において、メソテリンCARは表2に提供される配列を含む。
【0193】
一つの面において、メソテリンCARは、CARは、配列番号63〜86の1個以上に提供される配列から選択される。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号63に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号64に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号65に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号66に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号67に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号68に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号69に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号70に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号71に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号72に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号73に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号74に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号75に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号76に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号77に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号78に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号79に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号80に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号81に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号82に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号83に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号84に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号85に提供される配列を含む。一つの面において、メソテリンCARは、配列番号86に提供される配列を含む。
【0194】
さらに、本発明は、メソテリンCAR組成物および、数ある疾患の中でも、癌またはメソテリンを発現する細胞または組織が関与するあらゆる悪性腫瘍もしくは自己免疫性疾患の処置のための医薬または方法におけるそれらの使用を提供する。
【0195】
一つの面において、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作された細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)を提供し、ここで、CAR T細胞(“CART”)は抗腫瘍特性を示す。好ましい抗原はメソテリンである。一つの面において、CARの抗原結合ドメインはヒト抗メソテリン抗体フラグメントを含む。一つの面において、CARの抗原結合ドメインは、scFvを含むヒト抗メソテリン抗体フラグメントを含む。したがって、本発明は、ヒト抗メソテリン結合ドメインを含み、T細胞またはNK細胞内に設計されるメソテリンCARおよび養子療法のためのその使用方法を提供する。
【0196】
一つの面において、メソテリンCARは、CD137(4−1BB)シグナル伝達ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン、CD3ゼータシグナルドメインおよびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一つの面において、メソテリンCARは、CD137(4−1BB)またはCD28、CD3ゼータシグナルドメインおよびこれらの任意の組み合わせ以外の1個以上の共刺激分子の少なくとも1個の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0197】
さらに、本発明は、メソテリンCAR組成物および、数ある疾患の中でも、癌またはメソテリンを発現する細胞または組織が関与するあらゆる悪性腫瘍もしくは自己免疫性疾患を処置するための医薬または方法におけるそれらの使用を提供する。
【0198】
キメラ抗原受容体(CAR)
本発明は、CARをコードする配列を含む組み換え核酸構築物を包含し、ここで、該CARはメソテリンに特異的に結合する抗体、例えば、メソテリンに特異的に結合するヒト抗体フラグメンを含む。一つの面において、メソテリンはヒトメソテリンであり、抗体フラグメントの配列は細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列と隣接し、かつ同じリーディングフレーム内にある。細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメイン、例えば、ゼータ鎖を含み得る。共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインの少なくとも一部を含むCARの一部をいう。
【0199】
特定の面において、本発明のCAR構築物は、配列番号39〜62からなる群から選択されるscFvドメインを含み、ここで、scFvの前に配列番号1に提供されるような任意的なリーダー配列があってよく、そのあとに配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5に提供されるような任意的なヒンジ配列、配列番号6に提供されるような膜貫通型領域、配列番号7または配列番号8を含む細胞内シグナル伝達ドメインおよび配列番号9または配列番号10を含むCD3ゼータ配列があってよく、ここで、これらのドメインは単一融合タンパク質を形成するように隣接し、かつ同じリーディングフレーム内にある。また本発明に包含されるのは、配列番号87;配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109および配列番号110またはこれらと95〜99%同一性を有する配列からなる群から選択されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。また本発明に包含されるのは、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62またはこれらと95〜99%同一性を有する配列からなる群から選択されるscFvフラグメントの各々および配列番号1、2および6〜9のドメインの各々のポリペプチドと、それに加えてコードされる本発明のメソテリンCAR融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列である。一つの面において、代表的メソテリンCAR構築物は、任意的なリーダー配列、細胞外メソテリン結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通型ドメインおよび細胞内刺激ドメインを含む。一つの面において、メソテリンCAR構築物は任意的なリーダー配列、メソテリン結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通型ドメイン、細胞内共刺激ドメインおよび細胞内刺激ドメインを含む。ヒトscFvドメインを含む具体的メソテリンCAR構築物は配列番号87〜110として提供される。
【0200】
完全長CAR配列は、ここでは、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85または配列番号86としても提供される。代表的リーダー配列は配列番号1として提供される。代表的ヒンジ/スペーサー配列は配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5として提供される。代表的膜貫通型ドメイン配列は配列番号6として提供される。4−1BBタンパク質の細胞内シグナル伝達ドメインの代表的配列は配列番号7として提供される。CD27の細胞内シグナル伝達ドメインの代表的配列は配列番号8として提供される。代表的CD3ゼータドメイン配列は配列番号9または配列番号10として提供される。
【0201】
一つの面において、本発明は、CARをコードする核酸分子を含む組み換え核酸構築物を提供し、ここで、核酸分子は、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列と隣接し、かつ同じリーディングフレーム内にある、例えば、ここに記載の抗メソテリン結合ドメインをコードする核酸配列を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号87〜110の1個以上から選択される。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号87を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号88を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号89を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号90を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号91を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号92を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号93を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号94を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号95を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号96を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号97を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号98を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号99を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号100を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号101を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号102を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号103を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号104を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号105を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号106を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号107を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号108を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号109を含む。一つの面において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号110を含む。一つの面において、本発明は、CARをコードする導入遺伝子を含む組み換えDNA構築物を提供し、ここで、導入遺伝子は、ここに記載する抗メソテリン結合ドメイン、例えば、配列番号87〜110の1個以上から選択されるヒト抗メソテリン結合ドメインをコードする核酸配列を含み、ここで、配列は細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列と隣接し、かつ同じリーディングフレーム内にある。CARにおいて使用できる代表的細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば、CD3ゼータ、CD28、4−1BBなどの、1個以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含むが、これらに限定されない。ある例において、CARは、CD3ゼータ、CD28、4−1BBなどの任意の組み合わせを含み得る。一つの面において、本発明のCAR構築物の核酸配列は、配列番号111〜134の1個以上から選択される。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号111である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号112である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号113である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号114である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号115である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号116である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号117である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号118である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号119である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号120である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号121である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号122である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号123である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号124である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号125である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号126である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号127である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号128である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号129である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号130である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号131である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号132である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号133である。一つの面において、CAR構築物の核酸配列は配列番号134である。
【0202】
所望の分子をコードする核酸配列は、標準法を使用する、例えば該遺伝子を発現する細胞からのライブラリーのスクリーニング、それを含むことが知られるベクターからの遺伝子の抽出またはそれを含む細胞および組織からの直接単離のような、当分野で知られる組み換え方法を使用して得ることができる。あるいは、所望の核酸をクローン化よりむしろ合成により製造できる。
【0203】
本発明は、細胞に直接形質導入できるCARを発現する、レトロウイルス構築物およびレンチウイルスベクター構築物を含む。本発明はまた、細胞に直接遺伝子導入できる、RNA構築物も含む。遺伝子導入において使用するためのmRNAを産生する方法は、特別に設計されたプライマーを用いる鋳型のインビトロ転写(IVT)、続くポリA付加を含み、概して50〜2000塩基長の、3’および5’非翻訳配列(“UTR”)、5’キャップおよび/または配列内リボソーム進入部位(IRES)、発現すべき核酸およびポリAテイルを含む構築物を産生する(配列番号35)。このようにして産生されたRNAは、異なる種類の細胞に効率的に遺伝子導入する。一つの態様において、鋳型は、CARのための配列を含む。ある態様において、RNA CARベクターは、エレクトロポレーションによりT細胞に形質導入される。
【0204】
抗原結合ドメイン
一つの面において、本発明のCARは、別に抗原結合ドメインとも称す、標的特異的結合エレメントを含む。抗原結合ドメインの選択は、標的細胞の表面を規定する抗原のタイプおよび数による。例えば、抗原結合ドメインを、特定の疾患状態と関係する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用する抗原を認識するように選択し得る。
【0205】
一つの面において、CAR介在免疫エフェクター細胞応答は、所望の抗原を発現する細胞に指向でき、ここで、CARは該所望の抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む。一つの面において、CARの抗原結合ドメインを含む部分は、メソテリンを標的とする抗原結合ドメインを含む。一つの面において、抗原結合ドメインはヒトメソテリンを標的とする。
【0206】
抗原結合ドメインは、ラクダ類由来ナノボディの重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)および可変ドメイン(VHH)のような単一ドメイン抗体を含むが、これらに限定されない、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体およびその機能的フラグメント、および組み換えフィブロネクチンドメインなどのような抗原結合ドメインとして機能することが当分野で知られる代替スキャフォールドを含むが、これらに限定されない抗原に結合するあらゆるドメインであり得る。ある例において、抗原結合ドメインが、CARが最終的に使用されるのと同じ種に由来するのが有益である。例えば、ヒトで使用するために、CARの抗原結合ドメインが、抗体または抗体フラグメントの抗原結合ドメインについてヒトまたはヒト化残基を含むのが有益であり得る。それゆえに、一つの面において、抗原結合ドメインはヒト抗体または抗体フラグメントを含む。
【0207】
一つの態様において、抗メソテリン結合ドメインは、例えば、ここに記載する競合アッセイにおいて、配列番号279を含むアミノ酸配列を含む抗原結合ドメイン、例えば、マウスSS1 scFvとヒトメソテリンへの結合について競合しないか、または競合が乏しい。
【0208】
マウスSS1 scFvのアミノ酸配列を下に示す(配列番号279)
【化1】
【0209】
一つの態様において、抗メソテリン結合ドメインは、例えば、ここに記載する競合アッセイにおいて、配列番号43または配列番号49から選択される抗メソテリン軽鎖アミノ酸配列のLC CDR1、LC CDR2およびLC CDR3ならびに配列番号43または配列番号49から選択される抗メソテリン重鎖アミノ酸配列のHC CDR1、HC CDR2およびHC CDR3を含む抗原結合ドメインとヒトメソテリンへの結合について競合する。一つの態様において、抗メソテリン結合ドメインは、例えば、ここに記載する競合アッセイにおいて、配列番号203または配列番号209から選択されるLC CDR1、配列番号227または配列番号233から選択されるLC CDR2および配列番号251または配列番号257から選択されるLC CDR3;および配列番号138または配列番号144から選択されるHC CDR1、配列番号156または配列番号162から選択されるHC CDR2および配列番号179または配列番号185から選択されるHC CDR3を含む抗原結合ドメインと、ヒトメソテリンへの結合について競合する。
【0210】
一つの態様において、抗メソテリン結合ドメインは、例えば、ここに記載する競合アッセイにおいて、配列番号43または配列番号49から選択される配列を含む抗原結合ドメインと、ヒトメソテリンへの結合について競合する。
【0211】
いくつかの態様において、競合アッセイはSPRベースのアッセイである。概説すると、抗原、例えば、ヒトメソテリンを表面上に固定化する。微小流動系を介して、対照抗体を抗原層上から注入する。対照抗体の抗原への結合により、概して応答単位(RU)で表すシグナルの増加、例えば、対照シグナルを検出する。所望の時間の後、試験抗体を抗原層上から注入する。試験抗体が抗原上の異なる領域またはエピトープに結合するならば、対照抗体の結合により検出された最高シグナル、例えば、対照シグナルと比較して、さらなるシグナルの増加、例えば、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上のシグナル、例えば、RUの増加が検出される。試験抗体が抗原の同じ領域またはエピトープに結合するならば、シグナルの増加はわずかであるか増加はなく、例えば、RUは、対照抗体の結合により検出された最高シグナル、例えば、対照シグナルと比較して、シグナル、例えば、例えば、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満または1%未満のRUの増加が検出される。このSPRベースの競合アッセイを使用したとき、対照抗体の抗原への結合により検出された対照シグナルと比較して、シグナル、例えば、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満または1%未満のRUの増加が検出されたとき、抗体は対照抗体と競合すると言える。対照抗体の抗原への結合により検出された対照シグナルと比較して、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上のシグナル、例えば、RUの増加が検出されたとき、抗体は、対照抗体と競合しないかまたは競合が乏しいと言える。
【0212】
ここに記載する抗原結合ドメインにが結合するエピトープの同定は、当分野で知られる種々の方法によりなされる。例えば、抗原と結合したまたは複合体化した抗原結合ドメインを含む結晶構造が解明され得る。他の例において、抗原のエピトープに貢献する領域を同定するかまたはエピトープを同定するために、アッセイ、例えば、保護アッセイを実施できる。代表的保護アッセイである水素/重水素交換(HDX)マススペクトロメトリーアッセイを実施例18にさらに記載する。HDXマススペクトロメトリーを実施して、マウスSS1、例えば、配列番号279およびここに記載するM5 scFv、例えば、配列番号43に対する、ヒトMSLN上の推定エピトープ、例えば、hMSLN
296〜588、例えば、配列番号278を同定した。hMSLN
296〜588、例えば、配列番号278は、ヒトメソテリンのアミノ酸296〜588を表し、例えば、配列番号278の最初のアミノ酸はアミノ酸296であり、配列番号278の最後のアミノ酸はアミノ酸588である。ヒトメソテリンのアミノ酸配列、アミノ酸296〜588を下に提供する(配列番号278):
【化2】
【0213】
HDXマススペクトロメトリーアッセイの結果は、hMSLN
296〜588の314〜315、317〜318、346〜349および369〜375の1個以上のアミノ酸、例えば、配列番号278がSS1により認識されるエピトープに貢献することを示した。HDXマススペクトロメトリーアッセイの結果は、hMSLN
296〜588の485〜490、498〜507、532〜537または545〜572の1個以上のアミノ酸、例えば、配列番号278が、ここに記載する抗メソテリン抗原結合ドメイン、例えば、M5 scFv、例えば、配列番号43により認識されるエピトープに貢献することを示した。
【0214】
一つの態様において、ここに記載する抗メソテリン結合ドメインは、配列番号279を含む配列を含む抗原結合ドメイン、例えば、マウスSS1により標的とされるヒトメソテリンのエピトープと異なるヒトメソテリンのエピトープ、例えば、配列番号278に結合する。
【0215】
一つの態様において、SS1により認識されるエピトープは、hMSLN
296〜588のアミノ酸314〜315、317〜318、346〜349または369〜375、例えば、配列番号278またはこれらの任意の組み合わせから選択される配列を含む。一つの態様において、SS1により認識されるエピトープは、hMSLN
296〜588のアミノ酸314〜315、317〜318、346〜349または369〜375から選択される1個以上のアミノ酸、例えば、配列番号278を含む。
【0216】
一つの態様において、ここに記載する抗メソテリン結合ドメインはヒトメソテリンのC末端に結合する。一つの態様において、ここに記載する抗メソテリン結合ドメインは配列番号278のアミノ酸450〜588内のエピトープと結合し、例えば、ここで、エピトープは、一部または全体で、配列番号278のアミノ酸450〜588内、アミノ酸480〜580内またはアミノ酸485〜572内に見られる。一つの態様において、ここに記載する抗メソテリン結合ドメインにより認識されるエピトープは、hMSLN
296〜588のアミノ酸485〜490、498〜507、532〜537または545〜572から選択される配列、例えば、配列番号278またはこれらの任意の組み合わせを含む。一つの態様において、ここに記載する抗メソテリン結合ドメインにより認識されるエピトープは、hMSLN
296〜588の485〜490、498〜507、532〜537または545〜572から選択される1個以上のアミノ酸、例えば、配列番号278またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0217】
一つの態様において、抗メソテリン結合ドメインは、配列番号39〜62から選択されるヒト抗メソテリン結合ドメインの軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)および軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)の1個以上(例えば、全3個)および配列番号39〜62から選択されるヒト抗メソテリン結合ドメインの重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)の1個以上(例えば、全3個)を含む。一つの態様において、ヒト抗メソテリン結合ドメインは、ここに(例えば、表2に)記載する軽鎖可変領域および/またはここに(例えば、表2に)記載する重鎖可変領域を含む。一つの態様において、抗メソテリン結合ドメインは、表2のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含むscFvを含む。ある態様において、抗メソテリン結合ドメイン(例えば、scFV)は、表2に示す軽鎖可変領域のアミノ酸配列に少なくとも1個、2個または3個の修飾(例えば、置換)を有するが、修飾(例えば、置換)が30個、20個または10個を超えないアミノ酸配列または表2のアミノ酸配列と95〜99%同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域;および/または表2に示す重鎖可変領域のアミノ酸配列に少なくとも1個、2個または3個の修飾(例えば、置換)を有するが、修飾(例えば、置換)が30個、20個または10個を超えないアミノ酸配列または表2のアミノ酸配列と95〜99%同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0218】
一つの態様において、ヒト抗メソテリン結合ドメインは、配列番号39〜62からなる群から選択される配列またはこれらと95〜99%同一性を有する配列を含む。一つの態様において、ヒト抗メソテリン結合ドメインをコードする核酸配列は、配列番号87〜110からなる群から選択される配列またはこれらと95〜99%同一性を有する配列を含む。一つの態様において、ヒト抗メソテリン結合ドメインはscFvであり、そしてここに、例えば、表2または3に記載するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域が、ここに、例えば、表2または3に記載するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域に、リンカー、例えば、ここに記載するリンカーを介して結合している。一つの態様において、ヒト化抗メソテリン結合ドメインは(Gly4−Ser)nリンカー(配列番号26)(nは1、2、3、4、5または6、好ましくは3または4である)を含む。ScFvの軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、例えば、次の軽鎖可変領域−リンカー−重鎖可変領域または重鎖可変領域−リンカー−軽鎖可変領域の配向のいずれかであり得る。
【0219】
一つの面において、抗原結合ドメイン部分は、配列番号39〜62から選択される1個以上の配列を含む。一つの面において、CARは配列番号63〜86から選択される1個以上の配列である。
【0220】
一つの面において、本発明の抗体は、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fvフラグメント、scFv抗体フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VHドメインとCH1ドメインからなるFdフラグメント、線状抗体、sdAb(VLまたはVHのいずれか)のような単一ドメイン抗体、ラクダ類VHHドメイン、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2個のFabフラグメントを含む二価フラグメントのような抗体フラグメントから形成された多特異性抗体および単離CDRまたは抗体の他のエピトープ結合フラグメントを含む、多様な他の形態で存在し得る。一つの面において、ここに提供する抗体フラグメントはscFvである。ある例において、ヒトscFvは酵母ディスプレイライブラリーに由来してもよい。
【0221】
ディスプレイライブラリーはコレクションであり、コレクションされているものは、アクセス可能なポリペプチド成分および該ポリペプチド成分をコードするまたは同定する取得可能な成分を含む。ポリペプチド成分は、種々のアミノ酸配列が表されるように変化する。ポリペプチド成分は任意の長さ、例えば3個のアミノ酸〜300を超えるアミノ酸までであり得る。一つのディスプレイライブラリーは1個を越えるポリペプチド成分、例えば、Fabの2個のポリペプチド鎖を含み得る。一つの代表的態様において、ディスプレイライブラリーを使用して、抗メソテリン結合ドメインを同定できる。選択において、ライブラリーの各メンバーのポリペプチド成分をメソテリンまたはそのフラグメントでプローブし、該ポリペプチド成分がメソテリンと結合したならば、ディスプレイライブラリーメンバーを、一般に支持体上に保持させることにより同定する。
【0222】
保持されたディスプレイライブラリーメンバーを支持体から取得し、分析する。分析は、増幅と続く類似または相違条件下の選択を含む。例えば、陽性選択と陰性選択が交互であり得る。分析はまたポリペプチド成分、すなわち、抗メソテリン結合ドメインのアミノ酸配列の決定およびさらなる特徴づけのためのポリペプチド成分の精製を含む。
【0223】
多様な形態をディスプレイライブラリーのために使用できる。例は、ファージディスプレイである。ファージディスプレイにおいて、タンパク質成分は、一般にバクテリオファージコートタンパク質に共有結合する。該結合は、コートタンパク質に融合したタンパク質成分をコードする核酸の翻訳に由来する。結合は可動性ペプチドリンカー、プロテアーゼ部位または終止コドンの抑制の結果として取り込まれたアミノ酸を含む。ファージディスプレイは、例えば、米国5,223,409号;Smith (1985) Science 228:1315-1317;WO92/18619号;WO91/17271号;WO92/20791号;WO92/15679号;WO93/01288号;WO92/01047号;WO92/09690号;WO90/02809号;de Haard et al. (1999) J. Biol. Chem 274:18218-30; Hoogenboom et al. (1998) Immunotechnology 4:1-20; Hoogenboom et al. (2000) Immunol Today 2:371-8およびHoet et al. (2005) Nat Biotechnol. 23(3)344-8に記載されている。タンパク質成分をディスプレイするバクテリオファージを、標準ファージ調製法、例えば増殖培地からのPEG沈殿を使用して、増幅し、取得できる。個々のディスプレイファージ選択後、選択したタンパク質成分をコードする核酸を、選択したファージを感染させた細胞またはファージ自体から、増幅後単離できる。個々のコロニーまたはプラークを選別し、核酸を単離し、配列決定できる。
【0224】
他のディスプレイ形式は、細胞ベースのディスプレイ(例えば、WO03/029456号参照)、タンパク質−核酸融合体(例えば、米国6,207,446号参照)、リボソームディスプレイ(例えば、Mattheakis et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9022 and Hanes et al. (2000) Nat Biotechnol. 18:1287-92; Hanes et al. (2000) Methods Enzymol. 328:404-30;およびSchaffitzel et al. (1999) J Immunol Methods. 231(1-2):119-35)および大腸菌ペリプラズムディスプレイ(J Immunol Methods. 2005 Nov 22;PMID: 16337958)を含む。
【0225】
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、他の方法を使用して、抗メソテリン結合ドメインを得ることができる。例えば、メソテリンまたはそのフラグメントを、非ヒト動物、例えば、齧歯類における抗原として使用できる。
【0226】
一つの態様において、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、ヒトIg座位の大フラグメントを有する、マウス抗体産生を欠損するマウス株を操作することが可能である。ハイブリドーマテクノロジーを使用して、所望の特異性を有する遺伝子由来の抗原特異的モノクローナル抗体(Mab)を産生し、選択し得る。例えば、XENOMOUSE
TM、Green et al., 1994, Nat. Gen. 7:13-21;米国2003−0070185号、WO96/34096号(1996年10月31日公開)およびPCT出願PCT/US96/05928号(1996年4月29日出願)を参照のこと。
【0227】
ある例において、scFvを、当分野で知られる方法により製造できる(例えば、Bird et al., (1988) Science 242:423-426およびHuston et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883参照)。ScFv分子を、例えば、可動性ポリペプチドリンカーを使用して、VH領域とVL領域を連結することにより製造できる。scFv分子は、最適化された長さおよび/またはアミノ酸組成のリンカー(例えば、Ser−Glyリンカー)を含み得る。リンカー長は、scFvの可変領域がどのように折りたたまれ、相互作用するかに大きく影響し得る。実際、短ポリペプチドリンカー(例えば、5〜10アミノ酸)を用いたとき、鎖内折りたたみは阻止される。鎖間折りたたみも、2個の可変領域が一緒になって機能的エピトープ結合部位を形成することを必要とする。リンカー配向およびサイズの例について、例えば、Hollinger et al. 1993 Proc Natl Acad. Sci. U.S.A. 90:6444-6448、米国特許出願公開2005/0100543号、2005/0175606号、2007/0014794号およびPCT公開WO2006/020258号を参照し、WO2007/024715号を引用により本明細書に包含させる。
【0228】
scFvは、VL領域とVH領域の間に、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個またはそれ以上のアミノ酸残基のリンカーを含み得る。リンカー配列は、任意の天然に存在するアミノ酸を含み得る。ある態様において、リンカー配列はアミノ酸グリシンおよびセリンを含む。他の態様において、リンカー配列は、(Gly
4Ser)
n(ここで、nは1以上の正の整数である)のような、グリシンおよびセリン反復のセットを含む(配列番号135)。一つの態様において、リンカーは(Gly
4Ser)
4(配列番号27)または(Gly
4Ser)
3(配列番号28)であり得る。リンカー長の変動は、活性を保持または増強し、活性試験において優れた有効性をもたらし得る。
【0229】
安定性および変異
抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFv分子(例えば、可溶性scFv)の安定性は、従来の対照scFv分子または完全長抗体の生物物理学的特性(例えば、熱安定性)を対照して評価できる。一つの態様において、ヒトscFvは、記載するアッセイにおいて、対照結合分子(例えば従来のscFv分子)より約0.1℃、約0.25℃、約0.5℃、約0.75℃、約1℃、約1.25℃、約1.5℃、約1.75℃、約2℃、約2.5℃、約3℃、約3.5℃、約4℃、約4.5℃、約5℃、約5.5℃、約6℃、約6.5℃、約7℃、約7.5℃、約8℃、約8.5℃、約9℃、約9.5℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃または約15℃を超えて大きい熱安定性を有する。
【0230】
抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvの改善した熱安定性はその後の全メソテリンCAR構築物に貢献し、メソテリンCAR構築物の治療特性を改善させる。抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvの熱安定性は、従来の抗体と比較して少なくとも約2℃または3℃改善できる。一つの態様において、抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvは、従来の抗体と比較して1℃改善した熱安定性を有する。他の態様において、抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvは、従来の抗体と比較して2℃改善した熱安定性を有する。他の態様において、抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvは、従来の抗体と比較して、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃改善した熱安定性を有する。例えば、ここに開示するscFv分子とscFv VHおよびVLの由来となった抗体のscFv分子またはFabフラグメントの間で比較できる。熱安定性を当分野で知られる方法を使用して測定できる。例えば、一つの態様において、Tmを測定できる。Tmを測定する方法およびタンパク質安定性を決定する他の方法は下にさらに詳述する。
【0231】
scFvにおける変異(可溶性scFvの直接変異誘発により発生)は、scFvの安定性を改変し、scFvおよびCART構築物の全般的安定性を改善する。ヒト化scFvの安定性を、Tm、変性温度および凝集温度のような測定を使用してマウスscFvと比較する。
【0232】
一つの態様において、抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvは、変異した抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvが抗メソテリン構築物の安定性の改善に貢献するように、少なくとも1個の変異を有する。他の態様において、抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvは、変異した抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvが抗メソテリン構築物の安定性の改善に貢献するように、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個の変異を有する。変異体scFvの結合能力は、実施例に記載するアッセイを使用して決定できる。
【0233】
結合親和性
結合親和性を決定するための多種多様な方法が当分野で知られる。結合親和性を決定する代表的方法は、例えばBIAcore system(Pharmacia Biosensor AB, Uppsala, Sweden and Piscataway, N.J.)を使用する、バイオセンサーマトリクス内のタンパク質濃度の改変の検出により実時間生体分子特異的相互作用の解析を可能とする、表面プラズモン共鳴を用いる。表面プラズモン共鳴法は、光学的現象である。さらなる記載については、Jonsson, U., et al. (1993) Ann. Biol. Clin. 51:19-26; Jonsson, U., i (1991) Biotechniques 11:620-627; Johnsson, B., et al. (1995) J. Mol. Recognit. 8:125-131;およびJohnnson, B., et al. (1991) Anal. Biochem. 198:268-277を参照のこと。
【0234】
一つの面において、本発明のCAR組成物の抗体またはそのフラグメントを含む部分は、ここに記載するアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含み、ここで、該抗体またはそのフラグメントは、本発明の抗メソテリン抗体フラグメントの所望の機能的特性を保持する。一つの具体的面において、本発明のCAR組成物は抗体フラグメントを含む。さらなる面において、該抗体フラグメントはscFvを含む。
【0235】
種々の面において、本発明のCAR組成物の抗体または抗体フラグメントを含む部分は、可変領域の一方または両方(すなわち、VHおよび/またはVL)内、例えば1個以上のCDR領域内および/または1個以上のフレームワーク領域内の1個以上のアミノ酸の修飾により操作される。一つの具体的面において、本発明のCAR組成物は抗体フラグメントを含む。さらなる面において、その抗体フラグメントはscFvを含む。
【0236】
本発明の抗体または抗体フラグメントは、アミノ酸配列が異なるように(例えば、野生型から)、しかし、所望の活性は異ならないようにさらに修飾し得ることは当業者には理解される。例えば、“非必須”アミノ酸残基でのアミノ酸置換に至るさらなるヌクレオチド置換を、タンパク質に行ってよい。例えば、分子内の非必須アミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置換してよい。他の態様において、アミノ酸の鎖を、側鎖ファミリーメンバーの順番および/または組成が異なる構造的に類似する鎖で置き換えてよく、すなわち、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられている保存的置換を行い得る。
【0237】
類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当分野で定義されており、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。
【0238】
2個以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈での同一性パーセントは、同じである2個以上の配列をいう。2個の配列が、次の配列比較アルゴリズムの一つを使用して、比較ウィンドウまたは指定領域にわたり比較し、最大一致のために配列したとき、または手動アラインメントおよび目視検査により、同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドを特定のパーセンテージ(すなわち、特定の領域、または、特定されていないとき、全配列をとおして60%同一性、所望により70%、71%。72%。73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一性)有するならば、2個の配列は“実質的に同一”である。所望により、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド(または10アミノ酸)長である領域にわたりまたはより好ましくは100〜500または1000またはそれ以上のヌクレオチド(または20、50、200またはそれ以上のアミノ酸)長である領域にわたり存在する。
【0239】
配列比較のために、概して一つの配列が対照配列として作用し、それに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験配列および対照配列をコンピューターに入力し、必要であれば部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使用できまたは代替パラメータを指定できる。配列比較アルゴリズムは、その後、プログラムパラメータに基づき、対照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。比較のために配列をアラインメントする方法は当分野で周知である。比較のための配列の最適アラインメントは、例えば、Smith and Waterman, (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cの局地的相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch, (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman, (1988) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索方法により、これらのアルゴリズムのコンピューター制御履行(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)または手動アラインメントおよび目視検査により(例えば、Brent et al., (2003) Current Protocols in Molecular Biology参照)、実施できる。
【0240】
配列同一性パーセントおよび配列類似性の決定に適するアルゴリズムの二つの例はBLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これはそれぞれAltschul et al., (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402;およびAltschul et al., (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationから公的に利用可能である。
【0241】
2個のアミノ酸配列間の同一性パーセントはまた、ALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれているE. Meyers and W. Miller, (1988) Comput. Appl. Biosci. 4:11-17のアルゴリズムを使用して、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用しても決定できる。さらに、2個のアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comから利用可能)におけるGAPプログラムに取り込まれているNeedleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:444-453アルゴリズムを使用して、Blossom 62マトリクスまたはPAM250マトリクスおよびギャップ加重16、14、12、10、8、6または4および長さ加重1、2、3、4、5または6を使用しても決定できる。
【0242】
一つの面において、本発明は、機能的に等価な分子を産生する出発抗体またはフラグメント(例えば、scFv)アミノ酸配列の修飾を企図する。例えば、CARに含まれる抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvのVHまたはVLを、抗メソテリン結合ドメイン、例えば、scFvの出発VHまたはVLフレームワーク領域と少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一性を保持するように修飾できる。本発明は、機能的に等価な分子を産生するための、全CAR構築物の修飾、例えば、CAR構築物の種々のドメインの1個以上のアミノ酸配列における修飾を企図する。CAR構築物は、出発CAR構築物と少なくとも約70%、71%。72%。73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一性を保持するように修飾できる。
【0243】
膜貫通型ドメイン
膜貫通型ドメインに関して、種々の態様において、CARの細胞外ドメインと結合する膜貫通型ドメインを含むように、CARを設計できる。膜貫通型ドメインは、膜貫通型領域に隣接する1個以上の付加的アミノ酸、例えば、膜貫通型ドメインが由来したタンパク質の細胞外領域と関係する1個以上のアミノ酸(例えば、細胞外領域の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個から最大15個のアミノ酸)および/または膜貫通型タンパク質が由来したタンパク質の細胞内領域と関係する1個以上の付加的アミノ酸(例えば、細胞内領域の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個から最大15個のアミノ酸)を含み得る。一つの面において、膜貫通型ドメインは、CARの他のドメインの一つと関係するものを使用するものであり、例えば、一つの態様において、膜貫通型ドメインは、シグナル伝達ドメイン、共刺激ドメインまたはヒンジドメインが由来するのと同じタンパク質由来であり得る。他の面において、膜貫通型ドメインは、CARの他のドメインのいずれかが由来するのと同じタンパク質に由来しない。ある例において、膜貫通型ドメインは、このようなドメインの、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通型ドメインへの結合を避けるように、例えば、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小化するように選択できまたはアミノ酸置換により修飾できる。一つの面において、膜貫通型ドメインは、CAR発現細胞の細胞表面上の他のCARとホモ二量体化できる。異なる面において、膜貫通型ドメインのアミノ酸配列を、同じCAR発現細胞に存在する天然の結合パートナーの結合ドメインとの相互作用を最小化するように修飾または置換してよい。
【0244】
膜貫通型ドメインは天然由来または組み換え起源由来であり得る。起源が天然であるとき、ドメインは任意の膜結合または膜貫通型タンパク質から由来し得る。一つの面において、膜貫通型ドメインは、CARが標的に結合しているときは常に細胞内ドメインにシグナル伝達できる。本発明における特定の用途の膜貫通型ドメインは、例えば、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8(例えば、CD8アルファ、CD8ベータ)、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の、少なくとも膜貫通型ドメインを含み得る。ある態様において、膜貫通型ドメインは、例えば、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA−1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4−1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、IL−2Rベータ、IL−2Rガンマ、IL−7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA−6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA−1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA−1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB−A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO−3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKG2DおよびNKG2Cの、少なくとも膜貫通型領域を含み得る。
【0245】
ある例において、膜貫通型ドメインを、ヒンジ、例えば、ヒトタンパク質からのヒンジを介して、CARの細胞外領域、例えば、CARの抗原結合ドメインに結合できる。例えば、一つの態様において、ヒンジは、ヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジ(例えば、IgG4ヒンジ、IgDヒンジ)、GSリンカー(例えば、ここに記載するGSリンカー)、KIR2DS2ヒンジまたはCD8aヒンジであり得る。一つの態様において、ヒンジまたはスペーサーは、配列番号2のアミノ酸配列を含む(例えば、これからなる)。一つの面において、膜貫通型ドメインは、配列番号6の膜貫通型ドメインを含む(例えば、これからなる)。
【0246】
一つの面において、ヒンジまたはスペーサーは、IgG4ヒンジを含む。例えば、一つの態様において、ヒンジまたはスペーサーは、次のアミノ酸配列のヒンジを含む。
【化3】
【0247】
ある態様において、ヒンジまたはスペーサーは、次のヌクレオチド配列によりコードされるヒンジを含む。
【化4】
【0248】
一つの面において、ヒンジまたはスペーサーはIgDヒンジを含む。例えば、一つの態様において、ヒンジまたはスペーサーは、アミノ酸配列
【化5】
のヒンジを含む。
【0249】
ある態様において、ヒンジまたはスペーサーは、
【化6】
のヌクレオチド配列によりコードされるヒンジを含む。
【0250】
一つの面において、膜貫通型ドメインを組み換えてよく、この場合、優勢にロイシンおよびバリンのような疎水性残基を含む。一つの面において、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットを、組み換え膜貫通型ドメインの各末端に見ることができる。
【0251】
所望により、2〜10アミノ酸長の短オリゴ−またはポリペプチドリンカーが、CARの膜貫通型ドメインと細胞質シグナル伝達領域の間の結合を形成し得る。グリシン−セリンダブレットは特に適当なリンカーを提供する。例えば、一つの面において、リンカーは
【化7】
のアミノ酸配列を含む。ある態様において、リンカーは、
【化8】
のヌクレオチド配列によりコードされる。
【0252】
一つの面において、ヒンジまたはスペーサーは、KIR2DS2ヒンジおよびその一部を含む。
【0253】
細胞質ドメイン
CARの細胞質ドメインまたは領域は、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。細胞内シグナル伝達ドメインは、一般にCARが導入されている免疫細胞の正常エフェクター機能の少なくとも1個の活性化を担う。用語“エフェクター機能”は、細胞の特殊化機能をいう。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカイン分泌を含む、細胞溶解性活性またはヘルパー活性であり得る。それゆえに用語“細胞内シグナル伝達ドメイン”は、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞に特殊化機能の実行を指示する、タンパク質の部分をいう。通常全ての細胞内シグナル伝達ドメインを用いることができるが、多くの場合、全鎖を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断型部分が使用される範囲で、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、このような切断型部分を完全な鎖の代わりに使用してよい。それゆえに、用語細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルの伝達に十分な細胞内シグナル伝達ドメインのあらゆる切断型部分を含むことを意図する。
【0254】
本発明のCARにおいて使用するための細胞内シグナル伝達ドメインの例は、抗原受容体契合後にシグナル伝達を開始するために協力して作用するT細胞受容体(TCR)および共受容体の細胞質配列、ならびに同じ機能的能力を有するこれらの配列のあらゆる誘導体またはバリアントおよびあらゆる組み換え配列を含む。
【0255】
TCR単独により産生されるシグナルは、T細胞の完全な活性化に不十分であり、二次および/または共刺激シグナルも必要であることが知られている。それゆえに、T細胞活性化は、TCR(一次細胞内シグナル伝達ドメイン)を介して抗原依存性一次活性化を開始するものおよび二次または共刺激シグナル(二次細胞質ドメイン、例えば、共刺激ドメイン)を提供するために抗原非依存的様式で作用するものの、2個の異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列が介在すると言うことができる。
【0256】
一次細胞質シグナル伝達ドメインは、刺激方向または阻害方向でTCR複合体の一次活性化を制御する。刺激様式で作用する一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0257】
本発明において特に有用であるITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメインの例は、CD3ゼータ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10およびDAP12のものを含む。一つの態様において、本発明のCARは、細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3ゼータの一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0258】
一つの態様において、一次シグナル伝達ドメインは、天然ITAMドメインと比較して改変された(例えば、増加したまたは減少した)活性を有する修飾ITAMドメイン、例えば、変異ITAMドメインを含む。一つの態様において、一次シグナル伝達ドメインは、修飾ITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、最適化および/または切断型ITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある態様において、一次シグナル伝達ドメインは、1個、2個、3個、4個またはそれ以上のITAMモチーフを含む。
【0259】
本発明において特に有用な一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む分子のさらなる例は、DAP10、DAP12およびCD32のものを含む。
【0260】
CARの細胞内ドメインは、CD3ゼータシグナル伝達ドメインを単独で含んでよく、または本発明のCARの状況において有用な任意の他の所望の細胞内シグナル伝達ドメインと組み合わせてよい。例えば、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ鎖部分および共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部をいう。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的応答に必要である抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。このような分子の例は、CD27、CD28、4−1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD−1(別名PD1)、ICOS、リンパ球機能関連抗原−1(LFA−1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3およびCD83と特異的に結合するリガンドなどを含む。例えば、CD27共刺激は、インビトロでヒトCAR T細胞の増殖、エフェクター機能および生存を増強し、インビボでヒトT細胞残留性および抗腫瘍活性を増強することが証明されている(Song et al. Blood. 2012;119(3):696-706)。このような共刺激分子のさらなる例は、CDS、ICAM−1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL−2Rベータ、IL−2Rガンマ、IL−7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA−6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA−1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA−1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、NKG2D、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB−A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO−3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP−76およびPAG/Cbpを含む。
【0261】
本発明のCARの細胞質部分内の細胞内シグナル伝達ドメインを、無作為のまたは特定の順序で互いに連結してよい。所望により、例えば、2〜10アミノ酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸)長の短オリゴ−またはポリペプチドリンカーを、細胞内シグナル伝達ドメイン間に形成し得る。一つの態様において、グリシン−セリンダブレットを適当なリンカーとして使用できる。一つの態様において、一アミノ酸、例えば、アラニン、グリシンを適当なリンカーとして使用できる。
【0262】
一つの面において、細胞内シグナル伝達ドメインは、2個以上の、例えば、2個、3個、4個、5個またはそれ以上の、共刺激シグナル伝達ドメインを含むように設計する。ある態様において、2個以上の、例えば、2個、3個、4個、5個またはそれ以上の、共刺激シグナル伝達ドメインは、リンカー分子、例えば、ここに記載するリンカー分子により離されている。一つの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは2個の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。ある態様において、リンカー分子はグリシン残基である。ある態様において、リンカーはアラニン残基である。
【0263】
一つの面において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインおよびCD28のシグナル伝達ドメインを含むように設計する。一つの面において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインおよび4−1BBのシグナル伝達ドメインを含むように設計する。一つの面において、4−1BBのシグナル伝達ドメインは、配列番号16のシグナル伝達ドメインである。一つの面において、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインは、配列番号17のシグナル伝達ドメインである。
【0264】
一つの面において、細胞内シグナル伝達ドメインを、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインおよびCD27のシグナル伝達ドメインを含むように設計する。一つの面において、CD27のシグナル伝達ドメインは、
【化9】
のアミノ酸配列を含む。一つの面において、CD27のシグナル伝達ドメインは、
【化10】
の核酸配列によりコードされる。
【0265】
一つの面において、ここに記載するCAR発現細胞は、さらに第二CAR、例えば、同じ標的(メソテリン)または異なる標的への、例えば、異なる抗原結合ドメインを含む第二CAR(例えば、間質細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、FAP;前立腺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、アンドロゲン受容体、OR51E2、PSMA、PSCA、PDGRF−β、TARP、GloboH、MAD−CT−1またはMAD−CT−2;卵巣癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、Tn、PRSS21、CD171、ルイスY、葉酸受容体α、クローディン6、GloboHまたは精子タンパク質17、例えば、肺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、VEGF、HER3、IGF−1R、EGFR、DLL4またはTrop−2)を含み得る。一つの態様において、CAR発現細胞は、第一抗原を標的とし、共刺激シグナル伝達ドメインを有するが、一次シグナル伝達ドメインを有しない細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一CARおよび第二の異なる抗原を標的とし、一次シグナル伝達ドメインを有するが、共刺激シグナル伝達ドメインを有しない細胞内シグナル伝達ドメインを含む第二CARを含む。共刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、4−1BB、CD28、CD27またはOX−40の第一CAR上へのおよび一次シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3ゼータの第二CAR上の配置は、両者の標的が発言される細胞に対するCAR活性を制限し得る。一つの態様において、CAR発現細胞は、メソテリン結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび共刺激ドメインを含む第一メソテリンCARならびにメソテリン以外の抗原(例えば、間質細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、FAP;前立腺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、アンドロゲン受容体、OR51E2、PSMA、PSCA、PDGRF−β、TARP、GloboH、MAD−CT−1またはMAD−CT−2;卵巣癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、Tn、PRSS21、CD171、ルイスY、葉酸受容体α、クローディン6、GloboHまたは精子タンパク質17、例えば、肺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、VEGF、HER3、IGF−1R、EGFR、DLL4またはTrop−2)を標的とし、抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む第二CARを含む。他の態様において、CAR発現細胞は、メソテリン結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む第一メソテリンCARならびにメソテリン以外の抗原(例えば、間質細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、FAP;前立腺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、アンドロゲン受容体、OR51E2、PSMA、PSCA、PDGRF−β、TARP、GloboH、MAD−CT−1またはMAD−CT−2;卵巣癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、Tn、PRSS21、CD171、ルイスY、葉酸受容体α、クローディン6、GloboHまたは精子タンパク質17、例えば、肺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、VEGF、HER3、IGF−1R、EGFR、DLL4またはTrop−2)を標的とし、該抗原に対する抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび共刺激シグナル伝達ドメインを含む第二CARを含む。
【0266】
一つの態様において、CAR発現細胞はここに記載するメソテリンCARおよび阻害性CARを含む。一つの態様において、阻害性CARは、正常細胞、例えば、またメソテリンを発現する正常細胞上に見られるが、癌細胞には見られない抗原と結合する抗原結合ドメインを含む。一つの態様において、阻害性CARは、阻害分子の抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび細胞内ドメインを含む。例えば、阻害性CARの細胞内ドメインはPD1、PD−L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM−1、CEACAM−3および/またはCEACAM−5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータの細胞内ドメインであり得る。
【0267】
一つの態様において、CAR発現細胞が2個以上の異なるCARを含むとき、異なるCARの抗原結合ドメインは、抗原結合ドメインが互いに相互作用しないようなものであり得る。例えば、第一CARおよび第二CARを発現する細胞は、第二CARの抗原結合ドメイン、例えば、VHHである第二CARの抗原結合ドメインと会合を形成しない、例えば、フラグメント、例えば、scFvとしての、第一CARの抗原結合ドメインを有し得る。
【0268】
ある態様において、抗原結合ドメインは、相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である分子を含む、単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子を含む。例は、重鎖可変ドメイン、自然に軽鎖を欠く結合分子、従来の4鎖抗体由来の単一ドメイン、操作ドメインおよび抗体由来のもの以外の単一ドメインスキャフォールドを含むが、これらに限定されない。SDAB分子は当分野のいずれかまたは将来の単一ドメイン分子のいずれかであり得る。SDAB分子はマウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤツメウナギ、魚、サメ、ヤギ、ウサギおよびウシを含むが、これらに限定されないあらゆる種由来であり得る。この用語はまたラクダ科およびサメ以外の種からの天然に存在する単一ドメイン抗体分子も含む。
【0269】
一つの面において、SDAB分子は、例えば、サメの血清で発見された新規抗原受容体(NAR)として知られる免疫グロブリンアイソタイプ由来のもののような、魚に見られる免疫グロブリンの可変領域由来であり得る。NARの可変領域由来の単一ドメイン分子(“IgNAR”)を製造する方法は、WO03/014161号およびStreltsov (2005) Protein Sci. 14:2901-2909に記載されている。
【0270】
他の面によって、SDAB分子は、軽鎖を欠く重鎖として知られる天然に存在する単一ドメイン抗原結合分子である。このような単一ドメイン分子は、例えばWO9404678号およびHamers-Casterman, C. et al. (1993) Nature 363:446-448に記載されている。明瞭化のために、天然に軽鎖を欠く重鎖分子由来のこの可変ドメインは、4鎖免疫グロブリンの従来のVHと区別するために、ここでは、VHHまたはナノボディとして知られる。このようなVHH分子は、ラクダ科種、例えばラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびグアナコに由来し得る。ラクダ科以外の種は、天然に軽鎖を欠く重鎖分子を産生する可能性があり、このようなVHHは本発明の範囲内である。
【0271】
SDAB分子は、組み換え、CDR移植、ヒト化、ラクダ化、脱免疫化および/またはインビトロ産生(例えば、ファージディスプレイにより選択)され得る。
【0272】
抗原結合ドメインを含む多数のキメラ膜包埋受容体を有する細胞で、該受容体の複数抗原結合ドメイン間の相互作用が、例えば、1個以上の抗原結合ドメインの同族抗原に結合する能力を阻害するため、望ましくないことがあり得ることも発見されている。したがって、ここに開示されるのは、このような相互作用が最小化された、抗原結合ドメインを含む第一および第二の天然に存在しないキメラ膜包埋受容体を有する細胞である。またここに開示されるのは、このような相互作用が最小化された抗原結合ドメインを含む第一および第二の天然に存在しないキメラ膜包埋受容体をコードする核酸ならびにこのような細胞および核酸の製造法である。ある態様において、第一および第二の天然に存在しないキメラ膜包埋受容体の一方の抗原結合ドメインはscFvを含み、他方は単一VHドメイン、例えば、ラクダ類、サメまたはヤツメウナギ単一VHドメインまたはヒトもしくはマウス配列由来の単一VHドメインを含む。
【0273】
ある態様において、本発明は第一CARおよび第二CARを含み、ここで、第一CARおよび第二CARの一方の抗原結合ドメインは可変軽鎖ドメインおよび可変重鎖ドメインを含まない。ある態様において、第一CARおよび第二CARの一方の抗原結合ドメインはscFvであり、他方はscFvではない。ある態様において、第一CARおよび第二CARの一方の抗原結合ドメインは単一VHドメイン、例えば、ラクダ類、サメまたはヤツメウナギ単一VHドメインまたはヒトもしくはマウス配列由来の単一VHドメインを含む。ある態様において、第一CARおよび第二CARの一方の抗原結合ドメインはナノボディを含む。ある態様において、第一CARおよび第二CARの一方の抗原結合ドメインはラクダ類VHHドメインを含む。
【0274】
ある態様において、第一CARおよび第二CARの一方の抗原結合ドメインはscFvを含み、他方は単一VHドメイン、例えば、ラクダ類、サメまたはヤツメウナギ単一VHドメインまたはヒトもしくはマウス配列由来の単一VHドメインを含む。ある態様において、第一CARおよび第二CARの一方の抗原結合ドメインはscFvを含み、他方はナノボディを含む。ある態様において、第一CARおよび第二CARの一方の抗原結合ドメインはscFvを含み、他方はラクダ類VHHドメインを含む。
【0275】
ある態様において、細胞表面上に提示されるとき、第一CARの抗原結合ドメインのその同族抗原への結合は、第二CARの存在により実質的に減少しない。ある態様において、第二CAR存在下の第一CARの抗原結合ドメインのその同族抗原への結合は、第二CAR非存在下の第一CARの抗原結合ドメインのその同族抗原への結合の85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%である。
【0276】
ある態様において、細胞表面上に提示されるとき、第一CARおよび第二CARの抗原結合ドメインは、両者がscFv抗原結合ドメインである場合より低く、互いに結合している。ある態様において、第一CARおよび第二CARの抗原結合ドメインは、両者がscFv抗原結合ドメインである場合より85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%低く互いに結合している。
【0277】
他の面において、ここに記載するCAR発現細胞は、他の薬剤、例えば、CAR発現細胞の活性または適応度を増強する薬剤をさらに発現できる。例えば、一つの態様において、薬剤はT細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子を阻害する薬剤であり得る。ある態様において、T細胞機能を調節するかまたは制御する分子は阻害分子である。阻害分子、例えば、PD1は、ある態様において、CAR発現細胞が免疫エフェクター応答を開始する能力を低下させる。阻害分子の例は、PD1、PD−L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM−1、CEACAM−3および/またはCEACAM−5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータを含む。いくつかの態様において、薬剤、例えば、ここに記載する、例えば、阻害核酸、例えば、dsRNA、例えば、siRNAまたはshRNA;または例えば、阻害タンパク質または阻害系、例えば、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)、転写アクティベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)または亜鉛フィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)を使用して、CAR発現細胞におけるT細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害できる。ある態様において、薬剤はshRNA、例えば、ここに記載するshRNAである。ある態様において、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば阻害する薬剤を、CAR発現細胞内で阻害する。例えば、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子を、CARのある成分、例えば、全成分をコードする核酸と結合する。
【0278】
一つの態様において、阻害分子を阻害する薬剤は、細胞に陽性シグナルを提供する第二ポリペプチド、例えば、ここに記載する細胞内シグナル伝達ドメインと結合した第一ポリペプチド、例えば、阻害分子を含む。一つの態様において、薬剤は、例えば、PD1、PD−L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM−1、CEACAM−3および/またはCEACAM−5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータTまたはこれらのいずれかのフラグメント(例えば、これらのいずれかの細胞外ドメインの少なくとも一部)のような阻害分子の第一ポリペプチドおよびここに記載する細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメイン(例えば、ここに記載する、例えば、41BB、CD27またはCD28)および/または一次シグナル伝達ドメイン(例えば、ここに記載するCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)である第二ポリペプチドを含む。一つの態様において、薬剤は、PD1またはそのフラグメント(例えば、PD1の細胞外ドメインの少なくとも一部)の第一ポリペプチドおよびここに記載する細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、ここに記載するCD28シグナル伝達ドメインおよび/またはここに記載するCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)の第二ポリペプチドを含む。PD1は、CD28、CTLA−4、ICOSおよびBTLAも含む、受容体のCD28ファミリーの阻害メンバーである。PD−1は活性化B細胞、T細胞および骨髄球性細胞上に発現される(Agata et al. 1996 Int. Immunol 8:765-75)。PD1、PD−L1およびPD−L2に対する2個のリガンドは、PD1への結合によりT細胞活性化を下方制御することが示されている(Freeman et a. 2000 J Exp Med 192:1027-34; Latchman et al. 2001 Nat Immunol 2:261-8;Carter et al. 2002 Eur J Immunol 32:634-43)。PD−L1はヒト癌に豊富である(Dong et al. 2003 J Mol Med 81:281-7; Blank et al. 2005 Cancer Immunol. Immunother 54:307-314; Konishi et al. 2004 Clin Cancer Res 10:5094)。免疫抑制は、PD1とPD−L1の局所相互作用の阻害により反転させ得る。
【0279】
一つの態様において、薬剤は、阻害分子の細胞外ドメイン(ECD)を含み、例えば、プログラム死1(PD1)を、膜貫通型ドメインおよび41BBおよびCD3ゼータのような細胞内シグナル伝達ドメインと融合できる(ここではPD1 CARとも呼ぶ)。一つの態様において、PD1 CARは、ここに記載するメソテリンCARと組み合わせて使用するとき、T細胞の残留性を改善する。一つの態様において、CARは、配列番号24において下線で示すPD1の細胞外ドメインおよび配列番号24のアミノ酸1〜21であるシグナル配列を含むPD1 CARである。一つの態様において、PD1 CARは配列番号24のアミノ酸配列を含む。
【化11】
【0280】
一つの態様において、N末端シグナル配列を含まないPD1 CARは、下に提供するアミノ酸配列(配列番号22)を含む。
【化12】
【0281】
一つの態様において、薬剤は、N末端シグナル配列と結合したPD1 CAR、例えば、ここに記載するPD1 CARをコードする核酸配列を含む。一つの態様において、PD1 CARの核酸配列を下に示し、下記配列番号23でPD1 ECDに下線を付す。
【化13】
【0282】
他の面において、本発明は、CAR発現細胞、例えば、CAR T細胞の集団を提供する。ある態様において、CAR発現細胞の集団は、異なるCARを発現する細胞の混合物を含む。例えば、一つの態様において、CAR T細胞の集団は、ここに記載する抗CD19結合ドメインを有するCARを発現する第一細胞および異なる抗CD19結合ドメイン、例えば、第一細胞により発現されるCARにおける抗メソテリン結合ドメインと異なるここに記載する抗メソテリン結合ドメインを有するCARを発現する第二細胞を含み得る。他の例として、CAR発現細胞の集団は、例えば、ここに記載する、抗メソテリン結合ドメインを含むCARを発現する第一細胞およびメソテリン以外の標的(例えば、間質細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、FAP;前立腺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、アンドロゲン受容体、OR51E2、PSMA、PSCA、PDGRF−β、TARP、GloboH、MAD−CT−1またはMAD−CT−2;卵巣癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、Tn、PRSS21、CD171、ルイスY、葉酸受容体α、クローディン6、GloboHまたは精子タンパク質17、例えば、肺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、VEGF、HER3、IGF−1R、EGFR、DLL4またはTrop−2)に対する抗原結合ドメインを含むCARを発現する第二細胞を含み得る。一つの態様において、CAR発現細胞の集団は、例えば、一次細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARを発現する第一細胞および二次シグナル伝達ドメインを含むCARを発現する第二細胞を含む。
【0283】
他の面において、本発明は、ここに記載する抗メソテリン結合ドメインを有するCARを発現する少なくとも1個の細胞を含む集団、および他の薬剤、例えば、CAR発現細胞の活性または機能を増強する薬剤を発現する第二の細胞集団を提供する。例えば、一つの態様において、薬剤は、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば阻害する薬剤であり得る。ある態様において、T細胞機能を調節するかまたは制御する分子は、阻害分子、例えば、ここに記載する薬剤である。阻害分子は、例えば、ある態様において、CAR発現細胞が免疫エフェクター応答を開始する能力を減少できる。阻害分子の例は、PD1、PD−L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM−1、CEACAM−3および/またはCEACAM−5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータを含む。一つの態様において、阻害分子を阻害する薬剤は、細胞に陽性シグナルを提供する第二ポリペプチド、例えば、ここに記載する細胞内シグナル伝達ドメインと結合した第一ポリペプチド、例えば、阻害分子を含む。一つの態様において、薬剤は、例えば、PD1、PD−L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM−1、CEACAM−3および/またはCEACAM−5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータまたはこれらのいずれかのフラグメント(例えば、これらのいずれかの細胞外ドメインの少なくとも一部)のような阻害分子の第一ポリペプチドおよびここに記載する細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメイン(例えば、ここに記載する、例えば、41BB、CD27またはCD28)および/または一次シグナル伝達ドメイン(例えば、ここに記載するCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)である第二ポリペプチドを含む。一つの態様において、薬剤は、PD1またはそのフラグメント(例えば、PD1の少なくとも細胞外ドメインの一部)の第一ポリペプチドおよびここに記載する細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、ここに記載するCD28シグナル伝達ドメインおよび/またはここに記載するCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)の第二ポリペプチドを含む。
【0284】
一つの面において、本発明は、CAR発現細胞、例えば、CAR T細胞の集団、例えば、異なるCARを発現する細胞の混合物を、他の薬剤、例えば、ここに記載するキナーゼ阻害剤のようなキナーゼ阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。他の面において、本発明は、集団中の少なくとも1個の細胞がここに記載する抗メソテリン結合ドメインを有するCARを発現し、第二細胞が他の薬剤、例えば、CAR発現細胞の活性または適応度を増強する薬剤を発現する細胞の集団を他の薬剤、例えば、ここに記載するキナーゼ阻害剤のようなキナーゼ阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法を提供する。
【0285】
制御可能キメラ抗原受容体
ある態様において、CAR活性が制御できる制御可能CAR(RCAR)が、CAR治療の安全性および有効性を最適化するために望まれる。CAR活性を制御できる多くの方法がある。例えば、二量体化ドメインに融合したカスパーゼを使用する、例えば、誘導性アポトーシス(例えば、Di et al., N Egnl. J. Med. 2011 Nov. 3;365(18):1673-1683参照)を、本発明のCAR治療における安全性スイッチとして使用できる。ある面において、RCARは、ここに記載する標準CARの成分、例えば、抗原結合ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインが別のポリペプチドまたはメンバー上に区切られている、最も単純な態様においては概して2個の、ポリペプチドのセットを含む。ある態様において、ポリペプチドのセットは、二量体化分子の存在により、ポリペプチドを互いに連結できる、例えば、抗原結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに連結できる、二量体化スイッチを含む。
【0286】
ある面において、RCARは、1)細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、ここに記載する一次細胞内シグナル伝達ドメインおよび第一スイッチドメインを含む細胞内シグナル伝達メンバー;2)例えば、ここに記載する、メソテリンを標的とする抗原結合ドメインおよび第二スイッチドメインを含む抗原結合メンバーである2個のポリペプチドまたはメンバーを含む。所望により、RCARはここに記載する膜貫通型ドメインを含む。ある態様において、膜貫通型ドメインは、細胞内シグナル伝達メンバー上、抗原結合メンバー上または両者の上に配置できる(特に断らない限り、RCARのメンバーまたは成分がここに記載されているとき、順番は記載したとおりであり得るが、他の順番も同様に含まれる。換言すると、ある態様において、順番は本明細書に示すとおりであるが、他の態様において、順番は異なってよい。例えば、膜貫通型領域の片側上の成分の順番は例と異なってよく、例えば、細胞内シグナル伝達ドメインに対するスイッチドメインの配置は異なって、例えば、逆でよい。
【0287】
ある態様において、第一および第二スイッチドメインは細胞内または細胞外二量体化スイッチを形成できる。ある態様において、二量体化スイッチは、例えば、第一および第二スイッチドメインが同じであるとき、ホモ二量体化スイッチであってよく、または、例えば、第一および第二スイッチドメインが互いに異なるとき、ヘテロ二量体化スイッチであってよい。
【0288】
いくつかの態様において、RCARは“マルチスイッチ”を含み得る。マルチスイッチは、ヘテロ二量体化スイッチドメインまたはホモ二量体化スイッチドメインを含む。マルチスイッチは、第一メンバー、例えば、抗原結合メンバーおよび第二メンバー、例えば、細胞内シグナル伝達メンバーと無関係に、多数の、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のスイッチドメインを含む。ある態様において、第一メンバーは多数の第一スイッチドメイン、例えば、FKBPベースのスイッチドメインを含んでよく、第二メンバーは多数の第二スイッチドメイン、例えば、FRBベースのスイッチドメインを含んでよい。ある態様において、第一メンバーは第一および第二スイッチドメイン、例えば、FKBPベースのスイッチドメインおよびFRBベースのスイッチドメインを含んでよく、第二メンバーは第一および第二スイッチドメイン、例えば、FKBPベースのスイッチドメインおよびFRBベースのスイッチドメインを含んでよい。
【0289】
ある態様において、細胞内シグナル伝達メンバーは1個以上の細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、一次細胞内シグナル伝達ドメインおよび1個以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0290】
ある態様において、抗原結合メンバーは1個以上の細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、1個以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。ある態様において、抗原結合メンバーは多数の、例えば、2個または3個の、例えば、41BB、CD28、CD27、ICOSおよびOX40から選択される、ここに記載する共刺激シグナル伝達ドメインを含み、いくつかの態様において、一次細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。ある態様において、抗原結合メンバーは、次の共刺激シグナル伝達ドメインを細胞外から細胞内方向で含む:41BB−CD27;41BB−CD27;CD27−41BB;41BB−CD28;CD28−41BB;OX40−CD28;CD28−OX40;CD28−41BB;または41BB−CD28。このような態様において、細胞内結合メンバーはCD3ゼータドメインを含む。一つのこのような態様において、RCARは、(1)例えば、ここに記載の、抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび2個の共刺激ドメインおよび第一スイッチドメインを含む抗原結合メンバー;および(2)膜貫通型ドメインまたは膜係留ドメインおよび少なくとも1個の一次細胞内シグナル伝達ドメインおよび第二スイッチドメインを含む、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0291】
ある態様は、抗原結合メンバーがCAR細胞の表面上に係留されていないRCARを提供する。これにより、細胞内シグナル伝達メンバーを有する細胞を、該細胞を抗原結合メンバーをコードする配列で形質転換することなく、1個以上の抗原結合ドメインと好都合に対形成させることが可能となる。このような態様において、RCARは、1)第一スイッチドメイン、膜貫通型ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、一次細胞内シグナル伝達ドメインおよび第一スイッチドメインを含む細胞内シグナル伝達メンバー;および2)膜貫通型ドメインまたは膜係留ドメインを含まず、所望により、細胞内シグナル伝達ドメインを含まない、例えば、ここに記載の、抗原結合ドメインおよび第二スイッチドメインを含む、抗原結合メンバーを含む。ある態様において、RCARは、さらに、3)第二抗原結合ドメイン、例えば、抗原結合ドメインにより結合されるのと異なる抗原と結合する第二抗原結合ドメイン;および第二スイッチドメインを含む第二抗原結合メンバーを含み得る。
【0292】
またここに提供されるのは、抗原結合メンバーが二重特異性活性化およびターゲティング能力を有するRCARである。この態様において、抗原結合メンバーは複数の、例えば、2個、3個、4個または5個抗原結合ドメイン、例えば、scFvを含んでよく、ここで、各抗原結合ドメインは標的抗原、例えば異なる抗原または同じ抗原、例えば、同じ抗原上の同じまたは異なるエピトープと結合する。ある態様において、複数の抗原結合ドメインはタンデムであり、所望により、リンカーまたはヒンジ領域を抗原結合ドメインの各々の間に配置する。適当なリンカーおよびヒンジ領域をここに記載する。
【0293】
ある態様は、増殖のスイッチングを可能にする配置を有するRCARを提供する。この態様において、RCARは、1)所望により、膜貫通型ドメインまたは膜係留ドメイン;1個以上の共刺激性シグナル伝達ドメイン、例えば、41BB、CD28、CD27、ICOSおよびOX40から選択されるおよびスイッチドメインを含む細胞内シグナル伝達メンバー;および2)スイッチドメインを含まないか、または細胞内シグナル伝達メンバー上のスイッチドメインと二量体化するスイッチドメインを含まない、例えば、ここに記載の、抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび一次細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3ゼータドメインを含む抗原結合メンバーを含む。ある態様において、抗原結合メンバーは共刺激性シグナル伝達ドメインを含まない。ある態様において、細胞内シグナル伝達メンバーは、ホモ二量体化スイッチからのスイッチドメインを含む。ある態様において、細胞内シグナル伝達メンバーは、ヘテロ二量体化スイッチの第一スイッチドメインを含み、RCARは、ヘテロ二量体化スイッチの第二スイッチドメインを含む第二細胞内シグナル伝達メンバーを含む。このような態様において、第二細胞内シグナル伝達メンバーは、細胞内シグナル伝達メンバーと同じ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある態様において、二量体化スイッチは細胞内である。ある態様において、二量体化スイッチは細胞外である。
【0294】
ここに記載するRCAR配置のいずれかにおいて、第一および第二スイッチドメインは、ここに記載するFKBP/FRBベースのスイッチを含む。
【0295】
またここに提供されるのは、ここに記載するRCARを含む細胞である。RCARを発現するように操作されたあらゆる細胞をRCARX細胞として使用できる。ある態様において、RCARX細胞はT細胞であり、RCAR T細胞と呼ぶ。ある態様において、RCARX細胞はNK細胞であり、RCARN細胞と呼ぶ。
【0296】
またここに提供されるのは、RCARコード化配列を含む核酸およびベクターである。RCARの多様な成分をコードする配列は、同じ核酸分子、例えば、同じプラスミドまたはベクター、例えば、ウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター上に配置できる。ある態様において、(i)抗原結合メンバーをコードする配列および(ii)細胞内シグナル伝達メンバーをコードする配列が同じ核酸、例えば、ベクター上に存在できる。対応するタンパク質の産生は、例えば、別のプロモーターの使用によりまたはバイシストロン性転写産物(単一翻訳産物の切断によりまたは2個の別のタンパク質産物の翻訳により2個のタンパク質を産生できる)の使用により、達成できる。ある態様において、切断可能ペプチドをコードする配列、例えば、P2AまたはF2A配列を(i)と(ii)の間に配置する。ある態様において、IRES、例えば、EMCVまたはEV71 IRESをコードする配列を(i)と(ii)の間に配置する。これらの態様において、(i)および(ii)は単一RNAとして転写される。ある態様において、(i)および(ii)が別のmRNAとして転写されるように、第一プロモーターは(i)に操作可能に結合し、第二プロモーターは(ii)に操作可能に結合する。
【0297】
あるいは、RCARの多様な成分をコードする配列を、異なる核酸分子、例えば、異なるプラスミドまたはベクター、例えば、ウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター上に配置できる。例えば、(i)抗原結合メンバーをコードする配列を第一核酸、例えば、第一ベクター上に配置してよく、(ii)細胞内シグナル伝達メンバーをコードする配列は第二核酸、例えば、第二ベクター上に存在してよい。
【0298】
二量体化スイッチ
二量体化スイッチは非共有結合でも、共有結合でもよい。非共有結合二量体化スイッチにおいて、二量体化分子は、スイッチドメイン間の非共有結合相互作用を促進する。共有結合二量体化スイッチにおいて、二量体化分子は、スイッチドメイン間の共有結合相互作用を促進する。
【0299】
ある態様において、RCARは、FKBP/FRAPまたはFKBP/FRBベースの二量体化スイッチを含む。FKBP12(FKBPまたはFK506結合タンパク質)は、天然産物免疫抑制剤であるラパマイシンの初期細胞内標的として働く、豊富な細胞質タンパク質である。ラパマイシンは、FKBPおよび大型PI3K相同体FRAP(RAFT、mTOR)に結合する。FRBは、FKBP−ラパマイシン複合体の結合に十分な、FRAPの93アミノ酸部分である(Chen, J., Zheng, X. F., Brown, E. J. & Schreiber, S. L. (1995) Identification of an 11-kDa FKBP12-rapamycin-binding domain within the 289-kDa FKBP12-rapamycin-associated protein and characterization of a critical serine residue. Proc Natl Acad Sci U S A 92: 4947-51)。
【0300】
いくつかの態様において、FKBP/FRAP、例えば、FKBP/FRBベースのスイッチは、二量体化分子、例えば、ラパマイシンまたはラパマイシン類似体を使用できる。
【0301】
FKBPのアミノ酸配列は次のとおりである。
【化14】
【0302】
いくつかの態様において、FKBPスイッチドメインは、FKBPのFRB結合フラグメント、例えば、次のとおりである配列番号382の下線部分を含み得る。
【化15】
【0303】
FRBのアミノ酸配列は次のとおりである。
【化16】
【0304】
“FKBP/FRAP、例えば、FKPP/FRBベースのスイッチ”は、該用語がここで使用される限り、FRB結合フラグメントまたはFKBP類似体、例えば、RAD001を含み、配列番号382または383のFKBP配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するか、または30個、25個、20個、15個、10個、5個、4個、3個、2個または1個のアミノ酸残基を超えては異ならない第一スイッチドメイン;およびFKBP結合フラグメントまたはFRB類似体を含み、配列番号384のFRB配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するか、または30個、25個、20個、15個、10個、5個、4個、3個、2個または1個のアミノ酸残基を超えては異ならない第二スイッチドメインを含む、二量体化スイッチをいう。ある態様において、ここに記載するRCARは、配列番号382(または配列番号383)に開示するアミノ酸残基を含む一つのスイッチドメインおよび配列番号384に開示するアミノ酸残基を含む一つのスイッチドメインを含む。
【0305】
いくつかの態様において、FKBP/FRB二量体化スイッチは、二量体化分子、例えば、ラパマイシンまたはラパログ、例えば、RAD001に対して変更された、例えば、増加した親和性を示す修飾FRBスイッチドメインを含む。ある態様において、修飾FRBスイッチドメインは、アミノ酸位置L2031、E2032、S2035、R2036、F2039、G2040、T2098、W2101、D2102、Y2105およびF2108での変異から選択される1個以上、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上の変異を含み、ここで、野生型アミノ酸が任意の他の天然に存在するアミノ酸に変異されている。ある態様において、変異体FRBはE2032に変異を含み、ここで、E2032がフェニルアラニン(E2032F)、メチオニン(E2032M)、アルギニン(E2032R)、バリン(E2032V)、チロシン(E2032Y)、イソロイシン(E2032I)(例えば、配列番号385)またはロイシン(E2032L)(例えば、配列番号386)に変異されている。ある態様において、変異体FRBはT2098の変異を含み、ここで、T2098はフェニルアラニン(T2098F)またはロイシン(T2098L)(例えば、配列番号387)に変異されている。ある態様において、変異体FRBはE2032およびT2098に変異を含み、ここで、E2032は任意のアミノ酸への変異であり、T2098は任意のアミノ酸への変異である(例えば、配列番号388)。ある態様において、変異体FRBはE2032IおよびT2098L変異を含む(例えば、配列番号389)。ある態様において、変異体FRBはE2032LおよびT2098L変異を含む(例えば、配列番号340)。
【0307】
他の適当な二量体化スイッチは、GyrB−GyrBベースの二量体化スイッチ、ジベレリンベースの二量体化スイッチ、タグ/バインダー二量体化スイッチおよびハロタグ/snapタグ二量体化スイッチを含む。ここに提供される手引きに従い、このようなスイッチおよび適切な二量体化分子は当業者には明らかである。
【0308】
二量体化分子
スイッチドメイン間の会合は、二量体化分子により促進される。二量体化分子の存在下、スイッチドメイン間の相互作用または会合は、第一スイッチドメインと結合した、例えば融合した、ポリペプチドと第二スイッチドメインと結合した、例えば融合した、ポリペプチドの間のシグナル伝達を可能にする。非律速レベルの二量体化分子存在下、シグナル伝達は、例えば、ここに記載するシステムにおいて測定して、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、5倍、10倍、50倍、100倍増加する。
【0309】
ラパマイシンおよびラパマイシン類似体(ラパログと呼ばれることもある)、例えば、RAD001を、ここに記載するFKBP/FRBベースの二量体化スイッチにおける二量体化分子として使用できる。ある態様において、二量体化分子は、ラパマイシン(シロリムス)、RAD001(エベロリムス)、ゾタロリムス、テムシロリムス、AP−23573(リダフォロリムス)、バイオリムスおよびAP21967から選択される。FKBP/FRBベースの二量体化スイッチと使用するのに適するさらなるラパマイシン類似体は、“組み合わせ治療”なる表題の章または“代表的mTOR阻害剤”なる表題のサブセクションにさらに記載する。
【0310】
RNA遺伝子導入
ここに開示されるのは、インビトロで転写されたRNA CARを産生する方法である。本発明はまた、細胞に直接遺伝子導入できるCARコード化RNA構築物である。遺伝子導入に使用するためのmRNAを産生する方法は、特別に設計されたプライマーを用いる鋳型のインビトロ転写(IVT)、続くポリA付加を含み、概して50〜2000塩基長の、3’および5’非翻訳配列(“UTR”)、5’キャップおよび/または配列内リボソーム進入部位(IRES)、発現すべき核酸およびポリAテイルを含む構築物を産生する(配列番号35)。このように産生されたRNAは、異なる種類の細胞に効率的に遺伝子導入する。一つの面において、鋳型はCARのための配列を含む。
【0311】
一つの面において、メソテリンCARはメッセンジャーRNA(mRNA)によりコードされる。一つの面において、メソテリンCARをコードするmRNAを、CAR T細胞の産生のためにT細胞に導入する。
【0312】
一つの態様において、インビトロで転写されたRNA CARを、一過性遺伝子導入の形態で、細胞に導入できる。RNAを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により産生した鋳型を使用するインビトロ転写により産生する。あらゆる起源からの所望のDNAを、PCRにより、適切なプライマーおよびRNAポリメラーゼを使用するインビトロmRNA合成のための鋳型に直接変換できる。DNAの起源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列またはDNAのあらゆる他の適切な起源であり得る。インビトロ転写用の望ましい鋳型は本発明のCARである。例えば、RNA CAR用の鋳型は、抗腫瘍抗体の単一鎖可変ドメインを含む細胞外領域;ヒンジ領域、膜貫通型ドメイン(例えば、CD8aの膜貫通型ドメイン);および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、例えば、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインおよび4−1BBのシグナル伝達ドメインを含む、細胞質領域を含む。
【0313】
一つの態様において、PCRに使用するDNAは、オープンリーディングフレームを含む。DNAは、生物のゲノムからの天然に存在するDNA配列に由来し得る。一つの態様において、核酸は、5’および/または3’非翻訳領域(UTR)の一部あるいは全てを含み得る。核酸はエクソンおよびイントロンを含み得る。一つの態様において、PCRに使用するDNAはヒト核酸配列である。他の態様において、PCRに使用するDNAは、5’UTRおよび3’UTRを含むヒト核酸配列である。DNAは、あるいは天然に存在する生物に通常発現されない人工DNA配列であり得る。代表的人工DNA配列は、融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを形成するように一緒にライゲートされた遺伝子の部分を含むものである。一緒にライゲートされたDNAの部分は、単一生物由来でも、1種を超える生物由来でもよい。
【0314】
PCRを使用して、遺伝子導入に使用するmRNAのインビトロ転写のための鋳型を産生する。PCRを実施する方法は当分野で周知である。PCRにおいて使用するプライマーは、PCRのための鋳型として使用するDNAの領域に実質的に相補的である領域を含む。用語“実質的に相補的”は、プライマー配列における塩基の大部分または全てが相補的であるか、または1個以上の塩基が非相補的またはミスマッチである、ヌクレオチドの配列をいう。実質的に相補的な配列は、PCRに使用するアニーリング条件下、意図するDNA標的とアニールまたはハイブリダイズできる。プライマーは、DNA鋳型の任意の部分と実質的に相補的であるように設計できる。例えば、プライマーは、5’UTRおよび3’UTRを含む、細胞において通常転写される核酸の部分(オープンリーディングフレーム)を増幅するように設計できる。プライマーはまた、所望の特定のドメインをコードする核酸の部分を増幅するようにも設計できる。一つの態様において、プライマーは、5’UTRおよび3’UTRの全てまたは一部を含む、ヒトcDNAのコード領域を増幅するように設計する。PCRに有用なプライマーは、当分野で周知である合成法により産生できる。“順方向プライマー”は、増幅するDNA配列の上流にあるDNA鋳型上のヌクレオチドに実質的に相補的であるヌクレオチドの領域を含む、プライマーである。用語“上流”は、コード鎖に対して増幅するDNA配列に対する位置5’をいう。“逆方向プライマー”は、増幅するDNA配列の下流である二本鎖DNA鋳型に実質的に相補的であるヌクレオチドの領域を含む、プライマーをいう。用語“下流”は、コード鎖に対して増幅するDNA配列に対する位置3’をいう。
【0315】
PCRに有用なあらゆるDNAポリメラーゼをここに開示する方法において使用できる。試薬およびポリメラーゼは多数の業者から商業的に入手可能である。
【0316】
安定性および/または翻訳効率を促進する能力を有する化学構造も使用し得る。RNAは、好ましくは5’UTRおよび3’UTRを含む。一つの態様において、5’UTRは1〜3000ヌクレオチド長である。コード領域に付加する5’UTRおよび3’UTR配列の長さは、UTRの異なる領域にアニールするPCR用プライマーの設計を含むが、これに限定されない、種々の方法により変えることができる。この方法を使用して、当業者は、転写されたRNAの遺伝子導入後の最適翻訳効率の達成に必要な5’UTRおよび3’UTR長を修飾できる。
【0317】
5’UTRおよび3’UTRは、所望の核酸の天然に存在する、内在性5’UTRおよび3’UTRであり得る。あるいは、所望の核酸に内在性ではないUTR配列を、順方向および逆方向プライマーへのUTR配列の取り込みによりまたは鋳型の何らかの他の修飾により付加できる。所望の核酸に内在性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性および/または翻訳効率の修飾に有用であり得る。例えば、3’UTR配列中のAUに富む成分は、mRNAの安定性を低下できる。それゆえに、当分野で周知であるUTRの特性に基づき、転写されたRNAの安定性を高めるために3’UTRを選択または設計できる。
【0318】
一つの態様において、5’UTRは、内在性核酸のコザック配列を含み得る。あるいは、上記のように所望の核酸に内在性ではない5’UTRをPCRにより付加するとき、コンセンサスコザック配列を、5’UTR配列の付加により再設計できる。コザック配列は、いくつかのRNA転写物の翻訳効率を高め得るが、効率的翻訳を可能にするために全RNAで必要であるとは考えられない。多くのmRNAについてのコザック配列の必要性は当分野で知られる。他の態様において、5’UTRは、RNAゲノムが細胞で安定であるRNAウイルスの5’UTRである。他の態様において、種々のヌクレオチド類似体を3’または5’UTRに使用して、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨害できる。
【0319】
遺伝子クローニングを必要とせずに、DNA鋳型からRNAを合成することを可能とするために、転写のプロモーターを、DNA鋳型の転写する配列の上流に結合しなければならない。RNAポリメラーゼのプロモーターとして機能する配列を順方向プライマーの5’末端に付加したとき、RNAポリメラーゼプロモーターは、転写するオープンリーディングフレームの上流でPCR産物に取り込まれることになる。一つの好ましい態様において、プロモーターは、本明細書の他の箇所に記載するT7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターは、T3およびSP6 RNAポリメラーゼプロモーターを含むが、これらに限定されない。T7、T3およびSP6プロモーターのためのコンセンサスヌクレオチド配列が当分野で知られる。
【0320】
好ましい態様において、mRNAは5’末端および3’ポリ(A)テイルの両者の上のキャップを有し、これはリボソーム結合、翻訳の開始および細胞における安定性を決定する。環状DNA鋳型、例えば、プラスミドDNAにおいて、RNAポリメラーゼは、真核細胞での発現に適さない、長い鎖状体産物を産生する。3’UTRの末端で線状化したプラスミドDNAの転写は、転写後にポリアデニル化されても、真核細胞遺伝子導入に有効ではない正常なサイズのmRNAをもたらす。
【0321】
線状DNA鋳型上で、ファージT7 RNAポリメラーゼは、鋳型の最後の塩基を越えて転写物の3’末端を延長できる(Schenborn and Mierendorf, Nuc Acids Res., 13:6223-36 (1985); Nacheva and Berzal-Herranz, Eur. J. Biochem., 270:1485-65 (2003))。
【0322】
ポリA/TストレッチをDNA鋳型に組み込む従来の方法は分子クローニングである。しかしながら、プラスミドDNAへのポリA/T配列の統合は、プラスミドを不安定性とすることがあり、これが、細菌細胞から得たプラスミドDNA鋳型がしばしば欠失および他の異常で高度に汚染されている理由である。これにより、クローニング手順が労力を要し、かつ時間がかかるだけでなく、しばしば、信頼できないものとなる。これが、ポリA/T 3’ストレッチを有するDNA鋳型のクローニングを用いない構築を可能とする方法が非常に望ましい理由である。
【0323】
転写DNA鋳型のポリA/Tセグメントを、100Tテイル(配列番号31)(サイズは50〜5000Tであり得る(配列番号32))のようなポリTテイル含有逆方向プライマーを使用するPCR中またはPCR後に、DNAライゲーションまたはインビトロ組換えを含むが、これらに限定されない任意の他の方法で産生できる。ポリ(A)テイルはまたRNAを安定性とし、その分解を減らす。一般に、ポリ(A)テイルの長さは、転写されたRNAの安定性と正に相関する。一つの態様において、ポリ(A)テイルは100〜5000アデノシン(配列番号33)である。
【0324】
RNAのポリ(A)テイルは、大腸菌ポリAポリメラーゼ(E−PAP)のようなポリ(A)ポリメラーゼを用いてインビトロ転写後さらに伸長できる。一つの態様において、ポリ(A)テイルの長さを100ヌクレオチドから300〜400ヌクレオチド(配列番号34)に伸ばすと、RNAの翻訳効率の約2倍増加となる。さらに、異なる化学基の3’末端への連結はmRNA安定性を増加させ得る。このような連結は修飾/人工ヌクレオチド、アプタマーおよび他の化合物を含み得る。例えば、ATP類似体を、ポリ(A)ポリメラーゼを使用してポリ(A)テイルに取り込み得る。ATP類似体は、さらにRNAの安定性を高め得る。
【0325】
5’キャップもRNA分子に安定性を提供する。好ましい態様において、ここに開示する方法で産生されたRNAは5’キャップを含む。5’キャップは、当分野で知られ、ここに記載する方法を使用して提供する(Cougot, et al., Trends in Biochem. Sci., 29:436-444 (2001); Stepinski, et al., RNA, 7:1468-95 (2001); Elango, et al., Biochim. Biophys. Res. Commun., 330:958-966 (2005))。
【0326】
ここに開示する方法により産生されたRNAはまた配列内リボソーム進入部位(IRES)配列を含み得る。IRES配列は、mRNAへのキャップ非依存性リボソーム結合を開始し、翻訳の開始を促進するあらゆるウイルス、染色体または人工的に設計した配列であり得る。糖、ペプチド、脂質、タンパク質、抗酸化剤および界面活性剤のような細胞透過性および生存能を促進する因子を含み得る、細胞エレクトロポレーションに適するあらゆる溶質を包含できる。
【0327】
RNAを、多数の異なる方法のいずれか、例えば、エレクトロポレーション(Amaxa Nucleofector-II(Amaxa Biosystems, Cologne, Germany))、ECM 830(BTX)(Harvard Instruments, Boston, Mass.)またはGene Pulser II(BioRad, Denver, Colo.)、Multiporator(Eppendort, Hamburg Germany)、リポフェクションを使用するカチオン性リポソーム介在遺伝子導入、ポリマーカプセル化、ペプチド介在遺伝子導入または“遺伝子銃”のような微粒子銃粒子送達系を含むが、これらに限定されない商業的に入手可能な方法のいずれかを使用して、標的細胞に導入できる(例えば、Nishikawa, et al. Hum Gene Ther., 12(8):861-70 (2001)参照)。
【0328】
CARをコードする核酸構築物
本発明は、本発明のCAR構築物の1個以上をコードする核酸配列を含む、CAR導入遺伝子を提供する。一つの面において、CAR導入遺伝子はメッセンジャーRNA転写物として提供される。一つの面において、CAR導入遺伝子はDNA構築物として提供される。
【0329】
したがって、一つの面において、本発明は、抗メソテリン結合ドメイン(例えば、ヒト抗メソテリン結合ドメイン)、膜貫通型ドメインおよび刺激ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離核酸分子に関する。一つの態様において、抗メソテリン結合ドメインは、ここに記載する抗メソテリン結合ドメイン、例えば、配列番号87〜111からなる群から選択される配列またはこれらと95〜99%同一性を有する配列を含む抗メソテリン結合ドメインである。一つの態様において、単離核酸分子は、さらに共刺激ドメインをコードする配列を含む。一つの態様において、膜貫通型ドメインはT細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137およびCD154からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通型ドメインである。一つの態様において、膜貫通型ドメインは配列番号6の配列またはこれらと95〜99%同一性を有する配列を含む。一つの態様において、抗メソテリン結合ドメインは、ヒンジ領域、例えば、ここに記載するヒンジにより膜貫通型ドメインに接続される。一つの態様において、ヒンジ領域は配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5またはこれらと95〜99%同一性を有する配列を含む。一つの態様において、単離核酸分子は、さらに共刺激ドメインをコードする配列を含む。一つの態様において、共刺激ドメインは、OX40、CD27、CD28、CDS、ICAM−1、LFA−1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)および4−1BB(CD137)からなる群から選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインである。このような共刺激分子のさらなる例は、CDS、ICAM−1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL−2Rベータ、IL−2Rガンマ、IL−7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA−6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA−1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA−1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB−A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO−3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP−76およびPAG/Cbpを含む。一つの態様において、共刺激ドメインは、配列番号7の配列またはこれらと95〜99%同一性を有する配列を含む。一つの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、4−1BBの機能的シグナル伝達ドメインおよびCD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメインを含む。一つの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号7の配列または配列番号8またはこれらと95〜99%同一性を有する配列および配列番号9または配列番号10の配列またはこれらと95〜99%同一性を有する配列を含み、ここで、細胞内シグナル伝達ドメインを含む配列は同じフレーム内にかつ単一ポリペプチド鎖として発現される。他の面において、本発明は、配列番号1のリーダー配列、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62(またはこれらと95〜99%同一性を有する配列)からなる群から選択される配列を有するscFvドメイン、配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5(またはこれらと95〜99%同一性を有する配列)のヒンジ領域、配列番号6の配列(またはこれらと95〜99%同一性を有する配列)を有する膜貫通型ドメイン、配列番号7の配列(またはこれらと95〜99%同一性を有する配列)を有する4−1BB共刺激ドメインまたは配列番号8の配列(またはこれらと95〜99%同一性を有する配列)を有するCD27共刺激ドメインならびに配列番号9または配列番号10の配列(またはこれらと95〜99%同一性を有する配列)を有するCD3ゼータ刺激ドメインを含む、単離CARをコードする核酸分子構築物に関する。
【0330】
他の面において、本発明は、核酸分子によりコードされる単離ポリペプチド分子に関する。一つの態様において、単離ポリペプチド分子は、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85および配列番号86からなる群から選択される配列またはこれらと95〜99%同一性を有する配列を含む。
【0331】
他の面において、本発明は、抗メソテリン結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび刺激ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離核酸分子に関し、ここで、抗メソテリン結合ドメインをコードする核酸は配列番号111;配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134からなる群から選択される配列またはこれらと95〜99%同一性を有する配列を含む。
【0332】
一つの態様において、コードされるCAR分子は、さらに共刺激ドメインをコードする配列を含む。一つの態様において、共刺激ドメインは、OX40、CD27、CD28、CDS、ICAM−1、LFA−1(CD11a/CD18)および4−1BB(CD137)からなる群から選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインである。一つの態様において、共刺激ドメインは配列番号7の配列を含む。一つの態様において、膜貫通型ドメインはT細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137およびCD154からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通型ドメインである。一つの態様において、膜貫通型ドメインは配列番号6の配列を含む。一つの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは4−1BBの機能的シグナル伝達ドメインおよびCD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメインを含む。一つの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは配列番号7の配列および配列番号9の配列を含み、ここで、細胞内シグナル伝達ドメインを含む配列は同じフレーム内にかつ単一ポリペプチド鎖として発現される。一つの態様において、抗メソテリン結合ドメインは、ヒンジ領域により膜貫通型ドメインに接続される。一つの態様において、ヒンジ領域は配列番号2を含む。一つの態様において、ヒンジ領域は配列番号3、配列番号4または配列番号5を含む。
【0333】
他の面において、本発明は、配列番号1のリーダー配列、配列番号39〜62からなる群から選択される配列またはこれらと95〜99%同一性を有する配列を有するscFvドメイン、配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5のヒンジ領域、配列番号6の配列を有する膜貫通型ドメイン、配列番号7の配列を有する4−1BB共刺激ドメインまたは配列番号8の配列を有するCD27共刺激ドメインおよび配列番号9または配列番号10の配列を有するCD3ゼータ刺激ドメインを含む、単離CAR分子に関する。一つの態様において、コードされるCAR分子は、配列番号63〜86からなる群から選択される配列またはこれらと95〜99%同一性を有する配列を含む。
【0334】
本発明は、さらに、CAR導入遺伝子を含むベクターを提供する。一つの面において、CARベクターを、細胞、例えば、T細胞またはNK細胞に直接形質導入できる。一つの面において、ベクターは、クローニングまたは発現ベクター、例えば、1個以上プラスミド(例えば、発現プラスミド、クローニングベクター、ミニサークル、ミニベクター、二重微小染色体)、レトロウイルス構築物およびレンチウイルスベクター構築物を含むが、これらに限定されないベクターである。一つの面において、ベクターは、哺乳動物T細胞またはNK細胞においてCAR構築物を発現できる。一つの面において、哺乳動物T細胞はヒトT細胞またはヒトNK細胞である。
【0335】
本発明はまた細胞、例えば、T細胞またはNK細胞に直接遺伝子導入できるCARコード化RNA構築物も含む。遺伝子導入に使用するmRNAを産生する方法は、特別に設計されたプライマーを用いる鋳型のインビトロ転写(IVT)、続くポリA付加を含み、概して50〜2000塩基長の、3’および5’非翻訳配列(“UTR”)、5’キャップおよび/または配列内リボソーム進入部位(IRES)、発現する遺伝子およびポリAテイルを含む構築物を産生する。このように産生されたRNAは、異なる種類の細胞に効率的に遺伝子導入できる。一つの面において、鋳型はCARのための配列を含む。
【0336】
一つの面において、メソテリンCAR導入遺伝子はメッセンジャーRNA(mRNA)によりコードされる。一つの面において、メソテリンCARをコードするmRNA導入遺伝子を、CAR T細胞の産生のためにT細胞にまたはNK細胞に導入する。
【0337】
ベクター
本発明はまた、本発明のDNAが挿入されているベクターも提供する。レンチウイルスのようなレトロウイルス由来のベクターは、導入遺伝子の長期の、安定な組み込みと娘細胞におけるその伝播を可能にするため、長期遺伝子導入を達成する適当なツールである。レンチウイルスベクターは、肝細胞のような増殖していない細胞に形質導入できるため、マウス白血病ウイルスのようなオンコレトロウイルス由来のベクターを超えるさらなる利点がある。低免疫原性というさらなる利点もある。
【0338】
一つの態様において、本発明の所望のCARをコードする核酸を含むベクターは、DNA、RNA、プラスミド、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである。
【0339】
他の態様において、本発明の所望のCARをコードする核酸を含むベクターは、アデノウイルスベクター(A5/35)である。他の態様において、CARをコードする核酸の発現は、スリーピング・ビューティーのようなトランスポゾン、CRISPR、CAS9および亜鉛フィンガーヌクレアーゼを使用して達成できる。例えば、その全体を引用により本明細書に包含させるJune et al. 2009 Nature Reviews Immunology 9.10:704-716参照。
【0340】
概要を言うと、CARをコードする天然または合成核酸の発現を、概してCARポリペプチドまたはその一部をコードする核酸をプロモーターに操作可能に連結し、該構築物を発現ベクターに取り込むことにより達成する。ベクターは真核生物での複製および組み込みに適し得る。典型的クローニングベクターは、所望の核酸配列の発現の制御に有用な転写および翻訳ターミネーター、開始配列およびプロモーターを含む。
【0341】
本発明の発現構築物はまた、標準遺伝子送達プロトコールを使用する、核酸免疫化および遺伝子療法にも使用し得る。遺伝子送達のための方法は当分野で知られる。例えば、その全体を引用により本明細書に包含させる、米国特許5,399,346号、5,580,859号、5,589,466号参照。他の態様において、本発明は、遺伝子療法ベクターを提供する。
【0342】
核酸を、多種多様なベクターにクローン化できる。例えば、核酸を、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスおよびコスミドを含むが、これらに限定されないベクターにクローン化できる。特に所望のベクターは、発現ベクター、複製ベクター、プローブ産生ベクターおよびシークエンシングベクターを含む。
【0343】
さらに、発現ベクターを、ウイルスベクターの形で細胞に提供し得る。ウイルスベクターテクノロジーは当分野で周知であり、例えば、Sambrook et al., 2012, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Press, NYおよび他のウイルス学および分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスを含むが、これらに限定されない。一般に、適当なベクターは、少なくとも1個の生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位および1個以上の選択可能マーカーを含む(例えば、WO01/96584号;WO01/29058号;および米国特許6,326,193号)。
【0344】
多数のウイルスベースの系が、哺乳動物細胞への遺伝子導入のために開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系のための好都合なプラットフォームを提供する。当分野で知られる方法を使用して、選択した遺伝子をベクターに導入し、レトロウイルス粒子に充填できる。次いで、組み換えウイルスを単離し、インビボまたはエクスビボで対象の細胞に送達する。多数のレトロウイルス系が当分野で知られる。ある態様において、アデノウイルスベクターを使用する。多数のアデノウイルスベクターが当分野で知られる。一つの態様において、レンチウイルスベクターを使用する。
【0345】
さらなるプロモーター成分、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を制御する。概して、これらは、開始部位の30〜110bp上流の領域に位置するが、多数のプロモーターが、開始部位の下流に同様に機能的成分を含むことが示されている。複数プロモーター成分間の間隔は、複数成分が互いに逆の位置になるかまたは移動したときにプロモーター機能が保護されるように、しばしば柔軟である。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターにおいて、プロモーター成分間の間隔は、活性が低下し始める前、50bp離れるまで増加していてよい。プロモーターによって、個々の成分が転写を活性化するのに協同的または非依存的に機能し得る。代表的プロモーターはCMV IE遺伝子、EF−1α、ユビキチンCまたはホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーターを含む。
【0346】
哺乳動物T細胞においてCAR導入遺伝子を発現できるプロモーターの例は、EF1アルファプロモーター(EF1aまたはEFlα)である。天然EF1プロモーターは、アミノアシルtRNAのリボソームへの酵素送達を担う、伸長因子−1複合体のアルファサブユニットの発現を駆動する。EF1プロモーターは哺乳動物発現プラスミドで広く使用されており、レンチウイルスベクターにクローン化された導入遺伝子からのCAR発現の駆動に有効であることが示されている。例えば、Milone et al., Mol. Ther. 17(8):1453-1464 (2009)参照。一つの面において、EF1プロモーターは、配列番号11に提供される配列を含む。
【0347】
プロモーターの他の例は、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに操作可能に結合したあらゆるポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動できる強い構成的プロモーター配列である。しかしながら、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびに、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、伸長因子−1αプロモーター、ヘモグロビンプロモーターおよびクレアチンキナーゼプロモーターを含むが、これらに限定されないヒト遺伝子プロモーターを含むが、これらに限定されない他の構成的プロモーター配列も使用し得る。さらに、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定すべきではない。誘導性プロモーターも本発明の一部として意図される。誘導性プロモーターの使用は、操作可能に結合したポリヌクレオチド配列の発現を、発現が望まれるとき、そのような発現を活性化し、発現が望まれないとき、そのような発現を遮断することができる、分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例は、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーターおよびテトラサイクリンプロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0348】
CARポリペプチドまたはその一部の発現を評価するために、細胞に導入する発現ベクターはまた、ウイルスベクターによる遺伝子導入または感染が探索されている細胞の集団から、発現細胞を同定し、選択することを容易にするために、選択可能マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子または両者も含み得る。他の面において、選択可能マーカーは、別のDNAの一部で運搬され、共遺伝子導入手順で使用され得る。選択可能マーカーおよびレポーター遺伝子の両者とも、宿主細胞での発現を可能とするために適切な制御配列に隣接し得る。有用な選択可能マーカーは、neoなどのような、例えば、抗生物質耐性遺伝子を含む。
【0349】
レポーター遺伝子を、遺伝子導入された可能性のある細胞の同定および制御配列の機能性の評価のために使用する。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物または組織に存在せず、またはこれらにより発現されず、ある容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性により発現が顕在化するポリペプチドをコードする、遺伝子である。レポーター遺伝子の発現を、レシピエント細胞にDNAが導入された後適当な時にアッセイする。適当なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼまたは緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子を含み得る(例えば、Ui-Tei et al., 2000 FEBS Letters 479:79-82)。適当な発現系は周知であり、既知技術を使用して製造できるかまたは商業的に得られる。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す最小5’フランキング領域を有する構築物を、プロモーターとして同定する。このようなプロモーター領域をレポーター遺伝子と連結し、プロモーター駆動転写を調節する薬剤の能力の評価に使用し得る。
【0350】
一つの態様において、ベクターは、さらに第二CARをコードする核酸を含み得る。一つの態様において、第二CARは、例えば、間質細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、FAP;前立腺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、アンドロゲン受容体、OR51E2、PSMA、PSCA、PDGRF−β、TARP、GloboH、MAD−CT−1またはMAD−CT−2;卵巣癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、Tn、PRSS21、CD171、ルイスY、葉酸受容体α、クローディン6、GloboHまたは精子タンパク質17;例えば、肺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、VEGF、HER3、IGF−1R、EGFR、DLL4またはTrop−2に対する、抗原結合ドメインを含む。一つの態様において、ベクターは、第一抗原を標的とし、共刺激シグナル伝達ドメインを有するが、一次シグナル伝達ドメインを有しない細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一CARをコードする核酸配列および第二の異なる抗原を標的とし、一次シグナル伝達ドメインを有するが、共刺激シグナル伝達ドメインを有しない細胞内シグナル伝達ドメインを含む第二CARをコードする核酸配列を含む。一つの態様において、ベクターは、メソテリン結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび共刺激ドメインを含む第一メソテリンCARをコードする核酸およびメソテリン以外の抗原(例えば、間質細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、FAP;前立腺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、アンドロゲン受容体、OR51E2、PSMA、PSCA、PDGRF−β、TARP、GloboH、MAD−CT−1またはMAD−CT−2;卵巣癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、Tn、PRSS21、CD171、ルイスY、葉酸受容体α、クローディン6、GloboHまたは精子タンパク質17;例えば、肺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、VEGF、HER3、IGF−1R、EGFR、DLL4またはTrop−2)を標的とし、抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む第二CARをコードする核酸を含む。他の態様において、ベクターは、メソテリン結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む第一メソテリンCARをコードする核酸およびメソテリン以外の抗原(例えば、間質細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、FAP;前立腺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、アンドロゲン受容体、OR51E2、PSMA、PSCA、PDGRF−β、TARP、GloboH、MAD−CT−1またはMAD−CT−2;卵巣癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、Tn、PRSS21、CD171、ルイスY、葉酸受容体α、クローディン6、GloboHまたは精子タンパク質17;例えば、肺癌細胞上のメソテリン以外の標的、例えば、VEGF、HER3、IGF−1R、EGFR、DLL4またはTrop−2)を標的とし、該抗原に対する抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび共刺激シグナル伝達ドメインを含む第二CARをコードする核酸を含む。
【0351】
一つの態様において、ベクターは、ここに記載するメソテリンCARをコードする核酸および阻害性CARをコードする核酸を含む。一つの態様において、阻害性CARは、正常細胞、例えば、CLLも発現する正常細胞上に見られるが、癌細胞には見られない抗原と結合する抗原結合ドメインを含む。一つの態様において、阻害性CARは、阻害分子の抗原結合ドメイン、膜貫通型ドメインおよび細胞内ドメインを含む。例えば、阻害性CARの細胞内ドメインは、PD1、PD−L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM−1、CEACAM−3および/またはCEACAM−5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータの細胞内ドメインであり得る。
【0352】
一つの態様において、ベクターは、ここに記載するメソテリンCARをコードする核酸および阻害核酸、例えば、ここに記載する、例えば、dsRNA、例えば、siRNAまたはshRNAを含む。
【0353】
遺伝子を細胞に導入し、発現させる方法が当分野で知られる。発現ベクターとの関連で、該ベクターは、当分野における任意の方法により宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母または昆虫細胞に容易に導入できる。例えば、発現ベクターを、物理的、化学的または生物学的手段により宿主細胞に導入できる。
【0354】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法は、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを含む。ベクターおよび/または外来核酸を含む細胞を産生する方法は当分野で周知である。例えば、Sambrook et al., 2012, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Press, NY参照。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する好ましい方法は、例えば、リポフェクタミン(Life Technologies)を使用する、リポフェクションである。
【0355】
所望のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する生物学的方法は、DNAおよびRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒト細胞への遺伝子挿入に最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなど由来であり得る。例えば、米国特許5,350,674号および5,585,362号参照。
【0356】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入する化学的手段は、巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベースの系のようなコロイド分散系を含む。インビトロおよびインビボで送達媒体として使用される代表的コロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。標的化ナノ粒子または他の適当なサブミクロンサイズの送達系でのポリヌクレオチドの送達のような、最新式の核酸標的化送達の他の方法が利用可能である。
【0357】
非ウイルス送達系を利用するとき、代表的送達媒体はリポソームである。核酸の宿主細胞(インビトロ、エクスビボまたはインビボ)への導入のための脂質製剤の使用が意図される。他の面において、核酸は、脂質と結合し得る。脂質と結合した核酸は、リポソームの水性内部に被包されているか、リポソームの脂質二重層に分散されているか、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両者と結合する結合分子によりリポソームに結合しているか、リポソームに封入されているか、リポソームと複合体化しているか、脂質を含む溶液に分散されているか、脂質と混合されているか、脂質と合わされているか、脂質における懸濁液として包含されているか、ミセルに含まれるかまたは複合体化しているかまたは他に脂質と結合していてよい。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクター結合組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。例えば、それらはミセルのように二重層構造で存在するかまたは“崩壊”構造を有し得る。また、単に溶液中に分散し、恐らくサイズまたは形が均一ではない凝集体を形成していてよい。脂質は、天然に存在するまたは合成脂質であり得る脂肪物質である。例えば、脂質は、細胞質で自然に生じる脂肪滴ならびに脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコールおよびアルデヒドのような長鎖脂肪族炭化水素を有する化合物群およびそれらの誘導体を含む。
【0358】
使用に適する脂質は業者から得ることができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(“DMPC”)はSigma, St. Louis, MOから得ることができ、リン酸ジセチル(“DCP”)はK & K Laboratories(Plainview, NY)から得ることができ、コレステロール(“Choi”)はCalbiochem-Behringから得ることができ、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(“DMPG”)および他の脂質はAvanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, AL.)から得られ得る。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質の保存溶液は、約−20℃で保存できる。クロロホルムを、メタノールよりもはるかに容易に蒸発するため、唯一の溶媒として使用する。“リポソーム”は、封入された脂質二重層または凝集体の産生により形成される多様な単および多重膜脂質媒体を包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部水性媒体を有する小胞構造を有するとして特徴づけることができる。多重膜リポソームは、水性媒体により分離された複数脂質層を有する。リン脂質が過剰の水溶液に懸濁されたとき、自然に形成される。脂質成分は、自己再編成を受け、その後閉構造を形成し、脂質二重層間に水を捕捉し、溶質を溶解する(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5:505-10)。しかしながら、溶液で通常の小胞構造と異なる構造を取る組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造または単に脂質分子の不均一性凝集体として存在することが想定され得る。また考慮されるのは、リポフェクタミン−核酸複合体である。
【0359】
外来核酸の宿主細胞への導入に使用するまたはそうでなければ細胞を本発明の阻害剤に曝すために使用する方法と無関係に、宿主細胞内の組み換えDNA配列の存在を確認するために、多様なアッセイを実施し得る。このようなアッセイは、例えば、サザンおよびノーザンブロッティング、RT−PCRおよびPCRのような当業者に周知の“分子生物学的”アッセイ;例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウェスタンブロット)による、または本発明の範囲に入る薬剤を同定するためのここに記載するアッセイによる、特定のペプチドの存在または不在を検出する“生化学的”アッセイを含む。
【0360】
本発明は、さらにCARコード化核酸分子を含むベクターを提供する。一つの面において、CARベクターを、細胞、例えば、T細胞またはNK細胞に直接形質導入できる。一つの面において、ベクターは、クローニングベクターまたは発現ベクター、例えば、プラスミド(例えば、発現プラスミド、クローニングベクター、ミニサークル、ミニベクター、二重微小染色体)、レトロウイルス構築物およびレンチウイルスベクター構築物の1個以上を含むが、これらに限定されないベクターである。一つの面において、ベクターは、哺乳動物T細胞においてCAR構築物を発現させることが可能である。一つの面において、哺乳動物T細胞は、ヒトT細胞である。一つの面において、哺乳動物細胞は、ヒトNK細胞である。
【0361】
細胞の起源
増殖および遺伝子修飾前に、細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)の起源を対象から得る。用語“対象”は、免疫応答を誘発できる生存生物(例えば、哺乳動物)を含むことを意図する。対象の例は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラットおよびそれらのトランスジェニック種を含む。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織および腫瘍を含む、多数の起源から得ることができる。本発明のある面において、当分野で入手可能なT細胞株をいくらでも使用し得る。本発明のある面において、T細胞は、Ficoll
TM分離のような当業者に知られる方法をいくらでも使用して、対象から採取した血液のユニットから得ることができる。一つの好ましい面において、個体の循環血からの細胞をアフェレシスにより得る。アフェレシス産物は、概してT細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球を含むリンパ球、赤血球および血小板を含む。一つの面において、アフェレシスにより採取した細胞を洗浄して血漿フラクションを除去し、細胞を次の処理工程のために適切な緩衝液または媒体に入れることができる。本発明の一つの面において、細胞をリン酸緩衝化食塩水(PBS)で洗浄する。別の面において、洗浄溶液はカルシウムを欠き、マグネシウムを欠いてよくまたは全てではないにしても多くの二価カチオンを欠いてよい。カルシウム非存在下の初期活性化工程は、活性化を拡大し得る。当業者が容易に認識するとおり、洗浄工程は、製造業者の指示に従う半自動化“フロースルー”遠心分離(例えば、Cobe 2991 cell processor、Baxter CytoMateまたはHaemonetics Cell Saver 5)を使用するような当業者に知られる方法により達成し得る。洗浄後、細胞を、例えば、無Ca、無MgのPBS、PlasmaLyte Aまたは他の緩衝剤を含むもしくは含まない食塩水溶液のような、多様な生体適合性緩衝液に再懸濁し得る。あるいは、アフェレシスサンプルの望ましくない成分を除去し、細胞を培養培地に直接再懸濁し得る。
【0362】
一つの面において、T細胞を、赤血球を溶解し、単球を、例えば、PERCOLL
TM勾配を介する遠心分離または向流遠心水簸により枯渇させることにより、末梢血リンパ球から単離する。CD3
+、CD28
+、CD4
+、CD8
+、CD45RA
+およびCD45RO
+T細胞のようなT細胞の特定の亜集団を、陽性または陰性選択技術によりさらに単離できる。例えば、一つの面において、T細胞を、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tのような抗CD3/抗CD28(例えば、3×28)結合ビーズと、所望のT細胞の陽性選択に十分な期間インキュベーションすることにより単離する。一つの面において、期間は約30分である。さらなる面において、期間は30分〜36時間またはそれより長いおよびその間の全整数値である範囲である。さらなる面において、期間は少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間または6時間である。さらに他の好ましい面において、期間は10〜24時間である。一つの面において、インキュベーション期間は24時間である。白血病を有する患者からのT細胞の単離のために、24時間のような長いインキュベーション時間の使用が細胞収率を上げ得る。長いインキュベーション時間を、腫瘍組織からの腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の単離または免疫無防備状態個体からの単離のような、他の細胞型と比較してT細胞が少ない、あらゆる状況においてT細胞を単離するために使用し得る。さらに、長いインキュベーション時間の使用は、CD8
+ T細胞の捕獲効率を上げ得る。それゆえに、T細胞をCD3/CD28ビーズと結合させる時間を単純に短くまたは長くすることによりおよび/またはビーズ対T細胞比(ここにさらに記載する)を増加または減少することにより、T細胞の亜集団を、培養開始時または処理中の他の時点に優先的に選択または排除できる。さらに、ビーズまたは他の表面上の抗CD3および/または抗CD28抗体の比を増加または減少することにより、T細胞の亜集団を、培養開始時にまたは他の所望の時点で優先的に選択または排除できる。複数回の選択も本発明の状況で使用できることを、当業者は認識する。ある面において、選択手順を使用し、活性化および増殖過程において“未選択”細胞を使用することが望ましいことがある。“未選択”細胞もまたさらなる選択に付し得る。
【0363】
陰性選択によるT細胞集団の富化は、陰性に選択した細胞に特有の表面マーカーを指向する抗体の組み合わせにより達成できる。一つの方法は、陰性に選択した細胞上に存在する細胞表面マーカーを指向するモノクローナル抗体のカクテルを使用する、陰性磁気免疫粘着またはフローサイトメトリーを介する細胞選別および/または選択である。例えば、陰性選択によりCD4
+細胞を富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、概してCD14、CD20、CD11b、CD16、HLA−DRおよびCD8に対する抗体を含む。ある面において、概してCD4
+、CD25
+、CD62Lhi、GITR
+およびFoxP3
+を発現する制御性T細胞を富化するまたは陽性に選択することが望ましいことがある。あるいは、ある面において、T制御性細胞を、抗C25結合ビーズまたは他の類似選択法により枯渇させる。
【0364】
一つの態様において、IFN−γ、TNF−α、IL−17A、IL−2、IL−3、IL−4、GM−CSF、IL−10、IL−13、グランザイムBおよびパーフォリンまたは他の適切な分子、例えば、他のサイトカインの1個以上を発現するT細胞集団を選択できる。細胞発現をスクリーニングする方法は、例えば、PCT公開公報WO2013/126712号に記載の方法により決定できる。
【0365】
一つの態様において、T細胞集団はジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)欠損である。DGK欠損細胞は、DGK RNAもしくはタンパク質を発現しないまたはDGK活性が減少したもしくは阻害された細胞をいう。DGK欠損細胞は、例えば、DGK発現を減少または阻止するためのRNA干渉剤、例えば、siRNA、shRNA、miRNAの投与による、遺伝学的方法により産生できる。あるいは、DGK欠損細胞は、ここに記載するDGK阻害剤での処理により産生できる。
【0366】
一つの態様において、T細胞集団はIkaros欠損である。Ikaros欠損細胞は、Ikaros RNAもしくはタンパク質を発現しないまたはIkaros活性が減少したもしくは阻害された細胞をいい、Ikaros欠損細胞は、例えば、Ikaros発現を減少または阻止するためのRNA干渉剤、例えば、siRNA、shRNA、miRNAの投与による、遺伝学的方法により産生できる。あるいは、Ikaros欠損細胞は、Ikaros阻害剤、例えば、レナリドマイドでの処理により産生できる。
【0367】
いくつかの態様において、T細胞集団はDGK欠損およびIkaros欠損であり、例えば、DGKおよびIkarosを発現しないか、またはDGK活性およびIkaros活性が減少しているかまたは阻害されている。このようなDGKおよびIkaros欠損細胞はここに記載する方法のいずれかにより産生できる。
【0368】
陽性または陰性選択により所望の細胞集団を単離するために、細胞および表面(例えば、ビーズのような粒子)の濃度は変わり得る。ある面において、細胞とビーズの最大の接触を確実にするために、ビーズと細胞を混ぜ合わせる体積を顕著に低下させる(例えば、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましいことがある。例えば、一つの面において、20億細胞/mlの濃度を使用する。一つの面において、10億細胞/mlを使用する。さらなる面において、1億細胞/ml超を使用する。さらなる面において、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万または5000万細胞/mlの細胞濃度を使用する。さらなる面において、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万または1億細胞/mlの細胞の濃度を使用する。さらなる面において、1億2500万または1億5000万細胞/mlの濃度を使用できる。高濃度の使用は細胞収率、細胞活性化および細胞増殖の増加をもたらし得る。さらに、高細胞濃度の使用は、CD28陰性T細胞のような所望の標的抗原を弱く発現し得る細胞の、または多くの腫瘍細胞が存在するサンプル(例えば、白血病血液、腫瘍組織など)からの細胞の、より効率的な捕獲を可能とする。このような細胞の集団は治療価値を有し得て、得ることが望まれる。例えば、高い細胞濃度の使用は、通常CD28発現が弱いCD8
+ T細胞のより効率的な選択を可能とする。
【0369】
関連する面において、細胞の低濃度を使用することが望ましいことがある。T細胞と表面(例えば、ビーズのような粒子)の混合物を顕著に希釈することにより、粒子と細胞の相互作用が最小化される。粒子に結合する所望の抗原を高量発現する細胞でこれを選択する。例えば、CD4
+ T細胞は、高レベルのCD28を発現し、希釈濃度でCD8
+ T細胞よりも効率的に捕獲される。一つの面において、使用する細胞の濃度は、5×10e
6/mlである。他の面において、使用する濃度は約1×10
5/ml〜1×10
6/mlおよびその間の任意の整数値であり得る。
【0370】
他の面において、細胞を、種々の長さの時間、種々の速度で、2〜10℃または室温で、回転子上でインキュベートし得る。
【0371】
刺激用T細胞はまた洗浄工程後凍結し得る。理論に縛られることを望まないが、凍結と続く解凍工程は、細胞集団中の顆粒球をおよびある程度の単球を除去することにより、より均一な産物を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄工程後、細胞を凍結溶液に懸濁し得る。多くの凍結溶液およびパラメータが当分野で知られ、この状況で有用であるが、一つの方法は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含むPBSまたは10%デキストラン40および5%デキストロースを含む、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5%DMSOを含む、または31.25%Plasmalyte-A、31.25%デキストロース5%、0.45%NaCl、10%デキストラン40および5%デキストロースを含む、または20%ヒト血清アルブミンおよび7.5%DMSOを含む培養培地または例えば、HespanおよびPlasmaLyte Aを含む、他の適当な細胞凍結媒体の使用を含み、次いで細胞を、−80℃で1°/分の速度で凍結させ、液体窒素貯蔵タンクの気相に貯蔵する。制御凍結の他の方法ならびに即時に−20℃でのまたは液体窒素中の未制御凍結を使用できる。
【0372】
ある面において、凍結保存細胞をここに記載のとおり解凍し、洗浄して、本発明の方法を使用する活性化の前に1時間、室温で休息させる。
【0373】
本発明の状況においてまた意図されるのは、ここに記載した拡大させた細胞が必要となる前の時点での、対象からの血液サンプルまたはアフェレシス産物の採取である。つまり、拡大させる細胞の起源を必要なあらゆる時点で採取し、T細胞のような所望の細胞を、ここに記載するようなT細胞療法から利益を得るであろう様々な疾患または状態のためのT細胞療法にその後使用するために、単離および凍結できる。一つの面において、血液サンプルまたはアフェレシスを、一般に健常な対象から採る。ある面において、血液サンプルまたはアフェレシスを、疾患を発症するリスクがあるが、疾患をまだ発症していない一般に健常な対象から採り、所望の細胞をその後の使用のために単離し、凍結する。ある面において、T細胞を増殖させ、凍結し、後に使用し得る。ある面において、サンプルを、ここに記載する特定の疾患と診断された直ぐ後に、しかし処置前に患者から単離する。さらなる面において、細胞を、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス剤、化学療法剤、放射線、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸およびFK506のような免疫抑制剤、抗体または他のCAMPATH、抗CD3抗体、シトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228および照射のような他の免疫除去剤のような手段での処置を含むが、これらに限定されない、任意の数の適切な処置モダリティーの前に、対象からの血液サンプルまたはアフェレシスから単離する。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリン(シクロスポリンおよびFK506)を阻害するか、または増殖因子誘発シグナル伝達(ラパマイシン)に重要なp70S6キナーゼを阻害する(Liu et al., Cell 66:807-815, 1991; Henderson et al., Immun. 73:316-321, 1991; Bierer et al., Curr. Opin. Immun. 5:763-773, 1993)。さらなる面において、細胞を患者から単離し、骨髄または幹細胞移植、フルダラビンのような化学療法剤、外部ビーム放射線療法(XRT)、シクロホスファミドまたはOKT3またはCAMPATHのような抗体を使用するT細胞除去療法と組み合わせた(例えば、前、同時または後)その後の使用のために凍結する。一つの面において、細胞を前もって単離し、その後の、CD20と反応する薬剤、例えば、リツキサンのようなB細胞除去療法後の処置のために凍結できる。
【0374】
本発明のさらなる面において、T細胞を、対象に機能的T細胞を残す処置後、患者から直接得る。これに関して、ある種の癌処置、特に免疫系を損傷させる薬物での処置後、処置の直ぐ後に、患者が通常処置から回復段階にある期間に、得られたT細胞の品質は、恐らくエクスビボで拡大する能力が最適であるかまたは改善していることが観察された。同様に、ここに記載する方法を使用したエクスビボ操作後、これらの細胞は、生着およびインビボ増殖の強化に好ましい状態であり得る。それゆえに、本発明の状況において、T細胞、樹状細胞または造血液細胞系譜の他の細胞を含む血液細胞をこの回復期の間に採取することが意図される。さらに、ある面において、可動化(例えば、GM−CSFでの可動化)および前処置レジメンを使用して、特に治療後定義された時間枠の間、対象における特定の細胞型の再増殖、再循環、再生および/または増殖に好都合である条件を作ることができる。説明的細胞型は、T細胞、B細胞、樹状細胞および免疫系の他の細胞を含む。
【0375】
ある態様において、NK細胞を対象から得る。他の態様において、NK細胞はNK細胞株、例えば、NK−92細胞株(Conkwest)である。
【0376】
同種CAR
ここに記載する態様において、免疫エフェクター細胞は同種免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞またはNK細胞であり得る。例えば、細胞は、同種T細胞、例えば、機能的T細胞受容体(TCR)および/またはヒト白血球抗原(HLA)、例えば、HLAクラスIおよび/またはHLAクラスIIの発現を欠く同種T細胞であり得る。
【0377】
機能的TCRを欠くT細胞は、例えば、その表面に機能的TCRを何も発現しないように操作されるか、機能的TCRを含む1個以上のサブユニットを発現しないように操作されるかまたはその表面にごくわずかな機能的TCRしか産生しないように操作され得る。あるいは、T細胞は、例えば、TCRのサブユニットの1個以上の変異型または切断型の発現により、実質的に障害されたTCRを発現できる。用語“実質的に障害されたTCR”は、このTCRが、宿主に有害免疫反応を誘発しないことを意味する。
【0378】
ここに記載するT細胞は、例えば、その表面に機能的HLAを発現しないように操作できる。例えば、ここに記載するT細胞は、細胞表面発現HLA、例えば、HLAクラスIおよび/またはHLAクラスIIが下方制御されるように操作される。
【0379】
ある態様において、T細胞は、機能的TCRおよび機能的HLA、例えば、HLAクラスIおよび/またはHLAクラスIIを欠き得る。
【0380】
機能的TCRおよび/またはHLAの発現を欠く修飾T細胞は、TCRまたはHLAの1個以上のサブユニットのノックアウトまたはノックダウンを含む、あらゆる適当な手段により得ることができる。例えば、T細胞は、siRNA、shRNA、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)転写アクティベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)または亜鉛フィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)を使用する、TCRおよび/またはHLAのノックダウンを含み得る。
【0381】
ある態様において、同種細胞は、例えばここに記載するいずれかの方法により、阻害分子を発現しないまたは低レベルで発現する細胞である。例えば、細胞は、例えば、CAR発現細胞が免疫エフェクター応答を開始する能力を低下させ得る、阻害分子を発現しないまたは低レベルで発現する細胞である。阻害分子の例は、PD1、PD−L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM−1、CEACAM−3および/またはCEACAM−5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータを含む。例えば、DNA、RNAまたはタンパク質レベルでの阻害による阻害分子の阻害は、CAR発現細胞性能を最適化できる。いくつかの態様において、例えば、ここに記載する、阻害核酸、例えば、阻害核酸、例えば、dsRNA、例えば、siRNAまたはshRNA、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)、転写アクティベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)または亜鉛フィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)を使用できる。
【0382】
TCRまたはHLAを阻害するためのsiRNAおよびshRNA
ある態様において、TCR発現および/またはHLA発現を、T細胞におけるTCRおよび/またはHLAをコードする核酸を標的とするsiRNAまたはshRNAを使用して阻害できる。
【0383】
T細胞におけるsiRNAおよびshRNAの発現は、例えば、レンチウイルス発現系のような、任意の慣用の発現系を使用して達成できる。
【0384】
TCRの成分の発現を下方制御する代表的shRNAは、例えば、米国公開公報2012/0321667号に記載されている。HLAクラスIおよび/またはHLAクラスII遺伝子の発現を下方制御する代表的siRNAおよびshRNAは、例えば、米国公開公報2007/0036773号に記載されている。
【0385】
TCRまたはHLAを阻害するためのCRISPR
ここで使用する“CRISPR”または“TCRおよび/またはHLAに対するCRISPR”または“TCRおよび/またはHLAを阻害するためのCRISPR”は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピートのセットまたはこのようなセットの反復を含む系をいう。ここで使用する“Cas”は、CRISPR関連タンパク質をいう。“CRISPR/Cas”系は、TCRおよび/またはHLA遺伝子の発現抑制または変異に使用できるCRISPRおよびCas由来の系である。
【0386】
天然に存在するCRISPR/Cas系は、配列決定された真正細菌ゲノムの約40%および配列決定された古細菌の90%で見られる。Grissa et al. (2007) BMC Bioinformatics 8:172。この系は、プラスミドおよびファージのような外来性遺伝成分に対する抵抗性を付与し、獲得免疫の一形態を提供する、原核生物免疫系の一タイプである。Barrangou et al. (2007) Science 315:1709-1712; Marragini et al. (2008) Science 322:1843-1845。
【0387】
CRISPR/Cas系は、マウスまたは霊長類のような真核生物における遺伝子編集(特異的遺伝子のサイレンシング、促進または変更)に使用するために修飾されている。Wiedenheft et al. (2012) Nature 482:331-8。これは、真核細胞に、特別に設計されたCRISPRおよび1個以上の適切なCasを含むプラスミドを導入することにより達成される。
【0388】
CRISPR座位と呼ばれることもあるCRISPR配列は、交互の反復およびスペーサーを含む。天然に存在するCRISPRにおいて、スペーサーは、通常プラスミドまたはファージ配列のような細菌に外来性の配列を含み、TCRおよび/またはHLA CRISPR/Cas系において、スペーサーはTCRまたはHLA遺伝子配列に由来する。
【0389】
CRISPR座位からのRNAは、構成的に発現され、Casタンパク質により小RNAに加工される。これらは、反復配列が隣接したスペーサーを含む。RNAは、他のCasタンパク質が、RNAまたはDNAレベルで外来性遺伝成分を発現抑制するよう導く。Horvath et al. (2010) Science 327:167-170; Makarova et al. (2006) Biology Direct 1:7。スペーサーは、それゆえに、siRNAと類似して、RNA分子の鋳型として働く。Pennisi (2013) Science 341:833-836。
【0390】
これらが多くの異なるタイプの細菌で天然に存在するため、CRISPRの正確な配置ならびにCas遺伝子およびその産物の構造、機能および数は種毎にいくぶん異なる。Haft et al. (2005) PLoS Comput. Biol. 1: e60; Kunin et al. (2007) Genome Biol. 8: R61; Mojica et al. (2005) J. Mol. Evol. 60: 174-182; Bolotin et al. (2005) Microbiol. 151: 2551-2561; Pourcel et al. (2005) Microbiol. 151: 653-663;およびStern et al. (2010) Trends. Genet. 28: 335-340。例えば、Cse(Casサブタイプ、大腸菌)タンパク質(例えば、CasA)は機能的複合体であるCascadeを形成し、これは、CRISPR RNA転写物を、Cascadeを保持するスペーサー反復単位に加工する。Brouns et al. (2008) Science 321:960-964。他の原核生物において、Cas6はCRISPR転写物を処理する。大腸菌におけるCRISPRベースのファージ不活性化はCascadeおよびCas3を必要とするが、Cas1またはCas2はひつようとしない。パイロコッカス・フリオサスおよび他の原核生物におけるCmr(Cas RAMPモジュール)タンパク質は、小CRISPR RNAと機能的複合体を形成し、これは相補的標的RNAを認識し、切断する。より単純なCRISPR系はタンパク質Cas9に依存し、これは、二重らせんの各鎖それぞれに対する2個の活性切断部位を有するヌクレアーゼである。Cas9と修飾CRISPR座位RNAの組み合わせは、遺伝子編集のための系において使用できる。Pennisi (2013) Science 341:833-836。
【0391】
CRISPR/Cas系は、それゆえに、TCRおよび/またはHLA遺伝子の編集(塩基対の付加または除去)または未成熟終止の導入に使用でき、こうしてTCRおよび/またはHLAの発現を減少させる。CRISPR/Cas系は、あるいはRNA干渉のように使用でき、可逆性様式でTCRおよび/またはHLA遺伝子を遮断する。哺乳動物細胞において、例えば、RNAは、Casタンパク質をTCRおよび/またはHLプロモーターに誘導し、RNAポリメラーゼを立体的に遮断できる。
【0392】
当分野で知られるテクノロジー、例えば、米国公開公報20140068797号およびCong (2013) Science 339:819-823に記載のものを使用して、TCRおよび/またはHLAを阻害する人工CRISPR/Cas系を産生できる。例えば、Tsai (2014) Nature Biotechnol., 32:6 569-576、米国特許8,871,445号;8,865,406号;8,795,965号;8,771,945号;および8,697,359号に記載された、TCRおよび/またはHLAを阻害する、当分野で知られる他の人工CRISPR/Cas系も産生できる。
【0393】
TCRおよび/またはHLAを阻害するためのTALEN
“TALEN”または“HLAおよび/またはTCRに対するTALEN”または“HLAおよび/またはTCRを阻害するためのTALEN”は、HLA遺伝子および/またはTCR遺伝子の編集に使用できる人工ヌクレアーゼである転写アクティベーター様エフェクターヌクレアーゼをいう。
【0394】
TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインのDNA切断ドメインへの融合により人為的に産生される。転写アクティベーター様効果(TALE)は、HLA遺伝子またはTCR遺伝子の一部を含む任意の所望のDNA配列と結合するよう操作できる。操作したTALEとDNA切断ドメインを合わせることにより、HLAまたはTCR配列を含む、任意の所望のDNA配列に特異的な制限酵素が産生できる。次いで、これらを細胞に導入でき、ここで、それらをゲノム編集のために使用できる。Boch (2011) Nature Biotech. 29:135-6;およびBoch et al. (2009) Science 326:1509-12; Moscou et al. (2009) Science 326:3501。
【0395】
TALEは、キサントモナス細菌により分泌されるタンパク質である。DNA結合ドメインは、反復した、12番目および13番目のアミノ酸以外、高度に保存された33〜34アミノ酸配列を含む。これらの2箇所は高度に可変であり、特定のヌクレオチド認識と強い相関を示す。こうして、これらを所望のDNA配列と結合するように操作できる。
【0396】
TALENを産生するために、TALEタンパク質を、野生型または変異FokIエンドヌクレアーゼであるヌクレアーゼ(N)と融合させる。FokIの数個の変異がTALENにおけるその使用のために行われており、これらは、例えば、切断特異性または活性を改善する。Cermak et al. (2011) Nucl. Acids Res. 39: e82; Miller et al. (2011) Nature Biotech. 29: 143-8; Hockemeyer et al. (2011) Nature Biotech. 29: 731-734; Wood et al. (2011) Science 333: 307; Doyon et al. (2010) Nature Methods 8: 74-79; Szczepek et al. (2007) Nature Biotech. 25: 786-793;およびGuo et al. (2010) J. Mol. Biol. 200: 96。
【0397】
FokIドメインは二量体として機能し、正確な配向および間隔を有する標的ゲノム内の部位のための独特のDNA結合ドメインを有する2個の構築物を必要とする。TALE DNA結合ドメインとFokI切断ドメインの間のアミノ酸残基数および2個の個々のTALEN結合部位間の塩基数の両者が、高レベルの活性を達成するための重要なパラメータであると考えられる。Miller et al. (2011) Nature Biotech. 29:143-8。
【0398】
HLAまたはTCR TALENは、二本鎖切断(DSB)を産生するために細胞内で使用できる。修復機構が、非相同末端連結により切断を不適切に修復するならば、切断部位に変異を導入できる。例えば、不適当な修復は、フレームシフト変異を導入し得る。あるいは、外来DNAを、TALENと共に細胞に導入でき、外来DNAの配列および染色体配列によって、この過程を、HLA遺伝子またはTCR遺伝子における欠損を矯正するかまたはwt HLA遺伝子またはTCR遺伝子へこのような欠損を導入し、そうしてHLAまたはTCRの発現を減少させるのに使用できる。
【0399】
HLAまたはTCRにおける配列に特異的なTALENを、モジュラー成分を使用する多様なスキームを含む、当分野で知られる任意の方法を使用して構築できる。Zhang et al. (2011) Nature Biotech. 29:149-53; Geibler et al. (2011) PLoS ONE 6:e19509。
【0400】
HLAおよび/またはTCRを阻害するための亜鉛フィンガーヌクレアーゼ
“ZFN”または“亜鉛フィンガーヌクレアーゼ”または“HLAおよび/またはTCRに対するZFN”または“HLAおよび/またはTCRを阻害するためのZFN”は、HLA遺伝子および/またはTCR遺伝子の編集に使用できる人工ヌクレアーゼである亜鉛フィンガーヌクレアーゼである。
【0401】
TALENと同様、ZFNは、DNA結合ドメインに融合したFokIヌクレアーゼドメイン(またはその誘導体)を含む。ZFNの場合、DNA結合ドメインは、1個以上の亜鉛フィンガーを含む。Carroll et al. (2011) Genetics Society of America 188: 773-782;およびKim et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 1156-1160。
【0402】
亜鉛フィンガーは、1個以上の亜鉛イオンにより安定化された小タンパク質構造モチーフである。亜鉛フィンガーは、例えば、Cys2His2を含み、約3bp配列を認識できる。既知特異性の多様な亜鉛フィンガーを組み合わせて、約6bp、9bp、12bp、15bpまたは18bp配列を認識する多フィンガーポリペプチドを産生できる。ファージディスプレイ、酵母ワンハイブリッド系、細菌ワンハイブリッドおよびツーハイブリッド系および哺乳動物細胞を含む、特異的配列を認識する亜鉛フィンガー(およびこれらの組み合わせ)を産生する多様な選択およびモジュラー組立技術が入手可能である。
【0403】
TALENと同様、ZFNは、DNAを切断するために二量体化しなければならない。それゆえに、非パリンドロームDNA部位を標的とするためにZFNの対が必要である。2個の個々のZFNは、適切な間隔のそれらのヌクレアーゼにより、DNAの逆鎖に結合するはずである。Bitinaite et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:10570-5。
【0404】
またTALENと同様、ZFNはDNAに二本鎖切断を作ることができ、これは、不適切に修復されたらフレームシフト変異を作り、細胞におけるHLAおよび/またはTCRの発現および量を減少させる。ZFNはまたHLA遺伝子またはTCR遺伝子を変異するための相同組換えと共に使用できる。
【0405】
HLAおよび/またはTCRの配列に特異的なZFNは、当分野で知られる任意の方法を使用して構築できる。例えば、Provasi (2011) Nature Med. 18: 807-815; Torikai (2013) Blood 122: 1341-1349; Cathomen et al. (2008) Mol. Ther. 16: 1200-7;およびGuo et al. (2010) J. Mol. Biol. 400: 96;米国公開公報2011/0158957号;米国公開公報2012/0060230号参照。
【0406】
細胞の活性化および増殖
細胞を、例えば、米国特許6,352,694号;6,534,055号;6,905,680号;6,692,964号;5,858,358号;6,887,466号;6,905,681号;7,144,575号;7,067,318号;7,172,869号;7,232,566号;7,175,843号;5,883,223号;6,905,874号;6,797,514号;6,867,041号;および米国出願公開公報20060121005号に記載の方法を使用して、一般に活性化および増殖できる。
【0407】
一般に、本発明のT細胞を、T細胞の表面上の共刺激分子を刺激する、CD3/TCR複合体関連シグナルおよびリガンドを刺激する薬剤が結合した表面と接触させることにより、増殖させ得る。特に、T細胞集団を、表面上に固定化された抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントまたは抗CD2抗体と接触させることによるまたはカルシウムイオノフォアと合わせたタンパク質キナーゼCアクティベーター(例えば、ブリオスタチン)と接触させることによるように、ここに記載するように刺激し得る。T細胞の表面上のアクセサリー分子の共刺激のために、アクセサリー分子に結合するリガンドを使用する。例えば、T細胞の集団を、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下、抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させる。CD4
+ T細胞またはCD8
+ T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体を使用する。抗CD28抗体の例は9.3、B−T3、XR−CD28(Diaclone, Besancon, France)を含み、通常当分野で知られる他の方法で可能なように使用できる(Berg et al., Transplant Proc. 30(8):3975-3977, 1998; Haanen et al., J. Exp. Med. 190(9):13191328, 1999; Garland et al., J. Immunol Meth. 227(1-2):53-63, 1999)。
【0408】
ある面において、T細胞のための一次刺激性シグナルおよび共刺激シグナルは、異なるプロトコールにより提供され得る。例えば、各シグナルを提供する薬剤は溶液中にあるかまたは表面に結合する。表面に結合するとき、これらの薬剤は、同じ表面(すなわち、“cis”形態)または別の表面(すなわち、“trans”形態)に結合し得る。あるいは、一方の薬剤が表面に結合し、他方の薬剤が溶液中にあってよい。一つの面において、共刺激シグナルを提供する薬剤が細胞表面に結合し、一次活性化シグナルを提供する薬剤が溶液中にあるかまたは表面に結合する。ある面において、いずれの薬剤も溶液中にあり得る。一つの面において、薬剤は可溶性形態であってよく、そうしてFc受容体または抗体または薬剤に結合するであろう他の結合剤を発現する細胞のような表面と架橋する。これに関して、例えば、本発明におけるT細胞の活性化および増殖への使用が考慮される、人工抗原提示細胞(aAPC)について、米国特許出願公開20040101519号および20060034810号を参照。
【0409】
一つの面において、2個の薬剤は、ビーズに、同じビーズに、すなわち、“cis”にまたは別のビーズに、すなわち、“trans”に固定化される。例として、一次活性化シグナルを提供する薬剤は抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントであり、共刺激シグナルを提供する薬剤は抗CD28抗体またはその抗原結合フラグメントであり、両薬剤が、当分子量で同じビーズに共固定化される。一つの面において、CD4
+ T細胞増殖およびT細胞増殖のためのビーズに結合した各抗体の1:1比を使用する。本発明のある面において、ビーズに結合した抗CD3:CD28抗体の比は、1:1比の使用で見られる増殖と比較して、T細胞増殖の増加が見られるように使用する。一つの具体的面において、1:1の比を使用して見られる増殖と比較して、約1〜約3倍の増加が観察される。一つの面において、ビーズに結合したCD3:CD28抗体の比は、100:1〜1:100およびその間の全整数値の範囲である。本発明の一つの面において、抗CD3抗体より多い抗CD28抗体が粒子に結合しており、すなわち、CD3:CD28の比は1未満である。本発明のある面において、ビーズに結合した抗CD28抗体対抗CD3抗体の比は2:1より大きい。一つの具体的面において、ビーズに結合した1:100 CD3:CD28比の抗体を使用する。一つの面において、ビーズに結合した1:75 CD3:CD28比の抗体を使用する。さらなる面において、ビーズに結合した1:50 CD3:CD28比の抗体を使用する。一つの面において、ビーズに結合した1:30 CD3:CD28比の抗体を使用する。一つの好ましい面において、ビーズに結合した1:10 CD3:CD28比の抗体を使用する。一つの面において、ビーズに結合した1:3 CD3:CD28比の抗体を使用する。さらなる面において、ビーズに結合した3:1 CD3:CD28比の抗体を使用する。
【0410】
1:500〜500:1およびその間の任意の整数値の粒子対細胞比を使用して、T細胞または他の標的細胞を刺激できる。当業者は容易に認識できるように、粒子対細胞の比は、標的細胞に対する粒子径に依存し得る。例えば、小型ビーズは数個の細胞しか結合できないが、大型ビーズは多数結合できる。ある面において粒子対細胞の比は、1:100〜100:1およびその間の任意の整数値の範囲であり、さらなる面において該比は1:9〜9:1を含み、その間の任意の整数値もT細胞の刺激に使用できる。T細胞刺激をもたらす抗CD3および抗CD28結合粒子対T細胞の比は上記のとおり変わり得るが、しかしながらある好ましい値は1:100、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1および15:1を含み、一つの好ましい比は、少なくとも1:1粒子対T細胞である。一つの面において、1:1以下の粒子対細胞の比を使用する。一つの具体的面において、好ましい粒子:細胞比は1:5である。さらなる面において、粒子対細胞の比は、刺激の日により変わり得る。例えば、一つの面において、粒子対細胞の比は、一日目は1:1〜10:1であり、1:1〜1:10の最終比まで、さらなる粒子を、その後10日目まで連日または隔日に細胞に添加する(添加日の細胞数に基づく)。一つの具体的面において、粒子対細胞の比は、刺激一日目は1:1であり、刺激3日目および4日目に1:5に調節する。一つの面において、粒子を、刺激一日目の1:1から3日目および4日目1:5の最終比まで、連日または隔日で添加する。一つの面において、粒子対細胞の比は、刺激一日目に2:1であり、刺激3日目および4日目は1:10である。一つの面において、粒子を、一日目の1:1から刺激3日目および4日目の1:10の最終比まで、連日または隔日で添加する。多様な他の比が、本発明における使用に適当であり得ることを当業者は認識する。特に、比は、粒子径ならびに細胞のサイズおよびタイプに依存する。一つの面において、使用するための最も典型的な比は、一日目の1:1、2:1および3:1の付近である。
【0411】
本発明のさらなる面において、T細胞のような細胞を薬剤被覆ビーズと組み合わせ、ビーズと細胞を続いて離し、その後細胞を培養する。別の面において、培養前に、薬剤被覆ビーズおよび細胞を離さず、一緒に培養する。さらなる面において、ビーズおよび細胞を、磁力のような力の適用によりまず濃縮し、細胞表面マーカーのライゲーションを増加させ、それにより細胞刺激を誘発する。
【0412】
例として、細胞表面タンパク質を、抗CD3および抗CD28が結合した常磁性ビーズ(3×28ビーズ)をT細胞と接触させることにより、ライゲートさせ得る。一つの面において、細胞(例えば、10
4〜10
9個のT細胞)およびビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ、1:1比)を緩衝液中、例えばPBS(カルシウムおよびマグネシウムのような二価カチオンを含まない)中で合わせる。再び、当業者は、任意の細胞濃度を使用し得ることを認識する。例えば、標的細胞はサンプルに非常に稀であり、サンプルの0.01%しか含まれないかもしれないし、全サンプル(すなわち、100%)が所望の標的細胞で構成されているかもしれない。したがって、あらゆる細胞数が本発明の状況において含まれる。ある面において、細胞と粒子の最大接触を確実にするために、粒子および細胞を混ぜ合わせる体積を顕著に減少させる(すなわち、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましいことがある。例えば、一つの面において、約20億細胞/mlの濃度を使用する。一つの面において、1億細胞/ml超を使用する。さらなる面において、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万または5000万細胞/mlの細胞の濃度を使用する。さらなる面において、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万または1億細胞/mlの細胞の濃度を使用する。さらなる面において、1億2500万または1億5000万細胞/mlの濃度を使用できる。高濃度の使用は、細胞収率、細胞活性化および細胞増殖の増加をもたらし得る。さらに、高細胞濃度の使用は、CD28陰性T細胞のような所望の標的抗原を弱く発現し得る細胞のより効率的な捕獲を可能とする。このような細胞の集団は治療価値を有し得て、ある面において得ることが望まれる。例えば、高細胞濃度を使用して、通常CD28発現が弱いCD8
+ T細胞のより効率的な選択を可能とする。
【0413】
本発明の一つの面において、混合物を数時間(約3時間)〜約14日またはその間に入る任意の整数値の時間単位、培養し得る。一つの面において、混合物を21日培養し得る。本発明の一つの面において、ビーズおよびT細胞を、約8日共培養する。一つの面において、ビーズおよびT細胞を2〜3日一緒に培養する。T細胞の培養時間を60日以上にできるように、数サイクルの刺激も望まれ得る。T細胞培養に適する条件は、適切な媒体(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640またはX−vivo 15(Lonza))を含み、これは、血清(例えば、ウシ胎児またはヒト血清)、インターロイキン−2(IL−2)、インスリン、IFN−γ、IL−4、IL−7、GM−CSF、IL−10、IL−12、IL−15、TGF−βおよびTNF−αまたは当業者に知られる細胞増殖のための任意の他の添加物を含む、増殖および生存能に必要な因子を含み得る。細胞増殖のための他の添加物は、界面活性剤、プラスマネートならびにN−アセチル−システインおよび2−メルカプトエタノールのような還元剤を含むが、これらに限定されない。培地は、RPMI 1640、AIM−V、DMEM、MEM、α−MEM、F−12、X−vivo 15およびX−Vivo 20、Optimizerを含み得て、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミン類が添加され、無血清であるか、または適切な量の血清(または血漿)または定義されたセットのホルモンおよび/またはT細胞の増殖および拡大に十分な量のサイトカインが添加されている。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは実験的培養にしか添加せず、対象に注入する細胞の培養には添加しない。標的細胞は、増殖を支持するのに必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5%CO
2)に維持する。
【0414】
様々な回数刺激に曝されたT細胞は異なる特徴を示し得る。例えば、典型的な血液またはアフェレシスした末梢血単核細胞産物は、細胞毒性またはサプレッサーT細胞集団(TC、CD8
+)より大きなヘルパーT細胞集団(TH、CD4
+)を有する。CD3およびCD28受容体刺激によるT細胞のエクスビボ増殖は、約8〜9日目の前までは主にTH細胞からなるT細胞の集団を生じるが、約8〜9日目の後、T細胞の集団は、大きくなり続けるTC細胞の集団を含む。したがって、処置の目的によって、主にTH細胞を含むT細胞集団を対象に注入することは有益であり得る。同様に、TC細胞の抗原特異的サブセットが単離されていたら、このサブセットをよりいっそう拡大することが有益であり得る。
【0415】
さらに、CD4およびCD8マーカーに加えて、細胞増殖過程の経過中に他の表現型マーカーが顕著に、しかし大部分、再生可能に変わる。それゆえに、このような再現性は、特定の目的のために活性化T細胞産物を仕立てる能力を可能とする。
【0416】
メソテリンCARが構築されたら、適切なインビトロおよび動物モデルで、多様なアッセイを使用して、抗原刺激後T細胞を拡大させる能力、再刺激非存在下にT細胞増殖を持続する能力および抗癌活性のような、しかし、これらに限定されない、分子の活性を評価できる。メソテリンCARの効果を評価するためのアッセイを下にさらに詳述する。
【0417】
初代T細胞におけるCAR発現のウェスタンブロット解析を使用して、単量体および二量体の存在を検出できる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)参照。概説すると、CARを発現するT細胞(CD4
+およびCD8
+ T細胞の1:1混合物)を、10日を超えてインビトロで拡大させ、続いて溶解し、還元条件下のSDS−PAGEを行う。完全長TCR−ζ細胞質ドメインおよび内在性TCR−ζ鎖を含むCARを、TCR−ζ鎖に対する抗体を使用するウェスタンブロッティングにより検出する。同じT細胞サブセットを、共有結合二量体形態の評価を可能とするために、非還元条件下のSDS−PAGE解析に使用する。
【0418】
抗原刺激後のCAR
+ T細胞のインビトロ増殖を、フローサイトメトリーで測定できる。例えば、CD4
+およびCD8
+ T細胞の混合物をαCD3/αCD28 aAPCで刺激し、続いて解析するプロモーターの制御下にGFPを発現するレンチウイルスベクターを形質導入する。代表的プロモーターは、CMV IE遺伝子、EF−1α、ユビキチンCまたはホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーターを含む。GFP蛍光を、CD4
+および/またはCD8
+ T細胞サブセットの培養6日目にフローサイトメトリーにより評価する。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009参照)。あるいは、CD4
+およびCD8
+ T細胞の混合物を、を、0日目にαCD3/αCD28被覆磁気ビーズで刺激し、2Aリボソームスキッピング配列を使用して、CARをeGFPと共に発現するバイシストロン性レンチウイルスベクターを使用して1日目にCARで形質導入する。培養を、例えば、抗CD3および抗CD28抗体の存在下、hCD32および4−1BBLを発現するK562細胞(K562−BBL−3/28)で再刺激し、洗浄する。外来IL−2を、100IU/mlで隔日に培養に添加する。GFP
+ T細胞を、ビーズベースの計数を使用するフローサイトメトリーにより数え上げる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)参照。
【0419】
再刺激非存在下の持続したCAR
+ T細胞増殖も測定できる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)参照。概説すると、平均T細胞体積(fl)を、0日目にαCD3/αCD28被覆磁気ビーズで刺激し、記載するCARを1日目に形質導入後、Coulter Multisizer III粒子カウンターを使用して培養8日目に測定する。
【0420】
細胞増殖およびサイトカイン産生の評価は、先に、例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)に記載されている。概説すると、CAR介在増殖の評価を、洗浄したT細胞とメソテリンまたはCD32およびCD137を発現するK562−メソ、Ovcar3、Ovcar8、SW1990、Panc02.03細胞(KT32−BBL)のような標的細胞を、最終T細胞:標的細胞比が1:1となるように混合することにより、マイクロタイタープレートで実施する。抗CD3(クローンOKT3)および抗CD28(クローン9.3)モノクローナル抗体を、KT32−BBL細胞の培養に添加し、これらのシグナルがエクスビボでの長期CD8
+ T細胞増殖を支持するため、T細胞増殖の陽性対照として役立たせる。製造業者が記載するとおりにCountBright
TM蛍光ビーズ(Invitrogen, Carlsbad, CA)およびフローサイトメトリーを使用して、T細胞を培養において数え上げる。CAR
+ T細胞を、eGFP−2A連結CAR発現レンチウイルスベクターで操作したT細胞を使用して、GFP発現により同定する。GFPを発現しないCAR
+ T細胞について、CAR
+ T細胞をビオチニル化組み換えメソテリンタンパク質および二次アビジン−PEコンジュゲートにより検出する。T細胞上のCD4
+およびCD8
+発現も、特異的モノクローナル抗体(BD Biosciences)により同時に検出する。サイトカイン測定を、製造業者の指示に従い、ヒトTH1/TH2サイトカイン細胞数測定ビーズアレイキット(BD Biosciences, San Diego, CA)を使用して、再刺激24時間後に回収した上清で実施する。蛍光をFACScaliburフローサイトメーターを使用して評価し、製造業者の指示に従いデータを解析する。
【0421】
ここに、例えば、実施例に記載する方法または標準
51Cr放出アッセイにより、細胞毒性を評価できる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)参照。概説すると、標的細胞(例えば、メソテリンを発現するBHK細胞またはCHO細胞)に、
51Cr(NaCrO
4として、New England Nuclear, Boston, MA)を、37℃で2時間、頻繁に撹拌しながら充填し、完全RPMIで洗浄し、マイクロタイタープレートに播種する。エフェクターT細胞を、標的細胞と、ウェル中、完全RPMI中で、種々のエフェクター細胞:標的細胞(E:T)比で混合する。さらに培地のみ(自然放出、SR)またはtriton−X 100洗剤1%溶液(総放出、TR)を含むウェルも調製する。37℃で4時間インキュベーション後、各ウェルからの上清を回収する。次いで、ガンマ粒子カウンター(Packard Instrument Co., Waltham, MA)を使用して、遊離
51Crを測定する。各条件を少なくとも3回実施し、溶解パーセンテージを式:溶解%=(ER−SR)/(TR−SR)(式中、ERは各実験条件で放出した平均
51Crである)を使用して計算する。フローベースの細胞毒性アッセイのような代替細胞毒性アッセイも使用し得る。
【0422】
コメツキムシ赤色およびコメツキムシ緑色ルシフェラーゼを使用して、各々が同じルシフェリン基質を使用するが、可視光線のスペクトルの両端の光を放出するため、腫瘍進行およびT細胞輸送を同時に追跡できる。
【0423】
ここの実施例セクションに記載するものならびに当分野で知られるものを含む他のアッセイも、本発明のメソテリンCAR構築物の評価に使用できる。
【0424】
メソテリン発現疾患および障害への治療適用
本発明は、メソテリンと関係する疾患および障害の処置のための組成物および方法を提供する。メソテリンと関係する疾患または障害の例は中皮腫である。
【0425】
悪性中皮腫は、中皮として知られる体内の臓器を覆う細胞の薄層に生じる癌の一タイプである。中皮腫は3タイプが認識されている。胸膜中皮腫(例えば、悪性胸膜中皮腫またはMPM)は、該疾患の最も一般的形態であり、症例の約70%を占め、胸膜として知られる肺の裏層に生じる。腹膜中皮腫は、腹膜として知られる腹腔の裏層に生じる。心膜中皮腫は、心臓を覆う心膜起源である。
【0426】
対象がアスベストに曝されているならば、該対象は恐らく中皮腫を発症するリスクがある。アスベストへの暴露およびアスベスト粒子の吸入は中皮腫を起こし得る。大部分の症例で、中皮腫症状は、暴露が生じた後長年経過するまで、アスベストに曝された対象で生じない。
【0427】
胸膜中皮腫の症状は、例えば、腰痛または側胸痛および息切れを含む。他の症状は、嚥下困難、咳嗽の持続、発熱、体重減少または疲労を含む。患者のいくらかが経験するさらなる症状は、筋肉弱化、感覚能力の喪失、喀血、顔面および腕部腫脹および嗄声である。ステージ1中皮腫のような疾患の初期段階では、症状は穏やかであり得る。患者は、通常胸の一部の治まりそうにない疼痛、体重減少および発熱を報告する。
【0428】
腹膜中皮腫は、腹部に端を発し、その結果、症状はしばしば腹痛、体重減少、悪心および嘔吐を含む。水分蓄積が腹部にそして癌の結果生じる。腹膜中皮腫は腹部に端を発し、しばしば肝臓、脾臓または腸を含む領域における他の臓器に広がる。重度の腹痛が、患者が最初に経験する最も一般的な訴えである。腹部の水分蓄積による不快感レベルも同様に存在し得る。腹膜中皮腫の他の症状は、排便困難、悪心および嘔吐、発熱および足のむくみを含み得る。
【0429】
心膜中皮腫は、中皮腫の最も少ない形態である。心膜中皮腫は、名前が示すとおり、心臓が関係する。この稀なタイプの中皮腫癌は、心臓を囲む嚢である心膜を侵す。癌が進行するに連れて、心臓は、体に酸素を効率的に運搬することができなくなり、さらにいっそう加速しながら健康を悪化させる。心膜中皮腫と最も一般的に関係する症状は心臓発作のものによく似ており、悪心、胸痛および息切れである。
【0430】
本発明の処置により利益を受ける対象は、中皮腫を有する対象または、例えば、ここに記載する症状の1つ以上の存在および/またはアスベストへの暴露を証拠として、中皮腫を有することが疑われる対象である。具体的な態様において、中皮腫は胸膜中皮腫(例えば、悪性胸膜中皮腫)である。他の面において、例えば、胸膜プラーク、良性中皮腫または中皮過形成のような前癌状態を有する対象を処置し得る。
【0431】
メソテリンと関係する疾患または障害の他の例は膵臓癌である。ここに記載する方法で処置できる膵臓癌は、膵外分泌癌および膵内分泌癌を含むが、これらに限定されない。膵外分泌癌は、腺癌、腺房細胞癌、腺扁平上皮癌、膠質癌、破骨細胞様巨細胞を伴う未分化癌、肝様癌、膵管内乳頭粘液性腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍、膵芽腫、漿液性嚢胞腺腫、印環細胞癌、充実性偽乳頭腫瘍、膵管癌および未分化癌を含むが、これらに限定されない。ある態様において、膵外分泌癌は膵管癌である。膵内分泌癌は、インスリノーマおよびグルカゴノーマを含むが、これらに限定されない。
【0432】
ある態様において、膵臓癌は、あらゆる初期膵臓癌、非転移膵臓癌、原発性膵臓癌、摘出膵臓癌、進行膵臓癌、局所進行膵臓癌、転移膵臓癌、切除不能膵臓癌、寛解状態膵臓癌、再発性膵臓癌、補助療法における膵臓癌または新補助療法における膵臓癌を含む。ある態様において、膵臓癌は局所進行膵臓癌、切除不能膵臓癌または転移膵管癌である。ある態様において、膵臓癌はゲムシタビンベースの療法に耐性である。ある態様において、膵臓癌はゲムシタビンベースの療法に難治性である。
【0433】
他の面において、メソテリン発現と関係する障害は卵巣癌である。卵巣癌は、腫瘍組織学により分類される。卵巣上皮性癌としても知られる表面上皮性間質腫瘍は、卵巣癌の最も一般的タイプである。漿液性腫瘍(漿液性乳頭状嚢腺癌を含む)、類内膜腫瘍および粘液性嚢胞腺腫を含む。
【0434】
ここに記載する方法を使用して、多様なステージ、例えば、ステージI、ステージII、ステージIIIまたはステージIVの卵巣癌を処置できる。ステージ分類は、例えば、卵巣癌を摘出するとき行う。卵巣癌は次のとおりステージ分類される。
【0435】
ステージI癌は、一方または両方の卵巣に限局する。卵巣の一方または両方が関与し、子宮および/またはファロピウス管または骨盤内の他の部位に広がっているとき、癌はステージIIである。卵巣の一方または両方が関与し、リンパ節または、腸管のように骨盤の外であるがまだ腹腔にある他の部位または肝臓表面に広がっているとき、癌はステージIII癌である。一方または両方の卵巣が関与し、癌が腹部の外または肝臓内部に広がっているとき、癌はステージIV癌である。
【0436】
ある態様において、卵巣癌は1個以上の化学療法剤に耐性である。ある態様において、卵巣癌は1個以上の化学療法剤に難治性である。
【0437】
ここに記載するCAR組成物で処置できる他の癌は、例えば、脳の癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、肝臓癌、腎臓癌、リンパ腫、白血病、肺癌(例えば、肺腺癌)、黒色腫、転移黒色腫、中皮腫、神経芽腫、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、腎臓癌、皮膚癌、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮癌およびこれらの任意の組み合わせを含む。
【0438】
本発明は、メソテリン発現細胞集団の増殖を阻止するかまたは減少させる方法を提供し、該方法は、該メソテリン発現細胞を含む細胞の集団と、該メソテリン発現細胞と結合する本発明のメソテリンCAR発現細胞を接触させることを含む。特定の態様において、本発明は、メソテリンを発現する癌細胞の集団の増殖を阻止するかまたは減少させる方法を提供し、該方法は、該メソテリン発現癌細胞集団と、該メソテリン発現細胞と結合する本発明のメソテリンCAR発現細胞を接触させることを含む。他の態様において、本発明は、メソテリンを発現する癌細胞の集団の増殖を阻止するかまたは減少させる方法を提供し、該方法は、該メソテリン発現癌細胞集団と、該メソテリン発現細胞と結合する本発明のメソテリンCAR発現細胞を接触させることを含む。ある態様において、本発明のメソテリンCAR発現細胞は、細胞および/または癌細胞の数量、数、量またはパーセンテージを、中皮腫またはメソテリン発現細胞と関係する他の癌を有する対象またはその動物モデルにおいて、陰性対照と比較して少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%または少なくとも99%減少させる。一つの面において、対象はヒトである。
【0439】
本発明はまたメソテリン発現細胞と関係する障害(例えば、中皮腫)を予防、処置および/または管理する方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象に該メソテリン発現細胞と結合する本発明の中皮腫CAR発現細胞を投与することを含む。一つの面において、対象はヒトである。
【0440】
本発明は、メソテリン発現細胞と関係する癌の再発を予防する方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象に該メソテリン発現細胞と結合する本発明のメソテリンCAR発現細胞を投与することを含む。他の態様において、該方法は、それを必要とする対象に、有効量の該メソテリン発現細胞と結合する本発明のメソテリンCAR発現細胞を有効量の他の治療剤と組み合わせて投与することを含む。
【0441】
一つの面において、本発明は、哺乳動物免疫エフェクター細胞における発現のためのプロモーターに操作可能に結合したメソテリンCARをコードする配列を含むベクターに関する。一つの面において、本発明は、メソテリン発現腫瘍の処置に使用するためのメソテリンCARを発現する組み換え免疫エフェクター細胞を提供する。一つの面において、本発明のメソテリンCAR発現細胞は、メソテリンCAR発現細胞が抗原に応答して活性化され、CAR発現細胞が癌細胞を標的とし、癌の増殖が阻害されるように、腫瘍細胞と、その表面に発現される本発明のメソテリンCARの少なくとも1個を接触させる。
【0442】
一つの面において、本発明は、CAR発現細胞が抗原に応答して活性化され、癌細胞を標的とし、癌の増殖が阻害されるように腫瘍細胞とメソテリンCAR発現細胞を接触させることを含む、メソテリン発現癌細胞の増殖を阻止する方法を提供する。一つの面において、活性化CARTは癌細胞を標的とし、殺す。
【0443】
一つの面において、本発明は、対象における癌の処置法を提供する。該方法は、対象に、癌が対象で処置されるように、メソテリンCAR発現細胞を投与することを含む。本発明のメソテリンCAR発現細胞で処置可能な癌の例は、メソテリンの発現と関係する癌である。一つの面において、メソテリンの発現と関係する癌は、中皮腫、膵臓癌、卵巣癌および肺癌から選択される。
【0444】
本発明は、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞またはNK細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に修飾され、CAR発現細胞が、それを必要とするレシピエントに注入される、ある種の細胞治療を提供する。注入された細胞はレシピエントの腫瘍細胞を死滅させ得る。抗体治療と異なり、CAR修飾免疫エフェクター細胞はインビボで複製でき、持続した腫瘍制御に至り得る長期残留性を生じる。種々の面において、患者に投与された細胞またはその子孫は、患者への細胞投与後、患者に少なくとも4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、2年、3年、4年または5年残留する。
【0445】
本発明はまた、キメラ抗原受容体(CAR)を一過性に発現するように、例えば、インビトロで転写されたRNAにより免疫エフェクター細胞が修飾され、該CAR発現細胞が、それを必要とするレシピエントに注入される、ある種の細胞治療も含む。注入された細胞は、レシピエントにおける癌細胞を死滅させ得る。それゆえに、種々の面において、患者に投与された細胞は、患者への細胞投与後1ヶ月未満、例えば3週間、2週間、1週間存在する。
【0446】
何らかの特定の理論に縛られることを望まないが、CAR修飾免疫エフェクター細胞により惹起される抗癌免疫応答は、受動的または能動的免疫応答であってよく、あるいはまた直接的対間接的免疫応答によるものであり得る。一つの面において、CAR形質導入T細胞は、メソテリンを発現するヒト癌細胞に応答して特定の炎症誘発性サイトカイン分泌および強力な細胞溶解性活性を示し、バイスタンダー細胞死を仲介し、確立されたヒト腫瘍の退縮を仲介する。例えば、メソテリン発現腫瘍の不均一な領域内の抗原が少ない腫瘍細胞は、隣接する抗原陽性癌細胞に対して以前は反応していたメソテリン再指向T細胞による間接的破壊に感受性であり得る。
【0447】
一つの面において、本発明のCAR修飾免疫エフェクター細胞を担持する完全ヒトscFvは、哺乳動物におけるエクスビボ免疫化および/またはインビボ治療のためのある種のワクチンであり得る。一つの面において、哺乳動物はヒトである。
【0448】
エクスビボ免疫化に関して、哺乳動物に細胞を投与する前に、インビトロで次のi)細胞の増殖、ii)CARをコードする核酸の細胞への導入またはiii)細胞の凍結保存の少なくとも1つが起こる。
【0449】
エクスビボ手順は当分野で周知であり、下により詳細に記載する。概説すると、細胞を哺乳動物(例えば、ヒト)から単離し、ここに開示されるCARを発現するベクターで遺伝的に修飾(すなわち、インビトロ形質導入または遺伝子導入)する。CAR修飾細胞を、哺乳動物レシピエントに投与して、治療効果を提供できる。哺乳動物レシピエントはヒトであってよく、CAR修飾細胞は、レシピエントに関して自己であり得る。あるいは、細胞は、レシピエントに関して同種、同系または異種であり得る。
【0450】
造血幹細胞および前駆細胞のエクスビボ増殖手順は、本明細書に引用により包含させる米国特許5,199,942号に記載され、本発明の細胞に適用できる。他の適当な方法が当分野で知られ、それゆえに、本発明は、細胞のエクスビボ増殖の何らかの特定の方法に限定されない。概説すると、T細胞のエクスビボ培養および増殖は、(1)哺乳動物からの末梢血収集物または骨髄外植体からのCD34
+造血幹細胞および前駆細胞の回収;および(2)このような細胞のエクスビボでの増殖を含む。米国特許5,199,942号に記載されている細胞増殖因子に加えて、flt3−L、IL−1、IL−3およびc−kitリガンドのような他の因子を細胞の培養および増殖に使用できる。
【0451】
エクスビボ免疫化の点で、細胞ベースのワクチンの使用に加えて、本発明はまた、患者における抗原に向けられた免疫応答を惹起するための、インビボ免疫化のための組成物および方法も提供する。
【0452】
一般に、ここに記載のように活性化および増殖させた細胞を、免疫無防備状態である個体で生じる疾患の処置および予防に使用できる。特に、本発明のCAR修飾免疫エフェクター細胞は、メソテリンの発現と関係する疾患、障害および状態の処置に使用する。ある面において、本発明の細胞を、メソテリンの発現と関係する疾患、障害および状態を発症するリスクのある患者の処置に使用する。それゆえに、本発明は、治療有効量の本発明のCAR修飾T細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む、メソテリンの発現と関係する疾患、障害および状態を処置または予防する方法を提供する。
【0453】
本発明のCAR修飾T細胞は単独でまたは希釈剤および/またはIL−2または他のサイトカインもしくは細胞集団のような他の成分と組み合わせて医薬組成物として投与し得る。
【0454】
本発明はまた、メソテリン発現細胞集団の増殖を阻止するかまたは減少させる方法も提供し、該方法は、メソテリン発現細胞を含む細胞の集団と、該メソテリン発現細胞と結合する本発明のメソテリンCAR発現細胞(例えば、“CART−MSLN”とも呼ぶメソテリンCART)を接触させることを含む。具体的面において、本発明は、メソテリンを発現する癌細胞の集団の増殖を阻止するかまたは減少させる方法を提供し、該方法は、メソテリン発現癌細胞集団と、該メソテリン発現細胞と結合する本発明のメソテリンCAR発現細胞を接触させることを含む。一つの面において、本発明はメソテリンを発現する癌細胞の集団の増殖を阻止するかまたは減少させる方法を提供し、該方法は、メソテリン発現癌細胞集団と、該メソテリン発現細胞と結合する本発明のメソテリンCAR発現細胞を接触させることを含む。ある面において、本発明のメソテリンCAR発現細胞は、中皮腫または他のメソテリン発現細胞と関係する癌を有する対象またはその動物モデルにおいて、陰性対照と比較して、細胞および/または癌細胞の数量、数、量またはパーセンテージを少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%または少なくとも99%減少させる。一つの面において、対象はヒトである。
【0455】
本発明はまたメソテリン発現細胞と関係する疾患(例えば、中皮腫)を予防、処置および/または管理する方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象に該メソテリン発現細胞と結合する本発明のメソテリンCAR発現細胞を投与することを含む。一つの面において、対象はヒトである。
【0456】
本発明は、メソテリン発現細胞と関係する癌の再発を予防する方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象に該メソテリン発現細胞と結合する本発明のメソテリンCAR発現細胞を投与することを含む。一つの面において、本方法は、それを必要とする対象に、有効量の該メソテリン発現細胞と結合する本発明のメソテリンCAR発現細胞を有効量の他の治療剤と組み合わせて投与することを含む。
【0457】
組み合わせ治療
ここに記載するCAR発現細胞を他の既知薬剤および治療と組み合わせて使用し得る。ここで使用する“組み合わせて”投与するとは、対象が障害で苦しんでいる最中に、2種(またはそれ以上)の異なる処置剤を該対象に送達する、例えば、2種以上の処置剤を、対象が障害と診断された後でかつ該障害が治癒もしくは根絶されるまたは処置剤が他の理由で中断される前に送達することを意味する。ある態様において、投与の期間に重複があるように、二番目の処置剤の送達が開始されるとき一番目の処置剤の送達はまだ存在している。これは、ここでは“同時”または“併用送達”と称することがある。他の態様において、一つの処置剤の送達は、他の処置剤の送達開始前に終了している。どちらの場合にもある態様において、組み合わせ投与のために処置剤はより有効である。例えば、第二処置剤はより有効であり、例えば、少ない第二処置剤で同等の効果が見られまたは第二処置剤は、第一処置剤非存在下で第二処置剤を投与したときに見られるより大きな程度で症状を改善するまたは同様の状況が第一処置剤で見られる。ある態様において、送達は、症状または障害と関係する他のパラメータの現象が、他の処置剤非存在下で送達した一処置剤で観察されるよりも大きいようなものである。2処置剤の効果は、一部相加的、完全相加的または相加より大きいものであり得る。送達は、第一処置剤送達の効果が、第二剤送達時にまだ検出されているようなものであり得る。
【0458】
ここに記載するCAR発現細胞および少なくとも1種のさらなる治療剤を、同時に、同じまたは別の組成物でまたは逐次的に投与し得る。逐次投与について、ここに記載するCAR発現細胞を最初に投与し、さらなる薬剤を次に投与してよく、または投与の順番は逆でよい。
【0459】
さらなる面において、ここに記載するCAR発現細胞を、手術、化学療法剤、放射線、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸およびFK506のような免疫抑制性剤、CAMPATH、抗CD3抗体または他の抗体治療のような抗体または他の免疫除去剤、シトキサン(cytoxin)、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカインおよび照射、Izumoto et al. 2008 J Neurosurg 108:963-971に記載のようなペプチドワクチンと組み合わせる処置レジメンにおいて使用し得る。
【0460】
一つの態様において、ここに記載するCAR発現細胞を化学療法剤と組み合わせて使用できる。代表的化学療法剤は、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン(例えば、リポソームドキソルビシン))、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、ダカルバジン(decarbazine)、メルファラン、イホスファミド、テモゾロミド)、免疫細胞抗体(例えば、アレムツズマブ(alemtuzamab)、ゲムツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ)、代謝拮抗剤(例えば、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、フルダラビン)を含む)、mTOR阻害剤、TNFRグルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)アゴニスト、プロテアソーム阻害剤(例えば、アクラシノマイシンA、グリオトキシンまたはボルテゾミブ)、サリドマイドまたはサリドマイド誘導体(例えば、レナリドマイド)のような免疫調節剤を含む。
【0461】
組み合わせ治療における使用が考慮される一般的化学療法剤は、アナストロゾール(アリミデックス(登録商標))、ビカルタミド(カソデックス(登録商標))、硫酸ブレオマイシン(Blenoxane(登録商標))、ブスルファン(ミレラン(登録商標))、ブスルファン注射(ブスルフェクス(登録商標))、カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、N4−ペントキシカルボニル−5−デオキシ−5−フルオロシチジン、カルボプラチン(パラプラチン(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(ロイケラン(登録商標))、シスプラチン(Platinol(登録商標))、クラドリビン(ロイスタチン(登録商標))、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)またはNeosar(登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(Cytosar-U(登録商標))、シタラビンリポソーム注射(DepoCyt(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD、Cosmegan)、塩酸ダウノルビシン(Cerubidine(登録商標))、クエン酸ダウノルビシンリポソーム注射(DaunoXome(登録商標))、デキサメサゾン、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、塩酸ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)、ルベックス(登録商標))、エトポシド(ベプシド(登録商標))、リン酸フルダラビン(フルダラ(登録商標))、5−フルオロウラシル(Adrucil(登録商標)、Efudex(登録商標))、フルタミド(Eulexin(登録商標))、テザシタビン(tezacitibine)、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素(ハイドレア(登録商標))、イダルビシン(イダマイシン(登録商標))、イホスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(Camptosar(登録商標))、L−アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ロイコボリンカルシウム、メルファラン(アルケラン(登録商標))、6−メルカプトプリン(ピュリネソール(登録商標))、メトトレキサート(Folex(登録商標))、ミトキサントロン(ノバントロン(登録商標))、マイロターグ、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、phoenix(イットリウム90/MX−DTPA)、ペントスタチン、ポリフェプロザン20とカルムスチンインプラント(グリアデル(登録商標))、タモキシフェンシトレート(ノルバデックス(登録商標))、テニポシド(Vumon(登録商標))、6−チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(Tirazone(登録商標))、注射用塩酸トポテカン(ハイカムチン(登録商標))、ビンブラスチン(Velban(登録商標))、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))およびビノレルビン(ナベルビン(登録商標))を含む。
【0462】
代表的アルキル化剤は、窒素マスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレアおよびトリアゼン:ウラシルマスタード(Aminouracil Mustard(登録商標)、Chlorethaminacil(登録商標)、Demethyldopan(登録商標)、Desmethyldopan(登録商標)、Haemanthamine(登録商標)、Nordopan(登録商標)、Uracil nitrogen mustard(登録商標)、Uracillost(登録商標)、Uracilmostaza(登録商標)、Uramustin(登録商標)、Uramustine(登録商標))、クロルメチン(Mustargen(登録商標))、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)、Neosar(登録商標)、Clafen(登録商標)、エンドキサン(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune
TM)、イホスファミド(Mitoxana(登録商標))、メルファラン(アルケラン(登録商標))、クロラムブシル(ロイケラン(登録商標))、ピポブロマン(Amedel(登録商標)、Vercyte(登録商標))、トリエチレンメラミン(Hemel(登録商標)、Hexalen(登録商標)、Hexastat(登録商標))、トリエチレンチオホスホラミン、テモゾロミド(Temodar(登録商標))、チオテパ(Thioplex(登録商標))、ブスルファン(Busilvex(登録商標)、ミレラン(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ロムスチン(CeeNU(登録商標))、ストレプトゾシン(ザノサー(登録商標))およびダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))を含むが、これらに限定されない。さらなる代表的アルキル化剤は、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標));テモゾロミド(Temodar(登録商標)およびテモダール(登録商標));ダクチノマイシン(アクチノマイシン−Dとしても知られる、コスメゲン(登録商標));メルファラン(L−PAM、L−サルコリシンおよびフェニルアラニンマスタードとしても知られる、アルケラン(登録商標));アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)としても知られる、Hexalen(登録商標));カルムスチン(BiCNU(登録商標));ベンダムスチン(トレアンダ(登録商標));ブスルファン(ブスルフェクス(登録商標)およびミレラン(登録商標));カルボプラチン(パラプラチン(登録商標));ロムスチン(CCNUとしても知られる、CeeNU(登録商標));シスプラチン(CDDPとしても知られる、Platinol(登録商標)およびPlatinol(登録商標)-AQ);クロラムブシル(ロイケラン(登録商標));シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)およびNeosar(登録商標));ダカルバジン(DTIC、DICおよびイミダゾールカルボキサミドとしても知られる、DTIC-Dome(登録商標));アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)としても知られる、Hexalen(登録商標));イホスファミド(IFEX(登録商標));Prednumustine;プロカルバジン(Matulane(登録商標));メクロレタミン(窒素マスタード、ムスチンおよび塩酸メクロルエタミンとしても知られる、Mustargen(登録商標));ストレプトゾシン(ザノサー(登録商標));チオテパ(チオホスホアミド、TESPAおよびTSPAとしても知られる、Thioplex(登録商標));シクロホスファミド(エンドキサン(登録商標)、シトキサン(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(登録商標));およびベンダムスチンHCl(トレアンダ(登録商標))を含むが、これらに限定されない。
【0463】
代表的mTOR阻害剤は、例えば、テムシロリムス;リダフォロリムス(以前はデフォロリムスとして知られた、(1R,2R,4S)−4−[(2R)−2−[(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28Z,30S,32S,35R)−1,18−ジヒドロキシ−19,30−ジメトキシ−15,17,21,23、29,35−ヘキサメチル−2,3,10,14,20−ペンタオキソ−11,36−ジオキサ−4−アザトリシクロ[30.3.1.0
4,9]ヘキサトリアコンタ−16,24,26,28−テトラエン−12−イル]プロピル]−2−メトキシシクロヘキシルジメチルホスフィネート、AP23573およびMK8669としても知られ、PCT公開公報WO03/064383号に記載);エベロリムス(アフィニトール(登録商標)またはRAD001);ラパマイシン(AY22989、シロリムス(登録商標));セマピモド(simapimod)(CAS164301-51-3);テムシロリムス(emsirolimus)、(5−{2,4−ビス[(3S)−3−メチルモルホリン−4−イル]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル}−2−メトキシフェニル)メタノール(AZD8055);2−アミノ−8−[trans−4−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]−6−(6−メトキシ−3−ピリジニル)−4−メチル−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(PF04691502、CAS1013101-36-4);およびN
2−[1,4−ジオキソ−4−[[4−(4−オキソ−8−フェニル−4H−1−ベンゾピラン−2−イル)モルホリニウム−4−イル]メトキシ]ブチル]−L−アルギニルグリシル−L−α−アスパルチルL−セリン−、内部塩(SF1126、CAS936487-67-1)およびXL765を含む。
【0464】
代表的免疫調節剤は、例えば、アフツズマブ(Roche(登録商標)から入手可能);ペグフィルグラスチム(Neulasta(登録商標));レナリドマイド(CC-5013、Revlimid(登録商標));サリドマイド(Thalomid(登録商標))、アクチミド(CC4047);およびIRX−2(インターロイキン1、インターロイキン2およびインターフェロンγを含むヒトサイトカイン混合物、CAS 951209-71-5、IRX Therapeuticsから入手可能)を含む。
【0465】
代表的アントラサイクリンは、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)およびルベックス(登録商標));ブレオマイシン(lenoxane(登録商標));ダウノルビシン(塩酸ダウノルビシン、ダウノマイシンおよび塩酸ルビドマイシン、Cerubidine(登録商標));ダウノルビシンリポソーム(クエン酸ダウノルビシンリポソーム、DaunoXome(登録商標));ミトキサントロン(DHAD、ノバントロン(登録商標));エピルビシン(Ellence
TM);イダルビシン(イダマイシン(登録商標)、イダマイシンPFS(登録商標));マイトマイシンC(Mutamycin(登録商標));ゲルダナマイシン;ハービマイシン;ラビドマイシン;およびデスアセチルラビドマイシンを含む。
【0466】
代表的ビンカアルカロイドは、例えば、酒石酸ビノレルビン(ナベルビン(登録商標))、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))およびビンデシン(Eldisine(登録商標)));ビンブラスチン(硫酸ビンブラスチン、ビンカロイコブラスチンおよびVLBとしても知られる、Alkaban-AQ(登録商標)およびVelban(登録商標));およびビノレルビン(ナベルビン(登録商標))を含む。
【0467】
代表的プロテオソーム阻害剤は、ボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標));カーフィルゾミブ(PX-171-007、(S)−4−メチル−N−((S)−1−(((S)−4−メチル−1−((R)−2−メチルオキシラン−2−イル)−1−オキソペンタン−2−イル)アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル)−2−((S)−2−(2−モルホリノアセトアミド)−4−フェニルブタンアミド)−ペンタンアミド);マリゾミブ(NPI-0052);クエン酸イキサゾミブ(MLN-9708);デランゾミブ(CEP-18770);およびO−メチル−N−[(2−メチル−5−チアゾリル)カルボニル]−L−セリル−O−メチル−N−[(1S)−2−[(2R)−2−メチル−2−オキシラニル]−2−オキソ−1−(フェニルメチル)エチル]−L−セリナミド(ONX-0912)を含む。
【0468】
一つの態様において、ここに記載するCAR発現細胞を、制御性T細胞(Treg)を枯渇させるGITRアゴニストおよび/またはGITR抗体のようなGITRを標的とするおよび/またはGITR機能を調節する分子と組み合わせて、対象に投与する。一つの態様において、GITR結合分子および/またはGITR機能を調節する分子(例えば、GITR抗体を枯渇させるGITRアゴニストおよび/またはTreg)を、CAR発現細胞の前に投与する。例えば、一つの態様において、GITRアゴニストを、細胞のアフェレシスの前に投与できる。代表的GITRアゴニストは、例えば、米国特許6,111,090号、欧州特許090505B1号、米国特許8,586,023号、PCT公開公報WO2010/003118号および2011/090754号に記載のGITR融合タンパク質または例えば、米国特許7,025,962号、欧州特許1947183B1号、米国特許7,812,135号、米国特許8,388,967号、米国特許8,591,886号、欧州特許EP1866339号、PCT公開公報WO2011/028683号、PCT公開公報WO2013/039954号、PCT公開公報WO2005/007190号、PCT公開公報WO2007/133822号、PCT公開公報WO2005/055808号、PCT公開公報WO99/40196号、PCT公開公報WO2001/03720号、PCT公開公報WO99/20758号、PCT公開公報WO2006/083289号、PCT公開公報WO2005/115451号、米国特許7,618,632号およびPCT公開公報WO2011/051726号に記載の抗GITR抗体のような、例えば、GITR融合タンパク質および抗GITR抗体(例えば、二価抗GITR抗体)を含む。
【0469】
一つの態様において、ここに記載するCAR発現細胞を、mTOR阻害剤、例えば、ここに記載のmTOR阻害剤、例えば、エベロリムスのようなラパログと組み合わせて対象に投与する。一つの態様において、mTOR阻害剤を、CAR発現細胞の前に投与する。例えば、一つの態様において、mTOR阻害剤を、細胞のアフェレシスの前に投与できる。
【0470】
一つの態様において、ここに記載するCAR発現細胞を、GITRアゴニスト、例えば、ここに記載のGITRアゴニストと組み合わせて対象に投与する。一つの態様において、GITRアゴニストを、CAR発現細胞の前に投与する。例えば、一つの態様において、GITRアゴニストを、細胞のアフェレシスの前に投与できる。
【0471】
一つの態様において、ここに記載するCAR発現細胞を、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤、例えば、ここに記載のタンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤と組み合わせて対象に投与する。一つの態様において、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤は、SHP−1阻害剤、例えば、スチボグルコン酸ナトリウムのような、例えば、ここに記載のSHP−1阻害剤である。一つの態様において、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤は、SHP−2阻害剤、例えば、ここに記載のSHP−2阻害剤である。
【0472】
一つの態様において、ここに記載するCAR発現細胞を、キナーゼ阻害剤と組み合わせて使用できる。一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、CDK4阻害剤、例えば、ここに記載のCDK4阻害剤、例えば、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン、ヒドロクロライド(パルボシクリブまたはPD0332991とも呼ぶ)のような、例えば、CDK4/6阻害剤である。一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、BTK阻害剤、例えば、イブルチニブのような、例えば、ここに記載のBTK阻害剤である。一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、mTOR阻害剤、例えば、ラパマイシン、ラパマイシン類似体、OSI-027のような、例えば、ここに記載のmTOR阻害剤である。mTOR阻害剤は、例えば、mTORC1阻害剤および/またはmTORC2阻害剤、例えば、ここに記載するmTORC1阻害剤および/またはmTORC2阻害剤であり得る。一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、MNK阻害剤、例えば、4−アミノ−5−(4−フルオロアニリノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジンのような、例えば、ここに記載するMNK阻害剤である。MNK阻害剤は、例えば、MNK1a、MNK1b、MNK2aおよび/またはMNK2b阻害剤であり得る。一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、例えば、PF-04695102のような、ここに記載のデュアルPI3K/mTOR阻害剤である。一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、DGK阻害剤、例えば、DGKinh1(D5919)またはDGKinh2(D5794)のような、例えば、ここに記載するDGK阻害剤である。
【0473】
一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、アロイシンA;フラボピリドールまたはHMR-1275、2−(2−クロロフェニル)−5,7−ジヒドロキシ−8−[(3S,4R)−3−ヒドロキシ−1−メチル−4−ピペリジニル]−4−クロメノン;クリゾチニブ(PF-02341066);2−(2−クロロフェニル)−5,7−ジヒドロキシ−8−[(2R,3S)−2−(ヒドロキシメチル)−1−メチル−3−ピロリジニル]−4H−1−ベンゾピラン−4−オン、ヒドロクロライド(P276-00);1−メチル−5−[[2−[5−(トリフルオロメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−4−ピリジニル]オキシ]−N−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−1H−ベンズイミダゾール−2−アミン(RAF265);インジスラム(E7070);ロスコビチン(CYC202);パルボシクリブ(PD0332991);ディナシクリブ(SCH727965);N−[5−[[(5−tert−ブチルオキサゾール−2−イル)メチル]チオ]チアゾール−2−イル]ピペリジン−4−カルボキサミド(BMS387032);4−[[9−クロロ−7−(2,6−ジフルオロフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ]−安息香酸(MLN8054);5−[3−(4,6−ジフルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−1H−インダゾール−5−イル]−N−エチル−4−メチル−3−ピリジンメタンアミン(AG-024322);4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸N−(ピペリジン−4−イル)アミド(AT7519);4−[2−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−イミダゾール−5−イル]−N−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−ピリミジンアミン(AZD5438);およびXL281(BMS908662)から選択されるCDK4阻害剤である。
【0474】
一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、CDK4阻害剤、例えば、パルボシクリブ(PD0332991)であり、パルボシクリブを約50mg、60mg、70mg、75mg、80mg、90mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg(例えば、75mg、100mgまたは125mg)の1日用量で一定期間、例えば、28日サイクルの14〜21日連日または21日サイクルの7〜12日連日投与する。一つの態様において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれを超えるサイクルのパルボシクリブを投与する。
【0475】
一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、イブルチニブ(PCI-32765);GDC-0834;RN-486;CGI-560;CGI-1764;HM-71224;CC-292;ONO-4059;CNX-774;およびLFM-A13から選択されるBTK阻害剤である。好ましい態様において、BTK阻害剤はインターロイキン−2誘導性キナーゼ(ITK)のキナーゼ活性を減少または阻害せず、GDC-0834;RN-486;CGI-560;CGI-1764;HM-71224;CC-292;ONO-4059;CNX-774;およびLFM-A13から選択される。
【0476】
一つの態様において、キナーゼ阻害剤はBTK阻害剤、例えば、イブルチニブ(PCI−32765)であり、イブルチニブを、約250mg、300mg、350mg、400mg、420mg、440mg、460mg、480mg、500mg、520mg、540mg、560mg、580mg、600mg(例えば、250mg、420mgまたは560mg)の1日用量で一定期間、例えば、21日サイクルで連日または28日サイクルで連日投与する。一つの態様において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれを超えるサイクルのイブルチニブを投与する。
【0477】
一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、テムシロリムス;AP23573およびMK8669としても知られるリダフォロリムス(1R,2R,4S)−4−[(2R)−2−[(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R、23S,24E,26E,28Z,30S,32S,35R)−1,18−ジヒドロキシ−19,30−ジメトキシ−15,17,21,23、29,35−ヘキサメチル−2,3,10,14,20−ペンタオキソ−11,36−ジオキサ−4−アザトリシクロ[30.3.1.0
4,9]ヘキサトリアコンタ−16,24,26,28−テトラエン−12−イル]プロピル]−2−メトキシシクロヘキシルジメチルホスフィネート;エベロリムス(RAD001);ラパマイシン(AY22989);セマピモド(simapimod);(5−{2,4−ビス[(3S)−3−メチルモルホリン−4−イル]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル}−2−メトキシフェニル)メタノール(AZD8055);2−アミノ−8−[trans−4−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]−6−(6−メトキシ−3−ピリジニル)−4−メチル−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(PF04691502);およびN
2−[1,4−ジオキソ−4−[[4−(4−オキソ−8−フェニル−4H−1−ベンゾピラン−2−イル)モルホリニウム−4−イル]メトキシ]ブチル]−L−アルギニルグリシル−L−α−アスパルチル L−セリン−(配列番号272)、内部塩(SF1126);およびXL765から選択されるmTOR阻害剤である。
【0478】
一つの態様において、キナーゼ阻害剤はmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンであり、ラパマイシンを、約3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg(例えば、6mg)の1日用量で一定期間、例えば、21日サイクルで連日または28日サイクルで連日投与する。一つの態様において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれを超えるサイクルのラパマイシンを投与する。一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、mTOR阻害剤、例えば、エベロリムスであり、エベロリムスを、約2mg、2.5mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg(例えば、10mg)の1日用量で一定期間、例えば、28日サイクルで連日投与する。一つの態様において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれを超えるサイクルのエベロリムスを投与する。
【0479】
一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、CGP052088;4−アミノ−3−(p−フルオロフェニルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(CGP57380);セルコスポラミド;ETC-1780445-2;および4−アミノ−5−(4−フルオロアニリノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジンから選択されるMNK阻害剤である。
【0480】
一つの態様において、キナーゼ阻害剤は、2−アミノ−8−[trans−4−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]−6−(6−メトキシ−3−ピリジニル)−4−メチル−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(PF-04691502);N−[4−[[4−(ジメチルアミノ)−1−ピペリジニル]カルボニル]フェニル]−N’−[4−(4,6−ジ−4−モルホリニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル]尿素(PF-05212384、PKI-587);2−メチル−2−{4−[3−メチル−2−オキソ−8−(キノリン−3−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]フェニル}プロパンニトリル(BEZ-235);アピトリシブ(GDC-0980、RG7422);2,4−ジフルオロ−N−{2−(メチルオキシ)−5−[4−(4−ピリダジニル)−6−キノリニル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド(GSK2126458);8−(6−メトキシピリジン−3−イル)−3−メチル−1−(4−(ピペラジン−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2(3H)−オンマレイン酸(NVP-BGT226);3−[4−(4−モルホリニルピリド[3’,2’:4,5]フロ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]フェノール(PI−103);5−(9−イソプロピル−8−メチル−2−モルホリノ−9H−プリン−6−イル)ピリミジン−2−アミン(VS-5584、SB2343);およびN−[2−[(3,5−ジメトキシフェニル)アミノ]キノキサリン−3−イル]−4−[(4−メチル−3−メトキシフェニル)カルボニル]アミノフェニルスルホンアミド(XL765)から選択されるデュアルホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)およびmTOR阻害剤である。
【0481】
カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリンを阻害する(シクロスポリンおよびFK506)または増殖因子誘発シグナル伝達に重要なp70S6キナーゼを阻害する薬物(ラパマイシン)(Liu et al., Cell 66:807-815, 1991; Henderson et al., Immun. 73:316-321, 1991; Bierer et al., Curr. Opin. Immun. 5:763-773, 1993)も使用できる。さらなる面において、本発明の細胞組成物を、骨髄移植、フルダラビンのような化学療法剤を使用するT細胞除去療法、外部ビーム放射線療法(XRT)、シクロホスファミドおよび/またはOKT3またはCAMPATHのような抗体と組み合わせて(例えば、前、同時または後)患者に投与できる。一つの面において、本発明の細胞組成物を、CD20と反応する薬剤のようなB細胞除去療法、例えば、リツキサンの後に投与する。例えば、一つの態様において、対象を、高用量化学療法剤での標準処置に付し、続いて末梢血幹細胞移植し得る。ある態様において、移植後、対象は、増殖させた免疫本発明の細胞を注入される。さらなる態様において、増殖させた細胞を手術前または後に投与する。
【0482】
一つの態様において、対象は、CAR発現細胞の投与と関係する副作用を軽減または改善する薬剤を投与され得る。CAR発現細胞の投与と関係する副作用は、CRSおよびマクロファージ活性化症候群(MAS)とも呼ぶ血球貪食性リンパ組織球症(HLH)である。CRSの症状は、高熱、悪心、一過性低血圧、低酸素症などを含む。CRSは、発熱、疲労、摂食障害、筋肉痛、関節痛(arthalgias)、悪心、嘔吐および頭痛のような臨床構成上の徴候および症状を含み得る。CRSは、発疹のような臨床的皮膚徴候および症状を含み得る。CRSは、悪心、嘔吐および下痢のような臨床的消化器徴候および症状を含み得る。CRSは、頻呼吸および低酸素血症のような臨床的呼吸器徴候および症状を含み得る。CRSは、頻脈、脈圧拡大、低血圧、心拍出量増加(早期)および潜在的心拍出量低下(後期)のような臨床的心血管徴候および症状を含み得る。CRSは、高d−二量体、出血を伴うまたは伴わない低フィブリノーゲン血症のような、臨床的凝固徴候および症状を含み得る。CRSは、高窒素血症のような臨床的腎臓徴候および症状を含み得る。CRSは、高トランスアミナーゼ血症および高ビリルビン血症のような臨床的肝臓徴候および症状を含み得る。CRSは、頭痛、精神状態変化、混乱、譫妄、換語困難または明らかな失語症、幻覚、振戦、測定障害(dymetria)、歩調変化および発作のような臨床的神経徴候および症状を含み得る。
【0483】
したがって、ここに記載する方法は、ここに記載するCAR発現細胞を対象に投与し、さらにCAR発現細胞での処置の結果としての可溶性因子レベル上昇を管理する1個以上の薬剤を投与することを含む。一つの態様において、対象で上昇する可溶性因子は、IFN−γ、TNF−α、IL−2およびIL−6の1個以上である。ある態様において、対象で上昇する因子は、IL−1、GM−CSF、IL−10、IL−8、IL−5およびフラクタルカイン(fraktalkine)の1個以上である。それゆえに、この副作用を処置するために投与する薬剤は、これらの可溶性因子の1個以上を中和する薬剤である。一つの態様において、これらの可溶性形態の1個以上を中和する薬剤は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。このような薬剤の例は、ステロイド(例えば、コルチコステロイド)、TNF−α阻害剤およびIL−6阻害剤である。TNF−α阻害剤の例は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴールおよびゴリムマブのような抗TNF−α抗体分子である。TNF−α阻害剤の他の例は、エタネルセプト(entanercept)のような融合タンパク質である。小分子TNF−α阻害剤は、キサンチン誘導体(例えばペントキシフィリン)およびブプロピオンを含むが、これらに限定されない。IL−6阻害剤の例は、トシリズマブ(toc)、サリルマブ、エルシリモマブ、CNTO 328、ALD518/BMS-945429、CNTO 136、CPSI-2364、CDP6038、VX30、ARGX-109、FE301およびFM101のような抗IL−6抗体分子または抗IL−6受容体抗体分子である。一つの態様において、抗IL−6抗体分子はトシリズマブである。IL−1Rベースの阻害剤の例はアナキンラである。
【0484】
ある態様において、対象に、とりわけ、例えば、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾンのようなコルチコステロイドを投与する。
【0485】
ある態様において、対象に、例えば、ノルエピネフリン、ドーパミン、フェニレフリン、エピネフリン、バソプレシンまたはこれらの組み合わせのような昇圧剤を投与する。
【0486】
ある態様において、対象に、解熱剤を投与し得る。ある態様において、対象に鎮痛剤を投与し得る。
【0487】
一つの態様において、対象に、CAR発現細胞の活性または適応度を増強する薬剤を投与し得る。例えば、一つの態様において、薬剤は、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子を阻害する薬剤であり得る。ある態様において、T細胞機能を調節するかまたは制御する分子は阻害分子である。阻害分子、例えば、プログラム死1(PD1)は、ある態様において、CAR発現細胞が免疫エフェクター応答を開始する能力を低下させ得る。阻害分子の例は、PD1、PD−L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM−1、CEACAM−3および/またはCEACAM−5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータを含む。例えば、DNA、RNAまたはタンパク質レベルでの阻害による、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の阻害は、CAR発現細胞性能を最適化できる。いくつかの態様において、薬剤、例えば、ここに記載する、例えば、阻害核酸、例えば、dsRNA、例えば、siRNAまたはshRNA;または例えば、阻害タンパク質または阻害系、例えば、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)、転写アクティベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)または亜鉛フィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)を使用して、CAR発現細胞におけるT細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害ことができる。ある態様において、薬剤はshRNAである。ある態様において、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば阻害する薬剤を、CAR発現細胞内で阻害する。これらの態様において、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子を、CARのある成分、例えば、全成分をコードする核酸と結合する。ある態様において、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードする核酸分子を、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子が発現される、例えば、CAR発現細胞内で発現されるように、プロモーター、例えば、H1−またはU6由来プロモーターに操作可能に結合する。例えば、Tiscornia G., “Development of Lentiviral Vectors Expressing siRNA,” Chapter 3, in
Gene Transfer: Delivery and Expression of DNA and RNA (eds. Friedmann and Rossi). Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USA, 2007; Brummelkamp TR, et al. (2002) Science 296: 550-553; Miyagishi M, et al. (2002) Nat. Biotechnol. 19: 497-500参照。ある態様において、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードする核酸分子は、CARの成分、例えば、成分の全てをコードする核酸分子を含む同じベクター、例えば、レンチウイルスベクターに存在する。このような態様において、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードする核酸分子は、ベクター、例えば、レンチウイルスベクター上に、CARのある成分、例えば、全成分をコードする核酸に対して5’または3’に位置する。T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードする核酸分子は、CARのある成分、例えば、全成分をコードする核酸と同じまたは異なる方向で転写され得る。ある態様において、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードする核酸分子は、CARの成分、例えば、成分の全てをコードする核酸分子を含むベクター以外のベクターに存在する。ある態様において、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードする核酸分子は、CAR発現細胞で一過性に発現される。ある態様において、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードする核酸分子は、CAR発現細胞のゲノムに安定に統合される。
図47は、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子を伴う、CARの成分、例えば成分の全てを含むベクターの例を記載する。
【0488】
T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子がPD−1である、T細胞機能を調節するかまたは制御する、例えば、阻害する分子の発現の阻害に有用なdsRNA分子の例を下に提供する。
【0489】
下の表16に示すのは、PDCD1(PD1)RNAi剤の名前(マウスPDCD1遺伝子配列NM_008798.2におけるその位置由来)と、DNA配列を表す配列番号280〜327である。センス(S)およびアンチセンス(AS)配列の両者が、この表では19量体および21量体配列として提供される。位置(PoS、例えば、176)がマウスPDCD1遺伝子配列NM_008798.2における位置から導かれることも注意すべきである。配列番号は、“センス19”配列番号280〜291;“センス21”配列番号292〜303;“アセンス21”配列番号304〜315;“アセンス19”配列番号316〜327に対応する12の群で示す。
【0491】
下記表17に提供するのは、PDCD1(PD1)RNAi剤(ヒトPDCD1遺伝子配列におけるその位置由来)と、DNA配列を表す配列番号323〜370である。センス(S)およびアンチセンス(AS)配列の両者が、19量体および21量体配列として表される。配列番号は、“センス19”配列番号328〜339;“センス21”配列番号340〜351;“アセンス21”配列番号352〜363;“アセンス19”配列番号364〜375に対応する12の群で示す。
【0493】
一つの態様において、阻害シグナルの阻害剤は、例えば、阻害分子に結合する抗体または抗体フラグメントであり得る。例えば、薬剤は、PD1、PD−L1、PD−L2またはCTLA4に結合する抗体または抗体フラグメント(例えば、イピリムマブ(MDX-010およびMDX-101とも呼ばれ、ヤーボイ(登録商標)として市販;Bristol-Myers Squibb;トレメリムマブ(Pfizerから入手可能なIgG2モノクローナル抗体、以前はチシリムマブ、CP-675,206として知られた))であり得る。ある態様において、薬剤は、TIM3と結合する抗体または抗体フラグメントである。ある態様において、薬剤はLAG3と結合する抗体または抗体フラグメントである。
【0494】
PD−1は、CD28、CTLA−4、ICOSおよびBTLAも含む、受容体のCD28ファミリーの阻害メンバーである。PD−1は活性化B細胞、T細胞および骨髄球性細胞に発現される(Agata et al. 1996 Int. Immunol 8:765-75)。PD−1、PD−L1およびPD−L2に対する2個のリガンドが、PD−1への結合によりT細胞活性化を下方制御することが示されている(Freeman et a. 2000 J Exp Med 192:1027-34;Latchman et al. 2001 Nat Immunol 2:261-8;Carter et al. 2002 Eur J Immunol 32:634-43)。PD−L1はヒト癌に豊富である(Dong et al. 2003 J Mol Med 81:281-7; Blank et al. 2005 Cancer Immunol. Immunother 54:307-314; Konishi et al. 2004 Clin Cancer Res 10:5094)。免疫抑制は、PD1とPD−L1の局所相互作用の阻害により反転させ得る。PD−1、PD−L1およびPD−L2の抗体、抗体フラグメントおよび他の阻害剤は当分野で入手可能であり、ここに記載する本発明のCARと組み合わせて使用し得る。例えば、ニボルマブ(BMS-936558またはMDX1106とも呼ばれる;Bristol-Myers Squibb)は、PD−1を特異的に遮断する完全にヒトIgG4モノクローナル抗体である。ニボルマブ(クローン5C4)およびPD−1に特異的に結合する他のヒトモノクローナル抗体は、US8,008,449号およびWO2006/121168号に開示されている。ピディリズマブ(CT-011;Cure Tech)は、PD−1に結合するヒト化IgG1kモノクローナル抗体である。ピディリズマブおよび他のヒト化抗PD−1モノクローナル抗体はWO2009/101611号に開示されている。ペンブロリズマブ(以前はランブロリズマブとして知られ、MK03475とも呼ばれる;Merck)は、PD−1に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体である。ペンブロリズマブおよび他のヒト化抗PD−1抗体は、US8,354,509号およびWO2009/114335号に開示されている。MEDI4736(Medimmune)は、PDL1に結合し、リガンドとPD1の相互作用を阻害するヒトモノクローナル抗体である。MDPL3280A(Genentech/Roche)は、PD−L1に結合するヒトFc最適化IgG1モノクローナル抗体である。MDPL3280Aおよび他のPD−L1に対するヒトモノクローナル抗体は米国特許7,943,743号および米国公開公報20120039906号に開示されている。他の抗PD−L1結合剤は、YW243.55.S70(重鎖および軽鎖可変領域は、WO2010/077634号の配列番号20および21に示す)およびMDX−1105(BMS−936559、および、例えば、WO2007/005874号に開示の抗PD−L1結合剤とも呼ぶ)を含む。AMP-224(B7-DCIg;Amplimmune;例えば、WO2010/027827号およびWO2011/066342号に開示)は、PD−1とB7−H1の相互作用を遮断するPD−L2 Fc融合可溶性受容体である。他の抗PD−1抗体は、AMP 514(Amplimmune)、とりわけ、例えば、US8,609,089号、US2010028330号および/またはUS20120114649号に開示の抗PD−1抗体を含む。
【0495】
TIM3(T細胞免疫グロブリン−3)も、特にIFN−g分泌CD4
+ Tヘルパー1およびCD8
+ T細胞毒性1細胞におけるT細胞機能を負に制御し、T細胞疲弊に重要な役割を有する。TIM3とそのリガンド、例えば、ガレクチン−9(Gal9)、ホスファチジルセリン(phosphotidylserine)(PS)およびHMGB1の相互作用の阻害は、免疫応答を高める。抗体、抗体フラグメントおよびTIM3およびそのリガンドの他の阻害剤が当分野で利用可能であり、ここに記載するCD19 CARと組み合わせて使用できる。例えば、TIM3を標的とする抗体、抗体フラグメント、小分子またはペプチド阻害剤は、TIM3のIgVドメインに結合し、そのリガンドとの相互作用を阻害する。TIM3を阻害する抗体およびペプチドは、WO2013/006490号およびUS20100247521号に開示されている。他の抗TIM3抗体は、ヒト化バージョンのRMT3-23(Ngiow et al., 2011, Cancer Res, 71:3540-3551に開示)およびクローン8B.2C12(Monney et al., 2002, Nature, 415:536-541に開示)を含む。TIM3およびPD−1を阻害する二特異的抗体は、US20130156774に開示されている。
【0496】
他の態様において、CAR発現細胞の活性を増強する薬剤は、CEACAM阻害剤(例えば、CEACAM−1、CEACAM−3および/またはCEACAM−5阻害剤)である。一つの態様において、CEACAM阻害剤は抗CEACAM抗体分子である。代表的抗CEACAM−1抗体は、WO2010/125571号、WO2013/082366号、WO2014/059251号およびWO2014/022332号に開示され、例えば、モノクローナル抗体34B1、26H7および5F4であるか;または例えば、US2004/0047858号、US7,132,255号およびWO99/052552号に記載のようなその組み換え形態である。他の態様において、抗CEACAM抗体は、例えば、Zheng et al. PLoS One. 2010 Sep 2;5(9). pii: e12529 (DOI:10:1371/journal.pone.0021146)に記載のようにCEACAM−5に結合するかまたは例えば、WO2013/054331号およびUS2014/0271618号に記載のようにCEACAM−1およびCEACAM−5と交差反応する。
【0497】
理論に縛られることを望まないが、CEACAM−1およびCEACAM−5のような癌胎児性抗原細胞接着分子(CEACAM)は、抗腫瘍免疫応答の阻害に、少なくとも一部、介在すると考えられる(例えば、Markel et al. J Immunol. 2002 Mar 15;168(6):2803-10; Markel et al. J Immunol. 2006 Nov 1;177(9):6062-71; Markel et al. Immunology. 2009 Feb;126(2):186-200; Markel et al. Cancer Immunol Immunother. 2010 Feb;59(2):215-30; Ortenberg et al. Mol Cancer Ther. 2012 Jun;11(6):1300-10; Stern et al. J Immunol. 2005 Jun 1;174(11):6692-701; Zheng et al. PLoS One. 2010 Sep 2;5(9). pii: e12529参照)。例えば、CEACAM−1は、TIM−3のヘテロ親和性リガンドとして、かつTIM−3介在T細胞耐容性および消耗に役割を有するとして記載されている(例えば、WO2014/022332号;Huang, et al. (2014) Nature doi:10.1038/nature13848参照)。いくつかの態様において、CEACAM−1とTIM−3の共遮断は、異種移植結腸直腸癌モデルにおける抗腫瘍免疫応答を増強することが示されている(例えば、WO2014/022332;Huang, et al. (2014), supra参照)。他の態様において、CEACAM−1とPD−1の共遮断は、例えば、WO2014/059251号に記載のように、T細胞耐容性を減少させる。それゆえに、CEACAM阻害剤を、ここに記載する他の免疫調節剤(例えば、抗PD−1および/または抗TIM−3阻害剤)と共に使用して、癌、例えば、黒色腫、肺癌(例えば、NSCLC)、膀胱癌、結腸癌、卵巣癌およびここに記載する他の癌に対する免疫応答を増強できる。
【0498】
LAG3(リンパ球活性化遺伝子−3またはCD223)は、CD8
+ T細胞消耗に役割を有することが示されている、活性化T細胞およびB細胞上に発現される細胞表面分子である。抗体、抗体フラグメントおよびLAG3およびそのリガンドの他の阻害剤は当分野で入手可能であり、ここに記載するCD19 CARと組み合わせて使用し得る。例えば、BMS-986016(Bristol-Myers Squib)は、LAG3を標的とするモノクローナル抗体である。IMP701(Immutep)はアンタゴニストLAG3抗体であり、IMP731(ImmutepおよびGlaxoSmithKline)は、枯渇型LAG3抗体である。他のLAG3阻害剤は、LAG3の可溶性部分と、MHCクラスII分子に結合し、抗原提示細胞(APC)を活性化するIgの組み換え融合タンパク質であるIMP321(Immutep)である。他の抗体は、例えば、WO2010/019570号に開示されている。
【0499】
ある態様において、CAR発現細胞の活性を増強する薬剤は、例えば、第一ドメインおよび第二ドメインを含む融合タンパク質であってよく、ここで、第一ドメインは阻害分子またはそのフラグメントであり、第二ドメインは陽性シグナルと関係するポリペプチド、例えば、ここに記載する細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドである。ある態様において、陽性シグナルと関係するポリペプチドは、CD28、CD27、ICOSの共刺激ドメイン、例えば、CD28、CD27および/またはICOSの細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または例えば、ここに記載の、例えば、CD3ゼータの、一次シグナル伝達ドメインを含み得る。一つの態様において、融合タンパク質は、CARを発現するのと同じ細胞により発現される。他の態様において、融合タンパク質は、メソテリンCARを発現しない細胞、例えば、T細胞により発現される。
【0500】
一つの態様において、ここに記載するCAR発現細胞の活性を増強する薬剤はmiR-17-92である。
【0501】
低用量のmTOR阻害剤との組み合わせ
一つの態様において、CAR分子、例えば、ここに記載するCAR分子を発現する細胞を、低い、免疫増強用量のmTOR阻害剤と組み合わせて投与する。
【0502】
ある態様において、mTOR阻害剤の用量は、少なくとも5%であるが90%を超えない、少なくとも10%であるが90%を超えない、少なくとも15%であるが90%を超えない、少なくとも20%であるが90%を超えない、少なくとも30%であるが90%を超えない、少なくとも40%であるが90%を超えない、少なくとも50%であるが90%を超えない、少なくとも60%であるが90%を超えないまたは少なくとも70%であるが90%を超えないmTOR阻害と関係するかまたはそれを提供する。
【0503】
ある態様において、mTOR阻害剤の用量は、少なくとも5%であるが80%を超えない、少なくとも10%であるが80%を超えない、少なくとも15%であるが80%を超えない、少なくとも20%であるが80%を超えない、少なくとも30%であるが80%を超えない、少なくとも40%であるが80%を超えない、少なくとも50%であるが80%を超えないまたは少なくとも60%であるが80%を超えないmTOR阻害と関係するかまたはそれを提供する。
【0504】
ある態様において、mTOR阻害剤の用量は、少なくとも5%であるが70%を超えない、少なくとも10%であるが70%を超えない、少なくとも15%であるが70%を超えない、少なくとも20%であるが70%を超えない、少なくとも30%であるが70%を超えない、少なくとも40%であるが70%を超えないまたは少なくとも50%であるが70%を超えないmTOR阻害と関係するかまたはそれを提供する。
【0505】
ある態様において、mTOR阻害剤の用量は、少なくとも5%であるが60%を超えない、少なくとも10%であるが60%を超えない、少なくとも15%であるが60%を超えない、少なくとも20%であるが60%を超えない、少なくとも30%であるが60%を超えないまたは少なくとも40%であるが60%を超えないmTOR阻害と関係するかまたはそれを提供する。
【0506】
ある態様において、mTOR阻害剤の用量は、少なくとも5%であるが50%を超えない、少なくとも10%であるが50%を超えない、少なくとも15%であるが50%を超えない、少なくとも20%であるが50%を超えない、少なくとも30%であるが50%を超えないまたは少なくとも40%であるが50%を超えないmTOR阻害と関係するかまたはそれを提供する。
【0507】
ある態様において、mTOR阻害剤の用量は、少なくとも5%であるが40%を超えない、少なくとも10%であるが40%を超えない、少なくとも15%であるが40%を超えない、少なくとも20%であるが40%を超えない、少なくとも30%であるが40%を超えないまたは少なくとも35%であるが40%を超えないmTOR阻害と関係するかまたはそれを提供する。
【0508】
ある態様において、mTOR阻害剤の用量は、少なくとも5%であるが30%を超えない、少なくとも10%であるが30%を超えない、少なくとも15%であるが30%を超えない、少なくとも20%であるが30%を超えないまたは少なくとも25%であるが30%を超えないmTOR阻害と関係するかまたはそれを提供する。
【0509】
ある態様において、mTOR阻害剤の用量は、少なくとも1%、2%、3%、4%または5%であるが、20%を超えない、少なくとも1%、2%、3%、4%または5%であるが、30%を超えない、少なくとも1%、2%、3%、4%または5%であるが、35%を超えない、少なくとも1%、2%、3%、4%または5%であるが、40%を超えないまたは少なくとも1%、2%、3%、4%または5%であるが、45%を超えないmTOR阻害と関係するかまたはそれを提供する。
【0510】
ある態様において、mTOR阻害剤の用量は、少なくとも1%、2%、3%、4%または5%であるが、90%を超えないmTOR阻害と関係するかまたはそれを提供する。
【0511】
ここに記載するとおり、mTOR阻害の程度は、P70 S6阻害の程度として表すことができ、例えば、mTOR阻害の程度は、P70 S6活性のレベルの低下により、例えば、P70 S6基質のリン酸化の減少により決定できる。mTOR阻害のレベルは、ここに記載する方法で、例えばBoulayアッセイにより評価できる。
【0512】
代表的mTOR阻害剤
ここで使用する用語“mTOR阻害剤”は、細胞におけるmTORキナーゼを阻害する化合物もしくはリガンドまたはその薬学的に許容される塩をいう。ある態様において、mTOR阻害剤はアロステリック阻害剤である。ある態様において、mTOR阻害剤は触媒的阻害剤である。
【0513】
アロステリックmTOR阻害剤は、中性三環式化合物ラパマイシン(シロリムス)、例えば、ラパマイシン誘導体、ラパマイシン類似体(ラパログとも呼ぶ)およびmTOR活性を阻害する他のマクロライド化合物を含む、ラパマイシンに構造的および機能的類似性を有する化合物であるラパマイシン関連化合物を含む。
【0514】
ラパマイシンは、式Aに示す構造を有する、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカスにより産生される既知マクロライド抗生物質である。
【化17】
【0515】
例えば、McAlpine, J.B., et al., J. Antibiotics (1991) 44: 688; Schreiber, S.L., et al., J. Am. Chem. Soc. (1991) 113: 7433;米国特許3,929,992号参照。ラパマイシンについて多様な番号付けスキームが提唱されている。混乱を避けるために、特定のラパマイシン類似体をここで名づけるとき、式Aの番号付けスキームを使用したラパマイシンを参照して名づける。
【0516】
本発明において有用なラパマイシン類似体は、例えば、ラパマイシンのシクロヘキシル環におけるヒドロキシル基がOR
1(ここで、R
1はヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、アシルアミノアルキルまたはアミノアルキルである)で置換されているO置換類似体であり、例えばその内容を引用して本明細書に包含させるUS5,665,772号およびWO94/09010号に記載された、エベロリムスとしても知られるRAD001である。他の適当なラパマイシン類似体は、26位または28位が置換されているものを含む。ラパマイシン類似体は、上記類似体のエピマーであってよく、特に、例えば、その内容を引用して本明細書に包含させるUS6,015,815号、WO95/14023号およびWO99/15530号に記載のとおり、40位、28位または26位が置換され、所望によりさらに水素化されていてよい類似体のエピマー、例えばゾタロリムスとして知られるABT578またはその内容を引用して本明細書に包含させるUS7,091,213号、WO98/02441号およびWO01/14387号に記載のラパマイシン類似体、例えばリダフォロリムスとしても知られるAP23573を含む。
【0517】
US5,665,772号の本発明における使用に適当なラパマイシン類似体の例は、40−O−ベンジル−ラパマイシン、40−O−(4’−ヒドロキシメチル)ベンジル−ラパマイシン、40−O−[4’−(1,2−ジヒドロキシエチル)]ベンジル−ラパマイシン、40−O−アリル−ラパマイシン、40−O−[3’−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4(S)−イル)−プロプ−2’−エン−1’−イル]−ラパマイシン、(2’E,4’S)−40−O−(4’,5’−ジヒドロキシペント−2’−エン−1’−イル)−ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エトキシカルボニルメチル−ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−(6−ヒドロキシ)ヘキシル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−[(3S)−2,2−ジメチルジオキソラン−3−イル]メチル−ラパマイシン、40−O−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロプ−1−イル]−ラパマイシン、40−O−(2−アセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチノイルオキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−モルホリノ)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−(2−N−イミダゾリルアセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−メチル−N’−ピペラジニル)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、39−O−デスメチル−39,40−O,O−エチレン−ラパマイシン、(26R)−26−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(2−アミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−(N−メチル−イミダゾ−2’−イルカルベトキサミド)エチル)−ラパマイシン、40−O−(2−エトキシカルボニルアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−トリルスルホンアミドエチル)−ラパマイシンおよび40−O−[2−(4’,5’−ジカルボエトキシ−1’,2’,3’−トリアゾール−1’−イル)−エチル]−ラパマイシンを含むが、これらに限定されない。
【0518】
本発明において有用な他のラパマイシン類似体は、ラパマイシンのシクロヘキシル環におけるヒドロキシル基および/または28位のヒドロキシ基がヒドロキシエステル基で置換されている類似体を含み、例えば、USRE44,768号に見られるラパマイシン類似体、例えばテムシロリムスが知られる。
【0519】
本発明において有用な他のラパマイシン類似体は、16位のメトキシ基が他の置換基、好ましくは(所望によりヒドロキシ置換)アルキニルオキシ、ベンジル、オルトメトキシベンジルまたはクロロベンジルで置換されているおよび/または39位のメトキシ基が、39番炭素と共に欠失しており、ラパマイシンのシクロヘキシル環が39位メトキシ基を欠くシクロペンチル環となるものを含み、例えば、引用によりその内容を本明細書に包含させるWO95/16691号およびWO96/41807号に記載されている。ラパマイシンの40位のヒドロキシがアルキル化されるおよび/または32−カルボニルが還元されるように、類似体をさらに修飾できる。
【0520】
WO95/16691号からのラパマイシン類似体は、16−デメトキシ−16−(ペント−2−イニル)オキシ−ラパマイシン、16−デメトキシ−16−(ブト−2−イニル)オキシ−ラパマイシン、16−デメトキシ−16−(プロパルギル)オキシ−ラパマイシン、16−デメトキシ−16−(4−ヒドロキシ−ブト−2−イニル)オキシ−ラパマイシン、16−デメトキシ−16−ベンジルオキシ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、16−デメトキシ−16−ベンジルオキシ−ラパマイシン、16−デメトキシ−16−オルト−メトキシベンジル−ラパマイシン、16−デメトキシ−40−O−(2−メトキシエチル)−16−ペント−2−イニル)オキシ−ラパマイシン、39−デメトキシ−40−デスオキシ−39−ホルミル−42−ノル−ラパマイシン、39−デメトキシ−40−デスオキシ−39−ヒドロキシメチル−42−ノル−ラパマイシン、39−デメトキシ−40−デスオキシ−39−カルボキシ−42−ノル−ラパマイシン、39−デメトキシ−40−デスオキシ−39−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)カルボニル−42−ノル−ラパマイシン、39−デメトキシ−40−デスオキシ−39−(モルホリン−4−イル)カルボニル−42−ノル−ラパマイシン、39−デメトキシ−40−デスオキシ−39−[N−メチル、N−(2−ピリジン−2−イル−エチル)]カルバモイル−42−ノル−ラパマイシンおよび39−デメトキシ−40−デスオキシ−39−(p−トルエンスルホニルヒドラゾノメチル)−42−ノル−ラパマイシンを含むが、これらに限定されない。
【0521】
WO96/41807号からのラパマイシン類似体は、32−デオキソ−ラパマイシン、16−O−ペント−2−イニル−32−デオキソ−ラパマイシン、16−O−ペント−2−イニル−32−デオキソ−40−O−(2−ヒドロキシ−エチル)−ラパマイシン、16−O−ペント−2−イニル−32−(S)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、32(S)−ジヒドロ−40−O−(2−メトキシ)エチル−ラパマイシンおよび32(S)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンを含むが、これらに限定されない。
【0522】
他の適当なラパマイシン類似体は、引用によりその内容を本明細書に包含させる、US2005/0101624号に記載されたウミロリムスである。
【0523】
エベロリムス(アフィニトール(登録商標))としても知られるRAD001は、化学名(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28E,30S,32S,35R)−1,18−ジヒドロキシ−12−{(1R)−2−[(1S,3R,4R)−4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシシクロヘキシル]−1−メチルエチル}−19,30−ジメトキシ−15,17,21,23,29,35−ヘキサメチル−11,36−ジオキサ−4−アザ−トリシクロ[30.3.1.0
4,9]ヘキサトリアコンタ−16,24,26,28−テトラエン−2,3,10,14,20−ペンタオンを有する。
【0524】
アロステリックmTOR阻害剤のさらなる例は、シロリムス(ラパマイシン、AY-22989)、40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]−ラパマイシン(テムシロリムスまたはCCI-779とも呼ばれる)およびリダフォロリムス(AP-23573/MK-8669)を含む。アロステリックmTORの他の例は、ゾタロリムス(ABT578)およびウミロリムスを含む。
【0525】
これとは別にまたはこれに加えて、触媒的、ATP競合的mTOR阻害剤が、mTORキナーゼドメインを直接標的とし、mTORC1およびmTORC2の両者を標的とすることが知られている。これらはまた、4EBP1−T37/46リン酸化およびキャップ依存性翻訳のようなラパマイシン耐性mTORC1アウトプットを調節するため、ラパマイシンのようなアロステリックmTOR阻害剤よりも有効なmTORC1阻害剤でもある。
【0526】
触媒的阻害剤は、BEZ235または2−メチル−2−[4−(3−メチル−2−オキソ−8−キノリン−3−イル−2,3−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル)−フェニル]−プロピオニトリルまたはモノトシル酸塩形態(BEZ235の合成は、WO2006/122806号に記載されている);化学名{5−[2,4−ビス−((S)−3−メチル−モルホリン−4−イル)−ピリド[2,3d]ピリミジン−7−イル]−2−メトキシ−フェニル}−メタノール;3−[2,4−ビス[(3S)−3−メチルモルホリン−4−イル]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N−メチルベンズアミド(WO09104019号)を有するCCG168(AZD-8055としても既知、Chresta, C.M., et al., Cancer Res, 2010, 70(1), 288-298);3−(2−アミノベンゾ[d]オキサゾール−5−イル)−1−イソプロピル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(WO10051043およびWO2013023184);A N−(3−(N−(3−((3,5−ジメトキシフェニル)アミノ)キノキサリン−2−イル)スルファモイル)フェニル)−3−メトキシ−4−メチルベンズアミド(WO07044729号およびWO12006552号);化学名1−[4−[4−(ジメチルアミノ)ピペリジン−1−カルボニル]フェニル]−3−[4−(4,6−ジモルホリノ−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル]尿素を有するPKI-587(Venkatesan, A.M., J. Med.Chem., 2010, 53, 2636-2645);化学名2,4−ジフルオロ−N−{2−メトキシ−5−[4−(4−ピリダジニル)−6−キノリニル]−3−ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド;;5−(9−イソプロピル−8−メチル−2−モルホリノ−9H−プリン−6−イル)ピリミジン−2−アミン(WO10114484号)を有するGSK-2126458(ACS Med. Chem. Lett., 2010, 1, 39-43);(E)−N−(8−(6−アミノ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル)−1−(6−(2−シアノプロパン−2−イル)ピリジン−3−イル)−3−メチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2(3H)−イリデン)シアナミド(WO12007926号)を含む。
【0527】
触媒的mTOR阻害剤のさらなる例は、8−(6−メトキシ−ピリジン−3−イル)−3−メチル−1−(4−ピペラジン−1−イル−3−トリフルオロメチル−フェニル)−1,3−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン(WO2006/122806号)およびKu-0063794(Garcia-Martinez JM, et al., Biochem J., 2009, 421(1), 29-42)を含む。Ku-0063794は、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)の特異的阻害剤である。WYE-354は、触媒的mTOR阻害剤の他の例である(Yu K, et al. (2009). Biochemical, Cellular, and In vivo Activity of Novel ATP-Competitive and Selective Inhibitors of the Mammalian Target of Rapamycin. Cancer Res. 69(15): 6232-6240)。
【0528】
本発明に有用なmTOR阻害剤はまた前記のいずれかのプロドラッグ、誘導体、薬学的に許容される塩または類似体を含む。
【0529】
RAD001のようなmTOR阻害剤は、ここに記載する特定の投与量に基づき、当分野で十分確立された方法を利用して送達用に製剤し得る。特に、US特許6,004,973号(引用により本明細書に包含させる)は、ここに記載のmTOR阻害剤に有用な製剤の例を提供する。
【0530】
mTOR阻害の評価
mTORはキナーゼP70 S6をリン酸化し、それによりP70 S6キナーゼを活性化し、その基質をリン酸化させる。mTOR阻害の程度は、P70 S6キナーゼ阻害の程度により表すことができ、例えば、mTOR阻害の程度は、例えば、P70 S6キナーゼ基質のリン酸化の減少による、P70 S6キナーゼ活性レベルの減少により決定できる。阻害剤の非存在下、例えば、阻害剤投与前と、阻害剤存在下または阻害剤投与後のP70 S6キナーゼ活性(P70 S6キナーゼが基質をリン酸化する能力)を測定することにより、mTOR阻害のレベルを決定できる。P70 S6キナーゼ阻害レベルは、mTOR阻害のレベルを示す。それゆえに、P70 S6キナーゼが40%阻害されたら、P70 S6キナーゼ活性で測定して、mTOR活性は40%阻害される。ここでいう阻害の程度またはレベルは、投与の合間の阻害の平均レベルである。例として、阻害剤を週に1回与えるとき、阻害のレベルは、その合間の、すなわち1週間をとおした阻害の平均レベルを示す。
【0531】
引用により本明細書に包含させるBoulay et al., Cancer Res, 2004, 64:252-61は、mTOR阻害のレベルの評価に使用できるアッセイを教示する(ここではBoulayアッセイと称す)。ある態様において、アッセイは、mTOR阻害剤、例えば、RAD001の投与前後の生物学的サンプルからのP70 S6キナーゼ活性の測定に頼る。サンプルを、mTOR阻害剤での処置後、予め選択した時間、例えば、処置の24時間、48時間および72時間後に採り得る。例えば、皮膚または末梢血単核細胞(PBMC)からの生物学的サンプルを使用できる。総タンパク質抽出物をサンプルから調製する。P70 S6キナーゼを特異的に認識する抗体を使用した免疫沈降により、タンパク質抽出物からP70 S6キナーゼを単離する。単離したP70 S6キナーゼの活性を、インビトロキナーゼアッセイで測定する。単離したキナーゼを40Sリボソームサブユニット基質(P70 S6キナーゼの内在性基質である)およびガンマ−
32Pと、該基質のリン酸化を可能とする条件下でインキュベートできる。次いで、反応混合物をSDS−PAGEゲルで分割し、
32PシグナルをPhosphorImagerを使用して解析する。40Sリボソームサブユニットのサイズに対応する
32Pシグナルが、リン酸化された基質およびP70 S6キナーゼの活性を示す。キナーゼ活性の増加または減少を、リン酸化基質の
32Pシグナルの面積および強度を定量し(例えば、ImageQuant, Molecular Dynamicsを使用)、任意単位値を定量化シグナルに割り当て、投与後の値と投与前の値または対照値を比較することにより、計算できる。例えば、キナーゼ活性阻害パーセントを次の式で計算できる:1−(投与後に得た値/投与前に得た値)×100。上記のとおり、阻害の程度またはレベルは、ここでは、投与の合間の阻害の平均レベルをいう。
【0532】
キナーゼ活性、例えば、P70 S6キナーゼ活性を評価する方法もまた、引用により本明細書に包含させるUS7,727,950号に提供されている。
【0533】
mTOR阻害のレベルはまた、PD1陰性細胞対PD1陽性T細胞の比の変化によっても評価できる。末梢血からのT細胞を、当分野で知られる方法によりPD1陰性または陽性と同定できる。
【0534】
低用量mTOR阻害剤
ここに記載する方法は、低い、免疫増強用量のmTOR阻害剤、mTOR阻害剤、例えば、RAD001のようなラパログを含むアロステリックmTOR阻害剤の複数用量を使用する。対照的に、mTOR経路を完全にまたはほぼ完全に阻害するレベルの阻害剤は免疫抑制性であり、例えば、臓器移植片拒絶の予防に使用される。さらに、mTORを完全に阻害する高用量のラパログも腫瘍細胞増殖を阻止し、多様な癌の処置に使用されている(例えば、Antineoplastic effects of mammalian target of rapamycine inhibitors. Salvadori M. World J Transplant. 2012 Oct 24;2(5):74-83; Current and Future Treatment Strategies for Patients with Advanced Hepatocellular Carcinoma: Role of mTOR Inhibition. Finn RS. Liver Cancer. 2012 Nov;1(3-4):247-256; Emerging Signaling Pathways in Hepatocellular Carcinoma. Moeini A, Cornella H, Villanueva A. Liver Cancer. 2012 Sep;1(2):83-93; Targeted cancer therapy - Are the days of systemic chemotherapy numbered? Joo WD, Visintin I, Mor G. Maturitas. 2013 Sep 20.; Role of natural and adaptive immunity in renal cell carcinoma response to VEGFR-TKIs and mTOR inhibitor. Santoni M, Berardi R, Amantini C, Burattini L, Santini D, Santoni G, Cascinu S. Int J Cancer. 2013 Oct 2参照)。
【0535】
本発明は、少なくとも一部、現在臨床の現場で使用されるよりはるかに低用量のmTOR阻害剤が、対象における免疫応答の増加に優れた効果を有し、PD−1陰性T細胞/PD−1陽性T細胞比を増加させるという驚くべき発見に基づく。mTOR活性を一部しか阻害しない低用量のmTOR阻害剤が、ヒト対象における免疫応答を効率的に改善し、PD−1陰性T細胞/PD−1陽性T細胞比を増加できることは、驚きであった。
【0536】
これとは別にまたはこれに加えて、いかなる理論にも縛られることを望まないが、低い、免疫増強用量のmTOR阻害剤が、例えば、非処置対象と比較して、例えば、少なくとも一過性に、ナイーブT細胞数を増加できると考えられる。これとは別にまたはこれに加えて、また理論に縛られることを望まないが、十分な時間または十分な投与量のmTOR阻害剤で処置後、次の1個以上を生じると考えられる。
次のマーカーの1個以上の発現の増加:例えば、記憶T細胞、例えば、記憶T細胞前駆体における、CD62L
高、CD127
高、CD27
+およびBCL2;
例えば、記憶T細胞、例えば、記憶T細胞前駆体における、KLRG1発現の減少;および
記憶T細胞前駆体、例えば、次の特徴の1個または組み合わせを有する細胞の数の増加:CD62L
高増加、CD127
高増加、CD27
+増加、KLRG1減少およびBCL2増加;
ここで、上記変化のいずれかは、例えば、非処置対象と比較して、例えば、少なくとも一過性に生じる(Araki, K et al. (2009) Nature 460:108-112)。記憶T細胞前駆体は、分化プログラムの初期にある記憶T細胞である。例えば、記憶T細胞は、次のCD62L
高増加、CD127
高増加、CD27
+増加、KLRG1減少および/またはBCL2増加の特徴の1個以上を有する。
【0537】
ある態様において、本発明は、選択した投与レジメン、例えば、1日1回または週に1回で投与したとき、完全なまたは顕著な免疫抑制には結びつかないが、免疫応答の増強に結びつくmTOR阻害のレベルと関係する、mTOR阻害剤、例えば、アロステリックmTOR阻害剤、例えば、ラパログ、ラパマイシンまたはRAD001または触媒的mTOR阻害剤の組成物または投薬形態に関する。
【0538】
mTOR阻害剤、例えば、アロステリックmTOR阻害剤、例えば、ラパログ、ラパマイシンまたはRAD001または触媒的mTOR阻害剤は、徐放製剤で投与できる。ここに記載する組成物または単位投与形態のいずれも徐放製剤で提供できる。ある態様において、徐放製剤は、即時放出製剤より低いバイオアベイラビリティを有する。例えば、いくつかの態様において、即時放出製剤に類する治療効果を達成するために、徐放製剤は、即時放出製剤に提供される約2〜約5倍、約2.5〜約3.5倍または約3倍量の阻害剤を有する。
【0539】
ある態様において、単位投薬形態あたり0.1〜20mg、0.5〜10mg、2.5〜7.5mg、3〜6mgまたは約5mgを有する、概して週1回投与に使用される、例えば、RAD001の、即時放出形態が提供される。週1回投与のために、これらの即時放出製剤は、それぞれ、0.3〜60mg、1.5〜30mg、7.5〜22.5mg、9〜18mgまたは約15mgのmTOR阻害剤、例えば、アロステリックmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001を有する徐放形態に対応する。ある態様において、両方の形態を週1回投与する。
【0540】
ある態様において、単位投薬形態あたり0.005〜1.5mg、0.01〜1.5mg、0.1〜1.5mg、0.2〜1.5mg、0.3〜1.5mg、0.4〜1.5mg、0.5〜1.5mg、0.6〜1.5mg、0.7〜1.5mg、0.8〜1.5mg、1.0〜1.5mg、0.3〜0.6mgまたは約0.5mgを有する、概して1日1回投与に使用される、例えば、RAD001の、即時放出形態が提供される。1日1回投与のために、これらの即時放出形態は、それぞれ、0.015〜4.5mg、0.03〜4.5mg、0.3〜4.5mg、0.6〜4.5mg、0.9〜4.5mg、1.2〜4.5mg、1.5〜4.5mg、1.8〜4.5mg、2.1〜4.5mg、2.4〜4.5mg、3.0〜4.5mg、0.9〜1.8mgまたは約1.5mgのmTOR阻害剤、例えば、アロステリックmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001を有する、徐放形態に対応する。週1回投与のために、これらの即時放出形態は、それぞれ、0.1〜30mg、0.2〜30mg、2〜30mg、4〜30mg、6〜30mg、8〜30mg、10〜30mg、1.2〜30mg、14〜30mg、16〜30mg、20〜30mg、6〜12mgまたは約10mgのmTOR阻害剤、例えば、アロステリックmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001を有する徐放形態に対応する。
【0541】
ある態様において、単位投薬形態あたり0.01〜1.0mgを有する、概して1日1回投与に使用される、例えば、RAD001の、即時放出形態が提供される。1日1回投与のために、これらの即時放出形態は、それぞれ、0.03〜3mgのmTOR阻害剤、例えば、アロステリックmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001を有する、徐放形態に対応する。週1回投与のために、これらの即時放出形態は、それぞれ、0.2〜20mgのmTOR阻害剤、例えば、アロステリックmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001を有する、徐放形態に対応する。
【0542】
ある態様において、単位投薬形態あたり0.5〜5.0mgを有する、概して週1回投与に使用される、例えば、RAD001の、即時放出形態が提供される。週1回投与のために、これらの即時放出形態は、それぞれ、1.5〜15mgのmTOR阻害剤、例えば、アロステリックmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001を有する、徐放形態に対応する。
【0543】
上記のとおり、mTOR経路の一つの標的はP70 S6キナーゼである。それゆえに、ここに記載する方法および組成物に有用なmTOR阻害剤の用量は、例えば、ここに記載するアッセイ、例えば、Boulayアッセイにより測定して、mTOR阻害剤非存在下におけるP70 S6キナーゼ活性と比較して、P70 S6キナーゼ活性の80%を超えない阻害を達成するのに十分である。さらなる面において、本発明は、mTOR阻害剤の非存在下におけるP70 S6キナーゼ活性と比較して、38%を超えないP70 S6キナーゼ活性の阻害を達成するのに十分なmTOR阻害剤の量である。
【0544】
一つの面において、本発明の方法および組成物において有用なmTOR阻害剤の用量は、例えば、ヒト対象に投与したとき、例えば、ここに記載するアッセイ、例えば、Boulayアッセイにより測定して、P70 S6キナーゼ活性の90±5%(すなわち、85〜95%)、89±5%、88±5%、87±5%、86±5%、85±5%、84±5%、83±5%、82±5%、81±5%、80±5%、79±5%、78±5%、77±5%、76±5%、75±5%、74±5%、73±5%、72±5%、71±5%、70±5%、69±5%、68±5%、67±5%、66±5%、65±5%、64±5%、63±5%、62±5%、61±5%、60±5%、59±5%、58±5%、57±5%、56±5%、55±5%、54±5%、54±5%、53±5%、52±5%、51±5%、50±5%、49±5%、48±5%、47±5%、46±5%、45±5%、44±5%、43±5%、42±5%、41±5%、40±5%、39±5%、38±5%、37±5%、36±5%、35±5%、34±5%、33±5%、32±5%、31±5%、30±5%、29±5%、28±5%、27±5%、26±5%、25±5%、24±5%、23±5%、22±5%、21±5%、20±5%、19±5%、18±5%、17±5%、16±5%、15±5%、14±5%、13±5%、12±5%、11±5%または10±5%阻害を達成するのに十分である。
【0545】
対象におけるP70 S6キナーゼ活性は、例えば、米国特許7,727,950号に記載する方法による、ホスホP70 S6Kレベルおよび/またはホスホP70 S6レベルの免疫ブロット解析またはインビトロキナーゼ活性アッセイのような、当分野で知られる方法を使用して測定し得る。
【0546】
mTOR阻害剤の用量と関連してここで使用する用語“約”は、mTOR阻害剤の用量の最大±10%ばらつきをいうが、記載した用量の周辺のばらつきを含まなくてよい。
【0547】
ある態様において、本発明は、対象に、目標トラフレベル内の投与量で、mTOR阻害剤、例えば、アロステリック阻害剤、例えば、RAD001を投与することを含む、方法を提供する。ある態様において、トラフレベルは、臓器移植および癌患者で使用される投与レジメンに関係するトラフレベルより顕著に低い。ある態様において、mTOR阻害剤、例えば、RAD001またはラパマイシンを、免疫抑制または抗癌効果を生じるトラフレベルの1/2、1/4、1/10または1/20未満であるトラフレベルを生じるように投与する。ある態様において、mTOR阻害剤、例えば、RAD001またはラパマイシンを、免疫抑制または抗癌適応症における使用についてFDAが承認した添付文書に従い提供されるトラフレベルの1/2、1/4、1/10または1/20未満であるトラフレベルを生じるように投与する。
【0548】
ある態様において、ここに開示する方法は、対象に、mTOR阻害剤、例えば、アロステリック阻害剤、例えば、RAD001を、0.1〜10ng/ml、0.1〜0.5ng/ml、0.1〜3ng/ml、0.1〜2ng/mlまたは0.1〜1ng/mlの目標トラフレベルを提供する投与量で投与することを含む。
【0549】
ある態様において、ここに開示する方法は、対象に、mTOR阻害剤、例えば、アロステリック阻害剤、例えば、RAD001を、0.2〜10ng/ml、0.2〜5ng/ml、0.2〜3ng/ml、0.2〜2ng/mlまたは0.2〜1ng/mlの目標トラフレベルを提供する量で投与することを含む。
【0550】
ある態様において、ここに開示する方法は、対象に、mTOR阻害剤、例えば、アロステリック阻害剤、例えば、RAD001を、0.3〜10ng/ml、0.3〜5ng/ml、0.3〜3ng/ml、0.3〜2ng/mlまたは0.3〜1ng/mlの目標トラフレベルを提供する量で投与することを含む。
【0551】
ある態様において、ここに開示する方法は、対象に、mTOR阻害剤、例えば、アロステリック阻害剤、例えば、RAD001を、0.4〜10ng/ml、0.4〜5ng/ml、0.4〜3ng/ml、0.4〜2ng/mlまたは0.4〜1ng/mlの目標トラフレベルを提供する量で投与することを含む。
【0552】
ある態様において、ここに開示する方法は、対象に、mTOR阻害剤、例えば、アロステリック阻害剤、例えば、RAD001を、0.5〜10ng/ml、0.5〜5ng/ml、0.5〜3ng/ml、0.5〜2ng/mlまたは0.5〜1ng/mlの目標トラフレベルを提供する量で投与することを含む。
【0553】
ある態様において、ここに開示する方法は、対象に、mTOR阻害剤、例えば、アロステリック阻害剤、例えば、RAD001を、1〜10ng/ml、1〜5ng/ml、1〜3ng/mlまたは1〜2ng/mlの目標トラフレベルを提供する量で投与することを含む。
【0554】
ここで使用する用語“トラフレベル”は、次の投与直前の血漿中の薬物濃度または2回の投与の間の最少薬物濃度をいう。
【0555】
ある態様において、RAD001の目標トラフレベルは、約0.1〜4.9ng/mlである。ある態様において、目標トラフレベルは3ng/ml未満、例えば、0.3ng/ml以下〜3ng/mlである。ある態様において、目標トラフレベルは3ng/ml未満、例えば、0.3ng/ml以下〜1ng/mlである。
【0556】
さらなる面において、本発明は、RAD001の特定した目標トラフレベルと生物学的同等である目標トラフレベルと関係する量で、RAD001以外のmTOR阻害剤を使用できる。ある態様において、RAD001以外のmTOR阻害剤の目標トラフレベルは、ここに記載するRAD001のトラフレベルと同じレベルのmTOR阻害(例えば、ここに記載する方法で測定して、例えば、P70 S6の阻害)を示すレベルである。
【0557】
医薬組成物:mTOR阻害剤
一つの面において、本発明は、ここに記載するCAR細胞と組み合わせて使用するために製剤された、mTOR阻害剤、例えば、ここに記載するmTOR阻害剤を含む医薬組成物に関する。
【0558】
ある態様において、mTOR阻害剤は、例えば、ここに記載する、さらなる薬剤と組み合わせて投与するために製剤される。
【0559】
一般に、本発明の化合物は、単独でまたは1種以上の治療剤と組み合わせて、当分野で知られる通常のかつ許容される方法のいずれかにより、上記の治療有効量で投与される。
【0560】
医薬製剤は、慣用の溶解および混合法を使用して製造できる。例えば、原体物質(例えば、mTOR阻害剤または該化合物の安定化形態(例えば、シクロデキストリン誘導体または他の既知複合化薬物との複合体))を、ここに記載する添加物の1種以上の存在下、適当な溶媒に溶解させる。mTOR阻害剤は、概して薬物の投与量を容易に制御可能とし、患者に洗練され、取り扱いが容易な製品を与えるような、医薬投与形態に製剤される。
【0561】
本発明の化合物は、医薬組成物として、任意の慣用の経路で、特に経腸的に、例えば、錠剤またはカプセル剤の形で、例えば、経口でまたは、例えば、注射溶液剤または懸濁液剤の形で、非経腸的に、例えば、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤またはクリーム剤の形で、局所的にまたは経鼻または坐薬形態で投与できる。ここに記載するようにmTOR阻害剤を他の薬剤と組み合わせて(同時にまたは別々に)投与するとき、一つの面において、両方の成分を同じ経路で(例えば、非経腸的に)投与する。あるいは、他の薬剤を、mTOR阻害剤と異なる経路で投与し得る。例えば、mTOR阻害剤を経口で投与してよく、他の薬剤を非経腸的に投与してよい。
【0562】
徐放
ここに開示するmTOR阻害剤、例えば、アロステリックmTOR阻害剤または触媒的mTOR阻害剤は、製品安定性要求を満たすおよび/または平均血漿ピーク濃度減少、薬物吸収の程度および血漿ピーク濃度の患者間および患者内ばらつき減少、C
max/C
min比減少および/または食効減少のような即時放出(IR)錠剤より都合よい薬物動態特性を有する、ここに開示するmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001を含む経口固体投与形態の形の医薬製剤として提供できる。提供された医薬製剤は、より厳密な用量調節を可能にするおよび/または有害事象の頻度を減少させ、ここに開示するmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001での患者のより安全な処置を提供することができる。
【0563】
ある態様において、本発明は、多粒子系であり、機能的層およびコーティングを有し得る、ここに開示するmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001の安定な持続放出製剤を提供する。
【0564】
ここで使用する用語“持続放出、多粒子製剤”は、長時間にわたり、例えば少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間または6時間にわたり、ここに開示するmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001の放出を可能とする製剤である。持続放出製剤は、活性成分を摂取後長時間にわたり利用可能とするような方法で製剤された、例えば、ここに記載する、特別の添加物からなるマトリクスおよびコーティングを含み得る。
【0565】
用語“持続放出”は用語“徐放”(SR)または“持効性放出”と交換可能に使用する。用語“持続放出”は、錠剤およびカプセル剤についての欧州薬局方(第7版)モノグラフおよびUSPの医薬投与形態についての一般的な章<1151>の定義に従う、活性薬物物質を、経口投与直後ではなく、長時間にわたり放出する医薬製剤をいう。ここで使用する用語“即時放出”(IR)は、Guidance for Industry: “Dissolution Testing of Immediate Release Solid Oral Dosage Forms” (FDA CDER, 1997)の定義に従い、60分以内に活性薬物物質の85%を放出する医薬製剤である。ある態様において、用語“即時放出”は、例えば、ここに記載する溶解アッセイで測定して、エベロリムスの錠剤からの30分以内の放出を意味する。
【0566】
ここに開示するmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001の安定な持続放出製剤は、ここに記載する溶解アッセイのような当分野で知られるアッセイを使用してインビトロ放出プロファイルにより特徴づけできる。37℃でドデシル硫酸ナトリウム0.2%を含む900mLリン酸緩衝液pH6.8で満たした溶解容器で、それぞれUSP試験モノグラフ711および欧州薬局方試験モノグラフ2.9.3.に従い、USPに従い、パドル法で、75rpmで溶解を行う。
【0567】
ある態様において、ここに開示するmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001の安定な持続放出製剤は、インビトロ放出アッセイで、次の放出明細に従いmTOR阻害剤を放出する。
0.5時間:<45%または<40、例えば、<30%
1時間:20〜80%、例えば、30〜60%
2時間:>50%または>70%、例えば、>75%
3時間:>60%または>65%、例えば、>85%、例えば、>90%。
【0568】
ある態様において、ここに開示するmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンまたはRAD001の安定な持続放出製剤は、インビトロ溶解アッセイで、45分、60分、75分、90分、105分または120分より速くmTOR阻害剤の50%を放出しない。
【0569】
医薬組成物および処置
本発明の医薬組成物は、ここに記載する、CAR発現細胞、例えば、複数のCAR発現細胞を、1種以上の薬学的にまたは生理学的に許容される担体、希釈剤または添加物と組み合わせて含む。このような組成物は、中性緩衝化食塩水、リン酸緩衝化食塩水などのような緩衝液;グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールのような炭水化物;タンパク質;グリシンのようなポリペプチドまたはアミノ酸;抗酸化剤;EDTAまたはグルタチオンのようなキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および防腐剤を含み得る。本発明の組成物は、一つの面において、静脈内投与用に製剤される。
【0570】
本発明の医薬組成物は、処置(または予防)する疾患に適する方法で投与し得る。投与の量および頻度は患者の状態および患者の疾患のタイプおよび重症度のような因子により決定するが、適切な投与量は臨床試験により決定し得る。
【0571】
一つの態様において、医薬組成物は、例えば、エンドトキシン、マイコプラズマ、複製コンピテントレンチウイルス(RCL)、p24、VSV−G核酸、HIV gag、残留抗CD3/抗CD28被覆ビーズ、マウス抗体、貯蔵ヒト血清、ウシ血清アルブミン、ウシ血清、培養培地成分、ベクターパッケージング細胞またはプラスミド成分、細菌および真菌からなる群から選択される混入物が実質的にない、例えば、検出可能レベルで存在しない。一つの態様において、細菌は、アルガリゲネス・フェカリス、カンジダ・アルビカンス、エシェリキア・コリ、ヘモフィルス・インフルエンザエ、ナイセリア・メニンギティディス、シュードモナス・エルジノーサ、スタフィロコッカス・アウレウス、ストレプトコッカス・ニューモニエおよびA群ストレプトコッカス・ピオゲネスからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0572】
“免疫学的有効量”、“抗癌有効量”、“癌阻止有効量”または“治療量”が示されるとき、投与すべき本発明の組成物の厳密な量は、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度および患者(対象)の状態の個々の差異を考慮して、医師が決定できる。ここに記載する免疫エフェクター細胞を含む医薬組成物を、範囲内の全整数値を含み、10
4〜10
9細胞/kg体重、いくつかの例においては10
5〜10
6細胞/kg体重の投与量で投与できると一般的に述べ得る。免疫エフェクター細胞組成物はまた、これらの投与量で複数回投与し得る。細胞を、免疫療法において通常知られる注入法を使用して投与できる(例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988参照)。
【0573】
ある面において、対象に活性化免疫エフェクター細胞を投与し、その後再び採血(またはアフェレシス実施)し、そこからの細胞を本発明に従い活性化し、患者にこれらの活性化および増殖させた細胞を再注入することが望ましいことがある。この過程は数週毎に複数回実施できる。ある面において、細胞は、10cc〜400ccの採血した血液から活性化できる。ある面において、細胞を、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90ccまたは100ccの採血した血液から活性化する。
【0574】
対象組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、移植または移植を含む、任意の好都合な方法で実施できる。ここに記載する組成物を、患者に経動脈、皮下、皮内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射によりまたは腹腔内に投与し得る。一つの面において、本発明のT細胞組成物を、皮内または皮下注射により患者に投与する。一つの面において、本発明の免疫エフェクター細胞組成物をi.v.注射により投与する。免疫エフェクター細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節または感染の部位に直接投与し得る。
【0575】
特に代表的な面において、対象は、白血球を回収し、エクスビボで富化または枯渇させて所望の細胞、例えば、T細胞を選択および/または単離する、白血球除去を受けてよい。これらのT細胞単離物を、当分野で知られる方法で増殖させ、本発明のCAR構築物の1個以上が導入でき、それにより本発明のCAR T細胞が産生されるように処置する。処置を必要とする対象は、その後、高用量化学療法剤と続く末梢血幹細胞移植の標準処置に付され得る。ある面において、移植後または同時に、対象は、拡大させた本発明のCAR T細胞の注入を受ける。さらなる面において、拡大させた細胞を手術の前または後に投与する。
【0576】
患者に投与すべき上記処置剤の投与量は、処置する状態の厳密な性質および処置のレシピエントにより変わる。ヒト投与のための投与量のスケーリングは、当分野の慣例に従い実施できる。CAMPATHの用量は、例えば、一般に成人患者に対して1〜約100mgの範囲であり、通常1〜30日の期間、連日投与する。好ましい1日用量は1日あたり1〜10mgであるが、いくつかの例においては1日あたり最大40mgの高用量を使用し得る(米国特許6,120,766号に記載)。
【0577】
一つの態様において、CARを、例えば、インビトロ転写を使用して免疫エフェクター細胞に導入し、対象(例えば、ヒト)は本発明のCAR発現細胞の最初の投与と、本発明のCAR発現細胞の続く1回以上の投与を受け、ここで、続く1回以上の投与は、前回の投与の後15日、例えば、14日、13日、12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日または2日以内に投与する。一つの態様において、本発明のCAR発現細胞の1回を超える投与を、1週間あたりに対象(例えば、ヒト)に投与し、例えば、1週あたり本発明のCAR発現細胞の2回、3回または4回投与量を投与する。一つの態様において、対象(例えば、ヒト対象)は、1週間あたりCAR発現細胞の1回を超える投与(例えば、1週間あたり2回、3回または4回の投与)(ここではサイクルとも称す)を受け、その後1週間はCAR発現細胞投与を投与せず、続いてCAR発現細胞の1回以上のさらなる投与(例えば、1週間あたりCAR発現細胞の1回を超える投与)を対象に投与する。他の態様において、対象(例えば、ヒト対象)はCAR発現細胞の1回を超えるサイクルを受け、各サイクル間の時間は10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日または3日より短い。一つの態様において、CAR発現細胞を、1週間あたり3回隔日で投与する。一つの態様において、本発明のCAR発現細胞を少なくとも2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間またはそれ以上投与する。
【0578】
一つの面において、メソテリンCAR発現細胞を、レンチウイルスのようなレンチウイルスウイルスベクターを使用して産生する。この方法で産生したCAR発現細胞は、安定なCAR発現を有する。
【0579】
一つの面において、CAR発現細胞は、形質導入後、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、CARベクターを一過性に発現する。CARの一過性発現は、RNA CARベクター送達により実施できる。一つの面において、CAR RNAを、エレクトロポレーションによりT細胞に形質導入する。
【0580】
一つの態様において、用量および/または投薬スケジュールは、
図6に提供するものである。
【0581】
一過性に発現するCAR発現細胞(特にCAR発現細胞担持マウスscFvを伴う)を使用して処置される患者で起こり得る可能性のある問題は、複数処置後のアナフィラキシーである。
【0582】
理論に縛られないが、このようなアナフィラキシー応答は、液性抗CAR応答を発症する患者、すなわち、抗IgEアイソタイプを有する抗CAR抗体が原因であるはずだと考えられている。抗原への暴露に10〜14日間中断があるとき、患者の抗体産生細胞がIgGアイソタイプ(アナフィラキシーを起こさない)からIgEアイソタイプへのクラススイッチを起こすと考えられる。
【0583】
患者が一過性CAR治療(例えばRNA形質導入により産生されるもの)の経過中に抗CAR抗体応答を産生するリスクが高いならば、CAR発現細胞注入中断は10〜14日間継続してはならない。
【0584】
ヒト(マウスの代わり)scFvを有するCARで、抗CAR応答を有する患者の可能性および強度を軽減できる。
【実施例】
【0605】
本発明を、次の実験的実施例を参照してさらに詳細に記載する。これらの実施例は、説明のみを目的とするものであり、特に断らない限り限定的と解釈してはならない。それゆえに、本発明は、次の実施例に限定されると決して解釈してはならず、むしろ、ここに記載する教示の結果として明らかとなるありとあらゆる多様性を包含すると解釈すべきである。
【0606】
実施例1:CAR構築物産生
最終CAR構築物に使用するScFvは、ヒトscFvライブラリーのパニングから導いた。
ヒトscFvフラグメントのアミノ酸配列を上の表2に提供し、ヒトscFvフラグメントの核酸配列を上の表3に提供する。完全CAR構築物を、完全CAR構築物を産生するために、表2のscFvフラグメントと、下記配列番号1〜2、6〜7、9〜10、12〜13、17〜18、20〜21および36〜37のさらなる配列を組み合わせて使用して産生した。
・リーダー(アミノ酸配列)(配列番号1)
【化18】
・リーダー(核酸配列)(配列番号12)
【化19】
・CD8ヒンジ(アミノ酸配列)(配列番号2)
【化20】
・CD8ヒンジ(核酸配列)(配列番号13)
【化21】
・CD8膜貫通型(アミノ酸配列)(配列番号6)
【化22】
・CD8膜貫通型(核酸配列)(配列番号17)
【化23】
・4−1BB細胞内ドメイン(アミノ酸配列)(配列番号7)
【化24】
・4−1BB細胞内ドメイン(核酸配列)(配列番号18)
【化25】
・CD3ゼータドメイン(アミノ酸配列)(配列番号9)
【化26】
・CD3ゼータ(核酸配列)(配列番号20)
【化27】
・CD3ゼータドメイン(アミノ酸配列;NCBI参照配列NM_000734.3)(配列番号10)
【化28】
・CD3ゼータ(核酸配列;NCBI参照配列NM_000734.3)(配列番号21)
【化29】
・IgG4ヒンジ(アミノ酸配列)(配列番号36)
【化30】
・IgG4ヒンジ(ヌクレオチド配列)(配列番号37)
【化31】
これらのクローンは全てCD3ゼータ鎖由来の共刺激ドメインのシグナルドメインにQ/K残基変化を含んだ。
【0607】
次いで、CAR scFvフラグメントを、単一コードフレームで完全長CAR構築物を行動するためにレンチウイルスベクターにクローン化し、発現のためにEF1アルファプロモーターを使用した(配列番号11)。
EF1アルファプロモーター
【化32】
Gly/Ser(配列番号25)
【化33】
Gly/Ser(配列番号26):この配列は、1〜6“Gly Gly Gly Gly Ser”反復単位を含み得る
【化34】
Gly/Ser(配列番号27)
【化35】
Gly/Ser(配列番号28)
【化36】
Gly/Ser(配列番号29)
【化37】
ポリA(配列番号30)
この配列は50〜5000アデニンを含み得る。
【化38】
【0608】
ポリA(配列番号31)
【化39】
ポリA(配列番号32)
この配列は50〜5000チミンを含み得る。
【化40】
【化41】
【0609】
ポリA(配列番号33)
この配列は100〜5000アデニンを含み得る。
【化42】
【0610】
ポリA(配列番号34)
【化43】
ポリA(配列番号35)
【化44】
Gly/Ser(配列番号38):この配列は1〜10“Gly Gly Gly Ser”反復単位を含み得る
【化45】
【0611】
実施例2:CAR治療のためのヒト抗メソテリンscFv構築物の発現および特徴づけ
さらなる解析、例えば、マススペクトロメトリー解析、サイズ排除クロマトグラフィーおよび表面プラズモン共鳴法(SPR)を実施して、ヒト抗メソテリンscFv構築物を特徴づけした。メソテリンの細胞外ドメインに対する結合親和性およびエピトープ結合(SS1エピトープと比較)をSPRにより決定した。このアッセイおよびこの解析からの結果を下に記載する。
【0612】
scFv候補およびビオチニル化ヒトメソテリンの発現
ファージパニングにより同定されたヒト抗メソテリンscFvの結合および生物物理学的特徴を評価するために、scFv構築物をヒトメソテリン細胞外ドメイン(ヒトMSLN ECD)と共にHEK293F細胞で一過性に産生させ、精製した。マウス抗メソテリンscFvであるSS1 scFvも対照として産生した。試験したヒト抗メソテリンscFvは、M5、M11、M12、M14、M16、M17、M21およびM23であった(表14参照)。M5(配列番号43)、M11(配列番号49)、M12(配列番号50)、M14(配列番号52)、M16(配列番号54)、M17(配列番号55)、M21(配列番号59)、M23(配列番号61)およびSS1(配列番号275)のscFv構築物およびヒトMSLN ECD(配列番号276)のアミノ酸をコードするプラスミドを外的に合成した。ScFvを、構築物のC末端に7×または8×Hisタグを有して産生した。ヒトscFv構築物(M5、M11、M12、M14、M16、M17、M21およびM23)は、scFvのC末端を、8×HisタグのN末端に結合させる配列GSを含む短リンカー配列、例えば、
【化46】
(配列番号277)を有した。ヒトメソテリンECDを、インビトロでAvidity, LLCからのBirA酵素で選択的にビオチニル化される部位であった、C末端Aviタグ(配列番号276)と共に産生した。HEK293F細胞での一過性発現および精製を、標準法により実施した。scFvについて、簡単にいうと、3×10
6細胞/mlの100mlのHEK293F細胞を、100μgプラスミドおよび300μgポリエチレンイミンを用いて遺伝子導入した。細胞を、37℃で8%CO
2で、80rpmで回転させてインキュベートした。6日後、細胞を、3500gで20分の遠心分離により収集した。ScFvを、200μl Ni−NTAアガロースビーズ(Qiagen)に一夜4℃で結合させることにより上清を精製した。タンパク質を200μl 300mMイミダゾールで溶出し、リン酸緩衝化食塩水に対して透析した。
【0613】
Hisタグを有するSS1 scFvの配列を下に提供する
【化47】
【0614】
C末端Aviタグを有するヒトメソテリンECDの配列を下に提供する。
【化48】
【0615】
マススペクトロメトリー解析
同一性を確認するために、精製scFvを、マススペクトロメトリーと連結した高速液体クロマトグラフィー(HPLC−MS)で解析した。各1μgを60℃に加熱したPoros R1/10 2.1mm×100mmカラム(Life Technologies)に注入した。Waters BioAcquity UPLCで分離を行った。移動相Aは0.1%ギ酸であり、移動相Bは25%アセトニトリル中0.1%ギ酸、75%イソプロパノールであった。scFvを、15分で25〜50%移動相Bの勾配を使用して0.5mL/分で溶出させた。マススペクトロメトリー検出を、20〜50Vのコーン電圧傾斜で600〜4000m/zをスキャンするエレクトロスプレー陽イオンモードで操作するWaters Xevo-Tof装置で行った。得られたマススペクトルをピーク幅にわたり平均化し、WatersからのMaxEnt1アルゴリズムを使用してデコンボリューション処理して、発現scFvの質量を決定した。
【0616】
サイズ排除クロマトグラフィー解析
サイズ排除クロマトグラフィーを、発現scFvのオリゴマー化状態を決定するために実施した。各25μgを35℃に加熱したTSKGel Super SW3000 4.6mm×300mmカラム(Tosoh Bioscience)に注入した。scFvを、750mMアルギニン、1mM EDTA、20mM リン酸ナトリウム、250mM 塩化ナトリウム、pH7.2中、0.3mL/分で溶出し、UV吸光度を280nmでモニターした。
【0617】
表面プラズモン共鳴法(SPR)
精製scFvの結合親和性を、Biacore T200系で測定した。簡単にいうと、組み換えヒトビオチニル化メソテリンECDを、150RU密度でストレプトアビジン(SA)センサーチップ表面に固定化した。精製scFvを、定常流速下のチップ上に、3倍連続希釈で注入した。タンパク質複合体の会合速度および解離速度を、それぞれ270秒および400秒モニターした。二重参照をブランク固定化流動細胞および緩衝液ブランクに対して実施した。親和性を、可能であればLangmuir 1:1結合モデルで決定し、速いオン・オフ速度のために正確なフィッティングが不可能であるscFVsについて、定常モデルを使用した。
【0618】
SS1の比較におけるscFvの各々の相対的結合エピトープを決定するために、50nM SS1を、180秒の接触時間でストレプトアビジンセンサーチップ上に固定化したビオチニル化メソテリンECDにより捕獲し、70RUの相対密度を得た。100nMの精製scFv(M5、M11、M12、M14、M16、M17、M21またはM23)を、SS1/メソテリン複合体の解離を最小とするために直後にチップ上に注入した。二次scFvの結合を270秒モニターした。
【0619】
結果
HPLC−MSで決定したscFvの観察された質量は、アミノ酸配列に基づく理論値と一致した。発現したscFvは、分析的サイズ排除クロマトグラフィーに基づき、43%単量体から>98%単量体の範囲であった。選択したscFvは、メソテリンECDに対して0.1nMの見かけの親和性を有したSS1対照scFVと比較して、0.9nMから114nMの広い範囲の親和性の示した(表14)。SS1、M5およびM11の代表的SPRセンサーグラムを、それぞれ
図41A、BおよびCに示す。
【0620】
相対的エピトープビニング(
図42)は、M12、M14、M16、M17、M21、M23がヒトメソテリンに対してSS1の競合的結合剤であるが、M5およびM11は、アッセイでその注入により応答が増加したことから判断して、独特なエピトープに結合すると考えられる。
【0621】
【表43】
1高凝集体含量/低%単量体は、潜在的アビディティー効果により、あまり正確でない親和性決定となり得る。
2親和性は、可能であれば1:1結合モデルで決定し、速いオン・オフ速度のために正確なフィッティングが不可能であるscFvについて、定常モデルを使用した。
3測定せず、低濃度は、単量体%の正確な決定を不可能にした。
【0622】
実施例3:CARTを担持するヒトscFvの解析およびインビトロ活性
抗MSLN抗体の単一鎖可変フラグメントを、CD3ゼータ鎖および4−1BB共刺激分子と共にレンチウイルスCAR発現ベクターにクローン化し、最適構築物を、MSLN発現(“MSLN
+”)標的に対する応答におけるMSLN CAR形質導入T細胞(“CART−MSLN”または“CART−MSLN T細胞”)のエフェクターT細胞応答の質および量に基づき選択する。エフェクターT細胞応答は、細胞拡大、増殖、倍増、サイトカイン産生および標的細胞致死または細胞溶解性活性(脱顆粒)を含むが、これらに限定されない。
【0623】
CART−MSLNの産生
ヒトscFvコード化レンチウイルス導入ベクターを、VSVg偽型レンチウイルス粒子に包装されたゲノム物質の産生に使用する。レンチウイルス導入ベクターDNAを、リポフェクタミン試薬と組み合わせたVSVg、gag/polおよびrevの3個のパッケージング成分と混合し、これらをLenti−X 293T細胞(Clontech)に一緒に遺伝子導入した。
【0624】
30時間後、培地を回収し、濾過し、−80℃で保存した。治療用CART−MSLNを、ナイーブT細胞を、T細胞、CD4
+およびCD8
+リンパ球の陰性選択により得る、正常アフェレシスドナーからの血液から出発して産生する。これらの細胞を、1:3比のCD3×28ビーズ(Dynabeads(登録商標)Human T-Expander CD3/CD28, Invitrogen)により、RPMI1640、10%熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)、2mM L−グルタミン、1×ペニシリン/ストレプトマイシン、100μM 非必須アミノ酸、1mM ピルビン酸Na、10mM Hepesおよび55μM 2−メルカプトエタノール中、37℃、5%CO
2で活性化した
。T細胞を、24ウェルプレートのウェルあたり、0.5mL培地中1×10
6 T細胞で培養した。24時間後、T細胞をブラスティングし、0.5mLの非濃縮ウイルス上清または少ない体積の濃縮ウイルス上清を添加する。T細胞は、対数増殖パターンで分裂し始め、これを、1mLあたりの細胞数の測定によりモニターし、T細胞を2日毎に新鮮培地で希釈する。T細胞が約10日後に休み始めるため、対数増殖は衰退する。増殖速度の減速と、約300flに近づくT細胞サイズの組み合わせにより、T細胞の状態が、その後の解析のために凍結保存すべきであると決定する。
【0625】
凍結保存前に、形質導入された(細胞表面にメソテリン特異的CAR発現)細胞のパーセンテージおよびその発現の相対的蛍光強度を、FACS-CantoIIまたはFACS Fortessaでのフローサイトメトリー解析により決定した。そのFACSからの相対的蛍光強度のヒストグラムプロットの比較は、形質導入されたT細胞のパーセンテージを示した。ウイルス形質導入は、形質導入された細胞のパーセントである形質導入効率と相関する同等な発現レベルを示す。結果は、非形質導入T細胞(“UTD”)およびSS1 CART−MSLNと比較したとき、正常に増殖する細胞の能力に対して、CAR−MSLN担持ヒトscFvには検出可能な負の作用がないことを示す。
【0626】
CART−MSLN再指向T細胞の細胞溶解性活性およびサイトカイン分泌の評価
CART−MSLN T細胞が細胞を殺し、サイトカインを分泌する機能的能力を評価するために、細胞を解凍し、一夜回復させた。ヒトscFv担持CART−MSLNに加えて、マウスscFvを担持するCART−MSLN“SS1”(WO2013/040577号参照)を対照として使用した。対照SS1 scFV担持CART−MSLN(SS1 CART−MSLNとも称す)を、アッセイのばらつきを比較するためおよび/または対照として働かせるために、全アッセイで使用した。SS1 scFV担持CAR T細胞、ならびに全ての他のヒトscFv担持MSLN−CARTをリサーチグレード(すなわち、臨床グレードではない)製造条件で産生した。CD19−BBzまたはIso1−BBzを、背景CART効果のための非ターゲティングCARとして使用した。
【0627】
T細胞致死は、慢性骨髄性白血病細胞株であるK562に向けた。K652 MSLN
+(K562−メソ)細胞を形質導入により産生した。非MSLN発現K5652を対照として使用した。フローベースの細胞毒性アッセイのために、標的細胞をカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CSFE)で染色し、その存在を定量する。CART−MSLNの細胞溶解性活性を、10:1、3:1および1:1のエフェクター:標的細胞比のタイトレーションで測定し、ここで、エフェクターは、抗MSLNキメラ受容体を発現するT細胞として定義された。適切な数のT細胞と、一定数の標的細胞の混合によりアッセイを開始した。20時間後、プレートを遠心分離し、各混合物の総量を除いた。各ウェルに残った細胞ペレットを洗浄し、細胞を生存/死マーカー7AADで染色した。最終洗浄後、ペレット化細胞を予定した数のカウントビーズと共に特定の体積に再懸濁した。細胞染色データをCantoIIフローサイトメトリーで採取し、結果を定量化するためのビーズを使用してFloJoソフトウェアで解析した。
【0628】
CSFE標識K562(
図3A、非発現MSLN対照)およびK562−メソ(
図3B、MSLNを発現させるために形質導入したK562細胞)を標的とするエフェクターCART−MSLN細胞を用いるエフェクター対標的(E:T)比のタイトレーションを使用する20時間フローベースの致死アッセイのプロット。これらの致死曲線を比較して、エフェクター細胞の量のタイトレーションは、これらのMSLN発現細胞が破壊されることを示す。同じドナーに由来し、ヒトscFv担持CAR−MSLN細胞またはSS1 CAR−MSLN細胞で形質導入したT細胞は、MSLN
+標的を選択的に死滅させることができた。全てのCART−MSLN細胞の細胞溶解性活性は類似し、マウスSS1 CART−MSLNと同等である。全てのCART−MSLN細胞が、形質導入によりメソテリン反応性となり、高レベルのメソテリンを発現する標的細胞を死滅させる能力を獲得することを示す。ヒトscFv担持CART−MSLNのサイトカイン産生を測定するために、細胞を解凍し、一夜回復させた。ヒト化CART−MSLNに加えて、SS1 CART−MSLN(マウスscFv)を比較目的で使用した。CD19−BBz CARTを、背景CAR T細胞効果のための非ターゲティング対照として使用した。アッセイのばらつきを比較するために、SS1 CART−MSLNを全アッセイで使用した。T細胞は、慢性骨髄性白血病細胞株であるK562(MSLN
+およびMSLNの両者)、MLSN発現卵巣癌細胞株Ovcar8および膵臓癌株SW1990およびPanc0203を指向した。フローサイトメトリーによりMSLN発現を解析するとき、MSLN
+ K562細胞と比較して、Ovcar8でのMSLN発現が10倍低く、SW1990の発現がOvcar8より10倍低いことを検出した。Panc0203上のMSLN発現はフローサイトメトリーで検出不可能であったが、RNA解析では陽性であった。さらに、PMA/イオノマイシンを使用して、T細胞が内在性免疫学的シグナルに応答する能力を評価した。このアッセイは、1:1のエフェクター:標的比のみ試験する。このアッセイを、ヒトサイトカイン検出用IFN−γ CBA−Flexキットを使用するサイトカイン解析のために培地を除くときである、細胞の混合後24時間実行する。
【0629】
MSLNを発現しない対照K562細胞に曝した後にCART−MSLN細胞から産生されるサイトカインの背景レベルを解析した。PMA/イオノマイシンでのT細胞刺激による潜在的サイトカイン分泌は、該細胞集団がサイトカインを分泌する能力に多少可変性があることを示す。最大放出(PMA/イオノマイシン)に対して特定のIFN−γ放出を標準化することにより差異に対処した。
【0630】
データは、MSLNを過発現するK562と培養したとき、大部分のヒトscFv担持CART−MSLNおよびマウスSS1 CART−MSLNがIFN−γを産生したことを示す。MSLNを(低レベルで)内因性に発現する癌細胞と培養したとき、数個のCARTしか応答しなかったが(M5、11、14、15、16、17およびSS1)、CART M5およびM11の2個は優れたIFN−γレベルを示した。低い内在性MSLNレベルは、腫瘍細胞上の自然に発現されるメソテリンのレベルを良好に反映しているはずであるため、これらのscFVを有するCARTは、SS1構築物を有するCARTより増強された治療応答を有するはずでる。
【0631】
実施例4:レンチウイルス産生CARTの臨床試験
重篤な上皮性卵巣癌、悪性胸膜中皮腫または膵臓癌のようなメソテリンを発現する癌を有するものから患者を選択する。
【0632】
CART−MSLN細胞の製造および放出試験は、University of PennsylvaniaのClinical Cell and Vaccine Production(CVPF)により実施する。CART−MSLN産物は、患者のアフェレシス産物から製造する。
【0633】
約10リットルアフェレシス手順を、University of Pennsylvania Apheresis centerで実施する(最初のCAR T細胞投与4週間前)。患者からのPBMCを、この手順の間にCAR T細胞のために得る。一回白血球除去から、目的は、CAR T細胞を製造するための少なくとも5×10
9個の白血球の収集である。FDA顧視要求および治験のためのベースライン血液の白血球を得て、凍結保存する。メソテリン修飾T細胞産物は、約4週間後放出の準備ができていると予測される。
【0634】
レンチウイルス産生CARTを、各患者から単離した細胞、すなわち、自己T細胞を使用して、実施例2に記載のように製造した。各患者T細胞から製造したCART−MSLNはヒトscFv(M5およびM11を含む)またはSS1を発現する。
【0635】
細胞培養の細胞に、細胞を、バッグ内の不融性凍結保存用培地で凍結保存する。用量は、全細胞における2〜50%形質導入細胞の範囲で計算して、コホート1について1〜5×10
7 CAR T細胞、コホート2および3について1〜5×10
8 CAR形質導入細胞である。自己修飾CAR T細胞産物を含むバッグを、Hospital of University of PennsylvaniaのCVPFで、制御され、監視された冷凍庫に保存する。必要となるまで、輸液バッグを冷凍庫に保存する。
【0636】
各用量を、形質導入効率の関数である総細胞数に依存する体積で、包装し、1個の輸液バッグに凍結保存し、最少体積は、バッグあたり10mLである。各バッグは、凍結保存用培地のアリコート(体積は総細胞用量に依存)を含む。
【0637】
コホート1対象(N=3〜6)は、0日目に単一均一静脈内用量の自己1〜5×10
7 CART−MSLN細胞を受ける。コホート2対象(N=3〜6)は、0日目に単一均一静脈内用量の自己1〜5×10
8 CART−MSLN細胞を受ける。コホート1および2の対象は、CART−MSLN細胞前にリンパ球除去化学療法剤を受けていない。コホート3(N=6)は、1.5g/m
2のシクロホスファミドを静脈内投与され、2日後単一均一静脈内用量の自己1〜5×10
8 CART−MSLN細胞を受ける。
【0638】
シクロホスファミドを受けた患者が、該処置の副作用として悪心および嘔吐を経験することが予測される。悪心のための制吐予防前投薬を、施設標準に従い、化学療法剤注入前に投与してよい。特定の薬剤の選択は治験医の判断に任せるが、免疫抑制性効果のためにコルチコステロイドは使用すべきではない。
【0639】
T細胞注入後の副作用は、一時的な発熱、悪寒、硬直、筋肉痛/関節痛、頭痛、疲労および/または悪心を含み得る。対象に、アセトアミノフェン650mgを経口でおよび塩酸ジフェンヒドラミンを経口またはIVでCAR T細胞注入前に、前投薬する。ベナドリルが禁忌であるならば、ラニチジンのようなH2−ブロッカーを投与する。これらの薬物療法を必要に応じて6時間毎に繰り返してよい。患者の発熱が続くか、またはアセトアミノフェンで軽減されないならば、非ステロイド性抗炎症性薬物療法のコースを処方し得る。患者がヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン(ソルメドロール)またはデキサメサゾン(デカドロン)のような全身コルチコステロイドを受けないことが推奨される。コルチコステロイドが、急性輸液反応のために必要であるならば、ヒドロコルチゾン100mgの初期用量が推奨される。
【0640】
・1バッグのCART−MSLN細胞を、CVPFからCTRCの対象のベッドサイドまで、治験コーディネーターまたはCVPFスタッフがドライアイスに乗せて運ぶ。
・遺伝子導入T細胞は、対象のベッドサイドでCVPFスタッフのメンバーが37℃水浴で解凍する。細胞がちょうど解凍されるまで、バッグを優しく揉む。CAR T細胞産物に傷がついたか袋から漏れているか、または他に損なわれているように見えるならば、注入せず、下記のとおりCVPFに戻すべきである。
・細胞を、冷たい間に、解凍後約10〜15分以内に対象に注入する。遺伝子導入T細胞を、静脈内に、3方向コックを備えた18ゲージ無ラテックスYタイプ輸血器具(Y-type blood set)で急速に注入する。白血球を注入時濾過しない。重力注入により投与を行う。重力による注入速度が遅すぎるならば、遺伝子導入T細胞薬物産物をコックからシリンジに抜き取り、手動で必要速度で注入する。バッグに凍結凝集塊が残ってはならない。
・注入前に、2名が個々に各バッグのラベルの情報を対象の面前で確認し、情報が参加者と正しく一致していることを確認する。
・患者は、遺伝子導入T細胞注入中および注入後モニターする。体温、血圧、心拍数、呼吸数およびパルスオキシメトリを得て、投与直前および注入完了2時間後まで15分毎に記録する。
・対象がアレルギー性応答または重度の低血圧クライシスまたは注入に対する何らかの他の反応を有した際には、注入中の緊急事態のために救急医療機器(すなわち救急カート)が利用可能でなければならない。
・症状が生じず、対象のバイタルサインが注入2時間後に正常のままであれば、対象は、何か症状が出たら病院に戻るよう指示を与えて、家に帰す。バイタルサイン測定値が安定ではないならば、対象のバイタルサインが安定化するか医師が患者を解放するまで、約15分毎の所得を続ける。対象は、医師が安全と見なすまで帰してはならない。
・形質導入CAR T細胞投与完了60分(±5分)以内に、血液サンプルを、形質導入CAR T細胞数およびサイトカインレベルのベースライン決定のために得る。
・対象は、血液検査および経過観察のために、最初の注入の後24時間以内にCTRCまたはPerelman Centerに戻るよう指示される。
scFv担持CARTについて、細胞の投与を必要に応じて繰り返し得る。
【0641】
記述統計学を適用して、CART−MSLN細胞の相対的残留性および血液(および所望により腫瘍)への輸送を決定する。血液中のCAR T細胞数、HAMAレベルおよび可溶性バイオマーカーレベルのトラッキングのデータをグラフに示す。放射線画像測定値と腫瘍負荷の他の標準測定値の相関を決定する。我々は、比率および手段の95%信頼区間を計算する。
【0642】
プロトコール特異的AE報告期間の間、全患者について有害事象を集め、評価する。AEを、National Cancer Institute (NCI) Common Toxicity Criteria(v4)を使用して重症度分類する。全ての有害事象を記録し、全体的および主要なカテゴリー内両方の、有害事象率について正確な95%信頼区間を作成する。データを、過度の毒性の証拠のために連続的にモニターする。結果を表にし、要約する。
【0643】
臨床応答の割合を、正確な95%信頼区間で要約する。無進行および全体的生存および臨床応答の期間を、カプランマイヤー曲線を使用して示す。2年生存率を表す。有効性の予備的証拠を、測定可能な疾患を有する対象の腫瘍応答率のモニタリングにより決定する。腫瘍応答を、注入後28日目、3ヶ月目および6ヶ月目に放射線画像(すなわちCT造影)および血清バイオマーカーを使用して評価する。
・放射線画像応答は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST 1.1)、胸膜中皮腫用改変RECIST基準およびImmune-Related Response Criteria(iRRC)に従い測定する。
・血清バイオマーカー応答は、各疾患の標準に従い評価し、さらに全対象のSMRPを測定する。例えば、膵臓癌の対象は、CAR T細胞投与後CA19−9、CEAおよび血清メソテリン関連タンパク質[SMRP])レベルのモニタリングをする。卵巣癌の対象は、CA125の血清レベルと、またSMRPをモニターする。中皮腫の対象は、測定するSMRPの血清レベルをモニターする。全例で、CART−MSLN細胞がこれらのバイオマーカー測定に使用するアッセイに影響し得ることを考慮して、血清バイオマーカーを腫瘍応答の唯一の測定値として使用しない。
・データを、全体的応答率、無進行生存および全体的生存について記述的に解析する。
【0644】
注入後最大2年または対象が癌関連治療を開始するまで、PFSおよびOSを評価する。
サイトカインレベルの血液モニタリングを含む安全性評価を実施する。対象は連続的に参加する。注入は、各コホートにおける参加対象間で28日の安全性評価を可能とするためにずらす。
【0645】
実施例5:RNA産生CARTの臨床試験
自己T細胞を、上記のヒト4−1BBおよびCD3ゼータシグナル伝達ドメインに加えて、膜貫通型ドメインと共にメソテリンを認識する細胞外SS1 CAR構築物を発現するよう操作する。例えば、WO2013/040577号、実施例1参照。
【0646】
CAR含有核酸の産生
SS1−CARを次のとおり構築する。ヒト抗メソテリンscFvを含むCARも、類似の方法を使用して構築する。
【0647】
2個の異なるプラスミドを利用して、ss1.bbzフラグメントをクローンした。メソテリンscFvフラグメント(ss1)は、先に公開されたDr. Pastanの構築物(Chowdhury et al., 1998)から、Translational Research Program(TRP)ラボラトリーにより最初にクローン化された。ヒトCD8αヒンジおよび膜貫通型ドメインを4−1BBおよびCD3ζ配列と共に、先に記載されたpELNS.CD19-BB-ζプラスミド(Milone et al., 2009)からのPCRによりクローン化した。ヒンジ、膜貫通型および細胞内シグナル伝達ドメインの配列をここに開示する。ss1.bbzフラグメントは、pGEM.GFP.64Aベクター(Eli Gilboaにより提供され、Boczkowsk, D et al., 2000に記載)に最初にクローン化された。このベクターを、導入遺伝子発現増強のために、2個の3’UTRベータグロビン反復および150bpのポリA配列(配列番号271)(pGEM.GFP.64Aの64ポリA配列(配列番号273)を置き換え)の付加により修飾した(Holtkamp 2006)。臨床使用のためのGMP適合プラスミドを、pGEMからのss1.bbz.2bgUTR.150AフラグメントをpDriveベクターにサブクローニングすることにより導いた。pDriveクローニングベクター(Qiagen)は、UAハイブリダイゼーションによるPCR産物の高度に効率的なクローニングのために設計される。組み換えクローンのアンピシリンおよびカナマイシン両者での選択を可能とし、普遍的シークエンシングプライマー部位およびインビトロ転写のためのT7およびSP6プロモーターを搭載する。まず、ss1.bbz.2bgUTR.150Aを、Hind IIIおよびNdeI(Fill-in blunt)によりpGEMベクターから切断し、KpnIおよびNotI(Fill-in blunt)により切断したpDriveにサブクローン化した。正しい配向を有するインサートの配列を確認し、pDrive.ss1.bbz.2bgUTR.150Aを産生した。pDriveベクターのアンピシリン耐性遺伝子を、AhdIおよびBciVIの2重消化により欠失させた。CAR ORF内の内部オープンリーディングフレーム(ORF)から翻訳された潜在的異常タンパク質を除去するために、60bpサイズより大きい全内部ORFを、変異誘発PCRにより変異させ、同時にss1 CARのORFは無傷のまま残した。得られたプラスミドは、
図1に示すとおり、pD-A.ss1.bbz.OF.2bg.150Aと名づけた。
【0648】
自己T細胞への導入のためのCAR核酸の産物を、次のとおり調製した。最終pD−A.ss1.bbz.OF.2bg.150A構築物を、CVPF SOP 1188のように、OneShot TOP10 Chemically Competent大腸菌細胞(Invitrogen)に導入した。2個の1.25リットルの100μg/ml カナマイシン含有LB培地から、1バッチとして産生される10mgまでのプラスミドDNAを、SOP 1191のようにQIAfilter Plasmid Giga DNA単離キットを使用して産生した。その時点で1mgのDNAを、SpeI制限酵素で一夜、37℃で直線化した。直線化を、ゲル電気泳動で確認し、その後Qiagen Plasmid Maxiキットを使用して大規模精製した。
【0649】
mScript mRNA系を使用して、プラスミドからRNAを転写させ、RNeasy Maxiキット(Qiagen)を使用して単離した。インビトロで転写されたRNAを、1mg/mL濃度で0.5mLのアリコートで凍結保存した。RNA品質および量を、mRNA変性緩衝液(Invitrogen, Carlsbad, CA)で70℃の変性15分後に1%アガロースゲル電気泳動で解析し、UV分光光度法(OD260/280)で定量した。
【0650】
CAR T細胞産物製造
7〜12リットルアフェレシス手順を、最初のCAR T細胞投与約4週間前に実施する。PBMCを、この手順の間にCAR T細胞のために得る。一回白血球除去から、意図は、CAR T細胞を製造するための少なくとも5×10
9個の白血球の収集である。
【0651】
CD3
+ T細胞を、単回使用閉鎖系使い捨てセットを用いるCaridianBCT Elutra上の向流遠心水簸による単球の枯渇により、白血球除去産物から富化する。0日目、T細胞製造過程を、抗CD3/CD28モノクローナル抗体被覆磁気ビーズでの活性化により開始し、増殖を静的組織培養バッグで開始する。5日目、細胞を、さらなる増殖が必要であれば、WAVEバイオリアクターに移す。培養の最後に、細胞は磁気ビーズが枯渇し、洗浄し、Haemonetics Cell Saver系を使用して濃縮する。収集後細胞を、翌朝エレクトロポレーションするために一夜、37℃でインキュベーションする。細胞を洗浄し、エレクトロポレーション緩衝液(Maxcyte)に再懸濁し、Maxcyte処理アセンブリに充填する。細胞をss1 RNAとし、4時間回復させ、その後不融性凍結保存培地に製剤する。
【0652】
パッケージング
1×10
8または1×10
9±20%修飾CAR T細胞を、ウェットアイス上に維持したIV輸液バッグに仕込む。各バッグは、次の不融性グレード試薬(%v/v)を含む凍結保存用培地のアリコート(体積は用量に依存)を含む:31.25 Plasmalyte-A、31.25 デキストロース(5%)、0.45 NaCl、最大7.50 DMSO、1.00 デキストラン40および5.00 ヒト血清アルブミン。バッグを−135℃に凍結できる。
【0653】
CAR T細胞産物安定性
ss1 CAR T細胞を、エレクトロポレーション後4時間凍結保存し、解凍し、T細胞製造後3ヶ月期間内に使用する。我々は、凍結保存ss1CAR T細胞のメソテリンscFv発現が、約30日、≦−130℃で97.4%であり、凍結保存時(96.9%)とほぼ同一であり、他の凍結保存T細胞産物が少なくとも6ヶ月安定であることを証明した。トリパンブルー数に基づく解凍後生存能は、98.7%と比較して75.2%であった。発現データは、治験用に貯蔵中最終産物が安定であり、さらなる用量のためのセンチネルバイアルが、70%生存能および≧20%CAR発現の放出基準を満たすはずであることを示唆する。ss1 CAR T細胞のさらなるバイアルは、凍結保存後3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月および12ヶ月に解凍し、生存能および導入遺伝子発現を試験して、さらなる産物安定性データを作成する。
【0654】
臨床試験手順および結果:悪性胸膜中皮腫の患者に投与する自己メソテリン再指向T細胞の第I相臨床試験を次のとおり実施する。膵臓癌を有する患者の処置のための治験に類似の手順を利用できる。
【0655】
投与量
コホート1患者(n=3)は、0日目に抗メソRNA CAR T細胞の均一用量を使用した1×10
8の一回注入と、患者が7日目の注入前のプロトコール特異的安全性評価に合うならば、7日目の1×10
9 RNA CAR T細胞の1回注入を受ける。
【0656】
コホート2患者(n=6)は、2サイクルの修飾CAR T細胞を受ける。1サイクルは隔日の3回の注入からなる(月曜日、水曜日、金曜日)。サイクル1は、MWF(0日目、2日目、4日目)に投与される3用量の1×10
8 CAR T細胞からなり、サイクル2は、MWF(7日目、9日目、11日目)に投与される3用量の1×10
9 CAR T細胞からなる。
【0657】
注入あたりの目標用量は、1×10
8細胞(コホート1については1回投与およびコホート2については週1の投与)および1×10
9±20%細胞(コホート1については1回投与およびコホート2については週2の投与である)。最小限許容される用量は1×10
8である。総細胞増殖が許容される総細胞用量より低いならば、患者は、より多くの細胞を増殖し、総目標用量を満たすための2回目のアフェレシスを受け得る。2回目のアフェレシスに対する禁忌があるかまたは2回目のアフェレシスおよび増殖が最小限許容される用量を産生できなかったら、その1回分は、製造不良と考える。コホート1患者について、拡張コホート1レジメンに従う場合、できるだけ多くのメソテリンCART細胞を製造/凍結し、対象が二回目の白血球除去を受ける確率を減らす。
【0658】
1名を超える患者が修飾CAR T細胞注入によりDLTを発症するならば、用量段階的縮小が起こる。DLTの場合、我々は、用量を10倍段階的縮小する。それゆえに、10
8 CAR T細胞のサイクル1中に毒性が生じたならば、全注入(1〜6回の投与)を10
7 CAR T細胞に減少する。10
7 CAR T細胞で管理不能な毒性の場合には、治験を停止する。
【0659】
一過性に発現するCAR T細胞(特にマウスscFv担持CARTで)処置している患者で生じ得る可能性のある問題は、複数処置後のアナフィラキシーである。
【0660】
理論に縛られないが、このようなアナフィラキシー応答は、液性抗CAR応答を発症する患者、すなわち、抗IgEアイソタイプを有する抗CAR抗体が原因であるはずだと考えられている。抗原への暴露に10〜14日間中断があるとき、患者の抗体産生細胞がIgGアイソタイプ(アナフィラキシーを起こさない)からIgEアイソタイプへのクラススイッチを起こすと考えられる。それゆえに、一過性CART(例えばRNAエレクトロポレーションにより産生されるもの)について、CART注入中断は10〜14日を超えて継続しなければならない。
【0661】
さらに、ヒト(マウスの代わり)scFvを有するCARの使用は、抗CAR応答を有する患者の可能性および強度を減少する。
【0662】
治験手順
治験は、1)スクリーニング相、2)アフェレシス、CAR T細胞注入、副作用評価および任意的な腫瘍生検からなる介入相および3)フォローアップ来院からなる。
【0663】
スクリーニングおよびベースライン評価
治験医は、対象に治験プロトコールの性質およびプロトコールと関連するリスクを詳細に説明しなければならない。対象は、治験参加前にインフォームド・コンセント書類に署名し、日付を入れなければならない。インフォームド・コンセント過程および日付を対象の診療記録およびCRFに記録する。インフォームド・コンセントは、プロトコール手順実施前に得なければならない。スクリーニングに必要な手順がインフォームド・コンセント署名前に実施され、該手順がプロトコールの期限に間に合うならば、この手順をスクリーニング評価のために使用し得る。
【0664】
スクリーニング手順(適格性の決定に必要ではない)は、CAR T細胞の最初の投与6週間以内に完了する(SOEにおいて特に断らない限り)。さらなるT細胞を増殖し、目標細胞用量に到達するために2回目のアフェレシスが必要である場合、この時間枠は手順の全てをカバーしない。それゆえに、この特定の状況の場合、6〜8週間の期間がベースライン走査の実施のために許可される。
【0665】
スクリーニング手順は次のものを含む:
・ インフォームド・コンセント
・ ECOG一般状態≦1の確認
・ 製造効率の決定(最初の2患者):血液サンプルをCVPFに送り、T細胞製造実行可能性を決定する。約1週間で、CVPFは、対象PBMCが大規模CAR T細胞製造過程に適するか否かの結果を返す。結果は、さらなる治験手順の実施前に得なければならない。
・ 完全な病歴
・ バイタルサイン、身長、体重および酸素飽和度を含む身体検査
・ 併用薬物の再調査
・ 血液学(WBCと分画、RBC、Hct、Hgbおよび血小板)
・ PTおよびPTT
・ 化学(ナトリウム、カリウム、クロライド、ビカーボネート、尿素窒素、クレアチニン、グルコース、総タンパク質、アルブミン、カルシウム、アルカリホスファターゼ、総ビリルビン、ALT、AST)
・ウイルススクリーニング:HIV、HCV、HBVおよびCMVのための血清学
・ 自己抗体パネル:ANA、ESR
・ 尿検査
・ 12誘導心電図(ECG)
・ 血清βHCG妊娠(妊娠可能な女性)
・スパイロメトリーおよびDLCO
・ 造影剤使用腫瘍評価胸部CTスキャン、臨床的に指示される他の放射線評価。PET/CTは任意である。
・ プロトコール特異的病理学者による上皮性または混合型(二相性)中皮腫の病理学的確認およびメソテリンの染色。
【0666】
白血球除去
7〜12リットルアフェレシス手順を、University of Pennsylvania Apheresis centerで行う(最初のCAR T細胞投与4週間前)。PBMCを、この手順の間にCAR T細胞のために得る。一回白血球除去から、目的は、CAR T細胞を製造するための少なくとも5×10
9個の白血球の収集である。収集に失敗したら、患者は二回目の白血球除去を受ける選択肢がある。FDA顧視要求および治験のためのベースライン血液の白血球を得て、凍結保存する。メソテリン修飾T細胞産物は、約4週間後放出の準備ができていると予測される。全患者は、該手順前に標準白血球除去スクリーニングをする。
【0667】
注入前評価(治験−3日目、最初の投与前)
この安全性評価は、身体検査(例えば、バイタルサイン、体重など)、併用薬物の再調査、一般状態、化学、CBCと分画、妊娠検査(尿)、尿検査、EKG、CXRおよび血液検体研究を含む。
【0668】
CAR T細胞投与
各CAR T細胞注入前に、患者は、限定的な問題志向型PE、有害事象の再評価、ECOG一般状態、CBC、化学および尿検査を受ける。対象は、限定的な問題指向型PE、有害事象の再評価、併用薬物、ECOG一般状態、CBCおよび化学を受けるために、CAR T細胞注入(D1、D3、D8およびD10)1日後HUPに戻らなければならない。7日目、コホート1患者はまたEKGを受ける。14日目、コホート2患者もCXRおよびEKGを受ける。
【0669】
CAR T細胞を上記のとおり投与する。対象のバイタルサインの評価およびパルスオキシメトリを投与前、注入終了時およびその後2時間、15分毎におよびこれらが安定するまで行う。
【0670】
注入後評価
血中サイトカインレベルを、コホート1の患者について最初の注入1時間、4時間、1日および3日後および2回目の注入1時間、4時間、1日および3日、7日および14日後にモニターする。生着解析(フローサイトメトリーおよびRT−PCR)のための採血を、最初の注入21日後に採る。
【0671】
コホート2(および拡張コホート1)患者について、サイトカインレベルを、各注入1時間後およびSOEに従うさらなる時点でモニターする。一次安全性および生着データを、最初の(0日目)CAR T細胞投与後35日回収する。
【0672】
CAR T細胞注入1日後、循環CAR T細胞を評価するためのフローサイトメトリーおよびRT−PCRのために採血する。末梢血液サンプルを処理して、a)免疫細胞表現型および機能を評価するための末梢血単核細胞(PBMC)、b)注入CAR T細胞の短期残留性および分布を定量するためのRNAおよびc)免疫細胞サブセットおよび可溶性免疫および増殖因子の定量および評価、抗注入細胞免疫応答の評価および免疫エピトープ拡散による液性抗腫瘍免疫応答の発症の評価のためのProtoArray解析の実施のための血清を単離する。
【0673】
最後のCAR T細胞注入後、上記のとおり安全性評価のために対象を2ヶ月目および3ヶ月目(コホート1)ならびに2ヶ月目、3ヶ月目および6ヶ月目(コホート2および拡張コホート1)に評価する。
【0674】
腫瘍生検およびミニアフェレシス
コホート2および拡張コホート1に関して:腫瘍が目に見えるほど到達可能であるまたは画像誘導生検により到達可能であるならば、適格対象は直接腫瘍生検または画像誘導下の生検に付し、CAR T細胞およびメソテリン発現の存在を評価する。これは、コホート2対象についてT細胞注入14日後に計画される。総腫瘍浸潤性リンパ球およびT細胞サブセットの頻度ならびにT細胞抗腫瘍応答分子マーカーの発現を測定する。これらを、使用可能であれば保存した外科的腫瘍検体のベースライン値と比較する。対象には、腫瘍生検を拒否する選択肢も与える。腔内液も生検として提供し得る。
【0675】
ミニアフェレシス(2L)は、研究目的でおよびFDA“顧視”目的で、注入後21日目の安全性解析のためのCAR T細胞を記録するために行い得る。血液サンプルを、白血球除去の代わりに採取してよい。
【0676】
腫瘍応答評価
腫瘍応答を、コホート1について35日目および2ヶ月目ならびにコホート2(および拡張コホート1)について最後のCAR T細胞注入後35日目、2ヶ月目および6ヶ月目にまたは患者が代替MPM治療を必要とするまで評価する。腫瘍評価は、胸部について造影剤を用いるCT走査および臨床的に指示される他の方法により行う。
【0677】
上記実施例は、例えばCAR構築物M5、M11、M14、M15、M16およびM17におけるscFvを使用した、scFv CARTを担持するヒトで実施できる。
【0678】
実施例6:CART−MSLNは、固形悪性腫瘍に抗腫瘍活性を誘発する
本実施例は、進行中の臨床試験で報告された2例を示し、メソテリンを標的とするmRNA CAR T細胞(CART−MSLN)の養子移入(PBMCをメソテリンCAR構築物と共にした)は実行可能であり、正常組織に対する腫瘍外標的上毒性の明白な証拠がなく安全であることを示唆する。これらの例はまた、CART−MSLNが浸潤でき、悪性胸膜中皮腫(MPM)および膵臓癌のような固形悪性腫瘍において抗腫瘍活性を有することも証明する。
【0679】
対象17510−105はMPMを有し、CARTメソを3回注入された。対象21211−101は転移性膵臓癌(PDA)を有し、8用量のCARTメソを静脈内注入により、および2回腫瘍内注射により投与された。いずれの患者も高齢であり、登録時、広範な腫瘍負荷の進行型化学療法剤難治性癌を有した。
【0680】
CARTメソ細胞の抗腫瘍臨床活性
両者の例を、コンピュータ断層撮影(CT)造影により腫瘍応答を評価した。さらに、PDA患者は、注入の前後に陽電子放出断層撮影/コンピュータ断層撮影(PET/CT)造影による[
18F]2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース(FDG)アビディティーにより評価した(
図6)。MPM患者は、CARTメソ注入後、疾患安定であったが、しかしながら、スケジュール2のCARTメソ細胞の1回注入後、部分奏効が確認された(
図6A)。PDA患者は、3週間の静脈内CARTメソ治療後疾患が安定した。FDG PET/Ct造影により、標準化最大集積値(SUV
max)が疾患の全部位で見られた。この代謝応答を進めるために、各疾患部位の平均体積(mean volumetric product)(MVP
平均)を決定した(
図6B、6Cおよび6D)。MVP
平均の減少は、腹膜病変にのみ見られた。腹膜腫瘍負荷に対するCARTメソ細胞療法の影響をさらに理解するために、腹水をフローサイトメトリーで解析した。治療開始後+3日および+15日の腹水の解析は、メソテリンおよびc−metを共発現した腫瘍細胞の濃度の40%減少を示した。(
図6D)。全体として、これらの治験は、これらの患者における抗腫瘍効果誘発における、CARTメソ細胞注入の役割を示す。
【0681】
血清学的腫瘍マーカーも両患者で評価した。血清メソテリン関連ペプチド(SMRP)レベルおよびCA19−9レベルを、CARTメソ細胞注入の前後に測定した。MPM患者について、SMRPレベルは、スケジュール2での最初の注入後に減少し、CT造影により見られる腫瘍負荷の減少と一致した。PDA患者について、CA19−9レベルは、処置の間にゆっくり増加したが、1ヶ月間安定なままであった。CARTメソ細胞の腫瘍内注射完了後、CA19−9レベルは疾患進行に一致して上昇した。
【0682】
CARTメソ細胞のインビボ残留性および輸送
qPCRアッセイを、注入後の患者におけるCARTメソ細胞の残留性を検出および定量するために開発した。2名の患者からの末梢血、腹水および腫瘍サンプルの解析を
図7に示す。CARTメソ導入遺伝子は、両方の患者で、各注入直後に検出された。CARTメソ導入遺伝子の生分解性性質に一致して、レベルは、連日、徐々に減少することが観察された。
腫瘍組織におけるCARTメソ細胞の輸送を、いくつかの時点で腹水採取および腫瘍生検によりPDA患者で評価した。
【0683】
CARTメソ細胞注入後の液性エピトープ拡散の誘導
CARTメソ細胞が、インビボで認識に利用可能であり、原発性腫瘍細胞を溶解するならば、全身抗腫瘍免疫応答を誘発するはずであるとの仮説を試験した。ハイスループット血清学的解析を実施して、腫瘍破壊およびエピトープ拡散の結果として生じているであろうポリクローナル免疫応答の発生を検出するための抗原に応答する抗体の誘導を測定した。これらの解析は、ほぼ10,000種の非依存性ヒトタンパク質に対する処置誘発IgG応答の不偏性測定を使用して達成した。PDA患者において、100種を超えるタンパク質に対する新規抗体応答を+44日に検出した。同様に、タンパク質サブセットに対する増加した抗体応答が、MPM患者で観察された。全体として、両方の患者で見られたこれらの抗体免疫応答は、エピトープ拡散の古典的過程に交差提示される自己タンパク質の放出に至る、CAR T細胞介在腫瘍破壊に一致する。
【0684】
抗腫瘍免疫応答の誘導のための両患者の処置前後の血清を、ヒトMPMまたはPDA細胞株からの精製腫瘍関連タンパク質またはタンパク質溶解物を使用するイムノブロッティングによっても試験した。抗腫瘍免疫応答は、免疫ブロット上の新規バンドの存在または既存のバンドの強度の増加と定義された(
図9)。両方の患者で、例えば、同種腫瘍細胞株に存在するタンパク質を検出する抗体の増加のような、抗体パターン変化が処置中に見られた。これらの知見はProtoArray解析と共に、抗腫瘍液性免疫応答がCARTメソ細胞注入により誘発されたことを示唆する。
【0685】
実施例7:固形腫瘍におけるCART機能を改善するための組み合わせ処置
養子移入した腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)を使用する免疫療法は、固形腫瘍微小環境内のT細胞機能不活性化により制限される。この試験において、メソCARを発現するヒトT細胞を、大きな、確立されたヒトメソテリン発現中皮腫側腹部腫瘍を担持する免疫不全マウスに静脈内注射した。単離メソCAR T細胞(メソCART)の解析は、多因子性であるように見えるエフェクター機能の急速な喪失を示した。これらの実験結果はメソCARTの、エフェクター機能を消失させる機構の阻害剤が、インビボでメソCART処置の有効性を増強するための組み合わせ治療に有用であり得ることを示す。
【0686】
材料および方法
メソCARの産生およびレンチウイルスベクター調製。メソテリンCAR ss1を含むレンチウイルス構築物を先に記載のとおり調製した。ヒトメソテリンCAR構築物およびそれを発現するT細胞も、先に記載の方法を使用して産生できる。
【0687】
細胞株。患者の腫瘍由来のヒト中皮腫細胞株を使用した − EMP(親)。EMPは、腫瘍関連抗原(TAA)メソテリンのベースライン発現を有しなかったため、ヒトメソテリンを安定に発現するようにレンチウイルスで遺伝子導入した(形質導入細胞株をEMMESOと命名した)。細胞はまたホタルルシフェラーゼを安定に発現するように形質導入した(EMPffluc、EMMESOfflucと呼ぶ)。
【0688】
T細胞エフェクターアッセイ。エフェクターT細胞を、ホタルルシフェラーゼ発現腫瘍細胞と、種々の比で一定時間共培養した。共培養インキュベーション期間の最後に、上清を、ELISA(Biolegend #430106)によるIFNレベルのために保存し、ウェルを洗浄し、残存腫瘍細胞を1×細胞溶解緩衝液で30分溶解した。溶解物中のルシフェラーゼ活性を、GloMax Multi Detection System(Promega)上のルシフェラーゼアッセイ系を使用して解析した。結果を、腫瘍を含むが、T細胞を含まないウェルのルシフェラーゼ活性に基づき致死パーセントとして記録する。(致死%=100−((エフェクターおよび標的細胞共培養ウェルからのRLU)/(標的細胞含有ウェルからのRLU)×100))。エフェクター対標的比は、標的細胞あたりの総T細胞を示す。
【0689】
動物。全ての動物実験は、適切なInstitutional Animal Care and Use Committeeにより承認された。NOD/scid/IL−2rγ−/−(NSG)マウスを、Animal Services Unit of Wistar Institute and Children's Hospital of Philadelphiaで繁殖させた。雌マウスを、10〜16週齢で実験に使用した。
【0690】
インビボ異種移植実験。5×10
6 EMMESO腫瘍細胞を、X−Vivo培地(Lonza)およびマトリゲル(BD Biosciences)の溶液中、NSGマウスの側腹部に注射した。腫瘍が確立された後(100〜200mm
3)、マウスを、無作為に3つの静脈内(尾静脈)処置群:1)20×10
6非形質導入(NT)T細胞(Dynabeads(登録商標)活性化T細胞)、2)20×10
6メソCAR T細胞(メソCARを形質導入したDynabeads(登録商標)活性化T細胞)、3)食塩水の一つ割り当てた。カリパスを使用して腫瘍を測定し、腫瘍体積を式(π/6)*(長さ)*(幅)
2を使用して計算した。各群、10匹のマウスを含んだ。インビボ実験を3回繰り返した。
【0691】
結果
腫瘍浸潤性CARTで見られる機能低下
ヒトメソテリン発現中皮腫腫瘍細胞株EMMESOをNSGマウスの側腹部に注射し、100〜200mm
3サイズに増殖させた。その時点で、腫瘍担持マウスに2000万T細胞(メソCAR発現は約50%であった(データは示していない))を1回静脈内注射した。有意な腫瘍増殖緩徐化が14日の猶予後に見られたが(
図10)、しかしながら、我々の他の中皮腫細胞株での実験(Carpenito et al., Proc Natl Acad Sci USA, 106(9):3360-65 (2009), Zhao et al., Cancer Res, 70(22):9053-61 (2010))と異なり、腫瘍退縮または治癒が示されなかった。非形質導入T細胞の注射は、食塩水処置対照と比較して極微の抗腫瘍効果を有し(
図10)、T細胞発現メソCARで処置した動物で見られた腫瘍増殖の減少が、メソCARの結果であることが示された。
【0692】
CART処置後になぜ腫瘍退縮が観察されなかったかを理解するために、多様な解析を行った。EMMESCO腫瘍を試験し、メソCARTが多数存在することが判明したが、しかしながら、存在するT細胞は機能低下となっていた。CAR TIL上のCAR発現レベルが注射前の細胞と等しいか大きいことを考慮して(
図11Aおよび11B)、我々はその機能的活性を比較した。我々は注射40日後にEMMESO腫瘍からメソCAR TILを単離し、解析し(全試験を単離直後に開始した)、元の注射に使用し、凍らせて取っておいた同じバッチのメソCAR T細胞(“クリオメソCAR”)と比較した。これらの細胞を、解凍し、37℃/5%CO
2で18時間インキュベート後に試験した。クリオメソCAR T細胞および側腹部メソCAR TILを、培養したホタルルシフェラーゼ発現EMMESO細胞(EMMESOffluc)に20:1比で18時間添加したとき、クリオメソCAR T細胞は腫瘍細胞致死に極めて効果的であり(>95%)、一方メソCAR TILは、この同じ時間で腫瘍細胞の約10%しか死滅させなかった(
図11C、p<0.001)。
【0693】
さらなる解析は、メソCAR T細胞が抗原またはPMA/イオノマイシン暴露後にIL−2およびIFN−γのようなサイトカインを産生しないことも示した。対照的に、クリオメソCAR T細胞はサイトカインを産生した。メソCAR T細胞はまた抗CD3/CD28被覆ビーズに20分暴露した後のイムノブロッティングによるホスホERK発現の減少または不在により、シグナル伝達減少も示された。対照的に、クリオメソCAR T細胞は、ビーズに暴露後ホスホERK発現を保持した。
【0694】
ヒトメソCAR TILは増加したレベルの阻害受容体を発現する
次に、ヒトから単離した、先に機能低下的TILにおいて記載している4種の阻害受容体(IR)の発現を、i)注射に使用したクリオメソCAR T細胞、ii)EMMESOから39日目に新たに単離したメソCAR TILおよびiii)腫瘍から除去し、24時間“回復”させたメソCAR TILのフローサイトメトリーを使用して評価した(表6)。CAR TILは、高レベルの阻害受容体を発現した。これらのレベルは、一般に腫瘍微小環境から出して24時間の回復後はるかに低かった。CD4 CAR TILについて、PD−1は73%から53%になり、LAG−3は63%から3%になり、TIM3は24%から1%になった。2B4発現は高く、休息後増加を続けた(67%から88%)。CD8 CAR TILについて、PD−1は26%から21%になり、LAG−3は48%から13%になり、TIM3は56%から1%になった。2B4発現は高く、休息後増加を続けた(96%から98%)。
【表44】
【0695】
これらのIRの3個をまたEMMESOマウスの脾臓から単離できたヒトT細胞でも評価した。興味深いことに、PD−1、TIM3およびLAG3の発現レベルは全てTILと比較して脾臓T細胞で低く(表7)、IRの上方制御における腫瘍微小環境の重要な役割を支持する。
【表45】
【0696】
ヒトメソCAR TILは増加したレベルの細胞内阻害酵素を発現する
TIL機能不全と結び付けられている2個のT細胞機能の内因性阻害剤であるSHP−1およびDGKの発現レベルを、イムノブロッティングを使用して試験した(
図12)。DGKの両アイソフォーム(アルファおよびゼータ)ならびにSHP1のリン酸化形態(pSHP1)のレベルは、一夜休ませたTILと比較して、EMMESO側腹部腫瘍から新たに単離したメソCAR TILで有意に増加した。これはまたフローサイトメトリーを使用してDGKでも確認され、新鮮EMMESO TILの23%がDGKを発現した。発現は一夜休息後検出不可能であった。
【0697】
ヒトメソCAR T細胞における阻害剤の遮断はそのエクスビボ致死機能を亢進する
これらの発現データを考慮して、メソCAR TILにおける特異的阻害経路の潜在的機能的重要性を、エクスビボ致死およびサイトカイン放出アッセイの間、利用可能な遮断剤を導入することにより試験した。抗PDL1抗体の添加は、メソCAR TILによる致死活性およびIFNを分泌する能力を有意に回復させた(
図13Aおよび13B)。相対的に高用量の10μg/ml抗PDL1抗体は、癌免疫療法に対する先に公開された研究に基づいた。I型またはII型いずれかのDGK阻害剤の添加は、致死能を有意に増加させたが(
図13C)、腫瘍誘発IFN分泌の有意な増加はなかった(
図13D)。SHP1阻害剤であるスチボグルコン酸ナトリウム(SSG)の添加はクリオメソCAR T細胞の致死能をわずかに阻害したが、メソCAR TILの致死能は有意に増加し(
図13E)、同様にメソCAR TILの腫瘍誘発IFN分泌も有意に増加した(
図13F)。用量応答曲線をDGK阻害剤およびSSGに対して行い、直接腫瘍細胞死を誘発しなかった最高用量を使用した。
【0698】
まとめて、これらの実験からの結果は、CARTインビボの機能低下が可逆性であることを示す。具体的に、CART機能を低下させる阻害機構の調節はエフェクター機能を増加でき、それゆえに、治療有効性を高め得る。PD−1、LAG3およびTIM3のような阻害剤受容体の阻害剤は、有効性を高めるためにCARTとの組み合わせ治療に有用であり得る。
【0699】
実施例8:ヒトメソCARの特徴づけ
ヒトCART−MSLNの産生
正常対象からのPBMCを、血液サンプルから単離した。PBMCを、ここに記載するヒトメソテリンCARを含むレンチウイルス構築物で形質導入した。CART−MSLNを産生するための細胞の形質導入および培養は、先の実施例に記載する。産生したCARTは、M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14、M15、M16、M17、M18、M19、M20、M21、M22、M23およびM24を含むscFv構築物を伴うメソテリンCARSを発現した。CAR−ss1を発現するCART(マウス抗メソテリンscFv)(陽性対照用)および抗CD19 CART(陰性対照用)を含む、対照CARTも産生した。
【0700】
サイトカインアッセイ
腫瘍細胞で刺激後のサイトカイン産生を評価した。M5、M11、M17、M21、ss1およびCAR19を発現するCARTを、異なる腫瘍細胞株と1:1エフェクター対標的比で混合し、50,000細胞/ウェルで播種した。腫瘍細胞株はK562−メソ(CML細胞株発現メソテリン)、Ovcar3(卵巣癌)、Ovcar8(卵巣癌)およびSW1990(膵臓腺癌)であった。24時間後、CBA解析を実施して、サイトカイン発現および/またはIFN−γ、TNF、IL−2およびIL−4の分泌を決定した。
【0701】
図15Aに示すとおり、CART−MSLN21(M21)は、K562−メソにより最強の活性化に到った。CART−MSLN5およびCART−MSLN11は、SW1990により刺激されて、IFN−γを産生した。IL−2の産生/分泌は、試験したCART−MSLNに類似した(
図15C)。
図15Dに示すように、IL−4の産生はほとんどなかった。他の試験も、IL−10のごくわずかな産生を示した。
【0702】
致死アッセイ
CART−MSLNが腫瘍細胞を標的とし、死滅させる能力を、インビトロでも評価した。ルシフェラーゼレポーターを発現する腫瘍細胞株を用いるルシフェラーゼベースのアッセイを使用した。標的細胞(腫瘍細胞)を、20,000標的/ウェルで播種した。CART−MSLNを、10:1、5:1、2.5:1および1:1の種々のエフェクター:標的比で添加した。細胞を20時間培養し、各ウェルの発光を検出して、標的細胞死滅のパーセンテージを決定した。ルシフェラーゼ発現Ovcar3(卵巣癌)およびU87mg(神経膠芽腫)細胞株を標的細胞として使用した。
【0703】
図16Aに示すように、M5、M11、M17およびss1を発現するCARTは、標的腫瘍細胞の死滅に同様に良好に働いた。CART−MSLN21で致死は観察されなかった。対照的に、神経膠芽腫細胞でCART構築物のいずれでも致死は観察されなかった(
図16B)。同様の結果が一団のヒトメソCARで得られ、ここで、M11、M5、M17およびSS1でのOvcar3細胞の特異的致死が最大であった(
図17Aおよび17B)。
【0704】
インビボマウスモデル
CART−MSLNの抗腫瘍活性を、Ovcar8異種移植モデルでインビボで評価した。10×10
6 Ovcar8細胞を、0日目にNSGマウスに皮下にインプラントした。14日目、100μl用量の2×10
6 CAR T細胞(M5、M11、M17、M21、SS1およびCD19を発現するCARTまたは非形質導入細胞;10×10
6総T細胞)を静脈内投与した。マウスおよび腫瘍を、腫瘍細胞移植後約40日モニターした。
【0705】
この実験の結果は、M5およびM11を発現するCARTが、このモデルで最強の抗腫瘍活性を発揮することを示す(
図18)。モック処置群と比較したとき、M5およびM11処置マウスは、統計的に有意な腫瘍減少を示した(p<0.05)。
【0706】
二回目のインビボ異種移植を実施して、第二セットのCART−MSLN細胞の抗腫瘍活性を評価した。10×10
6 OVCAR8−mcherry細胞をNSGマウスに注入した。腫瘍が150〜250mm
2になったら、マウスを処置群に無作為化した。M12、M14、M16、M23、ss1、CD19を発現するCARTまたは未処置細胞を、100μlで10×10
6 T細胞用量で注射した。T細胞の約40%がCARを発現し、それゆえにこの投与した用量で、約4×10
6 CAR T細胞が各動物に送達された。この実験の結果は、ヒト抗MSLN(M12、M14、M16およびM23)を発現するCARTが腫瘍増殖に効果がなかったことを示す(
図19)。これらの結果を最初のセットのCART−MSLN評価の結果とまとめて、M5およびM11が試験した他のCART−MSLNと比較して特異的抗腫瘍活性を有し、それにより癌治療に関してそれらをさらに研究する有望さを証明した。さらに、CART−SS1は、最初の異種移植または2回目の異種移植実験で抗腫瘍活性を何ら示さず、さらにM5およびM11含有CART−MSLNが腫瘍増殖の減少にさらに有効であることを示す。
【0707】
実施例9:DGK阻害はCART有効性を増強する
先の試験、例えば、実施例6に述べた実験は、CAR T細胞がインビボで(例えば、腫瘍微小環境において)時間とともに有効性を失うことを示唆した。具体的に、腫瘍マウスモデルに注射されたメソCAR T細胞を、T細胞注入後腫瘍から単離し(例えば、39日後、以後、腫瘍浸潤性リンパ球、TILと呼ぶ)、新たに解凍したメソCAR T細胞と比較したその機能的活性を評価した。結果は、エクスビボ致死アッセイおよびIFN−γ放出アッセイにおいて、腫瘍から単離したメソCAR T細胞が、抗原またはCD3/CD28刺激に応答して腫瘍細胞を殺す能力の低下(
図20A)、IFN−γ産生の減少(
図20B)、かつERKシグナル伝達の減少(ウェスタンブロット解析におけるリン酸化で示す、
図20C)を有することが示され、T細胞活性化の減少が示された。
【0708】
インビボでのCAR T細胞活性の経時的減少を恐らく説明する阻害機構は、可溶性因子(TGFb、PGE2、アデノシン、IL−10、RAGEリガンドなど)、細胞間接触(PD−1、LAG3、CTLA4、TIM3、CD160など)および内因性活性化誘発細胞内陰性フィードバック系(ジアシルグリセロールキナーゼ:αおよびζアイソフォーム、Egrs(2および3)、SHP−1、NFAT2、BLIMP−1、Itch、GRAIL、Cbl−b、Ikarosなど)を含む。T細胞活性化は、DGKのような因子を誘導できる。DGKは、次に、DAGリン酸化によるDAGシグナル伝達を阻止する。これが、T細胞活性化に至るRAS−ERK−AP1経路のDAG誘発活性化を阻止する。先の試験は、DGKαまたはDGKζ欠損マウスは、シグナル伝達増強を証明するCD4 T細胞で終わり、アネルギー誘発刺激により耐性であるように見えることを示している。
【0709】
インビトロ細胞毒性およびサイトカイン放出アッセイ
CAR T細胞有効性に対するDGK阻害の作用を試験するために、DGK遺伝子DGKα、DGKζまたは両者を欠くトランスジェニックマウスを利用した。野生型およびDGK欠損マウスからの脾臓T細胞を単離し、レトロウイルスを使用してメソCAR(SS1 BBZ)を発現するよう形質導入した。MIGR1 CARを対照として使用した。
【0710】
細胞毒性アッセイを先の実施例に記載するのに準じる方法を使用して実施した。野生型およびDGK欠損(KO)メソCAR発現細胞を、多様なエフェクター:標的比でインキュベートし、細胞毒性(標的細胞致死%)を定量した(
図21)。
図21に示すように、DGK欠失は、特に低エフェクター:標的比で、CAR T細胞のエフェクター機能を著しく増強した。
【0711】
同様に、種々のエフェクター:標的比で18時間後の標的細胞に応答したIFN−γ放出を試験した。
図22に示すように、DGK欠失は、特に低エフェクター:標的比で、メソCAR T細胞のエフェクター機能を顕著に増強することが判明した。
【0712】
野生型メソCAR T細胞と比較したDGK欠損メソCAR T細胞のウェスタンブロット解析はERKリン酸化増加を示し(
図23)、DGKの存在がERKシグナル伝達を抑制するが、DGK欠失がERKシグナル伝達の増加を起こすことを示す。DGK欠失背景でのERKシグナル伝達増加は、DGK阻害がRas−ERK−AP1経路の活性化、そしてそれゆえに、T細胞活性化を起こすことを示す。
【0713】
最近の試験で、TGF−βが、DGK欠損がT細胞効果の増強に貢献するのと同じシグナル伝達分子であるRAS/ERKシグナル伝達の妨害により、腫瘍浸潤性CD8 T細胞の機能性を調節することが示されている。DGK欠損メソCAR T細胞のTGF−βへの感受性を試験した。WTおよびDGK欠損メソCAR T細胞を、10ng/mlのTGF−β存在下または非存在下、メソテリン発現AE17腫瘍細胞と18時間インキュベートした。これらのT細胞による細胞毒性およびIFN−γ産生を測定した。
図24に示すように、TGF−βは、WT CAR T細胞において50%致死を阻害した(矢印)。しかしながら、このTGF−β誘発阻害は、DGK欠失を有するCAR T細胞では観察されず、DGK欠損細胞がTGF−β調節に感受性ではなく、TGF−βのような阻害剤刺激により抵抗性であり、これがT細胞活性の増加に寄与し得ることを示す。
【0714】
インビボでのメソCARおよびDGK阻害の治療有効性
次に、メソCAR T細胞の治療有効性を、DGK阻害または欠損の状況で試験した。AE17メソ腫瘍細胞(中皮腫細胞)をC57BL/6マウスの皮下に注射した。腫瘍が100mm
3に達したら(約1週間後)、1000万メソCAR T細胞を、尾静脈に静脈内注射した。次いで、腫瘍体積を少なくとも18日間追跡した。
【0715】
DGK欠損メソCAR T細胞は、野生型(WT)メソCARおよび未処置細胞と比較して、増強し、かつ延長した抗腫瘍活性を示した(
図25A)。具体的に、3種のDGK欠損メソCAR T細胞の各々は、注射後最大18日、WTおよび未処置細胞と比較して腫瘍増殖(体積)を阻止することが示された。DGKz欠損細胞発現メソCARも残留し、マウスにおいて野生型メソCAR T細胞より良好に増殖することが示された(
図25B)。
これらの結果は、まとめて、メソCAR T細胞処置と組み合わせたDGK阻害が、治療におけるメソCAR T細胞活性化および抗腫瘍活性を改善できることを示す。
【0716】
実施例10:Ikarosの阻害はCAR−T細胞の抗腫瘍能力を増強する
CAR T細胞療法の腫瘍な障害の一つは、ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)のようなT細胞シグナル伝達の内因性の負の制御因子の上方制御である。実施例9に記載するように、CAR T細胞は、インビボで時間とともに有効性を失うことが示されている。DGKのようなT細胞機能の負の制御因子の阻害は、CAR発現T細胞の活性および機能の増強を示した。
【0717】
T細胞機能の他の重要な負の制御因子は転写因子Ikarosである。主に近位TCRシグナル伝達に作用するDGKと異なり、Ikarosは、Sin3A、CtBPおよびHDACのようなクロマチンリモデリング複合体の動員により遺伝子発現を負に制御する亜鉛フィンガーDNA結合タンパク質である。Ikarosは、CD4
+ T細胞およびCD8
+ T細胞でサイトカイン産生および細胞溶解性機能の制御に役割を有する。
本実施例において、Ikaros発現が減少した、レトロウイルスによって形質導入したCAR T細胞の抗腫瘍有効性をインビトロおよびインビボで試験した。
【0718】
材料および方法
細胞株。マウスAE17中皮腫細胞は、Jackman et al., J Immunol. 2003;171:5051-63に記載されていた。ヒトメソテリンを、レンチウイルス形質導入によりAE17細胞に導入した。3T3Balb/C細胞をAmerican Type Culture Collectionから購入した。マウスFAP発現3T3BALB/C(3T3.FAP)細胞を、FAP−3T3親株にマウスFAPをレンチウイルス形質導入して作った。
【0719】
動物。無病原体C57BL/6マウスをCharles River Laboratories Inc.(Wilmington, MA)から購入した。Ikaros DN±マウスは、1個の野生型Ikarosアレルと、1個のDNA結合ドメインの欠失を有するIkarosアレルを含む(Winandy et al., Cell. 1995; 83:289-99)。Ikzf1±マウスは、1個の野生型Ikarosアレルと、1個のエクソン7の欠失を有するアレルを有する(Avitahl et al., Immunity. 1999; 10:333-43)。全実験で使用した動物は6〜12週齢の雌マウスであり、無病原体動物施設で飼育した。
【0720】
初代マウスTリンパ球の単離、形質導入および増殖。初代マウス脾臓T細胞を、製造業者(Miltenyi Biotec)の指示に従い、“Pan T cell Negative Selection”キットを使用して単離し、−CD3(1μg/mL)および−CD28(2μg/mL)で予めコーティングした24ウェルプレート(2mLの100U/mL IL−2添加RPMI−1640中4×10
6細胞/ウェル)で活性化した。48時間後、細胞(1×10
6細胞/ウェル)をレトロネクチン(50μg/mL;Clontech)でコーティングした24ウェルプレート中、レトロウイルス(1mL粗製ウイルス上清)と混合し、室温で45分、ブレーキをかけることなく、1200gで遠心分離した。一夜インキュベーション後、細胞を、50U/mLのIL−2でさらに48時間増殖させた。
【0721】
抗原または抗体被覆ビーズ。組み換えメソテリン細胞外ドメインタンパク質、ウシ血清アルブミン(Fisher Scientific)または抗CD3/抗CD28抗体(eBioscience)を、製造業者の指示に従いトシル活性化4.5μm Dynabeads(Invitrogen, #140-13)と化学的に架橋した。
【0722】
イムノブロッティング。抗メソテリン−CAR形質導入T細胞を、BSA、メソテリンまたは抗CD3抗体被覆ビーズのいずれか(2:1 ビーズ対T細胞比)と、5分および20分インキュベートした。次いで、総細胞溶解物を調製し、リン酸化ERK、リン酸化AKT、リン酸化IKK、リン酸化JNK、リン酸化Lck、リン酸化PKC、リン酸化PLCまたはリン酸化ZAP70について免疫ブロットした。Sigma Aldrichから購入した抗ホスホ−Lck以外の全ての抗ホスホ−タンパク質抗体を、Cell Signalingから購入した。Ikarosに対するC末端反応性ヤギ抗マウス抗体(SC-9861)およびヤギ抗マウスアクチン抗体(SC-1615)をSanta Cruzから購入した。β−アクチン発現レベルを、充填差異を標準化するために決定した。
【0723】
細胞毒性およびIFN ELISA。AE17、AE17.メソ、3T3および3T3.FAP細胞を、記載のようにルシフェラーゼで形質導入した(Moon et al., Clinical Cancer Research. 2011; 17:4719-30)。T細胞および標的細胞を、3個ずつ、記載した比で96ウェル丸底プレートで共培養した。18時間後、培養上清を、ELISA(マウスIFN、BDOpEIA)を使用するIFN解析のために回収した。形質導入T細胞の細胞毒性は、先に記載されたアッセイ(Riese et al., Cancer Res. 2013;73:3566-77)を使用する細胞溶解物からの残存ルシフェラーゼ活性の検出により決定した。
【0724】
確立された腫瘍を担持するマウスへのCAR T細胞移入。C57BL/6マウスの背部外側側腹部に2×10
6 AE17.メソ腫瘍細胞を皮下注射した。大きな確立された腫瘍(100〜150mm
3)を担持するマウスを、野生型CAR T細胞またはIkaros欠損CAR T細胞を受けるかまたは未処置のままに無作為に割り当てた(最小、群あたり5匹のマウス、各実験を少なくとも1回反復)。1×10
7 T細胞を尾静脈から注射した。腫瘍サイズを、それぞれ電子はかりおよびカリパスで測定した。
【0725】
9日目T細胞活性評価について、脾臓および腫瘍を先に記載のとおり単細胞懸濁液に加工した(Moon et al., Clinical Cancer Research. 2014; 20(16):4262-73)。脾細胞および腫瘍単細胞懸濁液を、可溶性抗CD3/CD28抗体(1.0μg/ml)またはホルボールエステル/イオノマイシン(PMA/I:30ng/ml、1μM)で、Golgi Stop(BD Biosciences、0.66μl/ml)存在下4〜6時間再刺激し、フローサイトメトリー解析用に収集した。
【0726】
フローサイトメトリーアッセイ。抗マウスIFN−γ(XMG1)、抗マウスCD25(PC61)、抗マウスIL−2(JES6-1A12)、抗マウスCD8(53-6.7)、抗マウスCD44(IM7)および抗マウスCD4(GK1.5)に対する蛍光色素結合抗体をBiolegendから購入した。固定可能、Live/Dead Aqua stain(L34957)をInvitrogenから購入した。抗マウスグランザイムB(NGZB)およびFoxP3(FJK-16s)に対する蛍光色素抗体をeBioscienceから購入した。抗マウスTNF−α(MP6-XT22)および抗マウスCD69(H1.2F3)に対する蛍光色素抗体をBD Biosciencesから購入した。細胞内サイトカイン染色について、細胞をGolgi Stop(BD Biosciences、0.66μg/ml)で4〜6時間処理した。収集後、細胞を1%パラホルムアルデヒドで30分固定し、遠沈し、FACS緩衝液で1回洗浄した。次いで細胞をBD Perm Wash(BD Biosciences)で2回洗浄し、サイトカイン抗体で45分、室温で染色した。細胞をBD Perm Washで2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。転写因子染色について、細胞を、氷上、蛍光色素標識一次抗体で20分表面染色した。FACS緩衝液で洗浄後、細胞をeBioscienceのFix/Perm緩衝液で固定した。固定後、細胞を透過処理し、APC抗マウスFoxP3で染色した。Ikaros染色について、ウサギ抗マウスIkaros(Abcam、ab26083、1:2000)を使用し、続いてeBioscience FoxP3キットで固定化および透過処理した。Ikaros抗体で染色後、細胞を染色し、PE標識抗ウサギ二次抗体(1:2000)で染色した。染色完了後、細胞をフローサイトメトリー解析のためにCyanADP(Beckman Coulter)で処理した。
【0727】
統計解析。全統計試験を、GraphPad Prismを用いて行った。2要因のANOVAを、事後検定とともに行い、
* p<0.05、
** p<0.01、
*** p<0.001および
**** p<0.0001であった。データを平均±SEMとして示す。
【0728】
結果
Ikarosレベルが減少したCAR発現T細胞におけるサイトカイン産生および細胞溶解性メディエーター放出は増強される
Ikarosが減少した細胞溶解性Tリンパ球(CTL)がインビトロおよびインビボで増加したエフェクター機能を有することを考慮して(O'Brien, et al., J Immunol. 2014;192:5118-29)、Ikaros枯渇がCART治療の有効性を改善できるか否かを試験する実験を行った。野生型C57BL/6およびC57BL/6背景のIkarosハプロ欠損マウス(Ikzf1±)から単離したT細胞を、メソテリンCARを発現するようにレトロウイルスによって形質導入した。エクスビボ活性化、形質導入およびIL−2との増殖後、フローサイトメトリーおよびウェスタンブロットにより、野生型(WT) CAR T細胞と比較して、Ikzf1±CAR T細胞は、Ikarosタンパク質の少ない発現が継続していることが確認された(
図26A)。
【0729】
Ikarosが多サイトカイン遺伝子座の転写リプレッサーであるため(Thomas et al., J Immunol. 2007; 179:7305-15; Bandyopadhyay et al., Blood. 2006; 109:2878-2886; Thomas et al., J of Biological Chemistry. 2010; 285:2545-53;およびO'Brien et al., J Immunol. 2014; 192:5118-29)、CAR T細胞によるIkarosの減少により自己分泌サイトカイン産生を生じるか、そしてIkarosハプロ欠損CAR T細胞が標的抗原に対して、そのWTカウンターパートよりも良好に応答するか否かも次に試験した。WTおよびIkzf1±CAR T細胞の両者を、BSA(対照)またはメソテリン(CAR抗原)で被覆したビーズで、2:1 ビーズ:T細胞比で6時間刺激し、フローサイトメトリーによりIFN−γ、TNF−βおよびIL−2産生能を解析した。ベースライン(BSA刺激)で、WT CAR T細胞と比較してIFN産生Ikzf1±CAR T細胞の約3倍の増加があったが(4.35%対1.4%、
図26B)、IL−2産生細胞%に有意な差はなかった(
図26D)。メソテリン被覆ビーズでの刺激後、IFN−γサイトカイン産生Ikzf1±CAR T細胞%の劇的な増加があったが(25%)、応答はWT CAR T細胞でわずかであった(7%)。TNF−α産生の増加も見られた(
図26C)。サイトカイン産生のこの増加が、種々の刺激について一般化されるのかまたはCAR抗原に限定されるのかを調べるために、WTおよびIkzf±CAR T細胞の両者をPMAおよびイオノマイシンで6時間処理した。この場合、WTカウンターパートと比較して多くのIFN−γ、TNF−βおよびIL−2サイトカイン産生細胞が、Ikzf1±CAR T細胞で観察された(
図26B〜26D)。これらのデータは、Ikarosが、T細胞またはCAR T細胞でサイトカイン産生を抑制する律速因子の一つであるとの仮説を指示する。
【0730】
重要な細胞毒性メディエーターであるグランザイムBは、CD3/CD28活性化Ikaros欠損OT−I細胞で情報制御され、これがOVA発現EL4腫瘍細胞に対する細胞溶解性活性を増加させたことが示された(O'Brien et al., J Immunol. 2014;192:5118-29)。グランザイムB産生がCARを担持するIkzf±T細胞でも増加しているはずとの仮説が立てられた。WTおよびIkzf1±CAR T細胞の両者をBSA(ベースライン)またはメソテリン(CAR抗原)被覆ビーズで、2:1 ビーズ:T細胞比で6時間刺激した。PMA/イオノマイシンを、本アッセイの陽性対照として使用した。上記データに類似して、グランザイムBレベルは、ベースラインでWT CAR T細胞よりIkzf±CAR T細胞で高かった(BSA刺激;
図26E)。メソテリン被覆ビーズまたはPMA/イオノマイシンのいずれかで刺激後、グランザイムBレベルはWTおよびIkzf±CAR T細胞の両者で増加したが、産生はIkzf±CAR T細胞ではるかに高かった(
図26E)。Ikarosが減少したCAR T細胞の脱顆粒にも差異があるか否かを決定するために、抗原刺激後のCD107a発現を評価した。野生型形質導入T細胞は、抗原再刺激後わずかなレベルのCD107a発現を有したが、しかしながら、Ikarosが減少したT細胞は増強したCD107a上方制御を示した(
図26F)。それゆえに、再刺激に応答して、Ikarosが減少したCTLは、野生型カウンターパートと比較してより多く脱顆粒し、細胞毒性メディエーターをより多く放出する。
【0731】
ドミナントネガティブアレルでのIkaros枯渇はCAR T細胞機能を増強する
Ikarosレベルが低い細胞に加えて、マウスからのIkarosの一つのドミナントネガティブアレル(IkDN)を発現するT細胞を試験した。IkDNを発現するトランスジェニックマウスのリンパ系発達は正常であるが、Ikaros DNA結合活性が90%減少した末梢T細胞を有する(Thomas et al., J Immunol. 2007; 179:7305-15;およびWinandy et al., Cell. 1995; 83:289-99)。WTおよびIkDNマウスの脾臓から単離したT細胞を、プレート結合抗CD3/CD28抗体で活性化し、メソテリンCARを形質導入し、続いてIL−2で増殖させた。IkDN CAR T細胞におけるIkarosのノックダウンがウェスタンで確認された。WTおよびIkDN CAR T細胞を、BSAまたはメソテリン被覆ビーズのいずれかで2:1 ビーズ:T細胞比で6時間再負荷し、CAR抗原に対してIFNおよびIL−2を産生する能力ならびに脱顆粒する能力を解析した。上記Ikzf1±データに類似して、ベースラインでいくぶんかの自己分泌IFN−γ産生が観察されたが(
図27A)、IL−2は観察されなかった(BSA刺激;
図27B)。CARとその標的抗原であるメソテリンとのライゲーションにより、IkDN T細胞は、WT T細胞より多くのIFN−γを産生した(メソテリン刺激;
図27A)。CD107a上方制御で測定した脱顆粒も、野生型およびIkDN CAR T細胞両者で同様であった(
図27D)。
【0732】
Ikaros枯渇は抗原刺激後のCAR T細胞の活性化およびシグナル伝達を増強しなかった
Ikarosの枯渇がCAR T細胞のサイトカイン放出を増強し、グランザイムBレベルおよびCD107a発現を増加させることを考慮して、可能性がある機構を探索した。エフェクター機能のこれらの変化が、野生型とIkzf1±形質導入T細胞の活性化の差異によるものである可能性は妥当である。それゆえに、CD69、CD25および4−1BB(T細胞活性化のマーカー)のレベルを、メソテリン被覆ビーズで6時間および24時間刺激後、フローサイトメトリーで測定した。早期活性化マーカーであるCD69は、野生型およびIkzf1±細胞の両者で同程度に上方制御された(
図28A)。長い刺激で、野生型およびIkzf1±CAR発現T細胞は同様のレベルのCD69を発現し続けたが、Ikzf1±形質導入T細胞はCD25発現の増加を示した(
図28B)。これは、T細胞活性化の差異を直接的には示さないが、しかしながら、Ikzf1±細胞によるIL−2が増加するに連れて(
図28D)、IL−2RaであるCD25のポジティブ・フィードフォワード・ループで作用し得る(Depper et al., Proc Natl Acad of Sci USA. 1985; 82:4230-4;およびNakajima et al., Immunity. 1997; 7:691-701)。TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである4−1BBも、活性化T細胞で発現され(Vinay et al., Seminars in Immunology. 1998; 10:481-9)、抗原刺激後CAR形質導入野生型およびIkzf1±T細胞で類似のレベルで発現された(
図28C)。それゆえに、我々のWTおよびIkzf1±形質導入T細胞の間の機能的差異は、T細胞活性化の差異によるものではなかった。
【0733】
実施例9およびRiese et al., Cancer Research. 2013; 73:3566-77に記載した実験は、CAR T細胞における酵素ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)の枯渇がRAS/ERKシグナル伝達の増加を起こし、これがCAR T細胞の活性化とよく相関したことを示す。CD3/CD28抗体でTCR刺激後のWTおよびIkaros欠損T細胞におけるいくつかのシグナル伝達経路を試験した。刺激T細胞からの溶解物を調製し、TCRからの近位(PLCおよびLck)および遠位(ERK1/2、JNK、AKTおよびIKKa)シグナル伝達に関係する多様なホスホ−タンパク質について免疫ブロットした。Ikaros欠損T細胞において、Lck、ERKおよびAKTを含むいくつかのTCRシグナル伝達タンパク質の構成的な低レベルのベースライン活性化があった(
図28D)。TCR/CD28刺激で、試験した全タンパク質は、刺激20分後Ikaros欠損T細胞でわずかに高かったホスホ−IKK以外、WTおよびIkaros欠損T細胞と比較して、同じレベルまでリン酸化された。NFB経路が、Ikarosレベルが減少したT細胞で増強されているかを調べるために、同じブロットを、IKKの下流標的であるIBに対して再プローブした。WTおよびIkaros枯渇T細胞の両者でIB分解に差異はなかった。CARシグナル伝達を試験するために、WTおよびIkDNメソテリンCAR形質導入T細胞の両者を、メソテリン被覆ビーズで再刺激した。CD3/CD28刺激のデータと同様、PLCおよびERKのリン酸化に差異は見られなかった(
図28E)。合わせて、これらのデータは、Ikarosの枯渇がTCR/CAR介在シグナル伝達を変えないことを示す。
【0734】
CAR T細胞におけるIkaros減少は、その標的細胞に対する応答を増強する
Ikarosが減少したCAR T細胞によるエフェクター因子産生の増加を考慮して、インビトロでのその標的腫瘍細胞に対する有効性を試験した。野生型、Ikzf1±およびIkDN T細胞発現メソCARを、異なる比で親腫瘍細胞株、AE17またはメソテリン発現細胞株、AE17メソと混合した。親細胞株と混合したとき、野生型、Ikzf1±およびIkDN T細胞のいずれも、AE17に応答したIFN−γ産生または細胞溶解ができなかった(
図29A、29Bおよび29C)。対照的に、AE17メソと反応させたとき、野生型T細胞によるIFN−γ産生および細胞溶解は、E:T比が増加するに連れて増加した(
図29Bおよび29C)。しかしながら、Ikzf1±およびIkDN T細胞の両者は、最低E:T比1.3:1でも、野生型T細胞より有意に多いIFN−γを産生し、腫瘍溶解が有意に増加した(
図29Bおよび29C)。
【0735】
この効果の一般化可能性を試験するために、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP−CAR)を標的とし、上で使用したメソテリンCARと同じ細胞内シグナル伝達ドメインを有する異なるCAR構築物を発現するT細胞を試験した。WT C57BL/6から単離した同等に形質導入したFAP−CAR脾臓T細胞の有効性を、Ikzf1±マウスのものと比較した。Ikzf1±FAP−CAR T細胞は、WT FAP CAR T細胞と比較して、インビトロでの特異性を維持して、3T3.FAP細胞の溶解(
図29D)およびより多くのIFN分泌(
図29E)により効果的であった。
【0736】
Ikarosの枯渇は確立された腫瘍に対するCAR T細胞の有効性を増強する
マウスにおける確立されたAE17メソ腫瘍の増殖制御における、Ikarosが減少したメソテリン特異的T細胞(Ikzf1±およびIkDN)の能力を試験した。200万のAE17メソ腫瘍細胞を、同質遺伝子的C57BL/6マウスの側腹部に注射し、大きな確立された腫瘍(約100〜150mm
3)を形成させた。WTまたはIkaros欠損(Ikzf1±およびIkDN)マウスから調製した1000万のCAR T細胞を、次いで、この腫瘍担持マウスに養子移入し、腫瘍測定を続けた。野生型形質導入メソCAR T細胞により軽度の腫瘍増殖阻害が誘発されたが、Ikzf1±およびIkDN形質導入メソCAR T細胞の両者は、より顕著にAE17メソ腫瘍の増殖を阻止した(
図30Aおよび30B)。
【0737】
Ikarosの減少が、FAP−CAR T細胞の治療可能性を増強するか否かも試験した。確立されたAE17メソ腫瘍(100〜150mm
3)を有するマウスに、1000万の野生型またはIkzf1±形質導入抗マウスFAP CAR T細胞を養子移入した。野生型形質導入細胞を投与されたマウスの腫瘍遅延は極微であり、AE17メソ腫瘍は増殖を続けた(
図30C)。対照的に、Ikzf1±形質導入T細胞は、腫瘍増殖を有意に遅延できた。
【0738】
Ikzf1±CAR T細胞は、WT CAR T細胞よりも長く残留し、免疫抑制性腫瘍微小環境により抵抗性である
Ikaros阻害CAR T細胞の有効性の増強を考慮して、Ikzf1±メソCAR T細胞を使用する可能性がある機構を探索した。これらのメソCAR T細胞がインビボで免疫抑制性腫瘍微小環境中どのように作動するかをさらに試験するために、養子移入3日後および9日後の腫瘍を収集し、これらの数および機能性を評価した。これらの二つの時点は、抗腫瘍免疫応答中の早期および後期時点でのそれらの活性の特徴づけを可能にした。
【0739】
移入3日目、我々は、脾臓(
図31A)および腫瘍(
図31B)の両者で、野生型およびIkzf1±メソCAR T細胞の頻度が類似することを観察した。これらの類似レベルは、野生型およびIkzf1±メソCAR T細胞の両者が、最初に腫瘍に同様に良好に輸送されることを示す。9日の時点で、野生型メソCAR T細胞およびIkzf1±メソCAR T細胞両者の数は脾臓で減少した。しかしながら、腫瘍をこの時点で試験したとき、WTメソCAR T細胞と比較して、Ikzf1±メソCAR T細胞数の有意な増加があった(
図31B)。これらのデータは、Ikzf1±メソCAR T細胞が、免疫抑制性微小環境においてWTメソCAR T細胞よりも良好に残留または増殖することを示す。
【0740】
腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)は、免疫抑制性腫瘍微小環境内のその同族抗原に応答して機能低下となり、腫瘍進行と関連する鍵となる現象である(Prinz et al., J Immunol. 2012; 188:5990-6000;およびKerkar et al., Cancer Res. 2012; 72:3125-30)。9日目に腫瘍に多くのIkzf1±メソCAR T細胞が存在したが、腫瘍微小環境によりまだ不利な影響を受けている可能性があった。機能性を評価するために、CD3/CD28抗体を使用して、移入9日後野生型およびIkzf1±メソCAR T細胞から単離したTILSを刺激し、溶解性メディエーター産生の差異を特徴付けした。移入9日後、脾臓の野生型メソCAR T細胞は、適度なレベルのIFNを産生し続ける(
図31C)。予想通り、腫瘍から単離した野生型T細胞は、脾臓から単離した野生型T細胞と比較して、これらのサイトカイン産生がはるかに少ない。これは、野生型TILが移入9日後機能低下的になり始めたことを示す。対照的に、脾臓Ikzf1±メソCAR T細胞は、ベースラインでおよび刺激によりより多くのIFNを産生する(
図31C)。野生型TILと比較して、Ikzf1±TILは、高量のIFN−γを産生した。これらのデータは、Ikzf1±TILが免疫抑制性腫瘍微小環境に低感受性であり得ることを示す。
【0741】
TILでしばしば見られるTCRシグナル伝達の近位欠損迂回(Prinz, PU et al., J. Immunol. 2012;188:5990-6000)は、PMA/イオノマイシン(PMA/I)の使用により達成できる(Prinz et al., J Immunol. 2012;188:5990-6000)。野生型およびIkzf1±メソCAR T細胞をPMA/Iで再刺激して、TCR刺激非感受性野生型およびIkzf1±TILが、他の刺激に応答してなおサイトカインを産生できるかを決定した。移入9日後、野生型TILは、IFN−γ産生の顕著な低下を示し(
図31C)、これはPMA/Iでの刺激により一部回復した(
図31D)。しかしながら、脾臓および腫瘍単離Ikzf1±メソCAR T細胞の刺激は、野生型移入細胞と比較してなお増加したレベルのIFN−γを生じた。PMA/I刺激によるTCRシグナル伝達の何らかの欠損の迂回を介して、これらの結果は、IFN−γ産生がクロマチンレベルで異なり、差次的Ikaros機能による可能性があることを示す。
【0742】
移入Ikzf1±T細胞による抗腫瘍活性の増加に鑑み、免疫抑制性腫瘍微小環境における本組成物の影響も試験し、制御性T細胞(Treg)および骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)の数を9日目に評価した。移入9日後、野生型またはIkzf1±メソCAR T細胞を受けた宿主で同様のレベルのTregが観察された(
図31E)。概して免疫抑制性および腫瘍形成促進性M2マクロファージとして特徴付けられる、Ly6G
−/CD11b
+/CD206
+マクロファージの存在を検出した。処置9日目、CD206発現は全3群(未処置、野生型およびIkzf1±)で類似した(
図31F)。
【0743】
Ikarosが減少したT細胞は、可溶性阻害因子TGFおよびアデノシンに低感受性である
免疫抑制性腫瘍微小環境とメソCAR T細胞の相互作用をさらに特徴付けるために、インビトロ培養系を利用した。IDO、IL−10、アデノシンおよびTGF−βのような可溶性阻害因子(Wang et al., Oncoimmunology. 2013;2:e26492)は、浸潤性腫瘍リンパ球の阻止に貢献することが示されている。Ikaros欠損CAR T細胞における選択した阻害因子のインビトロの効果を試験して、免疫抑制性環境がその溶解性機能に影響するか否かを決定した。野生型CAR T細胞は、TGF−βおよびアデノシン存在下、IFN−γを製造する能力が50%減少し、溶解性機能が減少した(
図32)。Ikarosのレベルが減少したCAR T細胞(Ikzf1±およびIkDN)は、阻害剤非存在下で野生型カウンターパートより多くのIFN−γを製造し続け、TGF−βおよびアデノシン存在下で、わずかしか阻害されなかった(
図32A)。野生型T細胞と比較したIkzf1±およびIkDN CAR T細胞の溶解性機能増加が観察された(
図32B)。これらのデータは、Ikarosが減少したT細胞は、TGF−βおよびアデノシン阻害に低感受性であることが示される。
【0744】
考察
本実施例において、腫瘍環境においてCAR発現T細胞を生存させ、そのエフェクター機能を増加させる新たな試みが同定された。T細胞機能に関与する多種多様な遺伝子、例えば、サイトカイン遺伝子(IL−2およびIFN−γ)、細胞溶解性メディエーター(グランザイムB)およびT細胞分化に影響する重要なT−box転写因子(R−BetおよびEomes)を阻害することが知られる、転写リプレッサーIkarosの不活性化である。
【0745】
上記実験からの重要な知見は、Ikaros機能が欠損したCAR T細胞が、腫瘍増殖の抑制に野生型CAR T細胞より有意に良好であったことである(
図30)。これらの結果は複数の腫瘍モデルで、2種の異なるCAR構築物を使用して観察された。Ikarosが制御する遺伝子が多数であるため、Ikarosが免疫抑制に通常感受性である多くの経路を制御し得ることは妥当である。CAR T細胞におけるIkarosレベル減少によるIFN−g産生増加は、腫瘍におけるクラスI MHC発現を上方制御でき、それによりその免疫原性を改善し、抗血管形成活性を改善し、Th1細胞のSTAT1介在機能の駆動をする。IFN−γ増加の可能性のある効果は、腫瘍内のマクロファージ表現型の改変であろうが、しかしながら、マクロファージ総数も、M2様マクロファージ比率も(CD206発現で測定して)差異は観察されなかった。IL−2産生増加もまたCD4 Treg細胞の形成を増加させ得るが、しかしながら、WT CAR T細胞およびIkaros欠損CAR T細胞で処置した腫瘍を比較したとき、差異は観察されなかった。
【0746】
注射9日後、腫瘍浸潤性リンパ球数の増加が観察された。3日目のWTとIkaros欠損TILの数が類似していたため、これは輸送増加によるものではなさそうである。むしろ、これらの結果は、Ikaros欠損TILが増殖増加または抗原誘発細胞死(AICD)減少を示したことを示唆する。インビトロ試験は、2タイプのT細胞でAICが類似しており、この差異が増殖増加によるものであるとの可能性を高めた。これは、これらの細胞により産生されるIL−2の増加と一致する。残留性の増加に加えて、Ikaros欠損TILは機能低下が低いように見える。腫瘍浸潤性CAR T細胞を抗CD3抗体またはPMAおよびイオノマイシンで再刺激したとき、Ikaros欠損を有するCAR TILは、野生型カウンターパートよりも多くのIFN−γを産生できた(
図31Cおよび31D)。
【0747】
インビトロ試験は、インビボで観察された抗腫瘍有効性増加の機構的支持のさらなる試験を可能にした。Ikarosの既知阻害機能と一致して、1個のIkarosアレルの欠失(Ikzf±)または1個のアレルのIkarosドミナントネガティブ構築物への置換(IkDN)は、ベースライン自己分泌IFN−γおよびグランザイムB産生がいくぶん増加したが(
図26)、より重要なことに、インビトロでのTCRまたはCAR刺激後著しく増加したサイトカイン分泌および顆粒放出を示した、T細胞を生じた。これはインビトロでの腫瘍細胞致死増加に附随した。Ikaros欠損CAR T細胞がWT CAR T細胞より低い活性化閾値を有するか否かを試験するために、Dynabeadsを10倍低いメソテリンタンパク質で被覆し、Ikzf±CAR T細胞がこの低密度でなおメソテリン抗原に応答し、IFN−γおよびTNF−αを産生できるが、WT CAR T細胞はできなかったことを示した。Ikaros障害CAR T細胞も、TGF−βおよびアデノシンのような既知免疫抑制性因子による阻害に、より抵抗性であった(
図32)。これは、恐らく、サイトカイン(すなわちIL−2およびIFN−γ)およびT細胞エフェクター(すなわちグランザイムB)遺伝子が、TCR/CAR活性化後Ikaros欠損T細胞における転写のためにより利用しやすいとの事実による。これは、免疫抑制性腫瘍微小環境内の最適以下T細胞活性化に対する代償を助けると考えられる。
【0748】
先の試験、例えば、実施例9において、第二メッセンジャージアシルグリセロールを代謝し、RAS/ERK活性化を制限する酵素であるDGKの枯渇により、類似の表現型(すなわち細胞溶解およびIFN産生の増加)がCAR T細胞で観察された。DGK欠失を用いて、しかしながら、CAR/TCRシグナル伝達経路の明確な変化が観察された。具体的に、RAS/ERK活性化は、TCRおよびCAR両者での活性化の後劇的に増強された。これは、CD69上方制御の増加により測定して、TRAIL、FasLおよびIFN−γのようなエフェクター分子の産生はどうであろうと、活性化を増加させた。パーフォリンおよびグランザイムBは、WTおよびDGK欠損CAR T細胞で類似した。Ikaros欠損CAR T細胞が本試験で極めて異なる表現型であった。DGK欠損CAR T細胞とは対照的に、Ikaros欠損CAR T細胞は、CD69およびCD25上方制御で示して類似のCAR/TCR活性化(
図28)および複数のTCRシグナル伝達分子のリン酸化により測定して類似のCAR/TCRシグナル伝達(
図34)およびカルシウムシグナル伝達を有した。DGK欠損T細胞とは異なり、Ikaros枯渇CAR T細胞は、ベースラインで高いグランザイムBおよびIFNレベル(
図26および27)ならびにERKおよびAktのようないくつかのTCRシグナル伝達の構成的低レベル活性化を有した(
図28)。このベースライン活性化は、恐らく、IFNおよびグランザイムB遺伝子発現をトランス活性化するEomesのような他の転写因子と協調する、T−bet(Thomas et al., J of Biol Chemistry. 2010; 285:2545-53)の誘導による(Pearce et al., Science. 2003; 302:1041-3;およびIntelkofer et al., Nat Immunol. 2005; 6:1236-44)。
【0749】
これらの知見は、遺伝的または生化学的試みのいずれかを使用して、形質導入ヒトT細胞(臨床試験)においてIkarosを治療ターゲティングとすることが有益である可能性を生じさせる。遺伝的試みは、マウスでこれらの結果を模倣し、shRNAを使用したCAR T細胞におけるIkarosのノックダウンまたは内在性Ikarosと競合するためのドミナントネガティブ構築物の使用を含む。他の選択肢は、一過性にIkarosレベルを低下させる薬理学的阻害剤の使用である。最近の報告では、免疫調節剤であるレナリドマイドが、E3リガーゼ複合体CRL4CRBNによるユビキチン介在分解についてIkarosを標的とすることが示されている(Gandhi et al., Br J Haematol. 2013; 164:811-21; Kronke et al, Science. 2014; 343:301-5;およびSakamaki et al., Leukemia. 2013; 28:329-37)。レナリドマイドで処理したCD3刺激ヒトT細胞は、Ikarosレベルが減少したT細胞の重要な性質である、より多くのIL−2を産生する(Gandhi et al., Br J Haematol. 2013;164:811-21)。予備試験において、TCR/CD28刺激メソテリン−CAR形質導入ヒトPBMCは、インビトロで、レナリドマイドでの前処理後、より多くのIL−2およびIFN−γを産生した。それゆえに、CAR T細胞療法とレナリドマイドのインビボ投与の組み合わせは、Ikarosの阻害によるT細胞機能低下の回復のための治療戦略を提供し得る。
【0750】
結論として、この実施例は、転写リプレッサーのターゲティングがCAR介在抗腫瘍免疫を増強できることを最初に示す。本機構は、シグナル伝達の変化を伴わない、サイトカインおよびエフェクター機能増強を含んだ。この試みの臨床への転換は、CAR発現T細胞におけるIkarosを標的とするshRNA、ドミナントネガティブ構築物または薬理学的阻害剤(例えばレナリドマイド)の使用を介して探究できる。
【0751】
実施例11:ヒト卵巣癌におけるメソCART
本実施例において、メソテリンCARを発現させるために形質導入した自己T細胞の静脈内注入の安全性を、進行再発性漿液性卵巣癌を有するヒト患者で決定した。
【0752】
一患者処置プロトコールは、自己T細胞発現メソテリンCAR(メソCART)注入の安全性および実行可能性を評価するための、計画した第I相治験(実施例3に記載のとおり)を模倣した。患者からのT細胞を、4−1BBおよびTCRゼータシグナル伝達ドメインに融合した細胞外抗メソテリン単一鎖可変フラグメント(scFv)を含むCARを発現するように形質導入した。3×10
7メソCAR T細胞/m
2、計4.65×10
7メソCAR T細胞を患者に注入した。注入前に、化学療法剤でのリンパ球枯渇はしなかった。
【0753】
メソCART注入は、急性有毒作用はなかった。患者は、グレード3の両側性胸水、呼吸困難、発熱、低血圧および誤嚥を経験した。心膜炎または腹膜炎のような、メソCAR T細胞の腫瘍外/標的上効果による臨床毒性はなかった。不明な発熱、昇圧剤を必要とする低血圧、フェリチン(>7000ng/mL)およびCRP(>160mg/L)の血清レベル増加に基づき、サイトカイン放出症候群(CRS)が疑われるために、注入21日後に、患者をトシリズマブ(抗IL6)で処置した。
【0754】
メソCAR T細胞は、末梢血液サンプルならびに肝臓および腹膜からの腫瘍サンプルで検出可能であり、最高数は心膜および胸水であった。サイトカイン評価は、胸水内のIL−6の著しい増加を示し(ベースラインから>80倍増加)、22〜23日目でピークであった。血液の評価は、血中のIL−6レベル増加も確認した(22日目にベースラインから15倍増加)。TNF−αまたはIFN−γレベルの増加は検出されなかった。
【0755】
予備的結果は、21日目に実施した腹部および骨盤のCT造影が、2週間前のCT造影と比較して腹膜癌腫症が最小限改善したことを示した。具体的に、1個の腫瘍が3.4×3.1cmから3.0×2.6cmに減少した。左側胸水からの細胞診は注入8日後の悪性腫瘍を示したが、21日目および26日目には、悪性腫瘍の証拠はなかった。
【0756】
これらの結果は、リンパ球枯渇を伴わないメソCAR T細胞の注入が実行可能であり、かつ安全であったことを示した。注入による毒性または重篤な心膜炎もしくは腹膜炎の証拠はなかった。また、悪性胸水の消失により証明されるように、処置有効性の臨床的証拠があった。
【0757】
実施例12:種々の細胞内シグナル伝達ドメインを有するCARの一過性発現
本実施例において、CAR構築における異なる共刺激ドメインの使用ならびに細胞寿命延長、記憶分化および細胞代謝特徴におけるその効果を試験する。
【0758】
インビトロT細胞刺激の新規系を、一ラウンドのCAR特異的刺激の結果を試験し、多様なCARシグナル伝達エンドドメインによるシグナル伝達を解析するために開発した。CD3ゼータ、CD28:zおよび4−1BB:zの種々の細胞内シグナル伝達ドメインを有する、インビトロ転写mRNAコード化抗メソテリンSS1−CAR構築物を、初代静止ヒトT細胞にした。この方法で、90%を超えるCAR陽性T細胞集団が達成された。CAR発現確認後、T細胞を、ビーズに固定化した組み換えメソテリンで刺激し、培養した。RNAが一過性に発現されるため、CARは、1ラウンドの刺激後に細胞表面から消失し、CAR単独によるシグナル伝達の明確な解析を可能にする(すなわち、さらなるメソテリン結合事象からのその後のシグナル伝達がない)。それゆえに、この試みは、内在性T細胞受容体を介する刺激の必要性を排除し、CAR T細胞の代替抗原によるシグナル伝達の解析を始めて可能にした。これらの実験を初代末梢血T細胞、選別ナイーブT細胞および臍帯血液細胞で実施した。
【0759】
種々のCAR構築物(SS−1とCD3ゼータ、SS1とCD28:zおよびSS1と4−1BB:z)を、T細胞表面に同等のレベルで発現させた。全てのシグナル伝達ドメインは、メソテリンを発現する標的細胞と培養したとき、同等なおよび特定の細胞溶解能を有することが示された。
【0760】
4−1BBz含有CARによる初代T細胞刺激は、CD28ベースのCARと比較したとき、優れた生存および増殖プロファイルを示した。4−1BBおよびCD28ベースのCARのいずれも、5を超える集団倍加を示した。しかしながら、4−1BBベースのCARTは、インビトロで長く増殖した。4−1BBベースのCAR T細胞の表現型解析は、中央メモリー表面マーカーを有する細胞集団が産生されたことを確認した。対照的に、CD28ベースのCARは、CAR T細胞のエフェクター記憶プールに急速に分化した。
【0761】
CD28z含有CARは、4−1BBzカウンターパートと比較して、有意に高い比率のエフェクター記憶細胞を産生し、阻害PD−1、TIM3およびLAG3分子の発現増加は中程度であった。これらの結果は、バルク末梢血T細胞、ナイーブ(CD45RO
−CD95
−CD62L
+CCR7
+選別)末梢血T細胞または臍帯血T細胞の出発集団を使用したかに一致したままであった。
【0762】
培養におけるSea-Horseアッセイ(Seahorse Biosciences)を使用したメソテリン刺激CAR T細胞の代謝プロファイリングは、CD28zカウンターパートと比較して、4−1BBz−CAR刺激細胞における脂質酸化の相当な増加を確認した。さらに、マイクロアレイ試験は、異なるCARシグナル伝達ドメインでの刺激後回収した細胞における独特な遺伝子サインを確認している。
【0763】
合わせて、これらの結果は、CAR T細胞が共刺激ドメインによって差次的生存および機能を示すことを示す。この系はまた新規CAR設計の迅速な特徴づけおよび機能的解析も可能にする。
【0764】
実施例13:高齢者における免疫老化に対するmTOR阻害の効果
加齢と最も明確に結びついている経路の一つは、mTOR経路である。mTOR阻害剤ラパマイシンがマウスで寿命を延長し、高齢マウスで多様な加齢関連状態を改善することが示されている(Harrison, DE et al. (2009) Nature 460:392-395; Wilkinson JE et al. (2012) Aging Cell 11:675-682;およびFlynn, JM et al. (2013) Aging Cell 12:851-862)。それゆえに、これらの知見は、mTOR阻害剤がヒトにおける加齢および加齢関連状態に有益な効果を有し得ることを示す。
【0765】
短い臨床試験時間枠で試験できる年齢関連表現型は免疫老化である。免疫老化は、感染に対する感受性の増加およびインフルエンザワクチン接種を含むワクチン接種に対する応答の減少に至る、高齢者で生じる免疫機能の減少である。年齢による免疫機能の減少は、造血幹細胞(HSC)がナイーブリンパ球を産生する能力の減少および抗原刺激に対する応答が不完全な疲弊したPD−1陽性リンパ球数の増加を含む、免疫欠損の蓄積による(Boraschi, D et al. (2013) Sci. Transl. Med.5:185ps8; Lages, CS et al. (2010) Aging Cell 9:785-798;およびShimatani, K et al., (2009) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106:15807-15812)。高齢マウスでの試験は、mTOR阻害剤ラパマイシンでの6週間の処置がHSC機能を若返らせ、ナイーブリンパ球産生増加、インフルエンザワクチン接種に対する応答改善および寿命延長に至ることを示した(Chen, C et al. (2009) Sci. Signal. 2:ra75)。
【0766】
ヒト加齢関連表現型に対するmTOR阻害の効果をおよびmTOR阻害剤RAD001が免疫老化を軽減するかを評価するために、RAD001またはプラセボを投与された高齢志願者におけるインフルエンザワクチンに対する応答を評価した。ここに示す知見は、RAD001が、十分耐容性である用量で高齢志願者のインフルエンザワクチンに対する応答を増強したことを示唆する。RAD001はまた年齢とともに蓄積されるプログラム死(PD)−1陽性CD4およびCD8 Tリンパ球のパーセンテージも減少させた。これらの結果は、mTOR阻害が高齢志願者における免疫老化に有益な効果を有することを示す。
【0767】
ここに記載するとおり、ラパマイシン類似体であるmTOR阻害剤RAD001での6週間処置は、高齢ヒト志願者におけるインフルエンザワクチン接種に対する応答を改善した。
【0768】
方法
治験集団
不安定な基礎疾患のない65歳以上の高齢志願者が、ニュージーランドおよびオーストラリアの9箇所で参加した。スクリーニング時の除外基準はヘモグロビン<9.0g/dL、白血球数<3,500/mm
3、好中球数<2,000/mm
3または血小板数<125,000/mm
3、未管理の糖尿病、不安定虚血性心疾患、臨床的に顕著な基礎肺疾患、免疫不全の病歴または免疫抑制性治療歴、凝固障害の病歴または長期抗凝固を必要とする 医学的状態、概算糸球体濾過速度<30ml/分、重度の未管理高コレステロール血症(>350mg/dL、9.1mmol/L)または高トリグリセリド血症(>500mg/dL、5.6mmol/L)の存在を含んだ。
【0769】
処置アーム間のベースライン個体群統計学は類似した(表8)。218名の参加対象中、211名が治験を終了した。7名は治験を中止した。5名は有害事象(AE)が原因であり、1名は同意の上中止し、1名はプロトコール違反の結果、治験を去った。
【表46】
*肥満度指数は、身長(m)の二乗で除した体重(kg)である
【0770】
治験設計および遂行
2011年12月から2012年4月まで、218名の高齢志願者が、無作為化、観察者盲検化、プラセボ対照試験に参加した。対象を、各処置アームにおけるRAD001対プラセボ比5:2で、検証された自動化無作為化系を使用して処置アームに無作為化した。処置アームは
RAD001 0.5mg連日またはプラセボ
RAD001 5mg毎週またはプラセボ
RAD001 20mg毎週またはプラセボ
であった。
【0771】
RAD001 0.5mg連日および20mg毎週コホートにおけるプラセボがこれらのコホートにおけるRAD001錠剤とわずかに異なったため、本治験は観察者盲検であった。対象を評価する治験職員は治験薬物を見ておらず、それゆえに完全に盲検式であった。全コホートの処置期間は6週間であり、その間、対象は2週間毎に診療所での安全性評価を受けた。対象が4週間投与された後、RAD001定常レベルを投与前および投与1時間後に測定した。6週間コースの治験薬完了後、対象はRAD001が誘発した可能性のある免疫抑制から回復するために2週間休薬させ、その後株H1N1 A/California/07/2009、H3N2 A/Victoria/210/2009、B/Brisbane/60/2008を含む2012年季節性インフルエンザワクチンを接種した(Agrippal(登録商標), Novartis Vaccines and Diagnostics, Siena, Italy)。インフルエンザワクチン接種4週間後、対象から血清を採取し、インフルエンザ力価を測定した。3種のインフルエンザワクチン株ならびに2種の異種株(A/H1N1株A/New Jersy/8/76およびA/H3N2株A/Victoria/361/11)に対する抗体力価を、標準血球凝集阻害アッセイにより測定した(Kendal, AP et al. (1982) Concepts and procedures for laboratory-based influenza surveillance. Atlanta: Centers for Disease Control and Prevention B17-B35)。A/H1N1/California/07/2009特異的IgGおよびIgMレベルを、先に記載のとおりインフルエンザワクチン接種前および4週間後に測定した(Spensieri, F. et al. (2013) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110:14330-14335)。結果を蛍光強度として表した。
【0772】
全ての対象にインフォームド・コンセント書類を渡した。治験は、Good Clinical Practiceの原則に従い、適切な倫理委員会および規制統御句に承認された。
【0773】
安全性
有害事象評価ならびに血液学的および生化学的安全性評価のための採血は、来院日に実施した。有害事象情報は、対象が治験薬を受けている6週間の間、家で記載した日記からも集めた。全有害事象データを、インフォームド・コンセント時から最後の来院日から30日後まで集めた。事象は治験医により軽度、中程度または重度と分類された。
【0774】
統計解析
幾何平均力価比の一次解析を、無情報事前分布を用いる正規ベイズ回帰モデルを使用して行った。このモデルを、対数尺度で各抗体力価に適合させた。各モデルの主要評価項目は84日目測定値であった。63日目測定値をアウトカムベクターに包含させた。モデルを、先のステートメントと混ぜたSAS 9.2 procを使用してフィットさせた。マトリクス共分散構造は、非構造化(選択肢タイプ=UN)として考慮した。平らである事前分布を使用した。抗体陽転率の二次解析のために、ロジスティック回帰を使用した。
【0775】
治療企図集団は、少なくとも1回の完全用量の治験薬を投与され、有効性データに影響する重大なプロトコール逸脱がない全対象と定義された。治験に参加した218名の対象中199名治験が治療企図集団であった。
【0776】
免疫表現型検査
末梢血単核細胞を、ベースライン、6週間の治験薬処置後および対象が6週間治験薬物から離れており、インフルエンザワクチン接種した4週間後である治験の最後の3時点に採血した全血から単離した。76個のPBMCサブセットを、先に記載されたように、Human Immune Monitoring Center at Stanford University, CA, USAで8色免疫表現型検査パネルを使用したフローサイトメトリーにより解析した(Maecker, HT et al. (2012) Nat Rev Immunol. 12:191-200)。76個のPBMCサブセットを、8色凍結乾燥免疫表現型検査パネルを使用するフローサイトメトリーにより解析した(BD Lyoplate、BD Biosciences, San Diego, CA)。生存能>80%および2×10
6細胞を超える収量のPBMCサンプルを解析に入れた。
【0777】
ベースラインから治験薬処置6週目までおよびベースラインから治験の最後(12週目)までの免疫表現型の相対的変化を、各RAD001投薬コホートで計算した。スチューデントT検定を行い、ベースラインから2回の採血時点までの免疫表現型の相対的変化が、それぞれ、プラセボ効果について調整した後、各投与群内で0とは有意に異なるかを試験した。処置効果解析における欠損値補完は行わなかった。それゆえに、患者がベースラインで表現型データ欠損があるとき、この患者は、この表現型の解析を行わなかった。患者の6週目または12週目の表現型データが欠損しているとき、この患者は、影響する時点でのこの表現型の解析に貢献しなかった。
【0778】
3投薬群下の76表現型の608試験を行い、プラセボ効果に対する処置効果を比較した。層別化偽発見率(FDR)管理方法論を、今なお相当に優れた検出力を提供する複数の試験と関係する偽陽性の発生を制御するために実施した。細胞型群を層別因子として取り、各層内のFDR(q値)計算をそれぞれ行った。全帰無仮説は、対応するq値≦0.1の0.05有意水準で棄却された。0.05有意水準および対応するq<0.1で棄却される複数試験調節戦略は、結果の10%未満が偽であることを確実にした。
【0779】
第二の解析において、免疫表現型は、全3個のRAD001投薬群を合わせたプールした処置群とプラセボ群で変化する。どの免疫表現型変化が処置群とプラセボ群を区別するかを決定するために、各測定した表現型の患者内細胞数比を、ベースラインと治験薬処置6週目およびベースラインと治験終了時(12週目)で計算した。比を対数変換し、プールした処置およびプラセボ群の間の差異を検出するために、各時点の共分散の解析により分析した。76個の表現型の152試験を実施して、プラセボ効果に対するプールした処置効果を比較した。層別化偽発見率(FDR)管理方法論を、今なお相当に優れた検出力を提供する複数の試験と関係する偽陽性の発生を制御するために実施した(Benjamini, Y. et al. (1995) J. Roy. Statist. 57:289-300;およびSun, L. et al. (2006) Genet. Epidemiol. 30:519-530)。細胞型群を層別因子として取り、FDR(q値)計算を、それぞれ各層内で実施した。0.05有意水準およびq値20%未満での全帰無仮説は棄却された。これは、0.05未満のP値および各観察された有意な結果が複数試験によるものである20%未満の確率のみを棄却すると解釈できる。
【0780】
結果
一般に、RAD001は、特に0.5mg連日および5mg毎週投与レジメンで良好な耐容性であった。治験中に死亡例はなかった。3名の対象は、RAD001と無関係であると評価された4つの重篤な有害事象(SAE)を経験した。4つのSAEは、先に6週間5mg毎週RAD001の6週のコースを完了していた正常血小板数の対象の左眼の網膜出血とその後の失明;プラセボ処置対象における重度の背部痛およびプラセボ処置対象における重度の胃腸炎であった。あらゆる処置群における発生率>2%の処置関連有害事象(AE)の一覧を表9に提供する。最も一般的なRAD001関連AEは、大部分の症例で、軽度であった口腔内潰瘍であった。全体的に、RAD001を投与された対象と、プラセボ処置対照の重度のAE発生率は類似した。1個の重度のAEのみがRAD001と関連すると評価され、20mg毎週RAD001処置対象の口腔内潰瘍であった。
【表47】
【0781】
RAD001が高齢志願者における免疫機能を改善する能力を、2012年の季節性インフルエンザワクチンに対する血清学的応答を測定することにより評価した。3種のインフルエンザワクチン株の各々に対するベースラインおよびインフルエンザワクチン接種4週間後の血球凝集阻害(HI)幾何平均力価(GMT)を表10に示す。一次解析変数は、HI GMT比(ワクチン接種4週間後/ベースライン)であった。治験を、少なくとも3種のインフルエンザワクチン株中2種において、1)プラセボに対して相対的に≧1.2倍GMT;および2)80%以上が、1を超えるプラセボ補正GMT比である事後確率の存在を証明できるように強化した。このエンドポイントは、MF−59ワクチンアジュバントにより誘発されるインフルエンザGMT比の1.2倍増加がインフルエンザ疾病の減少と関連するために、選択した(Iob, A et al. (2005) Epidemiol Infect 133:687-693)。
【表48】
ベースラインは、インフルエンザワクチン接種2週間前を示す
4週目はインフルエンザワクチン接種4週間後を示す
Nはコホートあたりの対象数である
GMTは幾何平均力価である
GMT比は、ワクチン接種4週目のGMT/ベースラインのGMTである
CV%は、変動係数を示す
【0782】
治療企図(ITT)集団において、高用量(20mg毎週)コホートではなく、低い、免疫増強用量RAD001(0.5mg連日または5mg毎週)コホートが、治験の主要評価項目に合った(
図33A)。これは、低用量でRAD001の異なる免疫調節機構が存在し、高用量で、mTOR阻害の既知免疫抑制性効果が発揮されるようになる可能性を示す。さらに、本結果は、低い、免疫増強用量RAD001処置後の高齢者における免疫機能の改善傾向を示唆する。
【0783】
サブグループ解析において、低ベースラインインフルエンザ力価(≦1:40)のサブセットの対象は、ITT集団より高い力価のRAD001関連増加を経験した(
図33B)。これらのデータは、RAD001が、ベースラインで予防的(>1:40)力価を有さず、それゆえにインフルエンザ疾病の最高のリスクにある対象のインフルエンザワクチン応答の増強に特に有効であることを示す。
【0784】
RAD001濃度対各インフルエンザワクチン株に対する力価増加の散布図は、逆暴露/応答相関を示す(
図34)。S6キナーゼ(S6K)のmTOR介在リン酸化に基づくモデリングおよびシミュレーションは、20mg毎週投与レジメンがmTOR介在S6K活性をほぼ完全に阻止し、5mg毎週投与レジメンはS6K活性を50%を超えて阻止し、0.5mg連日投与レジメンは、S6Kリン酸化を投与の合間に約38%まで阻止することを予測する(Tanaka, C et al. (2008) J. Clin. Oncol 26:1596-1602)。それゆえに、低い、免疫増強用量RAD001での、部分的mTOR阻害、例えば、mTOR介在S6Kリン酸化阻害は、高齢者の免疫応答の増強における高用量RAD001でのほぼ完全なmTOR阻害よりも有効ではないにしても、有効であり得る。
【0785】
インフルエンザワクチン接種4週間後の抗体陽転率も評価した。抗体陽転は、ワクチン接種前力価陰性(すなわち、HI力価<1:10)から、ワクチン接種後HI力価≧1:40への変化または非陰性(≧1:10)ワクチン接種前HI力価からの少なくとも4倍増加として定義された。治療企図集団、H3N2およびB株への抗体陽転率は、プラセボコホートと比較してRAD001で増加したが、該増加は統計的有意性には合わなかった(表11)。ベースラインインフルエンザ力価≦1:40の対象の亜集団において、RAD001処置はまたH3N2およびB株に対する抗体陽転率を増加させ、これらの結果は、0.5mg連日投薬コホートでB株に対して統計額的有意性に達した。これらのデータは、さらにRAD001が、高齢者におけるインフルエンザワクチン接種に対する血清学的応答を増強させたことを示す。
【表49】
* RAD001とプラセボの間の抗体陽転のオッズ比は、有意に1より異なる(固定効果として処理したロジスティック回帰により得た両側p値<0.05)
【0786】
現在の季節性インフルエンザワクチンは、しばしば、以前に広まったウイルスのバリアントとして存在するインフルエンザ株の継続する出現に対して適切な保護を提供しない。しかしながら、mTOR阻害剤ラパマイシンの存在下でインフルエンザに対してワクチン接種したマウスは、プラセボと比較して、インフルエンザに対する広い血清学的応答を発達させた。広い血清学的応答は、ワクチンに含まれないインフルエンザの異種株での感染に対する保護を提供する、複数のサブタイプのインフルエンザにより発現される保存的エピトープに対する抗体を含んだ(Keating, R et al. (2013) Nat Immunology 14:2166-2178)。RAD001が高齢志願者におけるインフルエンザに対する血清学的応答を広幅化するかについて、インフルエンザワクチン(A/H1N1株A/New Jersey/8/76およびA/H3N2株A/Victoria/361/11)に含まれないインフルエンザの2種の異種株に対するHI力価を測定した。異種株に対するHI GMT比の増加は、プラセボコホートと比較してRAD001で高かった(
図35)。さらに、異種株に対する抗体陽転率は、プラセボコホートと比較してRAD001で高かった。5mgおよび20mg毎週RAD001投薬コホートにおける抗体陽転率の増加は、H3N2異種株に対して統計的有意であった(表12)。プールしたRAD001コホートについてのH3N2抗体陽転率は39%であり、それに対しプラセボコホートは20%であった(p=0.007)。ここに示した結果は、mTOR阻害がインフルエンザワクチン接種に対する高齢志願者の血清学的応答を広幅化し、季節性インフルエンザワクチンに含まれないインフルエンザの異種株に対する抗体力価を高めることを示唆する。
【0787】
ラパマイシンで処置したマウスにおけるインフルエンザの異種株に対する血清学的応答の広幅化は、B細胞におけるクラススイッチングの阻止および抗インフルエンザIgMレベルの増加と関係している(Keating, R. et al. (2013) Nat Immunol 14:2166-2178)。しかしながら、クラススイッチングの阻止は、ワクチン接種後抗インフルエンザIgMおよびIgGレベルがRAD001コホートとプラセボ処置コホート間で差がなかったため、RAD001で処置したヒトにおける広幅化された血清学的応答とは関係しない可能性がある(
図36)。
【表50】
* RAD001とプラセボの間の抗体陽転のオッズ比は、有意に1より異なる(固定効果として処理したロジスティック回帰により得た両側p値<0.05)
【0788】
RAD001が高齢志願者における免疫機能を増強する機構に取り組むため、免疫表現型検査を、ベースライン、治験薬処置6週間後およびインフルエンザワクチン接種4週間後(治験薬中止6週間後)に対象から得たPBMCサンプルで実施した。大部分のPBMCサブセットのパーセンテージはRAD001コホートとプラセボの間で差がなかったが、PD−1陽性CD4およびCD8細胞のパーセンテージは、プラセボコホートと比較してRAD001で低かった(
図37)。PD−1陽性CD4およびCD8細胞は年齢とともに蓄積し、PD−1がT細胞受容体誘発T細胞増殖、サイトカイン産生および細胞溶解性機能を阻止するため、抗原刺激に対する不完全な応答を有する(Lages, CS et al. (2010) Aging Cell 9:785-798)。プラセボコホートにおいてPD−1陽性T細胞のパーセンテージの経時的増加があった。12週目(ワクチン接種4週間後)で、インフルエンザウイルスがPD−1陽性T細胞を増加させることが示されているため、この増加はインフルエンザワクチン接種によるものであり得る(Erikson, JJ et al. (2012) JCI 122:2967-2982)。しかしながら、全RAD001コホートでCD4 PD−1陽性T細胞のパーセンテージは6週目および12週目でベースラインから下がった(
図37A)。CD8 PD−1陽性細胞のパーセンテージも、2つの低用量RAD001コホートで6週目および12週目の両者でベースラインから下がった(
図37B)。PD−1陰性CD4 T細胞のパーセンテージを評価し、プラセボコホートと比較してRAD001コホートで増加した(
図37C)。
【0789】
RAD001コホートからの結果をプールし、ベースラインPD−1発現の差異について調整したより厳密な統計解析下、プラセボコホート(n=25)と比較して、プールしたRADコホート(n=84)で、6週目にPD−1陽性CD4 T細胞の30.2%の統計的に有意な減少があり、p=0.03(q=0.13)であった(
図38A)。プラセボコホートと比較した、プールしたRADにおける12週目のPD−1陽性CD4 T細胞の減少は32.7%であり、p=0.05(q=0.19)である。
図38Bは、プラセボコホート(n=25)と比較して、プールしたRAD001コホート(n=84)における6週目のPD−1陽性CD8 T細胞の統計的に有意な37.4%の減少を示し、p=0.008(q=0.07)である。プラセボコホートと比較した、プールしたRAD001の12週目のPD−1陽性CD8 T細胞減少は41.4%であり、p=0.066(q=0.21)である。それゆえに、
図37および38の結果は、合わせて、PD−1陽性CD4およびCD8 T細胞のパーセンテージのRAD001関連減少が、免疫機能の増強に貢献している可能性を示唆する。
【0790】
結論
結論として、ここに提供したデータは、mTOR阻害剤RAD001が、インフルエンザワクチン接種に対する応答で評価して、ヒト高齢者の免疫学的機能における年齢関連減少を軽減し、この改善が許容されるリスク対効果バランスで得られることを示す。高齢マウスでの試験において、mTOR阻害剤ラパマイシンでの6週間処置はインフルエンザワクチン接種に対する応答を増加しただけでなく、寿命も延長し、免疫老化の改善は、加齢関連表現型に対するより広範な効果のマーカーであり得ることを示唆する。
【0791】
RAD001投薬をワクチン接種2週間前に中断したため、RAD001の免疫増強効果は、薬物処置中止後も残留する適切な細胞集団における変化により介在され得る。ここに示した結果は、RAD001が、プラセボと比較して疲弊したPD−1陽性CD4およびCD8 T細胞のパーセンテージを減少させたことを示す。PD−1発現はTCRシグナル伝達により誘発され、慢性ウイルス感染を含む永続性抗原刺激の設定で高いままである。理論に縛られることを望まないが、RAD001が高齢志願者における慢性免疫活性化を減少し、それによりPD−1発現を減少させた可能性がある。RAD001はまたイムノフィリンシクロスポリンAについて報告されているように、PD−1発現を直接的にも阻害し得る(Oestreich, KJ et al. (2008) J Immunol. 181:4832-4839)。PD−1陽性T細胞のパーセンテージのRAD001誘発減少は、T細胞応答の品質を改善させる可能性がある。これは、mTOR阻害が、マウスおよび霊長類におけるワクチン接種に対する記憶CD8 T細胞応答の品質を改善したことを示す試験と先の一致する(Araki, K et al. (2009) Nature 460:108-112)。高齢マウスにおいて、mTOR阻害はまた造血幹細胞の数を増加させ、ナイーブリンパ球の産生増加に至ることも示されている(Chen, C et al. (2009) Sci Signal 2:ra75)。本実施例においてRAD001対プラセボコホートでナイーブリンパ球のパーセンテージに有意な差は検出されなかったが、この可能性がある機構をさらに調査し得る。
【0792】
RAD001がインフルエンザの異種株に対する血清学的応答を広幅化する機構をさらに調査し得る。ラパマイシンも、インフルエンザワクチン接種後B細胞におけるクラススイッチングを阻止することが示されている。その結果、抗インフルエンザ抗体の独特のレパートリーが産生され、それがインフルエンザワクチンに含まれないインフルエンザウイルスサブタイプでの致死的感染に対する株間保護を促進した(Keating, R et al. (2013) Nat Immunol. 14:2166-2178)。ここに記載した結果は、RAD001がインフルエンザワクチン接種2週間前にRAD001を中止した高齢対象におけるB細胞クラススイッチングを改変したことを示さなかった。基礎機構をさらに解明する必要があるが、ここに記載する異種インフルエンザ株に対する血清学的応答の増加は、インフルエンザの季節性ワクチンと地域社会で広まっている株があまり適合していない年のインフルエンザ疾病に対する保護の増強に寄与し得る。
【0793】
インフルエンザ抗体力価に対するRAD001の効果は、高齢者のインフルエンザワクチン接種に対する応答の増加について承認されているMF59ワクチンアジュバントの効果と同等であった(Podda, A (2001) Vaccine 19:2673-2680)。それゆえに、インフルエンザワクチン接種に対する抗体応答のRAD001駆動増強は、高齢者におけるMF59アジュバント添加インフルエンザワクチンで証明される臨床的利益に翻訳され得る(Iob, A et al. (2005) Epidemiol Infect. 133:687-693)。しかしながら、RAD001はまた臓器移植患者の免疫応答の抑制にも使用される。これらの外見上逆説的な結果は、mTOR阻害剤の免疫調節効果が用量および/または抗原依存性であり得る可能性を惹起する(Ferrer, IR et al. (2010) J Immunol. 185:2004-2008)。逆RAD001暴露/ワクチン接種応答相関の傾向がここで見られた。完全なmTOR阻害は通常のシクロフィリン−ラパマイシン機構を介して免疫機能を抑制するが、部分的mTOR阻害は、少なくとも高齢者において、異なる加齢関連表現型阻害により免疫機能を増強する可能性がある。興味深いことに、mTOR活性は、高齢動物モデルにおける造血幹細胞を含む多様な組織で増加する(Chen C. et al. (2009) Sci Signal 2:ra75 and Barns, M. et al. (2014) Int J Biochem Cell Biol. 53:174-185)。それゆえに、mTOR活性の、若い組織で見られるレベルへの下落が、mTOR活性のより完全な抑制とは逆に、老化減少適応症に臨床的利益があり得る。
【0794】
加齢関連適応症の処置におけるRAD001のようなmTOR阻害剤の安全性プロファイルは懸念されている。腫瘍学または臓器移植適応症で使用される用量でのRAD001の毒性は、多くの加齢関連適応症では許容されないであろう口内炎、下痢、悪心、血球減少、高脂血および高血糖を含む。しかしながら、これらのAEは、血中のRAD001のトラフレベルに関係する。それゆえに、本治験で使用したRAD001投与レジメンは、トラフレベルを最少化するように選択した。0.5mg連日、5mg毎週および20mg毎週投薬コホートの平均RAD001トラフレベルは、それぞれ0.9ng/ml、0.3ng/ml(定量下限)未満および0.7ng/mlであった。これらのトラフレベルは、臓器移植および癌患者で使用される投与レジメンと関係するトラフレベルより顕著に低い。さらに、6週間の限られた処置コースが有害事象のリスクを減らした。これらの結果は、この治験で使用された投与レジメンが、高齢者のある状態については許容されるリスク対効果を有し得ることを示唆する。それにもかかわらず、ここに記載した試験の対象の相当数が、0.5mg連日ほど低い投薬でも口腔内潰瘍を発症した。それゆえに、低い、免疫増強用量RAD001の安全性プロファイルはさらなる治験を必要とする。現在利用可能なラパログよりも問題のない安全性プロファイルを有するmTOR阻害剤は、将来加齢関連状態における良好な治療選択肢を提供し得る。
【0795】
実施例14:高齢者対象におけるワクチンに対する免疫応答の増強
免疫機能は高齢者で低下し、感染発生率増加およびワクチン接種に対する応答減少に至る。mTOR阻害がヒトにおいて抗加齢効果を有するかの決定の第一段階として、無作為化プラセボ対照治験を実施し、mTOR阻害剤RAD001が、高齢志願者におけるワクチン接種に対する応答により評価された免疫機能の加齢関連低下を反転させるかを決定した。全例で、適切な患者同意を得て、治験は国の保健機関により承認された。
【0796】
RAD001の次の3投与レジメンを治験で使用した:
20mg毎週(トラフレベル:0.7ng/ml)
5mg毎週(トラフレベルは検出限界以下であった)
0.5mg連日(トラフレベル:0.9ng/ml)
【0797】
移植および腫瘍適応症で承認されているRAD001の用量より低いトラフレベルのために、これらの投与レジメンを選択した。トラフレベルは、体内の薬物の最低レベルである。10mg連日腫瘍学投与レジメンに付随するRAD001のトラフレベルは約20ng/mlである。0.75〜1.5mg bid移植投与レジメンに付随するトラフレベルは約3ng/mlである。対照的に、我々の免疫化治験で使用した投与レジメンに付随するトラフレベルは3〜20倍低かった。
【0798】
RAD001関連AEがトラフレベルと関係するため、3投与レジメンは正常志願者に対する適切な安全性を有することが予測された。さらに、3用量は、一定範囲のmTOR阻害を与えることが予想された。P70 S6キナーゼ(P70 S6K)は、mTORによりリン酸化される下流標的である。P70 S6Kリン酸化のレベルは、mTOR活性の指標として働く。RAD001の前臨床試験および臨床試験で得たP70 S6Kリン酸化データのモデリングおよびシミュレーションに基づき、20mg毎週が丸一週間mTOR活性をほぼ完全に阻害すると予測され、一方5mg毎週および0.5mg連日はmTOR活性を一部阻害すると予測された。
【0799】
65歳以上の高齢志願者を、3つのRAD001処置群(50対象/アーム)またはプラセボ(20対象/アーム)の一つに無作為化した。対象を治験薬物で6週間処置し、2週間休薬し、インフルエンザワクチン接種(Aggrippal, Novartis)および肺炎球菌ワクチン接種(Pneumovax 23, Merck)をした。インフルエンザワクチン接種に対する応答を、ワクチン接種4週間後、インフルエンザワクチンの3インフルエンザ株(H1N1、H3N2およびBインフルエンザサブタイプ)に対する血球凝集阻害アッセイによる幾何平均力価(GMTs)の測定により評価した。治験の主要評価項目は(1)安全性および耐容性および(2)ワクチン接種4週間後、プラセボと比較した、インフルエンザワクチン株の2/3のインフルエンザ力価の1.2倍増加であった。このエンドポイントは、インフルエンザ力価の1.2倍増加が、ワクチン接種後のインフルエンザ疾病の減少と関連し、それゆえに臨床的に適切であるために、選択した。5mg毎週および0.5mg 1日用量は十分耐容性であり、20mg毎週用量と異なり、GMT主要評価項目を満たした(
図33A)。高齢志願者においてプラセボと比較して、RAD001がインフルエンザワクチン接種に対する応答を改善しただけでなく、肺炎球菌ワクチン接種に対する応答も改善した。肺炎球菌ワクチンは、23種の肺炎球菌血清型からの抗原を含む。血清型の7種に対する抗体力価を我々の対象で測定した。6/7血清型に対する抗体力価が、プラセボと比較して全3つのRADコホートで増加した。
【0800】
合わせたインフルエンザおよび肺炎球菌力価データは、部分的(80〜100%未満)mTOR阻害が、完全なmTOR阻害よりも免疫機能における加齢関連低下の反転により有効であることを示す。
【0801】
実施例15:低用量mTOR阻害はエネルギーおよび運動を増やす
前臨床モデルにおいて、ラパログであるラパマイシンでのmTOR阻害は、老齢マウスにおける自発的身体活動性を増加させる(Wilkinson et al. Rapamycin slows aging in mice. (2012) Aging Cell; 11:675-82)。興味深いことに、実施例2に記載した0.5mg連日投薬コホートの対象も、投与1年後のアンケートで、プラセボと比較してエネルギーおよび運動能の増加を報告した(
図39)。これらのデータは、ラパログでの部分的mTOR阻害が、単なる免疫機能を超えて加齢関連罹病率に対する効果を有し得ることを示唆する。
【0802】
実施例16:RAD001でのP70 S6キナーゼ阻害
モデリングおよびシミュレーションを実施し、mTOR活性を部分的に阻害すると予測されるRAD001の連日および毎週用量範囲を予測した。上記のとおり、P70 S6KはmTORによりリン酸化され、P70 S6Kのノックアウトが寿命を増加するため加齢とより密接に結びついたmTORの下流標的である。それゆえにモデリングを、P70 S6K活性を一部阻害するRAD001の用量で行った。≧0.1mgおよび<20mgの範囲の毎週投薬がP70 S6K活性の部分的阻害を達成すると予測される(
図40)。
【0803】
連日投薬について、30pM〜4nMの濃度のRAD001が細胞株におけるP70 S6K活性を部分的に阻害する(表13)。これらの血清濃度は、≧0.005mg〜<1.5mg連日のRAD001の用量で達成されると予測される。
【表51】
【0804】
結論
P70 S6Kを部分的にしか阻害しない用量のmTOR阻害剤を用いる、加齢関連罹患を処置するまたは一般に免疫応答を増強する方法。加齢適応症における低用量のRAD001での部分的mTOR阻害の有効性は予想外の発見である。≧0.1mg〜<20mg毎週および≧0.005mg〜<1.5mg連日のRAD001用量範囲が部分的mTOR阻害を達成し、それゆえに加齢関連罹患または免疫応答の増強に有効性を有することが期待される。
【0805】
実施例17:卵巣癌におけるMSLN CART
2×10
6メソテリンCAR T細胞の単回投与の抗腫瘍活性を、実施例8に記載のとおり、先に卵巣腫瘍マウスモデルでインビボで評価した。実施例8に記載のような、本モデルにおけるM5およびM11 CAR T細胞での抗腫瘍活性が増加されるかを見るために、腫瘍体積が平均150mm
3となったときである腫瘍移植14日後に高用量の4×10
6メソテリンCAR T細胞を投与し、同一用量のCAR T細胞を再投与した。マウスの半分は、CAR T細胞の二回目の同一用量を5日後に受け、これが先にこのモデルで見られた抗腫瘍活性を増強するかを見た。
【0806】
材料および方法:
細胞株:OVCAR8は、卵巣腺癌を有する64歳女性患者に由来し、mCherryを発現するように形質導入されているヒト卵巣癌細胞株である。細胞を10%ウシ胎児血清含有RMPI培地で増殖させた。この細胞株は、組織培養フラスコに接着性で増殖する。この細胞株は、側腹部に皮下的にインプラントし、マトリゲルと混合したとき、マウスで腫瘍を形成する。移植中のマトリゲルの細胞への付加は、マトリクスがマウスの側腹部で発達することを可能にし、これが腫瘍細胞が増殖開始するための構造を提供する。10〜12日間にわたり、マトリゲルプラグは分解し、残った固形腫瘍は腫瘍細胞および周辺間質細胞からなる。OVCAR8細胞はmCherryを発現するように修飾されており、そのため腫瘍細胞増殖をマウスの造影によりモニターもできる。
【0807】
マウス:6週齢NSG(NOD.Cg-Prkdc
scidIl2rg
TM1Wjl/SzJ)マウスをJackson Laboratory(stock number 005557)から得た。動物は、Novartis NIBRI animal facilityで少なくとも3日気候馴化させ、その後実験した。動物を、Novartis ACUC regulations and guidelinesに従い取り扱った。動物同定用電子トランスポンダを、腫瘍移植1日前に左側腹部にインプラントした。腫瘍移植前に、マウスの右側腹部を剪毛した。
【0808】
腫瘍移植:対数期のOVCAR8細胞を、0.25%トリプシン−EDTAでトリプシン処理後に採取した。細胞を50mlファルコンチューブで、1200rpmで5分、1回増殖培地中、次いで2回冷無菌PBSで洗浄した。細胞を、100×10
6/mlの濃度でPBSに再懸濁し、氷上に置いた。細胞を含むPBS溶液を、次いで、マトリゲルと1:1で混合し、50×10
6細胞/ml PBS−マトリゲルの最終濃度を得た。細胞を氷上に置き、直ぐにマウスにインプラントした。腫瘍を、200μlを右側腹部に皮下にインプラントした。
【0809】
OVCAR8モデルは、内因性にメソテリンを発現し、それゆえに、CAR T細胞に指向性のメソテリンのインビボ有効性の試験に使用できる。このモデルは、マウスの側腹部に皮下インプラントしたとき良好に増殖し、腫瘍体積測定のためにカリパス測定できる。PBSおよびマトリゲルの50:50混合物中10×10
6腫瘍細胞の移植により、1週間で腫瘍は確立され、適格に測定できる。13〜15日以内に、平均腫瘍体積は100〜200mm
3になり、腫瘍は60〜65日までにエンドポイント体積(1000〜1200mm
3)に達する。治療剤の抗腫瘍活性は、しばしば、腫瘍が完全に生着し、マトリゲルが再吸収されたら試験する。それゆえに、CAR T細胞の抗腫瘍活性が観察できるまでに、このモデルには大きな窓がある。
【0810】
CAR T細胞投薬:マウスに4×10
6 CAR T細胞(13.3×10
6総T細胞)を腫瘍移植14日後に投与した。細胞を37℃水浴で一部解凍し、細胞を含むチューブへの1mlの冷無菌PBS添加により完全に解凍した。解凍した細胞を15mlファルコンチューブに移し、PBSで最終体積10mlに調節した。細胞を、各時1000rpmで10分で洗浄し、次いで血球計数器で計数した。次いで、T細胞を133×10
6細胞/ml 冷PBSの濃度で再懸濁し、マウスに投与するまで氷上に置いた。マウスに、マウスあたり4×10
6 CAR T細胞(13.3×10
6総T細胞)用量の100μlのT細胞を尾静脈から静脈内注射した。7匹のマウス/群は100μlのPBS単独(PBS)またはアイソタイプCARを形質導入したT細胞(アイソタイプ)のいずれかで処置した。14匹のマウス/群を、SS1メソテリンCAR T細胞、M5メソテリンCAR T細胞またはM11メソテリンCAR T細胞のいずれかで処置した。5日後、SS1、M5およびM11群を半分に分け、各群7匹のマウスを、同一の二回目のCAR T細胞で処置した。群はSS1単(1用量のSS1 CAR T細胞)、SS1二倍(2用量のSS1 CAR T細胞)、M5単(1用量のM5 CAR T細胞)、M5二倍(2用量のM5 CAR T細胞)、M11単(1用量のM11 CAR T細胞)、M11二倍(2用量のM11 CAR T細胞)として同定した。アイソタイプT細胞、SS1 T細胞、M5 T細胞およびM11 T細胞は、全て、平行して同じドナーから調製した。
【0811】
動物モニタリング:週2回の体重測定を含み、マウスの健康状態を毎日モニターした。体重の変化パーセントを(BW
現在−BW
初期)/(BW
初期)×100%として計算した。腫瘍を週に2〜3回、カリパス測定によりモニターし、腫瘍体積(TV)を楕円体式:TV(mm
3)=((長さ×幅
2)×3.14159))/6を使用して計算した。腫瘍体積を、平均±平均の標準誤差(SEM)として報告する。処置/対照(T/C)値パーセントを次の式:
ΔT≧0であるならば、%T/C=100×ΔT/ΔC;
ΔT<0であるならば、%退縮=100×ΔT/T
初期;
(式中、T=試験最終日の薬物処置群の平均腫瘍体積であり、T
初期=投薬初日の薬物処置群の平均腫瘍体積であり、ΔT=試験最終日の薬物処置群の平均腫瘍体積−投薬初日の薬物処置群の平均腫瘍体積であり、C=試験最終日の対照群の平均腫瘍体積であり、ΔC=試験最終日の対照群の平均腫瘍体積−投薬初日の対照群の平均腫瘍体積である)
を使用して計算した。100%〜42%の範囲のT/C値は、抗腫瘍活性がないか最小限であると解釈し、<42%および>10%のT/C値は抗腫瘍活性または腫瘍増殖阻害を有すると解釈する。T/C値≦10%または退縮値≧−10%は腫瘍静止と解釈する。退縮値<−10%は退縮と記録する。
【0812】
結果:
メソテリンCAR T細胞の抗腫瘍活性を、皮下卵巣腺癌異種移植モデルで評価した。0日目の腫瘍細胞移植後、腫瘍担持マウスを処置群に無作為化し、4×10
6 CAR T細胞(13.3×10
6総T細胞)を、腫瘍移植14日後、外側尾静脈から静脈内注射した。2回目の同一用量のT細胞を、5日後にマウスの半分に与えた。腫瘍増殖および動物の健康状態を、動物がエンドポイントを達成するまでモニターした。全群のマウスを57日目〜62日に、腫瘍が、動物ボディ・コンディション・スコアを変化させる、潰瘍の徴候を示し始めたときに殺した。
【0813】
全処置群の平均±SEM腫瘍体積を
図43にプロットする。T細胞を受けなかったPBS処置群は、皮下にインプラントされたNSGマウスのベースラインOVCAR8腫瘍増殖動態学を示す。アイソタイプ処置群は、対照CARで形質導入したT細胞を受けた。これらの細胞は、このモデルにおけるヒトドナーT細胞の非特定の応答を示すためのT細胞対照として働く。PBSおよびアイソタイプ処置群の両者は、本試験を通した継続的腫瘍進行を示す。アイソタイプ群は、ドナーT細胞の背景活性によりわずかに遅い腫瘍増殖を示す。先の試験に類似して、4×10
6 CAR
+ T細胞の単回投与は、SS1処置群の腫瘍増殖を変化させなかった。二回投与のSS1 CAR T細胞は、同様にOVCAR8腫瘍増殖を変化させなかった。M5およびM11単回投与群は、先の2×10
6 CAR
+ T細胞を投与したときと同様、明確な抗腫瘍活性を示す。M5およびM11二回投与群の両者とも、単回投与群と比較して、抗腫瘍活性の増加を示した。これらの群の腫瘍は、腫瘍増殖阻害とは対照的に、退縮を示した。M5二回投与群は、7匹中4匹のマウスで、複数の時点で測定可能な腫瘍なく、完全な退縮を示す。
【0814】
アイソタイプ群に対する腫瘍体積変化(デルタT/C%)を、腫瘍潰瘍化によりマウスを除く前の、最後の腫瘍体積測定である52日目に計算した。表14は、各群のデルタT/C値を示す。SS1単および二回投与群のいずれも、PBS対照処置群と同様抗腫瘍活性を示さなかった。M5単回投与群は、デルタT/C値30.28%で腫瘍増殖阻害を示し、M5二回投与群は、−63.90%の退縮値で退縮を示した。M11単回投与群は、デルタT/C値52.91%で最小の抗腫瘍活性を示し、M11二回投与群はまた−15.80%の退縮値で退縮を示した。
【表52】
【0815】
考察:
この試験は、メソテリン特異的CAR T細胞(M5およびM11)が、最初のT細胞投与5日後に2回目の投与をしたとき、OVCAR8腫瘍の退縮をもたらすことができることを示した。この応答は、M5およびM11 CAR T細胞の両者の単回投与後の抗腫瘍活性とともに、耐久性がある。さらに、M5二回投与群における7匹中4匹のマウスが、カリパスまたは触診で測定可能な腫瘍がない完全な退縮を示す。
【0816】
例えば、実施例8において先に見られるように、M5またはM11 CAR T細胞の2×10
6 CAR T細胞の単回投与は、NSGマウスのOVCAR8異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性および静止状態のようなものが示される。本実験において、4×10
6 M5またはM11 CAR T細胞の単回投与は同じ結果を示す。アイソタイプCAR T細胞またはSS1 CAR T細胞と比較して、M5およびM11群は、単回投与でも明確な抗腫瘍活性を示す(
図43)。SS1 CAR T細胞の2回目の投与は抗腫瘍応答の増加を示さない。しかしながら、M5またはM11 CAR T細胞の2回目の投与は、これら両群で抗腫瘍応答を増強させ、腫瘍の退縮に至る。
【0817】
M5およびM11 CAR T細胞の抗腫瘍活性増加は、いくつかの機構が原因であり得る。第一には、高用量のCAR T細胞はOVCAR8モデルにおける退縮を達成することである。CAR T細胞の用量を、例えば、8×10
6 CAR T細胞に、例えば、単回投与で増やすと、抗腫瘍活性が増強され、退縮をもたらし得る。他の機構は、さらなる用量のCAR T細胞が抗腫瘍活性および腫瘍退縮を改善することである。例えば、初回投与は、CAR T細胞の増殖およびT細胞によるサイトカイン産生により、いくぶん抗腫瘍活性を生じ得る。さらなる投与、例えば、細胞がまだ増殖中の5日後に2回目の投与をすると、先に投与されたCAR T細胞により既に産生されているサイトカインにより、細胞の活性が増加し得る。
【0818】
さらに、先の試験は、OVCAR8腫瘍へのCAR T細胞の浸潤を示している。CAR T細胞の浸潤はまた、CD8
+(細胞毒性)T細胞の大きな浸潤があるかを決定するために、CAR T細胞の二回投与を受けたマウスでも試験する。CAR T細胞の残留性もこれらのマウスの脾臓および骨髄における細胞の解析により評価する。
【0819】
実施例18:水素−重水素交換マススペクトロメトリーによるエピトープマッピング
水素−重水素交換(HDX)マススペクトロメトリーを実施して、scFv構築物SS1およびM5により認識されているエピトープに貢献するメソテリンの領域を予測した。HDXにおいて、標的タンパク質のアミド主鎖の水素を重水素と交換する。標的タンパク質と結合タンパク質、例えば、抗体の間の相互作用は、標的タンパク質の領域を溶媒到達性から“保護”し、それにより標的タンパク質と結合タンパク質の界面の水素交換を阻止する。したがって、HDXマススペクトロメトリーを使用して、タンパク質結合界面のマッピング、例えば、抗体のエピトープの予測のためにプローブできる。
【0820】
実施例2に記載のように、SS1に対するSPRベースのエピトープビニングによるscFv構築物M5、M11、M12、M14、M16、M17、M21およびM23の解析は、M5およびM11がSS1と異なるエピトープに結合することを示した。SS1およびM5により結合され得るヒトメソテリンの領域への見識を深めるために、HDXマススペクトロメトリーを次のとおり実施した。
【0821】
発現プラスミドのクローニング
メソテリン(Uniprot Q13421)のアミノ酸Val297〜Gly588に対応するDNAフラグメントを、それぞれ5’および3’で制限部位HindIIIおよびEcoRIを使用して哺乳動物発現ベクターにクローン化した。その後、分泌シグナルを、アミノ酸
【化49】
に対応するアミノ末端に導入した。カルボキシル末端に、アミノ酸
【化50】
に対応するV5−Hisタグも導入した。3箇所の予想グリコシル化部位N388Q、N496QおよびN523Qを変異させた。最終の発現配列を下に示す。
グリコシル化欠損メソテリン(296−588;N388Q、N496Q、N523Q)
【化51】
【0822】
M5 IgG(例えば、配列番号43)に対応するscFvも同様に哺乳動物発現ベクターにN末端リーダー
【化52】
およびC末端8ヒスチジン精製タグ
【化53】
を用いてクローン化した。最終の発現配列を下に示す。
【化54】
【0823】
タンパク質発現および精製
メソテリンおよびscFv M5の両者を、Expi293発現系(Life Technologies)においてCMVプロモーターの制御下に発現させた。メソテリンおよびscFvプラスミドを、Opti−MEM培地(Life Technologies)中、1mgの各精製プラスミドおよび5mgのポリエチレンイミン(PEI)を使用して、2.3×10
6細胞/mLの密度および生存能>97%で2LのExpi293細胞に共遺伝子導入した。メソテリンを、1mgのプラスミドDNAおよび2.5mgの PEIを使用する1Lの細胞以外、類似のプロトコールに従い、単独でも遺伝子導入した。遺伝子導入を5日間継続し、細胞を生存能が80%に達したとき収集した。
【0824】
生存能が80%に低下すると、細胞および馴化を開始し、4000×gで10分遠沈した。次いで馴化培地を0.22μMフィルターで濾過して、あらゆる残骸を浄化し、一夜、RocheのcOmplete His-Tag Purification Resinと共に4
oCで撹拌した。計3mLのビーズをscFv−M5/メソテリン馴化培地に添加し、1.5mLのビーズをメソテリン単独培地に添加した。
【0825】
翌朝、ビーズをBio-Rad Econo-Columnに載せ、15カラム体積の50mM Tris.Cl pH=8.0、300mM NaCl、続いて8カラム体積の50mM Tris.Cl pH=8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾールで洗浄した。次いでタンパク質を50mM Tris.Cl pH=8.0、300mM NaCl、250mMイミダゾールでカラムから溶出した。溶出サンプルを回収し、6mLに濃縮し、20mM HEPES pH=7.4、150mM NaCl中、AKTAxpress(GE)に連結したSuperdex 75 16/60カラムに載せた。メソテリン:M5複合体またはメソテリン単独の予測サイズに対応する溶出物を回収し、5mg/mLに濃縮した。
【0826】
水素−重水素交換/マススペクトロメトリーによるエピトープマッピング
マススペクトロメトリー(MS)と組み合わせた水素−重水素交換(HDx)(Woods VL, Hamuro Y (2001) High Resolution, High-Throughput Amide Deuterium Exchange-Mass Spectrometry (DXMS) Determination of Protein Binding Site Structure and Dynamics: Utility in Pharmaceutical Design. J. Cell. Biochem. Supp.; 84(37): 89-98)を使用して、ここで、hMSLN
296〜588(配列番号278)と呼ぶ、ヒトメソテリン(296〜588)上のscFv抗体M5およびSS1の推定結合部位をマップした。HDxにおいて、タンパク質の交換可能アミド水素を重水素に置き換える。この過程は、タンパク質構造/動力学および溶媒到達性に感受性であり、それゆえに、リガンド結合により重水素取り込みの減少を受けている位置を報告できる。
【0827】
HDx/MS実験を、文献に記載のものに類似する方法を使用して実施した(Chalmers MJ, Busby SA, Pascal BD, He Y, Hendrickson CL, Marshall AG, Griffin PR (2006) Probing protein ligand interactions by automated hydrogen/deuterium exchange mass spectrometry. Anal. Chem.; 78(4): 1005-1014.Chalmers, 2006)。実験を、LEAPオートサンプラー、nanoACQUITY UPLCおよびSynapt G2マススペクトロメーターを含むWaters HDx/MSプラットフォームで実施した。重水素でhMSLN
296〜588のタンパク質主鎖を標識するために使用した重水素緩衝液は、25mM HEPES、150mM NaCl、pH7.4であり、溶液中の重水素の全般的なパーセンテージは94.5%であった。抗体不在下のhMSLN
296〜588重水素標識実験のために、6.9μl体積の400pmolのhMSLN
296〜588を100μlの重水素緩衝液を使用して15分、4℃で希釈した。次いで標識反応を100μlの冷却クエンチ緩衝液で2℃で3分停止させ、続いてLC−MS系に自動化ペプシン消化およびペプチド解析のために注入した。
【0828】
scFv M5存在下のhMSLN
296〜588重水素標識実験のために、体積6.9μlのM5と共発現した400pmolのhMSLN
296〜588を、100μlの重水素緩衝液を15分、4℃で使用して希釈した。次いで標識反応を100μlの冷却クエンチ緩衝液で2℃で3分停止させ、続いて自動化ペプシン消化およびペプチド解析のためにLC−MS系に注入した。scFv SS1存在下のhMSLN
296〜588重水素標識実験のために、400pmolのhMSLN
296〜588を480pmolのSS1 scFvと組み合わせる。30分、4℃でSS1とhMSLN
296〜588をインキュベーション後、総量6.9μlを100μlの重水素緩衝液を15分、4℃で使用して希釈した。次いで標識反応を100μlの冷却クエンチ緩衝液で2℃で3分停止させ、自動化ペプシン消化およびペプチド解析のためにLC−MS系に注入した。
【0829】
全ての重水素交換実験を、0.5M TCEPおよび3M 尿素(pH=2.6)を使用して反応停止させた。反応停止後、交換された抗原を、Poroszyme Immobilized Pepsinカラム(2.1×30mm)を12℃で使用するオンラインペプシン消化と続くWaters Vanguard HSS T3トラップカラムによるトラップに付した。ペプチドをトラップカラムから溶出し、Waters BEH C18 1×100mmカラム(1℃に維持)で、40μl/分の流速で、2〜35%B(移動相Aは99.9%水および0.1%ギ酸であり、移動相Bは99.9%アセトニトリルおよび0.1%ギ酸であった)の二元8.4分勾配を使用して分離した。
【0830】
重水素交換実験によりモニターしたhMSLN
296〜588からのペプチドを
図44に示す(各棒はペプチドを示す)。hMSLN
296〜588の80%を超える範囲が達成された。
【0831】
結合した状態の抗体と未結合の状態の抗体(M5またはSS1)間の差次的実験のために、これら2つの状態間の重水素取り込みの差を試験することは有益である。
図45Aおよび45Bにおいて、負の値はメソテリン−抗体複合体がメソテリン単独と比較して重水素取り込みが少ないことを示す。重水素取り込みの減少は、交換可能重水素からの領域の保護または水素結合ネットワークの安定化によるものであり得る。対照的に、正の値は、該複合体がメソテリン単独と比較して重水素取り込みが多いことを示す。重水素取り込みの増加は、水素結合ネットワークの脱安定化(すなわちタンパク質の局在的変性)によるものであり得る。
【0832】
アポメソテリン(apo mesolethin)とSS1またはM5のいずれかと複合体化したメソテリンの間の差次的重水素交換は、1)差が0.75Daより大きいならば、または差が0.75Da以下である場合、2)差が0.2Daより大きく、テューキー検定を使用したとき統計的に有意である(p<0.01)ならば、有意と考えた。例えば、Houde D, Berkowitz SA, Engen JR (2010) The Utility of Hydrogen/Deuterium Exchange Mass Spectrometry in Biopharmaceutical Comparability Studies. J. Pharma. Sci.; 100(6): 2071-2086; Chalmers, MJ, Pascal BD, Willis S, Zhang J, iturria SJ, Dodge JA, Griffin PR (2011) Methods for the Analysis of High Precision Differential Hydrogen Deuterium Exchange Data Int. J. Mass Spectrom.; 302(1-3): 59-68参照。
【0833】
図45Aは、メソテリンのアミノ酸297位から464位のM5−メソテリン複合体の差次的重水素取り込み(黒色棒)およびSS1−メソテリン複合体の差次的取り込み(灰色棒)を示す。この領域を超えて、メソテリンへのM5の結合は保護を起こさず、一部極わずかな脱安定化が観察される。対照的に、メソテリンへのSS1の結合は、次のペプチドに有意な保護をもたらした:297〜315、315〜322、316〜325、337〜346、337〜349、350〜375および369〜376。ペプチド297〜315、315〜322、316〜325、337〜346、337〜349の保護は、残基E313、F317、K319、P343およびY346がエピトープの相当部分を形成する、公表された結晶学構造と一致する((Ma J, Tang WK, Esser L, Pastan I, Xia D (2012) Recognition of Mesotehlin by the Therapuetic Antibody MORAb-009 J. Biol. Chem.; (287)40: 33123-33131)。
図45Bは、メソテリンのアミノ酸位置458〜586についての差次的重水素取り込みを示す。この領域を超えて、M5の結合は、次のペプチドに有意な保護をもたらした:481〜490、483〜490、498〜510、501〜507、531〜540、532〜540、532〜546、537〜546、545〜558、546〜569、547〜560、558〜571、561〜572。重複ペプチドの保護を比較することにより、我々は、領域485〜490、498〜507、532〜537および545〜572がM5−メソテリン複合体で顕著に保護されていると推定した。対照的に、SS1−メソテリン複合体は、上記基準を使用して、顕著に保護された領域458〜586におけるいずれのペプチドも含まなかった。
【0834】
図46は、M5およびSS1複合体両者の保護領域の概要を示す。これらのデータは、M5が排他的にメソテリンのC末端側に対して保護し、アミノ酸残基485〜490、498〜507、532〜537および545〜572がM5−メソテリン相互作用に寄与し得ることを示唆する。対照的に、SS1は排他的にメソテリンのN末端側に対して保護し、SS1より保護される領域およびM5より保護される領域との重複は見られなかった。SS1とM5の2個の異なる保護パターンの観察は、M5がSS1と異なるエピトープに結合する可能性を示唆する。M11は、M5と比較して、MSLNと類似の領域に結合することが予測される?M11およびM5は同一CDR3領域を含み、軽鎖および重鎖の両者に高相同性を有する。
【0835】
均等物
ここに引用した各および全ての特許、特許出願および刊行物の開示は、その全体を引用により本明細書に包含させる。本発明を特定の面を引用して開示しているが、本発明の他の面およびバリエーションが、他の当業者により、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく考案され得る。添付する特許請求の範囲は、全てのこのような面および同等のバリエーションを含むと解釈されることを意図する。