(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779791
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】アレイ基板、それを備える表示装置、及び該アレイ基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/24 20060101AFI20201026BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20201026BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20201026BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20201026BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20201026BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20201026BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20201026BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20201026BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20201026BHJP
G09F 9/302 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
H05B33/24
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 C
H05B33/22 Z
H05B33/22 C
H05B33/10
H05B33/26 Z
G09F9/30 365
G09F9/30 338
G09F9/30 349Z
G09F9/00 338
G09F9/302
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-570953(P2016-570953)
(86)(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公表番号】特表2018-518792(P2018-518792A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】CN2015099241
(87)【国際公開番号】WO2016197582
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2018年7月24日
(31)【優先権主張番号】201510324123.5
(32)【優先日】2015年6月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミン・フン・シュー
【審査官】
倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−539653(JP,A)
【文献】
特開2010−108706(JP,A)
【文献】
特開2006−236947(JP,A)
【文献】
特開2012−123987(JP,A)
【文献】
特開2010−040523(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0112234(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0095279(US,A1)
【文献】
特開2012−134569(JP,A)
【文献】
特開2010−062067(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0212687(US,A1)
【文献】
再公表特許第2013/073670(JP,A1)
【文献】
特開2006−032327(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0327263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L27/32;H05B33/00−33/28;
H01L51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発光領域と、前記第1発光領域と構造的に異なる第2発光領域を有するサブ画素を備え、
前記サブ画素は、
ベース基板にある第1電極と、
前記第1電極の前記ベース基板から離れた側に同じ材料からなる、前記第1発光領域にある第1発光層及び前記第2発光領域にある第2発光層と、
前記第1発光領域において前記第1発光層と前記第1電極の間にある第1チューニング層と、
前記第2発光領域において前記第2発光層と前記第1電極の間にある第2チューニング層と、
を備え、
前記第2チューニング層は、前記第1チューニング層と異なる特性を有し、
前記第1発光領域におけるターンオン電圧が、前記第2発光領域におけるターンオン電圧とは異なり、
前記第2チューニング層は、前記第1チューニング層と異なる材料からなり、
前記サブ画素は、前記第1発光領域と前記第2発光領域の間に画素定義層を更に備えることを特徴とするアレイ基板。
【請求項2】
前記第1発光領域と前記第2発光領域は、N個の第1サブ発光領域とM個の第2サブ発光領域に交互に囲まれる中央第2サブ発光領域を有する層状のリング構造であり、Nは1以上の整数であり、MはN又はN−1と等しいことを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項3】
N=1、かつM=0であることを特徴とする請求項2に記載のアレイ基板。
【請求項4】
前記サブ画素は、N個の前記第1サブ発光領域において前記第1発光層の前記ベース基板に近い側に第1正孔注入層と、前記中央第2サブ発光領域とM個の前記第2サブ発光領域において前記第2発光層の前記ベース基板に近い側に第2正孔注入層と、を更に備え、
前記第1正孔注入層は、前記第1チューニング層と接触することを特徴とする請求項2に記載のアレイ基板。
【請求項5】
前記第1正孔注入層と前記第2正孔注入層は、一体として形成されることを特徴とする請求項4に記載のアレイ基板。
【請求項6】
前記第1発光領域は、少なくとも1つの第1サブ発光領域を有し、
前記第2発光領域は、少なくとも1つの第2サブ発光領域を有し、
前記少なくとも1つの第1サブ発光領域と前記少なくとも1つの第2サブ発光領域は、交互に配置され、前記少なくとも1つの第1サブ発光領域の各々は前記少なくとも1つの第2サブ発光領域に隣接し、前記少なくとも1つの第2サブ発光領域の各々は前記少なくとも1つの第1サブ発光領域に隣接することを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項7】
前記第1発光層は直列に接続された複数の第1サブ発光層を備え、前記第2発光層は直列に接続された複数の第2サブ発光層を備えることを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項8】
前記第2チューニング層は、前記第1チューニング層と異なる厚さであることを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項9】
前記第1チューニング層は、前記第2チューニング層よりおよそ25nm〜およそ40nm厚いことを特徴とする請求項8に記載のアレイ基板。
【請求項10】
前記第1チューニング層は、およそ25nm〜およそ40nmの厚さであることを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項11】
前記サブ画素は、前記第1発光領域において前記第1発光層の前記ベース基板に近い側に第1正孔注入層と、前記第2発光領域において前記第2発光層の前記ベース基板に近い側に第2正孔注入層と、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項12】
前記第1発光領域の開口率と前記第2発光領域の開口率間の比率は、前記第1発光領域と前記第2発光領域との間のターンオン電圧の差異と相関することを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のアレイ基板を備える表示装置。
【請求項14】
第1発光領域と、前記第1発光領域と構造的に異なる第2発光領域を有するサブ画素を備えるアレイ基板の製造方法において、
ベース基板に第1電極を形成する手順と、
前記第1電極の前記ベース基板から離れた側において、前記第1発光領域に第1発光層を形成し、前記第2発光領域に前記第1発光層と同じ材料からなる第2発光層を形成する手順と、
前記第1発光領域において、前記第1発光層と前記第1電極の間に第1チューニング層を形成する手順と、
前記第2発光領域において、前記第2発光層と前記第1電極の間に第2チューニング層を形成する手順と、
を含み、
前記第2チューニング層は、前記第1チューニング層と異なる特性を有し、
前記第1発光領域におけるターンオン電圧が、前記第2発光領域におけるターンオン電圧とは異なり、
前記第1チューニング層と前記第2チューニング層とは、異なる材料を用いて形成され、
前記サブ画素は、前記第1発光領域と前記第2発光領域の間に画素定義層を更に備えることを特徴とするアレイ基板の製造方法。
【請求項15】
前記第1発光領域において前記第1発光層の前記ベース基板に近い側に第1正孔注入層を形成する手順と、前記第2発光領域において前記第2発光層の前記ベース基板に近い側に第2正孔注入層を形成する手順を更に含むことを特徴とする請求項14に記載のアレイ基板の製造方法。
【請求項16】
前記第1発光層と前記第2発光層を、同じ材料で単一の処理によって形成することを特徴とする請求項14に記載のアレイ基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年6月12日に提出した中国特許出願No.201510324123.5の優先権を主張し、その全体が参照により本出願に援用される。
【0002】
本発明は表示技術に関し、特にアレイ基板、それを備える表示装置、及び該アレイ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タンデム型の白色有機発光ディスプレイ(OLED)は、その高い発光効率のために益々主流になりつつある。タンデム型のOLEDの製造には精密な金属マスク(FMM)又はその他の複雑なパターニング処理を必要としないため、フルカラーで、かつ表示面積の広いディスプレイを製造しやすい。近年、タンデム型のOLEDは表示技術において広く応用され、研究及び開発の焦点となっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの態様は、第1発光領域と、第1発光領域と構造的に異なる第2発光領域を有するサブ画素を備えるアレイ基板を提供する。該サブ画素は、ベース基板にある第1電極と、第1電極のベース基板から離れた側に同じ材料からなる、第1発光領域にある第1発光層及び第2発光領域にある第2発光層と、第1発光領域において第1発光層と第1電極の間にある第1チューニング層を備える。
【0005】
第1発光領域と第2発光領域は、N個の第1サブ発光領域とM個の第2サブ発光領域に交互に囲まれる中央第2サブ発光領域を有する層状のリング構造であってもよい。ここで、Nは1以上の整数であり、MはN又はN−1と等しい。
【0006】
N=1、かつM=0であってもよい。N=1、かつM=1であってもよい。
【0007】
サブ画素は、N個の第1サブ発光領域において第1発光層のベース基板に近い側に第1正孔注入層と、中央第2サブ発光領域とM個の第2サブ発光領域において第2発光層のベース基板に近い側に第2正孔注入層と、を更に備えてもよい。
【0008】
第1正孔注入層は、第1チューニング層と接触してもよい。
【0009】
第2正孔注入層は、第1電極と接触してもよい。
【0010】
第1正孔注入層と第2正孔注入層は、一体として形成されてもよい。
【0011】
第1発光領域は少なくとも1つの第1サブ発光領域を備え、第2発光領域は少なくとも1つの第2サブ発光領域を備え、少なくとも1つの第1サブ発光領域と少なくとも1つの第2サブ発光領域は交互に配置され、少なくとも1つの第1サブ発光領域の各々は少なくとも1つの第2サブ発光領域に隣接し、少なくとも1つの第2サブ発光領域の各々は少なくとも1つの第1サブ発光領域に隣接してもよい。
【0012】
第1発光層は直列に接続された複数の第1サブ発光層を備え、第2発光層は直列に接続された複数の第2サブ発光層を備えてもよい。
【0013】
サブ画素は、第1発光領域と第2発光領域の間に画素定義層を更に備えてもよい。
【0014】
サブ画素は、第2発光領域において第2発光層と第1電極の間に第2チューニング層を更に備え、第2チューニング層は、第1チューニング層と異なる特性を有してもよい。
【0015】
第2チューニング層は、第1チューニング層と異なる材料からなるものであってもよい。
【0016】
第2チューニング層は、第1チューニング層と異なる厚さであってもよい。
【0017】
第1チューニング層は、第2チューニング層よりおよそ25nm〜およそ40nm厚くてもよい。
【0018】
第1チューニング層の厚さは、およそ25nm〜およそ40nmであってもよい。
【0019】
サブ画素は、第1発光領域において第1発光層のベース基板に近い側に第1正孔注入層と、第2発光領域において第2発光層のベース基板に近い側に第2正孔注入層と、を更に備えてもよい。
【0020】
第1発光領域の開口率と第2発光領域の開口率間の比率は、第1発光領域と第2発光領域間のターンオン電圧の差異と相関してもよい。
【0021】
本発明の他の態様は、第1発光領域と、第1発光領域と構造的に異なる第2発光領域を有するサブ画素を備えるアレイ基板の製造方法において、ベース基板に第1電極を形成する手順と、第1電極のベース基板から離れた側において、第1発光領域に第1発光層を形成し、第2発光領域に第1発光層と同じ材料からなる第2発光層を形成する手順と、第1発光領域において第1発光層と第1電極の間に第1チューニング層を形成する手順を含む、アレイ基板の製造方法を提供する。
【0022】
前記方法は、第2発光領域において第2発光層と第1電極の間に第2チューニング層を形成する手順を更に含み、第2チューニング層は、第1チューニング層と異なる特性を有してもよい。
【0023】
前記方法は、第1発光領域において第1発光層のベース基板と近い側に第1正孔注入層を形成し、第2発光領域において第2発光層のベース基板と近い側に第2正孔注入層を形成する手順を更に含んでもよい。
【0024】
第1発光層と第2発光層を、同じ材料で単一の処理によって形成してもよい。
【0025】
本発明の他の態様は、ここに記述されたアレイ基板、又はここに記述された方法によって製造されるアレイ基板を備える表示装置を提供する。
【0026】
以下の図面は、さまざまな開示した実施例を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限する意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】ある実施例によるアレイ基板の構造を示す図である。
【
図2】ある実施例による色座標における変更を示す図である。
【
図3】ある実施例によるアレイ基板の構造を示す図である。
【
図4】ある実施例によるアレイ基板の構造を示す図である。
【
図8】ある実施例によるアレイ基板を製造する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の実施例を参照しながら、本開示を詳細に説明する。なお、いくつかの実施例に対する以下の説明は例示と説明のみを目的とし、全てを網羅すること、又は開示した形態と全く同じものに限定することを意図しない。
【0029】
本開示では、タンデム型の有機発光ディスプレイ装置に関するくつかの課題を特定する。1つ目の課題は、直列に接続された複数の発光ユニットを備える装置におけるキャリヤーバランスの問題である。このような装置においては、発光強度の変化に伴って電子−正孔の再結合領域の位置が移動し、その結果発光強度と相関する色ずれが生じる。第2に、同一装置特に広視野角表示装置における同じマイクロキャビティ構造において、複数の発光材料の発光条件を最適化することは困難である。その結果、異なる角度から表示装置を見た際に、色ずれが起こる場合がある。
【0030】
本開示の一つの態様は、優れたアレイ基板と、それを備える、発光強度と相関する色ずれと視野角と相関する色ずれが大幅に軽減された表示装置と、該アレイ基板の製造方法を提供する。
【0031】
いくつかの実施例では、本開示は、第1発光領域と、第1発光領域と構造的に異なる第2発光領域を有するサブ画素を備えるアレイ基板を提供する。いくつかの実施例では、該サブ画素は、ベース基板にある第1電極と、第1発光領域における第1発光層及び第2発光領域における第2発光層と、第1発光領域の光電気特性を調整するための、第1発光領域において第1発光層と第1電極の間にある第1チューニング層を備える。ここで、第1発光層及び第2発光層は、同じ材料からなり、第1電極のベース基板から離れた側に位置する。チューニング層を、透明な半導体材料又は透明な導電材料からなるものにすることができる。チューニング層の材料の例としては、インジウムスズ酸化物、シリコン酸化物(SiOx)、窒化ケイ素(SiNx)及びポリ(3、4−エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホンネート(PEDOT:PSS)を含むが、これらに限定されない。第1チューニング層は、第1電極に隣接してもよい。第1チューニング層は、第1発光層に隣接してもよい。
【0032】
いくつかの実施例では、第1発光層は第1有機発光層であることができる。いくつかの実施例では、第2発光層は第2有機発光層であることができる。発光層は複数のサブ層を含むことができる。
【0033】
いくつかの実施例では、サブ画素は、第1発光層と第2発光層のベース基板から離れた側に第2電極を更に備える。
【0034】
いくつかの実施例では、第1発光層と第2発光層は、同じ層である。例えば、同じ材料で単一の処理によって第1発光層と第2発光層を形成する。いくつかの実施例では、異なる処理によって第1発光層と第2発光層を形成する。
【0035】
いくつかの実施例では、サブ画素は、第2発光領域において第2発光層と第1電極の間に第2チューニング層を更に備える。第2チューニング層は、第1チューニング層と異なる特性を有する。例えば、第2チューニング層を、第1チューニング層と異なる材料からなるものにし、又は第1チューニング層と異なる処理で形成することができる。第2チューニング層は、第1チューニング層と異なる厚さであってもよい。第1チューニング層は、第2チューニング層よりおよそ25nm〜およそ40nm厚くてもよい。第2チューニング層は、第1電極に隣接してもよい。第2チューニング層は、第2発光層に隣接してもよい。
【0036】
いくつかの実施例では、サブ画素は、第1発光領域において第1発光層のベース基板に近い側に第1正孔注入層と、第2発光領域において第2発光層のベース基板に近い側に第2正孔注入層と、を更に備える。第1正孔注入層と第2正孔注入層を、一体として形成してもよい。
【0037】
いくつかの実施例では、サブ画素は、第2発光領域において第2発光層と第1電極の間に第2チューニング層を備えない。例えば、第2発光層は第2発光領域において第1電極と接触するのに対し、第1発光層は第1発光領域において第1チューニング層と接触する。サブ画素が正孔注入層を備える場合、第2正孔注入層は第2発光領域において第1電極と接触するのに対し、第1正孔注入層は第1発光領域において第1チューニング層と接触する。サブ画素が第2発光領域において第2発光層と第1電極の間に第2チューニング層を備えない場合、第1チューニング層はおよそ25nm〜およそ40nmの厚さであってもよい。
【0038】
図1は、ある実施例によるアレイ基板の構造を示す図である。
図1を参照すれば、実施例のアレイ基板は、例えば、ベース基板3にサブ画素を備える。該サブ画素は、第1発光領域1と第2発光領域2を有する。該サブ画素は、ベース基板3にある第1電極10と、第2電極14を備える。実施例において、第1発光領域10と第2発光領域2は、同一の第1電極10と同一の第2電極14を備える。
【0039】
実施例のサブ画素は、同じ材料からなる第1発光層11と第2発光層21を更に備える。第1発光層11と第2発光層21は、例えば有機発光層であることができる。第1発光層11は、直列に接続された複数の第1サブ発光層を備えることができる。第2発光層21は、直列に接続された複数の第2サブ発光層を備えることができる。例えば、発光層は、複数のサブ層が生み出す光の組合せによって生成される白色光を発することができる。第1及び/又は第2発光層は、発光用のサブ発光層を1つのみ備えてもよい。
【0040】
実施例のサブ画素は、第1発光領域1にいて第1発光層11と第1電極10の間にある第1チューニング層12と、第2発光領域2において第2発光層21と第1電極10の間にある第2チューニング層22を更に備える。第2チューニング層22は、第1チューニング層12と異なる特性(例えば、光電気特性)を有する。第1チューニング層は、第2チューニング層よりおよそ25nm〜およそ40nm厚くてもよい。
【0041】
サブ画素は、第2発光領域において第2発光層と第1電極の間に第2チューニング層22を備えなくてもよい。例えば、第2発光層21は第2発光領域2において第1電極10と直接接触するのに対し、第1発光層11は第1発光領域1において第1チューニング層12と直接接触する。サブ画素が正孔注入層を備える場合、第2正孔注入層は第2発光領域2において第1電極10と直接接触するのに対し、第1正孔注入層は第1発光領域1において第1チューニング層12と直接接触する。サブ画素が第2発光領域2において第2発光層21と第1電極10の間に第2チューニング層22を備えない場合、第1チューニング層12はおよそ25nm〜およそ40nmの厚さであってもよい。
【0042】
第1電極10は、陰極又は陽極であることができる。第2電極14は、陰極又は陽極であることができる。例えば、非反転OLEDデバイスでは、第1電極が陽極であり、第2電極が陰極である。反転OLEDデバイスでは、第1電極が陰極であり、第2電極が陽極である。
【0043】
いくつかの実施例では、第1発光領域1は少なくとも1つの第1サブ発光領域を有し、第2発光領域2は少なくとも1つの第2サブ発光領域を有する。第1発光領域1は、第1サブ発光領域を一つのみ有してもよい。第2発光領域2は、第2サブ発光領域を一つのみ有してもよい。第1発光領域1は第1サブ発光領域を一つのみ、第2発光領域2は第2サブ発光領域を一つのみ有してもよい。
【0044】
いくつかの実施例では、第1発光領域1は第1サブ発光領域を一つ以上、第2発光領域2は第2サブ発光領域を一つ以上有する。第1サブ発光領域と第2サブ発光領域は、交互に配置せれてもよい。例えば、第1サブ発光領域の各々は第2サブ発光領域に隣接し、第2サブ発光領域の各々は第1サブ発光領域に隣接する。第1サブ発光領域と第2サブ発光領域の光電気特性の違いは、第1発光領域1と第2発光領域2の光電気特性の違いに蓄積される。交互に配置されるサブ領域の様々な実施例を実施することができる。交互に配置されるサブ領域を有するアレイ基板は、光電気特性が1つの第1サブ発光領域と1つの第2サブ発光領域を有するアレイ基板と類似することができる。
【0045】
図1は、1つの第1サブ発光領域と1つの第2サブ発光領域を有するアレイ基板のサブ画素を示す。
図1を参照すると、実施例のサブ画素は、第1発光領域1において第1電極10のベース基板3から離れた側にある第1発光層11と、第2発光領域2において第1電極10のベース基板3から離れた側にある第2発光層21を備える。第1発光層11及び/又は第2発光層21は、単一の層であり、又は、直列に接続された複数のサブ層を備えることができる。発光層は、有機発光層であることができる。
【0046】
実施例のサブ画素は、第1発光領域1において第1発光層11と第1電極10の間にある第1チューニング層12と、第2発光領域2において第2発光層21と第1電極10の間にある第2チューニング層22を更に備える。第2チューニング層22は、第1チューニング層12と特性が異なるため、第1発光領域1と第2発光領域2では光電気特性が異なる。例えば、第2チューニング層22を、第1チューニング層12と異なる材料からなるものにし、又は第1チューニング層12と異なる処理で形成することができる。第2チューニング層22は、第1チューニング層12と異なる厚さであってもよい。第2チューニング層22は厚さがゼロであり、すなわち、サブ画素は、第2発光領域2において第2発光層21と第1電極10の間に第2チューニング層22を備えない場合がある。
【0047】
いくつかの実施例において、異なる光電気特性の1つは発光領域における抵抗であり、すなわち、第1発光領域1における抵抗は第2発光領域2における抵抗と異なる。抵抗の差は、ボルタンモグラムカーブ(IVカーブ)を用いて示す。具体的には、抵抗の差はターンオン電圧の差異によりある程度表現される。
図1を参照すると、実施例の第1チューニング層12は、第2チューニング層22より厚くなっている。このため、第1発光領域1のターンオン電圧は第2発光領域2より高くなる。電圧を第1発光領域1と第2発光領域2に印加するとき、第2発光領域2の電圧は先にそのターンオン電圧レベルに達し、そして、第2発光領域2において光が発せられる。第1発光領域1の電圧がそのターンオン電圧レベルに達する前に、第1発光領域1において光が発されることはない。電圧の更なる増加によって、第2発光領域2が高い強度で光を安定的に発するのに対し、第1発光領域1の電圧がそのターンオン電圧レベルに達すると、第1発光領域1は低い強度で光を発し始める。有機発光ダイオードが発する光の色は、発光強度と相関する。発光強度が高いとき、色が緑へ偏り、発光強度が低いとき、色が青へ偏る。従って、第1発光領域1が(低い強度で)光を発し始めるとき、第1発光領域1において光の色は青へ偏り、第2発光領域2においては緑へ偏る。サブ画素(例えば、赤サブ画素)が第1発光領域1と第2発光領域2を有するとき、両領域の色ずれが互いに補償され、これによって、サブ画素全体としての色ずれが軽減されるか、又は除去される。画素が第1発光領域1と第2発光領域2を有するとき、両領域の色ずれが互いに補償され、これによって、画素全体としての色ずれが軽減されるか、又は除去される。
【0048】
第1発光層11と第2発光層21が有機発光層である場合、各発光領域のマイクロキャビティの深さは、発光領域における発光層と、チューニング層と、第1電極の厚さの和となる。各々のチューニング層の厚さが異なるため、第1発光層11と第2発光層21ではマイクロキャビティの深さが異なる。マイクロキャビティの深さが違うと、小さい視野角(例えば、ゼロ視野角)では色座標上のCIEuの減少とCIEvの増加に繋がり、また、大きい視野角(例えば、大きい視野角での側視)では色座標上のCIEuの増加とCIEvの減少に繋がる。
図2に示すように、視野角と相関する色ずれは、CIEuv値と対応する。(CIEuv)
2は、以下の方程式を使用して表現できる:((ゼロ視野角におけるCIEu)−(大きい視野角におけるCIEu))
2+((ゼロ視野角におけるCIEv)−(大きい視野角におけるCIEv))
2。チューニング層のない発光領域では、CIEuv値が最大値となる。チューニング層がある発光領域では、チューニング層の存在のために、ゼロ視野角のCIEu、大きい視野角のCIEu、ゼロ視野角のCIEv及び大きい視野角におけるCIEvの全てが変更され、その結果、(CIEuv)
2が変化して(CIEuv)
2値が最大値ではなくなる。例えば、最大値と比べて、(CIEuv)
2値が若干減少する(例えば、左又は右にずれる)。その結果、視野角(表1)と相関する色ずれに対応するΔuvが減少する。
【0050】
表1に示すように、チューニング層を備えるサブ画素が原因で、40度視野角においてΔuv値の減少が50%を上回る(例えば、Δuv値が0.037から0.024へ変化している)。これにより、視野角と相関する色ずれが著しく軽減される。
【0051】
いくつかの実施例では、サブ画素は、第1発光領域1において第1チューニング層12と、第2発光領域2において第2チューニング層22とを備える(
図1)。いくつかの実施例では、サブ画素は、第1発光領域1において第1チューニング層12を備えるが、第2発光領域2において第2チューニング層22を備えない(
図3)。いくつかの実施例では、サブ画素は、第2発光領域2において第2チューニング層22を備えるが、第1発光領域1において第1チューニング層12を備えない。
【0052】
第1発光領域は、複数の第1サブ発光領域を含む連続又は不連続の領域であることができる。同様に、第2発光領域は、複数の第2サブ発光領域を含む連続又は不連続の領域であることができる。いくつかの実施例では、第1発光領域と第2発光領域は、アレイ基板の平面図において層状のリング構造である。例えば、層状のリング構造は、N個の第1サブ発光領域とN−1個の第2サブ発光領域に交互に囲まれる中央第2サブ発光領域を備えることができる。ここで、Nは1以上の整数である。
【0053】
いくつかの実施例では、第1発光領域と第2発光領域は、アレイ基板の平面図において層状構造(例えば、層状のリング構造)である。例えば、層状のリング構造は、N個の第1サブ発光領域とN個の第2サブ発光領域に相互に囲まれる中央第2サブ発光領域を備える。ここで、Nは1以上の整数である。
【0054】
ここで、「リング」又は「リング構造」という用語は、それを貫通する穴がある構造又は構造の一部を意味する。リング構造はそれを貫通する穴がある正方形、長方形、三角形、その他の形状、又はドーナツのような実質的に丸い形状に構成されることができる。いくつかの実施例では、リング構造は、それを貫通する穴がある正方形又は長方形の形状に構成される。リングは四角リングであってもよい。リングは長方形リングであってもよい。
【0055】
いくつかの実施例では、サブ画素は、N個の第1サブ発光領域において第1発光層11のベース基板と近い側に第1正孔注入層と、中央第2サブ発光領域とN−1個の第2サブ発光領域において第2発光層21のベース基板に近い側に第2正孔注入層と、を更に備える。第1正孔注入層は、第1チューニング層12と接触してもよい。第2正孔注入層は、第1電極10と接触してもよい。第1正孔注入層と第2正孔注入層を、一体として形成してもよい。
【0056】
図4及び
図5は、ある実施例によるあるサブ画素の平面図を示す。
図4及び
図5を参照すると、第1発光領域と第2発光領域は、(アレイ基板の平面図において)中央第2発光領域2が1つの第1発光領域1に囲まれるような層状のリング構造である。サブ画素は、1つの第1正孔注入層13と、1つの第2正孔注入層23を備える。第1正孔注入層は、第1発光領域1において第1発光層11のベース基板3と近い側にあり、第1チューニング層12と接触する。サブ画素又は画素がそのような層状のリング構造を含む場合、中央領域(例えば、中央第2発光領域2)の発光強度がより高くてもよい。周辺領域(例えば、第1発光領域1)はチューニング層(例えば、第1チューニング層13)を備え、中央領域(例えば、第2発光領域2)はチューニング層を備えなくてもよい。第2正孔注入層23は、第1電極10と直接接触する。そのようなデザインにおいて、中央領域はより高い光透過率を有する。第1電極10は第2正孔注入層23から電子をより効果的に引きつけて正孔を生じることができる。その結果、中央領域の発光強度が周辺領域より高くなる。
【0057】
図4及び
図5に示すように、第1正孔注入層13と第2正孔注入層23を、一体として形成し、単一の処理によって形成できるため、製造プロセスが簡素化される。
【0058】
第1発光層11は、直列に接続された複数の第1サブ発光層を備えてもよい。第2発光層21は、直列に接続された複数の第2サブ発光層を備えてもよい。
【0059】
図6は、ある実施例による画素の平面図である。
図6を参照すると、サブ画素は赤サブ画素、又は緑サブ画素、又は青サブ画素、又は白サブ画素であることができる。アレイ基板は複数の画素を備え、それぞれが一つの赤サブ画素と、一つの緑サブ画素と、一つの青サブ画素と、一つの白サブ画素を備える場合がある。サブ画素は白サブ画素であってもよい。白サブ画素は、画素の発光強度を高めることができる。
【0060】
図7は、ある実施例による画素の平面図である。
図7を参照すると、アレイ基板は複数の画素を備える。実施例の画素は、一つの赤サブ画素と、一つの緑サブ画素と、一つの青サブ画素と、一つの白サブ画素を備える。実施例の(他のサブ画素ではなく)白サブ画素は、第1チューニング層12及び/又は第2チューニング層22を備える。有機発光ダイオードでは、R、G及びBサブ画素と比べて、白サブ画素は発光強度と相関する色ずれと視野角と相関する色ずれに与える影響が最も大きい。製造プロセスを簡素化するために、アレイ基板は白サブ画素のみにチューニング層を備えてもよい。
【0061】
サブ画素は、第1発光領域1と第2発光領域2の間に画素定義層を更に備えてもよい。
【0062】
サブ画素が第1チューニング層12と第2チューニング層22両方を備える場合、第2チューニング層22は第1チューニング層12と異なる特性を有する。例えば、第2チューニング層を、第1チューニング層と異なる材料からなるものにし、又は第1チューニング層と異なるプロセスによって形成することができる。第2チューニング層は、第1チューニング層と厚さが異なってもよい。第1チューニング層は、第2チューニング層よりおよそ25nm〜およそ40nm厚くてもよい。いくつかのアレイ基板において、一方のチューニング層(例えば、第1チューニング層12)はインジウムガリウム酸化物からなり、他方のチューニング層(例えば、第2チューニング層22)はインジウム酸化亜鉛からなるものであることができる。同様に、一方のチューニング層はイン・ジェット(in−jet)印刷によって形成され、他方はコーティング接着剤で形成されることができる。上記のように形成された第1チューニング層12と第2チューニング層22は光電気特性が異なるため、第1発光領域1と第2発光領域2の光電気特性も異なる。
【0063】
第1チューニング層12及び/又は第2チューニング層22を、透明な半導体材又は透明な導電材料からなるものであることができる。
【0064】
サブ画素が第1チューニング層12と第2チューニング層22両方を備える場合、第1チューニング層は、第2チューニング層よりおよそ25nm〜40nm厚くてもよい。サブ画素が第1発光領域1と第2発光領域2のうちの1方のみにおいてチューニング層を備える場合、唯一のチューニング層(例えば、第1チューニング層)はおよそ25nm〜およそ40nmの厚さであってもよい。
【0065】
いくつかの実施例では、第1発光領域1の開口率と第2発光領域2の開口率間の比率は、第1発光領域1と第2発光領域2の間のターンオン電圧の差異と相関する。具体的には、一般的にチューニング層が厚いほど、ターンオン電圧が高くなる(例えば、特にチューニング層の材料が同じ場合)。例えば、第1チューニング層12が第2チューニング層22より厚い場合、第1発光領域1のターンオン電圧は第2発光領域2のターンオン電圧より高くなる。ターンオン電圧の差は1Vであり、それぞれの開口率の比率は4:6である場合がある。それぞれの開口率の比率は、厚さの差異と相関する。この相関関係に基づいて、第1と第2発光領域におけるそれぞれの開口率を検知することによって、ターンオン電圧の差異を容易に特定できる。各発光領域の色ずれを、速く正確に特定できる。
【0066】
図8は、ある実施例によるアレイ基板を製造する方法を示すフローチャートである。実施例のアレイ基板は、第1発光領域1と、第1発光領域1と構造的に異なる第2発光領域2を有するサブ画素を備える。
図8を参照すると、実施例の方法は、ベース基板3に第1電極10を形成する手順と、第1電極10のベース基板3から離れた側において、第1発光領域1に第1発光層11を形成し、第2発光領域2に第1発光層11と同じ材料からなる第2発光層21を形成する手順と、第1発光領域1において第1発光層11と第1電極10の間に第1チューニング層12を形成する手順と、を含む。
【0067】
第1発光層11と第2発光層21を、同じ材料で単一の処理によって形成してもよい。第1発光層11と第2発光層21を、同じ材料で別々の処理によって形成してもよい。
【0068】
ここに記述される方法では、任意の適切な技術を使用することができる。例えば、層を蒸着又はスパッタリングによって形成できる。様々な構成要素を、例えばエッチング処理によってパターニングできる。
【0069】
本開示の他の一つの態様は、ここに記述されるアレイ基板、又はここに記述される方法によって製造されるアレイ基板を備える表示装置を提供する。表示装置の例は、電子ペーパー、携帯電話、タブレット型コンピューター、テレビ、ノートパソコン、デジタルアルバム、GPSなどを含むが、これらに限定されない。
【0070】
上記に基づいて、本開示は、第1発光領域と、第1発光領域と構造的に異なる第2発光領域を有するサブ画素を備えるアレイ基板を提供する。第1発光領域と第2発光領域では光電気特性が異なるため、発光領域によりターンオン電圧が異なる。異なるターンオン電圧に起因する各発光領域における色偏りは互いに補償しあい、発光強度と相関する色ずれが軽減される。第1発光領域と第2発光領域の差異のために、これらの領域のマイクロキャビティ深さにも差異が生じ、視野角と相関する色ずれが軽減される。
【0071】
本発明の実施例に関する前述の説明は例示と説明を目的とし、全てを網羅している訳ではなく、又は開示した形態と全く同じものもしくは例示的な実施例に本発明を限定することを意図しない。従って、前述の説明は、制限的であるというよりも例示的であると考えるべきである。勿論、様々の修正、変形は、当業者にとって明らかである。前記実施例は、本発明の主旨と好ましい実施形態を解説するために選択・説明され、当業者が、特定の用途又は想定される実装方式に適する様々な実施例や様々な変更を理解できるようになる。本発明の範囲は添付した請求項及びそれらの等価物によって制限することが意図され、請求項及びそれらの等価物において全ての用語は、特に明記しない限り、最も広い合理的な意味に解される。従って、「発明」、「本発明」又は類似する用語は必ずしも請求項の範囲を特定の実施例に制限するものではなく、発明の典型的な実施例への参照は発明に対する制限を意味せず、そのような制限は推定されない。本発明は、添付の請求項の趣旨及び範囲のみに制限される。また、これらの請求項は「第1」、「第2」などを使用し、その後ろに名詞又は要素を付け加える場合がある。上記用語は名付けための用語と理解すべきであり、特定の数値を与えない限り、上記名付けための用語が付加された要素の数を制限すると解釈すべきでない。記述した利点や利益は本発明の全ての実施例に応用できるとは限らない。以下の請求項によって定義する本発明の趣旨を逸脱することなく、前述した実施例を当業者にて変更できることが理解されよう。さらに、本開示の要素又は部品が以下の請求項において明示的に記載されるか否かを問わず、該要素又は部品を公衆に寄贈することを意図しない。