(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については同一の符号を用いる。図面に描かれた形状は、当業者が理解しやすいように描かれているため、実際の寸法及び比率とは必ずしも一致していない。
【0010】
図1は、実施形態1の水晶デバイスを示す平面図である。
図2は、実施形態1の水晶デバイスを示す分解斜視図である。
図3は、
図1におけるIII−III線断面図である。
図4[A]は実施形態1の水晶デバイスを示す部分平面図である。以下、これらの図面に基づき説明する。なお、
図1では蓋体を取り除いて示し、
図4[A]では
図1の一部を拡大して示している。
【0011】
本実施形態1の水晶デバイス10は、パッケージ20と、パッケージ20上に設けられた電極パッド21,22と、電極パッド21,22上に設けられた導電性接着剤41,42と、導電性接着剤41,42を介して電極パッド21,22に接続された水晶素子30と、パッケージ20に接合されることにより水晶素子30を気密封止する蓋体50とを備えている。
【0012】
そして、水晶素子30は、水晶片35と、水晶片35に設けられた励振電極33,34と、励振電極33,34から水晶片35の一辺(短辺38)にまで引き出された引き出し電極31,32とを有する。電極パッド21,22は、引き出し電極31,32に導電性接着剤41,42を介して電気的及び機械的に接続することにより、水晶素子30を片持ち梁状に固定する。導電性接着剤41,42は、平面視して一辺(短辺38)に平行な長軸43(
図4[A])と一辺(短辺38)に垂直な短軸44(
図4[A])からなる略楕円形状である。なお、導電性接着剤41,42は、同一形状である。水晶片35は平面視して長辺及び短辺からなる矩形板状であり、励振電極33,34は水晶片35の両面に設けられ、前記一辺は短辺38に相当する、としてもよい。
【0013】
図4[A]に基づき説明すると、短辺38は平面視して長軸43に重なるようにしてもよい。導電性接着剤41は、短辺38上における引き出し電極31の線状部分31aの全体に接するようにしてもよい。導電性接着剤42についても同様である。長軸43の長さ(長径)を2aとし、短軸44の長さ(短径)を2bとしたとき、a=3bとなるようにしてもよい。例えば、長軸43の長さは75〜300μmであり、短軸44の長さは25〜100μmである。
【0014】
図5は導電性接着剤41,42の変形例を示す平面図であり、
図5[A]は変形例1、
図5[B]は変形例2、
図5[C]は変形例3である。
図4[A]に示すように、導電性接着剤41,42は、平面視して短辺38,39に平行な長軸43と長辺36,37に平行な短軸44からなる略楕円形状である。ここでいう「略楕円形状」には、長軸(長手方向の長さ)43及び短軸(短手方向の長さ)44からなる形状であれば何でもよく、例えば頂点が丸みを帯びた矩形(
図5[A]:導電性接着剤41a)、頂点が丸みを帯びた菱形(
図5[B]:導電性接着剤41b)、長軸43を中心に非対称な楕円(
図5[C]:導電性接着剤41c)、及びこれらの組み合わせなども含まれる。
【0015】
図5[C]に示す楕円は、長軸43を共有する扁平率の異なる二つの半楕円(導電性接着剤41d,41e)からなる。導電性接着剤41dの扁平率f1はf1=1−b/a、導電性接着剤41eの扁平率f2はf2=1−b’/aである。ただし、b>b’であり、短軸44’は短軸44よりも短い。扁平率は、小さいほど真円に近くなり、大きいほど潰れた楕円になる。
図4[A]及び
図5[C]に基づき説明すると、導電性接着剤41eを水晶素子30の先端側、導電性接着剤41dを水晶素子30の基端側に配置することにより、導電性接着剤41cと励振電極33,34との距離をより大きくとれる。
【0016】
図6は、導電性接着剤41,42の塗布方法を示す平面図であり、
図6[A]は第一例、
図6[B]は第二例、
図6[C]は第三例である。第一例におけるディスペンサ用ノズル81は、液状の導電性接着剤40を吐出する略楕円形状の吐出口82を有する。電極パッド21,22の中心において、吐出口82から導電性接着剤40を吐出することにより、平面視して略楕円形状の導電性接着剤41,42が得られる。第二例におけるディスペンサ用ノズル83は、液状の導電性接着剤40を吐出する微小な円形状の吐出口84を有する。長軸43に沿って吐出口84から導電性接着剤40を吐出する際に、吐出量及び移動速度を調整することにより、平面視して略楕円形状の導電性接着剤41,42が得られる。
【0017】
第三例では、電極パッド21,22に、略楕円形状の接着剤付着面23と、これ以外の領域からなる接着剤撥液面24とを設ける。接着剤付着面23は、電極パッド21,22の表面をそのまま用いてもよい。接着剤撥液面24は、電極パッド21,22の表面に例えばフッソ樹脂膜等を設けることにより、液状の導電性接着剤40をはじく性質を付与する。第三例では、接着剤付着面23と接着剤撥液面24とを電極パッド21,22に設けたので、一般的なディスペンサ用ノズルから導電性接着剤40を電極パッド21,22上に吐出することにより、平面視して略楕円形状の導電性接着剤41,42が得られる。
【0018】
次に、水晶デバイス10及びディスペンサ用ノズル81,83の構成について更に詳しく説明する。
【0019】
水晶デバイス10は、パッケージ20、水晶素子30及び蓋体50を備えた水晶振動子である。なお、水晶デバイス10は、半導体ICチップを付設した水晶発振器、電圧制御型水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillator)、温度補償型水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)又は恒温槽付水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)などであってもよい。
【0020】
パッケージ20は、上面25a及び下面25bを有する矩形状の基板25と、上面25aの周縁と一体化された枠体26と、上面25aに設けられた電極パッド21,22と、下面25bの四隅に設けられた外部接続端子12とを備えている。
【0021】
図2では、枠体26の一部を切除して示している。枠体26は、基板25の周縁に沿って矩形枠状になっている。基板25には、電極パッド21,22と外部接続端子12とを、電気的に接続する導体(図示せず)が形成されている。基板25及び枠体26は、例えば積層セラミックスからなる。その場合、複数の四角形状のグリーンシートを重ね、その上に複数の四角枠状のグリーンシートを重ね、全体を焼成することにより、基板25及び枠体26が得られる。
【0022】
電極パッド21,22は、例えばタングステン等のメタライズに金メッキ等を施した導体からなり、水晶素子30の引き出し電極31,32に対向する位置に設けられ、導電性接着剤41,42によって引き出し電極31,32に電気的に接続される。
【0023】
導電性接着剤41,42は、例えばシリコーン樹脂等のバインダの中に導電フィラとして導電性粉末を含有するもの(例えば銀ペーストなど)からなり、硬化前は流動性を有する。その硬化方法には、加熱や光照射などが挙げられる。導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケル又はニッケル鉄のうちのいずれか一つ又はこれらの組み合わせを含むものが用いられる。また、バインダとしては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂又はビスマレイミド樹脂が用いられる。
【0024】
水晶素子30は、引き出し電極31,32、励振電極33,34及び水晶片35を有する。水晶片35は、例えば矩形状のATカット板からなる。励振電極33,34は、水晶片35の両面に設けられ、かつ互いに絶縁されている。励振電極33,34の一部は、それぞれ水晶片35の一方の主面から側面を跨いで他方の主面まで延び、引き出し電極31,32に接続されている。なお、水晶素子30は、厚みすべり振動素子であるが、それに代えて音叉型屈曲振動素子や輪郭すべり振動素子などを用いることもできる。
【0025】
蓋体50は、例えばコバール(Kovar)などの金属からなる矩形の平板であり、パッケージ20の枠体26の上端面26aに重ねられる。つまり、蓋体50は、パッケージ20へ封止材などにより接合され、気密封止された凹部空間11を形成する。凹部空間11は、本実施形態1ではパッケージ20側に形成しているが、蓋体50側に形成してもよい。
【0026】
電極パッド21,22は、それぞれ導電性接着剤41,42を介して引き出し電極31,32に電気的及び機械的に接続することにより、水晶素子30を片持ち梁状に固定する。つまり、水晶デバイス10は、水晶素子30がパッケージ20に搭載された状態で、パッケージ20と蓋体50とがガラス封止材やろう材(どちらも図示せず)などによって接合され、水晶素子30が凹部空間11内に気密封止された構造を有する。
【0027】
ディスペンサ用ノズル81,83は、ディスペンサの一部であり、金属からなる円柱状の中空管であり、例えば空気圧により一定量の導電性接着剤40を吐出する。ディスペンサ用ノズル81,83の外形は、円柱状や角柱状に限らず、例えば逆角錐台状などでもよい。なお、ディスペンサは、前述のエアー加圧式に限らず、例えば回転容積式一軸偏心ねじポンプなど、どのような種類でもよい。
【0028】
次に、水晶デバイス10の製造方法について説明する。
【0029】
本実施形態1の製造方法は、パッケージ20に設けられた電極パッド21,22に、水晶素子30に設けられた引き出し電極31,32を導電性接着剤41,42を介して接続し、パッケージ20と蓋体50とによって水晶素子30を気密封止する、水晶デバイス10の製造方法であって、次の工程を含む。
【0030】
・接着剤塗布工程:前述したように、電極パッド21,22上に導電性接着剤41,42を塗布する。
・素子載置工程:電極パッド21,22上に導電性接着剤41,42を介して引き出し電極31,32を載置する。
・接着剤硬化工程:導電性接着剤41,42を硬化することにより水晶素子30を実装する。
・蓋体接合工程:蓋体50をパッケージ20に接合することにより水晶素子30を気密封止する。
【0031】
次に、
図6[A]に示す第一例による接着剤塗布工程について、
図4[A]等とともに説明する。
【0032】
まず、ディスペンサ用ノズル81を電極パッド21の上方へ位置決めし、ディスペンサ用ノズル81を電極パッド21に向けて降下させる。続いて、ディスペンサ用ノズル81を電極パッド21の直前で停止させ、空気圧を加えて吐出口82から一定量の導電性接着剤40を吐出させる。続いて、ディスペンサ用ノズル81を上昇させると、一定量の導電性接着剤41が表面張力によって丸くなり電極パッド21に塗布される。続いて、ディスペンサ用ノズル81を電極パッド21の上方から電極パッド22の上方へ移動させる。
【0033】
そして、ディスペンサ用ノズル81を電極パッド22の上方へ位置決めし、ディスペンサ用ノズル81を電極パッド22に向けて降下させる。続いて、ディスペンサ用ノズル81を電極パッド22の直前で停止させ、空気圧を加えて吐出口82から一定量の導電性接着剤40を吐出させる。最後に、ディスペンサ用ノズル81を上昇させると、一定量の導電性接着剤42が表面張力によって丸くなり電極パッド22に塗布される。
【0034】
図6[B]に示す第二例及び
図6[C]に示す第三例による接着剤塗布工程も、上述した第一例による接着剤塗布工程に準ずる。
【0035】
次に、本実施形態1の作用及び効果について説明する。
【0036】
図4[B]に示す比較例1の水晶デバイス70は、導電性接着剤71,72が平面視して円形状になっている点を除き、
図4[A]に示す実施形態1の水晶デバイス10と同じ構成である。比較例1おいて、水晶素子30と導電性接着剤71,72との接触面積を増やすには、電極パッド21,22に円形状に塗布される導電性接着剤71,72の半径rを大きくする必要がある。しかしながら、導電性接着剤71,72の半径rを大きくすると、導電性接着剤41,42が励振電極33,34に接近することにより、水晶素子30の振動が阻害されるので、水晶素子30の等価直列抵抗値が大きくなるという問題があった。
【0037】
これに対し、
図4[A]に示す本実施形態1によれば、電極パッド21,22上の導電性接着剤41,42を、引き出し電極31,32が設けられた水晶片35の一辺(短辺38)に平行な長軸43とその一辺(短辺38)に垂直な短軸44からなる略楕円形状にしたことにより、導電性接着剤41,42を励振電極33,34に接近させることなく、水晶素子30と導電性接着剤41,42との接触面積を長軸43方向に増やすことができる。よって、水晶素子30の等価直列抵抗値を大きくすることなく、水晶素子30と導電性接着剤41,42との接触面積を増やし得る、水晶デバイス10を提供できる。また、導電性接着剤41,42が励振電極33,34に接近しないことから、その分、励振電極33,34を大きくできるので、等価直列抵抗値をより低減できる。なお、実施形態1における導電性接着剤41,42と励振電極33,34との距離をd1、比較例1における導電性接着剤71,72と励振電極33,34との距離をd2とすると、d1>d2である。
【0038】
水晶片35は平面視して長辺及び短辺からなる矩形板状であり、励振電極33,34は水晶片35の両面に設けられ、前記一辺は短辺38に相当する、としてもよい。この場合は、水晶素子30が厚みすべり振動素子の水晶デバイス10を提供できる。
【0039】
図4[A]に基づき説明すると、短辺38は平面視して長軸43に重なるようにしてもよい。短辺38を長軸43よりも励振電極33側に遠ざけるほど水晶素子30と導電性接着剤41,42との接触面積が減少し、逆に短辺38を長軸43よりも励振電極33の反対側に遠ざけるほど導電性接着剤41,42が励振電極33,34に接近する。そこで、短辺38を長軸43に重なるように配置することにより、導電性接着剤41,42を励振電極33,34に接近させることなく、水晶素子30と導電性接着剤41,42との接触面積を長軸43方向に確実に増やすことができる。
【0040】
導電性接着剤41は、短辺38上における引き出し電極31の線状部分31aの全体に接するようにしてもよい。導電性接着剤42についても同様である。比較例1では、短辺38上における引き出し電極31の線状部分31bが、導電性接着剤71に接していない。よって、本実施形態1によれば、引き出し電極31の線状部分31aの全体に導電性接着剤71のフィレットを形成できるので、比較例1に比べて水晶素子30の接続強度を向上できる。また、ATカット板の水晶片35をフッ酸によるエッチングで加工した場合は、短辺38に残渣が形成されることにより、水晶素子30と導電性接着剤41,42との接触面積が大きくなるので、水晶素子30の接続強度をより向上できる。
【0041】
長軸43の長さを2aとし、短軸44の長さを2bとしたとき、a=3bとなるようにしてもよい。aを3bよりも大きくすればするほど導電性接着剤41,42が扁平な楕円形状になることにより水晶素子30と導電性接着剤41,42との接触面積が減少し、逆にaを3bよりも小さくすればするほど導電性接着剤41,42が円形状に近くなることにより導電性接着剤41,42が励振電極33,34に接近する。そこで、a=3bとすることにより、導電性接着剤41,42を励振電極33,34に接近させることなく、水晶素子30と導電性接着剤41,42との接触面積を長軸43方向に確実に増やすことができる。
【0042】
次に、実施形態2の水晶デバイスについて説明する。
図7は、実施形態2の水晶デバイスを示す平面図である。
図8は、実施形態2の水晶デバイスを示す分解斜視図である。
図9は、
図7におけるIX−IX線断面図である。以下、これらの図面に基づき説明する。なお、
図7では蓋体を取り除いて示している。
【0043】
本実施形態2の水晶デバイス60は、導電性接着剤41,42よりも励振電極33,34側のパッケージ20上又は電極パッド21,22上に設けられ、水晶素子30を支持する支持バンプ61,62を更に備えている。支持バンプ61,62は、例えば、電極パッド21,22と同様にタングステン等のメタライズに金メッキ等を施した導体、又はセラミックスなどの絶縁物からなる。そのタングステンの他にはモリブデン、銅、銀、又は銀パラジウムが用いられ、金メッキの他にはニッケルメッキが用いられる。
【0044】
本実施形態2によれば、電極パッド21,22上に支持バンプ61,62が設けられているので、導電性接着剤41,42が励振電極33,34方向に広がることを抑えることができる。また、導電性接着剤41,42の上下方向の厚みを確保しつつ、水晶素子30の先端がパッケージ20に接触することを低減できる。その結果、厚みすべり振動が阻害されることを回避でき、周波数特性の変動を抑えることができる。特に、扁平率を大きくしても(すなわち短径を短くし長径を長くしても)、支持バンプ61,62によって水晶素子30が支えられるため、水晶素子30の安定性を確保できるので、導電性接着剤41,42を励振電極33,34に接近させることなく、水晶素子30と導電性接着剤41,42との接触面積を長軸43方向により確実に増やすことができる。
【0045】
換言すると、
図4[A]に示す導電性接着剤41,42と励振電極33,34との距離d1を大きくするほど、水晶素子30の等価直列抵抗値を低減できるものの、導電性接着剤41,42から水晶素子30の先端までの距離も大きくなることにより、水晶素子30の先端がパッケージ20に接触しやすくなるという問題を生じる。このとき支持バンプ61,62を設けることにより、この問題を解決できる。例えば、
図5[C]に示す導電性接着剤41cの形状では、支持バンプ61,62を併設することが好ましい。本実施形態2のその他の構成、作用及び効果は実施形態1のそれらと同様である。
【0046】
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。