(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779809
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】特定階行き来抑制機能付エレベーター
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20201026BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
B66B1/14 F
B66B5/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-30197(P2017-30197)
(22)【出願日】2017年2月21日
(65)【公開番号】特開2018-135175(P2018-135175A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 覚士
【審査官】
羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/157092(WO,A1)
【文献】
特開2011−144015(JP,A)
【文献】
特開昭63−242889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00− 1/52
B66B 5/00− 5/28
B66B 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定階においてカゴ室と乗場とが行き来不可能になるセキュリティーモードと、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き可能になるセキュリティー解除モードとを選択するモード選択部と、
前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来可能になることを機械的に防止する行き来防止機構と、
前記モード選択部から前記セキュリティーモードが選択されたことを表す信号を受けると、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来不可能になるように前記行き来防止機構を制御する制御部と、
を備え、
カゴに取り付けられる検出部、及び前記検出部が検出可能でカゴの着床位置が特定可能になる検出位置と前記検出部が検出不可能な検出不可能位置との間を移動可能に昇降路に取り付けられる被検出部を含む着床位置検出センサと、
前記被検出部を前記検出位置と前記検出不可能位置との間を移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は前記行き来防止機構に含まれ、前記被検出部が前記検出不可能位置に移動することで前記カゴが前記特定階の前記着床位置に着床不可能になる、特定階行き来抑制機能付エレベーター。
【請求項2】
特定階においてカゴ室と乗場とが行き来不可能になるセキュリティーモードと、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き可能になるセキュリティー解除モードとを選択するモード選択部と、
前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来可能になることを機械的に防止する行き来防止機構と、
前記モード選択部から前記セキュリティーモードが選択されたことを表す信号を受けると、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来不可能になるように前記行き来防止機構を制御する制御部と、
を備え、
カゴに取り付けられ、光を出射する光出射部と、
前記光出射部からの光が通過する経路上に昇降路に対して相対移動不可に配設され、前記光出射部からの光が到達することでカゴの着床位置が特定可能になる光学機器と、
前記光学機器に入射する前記光出射部からの光を遮断する光遮断位置と、前記光学機器に入射する前記光出射部からの光を遮断不可能な光遮断不可能位置との間を移動可能であり、光が透過しない素材で構成される光遮断部材と、
前記光遮断部材を、前記光遮断位置と、前記光遮断不可能位置との間を移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は前記行き来防止機構に含まれ、前記光遮断部材が前記光遮断位置に移動することで前記カゴが前記特定階の前記着床位置に着床不可能になる、特定階行き来抑制機能付エレベーター。
【請求項3】
特定階においてカゴ室と乗場とが行き来不可能になるセキュリティーモードと、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き可能になるセキュリティー解除モードとを選択するモード選択部と、
前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来可能になることを機械的に防止する行き来防止機構と、
前記モード選択部から前記セキュリティーモードが選択されたことを表す信号を受けると、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来不可能になるように前記行き来防止機構を制御する制御部と、
を備え、
前記行き来防止機構は、カゴ扉よりも乗場側に配設されて乗場扉が開くことを機械的に防止するロック機構を含み、
前記ロック機構が前記乗場扉の開き動作を防止することで前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来不可能になり、
前記ロック機構は、前記乗場扉に設けられた係合部、一方側端部にある支点を中心として回動自在に取り付けられた棒状部材、及び前記支点を中心として前記棒状部材を回動させるモータを有し、
前記棒状部材には、係合位置で前記係合部に係合することで前記乗場扉の開きを防止する被係合部が設けられる、特定階行き来抑制機能付エレベーター。
【請求項4】
特定階においてカゴ室と乗場とが行き来不可能になるセキュリティーモードと、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き可能になるセキュリティー解除モードとを選択するモード選択部と、
前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来可能になることを着床位置を特定できなくすることで機械的に防止する行き来防止機構と、
前記モード選択部から前記セキュリティーモードが選択されたことを表す信号を受けると、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来不可能になるように前記行き来防止機構を制御する制御部と、
を備える、特定階行き来抑制機能付エレベーター。
【請求項5】
請求項4に記載の特定階行き来抑制機能付エレベーターにおいて、
前記行き来防止機構は、カゴ扉よりも乗場側に配設されて乗場扉が開くことを機械的に防止するロック機構を含み、
前記ロック機構が前記乗場扉の開き動作を防止することで前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来不可能になり、
前記モード選択部で前記セキュリティーモードが選択された場合において、前記特定階の登録を無効にできなくなって、カゴが前記特定階に着床したとしても、前記ロック機構の動作によって、乗場扉が開くことがなく、カゴ扉も開くことがない、特定階行き来抑制機能付エレベーター。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の特定階行き来抑制機能付エレベーターにおいて、
前記特定階に前記カゴが着床した状態でカゴ扉及び乗場扉が開くと、カゴ室が通路を介さずに居住室に接続する、特定階行き来抑制機能付エレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カゴ内の乗客が特定階の乗場へ降りることを抑制可能な特定階行き来抑制機能付エレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターとしては、特許文献1に記載されたものがある。このエレベーターは、特定階に設けられたシャッターの閉動作を検出する接点、カゴ内の行先階指定釦からの信号が入力される行先階登録回路の有効無効を制御するためのリレー、及び接点からの信号を受けてリレーを制御する制御部を備える。制御部は、シャッター閉動作を表す信号を接点から受けると、シャッターが閉じた階の行先階登録回路のリレーを制御し、当該行先階登録回路を無効にする。このようにして、エレベーターのカゴが、シャッターが閉じた階に着床することを防止して、利用客が乗場扉と、シャッターとの間に閉じ込められることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−338069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特定階に設けられたシャッターが閉じた場合に限らず、特定階が住居になっていて、特定階において扉が開くと、カゴが直接居室につながる場合や、商業ビルで特定階にテナントが存在しない場合等、カゴ内の乗客が特定階の乗場へ降りることを防止したい場合がある。
【0005】
しかし、エレベーターでは、行先階登録回路に不具合が生じて、行先階登録回路を無効にできないことがある。又は、ユーザがカードリーダー等を用いて登録した信号で特定階の行先階登録回路が無効になっている際に、保守作業員等の誤った操作等で当該特定階の行先階登録回路が有効になることもある。このような場合、乗客が特定階の乗場へ降りることを防止できなくなる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、カゴ内の乗客が特定階の乗場へ降りることを抑制できる特定階行き来抑制機能付エレベーターに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る特定階行き来抑制機能付エレベーターは、特定階においてカゴ室と乗場とが行き来不可能になるセキュリティーモードと、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き可能になるセキュリティー解除モードとを選択するモード選択部と、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来可能になることを機械的に防止する行き来防止機構と、前記モード選択部から前記セキュリティーモードが選択されたことを表す信号を受けると、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来不可能になるように前記行き来防止機構を制御する制御部と、を備え
、カゴに取り付けられる検出部、及び前記検出部が検出可能でカゴの着床位置が特定可能になる検出位置と前記検出部が検出不可能な検出不可能位置との間を移動可能に昇降路に取り付けられる被検出部を含む着床位置検出センサと、前記被検出部を前記検出位置と前記検出不可能位置との間を移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は前記行き来防止機構に含まれ、前記被検出部が前記検出不可能位置に移動することで前記カゴが前記特定階の前記着床位置に着床不可能になる。
【0008】
本発明によれば、ユーザがセキュリティーモードを選択すると、制御部が行き来防止機構を機械的に制御して、特定階においてカゴ室と乗場とが行き来不可能になる。よって、カゴ内の乗客が禁止された特定階の乗場へ降りることを抑制できる。
【0010】
また、本発明によれば、ユーザがセキュリティーモードを選択すると、被検出部が、検出部が検出不可能な検出不可能位置に移動する。したがって、エレベーターが特定階の着床位置を特定できなくなり、カゴが特定階の着床位置に着床することがない。よって、カゴ内の乗客が禁止された特定階の乗場へ降りることを略確実に防止できる。
【0011】
また、本発明の他の態様に係る特定階行き来抑制機能付エレベーターは、特定階においてカゴ室と乗場とが行き来不可能になるセキュリティーモードと、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き可能になるセキュリティー解除モードとを選択するモード選択部と、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来可能になることを機械的に防止する行き来防止機構と、前記モード選択部から前記セキュリティーモードが選択されたことを表す信号を受けると、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来不可能になるように前記行き来防止機構を制御する制御部と、を備え、カゴに取り付けられ、光を出射する光出射部と、前記光出射部からの光が通過する経路上に昇降路に対して相対移動不可に配設され、前記光出射部からの光が到達することでカゴの着床位置が特定可能になる光学機器と、前記光学機器に入射する前記光出射部からの光を遮断する光遮断位置と、前記光学機器に入射する前記光出射部からの光を遮断不可能な光遮断不可能位置との間を移動可能であり、光が透過しない素材で構成される光遮断部材と、前記光遮断部材を、前記光遮断位置と、前記光遮断不可能位置との間を移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は前記行き来防止機構に含まれ、前記光遮断部材が前記光遮断位置に移動することで前記カゴが前記特定階の前記着床位置に着床不可能になってもよい。
【0012】
なお、上記光学機器には、レンズ、鏡、プリズム、受光素子を含む受光部等が含まれ、光の作用や性質を利用した全ての機器が含まれる。
【0013】
本発明によれば、ユーザがセキュリティーモードを選択すると、制御部が行き来防止機構を機械的に制御して、特定階においてカゴ室と乗場とが行き来不可能になる。よって、カゴ内の乗客が禁止された特定階の乗場へ降りることを抑制できる。更には、ユーザがセキュリティーモードを選択すると、光遮断部材が光遮断位置に移動し、光出射部からの光が光学機器に到達することがない。したがって、特定階の着床位置を特定できなくなり、カゴが特定階の着床位置に着床することがない。よって、カゴ内の乗客が禁止された特定階の乗場へ降りることを略確実に防止できる。
【0014】
また、本発明の更なる態様に係る特定階行き来抑制機能付エレベーターは、特定階においてカゴ室と乗場とが行き来不可能になるセキュリティーモードと、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き可能になるセキュリティー解除モードとを選択するモード選択部と、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来可能になることを着床位置を特定できなくすることで機械的に防止する行き来防止機構と、前記モード選択部から前記セキュリティーモードが選択されたことを表す信号を受けると、前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来不可能になるように前記行き来防止機構を制御する制御部と、を備える。また、その発明において、前記行き来防止機構は、カゴ扉よりも乗場側に配設されて乗場扉が開くことを機械的に防止するロック機構を含み、前記ロック機構が前記乗場扉の開き動作を防止することで前記特定階において前記カゴ室と前記乗場とが行き来不可能にな
り、前記モード選択部で前記セキュリティーモードが選択された場合において、前記特定階の登録を無効にできなくなって、カゴが前記特定階に着床したとしても、前記ロック機構の動作によって、乗場扉が開くことがなく、カゴ扉も開くことがなくてもよい。
【0015】
上記構成によれば、ユーザがセキュリティーモードを選択すると、ロック機構が、乗場扉が開き動作をすることを防止する。よって、行先階登録回路を無効にできなくて、カゴが特定階の着床位置に着床したとしても、乗場扉が開くことがなく、乗場扉に連動するカゴ扉も開くことがない。よって、乗客が特定階においてカゴ室と乗場とを行き来することを略確実に防止できる。
【0016】
また、本発明において、前記ロック機構は、前記乗場扉に設けられた係合部、一方側端部にある支点を中心として回動自在に取り付けられた棒状部材、及び前記支点を中心として前記棒状部材を回動させるモータを有し、前記棒状部材には、係合位置で前記係合部に係合することで前記乗場扉の開きを防止する被係合部が設けられてもよい。
【0017】
上記構成によれば、モータで棒状部材を係合位置まで回動させるだけで乗場扉の開き動作を防止でき、ロック機構を簡単安価に構成できる。
【0018】
また、本発明において、前記特定階に前記カゴが着床した状態でカゴ扉及び乗場扉が開くと、カゴ室が通路を介さずに居住室に接続してもよい。
【0019】
居住者以外の人が居住室に立ち入ると、犯罪等につながる虞がある。したがって、居住者以外の人の居住室への立ち入りは、決して起こってはならず、回避しければならない。上記構成によれば、特定階にカゴが着床した状態でカゴ扉及び乗場扉が開くと、カゴ室が通路を介さずに居住室に接続する。よって、意図しない乗客が特定階の乗場に降りることを抑制できる本発明の作用効果の意義が特に顕著なものになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る特定階行き来抑制機能付エレベーターによれば、カゴ内の乗客が特定階の乗場へ降りることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエレベーターの概略構成図である。
【
図2】上記エレベーターの移動機構の模式斜視図である。
【
図3】住居階のセキュリティー制御に関連する部位のブロック図である。
【
図4】更なる変形例のエレベーターを、立ち入りを制限したい乗場の乗場側から見た時の乗場扉周辺の模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の図面および実施例の説明で、X方向は、カゴの奥行き方向を示し、Y方向は、カゴの幅方向を示し、Z方向は、カゴの高さ方向を示す。X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーター10の概略構成図である。エレベーター10は、最上階より1つ下の階(以下、住居階という)50が住人の住居になっており、犯罪等を防止するため、当該住人が意図しない人の住居階50への立ち入りを禁止する必要がある。住居階50は特定階を構成する。以下、
図1及び
図2以下を用いて、当該住人のセキュリティーを担保する構成、及び制御について説明する。
【0024】
図1に示すように、エレベーター10は、カゴ11、巻上機12、釣合錘13、ワイヤーロープ14、カゴ呼び釦15、行先階指定釦16、モード選択部17、着床位置検出センサ18、及び制御部としての制御盤19を備える。制御盤19及び巻上機12は、昇降路20上方にある機械室30内に設けられる。なお、エレベーターが機械室を有さない場合、制御盤及び巻上機は、例えば昇降路下方にあるピット上に設けられる。ワイヤーロープ14は、巻上機12に巻回され、一端部がカゴ11の上部に固定されるのに対して、他端部が釣合錘13に固定される。カゴ呼び釦15は、カゴ11を呼ぶと共にカゴ11の移動方向を指定する釦であり、全ての階の乗場22に設けられる。また、行先階指定釦16は、カゴ11の行先階を指定するためにカゴ11内に設けられる。
【0025】
モード選択部17は、例えばカードリーダーで構成され、所定のカードをカードリーダーの所定箇所にかざすことで、セキュリティーモードと、セキュリティー解除モードを選択できる。また、モード選択部17は、住居階50の乗場(居室におけるエレベータ乗り込み口周辺)と、地上階の乗場に設けられる。なお、所定のカードをカードリーダーの所定箇所を通過させることでセキュリティーモードと、セキュリティー解除モードを選択できるようにしてもよい。また、モード選択部は、住居階の乗場と、カゴ内に設けられてもよい。
【0026】
セキュリティーモードが選択されると、行先階指定釦16による住居階50の停止登録が無効になり、セキュリティー解除モードを選択されると、行先階指定釦16による住居階50の停止登録が有効になる。セキュリティーモード、又はセキュリティー解除モードが選択された際の動作については、後で詳細に説明する。なお、モード選択部17は、表示部を含んでもよく、カードを有する住居階の住人等が、セキュリティーモードと、セキュリティー解除モードのいずれかが選択されているのかを表示部で確認できるようにしてもよい。また、モード選択部は、暗号を入力する操作部で構成されてもよく、又は鍵で開閉できる操作部配設室内に配設された釦等の操作部で構成されてもよい。カゴ11及び釣合錘13の夫々は、昇降路20内に設けられたガイドレールでガイドされる。カゴ呼び釦15、行先階指定釦16、及びモード選択部17からの信号を受けた制御盤19が巻上機12のモータ12aの回転数及び回転方向を適宜制御することで、カゴ11が昇降路20内を昇降する。
【0027】
着床位置検出センサ18は、カゴ11が着床する乗場22の着床位置を検出する。着床位置検出センサ18は、例えば、各階の着床位置に対応する昇降路位置に設けられた鉄板等のベーン18aと、ベーン18aを検出する磁気方式の検出器18bとで構成される。本実施例では、鉄板等のベーン18aが被検出部を構成し、検出器18bが検出部を構成する。着床位置検出センサ18からカゴ11が乗場22に着床したことを表す信号を受けた制御盤19が乗場扉用モータ及びカゴ扉用モータ(図示せず)を制御することで、乗場扉31及びカゴ扉32が開き、人がカゴ11から乗り降り可能となる。エレベーター10は、更に、行き来防止機構の一例としての移動機構40を備える。移動機構40は、制御盤19からの信号に基づいて、住居階50のベーン18aを、検出器18bが検出可能な検出位置と、検出器18bが検出不可能な検出不可能位置との間をY方向に移動させる。
【0028】
図2は、移動機構40の模式斜視図である。
図2に示すように、移動機構40は、電動シリンダで構成される。移動機構40は、ケース41、モータ42、ボールねじ43、ボールねじナット45、及びロッド46を含む。ロッド46は、ボールねじ43の先端部に接合され、ロッド46及びボールねじ43は、モータ42の出力軸に同期して回転する。ケース41は、昇降路20(
図1参照)に固定され、ボールねじ43は、ケース41の内面に固定される。モータ42は、制御盤19からの制御信号で回転方向及び回転数が制御される。モータ42の出力軸が回転すると、ボールねじ43がボールねじナット45に対してY方向に相対移動し、ロッド46が伸縮する。住居階50のベーン18aは、ロッド46の先端部に接合される。制御盤19によるモータ42の制御で住居階50のベーン18aがY方向に移動し、ベーン18aが検出位置又は検出不可能位置に位置する。なお、制御盤によるモータの制御で住居階のベーンをY方向に傾斜する方向に移動させて、当該ベーンを検出位置又は検出不可能位置に配置してもよい。
【0029】
図3は、住居階50のセキュリティー制御に関連する部位のブロック図である。
図3に示すように、制御盤19は、モード選択部17から信号を受け、移動機構40のモータ42、及び住居階50の登録回路のスイッチ部51に信号を出力する。住居階50の登録回路は、カゴ11内の行先階指定釦16において住居階50が指定されたときに、カゴ11を住居階50の乗場22に停止させることを表す電気信号を制御盤19に伝えるための回路である。住居階50の登録回路は、スイッチ部51を含み、スイッチ部51がオフになると、当該電気信号を制御盤19に伝える機能が失われ、カゴ11が住居階50の乗場22に停止できなくなる。スイッチ部51は、例えば、電磁リレー、又はトランジスタ等からなるスイッチング素子で構成される。本実施例では、住居階50の住人等が、モード選択部17を用いてセキュリティーモードを選択すると、住居階50の登録回路のスイッチ部51がオフになる。また、これに加えて、住居階50の住人等が、モード選択部17を用いてセキュリティーモードを選択すると、移動機構40を構成する電動シリンダのモータ42が駆動して、住居階50のベーン18aが、検出器18bが検出不可能な検出不可能位置に移動する。すなわち、セキュリティーモードが選択された場合、スイッチ部51のオフ動作と、住居階50のベーン18aの検出不可能位置への移動が、互いに独立に実行される。
【0030】
上記実施形態によれば、住居階50の住人等がモード選択部17を用いてセキュリティーモードを選択すると、制御盤19が移動機構40を機械的に制御して、住居階50においてカゴ室と乗場とが行き来不可能になる。したがって、当該住人等がセキュリティーモードを選択したときに、住居階50の登録回路に不具合が生じる等して、住居階50の登録回路を無効にできなくて、住居階50におけるカゴ室と乗場の行き来を回路的に不可能にできなくても、移動機構40の機械的な制御で住居階50におけるカゴ室と乗場の行き来を防止できる。よって、住居階50の住人が意図しない乗客がカゴ11から住居階50に立ち入る可能性を大きく低減できる。
【0031】
また、ユーザがセキュリティーモードを選択すると、住居階50のベーン18aが、検出器18bが検出不可能な検出不可能位置に移動する。したがって、エレベーター10が住居階50の着床位置を特定(認識)できなくなり、カゴ11が住居階50の着床位置に着床できなくなる。よって、住居階50の住人が意図しない乗客がカゴ11から住居階50に立ち入ることを略確実に防止できる。
【0032】
また、エレベーター10では、住居階50にカゴ11が着床した状態でカゴ扉及び乗場扉が開くと、カゴ室が居住室に直接つながる。したがって、セキュリティー機能が働かないと、住居階50の住人が意図しない乗客が居住室に立ち入って、犯罪等につながる虞があり、係る立ち入りは回避されなければならない。よって、乗客が特定階の乗場に降りることを抑制できる本発明の作用効果の意義が顕著なものになる。
【0033】
尚、本発明は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態では、着床位置検出センサ18が、各階の着床位置に対応する昇降路位置に設けられた鉄板等のベーン18aと、ベーン18aを検出する磁気方式の検出器18bとで構成される場合について説明した。しかし、カゴに、着床スイッチを設け、昇降路内の各階の乗場ゾーンに着検板を設けてもよい。そして、着床スイッチが着検板へ接触したことに基づいて着床スイッチがオンするようになっていてもよく、着床スイッチのオンに基づいてカゴが乗場ゾーンに存在することを表す信号が制御部に出力されてもよい。又は、カゴに着検板を設け、昇降路内の各階の乗場ゾーンに着床スイッチを設けてもよい。そして、いずれかの階の乗場ゾーンに存在する着床スイッチが着検板へ接触したことに基づいてその着床スイッチがオンするようになっていてもよく、当該着床スイッチのオンに基づいてカゴが特定の階の乗場ゾーンに存在していることを表す信号が制御部に出力されてもよい。この場合でも、セキュリティーモードが選択されると、移動機構が、特定階の乗場ゾーンに設けられた着検板又は着床スイッチを、カゴに設けられた着床スイッチ又は着検板に非接触な位置まで移動させることは言うまでもない。
【0035】
又は、着床位置検出センサ18が、発光素子を含む発光部、受光素子を含む受光部、及び1以上の光学機器を含んでもよい。例えば、特開2007−168951号公報に記載されているように、着床位置検出センサは、カゴ上側に取付けられた投光器と、カゴ下側に取付けられた鏡と、乗場床に取付けられた鏡と、乗場天井に取付けられた鏡と、カゴ下側に取付けられた受光器とを含んでもよい。そして、投光器から出射されて、3つの鏡を経由した光を、受光器が受光することで、着床位置を特定してもよい。
【0036】
そして、この場合、エレベーターが、昇降路に相対移動不可能に取り付けられた1つの光学機器に入射する光を遮断する光遮断位置と、当該光学機器に入射する光を遮断不可能な光遮断不可能位置との間を移動可能であって、光が透過しない素材で構成される光遮断部材を更に備えてもよい。そして、エレベーターが、当該光遮断部材を、上記光遮断位置と上記光遮断不可能位置との間を移動させる移動機構を更に備え、光遮断部材を光遮断位置に移動させることで、エレベーターが住居階の着床位置を特定(認識)できなくなり、カゴが特定階に着床できないようにしてもよい。移動機構としては、
図2に示す電動シリンダを採用してもよい。この場合、電動シリンダのロッド46の先端部に、住居階50のベーン18aを接合する替わりに、上記光遮断部材を接合するだけで、光遮断部材を上記光遮断位置と上記光遮断不可能位置との間を移動させる移動機構を構成できる。なお、着床位置検出センサを、発光素子を含む発光部と、受光素子を含む受光部とで構成し、光学機器としての受光部を昇降路に対して相対移動不可能に固定してもよい。そして、発光部からの光を、受光部に直接入射させることによって着床位置を特定し、光遮断部材で、発光部からの光を遮ったり遮らなかったりしてもよい。
【0037】
又は、行き来防止機構は、特定階の登録回路を不具合で無効にできない場合に、カゴの特定階への着床までは許容するが、特定階においてカゴ室と乗場とが行き来可能になることを機械的に防止する機構であってもよい。
【0038】
詳しくは、
図4、すなわち、更なる変形例のエレベーター110を、住居階の乗場側から見た時の乗場扉160周辺の模式正面図に示すように、エレベーター110が、乗場側に配設されて乗場扉160が開くことを機械的に防止するロック機構180を含んでもよい。
【0039】
乗場扉160は、第1乗場扉161及び第2乗場扉162を含み、第1及び第2乗場扉161,162が互いに逆向き方向に移動することで乗場扉160の開閉動作が実行される。ロック機構180は、行き来防止機構の一例であり、第1乗場扉161の上側に設けられた係合部としての凹部181、一方側端部にある支点182を中心として回動自在に取り付けられた棒状部材183、及び支点182を中心として棒状部材183を回動させるモータ184を含む。
【0040】
凹部181は、Z方向上方に開口し、棒状部材183には、係合位置で凹部181に係合することで乗場扉160の開き動作を防止する被係合部としての突出部185が設けられる。突出部185は、棒状部材183の他方側端部に配設される。モータ184は、乗場壁に取り付けられ、棒状部材183の一方側端部は、モータ184の出力軸189に取り付けられる。モータ184の出力軸189が回動すると、棒状部材183は出力軸189の延在方向に垂直な平面内を回動する。
【0041】
乗場壁190における乗場扉160の上方には、凹部191が設けられ、棒状部材183は、凹部191内に配置される。棒状部材183は、支点182を中心として、凹部181に係合する係合位置と、凹部181に係合しない被係合位置との間を矢印Aで示す方向に回動する。モータ184の駆動は、制御盤119からの信号で制御される。制御盤119には、カゴ呼びボタン115とモード選択部117からの信号も入力される。モード選択部117は、カード振りかざし部117aと、モードを確認するための表示部117bを含む。
【0042】
本変形例では、特定階としての住居階の登録回路に不具合が生じる等して、住居階の登録回路を無効にできない場合、カゴが特定階に着床することは、防止できない。しかし、モード選択部117でセキュリティーモードが選択されると、制御盤119からの制御で棒状部材183の突出部185が乗場扉160の凹部181に係合するため乗場扉160が開くことがなく、乗場扉160に連動するカゴ扉も開くことがない。よって、特定階においてカゴ室と乗場とが行き来可能になることを機械的に防止できる。
【0043】
本変形例によれば、乗場側からロック機構180でのロックが視認できる。よって、セキュリティーモードで立ち入りが禁止される特定階が住居階である場合に、住人が不審者等の侵入が不可能であることを視認でき、住人に安心感を与えることができる。なお、本変形例では、乗場扉160に凹部181を設け、棒状部材183に突出部(凸部)185を設けたが、乗場扉に突出部(凸部)を設け、棒状部材に凹部を設けてもよい。
【0044】
なお、上記実施形態では、住居階50の住人等がモード選択部17を用いてセキュリティーモードを選択すると、制御盤19が移動機構40を機械的に制御して、住居階50においてカゴ室と乗場とが行き来不可能になると共に、制御盤19が住居階50の登録回路のスイッチ部51をオフに制御して、住居階50の登録回路が無効になった。しかし、住居階の登録回路を無効にする制御を行わなくてもよい。
【0045】
また、セキュリティーモードで人の降り動作を防止したい特定階が、1つの住居階50である場合について説明したが、セキュリティーモードで人の降り動作を防止したい特定階が、2つ以上存在してもよい。また、セキュリティーモードで人の降り動作を防止したい特定階が住居階50である場合について説明したが、セキュリティーモードで人の降り動作を防止したい1以上の特定階に住居階が含まれても、含まれなくてもよい。また、セキュリティーモードで人の降り動作を防止したい1以上の特定階に、商業ビルにおいてテナントが全く存在しない階が含まれてもよい。又は、テナントが営業しない特定期間(例えば、月曜日)等に当該テナント階に人が立ち入らないようにしてもよい。
【0046】
また、実施例の冒頭で説明したが、行き来防止機構は、1つのみの機構で構成されてもよく、互いに独立な2以上の機構を含んでもよい。例えば、行き来防止機構は、
図1に説明した移動機構40と、
図4で説明したロック機構180を含んでもよく、又は変形例で説明した光遮断部材を移動させる移動機構と、
図4で説明したロック機構180を含んでもよい。
【符号の説明】
【0047】
11 カゴ、 17,117 モード選択部、 18 着床位置検出センサ、 18a ベーン、 18b 検出器、 19,119 制御盤、 40 移動機構、 50 住居階、 160 乗場扉、 180 ロック機構、 181 凹部、 182 支点、 183 棒状部材、 184 モータ、 185 突出部。