(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779862
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】表面仕上げされた鋼板およびこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 2/02 20060101AFI20201026BHJP
C23C 2/12 20060101ALI20201026BHJP
C23C 28/02 20060101ALI20201026BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
C23C2/02
C23C2/12
C23C28/02
C22C21/00 N
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-508623(P2017-508623)
(86)(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公表番号】特表2017-532442(P2017-532442A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】EP2015069017
(87)【国際公開番号】WO2016026885
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2018年8月15日
(31)【優先権主張番号】14181621.5
(32)【優先日】2014年8月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510041496
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
(73)【特許権者】
【識別番号】501186597
【氏名又は名称】ティッセンクルップ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】クーン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ノルデン,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シュローテン,アクセル
【審査官】
菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−036250(JP,A)
【文献】
特開平11−350164(JP,A)
【文献】
特開平03−028358(JP,A)
【文献】
特開2002−012922(JP,A)
【文献】
特開平03−064437(JP,A)
【文献】
特開昭62−267459(JP,A)
【文献】
特開2002−129300(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/005121(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理された鋼板であって、耐金属腐食性層を有し、この層の構成成分がアルミニウムおよび鉄を含み、前記耐金属腐食性層のアルミニウム含有量が、40重量%を超え、前記耐金属腐食性層はさらに、ニッケルを含み、ニッケル含有相は、前記耐金属腐食性層から前記鋼板のベース材料へと遷移する部分において形成され、前記耐金属腐食性層のニッケル含有量は、10〜30重量%の範囲であり、前記耐金属腐食性層が、8〜15μmの範囲の厚さを有することを特徴とする、鋼板。
【請求項2】
前記耐金属腐食性層が、ケイ素ならびにニッケル、鉄およびアルミニウムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の表面処理された鋼板。
【請求項3】
前記耐金属腐食性層のSi含有量が、8重量%未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の表面処理された鋼板。
【請求項4】
前記耐金属腐食性層の外層半分におけるニッケル含有量が鉄含有量より多いことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の表面処理された鋼板。
【請求項5】
そのベース材料が、冷間圧延薄鋼板であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の表面処理された鋼板。
【請求項6】
そのベース材料が、プレス硬化鋼であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の表面処理された鋼板。
【請求項7】
AlNi金属間化合物相が、前記耐金属腐食性層に形成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の表面処理された鋼板。
【請求項8】
前記耐金属腐食性層が、10〜15μmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の表面仕上げされた鋼板。
【請求項9】
耐金属腐食性層で表面処理された鋼板を製造するための方法であって、平鋼が、アルミニウムまたはアルミニウム系合金で溶融めっき処理されており、前記溶融めっき処理の前に、前記平鋼にはニッケル層が提供され、前記ニッケル層を適用するためのコーティング操作が、前記操作の結果として適用された前記ニッケル層の厚さが1〜5μmとなるように実行され、前記溶融めっき処理は、アルミニウム、鉄、及びニッケルを含む前記耐金属腐食性層が8〜15μmの範囲の厚さを有するように実行されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記ニッケル層を適用するためのコーティング操作が、前記操作の結果として適用された前記ニッケル層が、3〜5μmの範囲の層厚さを有するように行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ニッケル層が、電解コーティング操作によって適用されることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記電解コーティング操作のために使用されるニッケル電解質が、硫酸ニッケルおよび塩化ニッケルに基づくことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶融めっき処理される前に、前記ニッケル層が提供された前記平鋼が、不活性ガス下で再結晶化焼鈍処理に供されることを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶融めっき処理が、アルミニウム、鉄、およびニッケルを含み形成された耐金属腐食性層が10〜15μmの範囲の層厚さを有するように行われることを特徴とする、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶融めっき処理のために使用される溶融めっき浴が、不可避の不純物とは別に純粋なアルミニウム溶融物から構成されることを特徴とする、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記溶融めっき処理のために使用される溶融めっき浴が、10重量%までのケイ素を有するアルミニウムケイ素溶融物を含むことを特徴とする、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐金属腐食性層を有する表面処理された鋼板、好ましくは冷間圧延薄鋼板に関し、この層の構成成分は、アルミニウムおよび鉄を含み、この耐金属腐食性層のアルミニウム含有量は、40重量%を超え、好ましくは45重量%を超え、より好ましくは50重量%を超える。本発明はさらに、耐金属腐食性層で表面処理された鋼板を製造する方法に関し、平鋼、好ましくは冷間圧延薄鋼板を、アルミニウムまたはアルミニウム系合金で溶融めっき処理する工程を含む。
【背景技術】
【0002】
耐食性が不十分であるため、コーティングされていない炭素鋼(特にホウ素合金化焼き戻し鋼を含む)には、耐金属腐食性が提供される。先行技術において、これは、通常、亜鉛またはアルミニウム系金属溶融物を用いて溶融めっき処理することによって達成される。溶融亜鉛めっきされた薄鋼板は、亜鉛の顕著な耐食性と鋼の強度を組み合わせる。溶融アルミニウムめっき処理された薄鋼板は、顕著な耐食性と熱堅牢性とを組み合わせる。さらなる利点は、アルミニウムの視覚的外観と鋼の強度との組み合わせである。アルミニウム−ケイ素被覆で溶融めっき処理することによって提供される薄鋼板は特に知られている。
【0003】
溶融めっき処理された薄鋼板は特に自動車構築に使用され、ここでは三次元成形された車体およびシャーシ構成要素が、薄金属板の個々の定寸シートから成形することによって製造される。
【0004】
車両重量および燃料消費を低減するために、加熱された状態での即座の成形性によって、および迅速な冷却(プレス硬化)を伴う熱間成形の後の特定の高強度によって区別される焼き戻し鋼の使用が増大している。既知の焼き戻し鋼は、等級22MnB5である。この等級の鋼の顕著な強度品質は、炭素およびマンガンの他、特に少量のホウ素によって達成される。
【0005】
しかし、熱間成形に広く使用される種類の既知のアルミニウム−ケイ素被覆の不利益は、冷間成形に関してそれらの好適性が限定されていることである。故にこれらの被覆は、例えば熱間成形用途の前に冷間成形を必要とする場合には、不向きである。その理由は、これらの被覆を有する鋼板の冷間成形が、構成成分の成形−応力領域におけるコーティングの剥離によって達成され、剥離部位において耐食性が失われることが判明しているためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに基づいて、本発明の目的は、容易な成形性、特に冷間成形性を許容し、成形時に顕著に改善された接着を伴う耐金属腐食性層を有する最初に特定されたタイプの鋼板を創出することである。この種類の鋼板はまた、好ましくは熱間成形(プレス硬化)に好適であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に示された特徴を有する表面仕上げされた鋼板によって、さらに請求項9に示された特徴を有する表面仕上げされた鋼板を製造する方法によって達成される。本発明の鋼板およびそれを製造するための方法の好ましいおよび有利な実施形態は、従属請求項に示される。
【0008】
本発明の鋼板は、耐金属腐食性層が提供され、この層はアルミニウム、ニッケル、および鉄を含み、耐金属腐食性層のアルミニウム含有量は、40重量%を超え、好ましくは45重量%を超え、より好ましくは50重量%を超えると同時に、耐金属腐食性層のニッケル含有量は、5〜30重量%の範囲、好ましくは10〜25重量%の範囲であり、ニッケル含有相は、特に、耐食性層から鋼板のベース材料へと遷移する部分において形成される。
【0009】
従って本発明の方法は、問題の平鋼、好ましくは冷間圧延薄鋼板が、溶融めっき処理される前に、まずニッケル層が提供されることを特徴とする。
【0010】
出願人による社内実験では、本発明の耐金属腐食性層は、既知のアルミニウムおよびアルミニウム−ケイ素溶融めっき被覆に対して冷間成形時の延性および接着の顕著な増大を示すことが示されている。実験では、特に、ホウ素合金化焼き戻し鋼で製造された鋼板はまた、本発明の耐金属腐食性層を伴って、熱間成形(プレス硬化)に好適であることが示されている。
【0011】
ニッケル層は、好ましくは電解コーティング操作によって適用される。
【0012】
コーティング操作、好ましくは平鋼または冷間圧延薄鋼板のニッケルによる予備コーティングのための電解コーティング操作は、本発明の方法の1つの有利な実施形態に従って、この操作の結果として適用されたニッケル層が、1〜5μmの範囲、好ましくは3〜5μmの範囲の層厚さを有するように行われる。これは、本発明の耐金属腐食性層の延性および接着をさらに増大および/または最適化できることを意味する。
【0013】
本発明の方法のさらなる実施形態によれば、ニッケル層は、硫酸ニッケルおよび塩化ニッケルに基づく電解コーティング操作のためにニッケル電解質を使用することによって平鋼または冷間圧延薄鋼板に確実に、経済的に適用できる。
【0014】
本発明の方法のさらに有利な実施形態は、溶融めっき処理される前に、ニッケル層が提供された平鋼は、不活性ガス下で再結晶化焼鈍処理に供されることを特徴とする。これにより、平鋼の成形性、特に冷間成形性を向上させる。再結晶化焼鈍処理は、規定の期間、規定された温度において保持し、所望の特性を得た後に制御された冷却を行う工程を含む。ニッケル層が提供された焼鈍された平鋼は、好ましくは溶融槽の温度を超え、この温度と20℃以下で異なる温度に冷却される。焼鈍された平鋼は規定の割合で冷却され、結果として得られた特性は負の影響を受けない。不活性ガス中の焼鈍は、ニッケル層が提供された平鋼について、溶融めっき処理の前の酸化または他の所望でない表面反応の発生を防止する。
【0015】
後続する溶融めっき処理は、好ましくは、アルミニウム、鉄、およびニッケルを含む得られた耐金属腐食性層が、8〜20μmの範囲、好ましくは10〜15μmの範囲、より好ましくは10〜12μmの範囲の層厚さを有するように行われる。これは、コーティングされた平鋼の冷間成形において耐金属腐食性層の最適な接着により、非常に確実に耐金属腐食性層を達成することが経済的に可能であることを意味する。
【0016】
本発明の方法において、不可避の不純物とは別に純粋なアルミニウム溶融物を好ましくは含む溶融槽が溶融めっき処理のために使用される。しかし代わりに本発明の方法において、10重量%までのケイ素を有するアルミニウム溶融物を含む溶融槽を使用することもできる。それにもかかわらず、出願人による実験では、本発明の耐金属腐食性層は、実質的に純粋なアルミニウム溶融物が使用される場合に冷間成形時に最適な接着を示すことが示されている。
【0017】
ニッケル層を適用するための電解コーティング操作に続く溶融めっき処理がケイ素含有アルミニウム溶融物を用いて行われる場合、方法パラメータは、好ましくは対応する表面処理された鋼板の耐金属腐食性層が、8重量%未満、好ましくは5重量%未満のSi含有量を有するように設定される。
【0018】
電解適用されたニッケル層の形態の予備コーティングは、溶融めっき処理によって適用されるアルミニウムへの鋼板(平鋼)からの鉄の拡散を抑制する。方法パラメータは、好ましくは、対応する表面処理された鋼板の耐金属腐食性層の外層半分において、ニッケル含有量が鉄含有量より多くなるように設定される。
【0019】
さらに、方法パラメータは、好ましくは、AlNi金属間化合物相が、本発明の耐金属腐食性層において製造または形成されるように設定される。
【0020】
本発明の鋼板を製造するために使用されるベース材料は、好ましくはプレス硬化性鋼、例えば等級22MnB5の鋼である。
【0021】
本発明は、以下の添付の図面を参照して、例示的な実施形態によって以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に従ってコーティングされた鋼板のグロー放電発光分光法(GDOES)によって決定される元素深さプロファイルを示す。
【
図2】冷間引抜きカップであり、左側のカップは従来のAlSi被覆を保持する鋼板から製造され、右側のカップは、本発明のAl−Ni被覆を保持する鋼板から製造されていることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
耐金属腐食性層で表面処理された鋼板を製造するために、約1.25mmの金属板厚さを有する冷間圧延薄板ストリップを、連続電解コーティング操作において、約3μm厚さのニッケル層、または1つの変形例において約1μm厚さのニッケル層を備えて用意した。この目的のために、いずれの場合も、硫酸ニッケルおよび塩化ニッケルに基づいてWattsニッケル電解質を使用した。このコーティング操作はまた、電気めっき操作を指してもよい。いずれの場合も使用する冷間圧延薄板ストリップは、等級22MnB5の鋼ストリップ(ベース材料)であった。
【0024】
次に、電解ニッケルコーティング薄板ストリップを、連続溶融めっきユニットにおいて焼鈍処理のために通過させた。溶融めっきユニットにおけるコーティング槽の上流にある連続オーブンにおいて、ニッケルプレコーティングされた極薄板ストリップは、不活性ガスまたは発泡ガス(約95%窒素、5%水素、露点−30℃)の雰囲気下で再結晶化焼鈍を行った。約800℃の温度で60秒の保持時間の後、焼鈍された極薄板ストリップを、約705℃の槽めっき温度に冷却し、コーティング槽を通るように誘導した。1つの好ましい変形例において、コーティング槽は、実質的に、純粋な液体アルミニウム溶融物からなっていた。別の変形例において、使用されるコーティング槽は、約10重量%のケイ素を含有するアルミニウム溶融物からなっていた。このようにして適用されるアルミニウム被覆またはAlSi被覆の層厚さは、コーティング槽の上方に配設されたスクラッピングノズルによって調整され、こうしてニッケル層から形成された耐金属腐食性層および溶融めっき被覆の層厚さは約10μmであった。この耐金属腐食性層はまた、アルミニウム−ニッケル合金層と称されてもよい。
【0025】
図1は、元素深さプロファイルに基づいて、予備ニッケルコーティングを行った鋼板において、溶融めっき操作の後に得られた本発明の耐金属腐食性層の組成を示す。破線は、耐金属腐食性層の深さに対して重量%のニッケル含有量を示す。左下にて始まり、ほぼ100重量%まで上昇する線は、その深さに対して耐金属腐食性層のFe含有量を示すと同時に、第3の線はAl含有量に関する。
【0026】
この例において、耐金属腐食性層の表面近くでのニッケル含有量は、10〜12重量%の範囲であることは明らかである。冷間圧延薄板の方向において、約10μm厚さの耐食性層のニッケル含有量は、約6μmまでの深さにて、約19〜20重量%まで増大する。この後、耐金属腐食性層のニッケル含有量は、徐々に、コーティングされた薄板の方向に低下する。
【0027】
耐金属腐食性層のアルミニウム含有量は、層の表面近くで最大値を示す。この例の場合、最大Al含有量は、約82〜86重量%の範囲にある。ニッケルコーティング(予備ニッケルコーティング)は、アルミニウムの鉄含有量を抑制し、被覆に、既知のAlSi被覆より相当低い脆性または相当大きい延性を与える。
図1において、耐金属腐食性層の外層半分においてニッケル含有量は鉄含有量よりも相当大きいことがわかる。
【0028】
本発明の耐金属腐食性層の成形性を評価するために、これに応じてコーティングされた等級22MnB5の冷間圧延薄鋼板は、特に深絞りによって冷間成形に供され、円形カップを成形し、これらの被覆の接着を、耐金属腐食性層の外観に基づいて、既知のAl−Si溶融めっき被覆の場合(参照として)およびさらに既知のAl溶融めっき被覆の場合(表を参照)と比較した。さらに、サンプル製造を、異なるニッケル層厚さを製造することによって、および同様に予備ニッケルコーティングを用いないサンプルを調査することによって、変動させた。
【0029】
表は、十分厚いニッケル層によって、既知のAlSiおよびAl溶融めっき被覆の場合(サンプル1および4)に対して冷間成形時の被覆(耐金属腐食性層)の延性および接着を十分増大できることを示す。
図2の写真はさらにこの例示を与える。
【0030】
図2の左のカップを、従来のAlSi被覆を保持する薄鋼板の冷間深絞りによって製造した。対照的に、右のカップは、本発明のAl−Ni被覆を有する薄鋼板の冷間深絞りによって製造した。左のカップは、カップの成形−応力領域においてAlSi被覆の十分な剥離を示す一方で、剥離の例は右のカップにおいて確定できない。
【0031】
故に本発明の耐金属腐食性層は、顕著に増大した延性と同時に、冷間成形において十分向上された接着によって区別される。加えて、本発明の耐金属腐食性層はさらに、熱間成形のための既知のAlSi被覆によって得られるスケール保護の特性を有する。故に本発明の耐金属腐食性層は、同様に熱間成形に好適である。本発明の利点はまた、圧延プロファイリングおよび後続の硬化によって構成要素を製造する場合特に、活用できる。
【表1】