【実施例】
【0023】
いくつかの一般的なプロトコルを以下で説明するが、これらは、本明細書に記載の方法のいずれにおいても使用することができ、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない。
【0024】
実施例1:原液
無傷の生存呼吸可能ミトコンドリアを単離するために、以下の溶液を調製した。本発明の方法を使用してミトコンドリアを成功裏に単離するために、全ての溶液および組織試料を氷上に保持し、ミトコンドリアの生存を保つべきである。氷上に維持された場合であっても、単離されたミトコンドリアは、経時的に機能活性の低下を示す(Olson et al.,J Biol Chem 242:325−332,1967)。全ての溶液は、可能な場合には事前に調製されるべきである。
1MのK−HEPES原液(KOHでpHを7.2に調整)。
0.5MのK−EGTA原液(KOHでpHを8.0に調整)。
1MのKH
2PO
4原液。
1MのMgCl
2原液。
均質化緩衝液(pH7.2):300mMのスクロース、10mMのK−HEPES、および1mMのK−EGTA。4℃で保存した。
呼吸緩衝液:250mMのスクロース、2mMのKH
2PO
4、10mMのMgCl
2、20mMのK−HEPES緩衝液(pH7.2)、および0.5mMのK−EGTA(pH8.0)。4℃で保存した。
10×PBS原液:80gのNaCl、2gのKCl、14.4gのNa
2HPO
4、および2.4gのKH
2PO
4を、1Lの再蒸留H
2O(pH7.4)に溶解させた。
100mLの10×PBSを1Lの再蒸留H
2Oに滴下することにより、1×PBSを調製した。
4mgのSubtilisin Aを1.5mLの微小遠心分離管に量り入れることにより、Subtilisin A原液を調製した。使用するまで−20℃で保存した。
20mgのBSAを1.5mLの微小遠心分離管に量り入れることにより、BSA原液を調製した。使用するまで−20℃で保存した。
【0025】
実施例2:ミトコンドリア単離
組織解離および分別濾過を使用したミトコンドリアの単離における手順ステップの概要を説明した図を、
図2に示す。2つの6mm生検穿孔試料を、解離C管内の5mLの均質化緩衝液に移し、試料を組織解離器の1分間の均質化プログラムを使用して均質化した(A)。サブチリシンA原液(250μL)を解離C管内のホモジネートに添加し、10分間氷上でインキュベートした(B)。氷上の50mLの円錐遠心分離管内に、事前に湿潤させた40μmメッシュフィルタを通してホモジネートを濾過し、次いで250μLのBSA原液を濾液に添加した(C)。氷上の50mLの円錐遠心分離内に、新しい事前に湿潤させた40μmのメッシュフィルタを通して濾液を再び濾過した(D)。氷上の50mLの円錐遠心分離管内に、新しい事前に湿潤させた10μmのメッシュフィルタを通して濾液を再び濾過した(E)。濾液を1.5mLの微小遠心分離管に移し、4℃で10分間9000×gで遠心分離した(F)。上清を除去し、ミトコンドリアを含有するペレットを再び懸濁させ、1mLの呼吸緩衝液に組み合わせた(G)。
【0026】
単離直前に、サブチリシンAを1mLの均質化緩衝液に溶解した。単離直前に、BSAを1mLの均質化緩衝液に溶解した。6mm生検試料穿孔を使用して2つの新鮮な組織試料を収集し、氷上の50mLの円錐遠心分離管内で1×PBS中で保存した。2つの6mm組織穿孔試料を、5mLの氷冷均質化緩衝液を含有する解離C管に移した。組織解離器上に解離C管を取り付け、事前設定されたミトコンドリア単離サイクル(60秒の均質化)を選択することにより、組織を均質化した。
【0027】
解離C管を取り除いて、アイスペールに移した。サブチリシンA原液(250μL)をホモジネートに添加し、転倒混和し、ホモジネートを氷上で10分間インキュベートした。40μmのメッシュフィルタを氷上の50mLの円錐遠心分離管上に設置し、均質化緩衝液でフィルタを予め湿潤させ、ホモジネートを氷上の50mLの円錐遠心分離管内に濾過した。
【0028】
新しく調製したBSA原液(250μL)を濾液に添加し、転倒混和した。(このステップは、ミトコンドリアタンパク質決定が必要である場合には省略した。)40μmのメッシュフィルタを氷上の50mLの円錐遠心分離管上に設置し、均質化緩衝液でフィルタを事前に湿潤させ、ホモジネートを氷上の50mL円錐遠心分離管内に濾過した。10μmのフィルタを氷上の50mLの円錐遠心分離管上に設置し、均質化緩衝液でフィルタを事前に湿潤させ、ホモジネートを氷上の50mL円錐遠心分離管内に濾過した。濾液を2つの事前に冷却された1.5mLの微小遠心分離管に移し、4℃で10分間9000×gで遠心分離した。上清を除去し、ペレットを再び懸濁させ、1mLの氷冷呼吸緩衝液に組み合わせた。
【0029】
実施例3:ATPアッセイ
単離されたミトコンドリアの代謝活性を決定するために、ATPアッセイキットを使用してATP発光アッセイを行った。プロトコル、試薬および標準は、アッセイキットに提供されていた。手順の要約を以下に記載する。
【0030】
キット試薬を室温に平衡化した。凍結乾燥ATPペレットを1,170μLの再蒸留水に溶解することにより、10mMのATP原液を調製した。ATP標準原液および調製されたミトコンドリア試料を氷上で保存した。
【0031】
基質緩衝溶液(5mL)を、凍結乾燥基質溶液のバイアルに添加し、穏やかに混合し、暗所に設置した。呼吸緩衝液(100μL)を、黒色の不透明底部96ウェルプレートの全てのウェルに添加した。調製された試料からのミトコンドリア(10μL)を96ウェルプレートの各ウェルに添加した。試料を3つ組で播種し、標準用の列および陰性対照(呼吸緩衝液)用の3つのウェルを含めた。哺乳動物細胞溶解溶液(50μL)を、標準および対照を含む全てのウェルに添加した。96ウェルプレートを37℃で5分間、オービタルシェーカー上で125rpmでインキュベートした。インキュベーションの間、ATP標準を、10mMのATP原液から0.1mM、0.05mM、0.01mM、0.005mM、0.001mM、および0.0001mMのATPの濃度で調製し、氷上で保存した。インキュベーション後、10μLのATP標準を、プレートマップ(
図5)上に示されるように対応するウェルに添加した。このプレートマップは、ATPアッセイ用に標準(A1〜A12)、ミトコンドリア試料(B1〜C6)、および陰性対照(C7〜C9)を設定する方法を示している。アッセイの間、100μLの呼吸緩衝液、50μLの哺乳動物細胞溶解溶液、および50μLの再構成基質溶液を全てのウェル(A1〜C9)に添加した。再構成された基質溶液(50μL)を各ウェルに添加し、96ウェルプレートを、オービタルシェーカー上で125rpmで5分間、37℃でインキュベートした。
【0032】
プレートをOpen Gen5 1.11ソフトウェアにより制御された分光光度計で読み出した。より高い値は、増加したATPレベルおよびより高い代謝活性に関連している。
【0033】
実施例4:代表的結果
6mm生検穿孔を使用して組織試料を得た。組織重量は0.18±0.04g(湿潤重量)であった。粒子サイズ計数により決定された単離されたミトコンドリアの数は、骨格筋において2.4×10
10±0.1×10
10ミトコンドリア、および肝臓調製物において2.75×10
10±0.1×10
10ミトコンドリアであった(
図3A)。また、比較を可能とするために、血球計によりミトコンドリア数を決定した。血球計により決定した場合、ミトコンドリアの数は少なく見積もられ、骨格筋において0.11×10
10±0.04×10
10ミトコンドリア、および肝臓調製物において0.34×10
10±0.09×10
10ミトコンドリアであった(
図3A)。サイズに基づく粒子カウンタにより決定されたミトコンドリア直径を、
図3Bに示す。代表的なトレースは、単離されたミトコンドリアが、以前の報告と一致して、0.38±0.17μmの平均直径で1つのピーク下に局在することを示している(Hogeboom et al.,J Biol Chem 172:619−635,1948)。
【0034】
ビシンコニン酸(BCA)アッセイにより決定されたミトコンドリアタンパク質/g(湿潤重量)出発組織は、骨格筋および肝臓試料においてそれぞれ4.8±2.9mg/g(湿潤重量)および7.3±3.5mg/g(湿潤重量)であった(
図3C)。
【0035】
透過型電子顕微鏡によりミトコンドリア純度を決定したが、これを
図3Dに示す。ミトコンドリアは、電子密度が高いように観察され、破砕または損傷しているのは0.01%未満である。非ミトコンドリア粒子による汚染は、0.001%未満である。
【0036】
以前に説明されたように、MitoTracker Redにより、ミトコンドリア生存率を決定した(Masuzawa et al.,Amer J Physiol Heart Circ Physiol 304:H966−H982,doi:10.1152/ajpheart.00883.2012,2013;McCully et al.,Amer J Physiol Heart Circ Physiol 296:H94−H105,doi:10.1152/ajpheart.00567.2008,2009)。本発明の方法は、膜電位を維持する単離されたミトコンドリアを生成する(
図4A〜C)。これらの画像は、ミトコンドリアが膜電位を維持したことを示している。矢印は、膜電位を有さないミトコンドリアまたは残屑を示す(
図4A)。
【0037】
発光アッセイキットを使用してATPを決定した。ATPアッセイのプレートマップを
図5に示す。ATP標準は、2つ組で播種した。ミトコンドリア試料および陰性対照は、3つ組で播種した。ATP含量は、骨格筋および肝臓試料においてそれぞれ10.67±4.38nmol/mgミトコンドリアタンパク質および14.83±4.36nmol/mgミトコンドリアタンパク質であった(
図4D)。
【0038】
以前に説明されたように、クラーク型電極を使用して、ミトコンドリア呼吸を評価した(Masuzawa et al.,Amer J Physiol Heart Circ Physiol 304:H966−H982,doi:10.1152/ajpheart.00883.2012,2013;McCully et al.,Amer J Physiol Heart Circ Physiol 296:H94−H105,doi:10.1152/ajpheart.00567.2008,2009)。ミトコンドリア酸素消費速度は、骨格筋において178±17nM O
2/分/mgミトコンドリアタンパク質、および肝臓調製物において176±23nM O
2/分/mgミトコンドリアタンパク質であった。呼吸調節率(RCI)値は、骨格筋および肝臓試料調製物においてそれぞれ2.45±0.34および2.67±0.17であった(
図4E)。これらの結果は、ミトコンドリアを単離するために手作業の均質化および分別遠心分離を使用した以前の研究において報告されたものに類似している(Masuzawa et al.,Amer J Physiol Heart Circ Physiol 304:H966−H982,doi:10.1152/ajpheart.00883.2012,2013;McCully et al.,Amer J Physiol Heart Circ Physiol 296:H94−H105,doi:10.1152/ajpheart.00567.2008,2009)。
【0039】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて、説明してきたが、上記説明は本発明を例示することを意図し、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定する意図はないことを理解されたい。他の態様、利点、および修正は、以下の特許請求の範囲内である。