(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779900
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】高温燃料電池または電解槽のリーク検出
(51)【国際特許分類】
C25B 15/00 20060101AFI20201026BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20201026BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20201026BHJP
C25B 9/00 20060101ALI20201026BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20201026BHJP
【FI】
C25B15/00 302Z
H01M8/04 Z
H01M8/04664
C25B9/00 A
!H01M8/12 101
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-549010(P2017-549010)
(86)(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公表番号】特表2018-515687(P2018-515687A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】FR2016050555
(87)【国際公開番号】WO2016146923
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年2月20日
(31)【優先権主張番号】1552252
(32)【優先日】2015年3月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・シャトゥルー
(72)【発明者】
【氏名】トマ・ドニエ−マレシャル
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/038051(WO,A1)
【文献】
特開2005−123139(JP,A)
【文献】
特開2006−022378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00−15/08
H01M 8/04− 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がカソードとアノード(12,14)との間に介在する電解質(16)を備える基本電気化学セル(10)のスタック(20)と、
前記アノードおよび前記カソード(12,14)にガスを供給し、生成されたガスを収集するダクト(22)と、
を備える、高温水蒸気電解槽または高温燃料電池を形成する電気化学装置(20)と、
前記電気化学装置(20)が収容され、筐体(60)内に空気流を循環させるための少なくとも1つの入口ダクト(62)および1つの出口ダクト(64)を備える、筐体(66)と、
前記筐体中の空気を分析する回路(66)と、を備える電気化学システムであって、
前記筐体中の空気を分析する回路(66)が、
前記筐体(60)の前記出口ダクト(64)に存在する酸素含量τ1を測定可能なセンサ(74)と、
測定された酸素含量τ1が前記筐体の前記入口ダクト中の既定の酸素含量τ0と異なる場合に、装置(20)のリークを診断可能な分析ユニット(76)と、
を備え、
前記分析ユニット(76)が、以下の関係式に従って前記電解槽のカソードの位置でのリーク流量を決定可能であることを特徴とする、電気化学システム:
DfH2=2(τ0−τ1)DAir
式中、DfH2は前記リーク流量であり、DAirは前記筐体中の空気流である。
【請求項2】
分析回路(66)が、前記出口ダクト(64)から空気を吸い出し、かつ既定の最大容量流量を有する空気流を生成可能なポンプユニット(72)を備え、酸素センサ(74)が前記ポンプユニット(72)の下流の酸素含量を測定することを特徴とする、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項3】
前記分析回路が前記筐体(60)の前記出口ダクト(64)に存在する空気を乾燥させる乾燥ユニット(70)を備え、前記酸素センサ(74)が前記乾燥ユニット(70)によって乾燥された空気中の酸素含量を測定することを特徴とする、請求項1または2に記載の電気化学システム。
【請求項4】
前記装置(20)が高温電解槽であり、前記分析ユニット(76)が、τ1<τ0の場合に電解槽のカソードの位置でのリークを診断し、かつ/またはτ1>τ0の場合に前記装置のアノードの位置でのリークを診断することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物電解槽および燃料電池などの高温電気化学装置に関し、より具体的には、高温領域における電気化学セルのスタックのガスリークの検出に関する。
【背景技術】
【0002】
高温の水蒸気(H
2O)の電解槽またはHTSE(高温水蒸気電解)電解槽は、複数の基本固体酸化物電気化学セルのスタックを備える。
図1を参照すると、固体酸化物セルまたは「SOC」10は特に、
a)水素の生成のために水蒸気が供給される第1の多孔性導電電極12または「カソード」と、
b)カソードに注入された水の電気分解によって発生した酸素(O
2)が通り抜ける第1の多孔性導電電極14または「アノード」と、
c)カソード12とアノード14との間に挟持された固体酸化物(緻密電解質)膜16であって、該膜16が600℃超の温度のような高温でのアニオン伝導体である、固体酸化物膜16と、
を備える。
【0003】
少なくともこの温度までセル10を加熱し、カソード12とアノード14との間に電流Iを印加することによって、カソード12上で水が還元され、カソード12で水素(H
2)、アノード14で酸素が発生する。
【0004】
このようなセルのスタック20は顕著な量の水素を生成することを目的としており、
図2の簡略図に示されている。特に、セル10は、相互接続プレート18によって分離される一方で互いに積層される。このようなプレートは、セル10の異なる電極間の導通を提供することで電気的直列化を可能にし、かつセルの動作に必要な異なるガス、場合によっては電気分解の生成物の排出を助けるキャリアガスを分配する二重の機能を有する。このため、プレート18は、制御可能な弁24によって決定される一定の水蒸気流量D
H2Oにしたがってセル10のカソード上に蒸気を注入する水蒸気供給装置22に接続される。プレート18はまた、電気分解によって生じるガスを収集するガス捕集装置26に接続される。スタックおよび相互接続プレートの構造の例は、例えば文献WO2011/110676に記載されている。
【0005】
このような電解槽はまた共電解で運転され得る。つまり、カソードに注入されるガスの混合物が水蒸気(H
2O)および二酸化炭素(CO
2)からなる。アノードから出力される混合物は、水素(H
2)、水蒸気(H
2O)、一酸化炭素(CO)、および二酸化炭素(CO
2)からなる。
【0006】
スタック20による電気分解の効果的な実施のために、スタックは600℃を超える温度、通常は650℃から900℃の範囲内の温度まで加熱され、一定の流量でガスの供給が開始され、電流Iを流すために電力源28がスタック20の2つの端子30、32の間に接続される。
【0007】
固体酸化物セル10と相互接続プレート18との間の気密は、通常はシールによって実現されるが、それはシステムの弱点の1つである。高温領域の雰囲気に対するスタック20の気密を確保するそのようなシールは脆弱であり、
‐リークがカソード側に位置する場合には水素および水蒸気、および/または
‐リークがアノード側に位置する場合には酸素
がリークし得る。
【0008】
しかしながら、電解槽の高温に起因して、スタックの温度に近い温度を有する領域が存在し、そのような領域は650℃より高い温度に到達し得る。ここで、そのような温度は、水素の自然発火温度(571℃)より高い。温度が燃料の自然発火に十分高い電解層の周囲の領域は、通常「高温領域」と称される。該領域は、電気化学装置を包含する断熱筐体に相当する。特に安全手段を備えていない場合には、リークが電解槽付近で水素の蓄積を引き起こすと発火、さらには爆発のリスクがある。爆発のリスクに関する安全性を保障するために、高温領域は通常、燃料ガスリークの燃焼を実現し、水素の蓄積を回避するのに十分な空気流で流される。特に、電解槽が収容される筐体は、空気が注入される入口と、空気出口とを備え、それにより筐体内で空気が循環し、内容物が定期的に更新される。 したがって、燃料ガスは決して蓄積されず、爆発のリスクがない。しかしながら、このような解決策は、電解槽を冷却しないように筐体温度まで予備加熱されなければならない非常に高流量の空気を必要とするため、電力効率の点で特に不利である。
【0009】
このような手段により爆発のリスクを回避することはできるが、それ自体によって電解槽のリークを検出することはできず、電解槽の使用者に警告したり、電解槽の自動停止を実施したりすることはできない。この目的のために、いくつかのリーク検出システムが開発された。
【0010】
第1の解決策は、電解槽からリークした水素の燃焼反応の発熱性に基づくものである。その反応は2000℃を超える火炎をもたらし、高温領域の温度上昇を引き起こす。特に、高温領域の温度を測定するために、電解槽を収容する筐体に1つの(または複数の)温度センサが配置される。電子パッケージは、温度センサに接続されており、測定温度が既定の検出閾値を超えると電解槽を自動的に停止することができる。しかしならが、このような解決策は精度が低い。実際には、高温領域における熱電対の同一の温度上昇が、熱電対付近の少量のリークまたは熱電対から離れた多量のリークの水素火炎の放射に起因し得る。誤ったリーク検出を避けるために、多量の水素リークのみが検出される値まで検出閾値が過大に設定される。
【0011】
第2の解決策は、高温領域に流すガス中の水素含有量を測定することにより水素リークを検出するために、筐体中に水素検出器または水素爆発力計を配置することを含む。しかしながら、水素センサは、所与の温度を超えて、特に電解槽の高温領域の温度で動作しない。したがって、水素センサは、空気流の点で高温領域の下流に位置するより温度の低い領域に配置される。水素検出器からの信号の分析を実施して、測定値が電解システムを安全な状態に置くのに必要な閾値を超えているかが判断される。しかしながら、水素の燃焼は高温領域において基本的に発生するため、リークが少量の場合にはセンサは水素のわずかな部分のみしか検出できないかまたは全く検出できない。実際には、酸素の総消費をもたらす多量の水素リークのみがセンサレベルで水素を検出可能である。したがって、多量の水素リークのみしか検出することができない。
【0012】
高温領域において直接動作可能なセンサが開発された。しかしながら、該センサは、ここでもまた多量のリークの場合に相当する押出空気において燃焼しなかった水素のみを検出するため、実質的な利点を提供しない。
【0013】
さらに、考案された解決策は、水素リークの直接または間接検出を目的とするものである。したがって、電解槽のアノード側の酸素リークを検出することはできない。
【0014】
言い換えると、HTSE電解槽のカソード側およびアノード側の両方のリークを検出することができ、かつ少量のリークを検出可能な解決策は存在しない。
【0015】
SOFCとして知られる高温固体酸化物燃料電池もまた類似の問題を有する。実際には、HTSE電解槽およびSOFCは同一の構造であり、動作モードのみが異なるものである。
図3を参照すると、SOFCを形成する電気化学セルは、電解槽セルと同一の要素(アノード12,カソード14,電解質16)を備えるが、燃料電池は一定の流量でアノードに水素(またはメタンCH
4などの別の燃料)、カソードに酸素(送り込まれる空気中に含まれる)が供給され、発生した電流を送るためのロードCに接続される。
【0016】
HTSE電解槽と同様に、SOFCは、電気接続およびガスの分配/収集のために相互接続プレートによって分離された電気化学セルのスタックを備えており、スタックが気密問題を有し得る。セルはまた、燃料の蓄積を避けるために通常空気が流される高温領域を備える。
【0017】
高温燃料電池のスタックが密である場合、前述と同様に、高温領域におけるスタックの気密性を提供するシールは脆弱であり、
‐リークがアノード側に位置する場合は燃料(H
2、CH
4、など)、および/または
‐リークがカソード側に位置する場合には減損空気
がリークし得る。
【0018】
前述と同様に、従来技術において、先に記載したように高温領域に流すガスを分析するために、特に水素検出器または爆発力計に基づく水素リークの検出のみが考案された。
【0019】
言い換えると、従来技術において、SOFCのカソード側およびアノード側の両方でリークを検出可能な解決策がない。さらに、少量のリークを検出可能な解決策がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2011/110676号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、リーク箇所がアノードであるかまたはカソードであるかに関わらず、HTSE電解槽またはSOFCにおけるリークを検出するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的のため、本発明は、
各々がカソードとアノードとの間に介在する電解質を備える基本電気化学セルのスタックと、
前記アノードおよび前記カソードにガスを供給し、生成されたガスを収集するダクトと、
を備える、高温水蒸気電解槽または高温燃料電池を形成する電気化学装置と、
前記電気化学装置が収容され、筐体中の空気流を循環させるための少なくとも1つの入口ダクトおよび1つの出口ダクトを備える、筐体と、
前記筐体中の空気を分析する回路と、を備える電気化学システムに向けられる。
【0023】
本発明によると、筐体中の空気を分析する回路は、
筐体の出口ダクトに存在する酸素含量τ
1を測定可能なセンサと、
測定された酸素含量τ
1が筐体の入口ダクト中の既定の酸素含量τ
0と異なる場合に、装置のリークを診断可能な分析ユニットと、
を備える。
【0024】
本発明は、電解槽または燃料電池のリークを検出するために、高温領域から出る空気の酸素含量を測定する酸素センサの使用を提供する。
【0025】
水蒸気(H
2O)が供給される高温電解槽の場合、高温領域から出る押出空気中にリークが無い場合に測定される酸素含量値τ
1は、筐体に注入される空気と通常は等しい。
【0026】
測定値τ
1が入口での値τ
0と異なる場合、必然的にリークが存在することを意味する。特に、酸素検出器がτ
1<τ
0である値を示す場合、高温領域の空気中の酸素の一部が水素リークによって酸化剤として使用されたこと、すなわちカソード側にリークがあることを意味する。
【0027】
逆に、酸素検出器がτ
1>τ
0である値を示す場合、電気分解反応によって発生した酸素の一部が高温領域の空気中にリークしていること、すなわちリークがアノード側に位置していることを意味する。こうして、リークが電解槽のアノード側またはカソード側のいずれで発生するかにかかわらず、リークが検出される。
【0028】
同様に、水蒸気(H
2O)および例えば二酸化炭素(CO
2)の混合物が供給される高温共電解槽の場合には、酸素検出器がτ
1<τ
0である値を示す場合、高温領域の空気中の酸素の一部が、水素または一酸化炭素リークによって、酸化剤として使用されたこと、すなわちカソード側にリークがあることを意味する。共電気分解の生成物である一酸化炭素が高温領域において自己発火し、その自己発火温度は605℃と同等であることにさらに留意すべきである。本発明はさらに、水素検出のみを対象とした解決策とは異なり、一酸化炭素リークまたは少なくともその結果もまた検出することができる。
【0029】
逆に、酸素検出器がτ
1>τ
0である値を示す場合、共電解反応によって発生した酸素の一部が高温領域の空気中にリークしていること、すなわちリークがアノード側に位置していることを意味する。この場合も同様に、リークが電解槽のアノード側またはカソード側のいずれで発生するかにかかわらず、リークが検出される。
【0030】
燃料ガス(例えばH
2またはCH
4)が供給される高温燃料電池の場合、測定値τ
1が初期値τ
0と異なる場合、この場合もまたセル中にリークが存在することを必然的に意味する。実際、酸素検出器が測定値τ
1<τ
0を示す場合、高温空気中の酸素の一部が水素またはメタンリークによって酸化剤として使用されたこと、すなわちアノード側にリークがあることを意味し得るかまたは、押出空気と混合される減損空気の存在、すなわちリークがカソード側に存在することを意味し得る。燃料電池モードでは、純酸素または富化空気が供給されない限り、酸素検出器は決してτ
0を超える値を示さない。しかしながら、それにもかかわらず、驚くべきことに、酸素検出器の使用は、アノード側およびカソード側での高温燃料電池におけるシール不良を診断するための方法である。
【0031】
可逆系、燃料電池および高温電解槽では、酸素検出器の使用によって、電気分解モードでの不良側を特定することを可能にする利点とともに、高温領域におけるアノード側またはカソード側のリークを検出することが可能となる。
【0032】
さらに、有利には、酸素センサは低温領域に配置され、広範囲のセンサを使用することが可能である。さらに、高温領域の外側で実施されるため、内部で起こる局所的現象(例えば対流)に測定が左右されず、燃焼が起こったときに測定が正確な位置に依存しない。実際、検出の精度は、高温領域および実際の燃焼現象に依存せず、そのため小さなリークの検出が容易になる。例えば、空気中で観察される平均酸素値(海面すなわち「大気圧」で20.95%)と同等のτ
0であっても、正確な検出が得られる。
【0033】
さらに、本発明は、電解槽またはセルが大気圧または高圧のいずれで運転するかにかかわらず適用することができる。後者の場合、有利には、酸素検出器は、大気圧の位置に配置され得る。分析は、高温領域から出る空気に対して、好ましくは大気圧での膨張後に実施される。
【0034】
本発明は、電気化学装置の周囲で筐体が気密である場合に有効に機能する。しかしながら、電気化学装置にリークがあるか判断するために分析回路によって捕捉される電気化学装置によって発生するガスの一部には十分であるため、筐体の気密性は必須の特性ではない。好ましくは、筐体は、リーク発生時に電気化学装置から発生するガスの少なくとも50%が分析回路によって捕捉されるように構成される。より好ましくは、筐体は、リーク発生時に電気化学装置から発生するガスの少なくとも90%が分析回路によって捕捉されるように構成される。
【0035】
実施形態によると、分析回路は、出口ダクトから空気を吸い出し、かつ既定の最大容量流量を有する空気流を生成可能なポンプユニットを備え、酸素センサは、ポンプユニットの下流の酸素含量を測定する。言い換えると、ある酸素センサは、分析対象のガスの既定の速度範囲で動作する。ポンプユニットは特に、空気流中に酸素センサを直接配置するには筐体中の空気流が強すぎる場合に、ガスを採取し、センサと適合する流れを生成することを可能にする。
【0036】
実施形態によると、分析回路は、筐体の出口ダクトに存在する空気を乾燥させる乾燥ユニットを備え、センサは、乾燥ユニットによって乾燥された空気の酸素含量を測定する。言い換えると、乾燥ユニット、例えば液滴分離器は、センサによって分析されるガス中の水分含量を、酸素センサの好ましい動作範囲内に維持する。これは特に、液体電解質電気化学センサの供給業者によって推奨されるものである。
【0037】
実施形態によると、
‐装置が高温電解槽であり、
‐分析ユニットは、τ
1<τ
0の場合に電解槽カソードの位置でリークを診断し、τ
1>τ
0の場合に電解槽のアノードの位置でリークを診断する。
【0038】
言い換えると、前述のように、本発明はまた、電解槽の不良側を正確に検出することを可能にする。
好ましくは、分析ユニットは、以下の関係式に従って電解槽のカソードの位置でガスリーク流量を決定可能である:
D
fH2=2(τ
0−τ
1)D
Air
式中、D
fH2は前記リーク流量であり、D
Airは筐体中の空気流量である。
【0039】
言い換えると、本発明は、電解槽の燃料リーク流量、すなわちほとんどの危険ガスの流量を判断することが可能である。これにより特に、セキュリティの点でリークが許容できるか、すなわち全ての燃料が低温領域で蓄積することなく筐体内で効率的に燃焼したかを立証することが可能となる。さらに、経済的観点で、リークの判断により生産ロスが許容範囲内であるか判断することが可能となる。
【0040】
本発明は、添付の図面に関連して例示としてのみ提供された以下の説明を読むことでより深く理解されるであろう。図面において、同一または類似の要素には同一の参照符号が付される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、HTSE電解槽の基本電気化学セルの簡略図である。
【
図3】
図3は、SOFCの電気化学セルの簡略図である。
【
図4】
図4は、高温領域、ガス入口および出口回路、および酸素検出器を含む測鎖を備える本発明による電気化学システムの簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下において、「上流」及び「下流」という用語は、ガス循環によるダクトおよび側管における位置を指す。
【0043】
図4を参照すると、本発明によるシステムは、
‐例えば、
図1および2に関連して記載され、電解槽の電気化学セルのアノードおよびカソードのガスの供給および収集のためのダクト52,54,56,58のアセンブリを備えるHTSE電解槽20と、
‐電解槽20が収容された筐体60であって、ガスの供給および収集回路(図示せず)に接続するためにダクト52,54,56,58が筐体60の壁を横切り、筐体60が空気入口ダクト62および空気出口ダクト64をさらに備え、筐体60が例えば他のいかなる場所も気密および液密であり、ダクト62が、電解槽20を取り囲む高温領域の空気で押し流すための空気供給回路(図示せず)に接続可能であり、押出空気が出口ダクト64を介して排出される、筐体60と、
‐筐体60の出口ダクト64に接続された空気分析装置66と、
を備える。
【0044】
分析装置66は、
‐出口ダクト64からのガスを抽出し、抽出されたガスをサンプリングの下流へと再注入すること可能にする出口ダクト64の側管ループ68と、
‐側管68を流れるガス中に存在する水を除去するための乾燥ユニット、特に液滴分離器70と、
‐出口ダクト64からのガスを抽出するために液滴分離器70の下流に配置されたポンプユニット72と、
‐ポンプユニット70の下流に配置され、ポンプユニットによって送られた酸素含量、したがって出口ダクト64に存在するガスの酸素含量τ
1を測定する酸素センサ74と、
‐測定含量τ
1を受信し、この含量の処理を実施して電解槽20のリークを検出する、酸素センサに接続された分析ユニット76と、
を備える。
【0045】
例えば、筐体へと注入される押出空気は、外で採取された空気であり、したがって大気圧で20.95%に近い酸素含量を有し、酸素センサ74は、0%から25%のO
2の測定範囲を有し、例えば酸素欠乏モニタリングに使用されるオキシメータである。センサは、例えばDrager検出システム、つまりO
2LSセンサ(3電極温度補償式電気化学センサ)を備えた「Polytron 7000 Transmitter」である。
【0046】
入口ダクト62を介して筐体60へと導入された押出空気流D
Air(l/min)は、筐体60に含まれる空気をN回/分更新する。したがって、流量D
Airは、以下に等しい:
D
Air=NV
enclosure
式中V
enclosureは筐体60の容量(l)である。
【0047】
セキュリティ上の配慮によって基本的に決定される筐体60の容量および更新の選択される数Nによって、例えば、ガスラインの速度が酸素センサの製造者推奨の最大値を超える場合、直接分析には押出空気流量D
Airが高すぎる。
【0048】
前述の制約を考慮するが、ガス流が常に酸素検出器に流れることを保障した実施形態によると、ポンプユニット72は、側管68においてセンサと直列に設置される。したがって、ポンプユニット72は、センサ74の動作に適したガス流を生成するように選択される。
【0049】
さらに、スタック上のリークがカソード側に現れる場合、ガス混合物H
2+H
2Oのある程度のリーク流量が筐体60へと入る。その結果、一方でカソード混合物から直接生じ、他方で押出空気の酸素との水素の燃焼後の押出空気中の水蒸気の量が増加する。出口ダクト64の温度が筐体60中の温度より低いかまたは室温と同等であるため、ダクト64および側管ダクト68の壁面で水蒸気が凝縮するリスクがある。水滴から酸素センサ74を保護し、分析対象の空気の最大湿度に関する製造者の推奨を考慮した実施形態によると、側管68における酸素センサの上流に直列的に液滴分離器70が設置される。
【0050】
カソード側のリークに対応する先の例によると、押出空気の酸素と水素の燃焼は、センサ74によって分析される空気中の酸素含量の低下を引き起こし得る。それは、大気に相当する範囲内で較正され、分析対象の空気中の酸素の0%から25%の典型的な範囲内の測定を提供し得る。標準酸素含量τ
0=20.95%であり、これは筐体60に導入される酸素含量に相当するものであり、τ
0より小さな測定値τ
1は、空気中の酸素含量の低下に相当し、スタックのカソード側のリークの存在を示す。特に、分析ユニット76は、値τ
0を保存し、測定値τ
1をτ
0と比較し、τ
1<τ
0の場合にはカソード側のリークを診断する。
【0051】
有利には、酸素センサ74の測定範囲内で、以下の式に従う値D
Airを保存する分析ユニット76によって水素リークD
fH2の流量D
fH2の定量が実施される:
D
fH2=2(τ
0−τ
1)D
Air
【0052】
さらに、リークがアノード側に位置する場合、酸素富化空気のアノード混合物の一部が筐体60に入り、センサ74によって分析されるガス中の酸素含量の増加が生じる。こうして、τ
1>τ
0の場合に、分析ユニット76はアノード側のリークを診断する。
【0053】
実施形態によると、警告および/または警報閾値が設定され得、電解槽制御における自動動作が行われ得る。例えば、分析ユニット76はガスおよび電解槽の電流供給を停止することができる。
【0054】
高温水蒸気電解槽への本発明の適用について記載した。本発明は、水蒸気(H
2O)および二酸化炭素(CO
2)の混合物を供給し、水素(H
2)および一酸化炭素(CO)の混合物を生成する高温共電解槽にも適用される。この場合、水素リーク流量D
fH2の概念を燃料ガスH
2+COリーク流量D
fH2+COの概念に代えて前述と同様の理論および式が適用される。
【0055】
本発明はまた、前述のような電気化学基本セルのスタックで形成された高温固体酸化物燃料電池にも適用される。
その場合、燃料側または減損空気側のリークにより、両方の場合において、押出空気の酸素含量より少ない酸素含量が測定される。こうして、分析ユニット76はτ
1≠τ
0であればリークを診断する。
【0056】
本発明は、可逆系、燃料電池および高温電解槽に適用される。酸素検出器を使用することによって、電解モードにおける不良側の特定を可能にする利点を有して高温領域におけるアノード側またはカソード側のリークを検出することができる。
【0057】
本発明は、大気圧で作動する前述のシステムだけでなく、加圧システムに適用される。有利には、酸素検出器は、大気圧に維持され得る。高温領域から排出されるガス上で、好ましくは大気圧での膨張後に分析が実施される。
【0058】
筐体に注入された空気の酸素含量が一定量τ
0、例えば空気が注入されるときに大気圧である空気の酸素である実施形態について記載した。変形例として、検出の精度をあげるために、例えば入口ダクトに要素68、70、72、および74に類似した装置を設置することによって、酸素含量τ
0が測定される。第2の酸素センサは分析ユニット76に接続され、測定値を送信する。
【0059】
2つの値の比較(大きい、小さい、異なる)について記載した。変形例では、閾値を使用した比較が実施され、例えば、出口の酸素含量τ
1が初期の酸素含量τ
0から、例えば経済的観点で許容可能な最大水素リーク流量に対応する既定値を超えて異なる場合にリークが検出される。変形例では、リークの性質に応じて異なる閾値が適用される。
【0060】
側管およびポンプユニットを備えた分析装置について記載した。この構成により、筐体の出口ダクトにおける押出空気流量の値に影響を受けず酸素が測定され、出口ダクトにおける直接の酸素測定に強い流量を含む測定が可能となる。変形例として、押出空気流量が出口ダクトにおける直接測定を可能にする場合、測定装置はその中に、任意選択的には液滴分離器の下流にセンサを備える。
【符号の説明】
【0061】
10 電気化学セル
12 カソード
14 アノード
16 電解質
18 相互接続プレート
20 電気化学装置
22 ダクト
24 弁
26 ガス捕集装置
28 電力源
60 筐体
62 入口ダクト
64 出口ダクト
66 分析回路
68 側管
70 乾燥ユニット
72 ポンプユニット
74 酸素センサ
76 分析ユニット