(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、合成ゴム等の原料であるブタジエンは、工業的にはナフサ留分の熱分解および抽出により製造されているが、今後市場への安定供給の悪化が懸念されることから、新たなブタジエンの製造方法が求められている。そこで、ブテン類と分子状酸素を含む混合ガスから、触媒の存在下でブテン類を酸化的脱水素する方法が注目されている。しかし、反応生成物および/または反応副生成物によるコーク状物質が反応器内、つまり触媒表面および内部、イナート物質、反応管内壁や後工程設備内に析出または付着することによって、工業プラントにおいて反応ガスの流通の阻害、反応管の閉塞やそれらに伴うプラントのシャットダウンや収率の低下等さまざまなトラブルを引き起こす課題がある。
【0003】
これらのトラブルを回避する目的で、工業プラントでは、一般的に、コーク状物質によって閉塞が生じる前に反応を中止し、反応器内を循環する熱媒を昇温すること等によりコーク状物質を除去する再生処理を行う。また、コーク状物質の生成メカニズムとしては、たとえば以下が想定される。モリブデンを含む複合金属酸化物触媒の使用の際には昇華し反応器内に析出したモリブデン化合物を起点とした各種オレフィン類の重合および高沸点化合物の凝縮によるもの、触媒および反応器内の異常酸塩基点やラジカル生成点を起点とした各種オレフィン類の重合および高沸点化合物の凝縮によるもの、共役ジエンおよびその他オレフィン化合物によるディールスアルダー反応による高沸点化合物の生成および反応器内で局所的に温度が低い点における凝縮によるもの、などが挙げられ、これ以外にも種々のメカニズムが知られている。
【0004】
触媒表面に析出したコーク状物質の除去方法として、イソ酪酸またはその低級エステルを製造するためのヘテロポリ酸系触媒に炭素分が析出することにより触媒性能が劣るため、空気と水蒸気を含有するガスを反応器に流し、炭素分を触媒から除去する触媒の再生方法が特許文献1にて開示されている。特許文献2では、触媒層のピーク温度範囲を400℃(反応温度と同じ)〜450℃の状況下、酸素含有ガスを反応器に流しており、かつ酸素含有ガスとともに水蒸気の使用を避けた方がコーク状物質除去には好ましいことが開示されている。特許文献3では、化学反応器内における炭素状物質の除去のために400℃と500℃の間の温度での酸化段階を必須としている。特許文献4では、脱水素化触媒の再生方法において0.5bar〜20barの範囲で繰り返し迅速に反対方向に2倍〜20倍だけ変化させる工程を必須としている。特許文献5では、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを気相中で反応させて低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒を再生する方法である。引用文献6では、メタノールをジメチルエーテルへ転化するためのゼオライト含有触媒の再生方法である。
【0005】
特許文献7では、ブテン類(特許文献7では「n−ブテン類」と記載)からブタジエンへの酸化的脱水素化法において、2つ以上の製造ステップと少なくとも1つの再生ステップとを含み、製造ステップの転化率損失が一定の温度で25%を上回る前に、酸素含有の再生ガス混合物を200〜450℃の温度で再生ステップが実行され、また再生ステップ1回あたりに、カーボンの2〜50質量%が焼失されることを特徴とする方法が開示されている。
【0006】
さらには、特許文献8では、2つ以上の製造ステップの間に1つの再生ステップが行われるブテン類(特許文献8ではn−ブテン類」と記載)の酸化的脱水素化法において、少なくとも2つの製造ステップは少なくとも350℃の温度で実施され、かつ少なくとも1つの再生ステップは、先行する製造ステップが行われた温度を高くとも50℃上回る温度で実施されることを特徴とする技術が開示されている。
しかしながら、再生ステップにおけるカーボンの焼失は燃焼反応であり制御が難しく、急激な燃焼反応による触媒の損傷を防ぐ技術についての記載は、特許文献7及び8には見当たらない。
【0007】
特許文献9では、固定相反応器の運転中に触媒の損傷を最小にする、固定層反応器中でブテン類(特許文献9では「n−ブテン」「n−ブテン類」と記載)をブタジエンへと酸化脱水素化する方法を提供しており、製造工程における過度なカーボン析出となる前に再生工程を実施する方法として、生成ガス中の酸素含有量を少なくとも5体積%とし、さらに再生工程の実施時期が重要と捉え、製造工程の時間を1000時間未満とした後、再生工程を実行することを特徴としている。
しかしながら、特許文献9には、再生工程におけるカーボンの燃焼反応による触媒の損傷を防ぐ技術についての記載は見当たらない。
【0008】
コーク状物質の除去方法は、種々の反応によって生成されるコーク状物質の性状や触媒の性状によって特徴が異なること、さらにはブテン類の酸化的脱水素反応によってブタジエンを製造する触媒並びに反応器内に付着するコーク状物質の除去および該触媒の破損を抑制する再生方法における技術として特許文献1〜9では不十分であり、さらなる改良が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ブテン類をブタジエン製造用触媒の存在下に酸化的脱水素反応させることで触媒並びに反応器内に付着したコーク状物質を除去するブタジエン製造用触媒の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前述課題を解決すべく鋭意研究の結果、反応器内に充填された所定の組成のブタジエン製造用触媒の存在下にブテン類を酸化的脱水素反応させることで触媒並びに反応器内に付着したコーク状物質を除去するために、前記酸化的脱水素反応に使用された該触媒が充填されている反応器を酸素を特定の割合で含有する第1のガスで処理した後、水蒸気及び酸素をそれぞれ特定の割合で含有する第2のガスを前記反応器に供給し、前記反応器内を循環する熱媒の温度を200℃以上400℃未満の範囲とし、かつ、前記処理工程の終了時点からそれに続く前記供給工程の終了時点までの間、前記反応器内を循環する熱媒の温度を一定にし、前記第1のガスにおける水蒸気の含有量と前記第2のガスにおける水蒸気の含有量とを異ならせることによって、従来よりも低い温度でコーク状物質の除去が可能となり、該触媒の破損も抑制することができる再生方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は
(1)ブテン類の酸化的脱水素反応に使用された、使用前の組成が下記式1
Mo
12Bi
aFe
bCo
cNi
dX
eY
fZ
gO
h・・・・(式1)
(式中、Xは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属元素を示し、Yは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を示し、Zは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロビウム、アンチモン、タングステン、鉛、亜鉛、セリウム、及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、a、b、c、d、e、f、及びgは各々、モリブデン12に対する各成分の原子比を示し、0.2≦a≦2.0、0.6<b<3.4、5.0<c<8.0、0<d<3.0、0<e<0.5、0≦f≦4.0、0≦g≦2.0を満たす範囲にあり、hは、他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
で表されるブタジエン製造用触媒が充填された反応器内のコーク状物質を除去する触媒の再生方法であって、0容量%より大きく21容量%以下の酸素を含む第1のガスで反応器を処理する処理工程と、次いで0容量%より大きく42容量%以下の水蒸気、および0容量%より大きく21容量%以下の酸素を含有する第2のガスを前記反応器に供給する供給工程とを含み、前記反応器内を循環する熱媒の温度を200℃以上400℃未満の範囲とし、かつ、前記処理工程の終了時点からそれに続く前記供給工程の終了時点までの間、前記反応器内を循環する熱媒の温度を一定にし、前記第1のガスにおける水蒸気の含有量と前記第2のガスにおける水蒸気の含有量とが異なることを特徴とする触媒の再生方法、
(2)前記処理工程の条件において前記反応器から排出されるCO
2およびCOの生成速度が最大生成速度となった後、前記反応器から排出されるCO
2およびCOの生成速度が前記最大生成速度の95%以下の時に前記供給工程を行うことを特徴とする上記(1)に記載の触媒の再生方法、
(3)前記処理工程及びそれに続く前記供給工程を含むサイクルを2回以上繰り返し、
1回目のサイクルにおける処理工程及び供給工程の熱媒の温度と、2回目のサイクルにおける処理工程及び供給工程の熱媒の温度とが異なることを特徴とする上記(2)に記載の触媒の再生方法、
(4)2回目のサイクルにおける処理工程及び供給工程の熱媒の温度が、1回目のサイクルにおける処理工程及び供給工程の熱媒の温度よりも高いことを特徴とする上記(3)に記載の触媒の再生方法、
(5)前記反応器内を循環する熱媒の温度が、200℃以上350℃以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の触媒の再生方法、
(6)前記ブタジエン製造用触媒が担体に担持されているブタジエン製造用担持触媒を使用する上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の触媒の再生方法、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、酸化的脱水素反応によりブタジエン製造用触媒並びに反応器内に付着したコーク状物質を除去するために、前記酸化的脱水素反応に使用された該触媒が充填されている反応器を酸素を特定の割合で含有する第1のガスで処理した後、水蒸気及び酸素をそれぞれ特定の割合で含有する第2のガスを前記反応器に供給し、前記反応器内を循環する熱媒の温度を200℃以上400℃未満の範囲とし、かつ、前記処理工程の終了時点からそれに続く前記供給工程の終了時点までの間、前記反応器内を循環する熱媒の温度を一定にし、前記第1のガスにおける水蒸気の含有量と前記第2のガスにおける水蒸気の含有量とを異ならせることにより、従来よりも低い温度、短時間でコーク状物質を除去することができ、かつ該触媒の破損も抑制することができる、長期安定性および経済的に優れた触媒の再生方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてより詳細に説明する。本発明は、ブテン類を下記の組成式(式1)
Mo
12Bi
aFe
bCo
cNi
dX
eY
fZ
gO
h・・・・(式1)
(式中、Xは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属元素を示し、Yは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を示し、Zは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロビウム、アンチモン、タングステン、鉛、亜鉛、セリウム、及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、a、b、c、d、e、f、及びgは各々、モリブデン12に対する各成分の原子比を示し、0.2≦a≦2.0、0.6<b<3.4、5.0<c<8.0、0<d<3.0、0<e<0.5、0≦f≦4.0、0≦g≦2.0を満たす範囲にあり、hは、他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
を満たす組成を有するブタジエン製造用触媒の存在下に酸化的脱水素反応させることで触媒並びに反応器内に付着したコーク状物質を除去するための方法である。
【0015】
本発明の触媒の再生方法は、ブテン類の酸化的脱水素反応に使用された、使用前の組成が前記式1で表されるブタジエン製造用触媒が充填された反応器内のコーク状物質を除去する触媒の再生方法であって、0容量%より大きく21容量%以下の酸素を含む第1のガスで前記反応器を処理する処理工程と、次いで0容量%より大きく42容量%以下の水蒸気、および0容量%より大きく21容量%以下の酸素を含有する第2のガスを前記反応器に供給する供給工程とを含み、前記反応器内を循環する熱媒の温度を200℃以上400℃未満の範囲とし、かつ、前記処理工程の終了時点からそれに続く前記供給工程の終了時点までの間、前記反応器内を循環する熱媒の温度を一定にし、前記第1のガスにおける水蒸気の含有量と前記第2のガスにおける水蒸気の含有量とが異なる方法である。
【0016】
本発明の再生方法においては、前記処理工程及び前記供給工程において、ブタジエン製造用触媒が充填された反応器内を循環する熱媒の温度が200℃以上400℃未満、好ましくは200℃以上350℃以下の条件下にてガス(第1のガス又は第2のガス)を前記反応器に供給する。さらに、本発明の再生方法においては、前記処理工程の終了時点からそれに続く前記供給工程の終了時点までの間、前記反応器内を循環する熱媒の温度を200℃以上400℃未満で一定、好ましくは200℃以上350℃以下で一定にする。前記処理工程に使用する第1のガスの組成は、酸素の含有量が0容量%より大きく21%容量%以下である。前記第1のガスは、その水蒸気の含有量が前記第2のガスにおける水蒸気の含有量と異なっていればよいが、その水蒸気の含有量が前記第2のガスにおける水蒸気の含有量より少ないことが好ましく、水蒸気を含まないことがより好ましい。前記供給工程に使用する第2のガスの組成は、水蒸気の含有量が0容量%より大きく42容量%以下であり、かつ酸素の含有量が0容量%より大きく21%容量%以下である。
【0017】
本発明における「コーク状物質」とは、ブタジエンを製造する反応において、反応原料または目的生成物または反応副生成物の少なくともいずれかにより生じるものであり、その化学的組成や生成メカニズムの詳細は不明であるが、触媒表面および内部、イナート物質、反応管内壁や後工程設備内に析出または付着することによって、特に工業プラントにおいては反応ガスの流通の阻害、反応管の閉塞やそれらに伴う反応のシャットダウン等さまざまなトラブルを引き起こす原因物質であるものとする。
【0018】
本発明におけるブテン類とは、1−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、イソブチレンのうち、単一成分のガス、もしくは少なくとも一つの成分を含む混合ガスを意味するものとする。本発明におけるブタジエンとはより厳密には1,3−ブタジエンを意味するものとする。
【0019】
本発明の再生方法として、前記反応器内を循環する熱媒の温度が200℃以上400℃未満、好ましくは200℃以上350℃以下の状況下にてガスを前記反応器に供給するとコーク状物質が除去できるメカニズムは、詳細には解明できておらず不明であるが、上記範囲内の熱媒の温度は、本反応で生成するコーク状物質が触媒、反応管内壁、イナート物質等に付着した場合に、急激な燃焼を引き起こさずに徐々に分解が進行するのに適した温度であると考えられる。しかし、熱媒の温度が400℃以上の条件では、コーク状物質が急激に燃焼し、触媒に付着している場合には、その発熱によって触媒の結晶構造変化が引き起こされ、変質劣化し、さらには発生した燃焼ガスによって触媒に圧力がかかり破損する可能性があり、また反応管内部の急激な発熱の場合には、前記反応器の損傷を引き起こしかねない。また、熱媒の温度が200℃よりも低い場合には、燃焼が進行せず再生処理の効果が十分に発現されない、もしくは再生時間が長くなる場合があり、プラント停止期間が長くなり経済性が悪化するおそれがある。
【0020】
また、前記処理工程において、前記反応器に供給する希釈酸素ガスに対し水蒸気を加えることによって、熱媒の温度が低くてもコーク状物質を効果的に前記反応器から除去することができる。前記反応器に供給するガスの水蒸気含有率及び/または酸素含有率に関し、第2のガスにおける水蒸気の含有率が0容量%より大きく42容量%以下であり、第1及び第2のガスにおける酸素の含有率が0容量%より大きく21容量%以下であり、第1のガスにおける水蒸気の含有量と第2のガスにおける水蒸気の含有量とが異なっていれば、特に制限はない。本発明の再生方法においては、前記処理工程において酸素0容量%より大きく21容量%以下を含有する第1のガスを前記反応器に供給した後、次いで前記供給工程において水蒸気0容量%より大きく42容量%以下を含有する第2のガスを前記反応器に供給することによって、コーク状物質を除去する。本発明の再生方法において、好ましくは、前記処理工程において0容量%より大きく21%以下の酸素を含有し、かつ水蒸気を含有しない第1のガスを前記反応器に供給した後、次いで前記供給工程において水蒸気0容量%より大きく42容量%以下を含有し、かつ酸素0容量%より大きく21容量%以下を含有する第2のガスを前記反応器に供給する。こうすると、コーク状物質の除去をより効果的に抑制することができる。
【0021】
前記反応器に供給するガス(第1及び第2のガス)の水蒸気容量率及び/または酸素容量率は、例えば窒素等によって調整することができる。
【0022】
前記反応器に供給するガスの組成を第1のガスの組成から第2のガスの組成に切り替える時期、すなわち前記処理工程から前記供給工程に移行する時期は、前記処理工程の条件において排出されるCO
2およびCOの生成速度が最大生成速度となった後、前記反応器から排出されるCO
2およびCOの生成速度が最大生成速度の95%以下である時であることが好ましく、そのような時であり、かつ生成速度が緩やかに低下、安定した時であることがより好ましい。実施した酸化的脱水素反応の反応条件や反応スケール、反応期間や触媒の性能によってコーク状物質の性質や量が異なり、それに伴って燃焼挙動も異なるため、それらを考慮の上、前記反応器に供給するガスの組成を切り替える時を上述の範囲内において、適宜変えてもよい。また、ここで排出されるCO
2およびCOの生成速度とは、燃焼処理中に生成されるCO
2およびCOの生成速度であるため、空気中にもともと含まれるCO
2およびCO量は除され計算されるものである。
【0023】
再生処理中の熱媒の昇温速度は、通常は特に制限されないが、1℃/h以上200℃/h以下の範囲にすることが好ましい。再生処理中の熱媒の昇温速度が200℃/hよりも速いと、急激な燃焼を引き起こし、十分な再生工程を行うことができない場合がある。また、再生処理中の熱媒の昇温速度が1℃/hよりも遅いと、再生処理に要する時間が長くなり経済性が悪化する。
【0024】
前述の反応器内を循環する熱媒温度および前記反応器に供給するガスに含まれる水蒸気容量率及び/または酸素容量率の操作と昇温速度を組み合わせて実施するとさらに好ましく、前記反応器内を循環する熱媒を200℃以上350℃以下で一定の状況下、0容量%より大きく21容量%以下の酸素を含むガスで再生処理した後、次いで0容量%より大きく42容量%以下の水蒸気を含むガスを供給する工程を2回以上繰り返して、反応管出口ガスから排出されるCO
2およびCOの生成速度が適切な生成速度まで可能な限り低下するよう実施すると最も好ましい。この工程を2回繰り返す場合は、1回目工程と2回目工程の熱媒の温度は異なる方が好ましく、2回目工程の熱媒の温度は、1回目工程の熱媒の温度よりも高い方がより好ましい。この工程を2回以上繰り返す場合は、工程ごとに熱媒の温度が異なっても良い。また、適切な生成速度とは、実施した酸化的脱水素反応の反応条件や反応スケール、反応期間や触媒の性能によって異なるため、適宜、決定されるものである。
【0025】
本発明の触媒の再生方法では、前記処理工程及びそれに続く前記供給工程を含むサイクルを2回以上繰り返し、1回目のサイクルにおける処理工程及び供給工程の熱媒の温度と2回目のサイクルにおける処理工程及び供給工程の熱媒の温度とが異なることが好ましい。2回目のサイクルにおける処理工程及び供給工程の熱媒の温度は、1回目のサイクルにおける処理工程及び供給工程の熱媒の温度よりも高いことがより好ましい。
【0026】
本発明の触媒の再生方法では、以下の触媒を使用する。なお、本発明の触媒の再生方法はモリブデンとビスマスを主成分とする公知の組成である複合金属酸化物触媒の再生方法でも本発明の効果を奏する場合がある。
【0027】
本発明に使用する触媒は、ブテン類の酸化的脱水素反応に使用されたブタジエン製造用触媒であって、使用前の組成(触媒活性成分の組成)が下記式1
Mo
12Bi
aFe
bCo
cNi
dX
eY
fZ
gO
h・・・・(式1)
(式中、Xは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属元素を示し、Yは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を示し、Zは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロビウム、アンチモン、タングステン、鉛、亜鉛、セリウム、及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、a、b、c、d、e、f、及びgは各々、モリブデン12に対する各成分の原子比を示し、0.2≦a≦2.0、0.6<b<3.4、5.0<c<8.0、0<d<3.0、0<e<0.5、0≦f≦4.0、0≦g≦2.0を満たす範囲にあり、hは、他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
で表されるものである。
【0028】
本発明に使用する触媒を得るための各金属元素の原料としては特に制限はないが、各金属元素を少なくとも一種含む硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、有機酸塩、酢酸塩、炭酸塩、次炭酸塩、塩化物、無機酸、無機酸の塩、ヘテロポリ酸、ヘテロポリ酸の塩、水酸化物、酸化物、金属、合金等、またはこれらの混合物を用いることができ、その具体例としては、下記のようなものが挙げられる。モリブデンの供給源としてはモリブデン酸アンモニウムが好ましい。特にモリブデン酸アンモニウムには、ジモリブデン酸アンモニウム、テトラモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム等、複数種類の化合物が存在するが、その中でもヘプタモリブデン酸アンモニウムが最も好ましい。ビスマス成分原料としては硝酸ビスマスが好ましい。鉄、コバルト、ニッケル及びその他の元素の原料としては通常は酸化物あるいは強熱することにより酸化物になり得る硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩、水酸化物等又はそれらの混合物を用いることができる。
【0029】
本発明の触媒の調製法としては特に制限はないが、大別すると以下の通り2種類の調製法があり、便宜的に本発明において(A)法および(B)法とする。(A)法は触媒の活性成分を粉末として得た後、これを成形する方法であり、(B)法は予め成形された担体上に、触媒の活性成分の溶解した溶液を接触させて担持させる方法である。以下で(A)法および(B)法の詳細を記載する。
【0030】
以下では(A)法による触媒調製方法を記載する。以下で各工程の順を好ましい例として記載しているが、最終的な触媒製品を得るための各工程の順番、工程数、各工程の組み合わせについて制限はないものとする。
【0031】
〔工程(A1):調合と乾燥〕
触媒活性成分の原料の混合溶液またはスラリーを調製し、沈殿法、ゲル化法、共沈法、水熱合成法等の工程を経た後、乾燥噴霧法、蒸発乾固法、ドラム乾燥法、凍結乾燥法等の公知の乾燥方法を用いて、本発明の乾燥粉体を得る。この混合溶液またはスラリーは、溶媒として水、有機溶剤、またはこれらの混合溶液のいずれでも良く、触媒の活性成分の原料濃度も制限はなく、更に、この混合溶液またはスラリーの液温、雰囲気等の調合条件および乾燥条件について特に制限はないが、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。このうち本発明において最も好ましいのは、20℃以上90℃以下の条件下で触媒の活性成分の原料の混合溶液またはスラリーを形成させ、これを噴霧乾燥器に導入して乾燥器出口が70℃以上150℃以下、得られる乾燥粉体の平均粒径が10μm以上700μm以下となるよう熱風入口温度、噴霧乾燥器内部の圧力、およびスラリーの流量を調節する方法である。
【0032】
〔工程(A2):予備焼成〕
こうして得られた乾燥粉体を200℃以上600℃以下で予備焼成し、本発明の予備焼成粉体を得ることができる。この予備焼成の条件に関しても、予備焼成時間や予備焼成時の雰囲気について特に制限はなく、予備焼成の手法も流動床、ロータリーキルン、マッフル炉、トンネル焼成炉など特に制限はなく、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択すべきである。このうち本発明においてトンネル焼成炉において300℃以上600℃以下、予備焼成1時間以上12時間以下、空気雰囲気下による方法が好ましい。
【0033】
〔工程(A3):成形〕
こうして得られた予備焼成粉体をそのまま触媒として使用することもできるが、成形して使用することもできる。成形品の形状は球状、円柱状、リング状など特に制限されないが、一連の調製で最終的に得られる触媒における機械的強度、反応器、調製の生産効率等を考慮して選択するべきである。成形方法についても特に制限はないが、以下段落に示す担体や成形助剤、強度向上剤、バインダー等を予備焼成粉体に添加して円柱状、リング状に成形する際には打錠成形機や押出成形機などを用い、球状に成形する際には造粒機などを用いて成形品を得る。このうち本発明において不活性な球状担体に予備焼成粉体を転動造粒法によりコーティングさせ担持成形する方法が好ましい。
【0034】
球状担体の材質としてはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリカアルミナ、炭化ケイ素、炭化物、およびこれらの混合物など公知の物を使用でき、さらにその粒径、吸水率、機械的強度、各結晶相の結晶化度や混合割合なども特に制限はなく、最終的な触媒の性能、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択すべきである。球状担体と予備焼成粉体の混合の割合は、各原料の仕込み重量により、下記式より担持率として算出される。
担持率(重量%)=(成形に使用した予備焼成粉体の重量)/{(成形に使用した予備焼成粉体の重量)+(成形に使用した球状担体の重量)}×100
【0035】
成形に使用する予備焼成粉体以外の原料として、予備焼成粉体と結晶性セルロ−スなどの成形助剤、またはセラミックウィスカ−などの強度向上剤、バインダーとしてアルコール、ジオール、トリオール、およびそれらの水溶液等を任意の種類および混合割合で用いて成形することができ、特に制限はない。また、このバインダーに前記触媒原料の溶液を使用することで、工程(A1)とは異なる態様で触媒の最表面に元素を導入することも可能である。
【0036】
〔工程(A4):本焼成〕
このようにして得られた予備焼成粉体または成形品は、反応に使用する前に300℃以上600℃以下で再度焼成(本焼成)することが好ましい。本焼成に関しても、本焼成時間や本焼成時の雰囲気について特に制限はなく、本焼成の手法も流動床、ロータリーキルン、マッフル炉、トンネル焼成炉など特に制限はなく、最終的な触媒の性能、機械的強度や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。このうち本発明において最も好ましいのは、トンネル焼成炉において本焼成450℃以上600℃以下、本焼成1時間以上12時間以下、空気雰囲気下による方法である。このとき、昇温時間としては、通常2時間以上20時間以下であり、好ましくは3時間以上15時間以下、さらに好ましくは4時間以上10時間以下の範囲で行うのがよい。
【0037】
次に、以下では(B)法による触媒調製方法を記載する。以下では各工程を順に記載しているが、最終的な触媒を得るための各工程の順番、工程数、各工程の組み合わせについて制限はないものとする。
【0038】
〔工程(B1):含浸〕
触媒の活性成分が導入された溶液またはスラリーを調製し、ここに成形担体または(A)法で得た触媒を含浸させ、成形品を得る。ここで、含浸による触媒の活性成分の担持手法はディップ法、インシピエントウェットネス法、イオン交換法、pHスイング法など特に制限はなく、溶液またはスラリーの溶媒として水、有機溶剤、またはこれらの混合溶液のいずれでも良く、触媒の活性成分の原料濃度も制限はなく、更に、混合溶液またはスラリーの液温、液にかかる圧力、液の周囲の雰囲気についても特に制限はないが、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択すべきである。また、成形担体および(A)法で得た触媒のいずれも形状は球状、円柱状、リング状、粉末状など特に制限はなく、さらに材質、粒径、吸水率、機械的強度も特に制限はない。
【0039】
〔工程(B2):乾燥〕
こうして得られた成形品を、蒸発乾固法、ドラム乾燥法、凍結乾燥法等の公知の乾燥方法を用いて20℃以上200℃以下の範囲において熱処理を行い、本発明の触媒成形乾燥体を得る。乾燥時間や乾燥時の雰囲気について特に制限はなく、乾燥の手法も流動床、ロータリーキルン、マッフル炉、トンネル焼成炉など特に制限はなく、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。
【0040】
〔工程(B3):本焼成〕
こうして得られた触媒成形乾燥体を、本焼成300℃以上600℃以下で熱処理を行い、本発明の触媒を得る。ここで、本焼成時間や本焼成時の雰囲気について特に制限はなく、本焼成の手法も流動床、ロータリーキルン、マッフル炉、トンネル焼成炉など特に制限はなく、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。このうち本発明において最も好ましいのは、トンネル焼成炉において本焼成450℃以上600℃以下、本焼成1時間以上12時間以下、空気雰囲気下による方法である。このとき、昇温時間としては、通常2時間以上20時間以下であり、好ましくは3時間以上15時間以下、さらに好ましくは4時間以上10時間以下の範囲で行うのがよい。
【0041】
以上の調製により得られた触媒は、その形状やサイズに特に制限はないが、反応管への充填の作業性と充填後の反応管内の圧力損失等を勘案すると、形状は球形状、平均粒径は3.0mm以上10.0mm以下、また触媒活性成分の担持率は20重量%以上80重量%以下が好ましい。
【0042】
本発明の再生方法の前にn−ブテンをブタジエン製造用触媒の存在下に酸化的脱水素反応するための反応条件は、原料ガス組成として1容量%以上20容量%以下のn−ブテン、5容量%以上20容量%以下の分子状酸素、0容量%以上60容量%以下の水蒸気及び0容量%以上94容量%以下の不活性ガス、例えば窒素、炭酸ガスを含む混合ガスを用い、熱媒温度としては200℃以上500℃以下の範囲であり、反応圧力としては常圧以上10気圧以下、触媒に対する前記原料ガスの空間速度(GHSV)は350hr
−1以上7000hr
−1以下の範囲となる。反応の形態として固定床、移動床、および流動床の中で制約はないが、固定床が好ましい。
【0043】
本発明の触媒の再生方法におけるガスの空間速度(以下GHSVと略す。)としては、特に制限はないが、通常50hr
−1以上4000hr
−1以下、好ましくは100hr
−1以上2000hr
−1以下の範囲である。GHSVの値が通常の範囲を超えると、触媒の破損が生じ触媒の粉末や破片によって前記反応器内が閉塞する、または前記反応器外へ流出するなどの影響による触媒の活性低下、後工程へ炭素状物質が流出することによる汚染が引き起こされる可能性がある。一方、GHSVの値が通常の範囲よりも低いとコーク状物質の除去が効率よく実行されず、再生処理に長期間が必要となる、または効果が十分に発現されない場合がある。
【実施例】
【0044】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、%は特に断りがない限りmol%を意味する。また、以下においてn−ブテン転化率、TOSの定義とは、以下の通りである。
【0045】
n−ブテン転化率(モル%)
=(反応したn−ブテンのモル数/供給したn−ブテンのモル数)
×100
TOS=混合ガス流通時間(時間)
【0046】
〔実施例1〕
(触媒の調製)
ヘプタモリブデン酸アンモニウム800重量部を80℃に加温した純水3000重量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸セシウム11重量部を純水124mlに溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄275重量部、硝酸コバルト769重量部及び硝酸ニッケル110重量部を60℃に加温した純水612mlに溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス311重量部を60℃に加温した純水330mlに硝酸(60重量%)79重量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ、母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、5時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた球状成形品を、520℃、5時間の条件で焼成し、本発明の再生方法に使用する触媒の一例としての、前記式1で表される組成を有し、前記式1中のXがCsであり、前記式1中のf及びgが0であるブタジエン製造用触媒が担体に担持されているブタジエン製造用担持触媒を得た。仕込み原料から計算される触媒の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:1.7:1.8:7.0:1.0:0.15(前記式1中のa=1.7、b=1.8、c=7.0、d=1.0、e=0.15)であった。
【0047】
(コーク状物質の析出反応(ブテン類の酸化的脱水素反応))
ステンレス鋼反応管を備える反応器を使用し、得られたブタジエン製造用担持触媒106mlをステンレス鋼反応管に充填し、ガス体積比率が1−ブテン:酸素:窒素:水蒸気=1:1:7:1の混合ガスを用い、常圧下、GHSV600hr
−1の条件で、1−ブテン転化率=85.0±1.0%を保持できるよう前記反応器を循環する熱媒の温度を変化させてTOS200時間まで反応し、コーク状物質をブタジエン製造用担持触媒上に析出させた。
【0048】
(コーク状物質の除去(再生処理))
析出したコーク状物質を除去させる目的で、前記反応器を循環する熱媒の温度を250℃として、ガス体積比率が酸素:窒素:水蒸気=1:9:0(酸素含有量10容量%)の混合ガス(第1のガス)を用い、常圧下、混合ガスの空間速度を250hr
−1で燃焼反応(1回目のサイクルの処理工程)を開始した。燃焼反応中の反応管出口ガスを熱伝導検出器が装着されたガスクロマトグラフで分析し、CO
2およびCOの合計生成速度Rcoxを求めたところ、0.21mmol/hであった。
【0049】
Rcoxが0.17mmol/h(同条件における最大値の81%)に減少した(1回目のサイクルの処理工程の終了)後、熱媒の温度及び混合ガスの空間速度を250℃及び250hr
−1で一定に維持したまま、ガス体積比率のみ酸素:窒素:水蒸気=1:7:2(酸素含有量10容量%、水蒸気含有量20容量%)と変化させたところ、Rcoxは1.22mmol/hまで上昇した(1回目のサイクルの供給工程)。
【0050】
Rcoxが0.44mmol/h(同条件における最大値の36%)に減少した後、ガス体積比率を酸素:窒素:水蒸気=1:9:0に戻し、続いてRcoxを監視しながら、熱媒を10℃ごと200℃/hの速度による昇温と温度保持を繰り返すことで段階的に280℃まで昇温させた(2回目のサイクルの処理工程)。熱媒の温度280℃で再びRcoxを求めたところ、0.57mmol/hであった。
【0051】
Rcoxが0.54mmol/h(同条件における最大値の95%)に減少した後、熱媒の温度及び混合ガスの空間速度を280℃及び250hr
−1で一定に維持したまま、水蒸気を窒素へ酸素:窒素:水蒸気=1:7:2のガス組成となるよう置換導入したところ、Rcoxは2.80mmol/hまで上昇した(2回目のサイクルの供給工程)。
【0052】
Rcoxが1.05mmol/h(同条件における最大値の38%)に減少した後、ガス体積比率を酸素:窒素:水蒸気=1:9:0に戻し、以降もRcoxを監視しながら、熱媒を10℃ごと200℃/hの速度による昇温と温度保持を繰り返すことで段階的に昇温し、熱媒が350℃になるまでに要した時間は34hであった。再生処理後の触媒を抜き出し、目視にて観察したところ、破損や変色を見ることができなかった。
【0053】
〔比較例1〕
(触媒の調製)
実施例1記載と同様に実施した。
(コーク状物質の析出反応)
実施例1記載と同様に実施した。
(コーク状物質の除去(再生処理))
析出したコーク状物質を除去させる目的で、前記反応器を循環する熱媒を240℃としてガス体積比率が酸素:窒素:水蒸気=2:8:0の混合ガスを用い、常圧下、空間速度250hr
−1で燃焼反応を開始した。燃焼反応中の反応管出口ガスを熱伝導検出器が装着されたガスクロマトグラフで分析し、CO
2およびCOの合計生成速度Rcoxを求めたところ、0.4mmol/hであった。続けて、CO
2およびCOの合計生成速度が低下安定した後、Rcoxを監視しながら、熱媒を10℃ごと200℃/hの速度による昇温と温度保持を繰り返すことで温度を段階的に上昇させ、熱媒が280℃ではCO
2およびCOの合計生成速度は0.7mmol/hまで上昇した。以降もCO
2およびCOの合計生成速度を監視しながら、熱媒を10℃ごと200℃/hの速度による昇温と温度保持を繰り返すことで段階的に昇温し熱媒が340℃になるまでに要した時間は170時間であった。再生処理後の触媒を抜き出し、目視にて観察したところ、触媒の破損、特に粉化現象が観察され、さらには触媒の変色を見ることができた。下記式から求められる粉化率は、0.42重量%であった。
粉化率(重量%)=100×(W
0−W
1)/W
0
ここで、W
0:反応管へ充填した触媒の重量
W
1:反応後に触媒を反応管から抜き出し目開き3.35mmの
篩でふるったときに篩に残存した触媒の重量
【0054】
実施例から、ブテン類からブタジエンを製造する反応により触媒並びに反応器内に付着したコーク状物質を除去する方法において、より低い温度で効率よく実行するためには、酸素のみならず水蒸気を含む混合ガスを供給する工程を含むことで本発明の効果が発現され、触媒の破損を伴わずに実施することができるといえる。
【0055】
本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0056】
また、この出願は、2015年12月25日に日本で出願された特許出願、特願2015−253054に基づく優先権を請求する。本明細書で引用した全ての刊行物、特許、及び特許出願(上記日本特許出願を含む)の内容を、そのまま参照により本明細書に取り入れるものとする。