特許第6779915号(P6779915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベルキン ビーブイの特許一覧

特許6779915バルブユニットを備える流体流動装置、および、その製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779915
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】バルブユニットを備える流体流動装置、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   B81B 3/00 20060101AFI20201026BHJP
   F16K 99/00 20060101ALI20201026BHJP
   G01N 37/00 20060101ALN20201026BHJP
   G01F 1/00 20060101ALN20201026BHJP
   G01F 1/68 20060101ALN20201026BHJP
   G01F 1/84 20060101ALN20201026BHJP
【FI】
   B81B3/00
   F16K99/00
   !G01N37/00 101
   !G01F1/00 X
   !G01F1/68 Z
   !G01F1/84
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-559039(P2017-559039)
(86)(22)【出願日】2016年5月9日
(65)【公表番号】特表2018-517576(P2018-517576A)
(43)【公表日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】NL2016050330
(87)【国際公開番号】WO2016182437
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年2月28日
(31)【優先権主張番号】2014801
(32)【優先日】2015年5月13日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】596167974
【氏名又は名称】ベルキン ビーブイ
【氏名又は名称原語表記】BERKIN B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】レッタース、ヨースト コンラッド
(72)【発明者】
【氏名】グローン、マールテン シッツェ
(72)【発明者】
【氏名】ウィーゲリンク、レムコ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウアー、ダニス ミケル
(72)【発明者】
【氏名】ブルークフイス、ロバート アントン
(72)【発明者】
【氏名】モイツテーゲ、エスケン
(72)【発明者】
【氏名】グローネステイン、ヤルノ
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3976571(JP,B2)
【文献】 特開2015−021825(JP,A)
【文献】 特開2003−017712(JP,A)
【文献】 特開2012−057692(JP,A)
【文献】 特開2006−150587(JP,A)
【文献】 特開2006−009961(JP,A)
【文献】 特許第4529431(JP,B2)
【文献】 特表2009−535549(JP,A)
【文献】 特開2010−221073(JP,A)
【文献】 特開2013−033026(JP,A)
【文献】 特許第4143984(JP,B2)
【文献】 特開2007−162760(JP,A)
【文献】 特許第4208777(JP,B2)
【文献】 特開2008−008347(JP,A)
【文献】 特開2005−186265(JP,A)
【文献】 特開2009−128037(JP,A)
【文献】 特表平11−508347(JP,A)
【文献】 特表2003−524738(JP,A)
【文献】 特許第4519462(JP,B2)
【文献】 特許第5104316(JP,B2)
【文献】 特表2005−525514(JP,A)
【文献】 特開2005−003200(JP,A)
【文献】 特開2005−180530(JP,A)
【文献】 特表2007−509286(JP,A)
【文献】 特開2006−142448(JP,A)
【文献】 特開2009−186017(JP,A)
【文献】 特開2006−090527(JP,A)
【文献】 特表2016−507708(JP,A)
【文献】 特開2007−002924(JP,A)
【文献】 特開2009−228799(JP,A)
【文献】 米国特許第05176358(US,A)
【文献】 国際公開第2011/010739(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/153912(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 3/00
F16K 99/00
G01F 1/00
G01F 1/68
G01F 1/84
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流動装置(1)であって、
基板(12)を有するシステムチップ(11)と、
前記基板(12)内に画定された流路(21)と、
前記流路(21)に接続された、前記流路内の流体の特性を測定するためのセンサユニット(41)と、
前記基板(12)内に画定されたバルブチャンバ(31)を有し、且つ、前記流路(21)を通る流体流動を調整できるように前記バルブチャンバ(31)内に移動可能に配置されたバルブ部材(32)を有する、前記流路(21)を通る流体流動を調整するためのバルブユニット(30)であって、前記流路(21)は、前記基板(12)内に画定された接続チャネル部(22)を有し、前記接続チャネル部は前記バルブユニットに接続されており、前記バルブチャンバは、床、周側壁および天井によって画定され、前記バルブチャンバは、流体の入口および流体の出口を備え、前記入口および前記出口の少なくとも一方は、前記バルブチャンバの側壁に設けられ、且つ、前記接続チャネル部に接続されており、前記バルブ部材は、前記バルブ部材内に画定された、床に面する第1の外側端部と側壁に面する第2の外側端部とを有する内部流路を備える、バルブユニット(30)と、
前記バルブユニット(30)および前記センサユニット(41)に接続され、前記センサユニット(41)によって得られた信号に基づいて前記バルブユニット(30)を制御するために設けられた制御手段(51)と、
を備え流体流動装置(1)。
【請求項2】
少なくとも前記接続チャネル部(22)は、前記基板によって画定された平面に主に平行に延びる、請求項1に記載の流体流動装置。
【請求項3】
前記バルブ部材は、閉位置と開位置との間で前記バルブチャンバの側壁に主に平行な方向に移動可能であり、前記閉位置では、前記バルブ部材は前記バルブチャンバの床と接触し、且つ、周側壁の少なくとも一部は前記バルブ部材からある距離に配置される、請求項1または2に記載の流体流動装置。
【請求項4】
前記バルブユニットの前記入口および前記出口の両方は、前記バルブチャンバの側壁に設けられている、請求項1から3のいずれかに記載の流体流動装置。
【請求項5】
前記バルブユニットは、前記内部流路の前記第2の外側端部と前記バルブチャンバの側壁に設けられた入口または出口の一方との間に延在する可撓性流管要素を備える、請求項1から4のいずれかに記載の流体流動装置。
【請求項6】
前記バルブ部材は、前記可撓性流管要素によって前記バルブチャンバ内に懸架されている、請求項に記載の流体流動装置。
【請求項7】
前記バルブユニットは、少なくとも1つの追加の入口および/または出口を備え、前記少なくとも1つの追加の入口および/または出口は、前記バルブチャンバの側壁に設けられている、請求項からのいずれかに記載の流体流動装置。
【請求項8】
前記バルブチャンバは、床によって画定された平面に平行な方向に測定された幅寸法を有し、前記バルブチャンバは、前記バルブチャンバの側壁に平行な方向に測定された高さ寸法を有し、前記幅寸法は前記高さ寸法よりも大きい、請求項からのいずれかに記載の流体流動装置。
【請求項9】
前記システムチップはシリコン基板を備え、前記バルブユニットはシリコンバルブ部材を備え、前記流路は前記シリコン基板内のシリコン窒化物で覆われたチャネルである、請求項1からのいずれかに記載の流体流動装置。
【請求項10】
前記可撓性流管要素はシリコン窒化物の流管である、請求項もしくはまたはその従属項に記載の流体流動装置。
【請求項11】
前記センサユニットは、コリオリ流量センサを備える、請求項1から10のいずれかに記載の流体流動装置。
【請求項12】
基板を準備するステップと、
部分的に基板を除去することによって前記バルブチャンバ、前記バルブ部材および前記流路を実現するステップと、
部分的に基板を除去することによって前記流路と前記バルブチャンバとを流体接続するステップと、
を含む請求項1から11のいずれかに記載の流体流動装置のためのシステムチップの製造方法。
【請求項13】
前記方法は、部分的にエッチングするステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
デバイス層と、ハンドル層と、埋め込み酸化物層とを有するシリコン基板を準備するステップと、
エッチングステップ、特にシリコンの深掘り反応性イオンエッチングを用いて、前記ハンドル層内に流体の入口および出口を実現するステップと、
エッチングステップ、特に窒化シリコンスリットパターンマスクを介したシリコンの等方性エッチングを用いて、前記デバイス層内に表面チャネルおよび前記バルブチャンバを形成するステップと、
エッチングステップを用いることにより、特にHFエッチングを用いて前記埋め込み酸化物層を選択的にエッチングすることにより、前記バルブ部材を形成するステップと、
シリコン窒化物の減圧化学気相成長によって、閉じた流体システムを形成するステップと、
を含む請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流動装置(fluid flow device)、特に、流体流動装置の流路を通る流体流動を調節するためのバルブユニット、特にマイクロバルブを備える流体流動調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,182,941号は、マイクロバルブを開示している。公知の装置は、バルブチャンバを画定するハウジングを備え、可動バルブ部材が設けられている。ハウジングの底面にバルブシートが設けられ、バルブ部材をバルブシートに対して動かすことによって、バルブシートとバルブ部材によって画定される流体流動の表面積が変更され得る。マイクロバルブの入口および出口は、ハウジングの底面に設けられている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、より信頼性が高く、製造が比較的容易で、コンパクトな設計を有するシステムチップを備える流体流動装置を提供することである。
【0004】
この目的を達成するために、本発明は、
基板を有するシステムチップと、
前記基板内に画定された流路と、
前記流路に接続された、前記流路内の流体の特性を測定するためのセンサユニットと、
前記基板内に画定されたバルブチャンバを有し、且つ、前記流路を通る流体流動を調整できるように前記バルブチャンバ内に移動可能に配置されたバルブ部材を有する、前記流路を通る流体流動を調整するためのバルブユニットであって、前記流路は、前記基板内に画定された接続チャネル部を有し、前記接続チャネル部は前記バルブユニットに接続されている、バルブユニットと、
前記バルブユニットおよび前記センサユニットに接続され、前記センサユニットによって得られた信号に基づいて前記バルブユニットを制御するために設けられた制御手段と、
を備える流体流動装置を提供する。
【0005】
本発明によれば、流路には、そこに接続されたセンサユニットが設けられており、流路は、システムチップの基板に設けられてバルブユニットに直接接続された接続チャネル部を有する。言い換えれば、本発明によれば、センサユニットを有する流路は、基板自体の中に設けられた単に1つ以上のチャネル部を使用して、バルブユニットに直接接続される。この設計の結果、センサを有する流路にバルブユニットを接続するための外部接続管またはチャネルはもはや必要ない。結果として、追加の製造工程がなく、特に、1つ以上の外部接続ラインの追加の接続ステップが不要である。また、外部接続ラインが不要なので、これらの外部接続ラインが故障する可能性はもはや無い。したがって、基板内の内部接続の結果、より信頼性が高く、よりコンパクトな流体流動装置が得られ、これは、さらに製造が比較的容易である。これにより、本発明の目的が達成される。
【0006】
本発明の範囲内で、システムチップという用語は、マイクロ流体システムチップまたはラボオンチップ(lab on chip)のようなシステムオンチップ(system on a chip:SoC)またはシステムオンチップ(system on chip:SOC)、すなわちマイクロ流体システムの実質的にすべてのコンポーネント(流体導管および電子機器を含む)を単一のチップに統合するチップ、として理解されるべきである。
【0007】
本発明の範囲内において、基板という用語は、(マイクロ流体)システムチップが作られる材料の比較的薄い切片(スライス)として理解されるべきである。材料は、とりわけ、シリコン、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、それらの合金、および/または、ポリマー材料、例えばSU−8を含んでもよい。基板は、システムチップの流体導管が画定される材料である。基板は、一実施形態では、装置がシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェハを含むように、絶縁体などのキャリア上に設けられてもよい。
【0008】
本発明の範囲内において、流路という用語は、流体を輸送することができるチャネル(channel)、管(tube)、導管、または、ダクトとして理解されるべきである。流路は、丸形、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、または、多角形などの任意の所望の断面領域を有してもよい。流路の形状は、本発明を限定するものではない。
【0009】
本発明の範囲内において、センサユニットという用語は、流路を流れる流体の特性を感知することができる任意のユニットとして理解されるべきである。センサユニットは、コリオリ流量センサおよび/または熱式流量センサなどの流量センサ、および/または、圧力センサを備えてもよい。
【0010】
本発明の範囲内で、流体の特性という用語は、流路を流れる流体の特性、特に流速、質量流量、および/または、圧力として理解されるべきである。他の特性、例えば温度、粘度、密度、カロリー値、または、他の物理的もしくは化学的特性も考えられる。
【0011】
本発明による流体流動装置は、特に、センサユニットによって得られた信号に基づいてバルブユニットを制御することによって、流路を通る流れを調整および/または制御することができる流体流動調整装置であってもよい。特に、流路を通る流体の質量流量および/または流速が、調節および/または制御されてもよい。
【0012】
以下に、本発明の有利な実施形態を説明する。
【0013】
一実施形態では、接続チャネル部は、基板によって画定された平面に主に平行に延びる。このようにして、特に比較的小さな高さ寸法を有する比較的コンパクトな装置が製造され得る。
【0014】
一実施形態では、バルブチャンバは、床、周側壁および天井によって画定され、バルブチャンバは、流体の入口および流体の出口を備え、入口および出口の少なくとも一方は、バルブチャンバの側壁に設けられ、且つ、接続チャネル部に接続されている。これは、比較的コンパクトな構造を提供する。バルブユニットの入口および出口の両方は、バルブチャンバの側壁に設けられ、よりコンパクトな構造を提供することが考えられる。
【0015】
装置の特定の向きを示すために使用される相対的な用語および/または特定の方向を示すために使用される相対的な用語は、特に明記しない限り、限定的な意味で解釈されるべきではないことに留意されたい。例えば、床、側壁及び天井という用語は、装置の特定の向きに限定されず、互いに相対的な用語として解釈されるべきである。
【0016】
さらに、装置を通る、特にバルブユニットを通る流路は、原則として、任意の形態で設計され得ることに留意されたい。例えば、入口は床に設けられ、出口は側壁に設けられてもよい。あるいは、出口は床に設けられ、入口は側壁に設けられてもよい。両方の場合において、入口または出口を囲む床の部分は、それぞれ、バルブ部材のためのバルブシートとして作用する。本発明による装置の特定の実施形態では、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口が側壁に設けられる。
【0017】
一実施形態では、基板はキャリア上に設けられ、バルブチャンバの床は基板のキャリアの近くに設けられるか、または、床はキャリアの材料によって部分的に形成されてもよい。側壁は、キャリアに対して主に垂直に延びてもよい。天井は、キャリアからある距離に設けられてもよい。バルブチャンバの正確な形状および/または寸法は、本発明を限定するものではないことを理解されたい。バルブチャンバは、例えば、円筒形、正方形、長方形、三角形または他の幾何学的形状を有してもよい。好ましい実施形態では、バルブチャンバは円筒形状を有し、円筒の半径方向の寸法は、その高さ寸法よりも大きい。
【0018】
一実施形態では、バルブ部材は、閉位置と開位置との間でバルブチャンバの側壁に主に平行な方向に移動可能であり、閉位置では、バルブ部材はバルブチャンバの床と接触しており、周側壁の少なくとも一部はバルブ部材からある距離に配置されている。したがって、バルブチャンバの床は、バルブ部材のためのバルブシートを構成する。バルブ部材が側壁からある距離に設けられていることにより、入口および/または出口を側壁に設けることができ、したがって入口および/または出口からバルブ部材およびバルブシートを通過する流路を提供することができる。
【0019】
一実施形態では、バルブ部材は、バルブシートに向かって、および、バルブシートから離れて、特に基板によって画定された平面に対して主に垂直に移動可能であってもよい。しかしながら、バルブ部材がバルブシートに対して旋回可能であるか、または、バルブシートの近くに摺動可能に接続されていることも可能である。
【0020】
装置は、バルブ部材および制御手段に接続されたアクチュエータ要素を備えてもよい。アクチュエータ要素は、例えば、コンパクトな装置内で精密なアクチュエータを可能にするピエゾ要素であってもよい。アクチュエータは、バルブ部材の位置を制御し、バルブユニットを通る流体流動を増加または減少させ、且つ、時間単位当たりの大体の流れがバルブユニットに接続された流路を通って流れることを可能にするために使用され得る。所定の流体流動の表面積が設定されるように、バルブを所望の位置に保持することも可能である。
【0021】
入口及び出口の一方がバルブチャンバの床に設けられ、入口及び出口の少なくとも他方が側壁に設けられていることが考えられる。しかしながら、特にコンパクトな構造では、バルブユニットの入口及び出口がバルブチャンバの側壁に設けられている。
【0022】
バルブ部材は、バルブ部材内に画定された、床に面する第1の外側端部と側壁に面する第2の外側端部とを有する内部流路を備えてもよい。これは、バルブ部材内に画定された流路を提供し、よりコンパクトな設計が可能となる。
【0023】
一実施形態では、バルブユニットは、内部流路の第2の外側端部とバルブチャンバの側壁に設けられた入口または出口の一方との間に延在する可撓性流管要素(flexible flow tube element)を備える。可撓性流管は、バルブ部材がバルブチャンバ内を移動できるようにする。
【0024】
有利な実施形態では、バルブ部材は、可撓性流管要素によってバルブチャンバ内に懸架されている。バルブ部材の安定した懸架を確保するために、追加の懸架要素を設けてもよい。追加の懸架要素は、1以上の追加の可撓性流管要素によって形成されてもよい。この意味において、バルブ部材は、1以上の可撓性流管要素のみによってバルブチャンバ内に懸架されることが考えられる。
【0025】
一実施形態では、バルブユニットは、少なくとも1つの追加の入口および/または出口を備え、少なくとも1つの追加の入口および/または出口は、バルブチャンバの側壁に設けられている。これにより、複数の流路が合流するか、または、1以上の流路がより多くの流路に分割される流路ノード(flow node)として、バルブを使用することが可能になる。例えば、単一の流路は、側壁を介してバルブチャンバに入ってもよく、バルブ部材の内部流路を介して側壁を通ってバルブチャンバを出る3つの流路に連続してもよい。
【0026】
バルブチャンバは、床によって画定された平面に平行な方向に測定された幅寸法を有し、バルブチャンバは、バルブチャンバの側壁に平行な方向に測定された高さ寸法を有する。好ましくは、高さ寸法は幅寸法よりも小さく、コンパクトな構造が得られる。
【0027】
本発明の流体流動装置の一実施形態では、システムチップはシリコン基板を備え、バルブユニットはシリコンバルブ部材を備える。流路は、この実施形態では、シリコン基板内のシリコン窒化物で覆われたチャネルであってもよい。
【0028】
可撓性流管要素が用いられる場合、この流管要素は、シリコンの流管、特にシリコン窒化物の流管であってもよい。
【0029】
一態様によれば、本発明による流体流動装置の製造方法が提供される。この方法は、基板を準備するステップと、
部分的に基板を除去することによってバルブチャンバ、バルブ部材および流路を実現するステップと、
部分的に基板を除去することによって流路とバルブチャンバとを流体接続するステップと、
を含む。
【0030】
上述したように、本発明による方法は、外部接続ラインを使用するのではなく、基板内の内部接続を使用して、バルブチャンバをセンサが設けられた流路の接続チャネル部に流体接続する。これは、よりコンパクトで信頼性の高い構造を提供する。
【0031】
この方法が部分的にエッチングするステップを含むと、有利である。
【0032】
製造プロセスは、シリコン・オン・インシュレータ技術を使用してもよい。基板はシリコン層であってもよく、絶縁層は埋め込み酸化シリコン層であってもよい。シリコン・オン・インシュレータ技術を用いることにより、例えば、基部と頂部との間で測定された絶縁層の厚さが、1〜10マイクロメートル、好ましくは3〜5マイクロメートルである流体流動装置を製造することが可能である。合計で、約7.5mmの直径および0.5mmの厚さを有する装置を得ることができる。より小さい寸法、例えば1マイクロメートルより小さい絶縁層の厚さも同様に得られることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明は、次に、本発明の実施形態を示す添付の図面によって説明される。実施形態は本質的に限定することを意図していない。図において:
図1】本発明の第1の実施形態による流体流動装置の断面図を概略的に示す。
図2】本発明の第2の実施形態による流体流動装置の断面図を概略的に示す。
図3図1に示される本発明の第1の実施形態による流体流動装置用のバルブユニットの等角図を示す。
図4図2に示される本発明の第2の実施形態による流体流動装置用のバルブユニットの等角図を示す。
図5図5a〜eは、本発明による流体流動装置の製造中の様々な段階の断面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明の第1の実施形態による流体流動装置1の断面図を概略的に示す。流体流動装置は、基板12を有するシステムチップ11を備える。基板は、一方の側のキャリア14上に設けられ、且つ、他方の側にはシーリング層15を備える。一実施形態では、システムチップは、キャリア14ウェハ上にシリコン12を備え、シーリング層は、LPCVD窒化物を有する窒化膜であってもよい。しかし、本発明は、図1に示すようなシステムチップの特徴に限定されない。
【0035】
図1に見られるように、流路21は基板12内に画定されている。センサユニット41は、流路21に接続されている。センサユニット41は、流路内の流体の特性を決定するように構成されている。図1にのみ概略的に示されているセンサユニットは、流路21内の流体の質量流量を決定するための、または、流路21内の流体の密度を決定するためのコリオリ流量センサであってもよい。センサユニット41は、流路21内の流体の質量流量を決定するための、または、流路21内の流体の温度を決定するための熱式流量センサであってもよい。当業者は、これらのタイプのセンサユニット41、および、それによって決定できる特性のタイプに精通しているであろう。特に、センサユニット41は、流路21内の流体の質量流量を決定するように構成されてもよい。
【0036】
基板には、バルブユニット30がさらに設けられている。バルブユニットは、流路21を通る流体流動を調整するように配置されている。バルブユニット30は、基板12内に画定されたバルブチャンバ31を備える。バルブユニット30は、バルブチャンバ31内に移動可能に配置されたバルブ部材32をさらに備える。バルブ部材32は、たわみ要素(flexure elements)35によってバルブチャンバ31内に懸架されている。これらのたわみ要素35は、バルブ部材32が移動できるように、アクチュエータ要素であってもよい。バルブ部材32の移動により、流路21を通る流体流動を調節することができる。
【0037】
装置1は、さらに、バルブユニット30およびセンサユニット41に接続された制御手段51を備える。制御手段51は、例えば、たわみ要素35によって形成されるアクチュエータ要素35に接続されてもよい。バルブ部材を作動させる他の方法も同様に考えられる。制御手段51は、別個のブロックとして示されているが、システムチップ11に一体化されていてもよい。制御手段51は、センサユニット41によって得られた信号に基づいてバルブユニット30を制御するように構成されている。
【0038】
本発明によれば、流路21は、基板12内に画定された接続チャネル部22を有し、それは流路21をバルブユニット30のバルブチャンバ31に直接接続する。図示された実施形態では、接続チャネル部22は、基板12によって画定される平面に主に平行に延在する。流路とバルブユニットとを直接接続することにより、バルブユニット30とセンサユニット41の両方のオンダイの集積化(on-die-integration)を行うことができ、このことは、ウェハボンディングステップまたは流体相互接続の必要性をなくし、例えば、比例マスフローコントローラを単一のチップ上に実現することを可能にする。
【0039】
図1のシステムチップ11は、キャリア層14内に少なくとも部分的に設けられて流路21に通じる流体用の入口2を含む。入口2は、基板12によって画定された平面に対して主に垂直に延びる。出口3も設けられている。この出口3は、基板12によって画定された平面に対して主に垂直に延び、且つ、キャリア層14に少なくとも部分的に設けられている。ここに記載された実施形態では、流体は、入口2を通って、流路21およびバルブユニット30を介して、出口3に流れることに留意されたい。しかしながら、流体が装置1に入り、バルブユニット30を通り、続いて流路21を通って流れるように、逆流も可能である。
【0040】
ここで図2を参照すると、本発明の第2の実施形態による流体流動装置1の別の設計が示されている。同様の特徴は同じ参照符号で示されている。簡潔にするために、図1の第1の実施形態との相違点に注目する。
【0041】
図2において、流体流動装置1は、基板12を有するシステムチップ11と、基板12内に画定された第1の流路21と、流路内の流体の特性を測定するための流路21に接続されたセンサユニット41と、流路21を通る流体流動を調節するためのバルブユニット30とを備える。バルブユニットは、基板12内に画定されたバルブチャンバ31と、バルブチャンバ31内に移動可能に配置されたバルブ部材32とを備える。流体流動装置は、基板12内に画定された追加の第2の流路23を含む。装置の入口2は、第1の流路21に接続され、出口は、(バルブユニット30に直接接続されるのではなく)第2の流路23に接続される。
【0042】
第1の流路21は、基板12内に画定され、且つ、バルブユニット30のバルブチャンバ31に接続される接続チャネル部22を有する。
【0043】
図2のバルブ部材32は、内部空洞38と、可撓性要素35内に少なくとも部分的に設けられ、且つ、基板12内に画定された追加の第2の流路23の接続チャネル部24に流体接続する内部流路36と、を備える。
【0044】
この設計により、入口および出口を有するバルブユニット30を基板12内に完全に設けることができ、このことは、バルブユニット30とシステムチップ11の他の構成要素とのオンダイの集積化を可能にし、ウェハボンディングステップまたは流体相互接続の必要性が排除される。このように、システムチップ11上の完全に一体化されたマイクロバルブ30が得られる。
【0045】
図2の設計は、また、バルブユニット30およびセンサユニット41に接続され、且つ、センサユニット41によって得られた信号に基づいてバルブユニット30を制御するように構成された制御手段51を備える。追加の第2の流路23には、別のセンサユニット(図示せず)が設けられてもよいことに留意されたい。例えば、これにより、流体流動装置は、コリオリ流量センサと、熱式流量センサと、それらの間に設けられたバルブユニットとを備えることができる。
【0046】
さらに、前述したように、流体が左から右に、または、右から左に流れるように、システムチップ11の入口2および出口3を図示のように、または他の方法で設けることができる。
【0047】
ここで図3を参照して、図1に示された流体流動装置のバルブユニット30の設計について説明する。この設計は、基板12内に画定された、床F、周側壁Sおよび天井(図示せず)を有する円筒形のバルブチャンバ31を備える。バルブチャンバ31は、流体流動装置1の出口3に接続されている(図1も参照されたい)。出口3は、床Fに設けられている。バルブ部材32は、バルブチャンバ31内に移動可能に設けられている。出口3に向かって開口を取り囲む床Fの部分は、バルブ部材32のためのバルブシートを提供する。バルブ部材32の円筒形の設計のために、バルブシートおよびバルブ部材32は、それらの間に半径方向のチャネルを提供する。これは、バルブユニット30を介した所望の流動特性を提供するので有利である。バルブチャンバ31の側壁Sには、流体用の入口22’が設けられており、この入口22は、図1に示すように、接続チャネル部22に接続されている。
【0048】
図4は、図2のバルブに対応するマイクロバルブの別の設計を示し、バルブユニット30の入口22と出口24の両方がバルブチャンバの側壁Sに設けられている。ここで、バルブ部材32の部材は、床Fに面する第1の外側端部35を有すると共に側壁Sに面する第2の外側端部36を有する、バルブ部材内に画定された内部流路36,38を備える。バルブユニット30は、さらに、内部流路の第2の外側端部36と、バルブチャンバ31の側壁Sの近傍に設けられた接続チャネル部24との間に延在する中空の可撓性流管要素35を備える。別の接続チャネル部22が、さらに設けられ、バルブチャンバ31に直接通じる。符号22で示される接続チャネル部は、入口であってもよく、符号24で示される接続チャネル部は、バルブユニット30の出口であってもよい。図4に示す実施形態では、流体流動装置は3つの出口接続チャネル部24を備え、それらのうちの2つが見える。既に上述したように、入口および出口は交換可能である。
【0049】
図3および図4に示す設計では、バルブ部材32は、閉位置と開位置との間でバルブチャンバ31の側壁Sに主に平行な方向に移動可能であり、閉位置では、バルブ部材32はバルブチャンバ31の床面Fに接触しており、且つ、周側壁Sの少なくとも一部はバルブ部材31からある距離に配置されている。両方の設計(図3には示されていないが)において、バルブ部材31が可撓性懸架要素によってバルブチャンバ31内に懸架されていること、および、図4において、これらの可撓性懸架要素は中空であり可撓性流管要素35を提供することが好ましい。
【0050】
図4は、少なくとも1つの追加の入口および/または出口を提供することが可能であり、少なくとも1つの追加の入口および/または出口は、バルブチャンバ31の側壁Sに設けられていることを、既に示している。これは、もちろん、図3に示す設計に対しても可能である。さらに、両方の設計のバルブチャンバ31は、床Fによって画定された平面に平行な方向に測定された幅寸法を有し、且つ、バルブチャンバ31の側壁Sに主に平行な方向に測定された高さ寸法を有し、幅寸法は高さ寸法よりも大きいことが分かる。
【0051】
図3および4に示す両方のバルブユニット30は、好ましい実施形態では、バルブプレート32とバルブシートとの間に半径方向の流路Rを有する平行移動シリコンプレート32を備える。面外の設計(図3)は、バルブプレート32をウェハ貫通流体入口または出口3の真上に配置する。バルブプレートを上下に動かすと、入口/出口と表面チャネル22’との間の半径方向のチャネルRを通る流れが制御される。
【0052】
面内の設計(図4)は、1つの表面チャネル22から別の表面チャネル24への流れの制御を可能にする。面外の設計と同様に、それは、中心にバルブプレート32を有する大きな外側空洞(バルブチャンバ31)を含む。流体は、表面チャネル22,24から外側空洞31に流れ、次に、バルブプレート32とシートFとの間の半径方向のチャネルRを通って進む。面外の設計とは対照的に、流れは、システムチップの基板12を出て行かず、バルブプレート32の内側の内側空洞38に流入する。この内側空洞38は、バルブプレート32を通り外側空洞31を通りバルブユニット30の外側の表面チャネル24に戻る3つの「流出」表面チャネル24,36に接続されている。
【0053】
単一の対称的な動作点を得るために、中央のプレートが内側空洞38の中心に追加される(図示せず)。それは、好ましくは、3つの「スポーク」によってバルブプレート32のリングに接続される。
【0054】
流れが表面チャネルネットワークを離れることはないので、図4の面内の設計は、いくつかの流体構成要素間の流れのオンチップルーティングを可能にする。対照的に、図3の面外の設計は、チップの入口/出口の上に配置されなければならず、その入口/出口と他のオンチップ流体構成要素との間の流れを調整することができる。
【0055】
図5a−eは、本発明の実施形態の製造の単純化されたプロセスフローを示す。厚さ50μmのデバイス層103と、400μmのハンドル層101と、5μmの埋め込み酸化物(BOX)層102とを有する<100>配向のシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェハが提供される。最初に、シリコンの深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)を用いて、流体入口202および出口(図5aにはまだ示されていない)がハンドル層101内に形成される。
【0056】
表面チャネル203および空洞204,205は、次に、窒化シリコンスリットパターンマスクを介したシリコンの等方性エッチングを用いてデバイス層103内に形成される。このスリットパターンの密度を変えることによって、単一のエッチングステップで深い構造と浅い構造の両方を形成することが可能である(図5b)。
【0057】
バルブ構造232を開放するために、まず、液相HFエッチングを用いてBOX層102が選択的にエッチングされた後、気相HFエッチングを行い毛管力によるスティクションを防止する(図5c)。
【0058】
窒化シリコンのLPCVDを使用してスリットパターンは閉じられ、表面チャネル203を封止し、チャネル壁を形成し、閉じた流体システムを形成する(図5d)。
【0059】
バルブが閉じているとき、面内のバルブの流出チャネルは下方に曲がる必要がある。曲げ剛性を低減するために、それらの周りのシリコンは、最終の等方性エッチングで除去される(図5e)。
【0060】
本発明は、いくつかの例示的な実施形態によって記載されていることは、当業者には明らかであろう。さらなる実施形態が考えられる。所望の保護は、添付の請求項によって規定される。
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図5(e)】