【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、1つまたは複数の実体を含有する液滴を供給する方法が提供され、この方法は、流体中に複数の実体を供給するステップと、前記流体から液滴を調製するステップと、前記液滴が前記複数の実体のうちの1つまたは複数の実体を含有しているかどうか、または前記液滴が前記実体を含有していないかどうかを決定するステップと、前記決定の結果に応じて前記液滴を選別するステップと、前記選別された液滴を貯留容器内に分注するステップとを含み、分注する前記ステップは、選別する前記ステップの後に、選別された液滴を含有する流体のための流体流路を選択するステップと、選択された経路から選別された液滴を排出するステップとを含む。
【0010】
発明者らは、単一の実体、または単一の液滴、たとえば、ピコドロップレット(その体積は約1000または数千ピコリットル未満である)中の実体の画成された単一の組合せを取得する確率は、この方法の実施形態を使用して高くすることができることを理解している。方法の調製ステップ、決定/選別ステップ、および分注ステップの各々は、単一の液滴中の1つまたは複数のターゲット実体を取得することに対する特定の確率を有している。この方法において、これらのステップを組み合わせることによって、99.9%を超える、特に99.99%を超える高い確率で単一の液滴中の単一のターゲット実体または前記実体の単一のターゲット組合せを取得することができる。たとえば、これは、選択の3つの段階、すなわち、ポアソン統計(後述)によるカプセル化、接合部での選別、および分注時点における選別/選択で達成されるものとしてよく、各々、たとえば、90%を超える選択による。類似の仕方で、この方法の実施形態は、大きな集団から非常に希なターゲット液滴を抽出することを円滑にする。
【0011】
本発明者らは、本明細書全体を通して実体の単一の(ターゲット)組合せへの参照がなされれば、これは、定められた数の実質的に同一の実体(たとえば、定められた数の細胞種類)、または定められた範囲内の数の実質的に同一の実体、または(特定のもしくはある範囲内の)定められた数の第1の実体(たとえば、定められた数の第1の細胞種類)と(特定のもしくはある範囲内の)定められた数の第2のもしくはさらなる実体(たとえば、定められた数の第2のもしくはさらなる細胞腫類)の組合せを含み得ることを述べておく。したがって、液滴中の1つまたは複数のターゲット実体は、たとえば、種類Aの定められた数(1以上)の実体、種類Aの定められた数(1以上)の実体および種類Bの定められた数(1以上)の実体、3つまたそれ以上の異なる種類の定められた数(1以上)の実体の各々であってよい。
【0012】
好ましい一実施形態において、方法は、分注するため選別された液滴を識別するステップと、選別された液滴を前記流体の第1の流体流路から、前記選別された液滴を第1の流体流路から第2の流体流路内に移送することによって抽出するステップと、選別された液滴を第2の流体流路から貯留容器内に、圧力を第2の流体流路に印加することによって排出するステップとをさらに含む。
【0013】
方法の好ましい一実施形態において、移送するステップは、選別された液滴に圧力を印加して、第1の流体流路の一部にある間に分注し、その後、選別された液滴を第1の流体流路から第2の流体流路内に移送し、選別された液滴を排出するステップを含む。実施形態では、(油中水)エマルジョンは、第1の流体流路に沿って流れ、流路の共有された領域を通り、次いで、第1の流体に沿って続くか、または流路もしくは共有されている流路のいずれかに印加される陽圧および/または陰圧(吸引)によって第2の流路内に迂回され得る。したがって、実施形態では、分注するステップは、適宜に、ただし好ましくは、経路を選択するために液滴選択/選別機構と連動して、流れの共有領域のある分岐もしくはT字型接合チャネル配置構成を採用し得る。
【0014】
このアプローチは、いくつかの実施形態において、すでに以前に選別された液滴のさらなる選別ステップを実行できる。それによって、液滴は、第2の選別ステップの前に検出され、適宜その構成物質が分析され得る。それによって、選別された液滴の検出および/または分析は、第1の流体流路および圧力が印加され得る経路の共有流路で実行されてよい。代替的に、またはそれに加えて、液滴は、共有流路の前に検出され、および/または分析され得る。好ましい一実施形態において、液体の排出元となり得る第2の流体流路は、第1および第2の(またはさらなる)放出チャネルを備え得る。第2の放出チャネル内の圧力は、減少させられ得る(たとえば、第2の放出チャネルに接続されているポンプを使用することによって)。次いで、液滴は、選別された液滴の検出および/または分析に応答して第1の流体流路内にある間に、上で概要が述べられているように、圧力を選別された液滴に印加することによって第1の放出チャネルを介して分注されるものとしてよい。これは、選別された液滴が、ポンプを使用して第2の放出チャネル内に抽出されないことを確実にし得る。液滴が、第2の放出チャネルから分注されるべきである場合、たとえば、液滴に注目していない場合、圧力は印加され得ず、それにより、ポンプは液滴を第2の放出チャネル内に吸引する。それが注目するものかどうかを決定する液滴の分析は、定められた数の液滴中のターゲット実体、および/または液滴中の1つまたは複数の実体の特性(たとえば、蛍光レベル、伝導率、および他の物理的もしくは化学的特性)に関する分析を含み得る。そのようなチャネル網の一実施形態について、以下でさらに説明する。
【0015】
方法の別の好ましい実施形態において、分注するステップは、選別された液滴を第1の流体流路から第2の流体流路に移送し、次いで、圧力を第2の流体流路に印加して液滴を排出させるステップを含む。これは、圧力が第2の流体流路のみに印加されるため第1の流体流路内の他の液滴の流れが中断され得ないので好ましいものと言える。しかし、代替的に、この種類の分注では、液滴が望ましくないときに、後で説明するような「デカップルユニット」を使用して望ましくない液滴を第1の流体流路から第2の廃棄経路に移送移動することができ、液滴は第1の流路から、たとえば、第1の流路内の弁を閉じて圧力をエマルジョンに印加して液滴をノズルまたは同様のものから第1の流路の末端で排出することによって分注される。
【0016】
液滴を第1の流体流路から第2の流体流路に移送するために使用されるデバイスの実施形態については、以下でさらに説明され、たとえば、後で説明されるような回転ユニット、並進ユニット、またはデカップルユニットが採用され得る。液滴が第1の流体流路から第2の流体流路に移送されるべきかどうかは、液滴が移送ユニット内に入る前に、および/または液滴が移送ユニット内にある間に決定され得る。液滴が第1の流体流路から第2の流体流路に移送されるべきかどうかに関する決定は、定められた数のターゲット実体、および/または液滴中の1つまたは複数の実体の特性(たとえば、蛍光レベル、伝導率、および他の物理的もしくは化学的特性)にさらに依存し得る。
【0017】
方法の好ましい一実施形態において、抽出するステップは、選別された液滴が定められた数の前記実体を含むとき、および/または前記選別された液滴が定められた特性を持つ前記実体を含むときにのみ選別された液滴を抽出するステップを含む。それによって、定められた数の実体は、定められた範囲内にあり得る。定められた特性は、たとえば、物理的特性(たとえば、蛍光レベルまたは他の物理的特性)および/または化学的特性であってよい。
【0018】
これは、たとえば、さらなる分析および/または培養のために、貯留容器内に排出されるべき、1つまたは複数のターゲット実体を含有する、液滴の収量が増加させられ得るので好ましいものとしてよい。上で概要を述べたように、ターゲット実体である実体は、これによって、限定はしないが、物理的特性、および/もしくは化学的特性などの定められた特性を有する実体、ならびに/または定められた数の実体を含有する液滴を含み得る。
【0019】
液滴中の実体の数は、たとえば、光学的に決定され得る。実体の数は、代替的に、またはそれに加えて、液滴および/または(1つもしくは複数の)実体の物理的特性(たとえば、蛍光レベル)および/または化学的特性を分析することによって決定され、特性は液滴中に含有されている実体の数に対応し得る。物理的および/または化学的特性は、標準的な技術を使用して決定され得る。
【0020】
流体から液滴を調製するための様々な方法およびデバイスが使用され得る。例は、限定はしないが、T字接合部、Y字接合部、流動集束デバイス、および他のものを含む。
【0021】
液滴が1つまたは複数の実体、特に1つまたは複数のターゲット実体を含有するか、または実体を全く含有しないかは、液滴の電気的、光学的、熱的、音響的、機械的、時間的、空間的、および他の特性、たとえば、他の物理的または化学的特性のうちの1つまたは複数に基づき決定され得る。
【0022】
液滴を選別するための技術は、限定はしないが、磁場ベースの液滴選別、誘電泳動、音波液滴選別、および他のものを含む。
【0023】
抽出および/または識別ステップは、単一の液滴が1つまたは複数のターゲット実体を含有するかどうかに関するさらなる決定を可能にするものとしてよく、それによって、単一の液滴中の単一のターゲット実体または実体の単一のターゲット組合せを取得することに対する確率を高める。
【0024】
本明細書で説明されている方法の実施形態は、以下でさらに説明されるように、たとえば、液滴中の生存可能な細胞の単一クローン性保証(monoclonality assurance)を高めるのに特に適している。
【0025】
方法の好ましい一実施形態において、排出するステップは、前記決定および/または前記実体の特性に応じて定められた位置で前記選別された液滴を排出するステップを含む。選別された液滴は、それによって、たとえば、マイクロタイタープレートのウェル内に排出され得る。選別された液滴が分注されるべきマイクロタイタープレートの特定のウェルは、それによって、液滴中の以前に決定された数の実体(1つの種類の定められた数の実体または複数の種類の実体の各々であってよい)によって、および/もしくは1つもしくは複数の実体の特性、たとえば、物理的特性(たとえば、蛍光レベルまたは他の物理的特性)ならびに/または化学的特性によって選択される。
【0026】
本明細書で説明されている方法の好ましい実施形態において、液滴は、50〜1,000ピコリットル、好ましくは300〜700ピコリットルの体積を有する(融合液滴は大きくなり得る)。そのような体積は、流体の消耗品コストを最低限度に維持しながら、たとえば、細胞もしくは生体分子の単一の実体、または少数の実体を含有することを円滑にし、それに加えて、液滴が小さければ小さいほど高速な処理が円滑に進むので好ましい。しかしながら、より大きい液滴も採用され得る。
【0027】
たとえば、微生物培養物もしくは細胞を培養し、および/または維持することが好ましい場合がある。したがって、好ましい一実施形態において、方法は、1つまたは複数の実体を培養し、および/または維持するために液滴をインキュベートするステップをさらに含む。単一の液滴中の単一のターゲット実体または実体の単一のターゲット組合せを取得することに対する確率は、実施形態において、99.997%を超える高さなので、高い単一クローン性保証は、本明細書で説明されている方法の実施形態を使用してもたらされる1つまたは複数の実体を培養したときに多数の、たとえば生存可能な細胞を取得することを可能にする。
【0028】
液滴は、液滴が1つもしくは複数の実体を含有する(または実体を全く含有しない)かどうかに関する決定の前にインキュベータに送られるものとしてよく、ならびに/または決定および選別ステップの後にインキュベータに送られ得る。それに加えて、または代替的に、液滴は、抽出ステップの後にインキュベートされてよい。
【0029】
さらなる好ましい一実施形態において、方法は、インキュベーション時に1つまたは複数の実体に対して安定性試験を実行するステップをさらに含む。たとえば、単一の液滴中の1つまたは複数の細胞に対して安定性試験を実行することで、安定性試験中に重要な検体もしくは生体分子の生産を低下させるか、変更するか、または死んでいる、ということのない生存可能な細胞を選別することが可能になる。これは、たとえば、生存可能な細胞または高産生体または重要な検体または同様のもののなおいっそう高い単一クローン性保証を取得することを可能にする。
【0030】
方法の好ましい一実施形態において、選別された液滴を第1の流体流路から第2の流体流路に移送するステップは、選別された液滴をデカップラ(decoupler)内の第1の流体流路からデカップルするステップを含み、デカップラは、前記選別された液滴を第1の流体流路から分離し、前記分離された液滴を第2の流体流路に誘導するように構成される。
【0031】
この方法で、単一の液滴が、1つまたは複数の液滴を含有する流体から分離され得る。次いで、液滴は、一方の流体流路から別の流体流路へ平行移動されるものとしてよく、そこから、その後、たとえば、この方法が実装される微小流体チップから分注され得る。液滴が生存可能な単一の実体(または生存可能な実体のみの特定の組合せもしくは複数の生存可能な実体のみ)、たとえば、生存可能な単細胞を含有するかどうかを決定することが特に望ましい場合がある。これは、流体から生存可能な単一の実体(または生存可能な実体のみの特定の組合せもしくは複数の生存可能な実体のみ)を含有する液滴を単に分離することを可能にし得る。その結果、各々液滴が生存可能な単一の実体(または生存可能な実体のみの特定の組合せもしくは複数の生存可能な実体のみ)を含有する単一の液滴をもたらすことに対する単一クローン性保証は、さらに高まり得る。
【0032】
移送された液滴を、たとえば、微小流体チップから排出するステップは、単一の液滴中に含有されている1つまたは複数の実体がさらにオフチップで分析され得るので特に好ましいものとしてよい。
【0033】
方法の好ましい一実施形態において、排出するステップは、前記選別された液滴が給送される輸送流体(限定はしないが、油など)を加熱するステップを含む。これは、流体がインクジェットプリンタから排出されるのと同様にして液滴を排出することを可能にする。
【0034】
好ましい一実施形態において、方法は、培養培地流体を第2の流体流路内に注入して選別された液滴を培養培地流体内で排出するステップをさらに含む。これは、たとえば、集団が単一の排出された液滴中に含有される1つまたは複数の実体から培養され得るので特に好ましいものとしてよく、排出される液滴は、たとえば、集団、たとえば、細胞集団もしくは生体分子の集団を培養するために培養培地流体においてマイクロタイターウェル内に排出され得る。
【0035】
さらなる好ましい一実施形態において、排出するステップは、加圧流体排出を介して識別された液滴を排出するステップを含む。これは、1つまたは複数の実体を含有する液滴として特に好ましいものとしてよく、特に1つまたは複数の生存可能な実体は、より高速におよび/または制御されながら分注され得る。この点において、複数の液滴を運ぶ流体の第1の流体流路から1つまたは複数の生存可能な実体を含有する液滴を分離し、液滴を第2の流路に送ることは、このことが第1の流体流路内の他の液滴の流れに影響を及ぼすことなく第2の流路から単一の液滴の加圧流体排出を行うことを可能にするので、特に重要であり得る。これによって、単一の液滴中の、たとえば、1つまたは複数の生存可能な細胞もしくは生体分子の制御された排出が達成され得る。
【0036】
本明細書で説明されている方法およびシステムは、限定はしないが、生体分子などの、細胞および/または試薬に特に適しているものとしてよいが、それは、上で概要を述べたように、たとえば細胞集団の培養は、法的規制の下で、単一の生存可能な細胞(または多数の生存可能な細胞のみ)に由来する必要があり得るからである。
【0037】
本明細書で説明されている方法およびシステムを実現することによって、消耗品コスト、特に実体を含有する流体の消耗品コスト、および/またはリード薬剤を送達するのに要する時間の長さは、特に低減され得る。
【0038】
好ましい実施形態において、方法は、第2の流体中に第2の複数の実体を供給するステップと、第2の流体から第2の液滴を調製するステップと、第1の流体から調製された第1の液滴と第2の流体から調製された第2の液滴とを融合させて融合液滴を取得するステップとをさらに含み、抽出する前記ステップは、第1の流体流路から第2の流体流路内に融合液滴を移送することによって融合液滴を抽出するステップを含む。これは、第1および第2の細胞、細胞と試薬、ならびに他の組合せを含有する融合液滴を取得することを可能にし得る。液滴を融合するステップは、電気合体(electrocoalescence)を使用して、第1および第2の液滴の一方または両方を帯電させることによって、受動的もしくは機械的融合によって、たとえば、流動チャネルに形状形成もしくは他の構成をとらせて強制的に液滴を集めることによって、化学的に促進された融合(chemically facilitated fusion)を採用することによって、および/または他の技術を使用することによって、実行され得る。
【0039】
したがって、第1および第2の液滴を融合するステップは、たとえば、単細胞(または多数の細胞)が試薬と反応する仕方を詳しく調べることを可能にし得る。さらに、安定性試験が、試薬に暴露されている単細胞(もしくは多数の細胞)について実施され得るか、または単細胞対(もしくは細胞の組合せ)間の相互作用が分析され得る。
【0040】
たとえば、(1つまたは複数の)単細胞を試薬と融合させるために、最初に、第1の液滴が単一の実体(または多数の実体)を含有するかしないかを決定することが望ましいものとしてよい。したがって、好ましい一実施形態において、液滴の融合の前に、決定および/または選別が実行される。
【0041】
さらなる好ましい実施形態において、方法は、第2の液滴が第2の複数の実体のうちの1つまたは複数の実体を含有しているかどうか、または第2の液滴が第2の複数の実体のうちの1つの前記実体を含有していないかどうかを決定するステップと、決定の結果に応じて第2の液滴を選別するステップとをさらに含む。これは、たとえば、第1の液滴が第2の液滴と融合させられることを、第2の液滴が1つまたは複数のターゲット実体を含有する場合にのみ確実にし得る。好ましくは、融合は、それぞれ、第1および第2の複数の実体のうちの1つまたは複数のターゲット実体を含有すると決定されている前記第1の液滴および前記第2の液滴についてのみ実行される。
【0042】
したがって、方法の実施形態は、たとえば、単一の液滴中に含有されている、生体分子、または1つもしくは複数の細胞と1つもしくは複数の試薬との単一のターゲット組合せなどの、細胞の単一の対、または細胞と試薬との単一の対を分析することを可能にする。
【0043】
したがって、方法の好ましい一実施形態において、融合液滴は、2つの細胞の単一の対、または細胞と試薬との単一の対、または1つもしくは複数の細胞の単一の組合せ、または1つもしくは複数の細胞と1つもしくは複数の試薬との単一の組合せを含有し、特に試薬は生体分子である。単一の液滴中に含有される2つの実体の単一の対の他の組合せが、本明細書で説明されている方法の実施形態を使用して分析され、および/またはさらに処理され得ることは理解されるであろう。
【0044】
当業者であれば、方法は、複数の実体/試薬を組み合わせるためにも使用され得ることを理解するであろう。
【0045】
方法のさらなる好ましい実施形態において、選別するステップは、異なる時点において前記流体流路の複数の場所で前記液滴を検出し、前記流体流路内の前記液滴の速度を決定して前記選別を計時するステップを含む。方法の実施形態は、流体流路内の液滴の特定の場所が決定され、および/または予測され得るので液滴を選別するステップの制御を改善することができる。したがって、たとえば、光ゲートセンサなどの一対のセンサは、液滴の移動速度を推定するために使用され得る。次いで、融合時の液滴の位置が予測され得る。これは、たとえば、液滴が正しいチャネル内に存在するか、または向き付けられ/選別されていることを、液滴が予想された時刻および場所に存在していることをチェックすることによって、チェックするために使用され得る。
【0046】
本発明の関係する態様において、2つの生物学的実体の単一の対を含有する液滴を供給する方法が提供され、この方法は、第1の流体中に第1の複数の生物学的実体を供給し、第2の流体中に第2の複数の生物学的実体を供給するステップと、第1の流体から第1の液滴を調製し、第2の流体から第2の液滴を調製するステップと、第1の液滴が第1の複数の生物学的実体のうちの1つの単一の実体を含有するかどうか、および第2の液滴が第2の複数の生物学的実体のうちの1つの単一の実体を含有しているかどうかを決定するステップと、それぞれ、前記単一の実体を含有していると決定されている第1の液滴と第2の液滴とを融合させるステップとを含む。したがって、単一の液滴中の2つの実体の単一の対を取得することに対する確率は、この例では、第1および第2の液滴の両方について、決定ステップが、それぞれ、液滴を融合させる前に実行されるので、高められ得る。
【0047】
本発明の上で説明されている第1の態様の好ましい実施形態は、ここで等しく適用される。したがって、たとえば、融合液滴は、その後、選別された液滴を第1の流体流路から第2の流体流路内に移送することによって流体の第1の流体流路から抽出され得る。好ましくは、第1および第2の液滴は、各々、本発明の上で説明されている第1の態様およびその好ましい実施形態のすべてのステップを受けるものとしてよい。それぞれ第1の複数の生物学的実体および第2の複数の生物学的実体から実体の単一の対を含有する融合液滴を取得することに対する確率は、それによって著しく高められ得る。
【0048】
液滴を融合させるステップは、電気合体によって、静電気引力により第1および第2の液滴の一方または両方を帯電させて液滴を融合させることによって、受動的もしくは機械的融合によって、化学的に促進された融合によって、または他の技術によって実行され得る。
【0049】
本発明の関係する一態様において、液滴中に含有される生物学的実体を代謝させる、および/または分析する方法が提供され、生物学的実体は、単細胞、または2つの細胞の単一の対、または細胞と試薬との単一の対を含み、この方法は上で説明されている態様および実施形態のうちのいずれか1つの方法を使用して液滴中に含有される生物学的実体を提供するステップを含む。
【0050】
代謝させる(培養する)ステップは、たとえば、細菌の場合に、実体の数を増やすステップを含み得るか、または哺乳類細胞などの実体を代謝させて、たとえば、産生物を産生させるステップを含み得る。
【0051】
本明細書で説明されている方法の実施形態は、結果として非常に高い単一クローン性保証をもたらすので、これらは、たとえば、単一の液滴中に含有される単細胞(または生体分子、または別の実体)を培養するのに特に適しているが、それは、単細胞から培養された細胞集団内の細胞は、すべてが互いに実質的に同一になる非常に高い確率を有するからである。同様に、単一の液滴中の単細胞を分析するステップは、注目している細胞に対して測定が実行されることを確実にすることを可能にする。たとえば、突然変異の結果、すべが実質的に同一になるとは限らない細胞(または他の実体)の統計的分布が生じるので、これは、単一の液滴中に含有される多数の細胞について保証され得ない。
【0052】
本発明のさらなる態様において、1つまたは複数の実体を含有する液滴を供給するための微小流体システムが実現され、このシステムは、複数の実体を含有する流体から液滴を調製するための液滴形成デバイスと、前記液滴が複数の実体のうちの1つまたは複数の実体を含有するかどうかを決定するための分析器と、決定の結果に応じて前記液滴を選別するための液滴選別デバイスと、前記選別された液滴を微小流体システム内の流体の流体流路からデカップルするためのデカップラとを備える。
【0053】
好ましい実施形態において、微小流体システムは、前記デカップルされた液滴(または、たとえば、デカップラを介して第1の流体流路から第2の流体流路に移送された前記選別された液滴)を識別するように構成されているさらなる分析器と、識別された液滴を、たとえば、貯留容器(たとえば、マイクロタイタープレート)内に排出するように構成されている液滴分注ユニットとをさらに備える。
【0054】
好ましくは、分析器は、液滴が複数の実体のうちの単一のターゲット実体を含有するかどうか、および/または液滴が複数の実体のうちの実体の単一のターゲット組合せを含有するかどうかを決定するように構成される。
【0055】
したがって、微小流体システムの実施形態は、単一の液滴中の、単一の実体、たとえば、単細胞もしくは生物学的実体の単一の対、または実体の単一のターゲット組合せを取得することを可能にする。液滴形成デバイス、分析器および液滴選別デバイス、およびデカップラの各々は、ある確率で単一の液滴中の1つまたは複数のターゲット実体を取得することを可能にする。微小流体システムの実施形態を使用して単一の液滴中の単一の実体または実体の単一の組合せを取得することに対する組合せ確率は、99.9%を超える、特に99.99%を超え得る。デカップラは、それによって、単一の液滴が単一の実体を含有するかどうかに関するさらなる決定のための分析器を備え得る。
【0056】
微小流体システムの好ましい一実施形態において、デカップラは、流体流路から前記選別された液滴を分離するための分離ユニットと、前記分離された液滴を微小流体システムの第2の流体流路内に誘導するためのガイドとを備える。これは、単一の液滴中に含有される単一の実体(または実体の単一の組合せ)がその後分離され、他の液滴または流体から別々に分注されおよび/または分析され得るので特に好ましいものとしてよい。
【0057】
微小流体システムのさらなる好ましい一実施形態において、ガイドは回転ユニットを備え、回転ユニットは、前記分離された液滴を貯蔵するための液滴貯蔵ユニットを備え、回転ユニットは、液滴貯蔵ユニット内に貯蔵されている前記分離された液滴を第2の流体流路内に輸送するために回転されるように構成される。
【0058】
注目している実体(または複数の実体)を含有する液滴が検出された後、液滴は、液滴貯蔵ユニット内に留置されてよく、回転ユニットは回転されて、液滴を第2の流体流路に送るものとしてよい。いくつかの実施形態において、回転ユニットは、第1および第2の流体流路を完成させる。
【0059】
いくつかの他の実施形態において、分岐流動チャネルは、類似の目的のために、より具体的には液滴を選択/分注するために使用され得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、液滴貯蔵ユニットは、それぞれ第1および第2の流体流路を完成させるチャネルであってよい。
【0061】
微小流体システムのさらなる好ましい一実施形態において、ガイドは並進ユニットを備え、並進ユニットは、前記分離された液滴を貯蔵するための液滴貯蔵ユニットを備え、並進ユニットは、液滴貯蔵ユニット内に貯蔵されている前記分離された液滴を第2の流体流路内に輸送するために並進方向に移動されるように構成される。
【0062】
回転ユニットと同様に、注目している実体(または複数の実体)を含有する液滴が検出された後、液滴は、並進ユニットの液滴貯蔵ユニット内に留置されてよく、並進ユニットは移動されて、液滴を第2の流体流路に送るものとしてよい。いくつかの実施形態において、並進ユニットは、第1および第2の流体流路を完成させる。
【0063】
いくつかの実施形態において、液滴貯蔵ユニットは、それぞれ第1および第2の流体流路を完成させるチャネルであってよい。
【0064】
好ましい一実施形態において、ガイドは、投入チャネルを2つ以上の放出チャネルと組み合わせるように構成され得る。それによって、ガイドのチャネルは揺れるような動きで移動されてよく、投入流体流路を複数の放出流体流路と接続することを可能にする。
【0065】
好ましい一実施形態において、微小流体システムは、1つまたは複数の実体を培養し、および/または維持するために液滴をインキュベートするためのインキュベータさらに備える。上で概要を述べたように、単一の液滴中の単一のターゲット実体または実体の単一のターゲット組合せ(複数の実質的に同一の実体であってよい)を取得することに対する確率は、実施形態において、99.99%を超える高さなので、高い単一クローン性保証は、本明細書で説明されている微小流体システムの実施形態を使用して1つまたは複数の実体を培養したときに多数の、たとえば生存可能な実体(たとえば、細胞、生体分子、または他の実体)を取得することを可能にする。
【0066】
インキュベータは、流体流路方向で分析器の前に留置されてよく、および/または流体流路方向で分析器および液滴貯蔵デバイスの背後に留置されてよい。それに加えて、または代替的に、インキュベータは、微小流体システム内の流体流路方向でデカップラの背後に留置されてよい。
【0067】
微小流体システムの好ましい一実施形態において、インキュベータは、インキュベーション時に1つまたは複数の実体に対して安定性試験を実行するための安定性試験ユニットを備える。単一の液滴中の1つまたは複数の実体、たとえば、(1つまたは複数の)細胞に対して安定性試験を実行することで、安定性試験中に重要な検体または生体分子の産生を低下させるか、変更するか、または死んでいる、ということのない生存可能な実体を選別することが可能になる。これは、限定はしないが、生存可能な細胞、生体分子、もしくは他の実体などの生存可能な実体、および/または高いレベルの重要な検体または同様のものを産生する細胞のなおいっそう高い単一クローン性保証を得ることを可能にする。
【0068】
好ましい一実施形態において、微小流体システムは、デカップルされた液滴を分注するための分注ユニットをさらに備える。それによって、デカップルされた液滴は、たとえば、マイクロタイタープレートの個別のウェル内に分注されるものとしてよく、そこで、単一の液滴(または複数の液滴)中に含有される1つまたは複数の実体は、貯蔵され、その後、さらなる処理もしくは分析のために、またはその後に、たとえば、発酵もしくは同様の処理において使用するために取り出され得る。
【0069】
微小流体システムのさらなる好ましい一実施形態において、分注ユニットは、培養培地流体を貯蔵するための貯留容器を備え、分注ユニットは、前記デカップルされた液滴を培養培地流体内に分注するように構成される。これは、特に好ましいものとしてよいが、それは、分注するステップおよび1つまたは複数の実体を含有する単一の液滴を培養培地流体内に留置するステップが、単一のステップに組み合わされ得るからである。実体または実体含有液滴を含有する培養培地流体から液滴が調製されてよく、次いで、たとえば、マイクロタイタープレートの個別のウェル内に分注され得る。
【0070】
微小流体システムの好ましい一実施形態において、分注ユニットは、加圧流体排出を介して液滴を分注するための昇圧(または減圧)ユニットを備える。圧力の変化は、限定はしないが、圧電、熱、および加圧ガスの方法を含む多くの技術によって引き起こされ得る。加圧流体排出を介して液滴を排出するステップは、微小流体システムから液滴を分注する時間が著しく短縮される可能性があり、および/または以下でさらに説明されるように、異なる放出部を介する排出が制御され得るので、特に好ましいものとしてよい。微小流体システムから分注されるべき注目している液滴を第1の流体流路から分離またはデカップルすることによって、分注されるべき液滴は、高圧ユニットに曝されるだけである。分析器および液滴選別デバイス内の液滴分析および選別は、液滴が高圧ユニットに曝される場合には達成が困難であり得るので、デカップルされた液滴を高圧ユニットに曝すだけにすることが好ましいものとしてよい。
【0071】
微小流体システムの好ましい一実施形態において、液滴形成デバイスは、複数の液滴形成デバイスを含み、微小流体システムは、複数の液滴形成デバイスを使用して調製された複数の液滴を融合させるための液滴融合デバイスをさらに備える。したがって、微小流体システムの実施形態は、たとえば、細胞の単一の対、または細胞と試薬との単一の対、または単一の融合された液滴中に含有されている特定の実体の単一の組合せのアッセイを作製することを可能にする。
【0072】
液滴融合デバイスは、微小流体システム内の流体流路方向で分析器および液滴選別デバイスの前に留置されてよい。好ましくは、液滴融合デバイスは、流体流路方向で分析器および液滴選別デバイスの背後に留置されてよいが、これはそれぞれ第1および第2の複数の実体のうちの1つまたは複数のターゲット実体を含有すると決定されている液滴のみを融合させることを可能にするからである。
【0073】
液滴融合デバイスは、代替的に、デカップラの背後に留置されてよい。そうする利点は、2つの液滴が各々注目している1つまたは複数の実体を含有する確率が、それらの液滴を融合させる前に比較的高い可能性があるということにある。
【0074】
液滴融合デバイスは、電界を発生させて電気合体によって液滴を融合させるための電界発生器を備え得る。代替的に、またはそれに加えて、液滴融合デバイスは、液滴を帯電させるための1つまたは複数の帯電デバイスを備え得る。液滴の融合は、それによって、液滴の静電気引力を介して促進される。液滴融合は、代替的に、またはそれに加えて、たとえば、液滴が別の液滴に衝突しそれによって他の液滴と融合し得るチャネル構築を介して、受動的液滴融合を可能にするチャネル幾何学的形状を備える液滴融合デバイスを実現することによって達成され得る。
【0075】
微小流体システムの好ましい一実施形態において、分析器は、蛍光検出器、散乱光検出器、音波発生および検出ユニット、ならびに磁気活性化細胞選別デバイスのうちの1つまたは複数を備える。液滴の含有物は、これらのデバイスのうちの1つまたは複数を介して決定されるものとしてよく、液滴は、この決定に従って液滴選別デバイスにおいて選別され得る。液滴の含有物を分析するための1つまたは複数の特定の方法もしくはデバイスは、液滴中で検出されるべきターゲット含有物に応じて他の方法もしくはデバイスよりも好ましい場合があることは理解されるであろう。
【0076】
微小流体システムのさらなる好ましい一実施形態において、分析器および/または液滴選別デバイスは、前記微小流体システムの異なる場所で(異なる時点に)前記液滴を検出して前記微小流体システム内の前記液滴の速度を決定するための複数のセンサを備え、前記液滴選別デバイスは、前記速度決定の結果に応じて前記液滴を選別するように構成される。これは、微小流体システムの流体流路内の液滴の場所が決定され、および/または予測され得るので液滴の改善された選別を可能にする。
【0077】
本発明のさらなる一態様において、液滴選別または分注デバイスが実現され、このデバイスは一組の1つまたは複数の微小流体投入チャネルと、一組の微小流体放出チャネルと、投入チャネルと放出チャネルとの間の移動可能な選別要素とを有する基材を備え、選別要素は、投入チャネルを放出チャネルに接続するための一組の微小流体チャネルを備え、選別要素は、第1の投入チャネルから第1の前記放出チャネルへの流体流を可能にするため少なくとも第1の前記投入チャネルが接続される第1の位置と、前記チャネル内にあり、1つまたは複数の液滴を運ぶ一定の長さの流体がその長さ分の流体が第2の前記放出チャネル内に流れ込むように移動される第2の位置との間で移動可能である。
【0078】
したがって、液滴選別/分注デバイスの実施形態は、液滴を第1の流体流路から第2の流体流路内に移送することによって第1の流体流路から液滴を抽出することを可能にする。したがって、液滴選別デバイスは、微小流体デバイスの微小流体チャネルを接続し、および/または完成させるために使用され得る。上で概要を述べたように、これは、液滴が微小流体システムの第1の流体流路からデカップルされ、たとえば、第2の流体流路からの加圧流体排出によってシステムから分注され得るので、特に好ましいものとしてよい。
【0079】
液滴選別/分注デバイスの好ましい一実施形態において、選別要素は、第1の位置と第2の位置との間で回転可能であり、それにより、第1および第2の投入チャネルから流体の長さ分だけスワップしてそれらがそれぞれの第1および第2の放出チャネルに流れるか、またはスワップされてそれぞれの第2および第1の放出チャネルに流れるかのいずれかとなる。したがって、液滴の構成要素に関する以前の決定は、第1の流体流路から注目している液滴(または代替的に注目していない液滴)を抽出することによって液滴を選別することを可能にし、それを決定に基づき第2の流体流路に送るものとしてよい。
【0080】
したがって、液滴選別/分注デバイスの実施形態は、微小流体システム内の流体流路を妨げることなく流体流路から液滴を抽出することを可能にする。
【0081】
本発明の関係する一態様において、液滴を選別するか、または分注する方法が提供され、この方法は第1および第2の微小流体流を供給するステップであって、前記流れの少なくとも一方は液滴を含有する、ステップと、前記流れの一部分を含むターンテーブルを回転させて液滴を第1および第2の放出微小流体流のうちの一方に選択的に向けるステップとを含む。したがって、この方法の実施形態は、たとえば、液滴および/またはその含有物の特性に関する以前の決定に基づき、液滴を選別することを可能にする。
【0082】
本発明の関係する一態様において、微小流体流中で液滴を選別するか、または分注するためのデバイスが実現され、このデバイスは第1および第2の投入微小流体流であって、流れの少なくとも一方は液滴を含有する、第1および第2の投入微小流体流と、第1および第2の放出微小流体流と、投入流と放出流との間の流れの一部を含む回転するターンテーブルと、液滴を第1および第2の放出微小流体流に選択的に向けるようにターンテーブルの回転を制御するためのコントローラとを備える。
【0083】
液滴が、たとえば、第1の投入微小流体流から回転するターンテーブルの流れの一部分のうちの1つの中に入った後、ターンテーブルは、液滴が第2の放出微小流体流のところで出るように回され得る。液滴および/またはその含有物の前の分析結果に基づき、液滴をチャネル内に維持することが望ましい場合に、ターンテーブルは、液滴が、たとえば、回転するターンテーブルの流れの一部分を介して第1の投入微小流体流から第1の放出微小流体流に流れるように回されない。
【0084】
本発明の関係する一態様において、ピコドロップレットを第1の流体流路から第2の流体流路に移送するための細胞、生体分子、および実体の選別または分注デバイスが実現され、選別デバイスは、前記ピコドロップレットを前記第1の流体流路からデカップルするためのデカップラと、前記デカップルされたピコドロップレットを前記第2の流体流路に誘導するためのガイドとを備え、ガイドは、前記デカップルされたピコドロップレットを前記第2の流体流路に輸送するために回転されるように構成されている回転ユニット、および/または前記デカップルされたピコドロップレットを前記第2の流体流路に輸送するために並進方向に移動されるように構成されている並進ユニットを備える。液滴がデカップルされ第1の流体流路から第2の流体流路に誘導されるべきかどうかに関しては、液滴が選別デバイスに入る前に決定されているものとしてよい。代替的に、またはそれに加えて、この決定は、液滴が選別デバイスの中にあるときに下され得る。
【0085】
好ましい一実施形態において、細胞、生体分子および実体の選別デバイスは、1つもしくは複数のマイクロタイタープレート、および/または1つもしくは複数のガラススライド、および/またはピコドロップレットのうちの1つまたは複数が1つまたは複数のアドレス可能な場所で分注可能である1つもしくは複数のアレイもしくは他のフォーマットを備えるx−y移動プラットフォームをさらに具備する。したがって、液滴は、マイクロタイタープレートの1つもしくは複数の個別のウェル、および/または1つもしくは複数のガラススライド、および/または事前定義されたパターンによる1つもしくは複数のアレイもしくは他のフォーマットに分注されてよく、液滴およびその含有物は、分析されおよび/またはさらに処理されて、たとえば、集団を培養するものとしてよい。
【0086】
液滴選別/分注デバイスの実施形態および/または本明細書で説明されている細胞、生体分子、および実体の選別/分注デバイスの実施形態は、液滴分注器、特にピコドロップレット分注器内に組み込まれ得る。そのような液滴分注器は、選択された(選別された)液滴を微小流体チャネルから貯留容器内に選択的に分注するように構成される。
【0087】
さらに、液滴選別/分注デバイスの実施形態および/または細胞、生体分子、および実体の選別/分注デバイスの実施形態、および/または本明細書で説明されているピコドロップレット分注器の実施形態は、微小流体デバイス内に実装され得る。
【0088】
カートリッジ
さらなる一態様において、本発明は、選別された微小流体液滴の自動化された選別および分注を行うための微小流体カートリッジを実現し、カートリッジは、選別領域に結合されている選別投入チャネルであって、前記選別領域は前記投入チャネルおよび液滴向き付け器に結合され、液滴を前記選別投入チャネルから前記選別放出チャネルのうちの選択された1つに選択的に向ける2つ以上の選別放出チャネルを備える、選別投入チャネルと、前記選別放出チャネルのうちの1つに結合され、選択された前記液滴を前記カートリッジから分注して貯留容器内に回収する、液滴分注器とを備え、前記液滴分注器は、液滴をエマルジョン流から分注器放出チャネル内に排出して前記貯留容器内に回収するための液滴排出機構を備える。
【0089】
そのようなカートリッジの実施形態は、10
6または10
9個の液滴、たとえば、薬物耐性菌のうちの1つにのみ存在し得るターゲットを識別し、回収するなど、多数の重要な問題を解決するために使用できる使い捨て/消費可能デバイスを実現する。大まかに言うと、これは、原理上、共通の貯留容器内で、ただし、いくつかの好ましい実施形態では、別々の識別可能な貯留容器内で、注目している液滴からの信号を識別し、次いで、これらの液滴を回収してさらに分析することによって行われ得る。この後者のアプローチは、個別に識別される特性を持つ細胞もしくは他の実体を、たとえば、マルチウェルプレートから取り出し、その後、分析するか、または使用することを可能にし、そのようなマルチウェル貯留容器の事実上個別のウェルは、選択された特性を有する個別の実体を回収するために使用され得る。
【0090】
補完する形で、カートリッジの実施形態は、アッセイに直接使用されるのではなく、「安定性試験モード」で使用され、それにより、概念上すべて同一である液滴(たとえば、細胞)の集団における変更された(たとえば、否定的)応答を識別するものとしてよい。一例として、この動作モードでは、カートリッジは、たとえば、細胞による物質の産生が、たとえば、発酵バッチでの収量落ち込みをトラブルシューティングするためにオフに切り替えられた個別の場合を識別するために使用できる。
【0091】
好ましい実施形態において、カートリッジは、制御放出の前に液滴の含有物のインキュベーションを可能にするために液滴を好ましくは制御された温度に保持することができるインキュベーション領域またはチャンバを備える。実施形態において、この領域は、エマルジョン内に分散されたときよりも高い密度で液滴を保持するように構成され、これは、液滴(典型的には「浮遊している」)をチャンバの上側部分に保持し、弁または類似のものをチャンバの頂部に設けて液滴の制御放出を行うようにすることによって達成され得るが、使用時に、カートリッジはインキュベーションチャンバの頂部が上向きになるように配向される。過剰な分散媒(油)は、放出されて廃棄されるものとしてよい。好ましくは、ただし本質的ではないが、インキュベーション領域は、選別領域の上流にある。
【0092】
当業者であれば、エマルジョン(ダブルエマルジョンであってよい)が一般的に油中水型エマルジョンであることを理解するであろう。カートリッジは、好ましくは、マイクロドロップレット処理システムと接続するように構成される、すなわち、実施形態において、カートリッジは感知および制御機能を付与するマイクロドロップレット処理システムに取り付けられ、そこから放出されるものとしてよい。実施形態において、マイクロドロップレット処理システムは、液滴選別のためにインキュベーションチャンバおよび液滴特性感知のための温度制御を行い、分注器放出チャネルと貯留容器ウェルとの間の相対的運動も行わせて液滴を回収してもよい。
【0093】
典型的な一実施形態において、カートリッジは、一般的に、微小流体チャネル、1つまたは複数の保持領域、弁、および同様のものを載せた平板の形態を有する。これは、好ましくは実質的に光学的に透明であり、様々なプラスチック材料、たとえば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)または環状オレフィン重合体もしくは共重合体(COPもしくはCOC)から加工され得る。次いで、カートリッジは、システム/器具内に垂直に、または好適な角度で装着されてよく、分注器放出チャネルは下に向かってマルチウェルもしくはマイクロタイタープレートの方へ向き付けられている。次いで、器具は、カートリッジおよび/またはプレートを移動して、放出チャネルを選択されたウェル内に向き付けるものとしてよい。
【0094】
好ましい実施形態において、カートリッジは複数の流体接続部を備えており、これは器具内にカートリッジが挿入されたときに自動的に行われ得る。エマルジョンの生成は、オンカートリッジまたはオフカートリッジで実行されるものとしてよい。たとえば、実施形態において、カートリッジは、一方のエッジに沿って貯留容器を備え(これらはカートリッジが垂直であるときに正しい配向となるように)、これによりドロップレットオンチップで液滴生成を行うための油および水媒体(水および培養培地)を保持し得る。
【0095】
微小流体カートリッジの実施形態は、以前に説明されており、非常に大きな集団から注目している生物学的実体を含有するごく少数の、極めて希な液滴を識別することに向けられている。液滴選別器は、液滴分注器よりも1桁または2桁速く動作するものとしてよく、たとえば、分注器は、1〜10Hzで動作するものとしてよいが、選別器は100〜1,000Hzで動作し得る。しかしながら、ターゲット実体の統計量により、分注器は連続的に動作し得ない。したがって、カートリッジのいくつかの好ましい実装形態において、1つまたは複数のエマルジョン流緩衝領域が、カートリッジの選別領域と分注領域との間に設けられ、液滴分注器へのエマルジョン流量を制御する。実施形態において、そのような緩衝領域は、すでに説明されているインキュベーション領域に幾分類似するチャンバを備えるものとしてよく、そこで過剰な油がサイホン現象により吸い上げられるか、放出して廃棄される間に液滴が溜まることができる。たとえば、液滴は、それらが弁または類似のものによって制御されながら放出され得る場所からチャンバの頂部へ浮遊して移動することを許され得る。
【0096】
緩衝領域が含まれる場合、実施形態において、これは、液滴のオーダーが維持されるように構成されている、たとえば、蛇行構成の一定の長さの微小流体チャネルを備え得る。この方式で、緩衝部の上流で測定される液滴特性を有する液滴の同一性は、液滴のオーダーまたはシーケンスが維持されるので維持され得る。しかしながら、他の配置構成では、幅広のチャネルまたはチャンバが採用されてよく、これはより大きな容量を容易に持たせられるという利点を有する。この場合、液滴の特性は、緩衝領域から(順に)出た後に測定され得る。両方の場合において、好ましい実施形態は、液滴の1つまたは複数の特性を液滴の識別可能な特性、典型的にはその位置にリンクし、それにより、液滴がウェル/貯留容器内に分注されたときに、ウェル/貯留容器内の液滴の特性が知られる。
【0097】
したがって、本明細書で説明されているこれらのおよび他の方法/装置の好ましい実施形態において、識別されたウェル/貯留容器内の分注された液滴の含有物が知られ、後で使用できるように貯蔵される。このようにして、所望の/ターゲット特性を有する液滴含有物(たとえば、細胞、タンパク質、抗体、試薬、または検体)は、所望の/ターゲット特性を持つ内容物を有することが知られている(記録されている)ウェル/貯留容器の内容物を取り出すことによって液滴分注後に取り出され得る。
【0098】
いくつかの好ましい実施形態において、分注器の放出チャネルは、エマルジョンからの液滴、または液滴の含有物の遊離を促進するための機構を備える。以前に述べたように、液滴の含有物は、典型的には、多くの場合に培養培地において、細胞などの、水と生物学的実体とを含む。カートリッジの目的は、特定の特性または特質を有するそれらの(希な)生物学的実体を抽出することであり、これは、ターゲット液滴を、マイクロタイタープレートのウェル内に、たとえば、20〜50μlの水/培養培地をすでに含んでいる可能性のある1つまたは複数の貯留容器内に回収することによって行われる。比較すると、エマルジョンの排出されたスラグは、50〜300nlの体積を有するものとしてよいが(一部はチャネル幅に依存する)、液滴は、50pl以上のオーダーの体積を有し得る。実際、エマルジョンのスラグが分注器放出チャネルから排出されたときに、液滴からの水、およびその含有物は、最終的に、油の表面に浮遊して終わるものとしてよい(一部は油密度、およびそれがフッ素処理されているかどうかに応じて)ということがわかっている。したがって、液滴排出機構の実施形態は、好ましくは、エマルジョンから液滴を抽出し、および/または液滴を粉砕するためのシステムを備える。これは、たとえば、分注器放出チャネルのノズルを整形する、たとえば、狭めることによって、および/または放出チャネルにメッシュを設けることによって機械的に達成されるものとしてよく、および/またはたとえば、電界を発生させてエマルジョン/液滴を崩壊させるために電圧を印加できる分注器放出チャネルの放出部に隣接して一対の電極を設けることによって、電気的に達成されるものとしてよく、および/または化学的機構が、たとえば、ペルフルオロオクタノールなどの抗乳化剤の流れを分注器放出チャネル内に加えることによって採用され得る。
【0099】
いくつかの好ましい実施形態において、微小流体カートリッジは、前記微小流体カートリッジの異なる場所で(異なる時点に)前記液滴を検出して前記微小流体カートリッジ内の前記液滴の速度を決定するための複数のセンサをさらに備え、前記液滴方向付け器は、前記速度決定の結果に応じて前記液滴を向き付けるように構成される。これは、カートリッジ内の液滴の場所が決定され、および/または予測され、選別領域内で液滴を選別するステップの制御をさらに改善し得るので特に有利であり得る。
【0100】
いくつかの好ましい実施形態において、液滴排出機構は、エマルジョン流の圧力を高めて液滴を分注器放出チャネル内に向けるための機構を備える。いくつかの実施形態において、これは、主チャネルおよびサイドチャネルを(後で説明されているように、T字接合部の形態で)有するように分注器放出部を構成し、次いで、圧力パルスを印加して液滴をサイドチャネル(分注器放出チャネル)内に送り込んで放出させることによって達成され得る。一実施形態において、そのような配置構成は、サイドチャネル(分注器放出チャネル)とともにエマルジョン流の長さ分に沿って、ピンチ弁などの一対の弁を備え得る。このようにして、弁は、流れを分離するように閉じられ、次いで圧力がエマルジョンの分離されたスラグに印加されて、液滴を含むエマルジョンを分注器放出チャネル内に送り込むことができる。別のアプローチでは、エマルジョンのスラグは第1のチャネル/流れから第2のチャネル/流れに移送されてよく、そこで、圧力パルスが印加され、スラグおよびその関連する液滴を排出し得る。当業者は、他の構成が可能であることを認めるであろう。好適な圧力パルスが、たとえば、圧電トランスデューサを使用して、機械的に供給され得る。代替的に、圧力パルスが、たとえば、電気発熱体および泡膨張を用いて(インクジェットプリンタに似た方式で)電気的に生成され得る。いくつかの好ましい実施形態において、高められた圧力パルスが印加され、エマルジョンのスラグをその液滴とともに排出するが、当業者であれば、原理上、本発明者らが後で説明する配置構成がその代わりに低い圧力のパルスが液滴をエマルジョン流から分注器放出チャネル内に排出するために使用されるように適合され得ることを理解するであろう。
【0101】
いくつかの好ましい実装形態において、液滴排出機構を排出する液滴の存在を感知/検出するために使用されるシステムから物理的に分離すると都合がよい。実施形態において、これは、カートリッジ(マイクロドロップレット処理システム)を収納する器具を使用して排出のため選別システムによって選択された液滴の位置および速度の一方または両方を感知することによって達成される。感知は、液滴が排出機構に到達したときに液滴の位置が予測できるように液滴排出機構の上流で実行され得る。原理上、液滴速度は、エマルジョンの流速が十分正確に制御され得る場合には測定される必要がないが、実際には、速度を測定することは有利である。チャネルサイズ公差を制御して、チャネルサイズの変動を、したがって液滴速度変動を低減することはさらに有利である。この方式で液滴排出機構への別の場所で液滴を撮像すると、カートリッジ/器具が簡素化され、効果が高まる。
【0102】
すでに述べたように、いくつかの好ましい実施形態において、液滴は、複数の別々のウェルを備える、マイクロタイタープレートまたは同様のものの個別のウェル内に分注される。次いで、器具(マイクロドロップレット処理システム)は、分注された液滴を貯留容器に選択的に向けるための制御システムを備え得る。実施形態において、カートリッジまたはマルチウェルプレートのいずれかが、カートリッジおよびプレートが互いに相対的に移動され分注器放出チャネルを選択された貯留容器に向けることができるようにX−Y移動可能ステージ上に装着される。すでに述べたように、ウェルは、器具の適用/アッセイ/動作モードに応じて、1つまたは複数の液滴を保持し得る。
【0103】
いくつかの好ましい実装形態において、選別について液滴の1つまたは複数の特性の問い合わせが器具によって行われたときに、所望の特性を有する選択されたターゲット液滴について対応するデータが記憶される。次いで、データは、液滴が分注される特定のウェルまたは貯留容器を識別する情報に関連付けられる。このようにして、特定の特性を有する液滴は、その後、後で分析できるように貯留容器から取り出されるものとしてよく、および/またはマルチウェル貯留容器が、特定の特性または特性の範囲を有する一組の液滴を抽出するために使用され得る。選別は、たとえば、測定された値と閾値との比較に基づくものとしてよいが、選択された液滴がパラメータのある範囲の値を有することが可能性あり、次いで、これは、液滴内の生物学的実体の活動を測定する他の何らかの特性と相関し得る。したがって、1つまたは複数のパラメータの尺度を貯留容器の特定のウェル内の液滴とリンクすることができることは有益である。器具によって感知され得る特性の例は(限定はしないが)、蛍光度、散乱度、発光度、吸光度のうちの1つまたは複数などの光学的特性、電気伝導度などの電気的または磁気的特性、細胞が生きているか、または死んでいるか(光学的測定から推論され得る)などの、1つまたは複数の導き出された、または推論された特性を含む。当業者であれば、液滴を選別するときに個別の液滴の1つまたは複数の特性を感知することは実施形態において都合がよいが、原理上、貯留容器識別データに関連して記憶されている感知データは、それに加えて、または代替的に、センサの別々の配置構成によって、選別した後にそれに加えて、または代替的に感知され得る。両方の場合において、組み合わされたカートリッジおよび器具の実施形態は、後で分析または使用できるように個別の分注された液滴の追跡を円滑にする。
【0104】
以前に説明されているように、カートリッジ実施形態に対してなされる使用は、直接液滴アッセイおよび生物学的実体安定性/生存可能性アッセイを含む。いくつかのアプリケーションにおいて、単一クローン性の保証は重要である、すなわち、これは、単一のそのような実体だけを含有するために細胞などの生物学的実体を含む個別の貯留容器/ウェルに対して望ましいものとしてよい。これは、たとえば、抗体が細胞株から生成されている場合に重要である、すなわち、規制の目的のために、たとえば、抗体が薬物を作製するために使用されている場合に抗体が細胞の単一クローンから導出されていることを実質的に保証することができることは重要であり得る。これらのアプリケーションについて、インキュベーションチャンバは、通常は必要なく、したがって、そのようなチャンバのないカートリッジバージョンが採用されてもよい。代替的に、インキュベーションチャンバがバイパスされ得るか、または別のバージョンでは、液滴がインキュベーションなしで以前に説明されているようにインキュベーションチャンバを通過し得るより一般的なカートリッジが実現され得る。
【0105】
微小流体カートリッジの実施形態が、単一クローン性保証に使用され得る一方法は、液滴選別器を使用して単細胞だけを含有する液滴を選択し、空の液滴および2つ以上の細胞を含む液滴を廃棄させることである。液滴中の細胞の数は、たとえば、光学的吸収、散乱光、螢光を検出することによって、または(いくつかの好ましい実施形態では)液滴内の個別の細胞を視覚化し、カウントすることによって、光学的に決定され得る。そのようなアプローチは、空の液滴の形成に向かう強い統計的バイアスにより液滴を生成することによって円滑にされる。典型的には、液滴生成システムは、流れ集束を採用し、ポアソン統計に従う多数の生物学的実体を含有する液滴を生成する。単一クローン性保証は、半分未満の数の液滴が生物学的実体を、好ましくは30%、20%、または10%未満の割合で含有するようにそのようなシステムを動作させることによって円滑にされ、たとえば、システムは、液滴の5%程度のみが単一の実体/単細胞を含有するように動作させられるものとしてよい。
【0106】
これらの技術は、合わさって、単一クローン性の実質的な保証をもたらすことができる、すなわち、ウェル/貯留容器あたり単細胞1つしかない。しかしながら、実施形態において、なおもさらなる保証が望ましく、これは、第1の段階に続く第2の選別段階を追加することによってもたらされるものとしてよい。理論上、第1の段階は、単一の生物学的実体/単細胞を含有する液滴のみが選択された放出チャネルに入ることを許すべきであるとしてもそうである。実施形態において、この第2の選別段階は、液滴分注器と効果的に組み合わされるものとしてよい、すなわち、分注器は、実施形態において、液滴1個あたり定められた数(または数値範囲)の生物学的実体を有する液滴をそれ自体選択するように構成され得る。したがって、液滴排出機構は、液滴が単一の生物学的実体のみ、またはより一般的には、定められた数もしくは数値範囲の生物学的実体を含有しているという確認に応じて、選択的であり得る。都合のよいことに、液滴1個あたりの実体の数/数値範囲の検出は、すでに説明されているように、選択された液滴の速度/位置を感知するために使用されるセンサによってなされるものとしてよい。このようにして、単一クローン性保証の極端に高い程度がもたらされ得る。
【0107】
本発明者らは、単一クローン性保証の特定の適用について説明したが、上で説明されている技術は、特に液滴1個あたりの単一の実体ではなく液滴1個あたりの定められた数の生物学的実体をターゲットとするように適合され得る。例として、たとえば哺乳類細胞ではなく細菌を含有する液滴を操作するときに、数値範囲はより適切であり、これは、液滴1個あたり数十個の有機体、たとえば、液滴1個あたりの25〜35個の実体を定め得る。
【0108】
技術のなおもさらなるアプリケーションにおいて、上で説明されている一般的な種類の微小流体カートリッジは、「融合アッセイ」または機能アッセイ動作モードを備えるものとしてよい。
【0109】
この動作モードを提供するために、微小流体カートリッジは、少なくとも2つの投入チャネルおよび少なくとも1つの放出チャネルを有する液滴融合領域を備え、選別領域への投入部とする(インキュベーション領域は、存在する場合に、選別領域の前または後のいずれかにあり得る)。当業者であれば、物理的融合技術および電界または他の界を採用して液滴融合を引き起こす技術を含む、マイクロドロップレットを融合させる多くの技術がある(いくつかの例は、本発明者らの以前の出願である特許文献1(参照により本明細書に組み込まれている)において説明されている)。大まかに言えば、液滴融合領域は、融合された液滴が組み合わされた実体の間の潜在的に希である相互作用に基づき選択され得るように選別領域の上流で生物学的実体を組み合わせるために使用される。以前に説明したように、融合されるべき液滴を含む2つ(またはそれ以上)のエマルジョンは、カートリッジ上で、またはカートリッジから離れて生成され得る。いくつかの好ましい実施形態において、そのようなシステムは、一方の生物学的実体が他方に耐性を示すときに非常に希な事例、潜在的に100万分の1または10億分の1の確率まで下がる事例を識別するために使用され得る。したがって、例は、HIVによる感染に耐性を示すT細胞または食細胞に耐性を示す細菌を含むものとしてよく、当業者であれば、システムの実施形態が他の類似の状況を識別するために使用され得ることを理解することが容易にできるであろう。ここでもまた、当業者であれば認識するであろうが、細胞選別は様々な物理的特性のうちのどれか、典型的には光学的特性に基づくものとしてよく、一アプローチでは、液滴内の実体が生きているか死んでいるかの決定が行われる。
【0110】
本発明者らは、2つの放出チャネルを有する選別領域を説明したが、原理上、3つ以上の放出チャネルが、たとえば、実体の混合集団を選別してグループまたはカテゴリに分けるために用意されてよい(複数のチャネルに選別することは、たとえば、電極対を使用して電界を印加し液滴を選択的に向き付けることによって達成され得る)。たとえば、発酵を意図した細胞の集団において、この集団は、選別されて高、中、および低の産生効率のグループに分けられてよく、たとえば、中産生効率を有する細胞は、その後、大規模発酵システムにおいてより頑丈であるため高い産生効率を有するものよりも望ましいという可能性もある。したがって、そのような配置構成において、放出チャネルのうちの1つまたは複数が選択された液滴の含有物を回収してさらなる処理/分析を行うために採用され得ることは理解されるであろう。
【0111】
カートリッジの実施形態において、使用時に、大まかに言って、サンプルおよび油がカートリッジの1つのエッジにある別個の殺菌済み貯留容器内に装填され(カートリッジは、垂直に、または好適な角度で装着される)、エマルジョンが生成される。エマルジョンは、ポンプでインキュベーションチャンバに送られ、そこで、液滴が上方へ浮遊し、過剰な油が廃棄される。次いで、インキュベーションチャンバは、たとえば、数分間から数時間の期間にわたって37℃に加熱され、次いで、たとえば、約8℃まで冷却され、代謝を制限する。次いで、液滴集団は、選別領域に移動され(ポンプにより)、そこで、ターゲット液滴が選択され、そこから保持領域へ移動され、再び、過剰な油を取り除き(過剰分をサイホンで吸い上げるか、または廃棄させることができる)、次いで、液滴は保持領域から1つずつ放出され(追加の油が加えられてこのプロセスを円滑にする)、分注領域に移動され、そこで、液滴排出機構が選択された液滴を液滴用の共通または個別の貯留容器内に排出する。
【0112】
本発明者らは、特に液滴生成、液滴インキュベーション、液滴選別、液滴保持(「緩衝」)、および液滴分注のための、多数の液滴処理領域を有し得るカートリッジについて説明した。実施形態において、カートリッジはモジュール式のカートリッジであり、これらの機能の一部または全部を実行する別々のモジュールが望み通りに取り付けられ得る基部または基材を有する。これは、そのような配置構成のモジュール間の標準的なインターフェースまたは一組のインターフェースを有することによって円滑にされ得る。
【0113】
本発明の関係する態様において、液滴中に1つまたは複数のターゲット実体を供給するための微小流体システムが実現され、この微小流体システムは、前記液滴が前記1つまたは複数のターゲット実体を含有するかどうか、および前記1つまたは複数のターゲット実体の特性のうちの一方または両方を検出するための第1の検出器を備え、微小流体システムは、前記検出の結果に応じて前記液滴を選別するための選別デバイスと、1つまたは複数のターゲット位置で前記選別された液滴を分注するための液滴分注ユニットとをさらに備え、前記微小流体システムは、前記ターゲット位置を前記第1の検出器で検出された前記1つまたは複数のターゲット実体の前記特性と相関させるように構成される。
【0114】
これによって、液滴は、マイクロタイタープレートの個別のウェル内に、または別の培地上に分注され得る。液滴は、第1の検出器における検出結果に基づき分注され得るので、特定のターゲット位置(たとえば、マイクロタイタープレートのウェルであってよい)にある液滴は、全体としておよび/またはその構成要素(もしあれば)として液滴の特性に相関し得る。これらの特性は、限定はしないが、蛍光レベル、散乱発光レベル、吸光度レベル、伝導レベル、ならびに他の化学的および/または地理的特性のうちの1つまたは複数であってよい。
【0115】
したがって、たとえば、本発明者らが説明している方法/システムの実施形態は、本発明のこの態様および他の態様の両方に従って、どの液滴/貯留容器(たとえば、マルチウェルプレートのどのウェル)がどの特性を有するかを決定するために使用され得る。これは、どのようなアッセイまたは試験が微小流体システムによって実行されるかに特定の仕方で応じて細胞または生物学的実体を識別し、より具体的には、その試料を供給することができるように後で使用され得る(なぜなら、識別された特性を有するターゲット実体/液滴は識別されたウェル内に保持され、実施形態において、どの液滴/細胞/実体がどの貯留容器/ウェル内に分注されるかを示すログの記録が保持されるから)。
【0116】
代替的に、選別され分析された液滴は、単一の貯留容器内に分注され得る。
【0117】
液滴がどのターゲット位置に分注され得るかに関する決定が下され得る前に液滴および/またはその構成要素のさらなる分析を1回以上実行することが好ましい場合がある。
【0118】
したがって、好ましい一実施形態において、微小流体システムは、前記1つまたは複数のターゲット実体の前記特性を検出するための第2の検出器をさらに備え、前記液滴分注ユニットは、前記ターゲット位置を前記第2の検出器で検出された前記1つまたは複数のターゲット実体の前記特性と相関させるようにさらに構成される。
【0119】
これらの1回以上のさらなる分析は、これによって、たとえば、液滴中の1つまたは複数のターゲット実体、特に、特定の数値のターゲット実体を識別する確率、および/または特定の特性(たとえば、蛍光レベルの特定の範囲内にあり得る、特定の蛍光レベル)を有する1つまたは複数のターゲット実体を識別する確率を高め得る。
【0120】
微小流体システムのさらなる好ましい実施形態において、液滴分注ユニットは、前記液滴を第1の流体流路から第2の流体流路に移送するための第2の選別デバイスを備え、前記第2の選別デバイスは、前記液滴を前記第1の流体流路からデカップルするためのデカップラと、前記デカップルされた液滴を前記第2の流体流路に誘導するためのガイドとを備え、前記ガイドは、前記デカップルされた液滴を前記第2の流体流路に輸送するために回転されるように構成されている回転ユニット、および/または前記デカップルされた液滴を前記第2の流体流路に輸送するために並進方向に移動されるように構成されている並進ユニットを備える。
【0121】
第2の選別デバイスは、事前分析に基づき注目している液滴を分離するために使用され得る。したがって、分注された液滴が液滴中に1つまたは複数のターゲット実体、特に、特定の個数のターゲット実体を、および/または特定の特性を持つ1つまたは複数のターゲット実体を有する確率は、液滴を第1の流体流路から分離することによって高められ得る。
【0122】
微小流体システムのさらなる好ましい一実施形態において、液滴分注ユニットは、投入チャネルおよび複数の放出チャネルを備える微小流体チャネル接合部を具備し、前記液滴分注ユニットは、前記第1および/または第2の検出器を介して前記検出結果に基づき前記液滴が前記複数の放出チャネルのうちのどのチャネルに誘導されるかを制御するように構成される。
【0123】
したがって、好ましくは、注目していない液滴は、廃棄され得る。他の液滴は、液滴が第1および/または第2の検出器における以前の分析結果に基づき微小流体システムから分注される間にその構成要素(もしあれば)の特性に従って選別され得る。
【0124】
さらなる1つもしくは複数の検出器および/または分析器が微小流体システム内で活用されるものとしてよく、微小流体システムからの液滴の分注は、1つもしくは複数の検出器および/または分析器におけるこれらのさらなる分析のうちの1つまたは複数と相関し得ることは理解されるであろう。
【0125】
微小流体システムの好ましい一実施形態において、液滴分注ユニットは、前記液滴分注ユニットの流体流路内の圧力を変化させて前記液滴が前記複数の放出チャネルのうちのどれに誘導されるかを制御するための圧力変調ユニットを備える。たとえば異なる放出チャネルの間の圧力を変化させることによって、液滴は、液滴の以前の分析または検出結果に応じて特定の放出チャネルの方へ誘導され、この放出チャネルから分注され得る。
【0126】
代替的に、またはそれに加えて、液滴の分注元となる放出チャネルを制御するステップは、加熱装置を使用して液滴の温度を制御するステップ、圧電電極を使用するステップ、音響アクチュエータを使用するステップ、ならびに液滴の他の物理的および/または機械的特性を利用するステップのうちの1つまたは複数によって制御され得る。
【0127】
微小流体システムのさらなる好ましい実施形態において、第1の前記放出チャネルが、概ね前記投入チャネルの流体流路方向で前記投入チャネルに接続され、第2の前記放出チャネルは、前記投入チャネルから枝分かれし、前記液滴分注ユニットは、前記第2の放出チャネルに接続されているポンプをさらに備え、前記ポンプは、前記投入チャネルから前記液滴を吸い上げるように構成され、前記圧力変調ユニットは、前記第1および/または第2の検出器内の前記検出に応答して前記投入チャネル内の圧力を高めて、前記第1の放出チャネルを介して前記液滴を排出するように構成される。
【0128】
注目している液滴が検出された後、圧力は投入チャネル内で高められるものとしてよく、それにより、液滴は、第2の放出チャネル内にポンプで吸引される代わりに、第1の放出チャネルに送られる。
【0129】
代替的に、投入チャネルの圧力は、一般的に、液滴が投入チャネル内の圧力変化なしで第1の放出チャネルに送られるように閾値よりも高くしてよいことは理解されるであろう。注目している液滴が検出された後、投入チャネル内の圧力は、ターゲット液滴がポンプで第2の放出チャネル内に吸引されるように減じられ得る。
【0130】
好ましい一実施形態において、微小流体システムは、1つまたは複数の液滴保持領域をさらに備え、前記保持領域は、前記選別デバイスと前記液滴分注ユニットとの間に配置され、前記保持領域は、前記液滴分注ユニットへの前記選別された液滴の流れを制御するように構成される。この実施形態は、液滴分注ユニット内への液滴の流れのより精度の高い正確な制御を可能にする。
【0131】
さらなる好ましい一実施形態において、微小流体システムは、前記微小流体システムの異なる場所で(異なる時点に)前記液滴を検出して前記微小流体システム内の前記液滴の速度を決定するための複数のセンサをさらに備え、前記選別デバイスは、前記速度決定の結果に応じて前記液滴を選別するように構成される。これは、微小流体システム内の液滴の場所が決定され、および/または予測されるものとしてよく、選別デバイス内で液滴を選別するステップの制御を改善することを可能にするので特に有利であり得る。
【0132】
本発明のさらなる関係する態様において、微小流体チップが実現され、これは、1つまたは複数の生物学的実体を含有するマイクロドロップレットを生成するための液滴生成領域と、前記生物学的実体をインキュベートし、および/または貯蔵するための液滴インキュベータおよび/または貯蔵領域と、前記生物学的実体の1つまたは複数の特性に基づき前記マイクロドロップレットを選別するための液滴選別領域と、前記選別されたマイクロドロップレットを分注するための液滴分注領域とを備え、前記液滴生成領域、前記液滴インキュベータおよび/または貯蔵領域、前記液滴選別領域、および前記液滴分注領域は、前記微小流体チップの単一チップ設計上に組み込まれる。
【0133】
微小流体チップは、殺菌、使いやすさを確実にし、生成器、インキュベータ、選別チップ、および分注器が単一の微小流体チップに組み込まれるために著しいコスト削減をもたらし得る。
【0134】
好ましい一実施形態において、微小流体チップは、前記領域の間の前記マイクロドロップレットの微小流体流路を変更するための微小流体流路迂回ユニットと、前記微小流体流路迂回ユニットを制御するための第1のプロセッサを備える制御ユニットとを具備する。これは、微小流体チップの特定の1つまたは複数の部分、たとえば、インキュベーション領域は省かれ得るので好ましい場合があり、したがって、特定の1つまたは複数の液滴を処理するためには使用され得ない。
【0135】
様々な弁が微小流体チップ上に設けられるものとしてよく、これらは微小流体チップの異なる領域を通るマイクロドロップレットの流れまたは流量を制御することを可能にする。
【0136】
好ましい一実施形態において、微小流体チップは、液滴インキュベータおよび/または貯蔵領域で(および/または他の特定の領域で)液滴を局所的に加熱するための加熱装置をさらに備え、前記加熱装置を制御するための第2のプロセッサをさらに備える。第1および第2のプロセッサは、単一のプロセッサであってよい。したがって、実施形態は、有利には、微小流体チップの特定の場所または領域でのみ液滴およびその構成要素を加熱することを可能にするものとしてよく、したがって、微小流体チップの他の領域内の液滴の加熱は回避され得る。
【0137】
さらなる好ましい一実施形態において、微小流体チップは、液滴インキュベータおよび/または貯蔵領域で(および/または他の特定の領域で)液滴を局所的に冷却するための冷却装置をさらに備え、前記冷却装置を制御するための第3のプロセッサをさらに備える。第1、第2、および/または第3のプロセッサは、単一のプロセッサであってよい。したがって、実施形態は、有利には、微小流体チップの特定の場所または領域でのみ液滴およびその構成要素を冷却することを可能にするものとしてよく、したがって、微小流体チップの他の領域内の液滴の冷却は回避され得る。
【0138】
加熱(および適宜冷却)を行える実施形態は、微小流体チップの1つまたは複数の特定の領域で、たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応を行わせることを可能にし得る。
【0139】
微小流体システム、液滴選別または分注デバイス、液滴分注器、微小流体デバイス、微小流体カートリッジ、マイクロドロップレット処理システム、および生物学的実体のマイクロドロップレットベースの処理のための器具に関して上で説明されている好ましい実施形態は、微小流体チップにおける好ましい実施形態としても実装され得る。
【0140】
マルチモード動作
別の態様において、本発明は、生物学的実体の微小流体液滴ベースの処理のための器具を実現し、この器具は、生物学的実体を含む液滴の1つまたは複数の油中水型エマルジョンを生成するための液滴生成システムと、前記液滴を処理するため液滴処理システムと、処理された前記液滴を1つまたは複数の貯留容器内に分注するための液滴分注システムとを備え、前記液滴処理システムは、少なくとも単一クローン性動作モードとアッセイ動作モードとを含む複数の異なる動作モードに対して構成可能である。
【0141】
実施形態において、液滴処理システムは、少なくとも液滴選別機能/ユニットを備え、単一クローン性動作モードは、生物学的実体による液滴の占有度に基づき液滴を選別することを含む。アッセイ動作モードは、選別の前に、液滴を、好ましくはただし本質的ではなく液滴インキュベーションユニット内で、インキュベートすることを含む。次いで、選別は、インキュベーション時に生物学的実体の産生物に基づくものとしてよい。液滴処理システムは、少なくとも1つの液滴融合ユニットをさらに備えるものとしてよく、次いで、動作モードは、融合アッセイモードを含むものとしてよく、一方の一組の液滴中の生物学的実体と第2の一組の液滴中の物質、たとえば、他の生物学的実体との組合せの結果に基づき選別を行う。実施形態において、液滴処理システムは、1つまたは複数の交換可能な、またはモジュール式カートリッジ内に具現化される、すなわち、たとえば、異なる動作モードの各々について異なるカートリッジが用意され得るか、または代替的に、選別機能、インキュベーション機能、分注機能、および同様のものなどの異なる液滴処理機能がカートリッジ基材上に選択的に組み立てられ得るモジュール式カートリッジが採用され得る。
【0142】
より詳細には、単一クローン性動作モードは、生物学的実体、典型的には細胞を、好ましくは空の液滴の大半に向けてバイアスされる方式で、液滴内にカプセル化することを含み得る。次いで選別ユニットにおいて単細胞によって占有されていると識別される液滴は、液滴分注ユニットへ選択的に向けられ、そこで、処理され分注される。実施形態において、単一の液滴が個別のウェルまたは貯留容器内に分注され得るが、2つ以上の液滴を貯留容器もしくはウェル内に分注することも許容可能であるものとしてよい。たとえば、実体または細胞がさらなる処理のために再注入されることになっている場合、ウェル/貯留容器は、より多くの液滴を保持し得る。
【0143】
アッセイモードでは、液滴1個あたり複数の実体/細胞、たとえば、液滴1個あたり2または3個の細胞をカプセル化することが許容可能であり得る。次いで、実施形態において、これらは、インキュベーションチャンバに送られ、そこで、温められ、代謝してタンパク質または同様のものなどの産生物を産生する。典型的には、産生物は、液滴内の1つまたは複数の試薬と反応して、測定可能な信号、たとえば、蛍光信号を発生し、次いで、これは液滴を選別し、たとえば最良の産生体を回収し、分注するために使用され得る。適宜、選別ユニットは、特にインキュベーション前に空の液滴を取り除くために、インキュベーション領域の前に設けられるものとしてよい。これは、インキュベーションチャンバの容積を減らすのに役立ち、液滴生成/実体カプセル化の結果、大きなパーセンテージの空の液滴が生じる場合に特に有益であり、使用されるプロセスによっては、液滴の90%以上が空であり得る。
【0144】
安定性アッセイモードと称され得る、別のアッセイモードでは、類似のインキュベーション、選択、および分注プロセスが採用され得るが、初期集団のサブグループを識別することを目指している。そのようなサブグループは、たとえば薬剤生産のために、典型的にはタンパク質の最適な産生を示すサブグループであってよい。最適な産生は、必ずしも最大の産生である必要はないが、たとえば、安定した産生(時間とともに減衰するのではなく一定期間にわたって維持される産生)、または(広い)範囲の環境条件にわたって維持される産生であってよい。したがって、そのような安定性アッセイの実施形態は、安定した産生体である実体を識別する、たとえば、発酵プロセスなどの産生プロセス、または産生プロセスの品質管理のために産生体を選択するために採用され得る。実施形態において、実体は、液滴内に1つまたは複数の試薬とともにカプセル化され、次いでインキュベートされ、その後、蛍光信号などの測定可能な信号を探し、次いで、それを使用して、実体のターゲット部分集団を区別し、1つまたは複数の貯留容器における分注および回収を行うものとしてよい。
【0145】
さらなる一態様において、融合動作モードでは、典型的な手順は二組の液滴を生成するステップであって、少なくとも1つは生物学的実体をカプセル化する、ステップを伴い、これらは、予め生成され、それぞれの貯留容器内に用意され得るか、またはたとえば、オンカートリッジで生成され得る。次いで、融合アッセイは、液滴融合、インキュベーション、選別、および分注を含み得る。適宜、事前選別が、以前に説明されているようにインキュベーション前に、および/または液滴融合後に採用され得る。たとえば、毒物学的研究、環境研究、メタゲノム研究、薬物摂取の研究、または同様のもののために融合アッセイが採用され得る。たとえば、後者の場合には、薬物が知られている濃度で一組のマイクロドロップレットに入れて供給されるものとしてよく、次いで、薬物の濃度は、インキュベーション(離れた場所で、または一定分量を取ることによって)の後測定され、薬物摂取が推論され得る薬物の濃度の変化を決定するものとしてよい。
【0146】
上で説明されている動作モードの各々について、実施形態では、分注ユニットは、追加の選択ステップももたらし得る、すなわち、液滴分注システムは、液滴選別および分注の組み合わされた段階を備え得る。
【0147】
本発明のこれらおよび他の態様は、添付図面を参照しつつ、例のみを用いて、さらに説明される。