(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779923
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】車両の操作要素における力シミュレーション用の装置、特にペダル力シミュレータ
(51)【国際特許分類】
G05G 5/03 20080401AFI20201026BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20201026BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20201026BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
G05G5/03 Z
G05G1/30 E
B60T8/17 B
B60T7/06 E
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-566385(P2017-566385)
(86)(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公表番号】特表2018-533093(P2018-533093A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】DE2016200347
(87)【国際公開番号】WO2017032367
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2019年7月26日
(31)【優先権主張番号】102015216146.3
(32)【優先日】2015年8月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル バスラー
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ホンゼルマン
【審査官】
小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第02896539(EP,A2)
【文献】
独国特許出願公開第102008061569(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 5/03
B60T 7/06
B60T 8/17
G05G 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操作要素における力シミュレーション用の装置であって、
ハウジング(10)と、
前記ハウジング(10)内において軸方向で変位可能なピストン(20)であって、ピストンロッド(30)を介して前記操作要素に結合されているピストン(20)と、
少なくとも一部が前記ハウジング(10)内に配置されているばね要素(40)と、
を備える力シミュレーション用の装置において、
前記ピストン(20)は、変化する横断面を有し、前記操作要素による操作時、前記ばね要素(40)内に係合し、
前記ばね要素(40)には、前記ピストン(20)と相互作用関係にあるロール体(70,80)が配置されており、
前記ばね要素(40)は、少なくとも第1および第2のばね部分(50,60)からなり、前記第1および第2のばね部分(50,60)は、互いに結合されており、
2つの前記ばね部分(50,60)間にスペーサ(90)が配置されていることを特徴とする力シミュレーション用の装置。
【請求項2】
前記ばね部分(50,60)は、前記ロール体(70,80)が配置されているそれぞれ1つの第1の端部(50.1,60.1)と、それぞれ1つの第2の端部(50.2,60.2)とを有し、前記ばね部分(50,60)は、前記第2の端部(50.2,60.2)において、互いに結合されていることを特徴とする、請求項1記載の力シミュレーション用の装置。
【請求項3】
2つの前記ばね部分(50,60)と前記スペーサ(90)とは、前記第2の端部(50.2,60.2)の領域でピン状の結合手段(100)を介して互いに位置合わせされ、かつ互いに固定されていることを特徴とする、請求項2記載の力シミュレーション用の装置。
【請求項4】
前記ピン状の結合手段(100)は、ボルトの形態で2つの前記ばね部分(50,60)および前記スペーサ(90)を貫いて係合し、外側から少なくとも1つの固定要素(110,120)により止められていることを特徴とする、請求項3記載の力シミュレーション用の装置。
【請求項5】
2つの前記ばね部分(50,60)は、略同一に形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の力シミュレーション用の装置。
【請求項6】
前記ばね部分(50,60)は、打ち抜かれていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の力シミュレーション用の装置。
【請求項7】
前記ピストンロッド(30)の外側に、かつ少なくとも一部前記ハウジング(10)の外側に、蓄力手段(130)が設けられていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の力シミュレーション用の装置。
【請求項8】
前記蓄力手段(130)は、前記ピストンロッド(30)、または前記ピストンロッド(30)に配置される支持要素(140)と、前記ハウジング(10)とに支持されていることを特徴とする、請求項7記載の力シミュレーション用の装置。
【請求項9】
前記ばね要素(40)は、板ばねであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の力シミュレーション用の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操作要素における力シミュレーション用の装置、特にペダル力シミュレータであって、ハウジングと、ハウジング内において軸方向で変位可能であり、ピストンロッドを介して操作要素に結合されているピストンと、少なくとも一部、特に全体がハウジング内に配置されているばね要素と、を備える力シミュレーション用の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クラッチペダルとクラッチとの間に直接的な機械的または液圧的な接続関係が存在しない操作システムが公知である。このような操作システムでは、ペダルまたはペダル力シミュレータ内に設けられたセンサが、ペダルの操作を検知し、相応してクラッチのレリーズまたはエンゲージを制御する。レリーズのために必要なクラッチペダルの操作力は、クラッチからの逆向きの力がないことに基づいて、もはや存在しない。このクラッチ操作に運転者が違和感を覚えることがないように、クラッチペダルの操作時の力の経過をシミュレートしなければならない。これは、クラッチペダルに作用するいわゆるペダル力シミュレータによって実現される。
【0003】
本件出願時には未公開のDE 10 2015 215 961.2において、操作要素、例えばクラッチペダルにおける力シミュレーション用の装置であって、軸方向で変位可能なピストンが内部に収められたハウジングを備える装置が知られている。ピストンは、変化する横断面を有するスライドガイド機構構成部材(Kulissenbauteil)を有し、スライドガイド機構構成部材は、同じくハウジング内に配置されているばね要素内に押し込まれる。代替的に、ばね要素の方が、横断面が変化する輪郭を有し、この横断面が変化する輪郭内に、ピストン構成部材が、場合によってはピストン構成部材に取り付けられたロールとともに、押し込まれる。この場合、ピストン構成部材は、変化する横断面を有しない。スライドガイド機構構成部材またはばね要素の横断面変化により、力の経過またはペダル力特性線をシミュレート可能である。ばね要素は、この装置では一体に形成されており、製造に際し、高いレベルの精度および品質を必要とする。特にばね要素は、フライス加工により製造される。この製造は、手間を要し、高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、従来技術において知られる欠点が克服される、車両の操作要素における力シミュレーション用の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は、請求項1に記載の力シミュレーション用の装置によって解決される。有利な構成は、従属請求項からもたらされる。
【0006】
上記課題は、車両の操作要素における力シミュレーション用の装置、特にペダル力シミュレータであって、ハウジングと、ハウジング内において軸方向で変位可能なピストンであって、ピストンロッドを介して操作要素に結合されているピストンと、少なくとも一部、特に全体がハウジング内に配置されているばね要素と、を備える力シミュレーション用の装置によって解決される。本発明によると、ピストンが、変化する横断面を有し、操作要素による操作時、ばね要素内に係合し、ばね要素には、ピストンと相互作用関係にあるロール体が配置されており、ばね要素は、少なくとも第1および第2のばね部分からなり、第1および第2のばね部分は、互いに結合されている。
【0007】
ばね部分間の結合は、形状結合(formschluessig)および/または力結合(kraftschluessig)を介して実施可能である。素材結合(stoffschluessig)を介して結合を形成することも可能である。
【0008】
ばね要素を本発明のように構成したことで、ばね部分は個々に製造可能である。これにより製造が簡単になり、コストが低下する。
【0009】
ピストンは、好ましくはピストン要素と、変化する横断面を有する外側輪郭を有するスライドガイド機構構成部材とを有し、ばね要素には、運動時に支持され、スライドガイド機構構成部材の外側輪郭に沿って転動する2つのロール体が配置されている。有利には、スライドガイド機構構成部材の外側輪郭は、略中央に最大の横断面を有する。横断面の変化によって、最大の横断面がどの位置に配置されているかによって、まず増加し、その後再び減少する反力が形成される。これにより、運転者には、触覚的にクラッチを操作しているという感覚が伝えられる。
【0010】
一実施形態では、ばね要素は、堅固にハウジング内に位置決めされている。これにより、ピストンが動いたときに、ばね要素がその所定の位置から動かないことが保証され、これにより、高い信頼性をもって力特性線を模擬することが保証されている。しかし、これとは異なり、ピストンがハウジングに固定され、ばね要素が操作要素に結合されていてもよく、この場合、ばね要素は、運転用ペダルによる操作時、ピストンに向かって押される。
【0011】
一変化形態では、両ロール体が反転する(gegenlaeufig)ように形成されている。これにより、ロール体自体がロックしてしまわないようになっている。ロール体は、特にニードルスリーブ、ロールまたはその他の形態のベアリングとして形成されている。好ましくは、ばね要素の、ロール体を支持する腕は、互いに略平行に延びている。これにより、ロール体の転動性が促進され、かつ、ばね要素の腕が互いに離間または接近するように移動することで、ロール体が噛んで動かなくなってしまうことが確実に阻止される。
【0012】
好ましい一形態では、ばね部分は、ロール体が配置されているそれぞれ1つの第1の端部と、それぞれ1つの第2の端部とを有し、第2の端部において、ばね部分は、互いに結合されている。
【0013】
好ましくは、2つのばね部分間にスペーサが配置されている。スペーサの設計により、両ばね部分間の間隔を個別に調整可能である。
【0014】
好ましくは、2つのばね部分とスペーサとは、第2の端部の領域でピン状の結合手段を介して互いに位置合わせされ、かつ互いに固定されている。このためにばね部分は、第2の端部の領域に収容部、特に孔を有している。スペーサも、特に貫通孔を有している。
【0015】
別の好ましい実施形態では、ピン状の結合手段は、ボルトの形態で形成されており、ボルトは、2つのばね部分およびスペーサを貫いて係合し、ボルトは、外側から少なくとも1つの固定要素により止められている。その際、ボルトは、特にピストンロッドの中心軸線に対して略垂直に配置されており、スペーサおよびばね部分の収容部または孔を完全に貫いて係合する。ボルトの端部は、ばね部分の半径方向外側において突出し、この領域で少なくとも1つの固定要素により止められる。特に2つの固定要素が設けられており、固定要素は、ボルトの端部をばね部分の第2の端部の領域で止める。その際、固定要素は、特に力結合および/または形状結合を介してボルトの端部に結合されている。したがって、固定要素とピン状の結合手段との間で、例えばねじ結合、プレス結合または接着結合等の各種結合形態が可能である。ピン状の結合手段および固定要素は、特に完全にハウジング内に配置されている。
【0016】
別の実施形態では、ばね要素は、軸方向でキャップ状またはU字形の閉鎖要素により保持される。その際、キャップ状の閉鎖要素は、特にハウジングの、ピストンロッドとは反対側において、力結合および/または形状結合を介してハウジングに結合される。このとき、固定要素は、好ましくは直接、キャップ状の閉鎖要素に当接する。さらに閉鎖要素には、略中央に開口が設けられている。この開口は、キャップを他の方法で固定することができる場合は、省略可能である。
【0017】
別の好ましい実施形態では、ばね要素の2つのばね部分は、互いに略同一に形成されている。好ましくは、ばね部分は打ち抜かれる。これにより、製造が簡単になり、より低コストなものとすることができる。特に好ましくは、ばね要素は板ばねである。
【0018】
好ましくは、ピストンロッドの外側に、かつ少なくとも一部ハウジングの外側に、蓄力手段、特に圧縮ばねの形態の蓄力手段が設けられている。蓄力手段は、好ましくは、一方では、ピストンロッドに取り付けられた支持要素に支持されるか、または直接ピストンロッドに支持されるとともに、ハウジング内に設けられた収容部に支持される。支持要素の結合は、形状結合、力結合または素材結合を介して実施可能である。好ましくは、支持要素は、ピストンロッドと一体に形成されていてもよい。その際、収容部の直径は、圧縮ばねの最大の直径と略同じ大きさである。圧縮ばねまたは蓄力手段をハウジング外に配置したことは、ペダル力シミュレータの内部により多くのスペースを板ばねのために形成することができ、これにより、板ばねをより強いものにすることができるという利点を有する。圧縮ばねは、ピストンロッドに結合、特に直接結合されている。
【0019】
本発明の上記課題は、車両の操作要素における力シミュレーション用の装置、特にペダル力シミュレータであって、ハウジングと、ハウジング内において軸方向で変位可能なピストンであって、ピストンロッドを介して操作要素に結合されているピストンと、少なくとも一部、特に全体がハウジング内に配置されているばね要素と、を備える力シミュレーション用の装置において、ばね要素の内側輪郭が、変化する横断面を有し、ピストンには、ばね要素の内側輪郭と相互作用関係にあるロール体が配置されており、かつばね要素は、少なくとも第1および第2のばね部分からなり、第1および第2のばね部分は、形状結合および/または力結合を介して互いに結合されている、力シミュレーション用の装置によっても解決することができる。
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来技術による力シミュレーション用の装置の断面図である。
【
図2】本発明に係る力シミュレーション用の装置の断面図である。
【
図2a】
図2に示した力シミュレーション用の装置内に配置するばね要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本件出願時には未公開の従来技術において知られている力シミュレーション用の装置を示している。この装置は、ハウジング1を備えており、ハウジング1内では、ピストン2が軸方向で変位可能である。ピストン2は、ピストンロッド3を介して操作要素、例えばクラッチペダルに結合されている。半径方向でピストンロッドの外側には、ベローズの形態の汚損防止手段5が設けられている。汚損防止手段5は、ピストンロッド3とハウジング1とに固定されて、異物粒子がシリンダ内部に侵入するのを阻止する。ピストンロッド3は、符号を付して詳細に示すことはしないピストンロッドヘッドを有し、ピストンロッドヘッドは、ピストン2のジョイントソケット内で支持されている。ピストン2は、ピストン要素とスライドガイド機構構成部材とからなっており、ピストン要素とスライドガイド機構構成部材とは、互いに結合されている。スライドガイド機構構成部材は、変化する横断面を有し、操作要素が操作されると、軸方向でばね要素4内に押し込まれる。
【0023】
ばね要素4は、フォーク状に形成されており、2つのばね腕を有する。
図1から看取可能であるように、ばね要素4は、一体に形成されており、ゆえに製造に手間を要し、かつ高価である。各ばね腕には、ロール体7,8が1つずつ取り付けられており、ピストン2は、軸方向で移動する際、ロール体7,8上を転がるようにして移動する。さらに装置内では、ばね13がピストン2とハウジング1とに支持されている。操作要素を操作すると、ばね13と、ピストン2またはスライドガイド機構構成部材の変化する横断面とにより、運転者がクラッチペダルを操作したときに液圧式のレリーズシステムであれば感じたであろう力特性線に略相当する力特性線が形成される。
【0024】
図2は、特に一体に形成されるハウジング10を備える力シミュレーション用の装置を示している。しかし、装置をより組み立てし易いものとすべく、ハウジング10を複数の部分、例えば2つの部分から形成することも可能である。シリンダ状のハウジング10は、好ましくはプラスチックから形成されている。しかし、ハウジング10を金属から製造することも可能である。
【0025】
ハウジング10内には、ピストン20が設けられている。ピストン20は、好ましくはピストン要素とスライドガイド機構構成部材とからなる。スライドガイド機構構成部材は、変化する横断面を有する。ピストン20は、特に完全に金属から形成されている。しかし、ピストン20の一部または全体を別の材料、例えばプラスチックから製造することも可能である。ピストン要素は、スライドガイド機構構成部材に形状結合および/または素材結合および/または力結合を介して結合されている。特にピストン要素は、ねじ結合を介してスライドガイド機構構成部材に結合される。しかし、ピストン要素とスライドガイド機構構成部材とを一体にまたはワンピースに形成することも可能である。
【0026】
ピストン要素は、好ましくは円柱状に形成されており、好ましくは両端面の略中央に開口を有している。スライドガイド機構構成部材との結合に用いられる開口は、特に段付き孔として構成されている。ピストン要素の他の開口は、ピストンロッド30との結合に用いられる。符号Mを付した装置の中心軸線は、軸方向でピストンロッド30を通って延びている。
【0027】
ピストンロッド30は、ピストンロッドヘッドを有し、ピストンロッドヘッドは、ピストン要素とともに配置されるまたはピストン要素に接して配置されるジョイントソケット内に相互作用関係にある。ピストンロッド30は、金属またはプラスチックから形成することができる。ピストンロッドヘッドの領域における摩耗を最小化すべく、ピストンロッド30は、コーティングまたは低摩耗の収容部分を有していてもよい。
【0028】
ピストン20、特にピストン要素は、半径方向の拡張部により、ハウジング内壁に設けられた段部に軸方向で止められる。これにより、ハウジング内壁に設けられた段部は、軸方向aでのピストン20用のストッパとして用いられる。
【0029】
さらにハウジング10は、ピストンロッド30側の端部に、ハウジング内壁に設けられた別の段部により形成される第2のストッパ面を有している。第2のストッパ面は、蓄力手段130を支持するために用いられる。蓄力手段130は、特に圧縮ばねの形態で形成されている。ピストンロッド30には、支持要素140が力結合および/または形状結合および/または素材結合を介して取り付けられる。特に支持要素140は、雌ねじ山を有し、支持要素140の雌ねじ山は、ピストンロッド30の雄ねじ山と相互作用関係にある。軸方向で止めるために、支持要素140を所定の位置に保つ特にナットまたはこれに類するものが設けられている。支持要素は、同じく半径方向の拡張部により形成されるストッパ面を蓄力手段130のために有している。ピストンロッド30の半径方向外側には、好ましくは、粒子の侵入を阻止する汚損防止手段、例えば弾性的なベローズの形態の汚損防止手段が設けられていてもよい。この汚損防止手段(図示せず)は、ピストンロッド30および/または支持要素140ならびにハウジング10に固定されることができる。
【0030】
これにより、クラッチペダルの形態の操作要素が操作されると、ピストンロッドは、軸方向aで移動する。これにより、支持要素140と、ハウジング10内に設けられたストッパ面との間に配置される蓄力手段130は、圧縮される。運転者は、操作方向とは逆向きに方向付けられた反力を感じる。ピストンロッド30の軸方向の操作により、ピストン20は、同じく軸方向で移動する。これにより、ピストン20、具体的にはピストンのスライドガイド機構構成部材は、ハウジング10内に配置されるばね要素40内に移動する。
【0031】
ばね要素40は、少なくとも2つのばね部分50,60を有している。ばね部分50,60は、特に金属から形成され、打ち抜きにより製造されている。ばね部分50,60は、それぞれ、第1の端部50.1,60.1と、第2の端部50.2,60.2とを有している。ばね部分50,60は、ばね部分50,60の第1の端部50.1,60.1の領域に、ロール体70,80を有している。ロール体70,80は、ピストン20に支持されるように、ばね部分50,60の内側に取り付けられる。ばね部分50,60の第2の端部50.2,60.2の領域では、各ばね部分50,60内に、孔の形態の収容部が設けられている。半径方向でばね部分50,60間には、スペーサ90が配置されている。
【0032】
スペーサ90の構成によって、ばね部分50,60間の間隔を調整可能である。スペーサ90は、略中央に同じく貫通孔の形態の収容部を有している。ばね部分50,60とスペーサ90とは、ピン状の結合手段100、特にボルトの形態の結合手段100を介して互いに結合され、互いに位置合わせされる。
【0033】
ピン状の結合手段100は、2つの端部を有し、両端部は、それぞればね部分50,60の半径方向外側において突出している。ピン状の結合手段100の端部には、固定要素110,120が設けられており、固定要素110,120は、ばね部分50,60およびスペーサ90を半径方向で止めている。
【0034】
ハウジング内壁は、ハウジング10の、ピストンロッド30とは反対側の端面に、別の段部を有しており、この別の段部は、固定要素110,120のためのストッパとして用いられる。さらに、キャップ状の閉鎖要素150が設けられ、閉鎖要素150は、固定要素110,120に直接当接し、ハウジング10を閉鎖する。キャップ状の閉鎖要素150は、略U字形に形成されており、ハウジングを半径方向でも軸方向でも少なくとも部分的に包囲する。閉鎖要素150とハウジング10との間の固定は、好ましくは力結合および/または形状結合を介して実施される。したがって、閉鎖要素150をハウジング10にねじ止めすることも可能である。
【0035】
ペダル力シミュレータの組み立ては、以下のように行われる。
【0036】
まず、下位構成群を組み立てる。すなわち、ピストン要素とスライドガイド機構構成部材とを互いに結合する。ピストンロッド30と支持要素140との間の結合を行う。
【0037】
また、ばね部分50,60にロール体70,80を設けるとともに、スペーサ90およびピン状の結合手段100を介してばね部分50,60の位置を互いに調整し、そして固定要素110,120を用いて互いに結合する。
【0038】
第1の組み立て工程において、ピストン20をハウジング10内に導入し、ピストン20の半径方向の拡張部をハウジング内壁に設けられたストッパに当接させる。蓄力手段130を、ハウジング10内に設けられたストッパ面に当接させ、ピストンロッド30を支持体140とともに蓄力手段130の半径方向内側に、ピストンロッドヘッドがピストン20の開口内で止められるまで押し込む。
【0039】
第2の組み立て工程において、ばね要素40をピン状の結合手段100とともにハウジング10内に押し込み、固定要素110,120を、ハウジング内壁に設けられた別のストッパに当接させる。最後にハウジング10と閉鎖要素150とを結合する。
【0040】
図2aは、
図2に示した力シミュレーション用の装置のばね要素40の詳細を示している。ロール体70,80が、ばね部分50,60の第1の端部50.1,60.1の領域に配置されており、半径方向内方を向いていることが看取可能である。操作時、ピストン20のスライドガイド機構構成部材は、ばね要素40内に押し込まれる。それゆえ、ロール体70,80は、スライドガイド機構構成部材の表面と当接することになる。スライドガイド機構構成部材の変化する横断面、特に略中央の横断面拡大により、結果として、少なくとも短時間、ペダル操作力とは逆向きに方向付けられた高められた反力が生じる。スライドガイド機構構成部材により生じる反力は、蓄力手段130により生じる反力に加えられ、これにより所望の力特性線を運転者のためにシミュレートする。
【0041】
先の実施例は、車両の操作要素における力シミュレーション用の装置、特にペダル力シミュレータであって、ハウジングと、ハウジング内において軸方向で変位可能なピストンであって、ピストンロッドを介して操作要素に結合されているピストンと、少なくとも一部、特に全体がハウジング内に配置されているばね要素と、を備え、ピストンは、変化する横断面を有し、操作要素による操作時、ばね要素内に係合し、ばね要素には、ピストンと相互作用関係にあるロール体が配置されており、かつ、ばね要素は、少なくとも第1および第2のばね部分からなり、第1および第2のばね部分は、形状結合および/または力結合を介して互いに結合されている、力シミュレーション用の装置に関する。
【符号の説明】
【0042】
1,10 ハウジング
2,20 ピストン
3,30 ピストンロッド
5 汚損防止手段
4,40 ばね要素
50,60 ばね部分
50.1,60.1 第1の端部
50.2,60.2 第2の端部
7,70 ロール体
8,80 ロール体
90 スペーサ
100 ピン状の結合手段
110 固定要素
120 固定要素
13,130 蓄力手段
140 支持要素
150 閉鎖要素
M 中心軸線
a 軸方向
r 半径方向