【実施例】
【0142】
(実施例1)
高酸素症誘発急性肺損傷の
マウスモデルにおける肺の保護効果
この実施例は、高酸素誘発肺損傷のモデルにおける肺修復及び再生を促進するヒトUTCの有効性を示す(hUTCの単離と及び特徴付けは実施例6〜16に見出すことができる)。
【0143】
臍細胞培養及び単離
臍由来細胞(UDC、hUTC)を、米国特許第7,524,489号及び同第7,510,873号、及び米国特許出願公開第2005/0058634に記載されている通りに調製した。これらの細胞を、望ましい継代まで培養し、その後、低温保存された。
【0144】
動物モデル
雌のC57BL/6マウス(7週齢)をAce Animals(Boyetown,PA)から入手した。注入の前にhUTCを37℃で解凍し(水浴)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で2回洗浄し、1mLのPBSで再懸濁させた。細胞は、血球計数器を使って計数した。細胞生存率をトリパンブルー染料排除により決定した。細胞は、200μLのPBS内で1×10
6個の細胞の濃度で再構成された。
【0145】
研究の概要は、下記の表1−1で要約されている。0日目、細胞(200μLのPBS中1×10
6個のhUTC)又はPBSビヒクルが、1mL注射器及び26ゲージ針を使用して尾静脈注射によってゆっくりと投与され、動物は、室内空気又は90%のO
2に曝された。90%のO
2への暴露は、下準備され、1時間にわたり90%のO
2に平衡されたBioSpherixチャンバ(BioSpherix,LTD,Lacona,NY)に動物を入れることで達成された。これらの動物に、支持療法(熱支援及びNutriCal)を毎日施した。動物観察、死亡率、生存率、各タンクの酸素濃度パーセントを、1日2回記録した。処理後4日目、50mg/mLネンブタール(ペントバルビタール)を使用して、動物を安楽死させた。
【0146】
【表1】
【0147】
気管支肺胞洗浄液(BALF)全タンパク質分析
各サンプル中の総タンパク質を決定するため、BCAタンパク質アッセイ(Pierce)を用いて、無細胞BALFを分析した。分析は、Softmax 4.0プログラムを使って完了し、データは、Graph Pad Prismソフトウェアを使ってグラフ化された。
【0148】
BALF及び肺ホモジネートサイトカイン/ケモカイン分析
BALFを調製するために、処置群当たり6匹の動物を安楽死させ、1.0mLの無菌PBS(Invitrogen)で肺を1回洗浄し、ウェットアイス上にチューブを置いた。BALFを1000rpmで5分間遠心分離し、上澄み液を取り除き、更なる分析に使用した。
【0149】
肺ホモジネートを調製するために、群当たり6匹の動物を安楽死させ、PBSによる全身灌流にかけ、左肺を切開し、Lysing Matrix Dチューブに入れてアイス上に置き、その後、FastPrep(登録商標)器具で4.0の速度で40秒間遠心分離にかけられた。
【0150】
BALF及び肺ホモジネート双方の上澄み中のサイトカイン/ケモカインレベルを、製造者のプロトコルに従って、マウス22マルチプレックスビーズキット(Millipore)を使って判定し、BioRad Bioplex機器を使って分析した。結果は、GraphPad Prismソフトウェアを使ってグラフ化及び分析された。
【0151】
ヒト細胞検出
全RNAを、Asuragen,Inc.により、その会社の標準操作手順に従って、マウス組織から分離した。全RNAサンプルの純度及び量は、NanoDrop ND−1000 UV分光測光器を使って260及び280nmにおける吸光度読み値によって判定された。RNA完全性は、Agilent Bioanalyzerを使って評価された。
【0152】
GAPDH mRNA(Hs99999905_m1_GAPDH)に関するヒト特異的アッセイを使って、マウスの肺組織内のhUTCの数を推定した。単一チューブTaqMan(登録商標)Assays(Applied Biosystems)を用いた定量的RT−PCR(qRT−PCR)分析用のサンプルを、Asuragen,Inc.により、その会社の標準操作手順に従って処理した。全RNAの希釈液は、製造者の説明書に従って、希釈物当たり20μLの全反応容積で、TaqMan(登録商標)High Capacity cDNA Synthesis Kit(Applied Biosystems)を使って逆転写された。次に、50ngの入力cDNAがPCRによって分析された。全ての増幅は、有効なABI 7500リアルタイムサーモサイクラー上で3回行われた。サンプルは、95℃で10分間インキュベーションした後で、95℃で15秒間、その後60℃で1分間の40サイクルで、増幅された。マウスの肺内のhUTCの総数は、既知の量の精製hUTC全RNAを分析することによって生成された標準曲線に基づいて推定された。
【0153】
BALF総タンパク質
90%のO
2に4日間露出した結果、室内空気の対照動物と比較して、BALFの総タンパク質含量が増加した(p<0.01、
図1、表1−2)。更に、90%のO
2 PBS処理群と比較して、90%のO
2 hUTC処理群におけるBALF総タンパク質が統計的に有意に減少した(p<0.05)。
【0154】
【表2】
【0155】
BALF及び肺ホモジネートサイトカイン分析
表1−3〜1−6は、肺ホモジネート(表1−3及び1−4)及びBALF(気管支肺胞洗浄液)(表1−5及び1−6)のケモカイン/サイトカイン分析を示す。データはグラフでも示されている(
図2A及び2B)。PBSビヒクルを用いて処置し、90%のO
2(p<0.02)に露出された動物と比較して、hUTCを用いて処置され90%のO
2に露出された動物において、BALFケラチノサイト因子(KC)、γインターフェロン誘導型サイトカイン(IP−10)、インターロイキン1α(IL−1α)及び肺ホモジネート単球走化性因子−1(MCP−1)の統計的に有意な減少が観察された。(
図2A及び2B、表1−3及び1−4)。(nd=検出されず)。
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】
【表5】
【0159】
【表6】
【0160】
ヒト細胞の生着
処理後4日目に、動物を屠殺し、肺を回収し、全RNAを、ヒト細胞検出のため単離した。結果は、hUTC処理した動物の肺の中にhUTCが存在するが、PBS処置した動物の肺からはhUTCは存在しないことを示した(表1−3)。
【0161】
表1−7は、ヒト細胞検出の結果を示す。処置後4日目のマウスの肺内のhUTCの存在は、リアルタイムPCRを使用いてヒト特異的GAPDH mRNA転写産物を測定することで判定された。34未満のサイクル閾(CT)値は、マウスの肺組織内にhUTCが存在することを示す。マウスの肺組織内でhUTC mRNA転写産物の検出なし(不存在)。マウスの肺組織内でhUTC mRNA転写産物が検出(存在)。
【0162】
【表7】
【0163】
マウスにおける高酸素誘発性急性肺損傷の進行に対する、hUTCの予防的静脈内投与の効果を評価した。90%のO
2に曝されたマウスにhUTCを投与した後にBALFにおけるの総タンパク質のレベルが低下したということは、hUTCが、肺における高酸素誘発性血液漏出/浮腫を減少させることができたことを示唆している。更に、データは、hUTCが、肺における炎症の減少を示唆する、3つの重要なケモカインのレベルを減少させたことを示した。これらのデータは、hUTCが、肺疾患の治療にとって重要な治療薬であり得る証拠を提供している。
【0164】
(実施例2)
エラスターゼ誘発気腫の新規なヒト化マウスモデルにおけるヒト臍由来細胞(hUTC)の予防効果の評価
この実施例は、COPD(気腫)の新規及び旧式モデルの両方におけるヒト臍由来細胞(hUTC)の効果を評価した。これらのモデルは、気腫破壊につながるエラスターゼの気道への送達づく。旧式のモデルは、BALB/cマウスを使用し、新規のモデルは、ヒト細胞治療の検査用テストベッドとして開発されたNOD/SCID/サイトカイン受容体γ鎖(ヌル)マウス(NOD/SCIDγ)(以下、「NSG」と称す)を使用した。
【0165】
実験計画
イソフルランの吸入によってマウスに麻酔をかけ、ブタ膵臓エラスターゼ(Sigma−Aldrich,SI.Louis,MO)を14日間にわたって6回経鼻投与した(週3回、各1×0μg)。対照のマウスには生理食塩水のみを経鼻投与した。最初のエラスターゼ処理から2時間後、0.5×10
6個のヒト臍帯組織細胞(hUTC)が、尾静脈注射により投与された。hUTCは、100μLの全容積で単回投与として投与された。ビヒクルのみが、hUTC処理群と同様な方法で投与された。
【0166】
本研究は、生化学的/タンパク質分析(パート1)及び(2)組織学及び肺機能検査(プレチスモグラフィー)(パート2)を包含した。
【0167】
この研究のために、0日目に、マウスは、ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)を鼻腔内に(i.n.)、hUTCを静脈内に(i.v.)注射された。2日目、5日目、7日目、9日目、11日目に、マウスは、更に、PPEの注射を受けた。1日目、6日目、10日目、14日目に、更なる研究のためにマウスを回収した。320匹の生後6〜8週齢の雌のマウスを使用し、血統/種は、NOD/SCIDγ(160)又は野生型(BALB/C)ハツカネズミ(160)であった。表2−1に実験計画を要約する。
【0168】
【表8】
【0169】
臍細胞培養及び単離
臍由来細胞(「UDC」又は「hUTC」)を、米国特許第7,524,489号、同第7,510,873号、及び米国特許出願公開第2005/0058634号に記載されている通り調製した。細胞は、望ましい継代まで培養し、その後、低温保存された。
【0170】
投与の準備
注射の直前に、hUTCを37℃(水浴)で解凍した。細胞は、血球計数器を使って計数した。細胞生存率をトリパンブルー染料排除により決定した。細胞は、注射時に80%以上の生存率を有する必要があった。生存率が80%未満である場合、細胞は投棄された。細胞は、100μLのビヒクルで適切な濃度に調整された。ビヒクル中に懸濁された細胞が、シリンジポンプと、好適な少容量の注射器と、28ゲージ針とを使って尾静脈注射で投与された。送達時間を記録しながら約0.33mL/min/kgで細胞を送達するために、細胞は8〜9分かけてゆっくりと投与された。細胞投与は、調製から80分以内に生じた。投与するまで細胞をウェットアイス上で保管し、投与回数を記録した。
【0171】
手順
上述のように、本研究のパート1の動物は、生化学的/タンパク質分析専用に用いられ、パート2の動物は、組織学及び肺機能試験(プレチスモグラフィー)専用に用いられた。
【0172】
生化学的/タンパク質分析(パート1)のために、ビヒクル又はhUTC注射後1日目、6日目、10日目、14日目に、各群れから4又は5匹の動物を屠殺した。気管支肺胞洗浄液(BALF)を各動物から得、BALF中に存在するサイトカインの分析まで−70℃で保管した。肺、肝臓、及び脾臓は、瞬間冷凍され、その後のRNA抽出のために−70℃でRNAlater(登録商標)(Life Technologies,Grand Island,NY)で保管された。肝臓及び脾臓のアリコートは、追加の転写分析のためにRNAlater(登録商標)で保管された。
【0173】
BALF中の栄養因子の分析
BALF及び肺ホモジネート上澄み液中の細胞性及びサイトカイン/ケモカインレベル(マウスMCP−1、IL−1β、TNF−α、RANTES)を、製造者のプロトコルに従ってマウス多項目ビーズアレーキット(Becton Dickson)を使用して判定し、ビーズアレーフローサイトメトリーを使用して分析した。病巣として選択されたマウスターゲットは、病理学的機構の還元にある。対象ヒトエフェクターターゲットは、ヒトHGF、ヒトIL−1RA、及びVEGFを含んだ。人的因子が、プールされた材料中で1つの時間点においてのみ実行可能性について分析された。サンプル群内で正規化ができるように、BCA(商標)タンパク質定量法(Pierce,Rockford,Ill.)を使用してBALF中の総タンパク質を定量化した。
【0174】
肺ホモジネートにおける栄養素の分析
肺ホモジネートから採取した細胞のサンプルを、マウスMCP−1、IL−1β、TNF−α、RANTES並びにヒトHGF、ヒトIL−1RA、及びVEGFについて定量的RT−PCRにより評価し、病状のマーカ(MCP−1、TNF−α、IL−1β及びRANTES)又は治療活性の指標(ヒトHGF、IL−1RA又はVEGF)を評価した。肺細胞ホモジネートにおけるヒトIL−1RA及びVEGFのRT−PCRは、いずれの時間点においてもサイトカインの検出を示さなかった。
【0175】
パート2はパート1を繰り返したが、パート1の手技とは整合しない読み出しを利用した。ビヒクル又はhUTC注射後の1日目、6日目、10日目、及び14日目に、各群の動物について拘束プレチスモグラフィーを実施した。更に、各時間点において、4匹若しくは5匹のマウスを屠殺し、下記の要領で肺を採取した。
【0176】
プレチスモグラフィー
実験の各時間点及び終了時に、プレチスモグラフィーをマウスに対して行った。簡単に説明すると、肺機能を制限付き方法で測定し、呼吸数、一回換気量、緩和時間、最大吸気流速、最大呼気速度、EF50、及び肺容量の変化を判定した。これは、異なる時間における肺機能に及ぼす細胞治療の影響を示す。
【0177】
組織病理学
各時間点において、各処置群から肺を採取した。肺は、10%ホルムアルデヒド中性緩衝液で固定され、グレードエタノールシリーズ中で脱水され、パラフィンに封入され、4μmにスライスされた。パラフィン切片は、組織病理分析のため、ヘマトキシリンーエオシン(H&E)で染色された。組織学切片を損傷について評価した。肺胞の表面積は、国立予防衛生研究所からオンラインで入手可能なImage Jソフトウェアを使って分析された組織病理学イメージを用いて判定された。各肺切片について、5つの無作為フィールド内の灰法の表面積を測定し、平均表面積を計算した。損傷した肺における肺胞空間のサイズの減少が、改善された肺胞の弾性及びコンプライアンスと相関関係にあることは既知であり、このことは細胞治療がこれらのパラメータに影響を及ぼすことを示す。
【0178】
結果
注射するための細胞の再構成
この実験に使用された10個のバイアルのhUTCのうち、品質基準によって廃棄されたものはなかった。生存率は各ケースで80%超であった。細胞の回収の詳細は、下記の表2−2及び2−3に示されている。回収率は高く、予想値の100%をわずかに上回っていた(バイアルからの回収量が予想値より若干多かったためと思われる)。
【0179】
【表9】
【0180】
【表10】
【0181】
動物報告及び観察
一部のマウスの尾には静脈注射時に白斑が見られた。これは細胞治療には関係がなかったが、送達時の投与針の誤留置の原因になった。誤留置が発生した場合には、針を抜き、静脈に正しく挿入して、細胞/ビヒクルの投与を続行した。エラスターゼ治療又は細胞送達の結果死亡したマウスはいなかった。hUTC送達の結果、検出可能な副作用はどの動物にも観察されなかった。
【0182】
気管支肺胞洗浄液(BALF)の分析
各時間点において、ペントバルビタールナトリウムの致死注射によりマウスを屠殺し、BALFを回収した。総白血球(
図3)及び細胞分化計数(
図4)が、細胞ペレットについて行われた。結果的に生じた上澄みは、サイトカイン活性(
図5及び6)及び総タンパク質レベル(表2.4〜2.7)の更なる分析のために回収された。
【0183】
BALFにおける総白血球数。
対照マウスは気管支肺胞洗浄において最小限の細胞湿潤を示したが、エラスターゼの投与の結果、細胞が有意に湿潤した。全体的な細胞湿潤は、両方のマウス血統において、hUTCの投与を受けたエラスターゼ処理されたマウスにおいて減少した。
【0184】
BALFの細胞分染。
サイトスピンをBALFに対して実施し、修正Giemsa染色方法を使って染色した。サンプルを、リンパ球、マクロファージ、及び好中球の有無について分析した。サイトスピン当たり100個の細胞を計数し、BALFの容量に対して補正した。結果は、平均±標準誤差として表された。3つ以上の群れの比較がANOVAによって行われた。差異はp<0.05において有意と考えられた。
【0185】
分染分析の要約。NSGマウスにおいて、hUTC治療の結果、エラスターゼ処理されたマウスにおいて、hUTC投与を受けていないエラスターゼ処理マウスと比較して、10日目にマクロファージが著しく減少した。同様に、hUTC投与を受けたエラスターゼ処理マウスにおいて、6日目と10日目に好中球の有意な減少が観察された。対照的に、任意の時間点でhUTCの投与を受けたエラスターゼ処理の野生型マウスにおいて、マクロファージ又は好中球の有意な減少は観察されなかった。
【0186】
サイトカイン分析
BALF及び肺組織ホモジネートは、粘液過分泌、気道柔組織の破壊、線維症、組織損傷、及びCOPDに関係する炎症において明確に定義された役割を果たすので、BALF及び肺組織ホモジネートを抽出し、多項目ビーズアレーによって炎症性メディエータMCP−1、TNF−α、RANTES、及びIL−1βについて分析した。
【0187】
hUTCは、エラスターゼ処理したNSG(NOD/SCIDγ)マウスにおける気管支肺胞洗浄液(BALF)上澄みのサイトカイン応答を調節した(
図5)。エラスターゼ処理していない対照マウスは、MCP−1、TNF−α、RANTES、及びIL−1βをほとんど又は全く示さなかったが、エラスターゼ処理したマウスは、各時間点において全てのターゲットサイトカインの典型的な増加を示した。しかし、hUTCの投与を受けたこれらのマウスのBALFにおいて、炎症性メディエータの有意な減少(
*p<0.05)が観察され(
図5を参照)、1日目/10日目にRANTES、1日目にIL−1β、1日目、6日目、10日目にTNF−α、1日目、10日目にMCP−1が有意に減少した。
【0188】
エラスターゼ処理された野生型のBALB/c血統マウスについて、気管支肺胞洗浄液(BALF)上澄みにおけるhUTC及びサイトカイン応答を判定した(
図6)。hUTC投与後1日、6日、10日、及び14日のBAL洗浄液組成物に対するhUTC注入及び/又はブタ膵臓エラスターゼ(PPE)処理の効果を示す。要約すると、この血統においては応答がより可変的であり、一貫した又は有意な差異は観察されなかった。
【0189】
総タンパク質濃度
ウシ血清アルブミン(BSA)を使って標準化されたBradfordアッセイ(Bio−Rad,Hercules,CA)を使って、回収されたBALF及び肺組織のホモジネートの総タンパク質濃度を判定した(表2−4〜2.7を参照)。
【0190】
【表11】
【0191】
【表12】
【0192】
【表13】
【0193】
【表14】
【0194】
いずれの株においても処置群間で総タンパク質量の有意な差は検出されなかった。
【0195】
組織学的所見
定量的分析。非洗浄マウスから肺を取り出し、10%(v/v)フォルマリン/PBS中で固定し、パラフィンに封入し、スライスし、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色した(
図7を参照)。気腔腫大を定量化した。肺胞の肺胞壁間距離を測定し、その平均肺胞壁間距離(Lm)を気腫の形態計測パラメータとして使用した。各肺サンプルから、3つの代表的な非重複野を選択した。無作為に分散したグリッドをH&E染色区画の像に重ねた。平均肺胞壁間距離(Lm)及び肺胞の数の定量的測定値を計算した。Lmは、肺胞の平均的サイズを表す。気管支及び血管は測定値から除外した。
【0196】
組織病理学
非洗浄マウスから肺を取り出し、10%(v/v)フォルマリン/PBS中で固定し、パラフィンに封入し、スライスし、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色した。
図8は、1日目の各処理群の代表的な顕微鏡写真を示す。引き続いてhUTCの投与を受けたエラスターゼ処理マウスは、同時点で生理食塩水の投与を受けたエラスターゼ処理マウスと比較して、有意な病状の軽減を示した。エラスターゼ処理による気腔腫大は、hUTC投与によって減じられた(
図8及び関連する凡例p17)。
図9は、hUTCが、1日目、6日目、10日目、14日目における免疫無防備状態(NOD/SCIDγ)マウスのエラスターゼ誘発気腫の範囲を低減したことを示す。
図10は、hUTCが、1日目、6日目、10日目、14日目における免疫応答性の(BALB/c)マウスのエラスターゼ誘発気腫の範囲を低減したことを示す。
【0197】
肺機能
上記研究において記述されているように、実験の各時点及び終了時に各マウスについてプレチスモグラフィーを実施した。肺機能を制限付き方法で評価し、呼吸数、一回換気量、緩和時間、最大吸気流速、最大呼気速度、EF50、及び肺容量の変化を判定した。群間で有意な差異は検出されなかった(一方向ANOVAによる統計的分析)。全てのパラメータは、
図11A及び11Bに示されている。
【0198】
肺ホモジネートにおける栄養因子の分析
肺ホモジネートからの細胞のサンプルを、定量的RT−PCRにより評価し、ヒトHGF、IL−1RA、VEGFのmRNAを測定し、治療活性の指標を評価した。本明細書に記載の方法を用いた肺ホモジネートにおいて、ヒトHGF、VEGF、又はIL−1RAは検出されなかった。
【0199】
結論
本研究は、慢性肺疾患の一種である、気腫の標準的又は新規なマウスモデルにおけるhUTCの有効性を評価した。エラスターゼを両方の血統のマウスの肺に滴下注入し、ヒト気腫及び実験用気腫に特徴的な変化、つまり、肺胞壁の破壊による、大きいが数が少ない肺胞及び減少した肺胞表面積、炎症性メディエータの産生の増加、炎症性細胞型の気管支肺胞洗浄液への流入、をもたらした。hUTCで処置した結果、各モデルにおけるこれらの作用は抑制され、気腫を防止又は修復(つまり、COPD)し、ヒトにおける同様な作用の可能性を示唆した。
【0200】
これらのデータは、多くの意味を有する。先ず、hUTCは、新規のマウス中ヒトモデルにおけるCOPDの主要な気腫性作用の防止に有効である。hUTCは、典型的には、NSGモデルにおける病状に関連付けられる炎症促進性メディエータ(TNF−α、RANTES、MCP−1、IL−1β)の産生を抑制した。更に重要たことは、hUTCは、マウスの肺におけるエラスターゼ誘発気腫の範囲を著しく低減した。また、hUTCで処理されたCOPDマウスは、hUTCで処理されていない気腫対照と比較して、著しく短い肺胞間の平均肺胞壁間距離(Lm)(つまり、破壊が少ない)を示した。同様に、hUTC処理は、より多くの数の肺胞を保存し、COPDのヒト化NSGモデルにおけるBAL液への炎症性細胞浸潤を低減した。したがって、hUTCは、病状の主要機能を破壊する。
【0201】
また、NSGモデルは、ヒト細胞治療を検査するための有用なテストベッドであり、有効な細胞治療としてのhUTCをサポートする今後の作業を実行する機会を提供する。また、このモデルは、治療作用のメカニズム、並びに投与のタイミング及び回数をめぐる問題の、より根本的な検査の機会を可能にする。
【0202】
一般に、hUTCの単回投与後の病状の差異及び炎症性メディエータの低減は、新規モデルにおけるhUTCの有効性を強くサポートしている。
【0203】
したがって、本実験の主要な発見は以下の通りであった。
【0204】
hUTCは、「ヒト化」(NSG)COPDモデルにおける炎症促進性メディエータ(TNF−α、RANTES、MCP−1、及びIL−1β))の産生を抑制し、免疫応答性モデルにおけるこれらのサイトカイン応答を調節しない。
【0205】
hUTCは、両方のモデルのマウスの肺におけるエラスターゼ誘発気腫の範囲を著しく低減した。
【0206】
hUTC処理したCOPDマウス(両方のモデル)は、hUTC処理をしていない気腫対照と比較して、肺胞間の著しく短い平均肺胞壁間距離を示した。同様に、hUTC処理は、より多くの数の肺胞を保存した。
【0207】
hUTCは、ヒト化(NSG)COPDモデルにおけるBAL液への細胞浸潤を低減した。
【0208】
(実施例3)
細胞の単離
臍細胞の単離。臍帯は、National Disease Research Interchange(NDRI,Philadelphia,PA)から得た。それらの組織は、正常分娩の後に得たものであった。細胞単離プロトコルを、層流フード内で、無菌的に実行した。血液及び残滓を除去するため、ペニシリン100単位/m、ストレプトマイシン100mg/mL、及びアンホテリシンB 0.25μg/mL(Invitrogen Carlsbad,CA)の存在下において、臍帯をリン酸緩衝生理食塩水(PBS;Invitrogen,Carlsbad,CA)中で洗浄した。次いで、それらの組織を、150cm
2の組織培養プレート内で、50ミリリットルの培地(DMEM−低グルコース又はDMEM−高グルコース;Invitrogen)の存在下、組織が微細なパルプ状へと細断されるまで、機械的に解離させた。細断した組織を、50ミリリットル円錐管に移した(1つの管当り約5グラムの組織)。
【0209】
次に、DMEM−低グルコース培地又はDMEM−高グルコース培地(それぞれペニシリン100単位/mL、ストレプトマイシン100mg/mL、及びアンホテリシンB 0.25μg/mLを含む)、及び消化酵素にて、細胞を消化した。一部の実験では、コラゲナーゼとディスパーゼとの酵素混合物を使用した(「C:D」)(DMEM−低グルコース培地中、コラゲナーゼ(Sigma,St Louis,MO)、500単位/mL;及びディスパーゼ(Invitrogen)、50単位/mL)。他の実験では、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びヒアルロニダーゼの混合物(「C:D:H」)を使用した(C:D:H=DMEM−低グルコース中、コラゲナーゼ、500単位/mL;ディスパーゼ、50単位/mL;及びヒアルロニダーゼ(Sigma)、5単位/mL)。これらの組織、培地、及び消化酵素を入れたコニカルチューブを、225rpmの軌道振盪器(Environ,Brooklyn,NY)内で、37℃で2時間インキュベートした。
【0210】
消化の後、150×gで5分間、組織を遠心分離して、上清を吸引した。ペレットは、20ミリリットルの増殖培地(DMEM:低グルコース(インビトロゲン)、15パーセント(v/v)ウシ胎児血清(FBS;定義されたウシ胎児血清;ロット#AND18475;Hyclone,Logan,UT)、0.001%(v/v)2−メルカプトエタノール(Sigma)、1ミリリットル当たり100単位のペニシリン、1ミリリットル当たり100マイクログラムのストレプトマイシン、及び1ミリリットル当たり0.25マイクログラムのアンホテリシンB(それぞれ、Invitrogen,Carlsbad,CAから入手可能)で再懸濁された。細胞懸濁液を70ミクロンのナイロン製BD FALCON細胞濾過器(BD Biosciences,San Jose,CA)に通して濾過した。増殖培地を含む、追加的な5ミリリットルの洗液を、濾過器に通過させた。次いで、その細胞懸濁液を、孔径40マイクロメートルのナイロン製細胞濾過器(BD Biosciences,San Jose,CA)に通過させ、続いて、増殖培地の洗液を追加で5mL通過させた。
【0211】
この濾液を、増殖培地(総容積50ミリリットル)中に再懸濁させ、150×gで5分間、遠心分離した。上清を吸引して、50ミリリットルの新鮮増殖培地中に、細胞を再懸濁させた。この過程を更に2回繰り返した。
【0212】
最終的な遠心分離の後に、上清を吸引して、5ミリリットルの新鮮増殖培地中に、細胞ペレットを再懸濁させた。トリパンブルー染色を使用して、生存細胞の数を判定した。次いで、標準条件下で、細胞を培養した。
【0213】
臍帯組織から単離した細胞を、増殖培地中、ゼラチンコーティングT−75cmフラスコ(Corning Inc.,Corning,NY)上に、5,000細胞/cm
2で播種した。2日後、消費した培地及び未付着の細胞を、フラスコから吸引した。PBSで付着細胞を3回洗浄して、残渣及び血液由来細胞を除去した。次いで、細胞に、増殖培地を補充して、コンフルエンスまで増殖させ(継代数0から約10日)、継代数1に至らせた。その後の継代(継代数1から継代数2へ、など)の際には、細胞は、4〜5日でコンフルエンス(75〜85%のコンフルエンス)に達した。これらの後続の継代に関しては、細胞を、5,000細胞/cm
2で播種した。細胞は、5%の二酸化炭素に設定した加湿インキュベーター内で、37℃で増殖させた。
【0214】
いくつかの実験において、LIBERASE(1ミリリットル当たり2.5ミリグラムのBlendzyme 3;Roche Applied Sciences(Indianapolis,IN))及びヒアルロニダーゼ(1ミリリットル当たり5単位、Sigma)で消化した後、細胞が、DMEM−低グルコース培地中の分娩後組織から単離された。組織の消化、及び細胞の単離は、上記の他のプロテアーゼ消化に関する説明と同様であったが、C:D又はC:D:H酵素混合物の代わりに、LIBERASE/ヒアルロニダーゼ混合物を使用した。LIBERASEを使用する組織の消化は、分娩後組織から、容易に増殖する細胞集団の単離をもたらした。
【0215】
種々の酵素の組み合せを使用して、臍帯から細胞を単離するための手順を比較した。消化のために比較された酵素には、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼとディスパーゼの混合物(C:D)、コラゲナーゼとヒアルロニダーゼの混合物(C:H)、ディスパーゼとヒアルロニダーゼの混合物(D:H)、及び、コラゲナーゼと、ディスパーゼと、ヒアルロニダーゼとの混合物(C:D:H)が含まれた。これらの種々の酵素消化条件を用いて、細胞単離の差異を観察した(表3−1)。
【0216】
種々の手法によって臍帯から細胞のプールを単離するために、他の試みを行なった。一例では、臍帯をスライスして、増殖培地で洗浄し、血餅及びゼラチン状物質を取り除いた。血液、ゼラチン状物質、及び増殖培地の混合物を収集して、150×gで遠心分離した。ペレットを再懸濁させ、ゼラチン増殖培地中、コーティングされたフラスコ上に播種した。これらの実験から、容易に増殖する細胞集団が単離された。
【0217】
細胞はまた、NDRIから入手した臍帯血サンプルからも単離されている。用いた単離プロトコルは、Hoらによる国際特許出願PCT/US第2002/029971号に記載するものを使用した。臍帯血(NDRI,Philadelphia PA)のサンプル(それぞれ50mL及び10.5mL)は、溶解用緩衝液(フィルター殺菌済み155ミリモルの塩化アンモニウム、10ミリモルの重炭酸カリウム、pH 7.2に緩衝された0.1ミリモルのEDTA(全ての構成要素はSigma,St.Louis,MOから入手可能))と混合された。1:20の、臍帯血と溶解緩衝液との比率で、細胞を溶解させた。得られた細胞懸濁液を、5秒間ボルテックス攪拌して、周囲温度で2分間インキュベートした。この溶解液を、遠心分離した(200×gで10分間)。細胞ペレットを、10パーセントのウシ胎児血清(Hyclone(Logan UT))、4ミリモルのグルタミン(Mediatech(Herndon,VA))、100単位/mLのペニシリン、及び100マイクログラム/ミリリットルのストレプトマイシン(Gibco(Carlsbad,CA))を含有する、完全最小必須培地(Gibco(Carlsbad,CA))中に再懸濁させた。再懸濁した細胞を、遠心分離して(200×gで10分間)、上清を吸引し、完全培地中で細胞ペレットを洗浄した。T75フラスコ(Corning(NY))、T75ラミニンコーティングフラスコ、又はT175フィブロネクチンコーティングフラスコ(双方ともBecton Dickinson(Bedford,MA))内に、細胞を直接播種した。
【0218】
細胞集団が種々の条件下で単離され、単離の直後に様々な条件下で増殖することが可能か否かを判定するために、上記の手順に従って、0.001パーセント(v/v)の2−メルカプトエタノール(Sigma(St.Louis,MO))を有する増殖培地中、又は有さない増殖培地中で、C:D:Hの酵素の組合せを使用して、細胞を消化させた。全ての細胞は、1ミリリットル当たり100単位のペニシリンと、1ミリリットル当たり100マイクログラムのストレプトマイシンの存在下で増殖させた。全ての試験条件下で、細胞は、継代数0〜1の間において、良好に付着して増殖した(表2−2)。条件5〜8及び条件13〜16の細胞は、播種の後、継代数4まで良好に増殖することが実証され、その時点で、それらの細胞を凍結保存した。
【0219】
C:D:Hの組み合せが、単離の後の、最良の細胞収量をもたらし、他の条件よりも、多くの世代にわたって培養下で増殖する細胞を生じさせた(表3−1)。コラゲナーゼ又はヒアルロニダーゼを単独で使用しても、増殖可能な細胞集団は得られなかった。この結果が、試験したコラゲナーゼに特異的なものであるか否かを判定する試みは、行なわなかった。
【0220】
【表15】
【0221】
細胞は、酵素消化及び増殖に関して試験した全ての条件下で、継代数0〜1の間に、良好に付着して増殖した(表3−2)。実験条件5〜8及び実験条件13〜16の細胞は、播種の後、継代数4まで良好に増殖し、その時点で、それらの細胞を凍結保存した。全細胞は、更なる分析のために凍結保存された。
【0222】
【表16】
【0223】
有核細胞が付着し、急速に増殖した。これらの細胞は、フローサイトメトリーによって分析したところ、酵素消化によって得られた細胞と同様であった。
【0224】
これらの調製物は、赤血球及び血小板を含有するものであった。最初の3週間は、有核細胞が付着及び分裂することはなかった。播種の3週間後に、培地を交換したが、細胞の付着及び増殖は観察されなかった。
【0225】
酵素併用コラゲナーゼ(メタロプロテアーゼ)、ディスパーゼ(中性プロテアーゼ)及びヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸を破壊する粘液溶解酵素)を効果的に使用して、臍組織から細胞集団を単離することができた。コラゲナーゼと中性プロテアーゼとの配合物であるLIBERASEも使用することができる。コラゲナーゼ(4 Wunsch単位/g)及びサーモリシン(1714カゼイン単位/g)である、Blendzyme 3もまた、細胞を単離するために、ヒアルロニダーゼと共に使用した。これらの細胞は、ゼラチンコーティングされたプラスチック上の増殖培地中で培養した場合、多数回の継代にわたって、容易に増殖した。
【0226】
細胞はまた、臍帯内の残留血液からも単離されたが、臍帯血からは単離されなかった。使用した条件下で付着及び増殖する、この組織から洗い流された血餅中の細胞の存在は、解剖プロセス中に細胞が遊離することによるものである可能性がある。
【0227】
(実施例4)
細胞の増殖特性
臍由来細胞の細胞増殖能を、単離された他の幹細胞の集団と比較した。細胞の細胞老化への増殖プロセスは、Hayflickの限界と呼ばれている。(Hayflick L.,J.Am.Geriatr.Soc.,1974;22(1):1〜12;Hayflick L.,Gerontologist,1974;14(1):37〜45)。
【0228】
組織培養プラスチックフラスコは、T75フラスコ(Corning(Corning,NY))に、室温で20分間、20ミリリットルの2%(w/v)ブタゼラチン(タイプB:225 Bloom;Sigma(St Louis,MO))を添加することによって、コーティングした。ゼラチン溶液を除去した後、10ミリリットルのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Invitrogen(Carlsbad,CA))を添加し、次いで吸引した。
【0229】
増殖拡大能の比較のために、以下の細胞集団を利用した;i)間葉系幹細胞(MSC;Cambrex(Walkersville,MD));ii)脂肪由来細胞(米国特許第6,555,374(B1)号;米国特許出願公開第2004/0058412号);(iii)正常な皮膚線維芽細胞(cc−2509ロット#9F0844;Cambrex,Walkersville,MD)、及びiv)臍由来細胞。全ての細胞を、最初に、増殖培地中、ゼラチンコーティングT75フラスコ上に、5,000細胞/cm
2で播種した。後続の継代に関しては、全ての細胞を以下のように処理した。トリプシン処理後、生存細胞を、トリパンプルー染色の後に計数した。細胞懸濁液(50マイクロリットル)を、トリパンプルー(50マイクロリットル、Sigma(St.Louis MO))と組み合わせた。生存細胞数は、血球計数器を使用して概算した。
【0230】
計数の後に、細胞を、25ミリリットルの新鮮増殖培地中、ゼラチンコーティングT75フラスコ上に、5,000細胞/cm
2で播種した。細胞は、標準的な大気中(5パーセントの二酸化炭素(v/v))で37℃で成長させた。増殖培地は、1週間に2回交換した。細胞が約85%のコンフルエンスに達すると、細胞を継代した。このプロセスは、細胞が老化に達するまで繰り返された。
【0231】
各継代で、細胞をトリプシン処理して、計数した。生細胞収量、集団倍加[ln(最終の細胞/最初の細胞)/ln2]、及び倍加時間(培養/集団倍加における時間)を計算した。最適な細胞増殖を決定する目的で、前の継代の総収量に、各継代の増殖因子を積算することによって、継代当たりの総細胞収量を決定した(すなわち、増殖因子=最終の細胞/最初の細胞)。
【0232】
継代数10でバンクされた細胞の増殖能も試験した。異なるセットの条件が用いられた。正常皮膚繊維芽細胞(cc−2509ロット# 9F0844;Cambrex(Walkersville,MD))及び臍由来細胞を試験した。これらの細胞集団は、従前に、継代数10でバンクされており、各継代で5,000細胞/cm
2で、その時点まで培養されていた。継代数10での細胞解凍後の細胞集団に対する、細胞密度の影響を判定した。標準条件下で細胞を解凍し、トリパンプルー染色を使用して計数した。解凍された細胞は、その後、増殖培地中、1,000細胞/cm
2で播種された。37℃の標準大気条件下で、細胞を増殖させた。増殖培地は、1週間に2回交換した。細胞は、約85%コンフルエンスに達すると、継代された。細胞は、その後、老化まで、すなわち、それ以上の増殖が不可能となるまで、継代させた。各継代で、細胞をトリプシン処理して、計数した生細胞収量、集団倍加[In(最終的な細胞/最初の細胞)In2]、及び倍加時間(培養中の時間)/集団倍加)を計算した。前の継代の総収量に、各継代の増殖因子を積算することによって、継代当たりの総細胞収量を決定した(すなわち、増殖因子=最終の細胞/最初の細胞)。
【0233】
新たに単離された臍由来細胞の培養の低細胞播種条件での増殖可能性を別の実験で試験した。臍由来細胞は、以前の実施例で説明されている通りに単離された。細胞を、1,000細胞/cm
2で播種し、老化まで、上述のように継代させた。37℃の標準大気条件下で、細胞を増殖させた。増殖培地は、1週間に2回交換した。細胞は、約85%コンフルエンスに達すると、継代された。各継代で、細胞をトリプシン処理して、トリパンプルー染色によって計数した。細胞収量、集団倍加(ln(最終の細胞/最初の細胞)/ln2)、及び倍加時間(培養中の時間/集団倍加)を、各継代に関して計算した。前の継代の総収量に、各継代の増殖因子を積算することによって、継代当たりの総細胞収量を決定した(すなわち、増殖因子=最終の細胞/最初の細胞)。細胞は、ゼラチンコーティングフラスコ、及び非ゼラチンコーティングフラスコ上で増殖させた。
【0234】
低O
2細胞培養条件は、特定の状況では、細胞増殖を改善し得ることが実証されている(米国特許出願公開第2004/0005704号)。臍由来細胞の細胞増殖が、細胞培養条件を変更することによって改善されるか判定するために、臍由来細胞の培養物を低酸素条件下で培養させた。細胞を、増殖培地中、ゼラチンコーティングフラスコ上に、5,000細胞/cm
2で播種した。細胞は、最初は、継代数5にわたり標準的な大気条件下で培養され、継代数5の時点で、低酸素(5%のO
2)培養条件に移された。
【0235】
他の実験では、非コーティング、コラーゲンコーティング、フィブロネクチンコーティング、ラミニンコーティング、及び細胞外マトリックスタンパク質コーティングが施されたプレート上で、細胞を増殖させた。培養物は、これらの種々のマトリックス上で、良好に増殖することが実証されている。
【0236】
臍由来細胞は、40継代超にわたり増殖し、60日で>1E17細胞をの細胞収量を生成した。それに対して、MSC及び繊維芽細胞は、それぞれ、<25日後、及び<60日後にそれぞれ老化した。脂肪由来細胞及び大網細胞は、殆ど60日にわたり増殖したが、それぞれ4.5E12及び4.24E13の総細胞収量を生成した。それゆえ、使用した実験条件下で、5,000細胞/cm
2で播種した場合、臍由来細胞は、同じ条件下で増殖した他の細胞型よりも、遙かに良好に増殖した(表4−1)。
【0237】
【表17】
【0238】
臍由来細胞及び繊維芽細胞は、10回を超える継代にわたって増殖し、60日で>1E11細胞の細胞収量を生じさせた(表4−2)。これらの条件下で80日後に繊維芽細胞及び臍由来細胞集団は老化し、それぞれ、>50及び>40集団倍加を完了した。
【0239】
【表18】
【0240】
細胞は、低酸素条件下で、良好に増殖したが、しかしながら、低酸素条件下での培養は、分娩後由来細胞の細胞増殖に対して有意な効果を及ぼしたとは考えられなかった。酸素減少の効果に関する最終的な結論は、初期の単離から低酸素下で細胞を培養させる実験から導かれることが最善であるという意味において、これらの結果は予備的である。標準的大気条件は、十分な数の細胞を成長させるのにうまくいくことが既に証明されており、低酸素培養は分娩後由来細胞の培養には必要でない。
【0241】
単離された臍帯組織由来細胞を、標準的な大気酸素下で、増殖培地中、ゼラチンコーティングフラスコ又は非コーティングフラスコ上で、約5,000細胞/cm
2の密度で増殖させる細胞増殖条件は、多数の細胞を継代数11で生成するのに十分である。更に、データは、低密度培養条件(例えば、1,000細胞/cm
2)を使用することによって細胞が容易に増殖し得ることを示唆している。低酸素条件下での臍由来細胞の増殖も、細胞増殖を促進するが、培養にこれらの条件を用いる場合、細胞増殖能力における漸進的改善は未だ観察されていない。現在、細胞の大きいプールを生成するためには、標準大気条件下で臍帯組織由来細胞を培養することが好ましい。しかしながら、培養条件を変更すると、臍帯組織由来細胞の増殖も、同様に変化し得る。この方策を用いて、これらの細胞集団の増殖能及び分化能を高めることができる。
【0242】
利用した条件下では、MSC及び脂肪由来細胞の増殖能は限定されているが、臍組織由来細胞は、多くの数へと容易に増殖する。
【0243】
(実施例5)
D−バリン含有培地での細胞の増殖
通常のL−バリンイソ型の代わりにD−バリンを含有する培地を使用して、培養中の繊維芽細胞様細胞の増殖を、選択的に阻害することができることが報告されている(Hongpaisan J.Cell Biol.Int.,2000;24:1〜7;Sordilloら、Cell Biol.Int.Rep.,1988;12:355〜64)。臍由来細胞が、Dバリン含有培地で増殖し得るかどうか判定するための実験を行った。
【0244】
臍由来細胞(P5)及び線維芽細胞(P9)をゼラチンでコーティングされたT75フラスコ(Corning,Corning,NY)において5,000細胞/cm
2で播種した。24時間後、培地を除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco(Carlsbad,CA))で細胞を洗浄することにより、残留する培地を除去した。培地は、修飾増殖培地(Dバリンを有するDMEM(特注品Gibco)、15%(v/v)透析ウシ胎児血清(Hycone,Logan,UT)、0.001%(v/v)βメルカプトエタノール(Sigma)、50単位/mLのペニシリン、及び50mg/mLのストレプトマイシン(Gibco))と交換された。
【0245】
このD−バリン含有培地中に播種した、臍由来細胞及び繊維芽細胞は、透析血清を含有する増殖培地中に播種した細胞とは異なり、増殖しなかった。繊維芽細胞は、形態学的に変化し、サイズが増大して、形状が変化した。全ての細胞が死滅し、最終的には、4週間後にフラスコ表面から剥離した。したがって、臍帯組織由来細胞は、細胞増殖のため及び長期間の生存をを維持するためにLバリンを必要とすると結論付けることができる。Lバリンは、臍帯組織由来細胞については増殖培地から除去されないことが望ましい。
【0246】
(実施例6)
細胞の核型分析
細胞療法に使用される細胞株は、好ましくは、同種であり、いずれの汚染細胞型も含まない。細胞治療に使用されるヒト細胞は、正常な構造を有する、正常な数(46個)の染色体を有していなければならない。同種であり、かつ、非分娩後組織起源の細胞を含まない、臍由来細胞株を同定するために、細胞サンプルの核型を分析した。
【0247】
新生男児の分娩後組織由来のUTCを、増殖培地中で培養した。新生児由来細胞と母体由来細胞(X,X)との識別が可能となるように、新生男児由来の分娩後組織(X,Y)が選択された。細胞を、T25フラスコ(Corning(Corning,NY))内の増殖培地中に、5,000細胞/平方センチメートルで播種し、80%コンフルエンスまで増殖させた。細胞を収容するT25フラスコは、ネック部分まで増殖培地で充填した。臨床細胞遺伝学研究所に、急送便でサンプルを配送した(研究所間の推定輸送時間は、1時間である)。染色体分析は、New Jersey Medical School,Newark,NJに所在するCenter for Human & Molecular Geneticsにより行われた。細胞は、染色体が最も良好に可視化される、分裂中期の間に分析された。計数した分裂中期の20個の細胞のうち、5個の細胞を、正常な同種核型数(2)に関して分析した。細胞サンプルは、2つの核型が観察された場合に同種であると特徴付けられた。細胞サンプルは、3つ以上の核型が観察された場合に異種であると特徴付けられた。異種性の核型数(4)が識別されると、更なる分裂中期細胞を計数して、分析した。
【0248】
染色体分析に送られた全細胞サンプルは、細胞遺伝学研究所のスタッフによって、正常外見を呈していると解釈された。分析された16の細胞株のうちの3つが、異種性の表現型(XX及びXY)を表し、これは、新生児由来及び母体由来の双方に由来する細胞が存在することを示している(表6−1)。各細胞サンプルは、同種であると特徴付けられた(表6−1)。
【0249】
【表19】
【0250】
染色体分析は、臨床細胞遺伝学研究所により解釈されると、核型が正常である臍由来UTCを同定した。核型分析はまた、同種核型により判断される、母体細胞を含まない細胞株も同定した。
【0251】
(実施例7)
細胞表面マーカーのフローサイトメトリー評価
フローサイトメトリーによる細胞表面タンパク質又は「マーカー」の特性評価を用いて、細胞株の同一性を判定することができる。この発現の一貫性は、複数のドナーから、並びに種々の処理及び培養条件に曝された細胞において、判定することができる。臍から単離された分娩後細胞株を、フローサイトメトリーによって特徴付けることにより、これらの細胞株の同定に関するプロファイルが提供された。
【0252】
プラズマ処理されたT75、T150、及びT225組織培養フラスコ(Corning,Corning,NY)内で、細胞をコンフルエンスまで培養した。2%(w/v)のゼラチン(Sigma(St.Louis,MO))を、室温で20分間インキュベートすることによって、これらのフラスコの増殖表面をゼラチンでコーティングした。
【0253】
フラスコ内の付着細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco,Carlsbad,MO)中で洗浄し、トリプシン/EDTA(Gibco)を使用して剥離させた。細胞を採取して、遠心分離し、PBS中3%(v/v)のFBS中に、1×10
7/ミリリットルの細胞濃度で再懸濁させた。製造業者の仕様書に従って、100μLの細胞懸濁液に、目的の細胞表面マーカーに対する抗体(下記参照)を添加し、その混合物を、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、非結合抗体を除去した。細胞を500μLのPBS中に再懸濁し、フローサイトメトリーで分析した。フローサイトメトリー分析は、FACScalibur計器(Becton Dickinson(San Jose,CA))を使用して実行した。細胞表面マーカに対する下記の抗体を使用した(表7−1を参照)。
【0254】
【表20】
【0255】
臍由来細胞を、継代数8、15、及び継代数20で分析した。ドナー間の差異を比較するため。異なるドナーから得られた臍帯由来細胞を比較した。ゼラチンコーティングフラスコ上で培養した臍由来細胞を、非コーティングフラスコ上で培養した臍由来細胞と比較した。
【0256】
細胞の単離及び準備に関して使用される、4つの処理を比較した。1)コラゲナーゼ;2)コラゲナーゼ/ディスパーゼ;3)コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ;及び4)コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ/ディスパーゼでの処理による、分娩後組織由来の細胞を比較した。
【0257】
フローサイトメトリーによって分析された、継代数8、15、及び20における臍帯由来細胞は、全て、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cを発現し、このことは、IgG対照と比較しての蛍光の増大によって示された。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQに関しては陰性であり、このことは、IgG対照と一致する蛍光値によって示された。
【0258】
フローサイトメトリーによって分析された、別個のドナーから単離された臍帯由来細胞のそれぞれは、IgG対照と比較しての蛍光値の増大に反映される、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの産生について陽性を示した。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの産生に関しては陰性であり、IgG対照と一致する蛍光値を有していた。
【0259】
フローサイトメトリーにより分析された、ゼラチンコーティングフラスコ及び非ゼラチンコーティングフラスコ上で増殖した臍帯由来細胞は、全てCD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの産生に関して陽性であり、IgG対照と比較して増加した蛍光値を有していた。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの産生に関しては陰性であり、IgG対照と一致する蛍光値を有していた。
【0260】
フローサイトメトリーによる臍帯由来細胞の分析を通じて、これらの細胞株の同一性が実証された。臍帯由来細胞は、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、HLA−A、B、Cに関しては陽性であり、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141及びHLA−DR、DP、DQに関しては陰性であった。この同一性は、ドナー、継代数、培養容器の表面コーティング、消化酵素、及び胎盤の層を含む変数が変動しても、一貫していた。個々の蛍光値ヒストグラム曲線の平均及び範囲には、ある程度の変動が観察されたが、全ての試験条件下での全ての陽性曲線は正常であり、発現した蛍光値は、IgG対照よりも大きく、それゆえ、これらの細胞が、マーカーの陽性発現を有する同種集団を含むことが確認された。
【0261】
(実施例8)
オリゴヌクレオチドアレイによる細胞分析
オリゴヌクレオオチドアレイを使用して、臍由来細胞及び胎盤由来細胞の遺伝子発現プロファイルを、繊維芽細胞、ヒト間葉系幹細胞、及びヒト骨髄由来の別の細胞株と比較した。この解析により、分娩後に誘導された細胞の特性評価が提供され、これらの細胞に関係する固有の分子マーカーが特定された。
【0262】
分娩後組織由来細胞。ヒト臍帯及びヒト胎盤は、National Disease Research Interchange(NDRI(Philadelphia,PA))より、患者の同意を得て、正常な満期分娩から得た。組織を受け取り、C:D:Hの混合物による消化後、実施例6に記述されるように細胞の単離が行われた。細胞は、ゼラチンコーティングされたプラスチック製組織培養フラスコ上の増殖培地において培養さされた。この培養物を、5%のCO
2を使用して、37℃でインキュベートした。
【0263】
線維芽細胞ヒト皮膚繊維芽細胞は、Cambrex Incorporated(Walkersville,MD;ロット番号9F0844)及びATCC CRL−1501(CCD39SK)より購入した。双方の株を、10%(v/v)ウシ胎児血清(Hyclone)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を有する、DMEM/F12培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)中で培養した。これらの細胞は、標準的な組織処理プラスチック上で増殖させた。
【0264】
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)。ヒト間葉系幹細胞(hMSC)は、Cambrex Incorporated(Walkersville,MD;ロット番号2F1655、2F1656、及び2F1657)より購入し、製造業者の仕様書に従って、MSCGM培地(Cambrex)中で培養した。これらの細胞は、5%のCO
2を使用して、37℃で、標準的な組織培養プラスチック上で増殖させた。
【0265】
ヒト腸骨稜骨髄細胞(ICBM)。ヒト腸骨稜の骨髄は、患者の同意を得て、NDRIより受け取った。この骨髄を、Hoらによって概説される方法(WO 03/025149号)に従って処理した。この骨髄を、溶解緩衝液(155mMのNH
4Cl、10mMのKHCO
3、及び0.1mMのEDTA、pH 7.2)と、骨髄1部対溶解緩衝液20部の比率で混合した。この細胞懸濁液を、ボルテックス攪拌して、周囲温度で2分間インキュベートし、500×gで10分間、遠心分離した。上清を廃棄して、10%(v/v)ウシ胎児血清及び4mMグルタミンを添加した最小必須培地−α(Invitrogen)中に、細胞ペレットを再懸濁させた。これらの細胞を、再び遠心分離して、新鮮培地中に細胞ペレットを再懸濁させた。トリパンブルー排除(Sigma(St.Louis,MO))を使用して、生存単核細胞を計数した。単核細胞は、5×10
4細胞/cm
2にて、プラスチック製細胞培養フラスコ中に播種された。細胞を、標準大気O
2又は5% O
2のいずれかで、5% CO
2、37℃でインキュベートした。培地を交換することなく、細胞を5日間培養した。5日間の培養の後、培地及び非付着細胞を除去した。付着細胞は、培養物中に維持された。
【0266】
活発に増殖する細胞培養物を、低温のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で、細胞スクレーパによってフラスコから除去した。これらの細胞を、300×gで5分間、遠心分離した。上清を除去して、新鮮なPBS中に細胞を再懸濁させ、再び遠心分離した。上清を除去して、細胞ペレットを直ちに凍結させ、−80℃で保存した。細胞のmRNAを抽出し、cDNAへと転写させた。次に、cDNAをcRNAに転写して、ビオチンで標識した。ビオチン標識済みcRNAについて、Affymetrix GENECHIP HG−U133Aオリゴヌクレオチドアレイ(Affymetrix,Santa Clara,CA)によってハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション及びデータ収集は、製造業者の仕様書に従って実施した。データ分析は、「Significance Analysis of Microarrays」(SAM)バージョン1.21コンピュータソフトウェア(Tusher,V.G.ら、2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:5116〜5121)を使用して行われた。分析ソフトウェアのライセンスは、Office of Technology Licensing,Stanford Universityを通じて入手可能であり、詳細情報はDep’t of Statistics,Stanford UniversityのProfessor Tibshiraniのウェブサイトにおいて、World Wide Web上から入手可能である。
【0267】
14の異なる細胞集団を、この試験において分析した。これらの細胞を、継代情報、培養基質、及び培養培地と共に、表8−1に列記する。細胞株については、分析時の継代、細胞増殖基質、及び増殖培地と共に識別コードを列記した。
【0268】
【表21】
【0269】
データは、上述したSAMソフトウェアによる主成分分析で評価した。分析により、試験対象の細胞において、異なる相対量で発現した290の遺伝子が明らかとなった。この分析はにより、集団間の相対比較がもたらされた。
【0270】
表8−2は、細胞対の比較のために計算された、ユークリッド距離を示す。これらのユークリッド距離は、細胞型間で示差的に発現した290の遺伝子に基づく、細胞の比較に基づいたものである。ユークリッド距離は、290の遺伝子の発現における類似性と反比例している。ユークリッド距離は、細胞型ごとに異なる発現をした290の遺伝子を使用して、各細胞型について計算した。細胞間の類似性は、ユークリッド距離に反比例している。
【0271】
【表22】
【0272】
表8−3、表8−4、及び表8−5は、胎盤由来細胞内で増加した遺伝子の発現(表8−3)、臍帯由来細胞内で増加した遺伝子の発現(表8−4)、並びに臍帯由来細胞及び胎盤由来細胞内で減少した遺伝子の発現(表8−5)を示す。
【0273】
【表23】
【0274】
【表24】
【0275】
【表25-1】
【0276】
【表25-2】
【0277】
表8−6、表8−7、及び表8−8は、ヒト繊維芽細胞(表8−6)、ICBM細胞(表8−7)、及びMSC(表8−8)内で増加した、遺伝子の発現を示す。
【0278】
【表26】
【0279】
【表27】
【0280】
【表28】
【0281】
本実施例は、臍帯由来細胞及び胎盤由来細胞の分子の特性評価を提供するために実行された。この分析は、3つの異なる臍帯及び3つの異なる胎盤に由来する細胞を含んだ。この試験はまた、皮膚繊維芽細胞の2つの異なる株、間葉系幹細胞の3つの株、及び腸骨稜骨髄細胞の3つの株も含んだ。これらの細胞により発現されmRNAは、オリゴヌクレオチドプローブを含むGENECHIPオリゴヌクレオチドアレイにおいて、22,000の遺伝子について分析された。
【0282】
分析により、これら5つの異なる細胞型には、290の遺伝子の転写産物が異なる量で存在していることが明らかとなった。これらの遺伝子には、胎盤由来細胞内で特異的に増加した10の遺伝子、及び臍帯由来細胞内で特異的に増加した7の遺伝子が含まれる。54の遺伝子が、胎盤由来細胞及び臍帯由来細胞において、特異的に低い発現レベルを有することが分かった。
【0283】
選択された遺伝子の発現が、実施例9に示されるようにPCRによって確認されている一般的には、分娩後由来細胞、詳細には臍由来細胞は、例えば、本実施例において試験されている骨髄由来細胞及び線維芽細胞などの他のヒト細胞と比較して、異なる遺伝子発現プロフィルを有する。
【0284】
(実施例9)
細胞マーカー
ヒト臍帯及びヒト胎盤に由来する細胞の遺伝子発現プロフィルを、Affymetrix GENECHIPを使用して他の供給源由来の細胞のものと比較した。6つの「シグネチャー」遺伝子、すなわち、酸化LDL受容体1、インターロイキン−8(IL−8)、レンニン、レチクロン、ケモカイン受容体リガンド3(CXCリガンド3)、及び顆粒球走化性タンパク質2(GCP−2)、が特定された。これらの「シグネチャー」遺伝子は、臍由来細胞において比較的高レベルで発現した。
【0285】
この実施例で説明される手順は、マイクロアレイデータを検証し、遺伝子及びタンパク質の発現についてデータを比較するため、並びに、臍由来細胞に関する一意的識別子を検出するための一連の信頼性の高いアッセイを確立するために実施された。
【0286】
臍由来細胞(4つの単離株)、胎盤由来細胞(3つの単離株、核型分析によって同定されるような、主として新生児性の単離株1つを含む)、及び正常ヒト表皮繊維芽細胞(NHDF;新生児及び成人)を、ゼラチンチコーティングT75フラスコ内の増殖培地で増殖させた。間葉系幹細胞(MSCs)を間葉系幹細胞増殖培地Bulletキット(MSCGM;Cambrex,Walkersville,MD)で増殖させた。
【0287】
IL−8実験に関しては、細胞を液体窒素から解凍して、ゼラチンコートフラスコ内に5,000細胞/cm
2で播種して増殖培地中で48時間増殖させ、次いで、更に8時間、10mLの血清飢餓培地[DMEM−低グルコース(Gibco,Carlsbad,CA)、ペニシリン(50単位/mL)、ストレプトマイシン(50μg/mL)(Gibco)、及び0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma,St.Louis,MO)]中で増殖させた。次に、RNAを抽出して、上清を150×gで5分間遠心分離することにより、細胞残屑を除去した。上清を、ELISA分析まで、−80℃で凍結させた。
【0288】
臍帯組織由来細胞、胎盤組織由来細胞、並びにヒト新生児包皮に由来する線維芽細胞を、ゼラチンでコーティングされたT75フラスコ内の増殖培地で培養した。継代数11で、液体窒素中で細胞を凍結させた。細胞を解凍して、15mL遠心分離管に移した。150×gで5分間の遠心分離後、上清を廃棄した。4mLの培養培地中に、細胞を再懸濁させ、計数した。15ミリリットルの増殖培地を収容する75cm
2フラスコ内で、375,000細胞/フラスコで、細胞を24時間増殖させた。この培地を、8時間かけて血清飢餓培地に交換した。インキュベーション終了時に、血清飢餓培地を収集し、14,000×gで5分間、遠心分離した(そして−20℃で保存した)。
【0289】
各フラスコ内の細胞数を概算するために、2mLのトリプシン/EDTA(Gibco,Carlsbad,CA)を各フラスコに添加した。フラスコから細胞を剥離した後、8ミリリットルの増殖培地を使用して、トリプシン活性を中和した。細胞を15mL遠心分離管に移し、150×gで5分間、遠心分離した。上清を除去し、各管に1ミリリットルの増殖培地を加えて、細胞を再懸濁させた。細胞数は、血球計数器によって推算した。
【0290】
細胞によって血清飢餓培地中へ分泌されたIL−8の量を、ELISAアッセイ(R&D Systems(Minneapolis,MN))を使用して分析した。全てのアッセイは、製造業者によって提供される説明書に従って実施した。
【0291】
コンフルエントな臍帯由来細胞及び繊維芽細胞から、あるいはIL−8の発現のため、上述のように処理した細胞から、RNAを抽出した。製造業者の説明書(RNeasy(登録商標)Mini Kit;Qiagen,Valencia,CA)に従って、β−メルカプトエタノール(Sigma,St.Louis,MO)を含有する350μLの緩衝液RLTを使用して、細胞を溶解した。製造業者の説明書(RNeasy Mini Kit;Qiagen,Valencia,CA)に従ってRNAを抽出し、DNase処理(2.7単位/サンプル)(Sigma,St.Louis,MO)を施した。RNAは、50マイクロリットルDEPC処理済み水で溶出させ、−80℃で保存した。ヒト臍帯からもRNAを抽出した。β−メルカプトエタノールを含有する、700マイクロリットルの緩衝液RLT中に、組織(30ミリグラム)を懸濁させた。製造業者の仕様書に従って、サンプルを機械的に均質化し、RNAの抽出を進めた。50マイクロリットルのDEPC処理水を使用して、RNAを抽出し、−80℃で保存した。
【0292】
RNAは、TaqMan(登録商標)逆転写試薬(Applied Biosystems(Foster City,Ca.))でランダムヘキサマーを用い、25℃で10分間、37℃で60分間、及び95℃で10分間、逆転写させた各試料を−20℃で保存した。
【0293】
臍帯細胞で特異的に調節されているとして、cDNAマイクロアレイによって特定された遺伝子(シグネチャー遺伝子−酸化LDL受容体、インターロイキン−8、レンニン、及びレチクロンを含む)を、リアルタイムPCR及び従来のPCRを使用して、更に調べた。
【0294】
商品名ASSAYS−ON−DEMAND(Applied Biosystems)遺伝子発現産物で販売されている遺伝子発現産物を使って、cDNAサンプルについてPCRを実施した。酸化LDL受容体(Hs00234028);レンニン(Hs00166915);レチクロン(Hs00382515);CXCリガンド3(Hs00171061);GCP−2(Hs00605742);IL−8(Hs00174103);及びGAPDHは、ABI Prism 7000 SDSソフトウェア(Applied Biosystems)と共に7000配列検出システムを使用して、製造業者の説明書(Applied Biosystems)に従って、cDNA及びTaqMan(登録商標)Universal PCRマスターミックスと混合した。熱サイクル条件は、最初に50℃で2分間、及び95℃で10分間とし、その後、95℃で15秒間及び60℃で1分間の40サイクルが続いた。PCRデータは、製造業者の仕様書(ABI Prism 7700配列検出システムについてApplied BiosystemsからのUser Bulletin #2)に従って分析した。
【0295】
ABI PRISM 7700(Perkin Elmer Applied Biosystems(Boston,MA))を使用して、従来のPCRを実行することにより、リアルタイムPCRからの結果を確認した。PCRは、2マイクロリットルのcDNA溶液(1×Taqポリメラーゼ(商品名AMPLITAQ GOLD)ユニバーサルミックスPCR反応緩衝液(Applied Biosystems)及び初期変性を使用して、94℃で5分間行われた。各プライマーセットに関して、増幅を最適化させた。IL−8、CXCリガンド3、及びレチクロン(94℃で15秒間、55℃で15秒間、及び72℃で30秒間を、30サイクル);レンニン(94℃で15秒間、53℃で15秒間、及び72℃で30秒間を、38サイクル);酸化LDL受容体及びGAPDH(94℃で15秒間、55℃で15秒間、及び72℃で30秒間を、33サイクル)。増幅に使用したプライマーを、表9−1に掲載する。最終PCR反応におけるプライマー濃度は、1マイクロモルとしたが、ただし、GAPDHに関しては0.5マイクロモルとした。GAPDHプライマーは、リアルタイムPCRと同じであったが、ただし、製造業者のTaqMan(登録商標)プローブは、最終PCR反応に加えなかった。2%(w/v)アガロースゲル上でサンプルを分離し、臭化エチジウム(Sigma,St.Louis,MO)で染色した。単焦点POLAROIDカメラ(VWR International(South Plainfield,NJ))を使用して、667フィルム(Universal Twinpack,VWR International(South Plainfield,NJ))に画像を取り込んだ。
【0296】
【表29】
【0297】
臍帯由来細胞及び胎盤組織由来細胞は、4%(w/v)の冷パラホルムアルデヒド(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)で10分間、室温にて固定された。継代数0(P0(単離直後)及び継代数11(P11)における臍帯由来細胞のそれぞれ1つの単離物(胎盤由来細胞の2つの単離株)、並びに繊維芽細胞(P11)の単離物を使用した。免疫細胞化学は、以下のエピトープに対する抗体を使用して実行した:ビメンチン(1:500;Sigma(St.Louis,MO))、デスミン(1:150;Sigma、ウサギに対して産生;又は1:300;Chemicon(Temecula,CA)−マウスに対して産生)、α−平滑筋アクチン(SMA;1:400;Sigma)、サイトケラチン18(CK18;1:400;Sigma)、ヴォン・ヴィレブランド因子(vWF;1:200;Sigma)、及びCD34(ヒトCD34クラスIII;1:100;DAKOCytomation(Carpinteria,CA))。更には、以下のマーカーを、継代数11の臍帯由来細胞に対して試験した:抗ヒトGROα−PE(1:100;Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))、抗ヒトGCP−2(1:100;Santa Cruz Biotech(Santa Cruz,CA))、抗ヒト酸化LDL受容体1(ox−LDL R1;1:100;Santa Cruz Biotech)、及び抗ヒトNOGA−A(1:100;Santa Cruz Biotech)。
【0298】
培養物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,CA))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma(St.Louis,MO))を含有するタンパク質ブロッキング溶液に30分間曝した。目的のエピトープが、細胞表面(CD34、ox−LDL R1)上に位置している場合には、エピトープの損失を防ぐために、この手順の全ての工程で、Triton X−100を省略した。更に、一次抗体がヤギ(GCP−2、ox−LDL R1、NOGO−A)に対して産生された場合には、プロセスを通じて、ヤギ血清の代わりに、3%(v/v)ロバ血清を使用した。次いで、ブロッキング溶液で希釈された一次抗体を、室温で、1時間にわたって、これらの培養物に適用した。一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−Texas Red(1:250;Molecular Probes(Eugene,OR))及び/又はヤギ抗ウサギIgG−Alexa 488(1:250;Molecular Probes)若しくはロバ抗ヤギIgG−FITC(1:150;Santa Cruz Biotech)と共にブロックを含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。次いで、培養物を洗浄し、10マイクロモルのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
【0299】
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,NY))上で、適切な蛍光フィルターを使用して、蛍光を可視化した。全ての場合において、陽性染色は、一次抗体溶液の適用を除いて上記で概説した全手順に従った場合、対照染色を上回る蛍光シグナルを表した(1°対照なし)。代表的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,CA))を使用して取り込んだ。3重染色サンプルに関しては、1回に1つのみの発光フィルターを使用して、各画像を撮影した。次いで、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe(San Jose,CA))を使用して、階層モンタージュを準備した。
【0300】
フラスコ内の付着細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco(Carlsbad,CA))中で洗浄し、トリプシン/EDTA(Gibco(Carlsbad,CA))を使用して剥離させた。細胞を採取して、遠心分離し、PBS中3%(v/v)のFBSに、1×10
7/mLの細胞濃度で再懸濁させた。100マイクロリットルのアリコートを、円錐管に送った。細胞内抗原について染色された細胞に対し、Perm/Wash緩衝液(BD Pharmingen,San Diego,CA)により透過処理した。製造業者の仕様書に従って、アリコートに抗体を添加し、細胞を、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベート後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離して余分な抗体を除去した。二次抗体を必要とする細胞を、100μLの3%FBS中に再懸濁させた。製造業者の仕様書に従って、二次抗体を添加し、細胞を、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、余分な二次抗体を除去した。洗浄した細胞を、0.5ミリリットルのPBS中に再懸濁させ、フローサイトメトリーによって分析した。以下の抗体を使用した:酸化LDL受容体1(sc−5813;Santa Cruz、Biotech)、GROa(555042;BD Pharmingen,Bedford,MA)、マウスIgG1κ(P−4685及びM−5284;Sigma)、ロバ抗ヤギIgG(sc−3743;Santa Cruz、Biotech)。フローサイトメトリー分析は、FACScalibur(Becton Dickinson(San Jose,CA))を使用して行われた。
【0301】
ヒト臍帯、ヒト胎盤組織、成人及び新生児線維芽細胞、並びに間葉系幹細胞(MSC)からのcDNAに対して行われた、選択された「シグネチャー」遺伝子に関するリアルタイムPCRの結果は、臍由来細胞が、他の細胞と比べてレチキュロン発現が高いことを示している。このリアルタイムPCRから得られたデータを、ΔΔCT法によって分析し、対数目盛で表した。CXCリガンド及びGCP−2の発現レベルにおける有意な差異は、産後細胞と対照の間には見られなかった。リアルタイムPCRの結果を、従来のPCRによって確認した。PCR産物の配列決定により、これらの観察結果が更に立証された。表9−1に挙げた従来のPCRのCXCリガンド3プライマーを使用したところ、分娩後由来細胞と対照との間には、CXCリガンド3の発現レベルに有意差は見出されなかった。
【0302】
臍帯細胞におけるサイトカインIL−8の発現は、増殖培地で培養した臍帯由来細胞及び血清不足の臍帯由来細胞の両方において上昇した。リアルタイムPCRの全データは、従来のPCRで、またPCR産物を配列決定することによって立証された。
【0303】
無血清培地で培養した後、馴化培地が、IL−8の存在について調べられた。表9−2は、胎盤由来細胞、臍帯由来細胞、並びにヒト皮膚線維芽細胞について行ったインターロイキン−8(IL−8)についてのELISAアッセイの結果を示す。表示した値は、ピコグラム/100万細胞、n=2、semである。ND:検出されず。
【0304】
最大量のil−8が検出されたのは、臍細胞が培養された培地であった(表9−2)。ヒト皮膚線維芽細胞が培養された培地ではil−8が検出されなかった。
【0305】
【表30】
【0306】
継代0でのヒト臍帯由来細胞を、選択されたタンパク質の産生に関して、免疫細胞化学分析によって調べた。単離の直後(継代数0)に、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、6つのタンパク質、すなわち、ヴォン・ヴィレブランド因子、CD34、サイトケラチン18、デスミン、α−平滑筋アクチン、及びビメンチン、の抗体に曝した。臍帯由来細胞は、α−平滑筋アクチン及びビメンチンに対して陽性であり、この染色パターンは、継代数11まで一貫していた。
【0307】
継代11の臍帯由来細胞におけるGROα、GCP−2、酸化LDL受容体1、レチキュロン(NOGO−A)の産生を、免疫細胞化学によって調べた。臍帯由来細胞はGCP−2について陽性であったが、GROαの産生は、この方法では検出されなかった。更に、細胞は、NOGO−Aについて陽性であった。
【0308】
4つの遺伝子、すなわち、酸化LDL受容体1、レンニン、レチクロン、及びIL−8に関し、マイクロアレイ及びPCR(リアルタイム及び従来の双方)によって測定される遺伝子発現レベル間の一致が確認された。これらの遺伝子の発現は、臍帯由来細胞においてmRNAレベルで示差的に調節され、IL−8もまた、タンパク質レベルで示差的に調節された。GCP−2及びCXCリガンド3の示差的発現は、mRNAレベルで確認されなかった。この結果は、マイクロアレイ実験から最初に得られたデータを支持するものではないが、これは、方法の感受性における違いによるものであろう。
【0309】
継代数0でのヒト臍帯由来細胞を、α−平滑筋アクチン及びビメンチンの発現に関して調べたところ、双方に関して陽性であった。この染色パターンは、継代数11まで保持された。
【0310】
結論として、完全なmRNAデータは、マイクロアレイ実験から得られたデータを少なくとも部分的に検証する。
【0311】
(実施例10)
細胞表現型の免疫組織化学的特性評価
ヒト臍帯組織に見出される細胞の表現型を、免疫組織化学的検査によって分析した。
【0312】
ヒト臍帯組織を採取し、4%(w/v)パラホルムアルデヒドにより4℃で一晩浸漬固定した。免疫組織化学的検査は、以下のエピトープに対する抗体を使用して実行した(表10−1を参照):ビメンチン(1:500;Sigma,St.Louis,MO)、デスミン(1:150、ウサギに対して産生;Sigma;又は1:300、マウスに対して産生;Chemicon,Temecula,CA)、α−平滑筋アクチン(SMA;1:400;Sigma)、サイトケラチン18(CK18;1:400;Sigma)、ヴォン・ヴィレブランド因子(vWF;1:200;Sigma)、及びCD34(ヒトCD34クラスIII;1:100;DAKOCytomation,Carpinteria,CA)。更に、以下のマーカーを試験した:抗ヒトGROα−PE(1:100;Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))、抗ヒトGCP−2(1:100;Santa Cruz Biotech(Santa Cruz,CA))、抗ヒト酸化LDL受容体1(ox−LDL R1;1:100;Santa Cruz Biotech)、及び抗ヒトNOGO−A(1:100;Santa Cruz Biotech)。固定された検体を外科用メスを使用してトリミングし、エタノールを含有するドライアイス浴上の、OCT包理化合物(Tissue−Tek OCT;Sakura(Torrance,CA))内に定置した。次いで、凍結ブロックを、標準のクライオスタット(Leica Microsystems)を使用して切片(厚さ10μm)とし、染色のためにスライドガラス上に載置した。
【0313】
免疫組織化学的検査は、先の研究と同様に行われた(例えば、Messinaら、Exper.Neurol.,2003;184:816−829)。組織切片を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,CA))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma)を含有するタンパク質ブロッキング溶液に、1時間曝した。目的のエピトープが細胞表面(CD34、ox−LDL R1)上に位置している場合には、エピトープの損失を防ぐために、この手順の全ての段階で、Tritonを省略した。更に、一次抗体がヤギ(GCP−2、ox−LDL R1、NOGO−A)に対して産生された場合には、手順全体を通して、ヤギ血清の代わりに、3%(v/v)ロバ血清を使用した。次いで、ブロッキング溶液で希釈された一次抗体を、室温で4時間にわたって、これらの切片に適用した。一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−Texas Red(1:250;Molecular Probes(Eugene,OR))及び/若しくはヤギ抗ウサギIgG−Alexa 488(1:250;Molecular Probes)又はロバ抗ヤギIgG−FITC(1:150;Santa Cruz Biotech)と共にブロックを含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。培養物を洗浄し、10マイクロモルのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
【0314】
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,NY))上で、適切な蛍光フィルターを使用して、蛍光を可視化した。陽性染色は、対照染色を上回る蛍光シグナルによって表された。代表的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,CA))を使用して取り込んだ。3重染色サンプルに関しては、1回に1つのみの発光フィルターを使用して、各画像を撮影した。次いで、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe(San Jose,CA))を使用して、階層モンタージュを調製した。
【0315】
【表31】
【0316】
ビメンチン、デスミン、SMA、CK18、vWF、及びCD34マーカーは、臍帯内部に見出される細胞のサブセットで発現した(データ示さず)。具体的には、vWF及びCD34の発現は、臍帯内部に含まれる血管に限定されていた。CD34+細胞は、最内層(内腔側)に存在した。ビメンチンの発現は、臍帯のマトリックス及び血管の全域に見られた。SMAは、動脈及び静脈の、マトリックス及び外壁に限定されたが、血管自体には含まれなかった。CK18及びデスミンは、血管内部のみに観察され、デスミンは、中層及び外層に限定された。
【0317】
これらのマーカーのいずれも、臍帯内部では観察されなかった(データ示さず)。
【0318】
ビメンチン、デスミン、α−平滑筋アクチン、サイトケラチン18、ヴォン・ヴィレブランド因子、及びCD 34は、ヒト臍帯内部の細胞内で発現する。ビメンチン及びα−平滑筋アクチンのみが発現することを示したインビトロ特性分析に基づいて、データは、臍帯由来細胞を単離する本プロセスが細胞の亜集団を採取するものであること、又は単離した細胞がマーカーの発現を変化させてビメンチン及びα−平滑筋アクチンを発現することを示唆している。
【0319】
(実施例11)
UTCが培養液内で培養される際の栄養因子の分泌
培養液内で培養される臍由来細胞からの、選択された栄養因子の分泌を測定した。血管新生活性(即ち、幹細胞増殖因子(HGF))(Rosenら、Ciba Found.Symp.1997;212:215−26)、単球走化性タンパク質1(単球走化活性因子1としても知られている)(MCP−1)(Salcedoら、Blood,2000;96;34−40)、インターロイキン8(IL−8)(Liら、J.Immunol.,2003;170:3369−76)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、塩基性線維芽細胞(bFGF)、血管内皮成長因子(VEGF)(Hughesら、Ann.Thorac.Surg.,2004 77:812−8)、マトリックスコラーゲン分解酵素阻害1(TIMP1)、アンジオポエチン2(ANG2)、血小板由来成長因子(PDGFbb)、トロンボポイエチン(TPO)、ヘパリン結合上皮成長因子(HB−EGF)、神経栄養/神経保護活性(脳由来神経栄養因子(BDNF)(Chengら、Dev.Biol.,2003;258;319−33)、ストロマ由来因子1α(SDF−1α)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球走化性タンパク質−2(GCP−2)、トランスフォーミング増殖因子β2(TGFβ2))、又はケモカイン活性(マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP1a)、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP1β))、RANTES(活性時に調節、発現お及び分泌された正常なT細胞)、I309、胸腺及び活性化調節ケモカイン(TARC)、エオタキシン、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)を有する因子が選択された。
【0320】
臍帯由来の細胞、並びにヒト新生児包皮由来のヒト繊維芽細胞を、ゼラチンコートT75フラスコ上の増殖培地において培養した。継代数11で、細胞を凍結保存し、液体窒素中で保存した。細胞の解凍後、それらの細胞に増殖培地を加え、その後、15mL遠心分離管に移して、150×gで5分間、それらの細胞を遠心分離した。4ミリリットルの増殖培地中に、細胞ペレットを再懸濁させ、細胞を計数した。細胞は、それぞれ15mLの増殖培地を含むT75フラスコ内において、5,000細胞/cm
2で播種し、24時間の培養を行った。培地を、無血清培地(DMEM−低グルコース(Gibco)、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(Sigma)、ペニシリン(50単位/mL)、及びストレプトマイシン(50μg/mL、Gibco)に8時間かけて変えた。インキュベーションの終了時に、14,000×gで5分間遠心分離を行い無血清馴化培地を回収し、−20℃で保存した。
【0321】
各フラスコ内の細胞数を推算するため、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、2mLのトリプシン/EDTA(Gibco)を使用して分離した。8ミリリットルの増殖培地を加えることにより、トリプシン活性を抑制した。これらの細胞を、150×gで5分間、遠心分離した。上清を除去し、1ミリリットルの増殖培地中に、細胞を再懸濁させた。細胞数は、血球計数器によって推算した。
【0322】
細胞を、5%二酸化炭素及び大気酸素中、37℃で増殖させた。各細胞サンプルによって産生された、MCP−1、IL−6、VEGF、SDF−1α、GCP−2、IL−8、及びTGF−β2の量を、ELISA(R&D Systems,Minneapolis,Mn.)によって判定した。全てのアッセイは、製造業者の説明書に従って行われた。示された値は、100万個の細胞当たりのピコグラム/mL/mL(n=2,sem)である。
【0323】
ケモカイン(MIP1α(MIP1α)、MIP1β(MIP1β)、MCP−1、Rantes、I309、TARC、エオタキシン、MDC、IL8)、BDNF、及び血管新生因子(HGF、KGF、bFGF、VEGF、TIMP1、ANG2、PDGFbb、TPO、HB−EGF)を、SearchLight(商標)プロテオームアレイ(Pierce Biotechnology Inc.)を使用して測定した。このプロテオームアレイは、ウェル当り2〜16のタンパク質を定量測定するための、多重サンドイッチELISAである。これらのアレイは、96ウェルプレートの各ウェル内に、2×2、3×3、又は4×4パターンの、4〜16の異なる捕捉抗体をスポットすることによって産生される。サンドイッチELISA手順の後に、プレート全体を画像化して、プレートの各ウェル内部の各スポットで生成された、化学発光シグナルを捕捉する。各スポット内で生成されるシグナルの量は、元の標準又はサンプル中の、標的タンパク質の量に比例する。
【0324】
MCP−1及びIL−6は、臍由来PPDC及び皮膚繊維芽細胞によって分泌された(表11−1)。SDF−1α(SDF−1α)及びGCP−2が線維芽細胞によって分泌された。GCP−2及びIL−8は、臍由来PPDCによって分泌された。TGF−β2は、いずれの細胞型においても、ELISAによって検出されなかった。
【0325】
【表32】
【0326】
SearchLight(商標)多重ELISAアッセイ。培養液内で培養される時、臍由来PPDCからTIMP1、TPO、KGF、HGF、FGF、HBEGF、BDNF、MIPIβ、MCP1、RANTES、I309、TARC、MDC、及びIL−8が分泌された(下記の表11−2及び表11−3を参照)。Ang2、VEGF、又はPDGFbbは検出されなかった。
【0327】
【表33】
【0328】
【表34】
【0329】
臍由来細胞は、多数の栄養因子を分泌した。HGF、bFGF、MCP−1、及びIL−8などの、これらの栄養因子のうちの一部は、血管新生において重要な役割を果たす。BDNF及びIL−6などの他の栄養因子は、神経再生又は保護に重要な役割を果たす。
【0330】
(実施例12)
インビトロ免疫学
インビボ移植の際に臍帯細胞株(PPDC)が誘導する免疫応答を(もしあれば)予測する目的で、臍帯細胞株を、それらの免疫学的特性に関してインビトロで評価した。分娩後細胞株をフローサイトメトリーでHLA−DR、HLA−DP、HLA−DQ、CD80、CD86、及びB7−H2の発現について分析した。これらのタンパク質は、抗原提示細胞(APC)によって発現され、ナイーブCD4
+ T細胞の直接刺激のために必要とされる(Abbas & Lichtman、Cellular and Molecular Immunology,5th Ed.(2003)Saunders,Philadelphia,p.171)。これらの細胞株はまた、HLA−G(Abbas & Lichtman、上掲),CD178(Coumansら、(1999)Journal of Immunological Methods 224,185〜196)、及びPD−L2(Abbas & Lichtman、上掲;Brownら、The Journal of Immunology 170,2003;1257〜1266)の発現に関しても、フローサイトメトリーによって分析された。分娩後の臍由来細胞株が、インビボで免疫反応を誘発する程度を予測するために、それらの細胞株を、一方向混合リンパ球反応(MLR)で試験した。
【0331】
細胞は、コンフルエントになるまで、2%ゼラチン(Sigma(St.Louis,MO))でコーティングされたT75フラスコ(Corning(Corning,NY))内の増殖培地で培養された。
【0332】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco(Carlsbad,CA))で細胞を洗浄し、トリプシン/EDTA(Gibco(Carlsbad,MO))を使用して剥離させた。細胞を採取して、遠心分離し、PBS中3%(v/v)のFBS中に、1×10
7/ミリリットルの細胞濃度で再懸濁させた。製造業者の仕様書に従って、100マイクロリットルの細胞懸濁液に、抗体(表12−1)を加え、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、非結合の抗体を除去した。500マイクロリットルのPBSに細胞を再懸濁させ、FACSCalibur計器(Becton Dickinson(San Jose,CA))を使用して、フローサイトメトリーによって分析した。
【0333】
【表35】
【0334】
細胞株「A」とし標識された継代数10の臍由来PPDCの凍結保存バイアルをドライアイスに載せてCTBR(Senneville,Quebec)に送り、CTBR SOP No.CAC−031を用いて混合リンパ球反応を実施した。末梢血単核細胞(PBMC)を、複数の男性及び女性のボランティアドナーから収集した。6つのヒトボランティア血液ドナーをスクリーニングして、他の5つの血液ドナーとの混合リンパ球反応で強い増殖反応を示す、単一の同種異系ドナーを特定した。このドナーを、同種異系陽性対照ドナーとして選択した。残りの5つの血液ドナーを、レシピエントとして選択した。刺激側(ドナー)同種異系PBMC、自家PBMC、及び分娩後細胞株を、マイトマイシンCで処理した。自家のものであり、マイトマイシンC処理した刺激細胞を、反応者(レシピエント)PBMCに添加して、4日間培養した。インキュベーション後、各サンプルに[
3H]チミジンを添加して、18時間培養した。これらの細胞を採取した後に、放射標識DNAを抽出し、シンチレーション計数器を使用して、[
3H]−チミジンの取り込みを測定した。プレート当たり3つ受容細胞を入れた細胞培養プレートを2つ使用して、反応を3回実施した。
【0335】
同種異系ドナーに関する刺激指数(SIAD)は、受容側+マイトマイシンC処理同種異系ドナーの平均増殖を、受容側のベースライン増殖によって除算したものとして、計算した。UTCの刺激指数は、受容側+マイトマイシンC処理分娩後細胞株の平均増殖を、受容側のベースライン増殖によって除算したものとして、算出した。
【0336】
6つのヒトボランティア血液ドナーをスクリーニングして、他の5つの血液ドナーとの混合リンパ球反応で強い増殖反応を示す、単一の同種異系ドナーを特定した。このドナーを、同種異系陽性対照ドナーとして選択した。残りの5つの血液ドナーを、レシピエントとして選択した。同種異系陽性対照ドナー及び臍帯由来細胞株を、マイトマイシンC処理して、5つの個々の同種異系受容側との混合リンパ球反応下で培養した。反応は、プレート当り3つの受容側を入れた細胞培養プレートを2つ使用して、3回実施した(表12−2)。平均刺激指数は、6.5(プレート1)〜9(プレート2)の範囲であり、同種異系ドナー陽性対照は、42.75(プレート1)〜70(プレート2)の範囲であった(表12−3)。
【0337】
【表36】
【0338】
【表37】
【0339】
【表38】
【0340】
フローサイトメトリーによって分析された、臍帯由来細胞のヒストグラムは、IgG対照と一致する蛍光値によって認められる通り、HLA−DR、DP、DQ、CD80、CD86、及びB7−H2の陰性発現を示すが、このことは、臍帯細胞株には、同種PBMCを直接刺激するのに必要な細胞表面分子がないこと(例えば、CD4
+ T細胞)を示している。
【0341】
フローサイトメトリーで分析された臍細胞は、lgG対照に対する蛍光の増加に示されるように、PD−L2の発現については陽性であった。これらの細胞は、IgG対照と一致する蛍光値により示されるように、CD178及びHLA−Gの発現については陰性であった。
【0342】
臍細胞株を使用して実施された混合リンパ球反応では、平均刺激指数は6.5〜9の範囲であり、同種異系陽性対照の平均刺激指数は42.75〜70の範囲であった。臍細胞株は、フローサイトメトリーによる測定では、検出可能な量の刺激タンパク質HLA−DR、HLA−DP、HLA−DQ、CD80、CD86、及びB7−H2を発現しなかった。また、臍細胞株は、免疫修飾剤タンパク質HLA−G及びCD178も発現しなかったが、PD−L2の発現がフローサイトメトリーによって検出された。同種異系ドナーPBMCは、HLA−DR、DQ、CD8、CD86、及びB7−H2を発現する、抗原提示細胞を含むことにより、同種異形リンパ球の刺激が可能となる。ナイーブCD4
+T細胞の直接刺激に必要とされる、臍由来細胞上の抗原提示細胞表面分子の非存在、並びに免疫調節タンパク質PD−L2の存在は、同種異系対照と比較した場合に、MLR中でこれらの細胞により示される低い刺激指数を説明し得る。
【0343】
(実施例13)
テロメラーゼ活性の分析
テロメラーゼは、染色体の完全性を保護し、また細胞の複製寿命を延長するために役立つ、テロメア繰り返し体を合成するように機能する(Liu,Kら、PNAS,1999年:96:5147〜5152)。テロメラーゼは、テロメラーゼRNAテンプレート(hTER)、及びテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)の2つの成分からなる。テロメラーゼの調節は、hTERではなく、hTERTの転写によって決定される。hTERTmRNAに関するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、それゆえ、細胞のテロメラーゼ活性を判定するための容認された方法である。
【0344】
細胞単離
リアルタイムPCR実験を実行して、ヒト臍帯組織由来細胞のテロメラーゼ産生を判定した。ヒト臍帯組織由来細胞は、上記実施例及び米国特許第7,510,873号に記載の実施例に従って調製した。全般的には、正常な分娩後の、National Disease Research Interchange(Philadelphia,Pa.)から得た臍帯を洗浄して、血液及び残渣を除去し、機械的に解離させた。次いで、その組織を、培養培地中、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びヒアルロニダーゼを含む消化酵素と共に、37℃でインキュベートした。ヒト臍帯組織由来細胞は、‘012号特許出願の実施例に記載の方法に従って培養した。間葉系幹細胞及び通常の皮膚線維芽細胞(cc−2509ロット番号9F0844)は、Cambrex(Walkersville,Md)から入手した。多能性ヒト精巣胎児性癌(テラトーマ)細胞株nTera−2細胞(NTERA−2 cl.D1)(Plaiaら、Stem Cells,2006;24(3):531〜546を参照)は、ATCC(Manassas,Va.)から購入し、米国特許第7,510,873号に記載の方法に従って培養した。
【0345】
総RNAの隔離
RNeasy(登録商標)kit(Qiagen(Valencia,Ca.))を使用して、RNAを細胞から抽出した。RNAは、50マイクロリットルのDEPC処理水により溶離させ、−80Cで保存した。RNAは、25℃で10分間、37℃で60分間、95℃で10分間、TaqMane(登録商標)逆転写試薬(Applied Biosystems,Foster City,Ca.)を併用したランダムへキサマーを使用して、逆転写した。各試料を−20℃で保存した。
【0346】
リアルタイムPCR
Applied Biosystems Assays−On−Demand(商標)(TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイとしても既知)を、製造業者の仕様書(Applied Biosystems)に従って使用して、cDNAサンプルに対してPCRを実行した。この市販のキットは、ヒト細胞内のテロメラーゼに関してアッセイするために、広く使用される。簡潔には、hTERT(ヒトテロメラーゼ遺伝子)(Hs00162669)及びヒトGAPDH(内部対照)を、ABI prism 7000 SDSソフトウェア(Applied Biosystems)と共に7000配列検出システムを使用して、cDNA及びTaqMan(登録商標)Universal PCRマスターミックスと混合した。熱サイクル条件は、最初に50℃で2分間及び95℃で10分間とし、その後に、95℃で15秒間及び60℃で1分間の40サイクルとした。PCRデータを、製造業者の仕様書に従って分析した。
【0347】
ヒト臍帯由来細胞(ATCC受託番号PTA−6067)、線維芽細胞、及び間葉系幹細胞を、hTERT及び18S RNAに関してアッセイした。表13−1に示すように、hTERT、よってテロメラーゼは、ヒト臍帯組織由来細胞内では検出されなかった。
【0348】
【表39】
【0349】
ヒト臍帯組織由来細胞(単離株022803、ATCC受託番号PTA−6067)及びnTera−2細胞をアッセイしたところ、それらの結果は、ヒト臍帯組織由来細胞の2つのロットでは、テロメラーゼの発現を示さなかったが、一方で、テラトーマ細胞株は、高レベルで発現することが明らかとなった(表13−2)。
【0350】
【表40】
【0351】
それゆえ、本発明のヒト臍帯由来細胞は、テロメラーゼを発現しないということを、結論付けることができる。
【0352】
以上、本発明を、様々な特定の材料、手順及び実施例を参照しながら本明細書に説明及び例示したが、本発明は、その目的のために選択された特定の材料及び手順の組み合わせに限定されない点は理解されるであろう。当業者には認識されるように、このような細部には多くの変更を行い得ることが示唆される。本明細書及び実施例はあくまで例示的なものとしてみなされるべきものであり、発明の真の範囲及び趣旨は以下の「特許請求の範囲」によって示されるものである。本出願において引用される参照文献、特許及び特許出願は、いずれもそれらの全容を参照により本明細書に援用するものとする。
【0353】
〔実施の態様〕
(1) 肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷を有する患者における前記肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を調節する際に使用する臍帯組織由来細胞であって、前記細胞は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117又はCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、臍帯組織由来細胞。
(2) 前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータが、前記肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の進行に係る、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(3) 前記肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、急性肺損傷(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(4) 前記肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷が、慢性閉塞性肺疾患である、実施態様3に記載の臍帯組織由来細胞。
(5) 前記慢性閉塞性肺疾患が、慢性気管支炎又は気腫である、実施態様4に記載の臍帯組織由来細胞。
【0354】
(6) 前記調節が、少なくとも1つの他の細胞型及び/又は少なくとも1つの他の剤と共に前記細胞を投与することを含む、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(7) 前記他の細胞型が、肺前駆細胞、血管平滑筋細胞、血管平滑筋前駆細胞、周細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、又は他の多分化能若しくは多能幹細胞から選択される肺組織細胞である、実施態様6に記載の臍帯組織由来細胞。
(8) 前記剤が、抗血栓性薬剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、免疫調節薬、血管新生促進剤、又は抗アポトーシス剤である、実施態様6に記載の臍帯組織由来細胞。
(9) 前記細胞が、前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの前記産生を低減する、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(10) 前記細胞が、前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの前記産生を抑制する、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
【0355】
(11) 調節が、注射、注入、前記患者に植え込まれた装置により、又は前記細胞を含むマトリックス若しくはスカフォールドの植え込みにより前記細胞を投与することを含む、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(12) 前記細胞が、前記患者の前記肺組織、血管平滑筋、又は血管内皮に栄養作用を及ぼす、実施態様1に記載の臍帯組織由来細胞。
(13) 慢性閉塞性肺疾患を有する患者における前記慢性閉塞性肺疾患の1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を低減する際に使用する臍帯組織由来細胞であって、前記細胞は、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、臍帯組織由来細胞。
(14) 前記細胞が、慢性閉塞性肺疾患の前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの前記産生を抑制する、実施態様13に記載の臍帯組織由来細胞。
(15) 前記慢性閉塞性肺疾患が、気腫である、実施態様13に記載の臍帯組織由来細胞。
【0356】
(16) 前記慢性閉塞性肺疾患が、慢性気管支炎である、実施態様13に記載の臍帯組織由来細胞。
(17) 前記低減することが、前記慢性閉塞性肺疾患の部位に前記細胞を投与することを含む、実施態様13に記載の臍帯組織由来細胞。
(18) 前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータが、TNF−α、RANTES、MCP−1、IL−1β、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様1又は13に記載の臍帯組織由来細胞。
(19) 前記細胞に、CD117及びCD45の産生がない、実施態様1又は13に記載の臍帯組織由来細胞。
(20) 前記細胞が、更に、
(a)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する、
(b)CD31又はCD34を発現しない、
(c)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1(reticulon 1)の発現レベルが増加する、並びに
(d)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、という特性のうちの1つ又は2つ以上を含む、実施態様1又は13に記載の臍帯組織由来細胞。
【0357】
(21) 単離されたヒト臍帯組織由来細胞を含む、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を調節する際に使用する医薬組成物であって、前記細胞が、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から取得可能であり、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、医薬組成物。
(22) 前記肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、急性肺損傷(ALI)、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される、実施態様21に記載の医薬組成物。
(23) 前記肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷が、慢性閉塞性肺疾患である、実施態様22に記載の医薬組成物。
(24) 前記慢性閉塞性肺疾患が、慢性気管支炎又は気腫である、実施態様23に記載の医薬組成物。
(25) 単離されたヒト臍帯組織由来細胞を含む、慢性閉塞性肺疾患を有する患者における前記慢性閉塞性肺疾患の1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を低減する際に使用する医薬組成物であって、前記細胞が、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から取得可能であり、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、医薬組成物。
【0358】
(26) 前記使用が、慢性閉塞性肺疾患の前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの前記産生を抑制する、実施態様25に記載の医薬組成物。
(27) 前記慢性閉塞性肺疾患が、慢性気管支炎又は気腫である、実施態様25に記載の医薬組成物。
(28) 前記1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータが、TNF−α、RANTES、MCP−1、IL−1β及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様21又は25に記載の医薬組成物。
(29) 前記細胞が、更に、
(a)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現する、
(b)CD31又はCD34を発現しない、
(c)ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1の発現レベルが増加する、並びに
(d)少なくとも肺組織の細胞に分化する可能性を有する、という特性のうちの1つ又は2つ以上を含む、実施態様21又は25に記載の医薬組成物。
(30) 薬学的に許容されるキャリア及び臍帯組織由来細胞を含む、肺疾患、肺障害、及び/又は肺損傷の病状に係る1つ又は2つ以上の炎症促進性メディエータの産生を調節するためのキットであって、前記細胞が、実質的に血液を含まないヒト臍帯組織から単離されており、培養液中で自己再生及び増殖が可能であり、CD117及びCD45の産生がなく、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、キット。
【0359】
(31) 前記肺疾患が、慢性閉塞性肺疾患である、実施態様30に記載のキット。