特許第6779935号(P6779935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779935
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】歯科用前処理剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/40 20200101AFI20201026BHJP
   A61K 6/70 20200101ALI20201026BHJP
【FI】
   A61K6/40
   A61K6/70
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-67504(P2018-67504)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-178082(P2019-178082A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2019年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤森 健輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚史
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−063489(JP,A)
【文献】 特開2005−073812(JP,A)
【文献】 特開平01−244743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00−6/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子及び/又はアルミナ粒子が凝集している凝集二次粒子が酸水溶液中に分散している歯科用前処理剤であって、
前記凝集二次粒子は、シリカ粒子及びアルミナ粒子が凝集している凝集二次粒子を含み、
当該歯科用前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子は、体積平均粒径が0.1〜20μmであり、粒径が50μm以上である凝集二次粒子の含有量が20体積%以下であることを特徴とする歯科用前処理剤。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科用前処理剤を製造する方法であって、
前記シリカ粒子、前記アルミナ粒子及び前記酸水溶液を硬練りする工程を含むことを特徴とする歯科用前処理剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用前処理剤及び歯科用前処理剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療において、ダイヤモンドポイント等を用いて、歯牙のう蝕部を切削して窩洞を形成した後、グラスアイオノマーセメント、コンポジットレジン等の充填材を用いて、窩洞に充填する保存修復治療が日常的に実施されている。ここで、充填材が窩洞内の歯質と強固に接着していないと、充填材が脱離する。また、充填材が脱離しなくても、窩洞と充填材の間に間隙が存在すると、二次う蝕が発症する可能性が高い。このため、充填材と窩洞内の歯質との間の接着性は、保存修復治療を成功させる上で、重要な要因の一つである。
【0003】
しかしながら、歯牙のう蝕部を切削して窩洞を形成する際に、切削屑、唾液等が歯面に擦り付けられ、厚さ1〜5μmのスメアー層が形成される。このため、充填材と窩洞内の歯質との間の接着性を向上させるためには、スメアー層を除去する必要がある。
【0004】
特許文献1には、ヒュームドシリカが酸水溶液に分散されてなる歯科用前処理剤が開示されている。ここで、ヒュームドシリカは、平均一次粒子径が5〜100nmである。また、歯科用前処理剤を蒸留水に分散させたものをレーザー回折散乱法で測定した際に、i)〜iii)の凝集二次粒子性状を満足して分散する。
【0005】
i)凝集二次粒子の体積平均粒子径が5〜50μmである。
【0006】
ii)体積粒子径が1μm以下の凝集二次粒子の体積%が20%以下である。
【0007】
iii)体積粒子径が100μm以上の凝集二次粒子の体積%が5%以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015−63489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、シリンジに装着した吐出用チップの目詰まり及び液分離が発生するという問題がある。
【0010】
本発明の一態様は、シリンジに装着した吐出用チップの目詰まり及び液分離の発生を抑制することが可能な歯科用前処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、シリカ粒子及び/又はアルミナ粒子が凝集している凝集二次粒子が酸水溶液中に分散している歯科用前処理剤であって、前記凝集二次粒子は、シリカ粒子及びアルミナ粒子が凝集している凝集二次粒子を含み、当該歯科用前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子は、体積平均粒径が0.1〜20μmであり、粒径が50μm以上である凝集二次粒子の含有量が20体積%以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、シリンジに装着した吐出用チップの目詰まり及び液分離の発生を抑制することが可能な歯科用前処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、下記の実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0015】
<歯科用前処理剤>
本実施形態の歯科用前処理剤は、シリカ粒子及び/又はアルミナ粒子が凝集している凝集二次粒子が酸水溶液中に分散している。ここで、シリカ粒子及び/又はアルミナ粒子が凝集している凝集二次粒子は、シリカ粒子及びアルミナ粒子が凝集している凝集二次粒子を含む。
【0016】
本実施形態の歯科用前処理剤は、シリカ粒子、アルミナ粒子及び酸水溶液を混練することにより製造することができるが、その際に、シリカ粒子及びアルミナ粒子が凝集する。このため、歯科用前処理剤中には、シリカ粒子が凝集している凝集二次粒子と、アルミナ粒子が凝集している凝集二次粒子と、シリカ粒子及びアルミナ粒子が凝集している凝集二次粒子が存在する。
【0017】
歯科用前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子の体積平均粒径は、0.1〜20μmであり、0.15〜10μmであることが好ましい。歯科用前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子の体積平均粒径が0.1μm未満であると、液分離が発生しやすくなり、20μmを超えると、シリンジに装着した吐出用チップの目詰まりが発生しやすくなる。
【0018】
歯科用前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子中の粒径が50μm以上である凝集二次粒子の含有量は、20体積%以下であり、5体積%以下であることが好ましい。歯科用前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子中の粒径が50μm以上である凝集二次粒子の含有量が20体積%を超えると、シリンジに装着した吐出用チップの目詰まりが発生しやすくなる。
【0019】
歯科用前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子中の粒径が20μm以下である凝集二次粒子の含有量は、65体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがさらに好ましい。歯科用前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子中の粒径が20μm以下である凝集二次粒子の含有量が65体積%以上であると、液分離が発生しにくくなる。
【0020】
なお、歯科用前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子の粒度分布は、レーザー回折散乱法により、歯科用前処理剤の水希釈液を測定することにより、求められる。
【0021】
ここで、歯科用前処理剤の水希釈液を作製する際、又は、歯科用前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子の粒度分布を測定する際には、超音波処理しない。
【0022】
酸水溶液に含まれる酸としては、例えば、カルボン酸等の有機酸、リン酸、硝酸、硫酸、フッ酸等の無機酸を使用することができる。
【0023】
カルボン酸の具体例としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸、酢酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸等が挙げられる。
【0024】
なお、酸水溶液に含まれる酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
歯科用前処理剤中の酸水溶液の含有量は、60〜95質量%であることが好ましく、70〜90質量%であることがさらに好ましい。
【0026】
酸水溶液中の酸の含有量は、1〜90質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0027】
シリカ粒子の平均一次粒径は、7〜40nmであることが好ましい。
【0028】
シリカ粒子のBET比表面積は、50〜380m/gであることが好ましい。
【0029】
シリカ粒子の市販品としては、親水性ヒュームドシリカ(日本アエロジル製)等が挙げられる。
【0030】
歯科用前処理剤中のシリカ粒子の含有量は、5〜25質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
アルミナ粒子の平均一次粒径は、10〜17nmであることが好ましい。
【0032】
アルミナ粒子のBET比表面積は、65〜130m/gであることが好ましい。
【0033】
アルミナ粒子の市販品としては、親水性ヒュームドアルミナ(日本アエロジル製)等が挙げられる。
【0034】
歯科用前処理剤中のアルミナ粒子の含有量は、1〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
歯科用前処理剤中のシリカ粒子に対するアルミナ粒子の質量比は、0.25〜0.55であることが好ましく、0.3〜0.5であることがさらに好ましい。
【0036】
本実施形態の歯科用前処理剤は、必要に応じて、顔料等をさらに含んでいてもよい。
【0037】
なお、本実施形態の歯科用前処理剤は、水溶性高分子を実質的に含まない。
【0038】
<歯科用前処理剤の製造方法>
本実施形態の歯科用前処理剤の製造方法は、シリカ粒子、アルミナ粒子及び酸水溶液を混練する工程を含むが、シリカ粒子、アルミナ粒子及び酸水溶液を硬練りする工程を含むことが好ましい。これにより、歯科用前処理剤の吐出性が向上する。
【0039】
シリカ粒子、アルミナ粒子及び酸水溶液を硬練りする際には、シリカ粒子、アルミナ粒子及び全量の65〜85質量%の酸水溶液を混練することが好ましい。
【0040】
シリカ粒子、アルミナ粒子及び酸水溶液を硬練りする際に用いる混練機としては、例えば、プラネタリミキサー(井上製作所製)等を用いることができる。
【0041】
本実施形態においては、シリカ粒子、アルミナ粒子及び酸水溶液を硬練りした後、全量の15〜35質量%の酸水溶液を加え、混練することが好ましい。
【0042】
なお、酸水溶液を2回以上に分けて加えてもよい。
【0043】
また、シリカ粒子、アルミナ粒子及び酸水溶液を2回以上硬練りしてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されない。なお、部は、質量部を意味する。
【0045】
[シリカ粒子]
シリカ粒子として、親水性ヒュームドシリカAEROSIL 50、AEROSIL 90、AEROSIL 130(以上、日本アエロジル製)を用いた。
【0046】
ここで、AEROSIL 50は、平均一次粒径が30nm、BET比表面積が50m/gである。AEROSIL 90は、平均一次粒径が20nm、BET比表面積が90m/gである。AEROSIL 130は、平均一次粒径が16nm、BET比表面積が130m/gである。
【0047】
[アルミナ粒子]
アルミナ粒子として、親水性ヒュームドアルミナAEROXIDE Alu C(日本アエロジル製)を用いた。
【0048】
ここで、AEROXIDE Alu Cは、平均一次粒径が13nm、BET比表面積が100m/gである。
【0049】
[酸水溶液の作製]
85質量%リン酸(日本化学工業製)43.5質量部及び水56.5質量部の混合物に青色顔料0.5質量部を加え、酸水溶液を作製した。
【0050】
なお、青色顔料は、後述する前処理剤の液分離を観察しやすくすることを目的に配合されている。
【0051】
[実施例1]
以下、自転公転式ミキサーのあわとり練太郎ARE−310(THINKY製)を用いて、混練した。
【0052】
まず、容器に61.0gの酸水溶液を入れた後、5.0gのAEROXIDE Alu C、7.0gのAEROSIL 50を加え、2000rpmで1分間混練した。次に、7.0gのAEROSIL 50をさらに加え、2000rpmで1分間混練した。次に、容器内に飛散したAEROSIL 50が残らないように留意しながら、2000rpmで1分間混練する操作を3回繰り返した(硬練り)。
【0053】
次に、7.0gの酸水溶液を加え、2000rpmで1分間混練した後、13.0gの酸水溶液をさらに加え、2000rpmで1分間混練し、前処理剤を得た。
【0054】
[実施例2]
以下、自転公転式ミキサーのあわとり練太郎ARE−310(THINKY製)を用いて、混練した。
【0055】
まず、容器に62.4gの酸水溶液を入れた後、5.5gのAEROXIDE Alu C、6.1gのAEROSIL 90を加え、2000rpmで1分間混練した。次に、6.0gのAEROSIL 90をさらに加え、2000rpmで1分間混練した。次に、容器内に飛散したAEROSIL 90が残らないように留意しながら、2000rpmで1分間混練する操作を3回繰り返した(硬練り)。
【0056】
次に、7.0gの酸水溶液を加え、2000rpmで1分間混練した後、13.0gの酸水溶液をさらに加え、2000rpmで1分間混練し、前処理剤を得た。
【0057】
[実施例3]
以下、自転公転式ミキサーのあわとり練太郎ARE−310(THINKY製)を用いて、混練した。
【0058】
まず、容器に61.3gの酸水溶液を入れた後、5.0gのAEROXIDE Alu C、6.9gのAEROSIL 130を加え、2000rpmで1分間混練した。次に、6.8gのAEROSIL 130をさらに加え、2000rpmで1分間混練した。次に、容器内に飛散したAEROSIL 130が残らないように留意しながら、2000rpmで1分間混練する操作を3回繰り返した(硬練り)。
【0059】
次に、7.0gの酸水溶液を加え、2000rpmで1分間混練した後、13.0gの酸水溶液をさらに加え、2000rpmで1分間混練し、前処理剤を得た。
【0060】
[実施例4]
以下、自転公転式ミキサーのあわとり練太郎ARE−310(THINKY製)を用いて、混練した。
【0061】
まず、容器に85.7gの酸水溶液を入れた後、3.8gのAEROXIDE Alu C、5.3gのAEROSIL 50を加え、2000rpmで1分間混練した。次に、5.2gのAEROSIL 50をさらに加え、2000rpmで1分間混練した。次に、2000rpmで1分間混練し、前処理剤を得た。
【0062】
[比較例1]
以下、自転公転式ミキサーのあわとり練太郎ARE−310(THINKY製)を用いて、混練した。
【0063】
まず、容器に88.2gの酸水溶液を入れた後、5.9gのAEROSIL 50を加え、2000rpmで1分間混練した。次に、5.9gのAEROSIL 50をさらに加え2000rpmで1分間混練した。次に、2000rpmで1分間混練し、前処理剤を得た。
【0064】
[比較例2]
以下、自転公転式ミキサーのあわとり練太郎ARE−310(THINKY製)を用いて、混練した。
【0065】
まず、容器に60.8gの酸水溶液を入れた後、9.5gのAEROSIL 50を加え、2000rpmで1分間混練した。次に、9.4gのAEROSIL 50をさらに加え、2000rpmで1分間混練した。次に、容器内に飛散したAEROSIL 50が残らないように留意しながら、2000rpmで1分間混練する操作を3回繰り返した(硬練り)。
【0066】
次に、6.8gの酸水溶液を加え、2000rpmで1分間混練した後、13.5gの酸水溶液をさらに加え、2000rpmで1分間混練し、前処理剤を得た。
【0067】
[比較例3]
以下、自転公転式ミキサーのあわとり練太郎ARE−310(THINKY製)を用いて、混練した。
【0068】
まず、容器に90.9gの酸水溶液を入れた後、4.6gのAEROSIL 90を加え、2000rpmで1分間混練した。次に、4.5gのAEROSIL 90をさらに加え、2000rpmで1分間混練した。次に、2000rpmで1分間混練し、前処理剤を得た。
【0069】
[比較例4]
以下、自転公転式ミキサーのあわとり練太郎ARE−310(THINKY製)を用いて、混練した。
【0070】
まず、容器に64.9gの酸水溶液を入れた後、6.8gのAEROSIL 90を加え、2000rpmで1分間混練した。次に、6.7gのAEROSIL 90をさらに加え、2000rpmで1分間混練した。次に、容器内に飛散したAEROSIL 90が残らないように留意しながら、2000rpmで1分間混練する操作を3回繰り返した(硬練り)。
【0071】
次に、7.2gの酸水溶液を加え、2000rpmで1分間混練した後、14.4gの酸水溶液をさらに加え、2000rpmで1分間混練し、前処理剤を得た。
【0072】
[比較例5]
以下、自転公転式ミキサーのあわとり練太郎ARE−310(THINKY製)を用いて、混練した。
【0073】
まず、容器に90.0gの酸水溶液を入れた後、5.0gのAEROSIL 130を加え、2000rpmで1分間混練した。次に、5.0gのAEROSIL 130をさらに加え、2000rpmで1分間混練した。次に、2000rpmで1分間混練し、前処理剤を得た。
【0074】
[比較例6]
以下、自転公転式ミキサーのあわとり練太郎ARE−310(THINKY製)を用いて、混練した。
【0075】
まず、容器に64.3gの酸水溶液を入れた後、7.2gのAEROSIL 130を加え、2000rpmで1分間混練した。次に、7.1gのAEROSIL 130をさらに加え、2000rpmで1分間混練した。次に、容器内に飛散したAEROSIL 130が残らないように留意しながら、2000rpmで1分間混練する操作を3回繰り返した(硬練り)。
【0076】
次に、7.1gの酸水溶液を加え、2000rpmで1分間混練した後、14.3gの酸水溶液をさらに加え、2000rpmで1分間混練し、前処理剤を得た。
【0077】
[比較例7]
以下、自転公転式ミキサーのあわとり練太郎ARE−310(THINKY製)を用いて、混練した。
【0078】
まず、容器に81.8gの酸水溶液を入れた後、18.2gのAEROXIDE Alu Cを加え、2000rpmで1分間混練した。次に、2000rpmで1分間混練し、前処理剤を得た。
【0079】
表1に、前処理剤の配合を示す。
【0080】
【表1】
次に、前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子の粒度分布を測定した。
【0081】
[前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子の粒度分布]
前処理剤の0.5gと蒸留水の10gを混合した後、内径3.1cm、高さ5.5cmの容量30mLの円柱形状のPP製のマルエム容器No.6(マルエム製)に入れた。こ次に、自転公転式ミキサーのあわとり練太郎ARE−310(THINKY製)を用いて、700rpmで3分間回転撹拌した。次に、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950−V2(HORIBA製)を用いて、前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子の粒度分布を23℃で測定した。このとき、溶媒としては、蒸留水を使用した。
【0082】
表2に、前処理剤の水希釈液に含まれる凝集二次粒子の粒度分布の測定結果を示す。
【0083】
【表2】
次に、前処理剤の吐出性、シリンジに装着した吐出用チップの目詰まり、液分離を評価した。
【0084】
[吐出性]
内径11mm、容量3.6mlのシリンジに前処理剤を充填した後、シリンジの吐出部に蓋をした状態で、23℃の環境下、24時間以上静置し、恒温化した。次に、シリンジの吐出部に吐出用チップ(ISO 9626に準拠したゲージサイズ25G)を装着した。次に、万能試験機AG−IS(SHIMADZU製)を用いて、プランジャー部をクロスヘッドスピード10mm/minで押し出し、押し出し抵抗の最大値を記録し、前処理剤の吐出性を評価した。
【0085】
[シリンジに装着した吐出用チップの目詰まり]
内径11mm、容量3.6mlのシリンジに前処理剤を充填した後、シリンジの吐出部に蓋をした状態で、23℃の環境下、24時間以上静置し、恒温化した。次に、シリンジの吐出部に吐出用チップ(ISO 9626に準拠したゲージサイズ30G)を装着した。次に、プランジャー部を押し出し、目詰まりの有無を確認した。
【0086】
[液分離]
内径11mm、容量3.6mlのシリンジに前処理剤を充填した後、シリンジの吐出部に蓋をした状態で、23℃の環境下、24時間以上静置し、恒温化した。次に、卓上遠心機H−28F(コクサン製)を用いて、600g、90secの条件で、遠心分離した。次に、シリンジから前処理剤を吐出させて、前処理剤の液分離の有無を観察した。
【0087】
表3に、前処理剤の吐出性、操作性、液分離の評価結果を示す。
【0088】
【表3】
表3から、実施例1〜4の前処理剤は、シリンジに装着した吐出用チップの目詰まり及び液分離の発生を抑制できることがわかる。
【0089】
これに対して、比較例1、2、4の前処理剤は、アルミナ粒子を含まないため、液分離が発生する。
【0090】
比較例3の前処理剤は、アルミナ粒子を含まず、水希釈液に含まれる凝集二次粒子の体積平均粒径が29.7μmであるため、シリンジに装着した吐出用チップの目詰まり及び液分離が発生する。
【0091】
比較例5、6の前処理剤は、アルミナ粒子を含まず、水希釈液に含まれる凝集二次粒子中の粒径が50μm以上である凝集二次粒子の含有量が28.2体積%、22.5体積%であるため、シリンジに装着した吐出用チップの目詰まり及び液分離が発生する。
【0092】
比較例7の前処理剤は、シリカ粒子を含まないため、液分離が発生する。なお、比較例7の前処理剤は、粘度が低いため、吐出性を評価することができなかった。