(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、減圧によって前記調理槽内が到達すべき圧力である目標圧力、加熱によって食材の表面が到達すべき温度である目標調理温度、および前記目標調理温度を保つべき時間である目標調理時間の入力を受け付ける入力手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記調理槽内の圧力が前記目標圧力になった状態で、前記目標調理時間の間、食材の表面温度を前記目標調理温度に保つ制御を行うことを特徴とする、請求項1乃至4いずれかに記載の真空調理器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の真空蒸気調理機では、処理槽内の圧力を計測するセンサの出力に基づいて給蒸手段および減圧手段の制御が行われるので、食材が適切な温度で調理されるとは限らない。
【0007】
本発明の目的は、大気圧未満の圧力下において、食材を適切な温度で調理することができる真空調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、大気圧未満の圧力下では、大気圧以上の圧力下よりも食材内部の熱伝導率が高くなり、食材の中心温度は速やかにその表面温度に近づくことを見出し、これに着目して本発明を完成するに至った。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、前記調理槽に収容された食材の
表面の温度を検出する第1温度センサと、前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、前記調理槽内に蒸気を供給する蒸気供給手段と、前記第1温度センサの検出結果に基づいて前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、前記減圧手段によって前記調理槽内が大気圧未満に減圧された
後に前記ヒータの駆動を開始し、前記減圧状態で前記ヒータによって前記食材が目標調理温度まで加熱された後、
前記蒸気供給手段による前記調理槽への蒸気の供給を開始し、前記調理槽内が大気圧未満に減圧された状態
に維持
されつつ前記
食材が前記目標調理温度に維持されるように構成されている真空調理器を提供する。
また、本発明は、食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、前記調理槽に収容された食材の温度を検出する非接触型の第1温度センサと、前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、前記調理槽内に蒸気を供給する蒸気供給手段と、前記第1温度センサの検出結果に基づいて前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、前記減圧手段によって前記調理槽内が大気圧未満に減圧された後に前記ヒータの駆動を開始し、前記減圧状態で前記ヒータによって前記食材が目標調理温度まで加熱された後、前記蒸気供給手段による前記調理槽への蒸気の供給を開始し、前記調理槽内が大気圧未満に減圧された状態に維持されつつ前記食材が前記目標調理温度に維持されるように構成されている真空調理器である。
【0010】
本真空調理器によれば、内部が大気圧未満の圧力に減圧された調理槽がヒータによって加熱される。ヒータは、第1温度センサの検出結果に基づいて制御される。大気圧未満の圧力下では、大気圧以上の圧力下よりも食材内部の熱伝導率が高くなり、食材の中心温度は速やかにその表面温度に近づく。よって、第1温度センサで検出された食材の表面温度から食材の中心温度を推定することができる。従って、内部を大気圧未満の圧力に調整した調理槽内に食材を配置した状態で、第1温度センサの検出結果に基づいてヒータを制御することにより、食材を表面から中心部まで適切な温度で調理することができる。また本発明では、減圧手段によって減圧された調理槽内に蒸気が供給される。蒸気の存在下では、調理槽から食材までの熱伝導率が高くなる。従って、食材の調理時間を短縮することができる。
【0011】
本発明においては、前記調理槽の温度を検出する第2温度センサをさらに備え、前記制御手段は、前記第2温度センサの検出結果に基づいて、前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正することが好ましい。
【0012】
第2温度センサの検出温度は、第1温度センサの検出温度よりも高いと考えられる。そして、食材の表面温度は、表面全体で均一ではなく食材と調理槽内面との距離によって異なり、第1温度センサの検出温度と第2温度センサの検出温度の間にあると考えられる。従って、第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を第2温度センサの検出結果に基づいて補正することにより、第1温度センサの検出結果のみに基づいてヒータ制御を行う場合よりも、食材をより適切な温度で調理することができる。
【0013】
具体的には、前記制御手段は、前記第2温度センサの検出結果に基づいて前記ヒータによる加熱を抑制することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第2温度センサの検出結果に基づいてヒータ加熱が抑制されるので、調理槽および食材の過熱を防止することができる。
【0015】
本発明においては、少なくとも、減圧によって前記調理槽内が到達すべき圧力である目標圧力、加熱によって食材の表面が到達すべき温度である目標調理温度、および前記目標調理温度を保つべき時間である目標調理時間の入力を受け付ける入力手段をさらに備え、前記制御手段は、前記調理槽内の圧力が前記目標圧力になった状態で、前記目標調理時間の間、食材の表面温度を前記目標調理温度に保つ制御を行うことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、減圧によって食材内部の熱伝導率が高くなった状態で、目標調理時間の間、食材の表面温度が目標調理温度に保たれる。食材の種類や量によって、目標調理温度や目標調理時間は異なる。従って、ユーザが食材の種類や量に応じた目標調理温度や目標調理時間を入力することにより、食材の種類や量に拘わらず食材を表面から中心部まで適切な温度で調理することができる。
【0017】
また、本発明は、食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、前記調理槽に収容された食材の
表面の温度を検出する第1温度センサと、前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、前記第1温度センサの検出結果に基づいて前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段による前記ヒータの制御では、前記減圧手段により減圧された状態の前記調理槽内の食材に対する前記第1温度センサの検出結果を前記食材の中心温度とみなした制御が行われる真空調理器である。
【0018】
また、本発明は、食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、前記調理槽に収容された食材の表面の温度を検出する第1温度センサと、前記調理槽の温度を検出する第2温度センサと、前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、
前記第1温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での
、前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、設定された目標調理時間を補正することにより前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正する真空調理器である。
【0019】
また、本発明は、食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、前記調理槽に収容された食材の
表面の温度を検出する第1温度センサと、前記調理槽の温度を検出する第2温度センサと、前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第2温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、前記目標調理温度を補正することにより、前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正する真空調理器である。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、大気圧未満の圧力下において、食材を適切な温度で調理することが可能な真空調理器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について詳述する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る真空調理器100の構成を示す図である。
図1において、破線の矢印は電気信号の流れを示している。
【0024】
図1に示されるように、第1実施形態に係る真空調理器100は、調理槽1と、減圧手段2と、第1温度センサ3と、ヒータ4と、蒸気供給手段6と、コントローラ7と、入力部8と、ディスプレイ9とを備えている。
【0025】
調理槽1は、上部が開口した槽本体10と、槽本体10の開口部に開閉可能に設けられた蓋部12と、蓋部12が閉じられた状態で槽本体10と蓋部12の隙間を密閉するシール部21とを備えている。
【0026】
槽本体10は、熱伝導性のよいアルミニウム等の金属素材を主材料として構成されている。蓋部12は、ガラスまたはポリカーボネート材など、耐熱素材で構成されている。槽本体10の内面には、遠赤外線発生層(図示せず)が設けられている。遠赤外線発生層は、例えば、複合酸化物などのセラミック被膜から構成される。
【0027】
槽本体10の底部13の内面には、食材Fを載せる調理台11が配置されている。調理台11は、例えば、熱伝導性のよいアルミニウム等の金属素材から構成されている。調理台11は、槽本体10の底部13および側壁部22に接触している。調理台11に食材Fを載せることにより、食材Fが調理槽1の底部13に直接接触しないので、食材Fに温度ムラが生じにくくなるとともに、食材Fが部分的に過剰加熱(過熱)されるのを防止することができる。
【0028】
槽本体10における底部13の外面には、電磁誘導により発熱する発熱体14が設けられている。発熱体14は、例えば、フェライト系ステンレスなどの磁性金属板から構成される。
【0029】
ヒータ4は、発熱体14を電磁誘導加熱する加熱コイルである。調理槽1とヒータ4とは別体に構成されている。調理槽1は、ヒータ4の上に載置された状態で使用される。調理槽1がヒータ4の上に載置された状態では、発熱体14がヒータ4に接触する。ヒータ4に高周波電流を供給すると、発熱体14が発熱する。発熱体14で発生した熱は、熱伝導により槽本体10、遠赤外線発生層、および調理台11に伝わる。食材Fは、調理台11からの熱伝導および遠赤外線発生層からの熱放射により加熱される。なお、調理槽1を加熱する方式は誘導加熱方式に限定されるものではなく、例えば、ヒータ4をニクロム線とした抵抗加熱方式にするなど、他の方式を採用してもよい。
【0030】
減圧手段2は、管路23、方向制御弁15、圧力センサ16、水分トラップ17、および真空ポンプ18を備えている。管路23の一端は、槽本体10の側壁部22に接続されている。管路23は、側壁部22側から順に、方向制御弁15、圧力センサ16、水分トラップ17、および真空ポンプ18を直列に繋いでいる。
【0031】
真空ポンプ18は、管路23を介して調理槽1内の空気を吸引し、調理槽1内を大気圧未満の圧力に減圧する。
【0032】
圧力センサ16は、調理槽1内の圧力を検出する。圧力センサ16は、検出結果に応じた信号を後述のコントローラ7へ送信する。
【0033】
水分トラップ17は、調理槽1から吸引された空気に含まれる水分を捕捉する。
【0034】
方向制御弁15は、3ポート2位置方向制御弁である。方向制御弁15は、管路23を介して調理槽1と連通する調理槽側ポートと、管路23を介して水分トラップ17と連通する水分トラップ側ポートと、外部と連通する大気導入ポートとを有している。方向制御弁15を制御することにより、調理槽側ポートと水分トラップ側ポートとが連通する第1の状態と、調理槽側ポートと大気導入ポートとが連通する第2の状態との間で流路の切換えを行うことができる。方向制御弁15を第1の状態に切り換えるとともに真空ポンプ18を作動させると、方向制御弁15を通じて調理槽1内の空気が真空ポンプ18に吸い出される。調理槽1内が減圧された状態で方向制御弁15を第2の状態に切り換えると、方向制御弁15を通じて調理槽1内に大気が導入される。方向制御弁15は、後述のコントローラ7によって制御される。
【0035】
第1温度センサ3は、非接触型の温度センサである。非接触型の温度センサとしては、例えば、赤外線を検知する放射温度センサを好適に用いることができるが、特に限定はされない。第1温度センサ3は調理槽1内に設けられ、例えば蓋部12の内面に設けられる。なお、第1温度センサ3は、他の位置に設けられてもよく、槽本体10の側壁部22の内面等に設けられてもよい。第1温度センサ3は、検出結果に応じた信号をコントローラ7へ送信する。
【0036】
蒸気供給手段6は、蒸気導入弁20、ボイラ19、及び管路24を備えている。
【0037】
管路24の一端は、槽本体10の側壁部22に接続されている。管路24は、側壁部22側から順に、蒸気導入弁20、ボイラ19を直列に繋いでいる。
【0038】
ボイラ19は、外部から注水可能に構成されている。ボイラ19は、図外の熱源から得た熱で水Wを沸騰させて蒸気を発生させ、その蒸気を管路24を介して調理槽1内に供給する。
【0039】
蒸気導入弁20は開閉弁である。蒸気導入弁20を開くことにより、ボイラ19で発生した蒸気が管路24を介して調理槽1に導かれる。蒸気導入弁20を閉じることにより、管路24が遮断されて調理槽1への蒸気供給が阻止される。蒸気導入弁20の開閉は、後述のコントローラ7によって制御される。
【0040】
入力部8は、例えば、タッチパネル或いは操作ボタンである。入力部8は、少なくとも、減圧によって調理槽1内が到達すべき圧力である目標圧力Pm、加熱によって食材Fの表面が到達すべき温度である目標調理温度Tm、および目標調理温度Tmを保つべき時間である目標調理時間tmの入力を受け付ける。入力部8は、入力された情報に応じた信号をコントローラ7へ送信する。
【0041】
目標圧力Pmは、特に限定されるものではないが、例えば0.2気圧とされる。
【0042】
目標調理温度Tmは、調理する食材Fの種類や量によって異なるが、例えば、
図2に示される値とされる。
図2は、食材Fの調理条件(レシピ)の例を示す図である。
図2には、調理条件の例1〜5が示されており、調理条件の例毎に「調理内容」、「目標調理温度Tm」、「目標調理時間tm」、「蒸気供給の有無」が示されている。調理内容には、料理の名前、必要とされる食材とその量などが含まれる。食材Fの調理条件の例は、図外の記憶部に記憶されている。
【0043】
なお、調理内容、目標調理温度Tm、目標調理時間tm、蒸気供給の有無は、
図2に示したものに限定されず、適宜変更されてもよい。
【0044】
また、調理条件の例3〜5においては、「蒸気供給」が「無」になっている。これは、調理条件の例3〜5については蒸気供給しなくても食材Fを適切な温度で真空調理できることを示している。
図2における(4)根野菜への調味料含浸、(5)りんごの乾燥など、料理の種類によっては蒸気の供給を必要としないからである。
【0045】
ディスプレイ9は、例えば液晶ディスプレイである。ディスプレイ9は、入力部8で入力された情報や、調理状態を表示する。
【0046】
制御手段としてのコントローラ7は、ROM、RAM、CPU等を備えており、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより下記の制御を行う。コントローラ7は、第1温度センサ3の検出結果に基づいて、ヒータ4による加熱を制御する。
【0047】
次に、真空調理器100の動作について、
図3〜5を参照しつつ説明する。
図3は、真空調理器100の動作の一例を示すフローチャートである。
図4は、真空調理器100の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図5は、調理槽1の加熱が開始されてからの調理槽1の温度変化および食材Fの表面の温度変化を示す図である。なお、
図4に示されるS2、S3、S5、S7、S9は、それぞれ、
図3に示されるS2、S3、S5、S7、S9に対応している。また、
図5に示されるt2、t3は、
図4に示されるt2、t3に対応している。
【0048】
まず、
図3に示されるように、ユーザによって蓋部12が開けられて、食材Fが調理台11上に載置され、蓋部12が閉じられる(ステップS1)。調理条件表示ボタンが押下されると、コントローラ7は、食材Fの調理条件の例(
図2参照)をディスプレイ9に表示する制御を行う。
【0049】
次いで、ユーザにより、入力部8を介して「目標圧力Pm」、「目標調理温度Tm」、「目標調理時間tm」、「蒸気供給の有無」等の調理条件が入力される(ステップS2)。ユーザは、ディスプレイ9に表示された食材Fの調理条件の例を参照しながら調理条件を入力することができる。コントローラ7は、入力された調理条件をディスプレイ9に表示する制御を行う。
【0050】
調理条件が入力されて、スタートボタンが押下されると、コントローラ7は、真空ポンプ18を作動させるとともに、方向制御弁15を第1の状態に切り替えて、調理槽1内を減圧する制御を開始する(ステップS3)。
図4の(1)に示されるように、時刻t1に、コントローラ7は減圧制御を開始する。この減圧制御は、調理槽1内の圧力を目標圧力Pmに減圧してその圧力を維持する制御である。コントローラ7は、減圧が開始された旨をディスプレイ9に表示する制御を行う。
【0051】
減圧制御開始後、コントローラ7は、圧力センサ16の検出結果に基づいて、調理槽1内が目標圧力Pmまで減圧されたか否かを判断する(ステップS4)。
【0052】
調理槽1内が目標圧力Pmまで減圧されたと判断した場合には(YESと判断)、コントローラ7は、ヒータ4の電源をオンして調理槽1を加熱する制御を開始する(ステップS5)。この加熱制御は、食材Fをその表面温度が目標調理温度Tmになるまで加熱してその表面温度を維持する制御である。コントローラ7は、加熱が開始された旨をディスプレイ9に表示する制御を行う。
【0053】
図4の(2)及び
図5に示されるように、コントローラ7は、時刻t2に、調理槽1の加熱制御を開始する。調理槽1を加熱することにより、
図5に示されるように調理槽1の温度が上昇し、その温度上昇に伴って食材Fの表面温度も上昇する(
図4の(3)及び
図5参照)。この加熱制御は、大気圧未満の圧力下で行われるため、大気圧以上の圧力下で加熱する場合よりも食材F内部の熱伝導率が高くなり、食材Fの中心温度は速やかにその表面温度に近づく。このため、加熱中における食材Fの中心温度は、食材Fの表面温度とほぼ同じであると推定することができる。
【0054】
この加熱制御において、コントローラ7は、第1温度センサ3の検出温度に基づいて、
図4の(3)及び
図5に示されるように食材Fの表面温度が目標調理温度Tmとなるように制御を行う。食材F内部の熱伝導率が高いため、食材Fの表面温度が目標調理温度Tmになったとき、食材Fの中心部の温度は目標調理温度Tmとほぼ同じになっている。従って、食材Fの表面温度を監視しつつ食材Fを加熱することで、実質的に食材Fの表面温度と中心温度の双方を監視しつつ食材Fを加熱することができる。
【0055】
この加熱制御においては、
図5に示されるように、時刻t2に加熱制御を開始した後、暫くの間は、調理槽1の温度上昇率は食材Fの温度上昇率よりも大きく、調理槽1の温度と食材Fの表面温度の差は次第に開いていく。しかしながら、調理槽1を加熱し続けると、調理槽1の温度がピーク温度Tpに到達する辺りから双方の温度差は次第に小さくなっていく。そして、食材Fの表面温度が目標調理温度Tmに到達する頃には、調理槽1の温度と食材Fの表面温度がそれぞれ一定温度に収束しつつ、双方の温度差ΔTはかなり小さくなる(例えば10℃程度)。
【0056】
ステップS5の加熱制御開始後、コントローラ7は、第1温度センサ3の検出温度(食材Fの表面温度)が目標調理温度Tmに到達したか否かを判断する(ステップS6)。
【0057】
第1温度センサ3の検出温度が目標調理温度Tmに到達したと判断された場合には(YESと判断)、コントローラ7は、ステップS2で入力された調理条件「蒸気供給の有無」に基づいて、蒸気供給が必要か否かを判断する(ステップS7)。
【0058】
蒸気供給が必要と判断した場合には(YESと判断)、コントローラ7は、蒸気導入弁20を開く制御を行う(ステップS8)。
図4の(4)に示されるように、コントローラ7は、時刻t3に蒸気導入弁20の開放制御を行う。蒸気導入弁20を開くことにより、ボイラ19から調理槽1内に蒸気が供給される。蒸気の供給量は、例えば、入力された調理条件に応じた値とされる。この値は、例えば、予め実験やシミュレーションを行うことで設定しておくことができる。コントローラ7は、蒸気供給が開始された旨をディスプレイ9に表示する制御を行う。
【0059】
蒸気供給の開始後、コントローラ7は、第1温度センサ3の検出温度が目標調理温度Tmに到達してからの経過時間が目標調理時間tmに到達したか否かを判断する(ステップS9)。
図4の(5)及び
図5に示されるように、コントローラ7は、時刻t3からの経過時間(調理時間)が、目標調理時間tmになったか否かを判断する。
【0060】
調理時間が目標調理時間tmに到達したと判断した場合には(YESと判断)、コントローラ7は、方向制御弁15を第2の状態に切り替えて調理槽1に大気を導入するとともに真空ポンプ18を停止することで減圧制御を終了し、ヒータ4の電源をオフすることで調理槽1の加熱制御を終了し、さらに蒸気導入弁20を閉じることで蒸気供給制御を終了する(ステップS10)。
図4の(6)に示されるように、時刻t4にこれらの動作を行う。ステップS10の制御により、調理槽1内に大気が導入され、調理が完了する。コントローラ7は、調理が終了した旨をディスプレイ9に表示する制御を行う。
【0061】
なお、ステップS4において、調理槽1内が目標圧力Pmまで減圧されていないと判断された場合には、ステップS4に戻って再度判断を行う。
【0062】
また、ステップS6において、第1温度センサ3の検出温度が目標調理温度Tmに到達していないと判断された場合には、ステップS6に戻って再度判断を行う。
【0063】
また、ステップS9において、調理時間が目標調理時間tmに到達していないと判断された場合には、ステップS9に戻って再度判断を行う。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る真空調理器100では、内部が大気圧未満の圧力に減圧された調理槽1がヒータ4によって加熱される。ヒータ4は、非接触型の第1温度センサ3の検出結果に基づいて制御される。大気圧未満の圧力下では、大気圧以上の圧力下よりも食材F内部の熱伝導率が高くなり、食材Fの中心温度は速やかにその表面温度に近づく。よって、第1温度センサ3で検出された食材Fの表面温度から食材Fの中心温度を推定することができる。従って、内部が大気圧未満の圧力に調整された調理槽1内に食材Fを配置した状態で、第1温度センサ3の検出結果に基づいてヒータ4を制御することにより、食材Fを表面から中心部まで適切な温度で調理することができる。また、非接触型の温度センサ3で食材温度を検出するので、食材Fの温度を容易かつ衛生的に検出することができる。すなわち、食材Fに温度センサを突き刺して食材Fの芯温を検出し、検出した芯温に基づいて蒸気供給手段および減圧手段の制御を行うことも考えられるが、食材Fに温度センサを突き刺して芯温を検出することは衛生的でない上、手間がかかる。これに対し、非接触型の温度センサ3で食材温度を検出することにより、食材Fの温度を容易かつ衛生的に検出することができる。
【0065】
また、減圧された調理槽1内に蒸気が供給されるため、食材Fの加熱を促進して調理時間を短縮することができる。
【0066】
また、調理槽1内の圧力が目標圧力Pmに到達した後に加熱制御を開始するので(ステップS5)、調理槽1内の圧力が目標圧力Pmに到達する前に加熱制御を開始する場合と比べて、調理槽1内を目標圧力Pmまで減圧することが容易となり、目標圧力Pmまで速やかに減圧することができる。
【0067】
また、食材Fの表面温度が目標調理温度Tmに到達した後に蒸気供給を開始するので(ステップS8)、供給した蒸気が調理槽1内で結露するのを防止することができる。
【0068】
なお、上記の説明では、真空調理器100を食材Fの加熱調理(焼く、蒸す、調味料含浸、乾燥)に用いているが、これに限定されるものではない。例えば、目標圧力Pm、目標調理温度Tm、目標調理時間tmの少なくともいずれか一つの条件を適宜変更することにより、食材Fの解凍、殺菌などを行うことができる。また、目標圧力Pmを変更するとともに、加熱を行わないことにより、食材Fの真空冷却を行うことができる。
【0069】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る真空調理器200の構成を示す図である。ここでは、第1実施形態と異なる構成要素および動作について説明し、その他の構成要素および動作については説明を省略する。
【0070】
第2実施形態においては、
図6に示されるように第2温度センサ5が設けられている。第2温度センサ5は、接触型の温度センサである。接触型の温度センサとしては、例えば、熱電対温度センサやサーミスタ温度センサを挙げることができるが、特に限定はされない。第2温度センサ5は、例えば、槽本体10の底部13の外面または内面に設けられる。なお、第2温度センサ5を設ける位置は槽本体10の底部13に限定されず、槽本体10の側壁部22の外面または内面であってもよい。第2温度センサ5は、検出結果に応じた信号をコントローラ7へ送信する。
【0071】
次に、第2実施形態に係る真空調理器200の動作について、
図7を参照しつつ説明する。
図7は、真空調理器200の動作を示すフローチャートである。
図7においては、
図3における動作と同じ動作については、
図3と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0072】
第2実施形態においては、第1温度センサ3の検出温度が目標調理温度Tmに到達しているか否かを判断し(ステップS6)、到達していればステップS11に移行する。
【0073】
ステップS11において、コントローラ7は、第1温度センサ3の検出温度が目標調理温度Tmに到達した時点(時刻t3、
図5参照)における第2温度センサ5の検出温度と第1温度センサ3の検出温度の差ΔT1(
図5参照)に応じて、目標調理時間tmを、ステップS2で入力された目標調理時間tmよりも長い時間または短い時間に変更する(目標調理時間tmを補正する)。
【0074】
食材Fの表面温度は、表面全体で均一であるとは限らず食材Fと調理槽1内面との距離によって異なることがある。例えば、食材Fにおける調理台11との接触部分と、それ以外の部分とで表面温度が異なる。しかしながら、食材Fの表面温度は、第1温度センサ3の検出温度と第2温度センサ5の検出温度の間にあると考えられる。従って、第2温度センサ5の検出温度と第1温度センサ3の検出温度の差ΔT1に応じて目標調理時間tmを補正することにより、第1温度センサ3の検出温度のみに基づいて加熱制御を行う場合よりも、食材Fをより適切に調理することができる。
【0075】
(第2実施形態の変形例1)
なお、上記第2実施形態では目標調理時間tmを補正しているが、これに限られない。
図8は、第2実施形態の変形例1に係る真空調理器200の動作を示すフローチャートである。
図8においては、
図3における動作と同じ動作については、
図3と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0076】
本変形例では、
図8に示されるように、調理槽1の加熱制御開始(ステップS5)後、コントローラ7は、第2温度センサ5の検出温度が目標調理温度Tmに到達したか否かを判断する(ステップS12)。第2温度センサ5の検出温度が目標調理温度Tmに到達したと判断した場合には(YESと判断)、コントローラ7は、第2温度センサ5の検出温度が目標調理温度Tmに到達した時点(時刻t5、
図5参照)における第2温度センサ5の検出温度と第1温度センサ3の検出温度の差ΔT2(
図5参照)に応じて、目標調理温度Tmを補正する(ステップS13)。
【0077】
時刻t5における第2温度センサ5の検出温度と第1温度センサ3の検出温度の差ΔT2が大きければ大きい程、食材Fは温まりにくい食材であると考えられ、また、温度差ΔT2が小さければ小さい程、食材Fは温まり易い食材であると考えられる。従って、温度差ΔT2に応じて目標調理温度Tmを補正することにより、食材Fの温まり易さおよび温まりにくさを反映させた目標調理温度Tmで食材Fを加熱調理することができ、食材Fをより適切に調理することができる。
【0078】
(第2実施形態の変形例2)
図9は、第2実施形態の変形例2に係る真空調理器200の動作を示すフローチャートである。
図9においては、
図3における動作と同じ動作については、
図3と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0079】
本変形例では、
図9に示されるように、調理槽1の加熱制御開始(ステップS5)後、コントローラ7は、調理槽1の加熱中に第2温度センサ5の検出温度に基づいて、ヒータ4による加熱を抑制する制御(加熱抑制制御)を開始する(ステップS14)。この加熱抑制制御は、第2温度センサ5の検出温度が閾値以上である場合にヒータ4による加熱を抑制する制御である。第2温度センサ5の検出温度が閾値未満である場合には、ヒータ4による加熱を抑制しない。加熱抑制制御において、コントローラ7は、第2温度センサ5の検出温度が閾値以上である場合に、第2温度センサ5の検出温度が当該閾値未満となるようにヒータ4の加熱温度を下げる。閾値は、例えば、調理槽1が過熱状態となる温度に設定される。コントローラ7は、目標調理時間tmが経過したか否かの判断(ステップS9)後、加熱抑制制御を終了する(ステップS15)。なお、加熱抑制制御の例はこれに限られない。例えば、コントローラ7は、第2温度センサ5の検出温度が閾値以上である場合に、ヒータ4による加熱を中止して加熱制御を強制的に終了することで、加熱抑制制御を行ってもよい。
【0080】
本変形例によれば、調理槽1の過熱による真空調理器1の故障や食材Fの焦げ付き等を防止することができる。