特許第6779961号(P6779961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6779961-パワーユニット 図000002
  • 特許6779961-パワーユニット 図000003
  • 特許6779961-パワーユニット 図000004
  • 特許6779961-パワーユニット 図000005
  • 特許6779961-パワーユニット 図000006
  • 特許6779961-パワーユニット 図000007
  • 特許6779961-パワーユニット 図000008
  • 特許6779961-パワーユニット 図000009
  • 特許6779961-パワーユニット 図000010
  • 特許6779961-パワーユニット 図000011
  • 特許6779961-パワーユニット 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779961
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】パワーユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20201026BHJP
   F16H 57/021 20120101ALI20201026BHJP
【FI】
   F16H57/04 J
   F16H57/021
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-221497(P2018-221497)
(22)【出願日】2018年11月27日
(65)【公開番号】特開2020-85148(P2020-85148A)
(43)【公開日】2020年6月4日
【審査請求日】2019年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿藤 紳司
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2015/146914(JP,A1)
【文献】 特開2010−151276(JP,A)
【文献】 特開2017−110794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16H 57/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(35)と、前記回転軸(35)を収容する回転軸室(25)を形成するケース(11)とを備え、前記ケース(11)内が潤滑油で潤滑されるパワーユニットにおいて、
前記回転軸(35)は、略水平に配置され、
前記ケース(11)は、前記回転軸(35)を軸方向から覆う側壁(21)と、前記回転軸(35)を上方から覆う上壁(22c)とを備え、前記側壁(21)は、前記回転軸(35)の一端を軸支する軸支持部(40)を備え、
前記回転軸(35)に向かって指向して前記回転軸(35)を検出する検出部材(70)が、前記上壁(22c)において前記側壁(21)の近傍に設けられ、
前記側壁(21)は、前記検出部材(70)の少なくとも一部を収容する収容凹部(75)を前記軸支持部(40)の上方に備え、
前記側壁(21)の内面には、前記収容凹部(75)の底面(77)から前記軸支持部(40)まで延びる給油溝(78)が設けられることを特徴とするパワーユニット。
【請求項2】
前記収容凹部(75)の下端部(77b)は、前記給油溝(78)の上流側端面(78a)よりも下方に位置することを特徴とする請求項1記載のパワーユニット。
【請求項3】
前記収容凹部(75)の前記下端部(77b)は、前記回転軸(35)の回転方向に上方から対向する位置に配置されることを特徴とする請求項2記載のパワーユニット。
【請求項4】
前記検出部材(70)の軸方向視で、前記検出部材(70)は、少なくとも一部が前記軸支持部(40)に上方から重なることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパワーユニット。
【請求項5】
前記側壁(21)の内面には、前記回転軸(35)の軸方向に立設されるリブ(80)が設けられ、前記リブ(80)は、前記回転軸(35)の回転方向(R)に飛散する潤滑油が前記リブ(80)に到達可能な位置に設けられ、
前記リブ(80)は、上下方向に延びる縦リブ部(81)と、前記縦リブ部(81)の下端部で折り返して前記回転軸(35)側に延びる折り返し部(82)とを備え、
前記折り返し部(82)の先端部(82a)と前記上壁(22c)との間には隙間(83)が設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のパワーユニット。
【請求項6】
前記縦リブ部(81)は、前記上壁(22c)から下方に延出し、前記折り返し部(82)は、前記回転軸(35)側且つ前記上壁(22c)側に折り返すことを特徴とする請求項5記載のパワーユニット。
【請求項7】
複数の変速軸(35,36)及び前記変速軸(35,36)に支持される複数の変速ギア(38a,38b,38c,38d,39a,39b,39c,39d)を備えて任意の変速段を選択的に確立する変速機(14)が、前記ケース(11)内に設けられ、
前記回転軸(35)は、前記変速軸(35)であり、
前記リブ(80)は、前記側壁(21)から、前記変速段のうち最も高速回転する変速段の前記変速ギア(38c,39c)の真上まで前記回転軸(35)の軸方向に延出することを特徴とする請求項5または6記載のパワーユニット。
【請求項8】
前記パワーユニットは、シリンダー(12a)内のピストン(17)の直線運動を回転運動に変換する内燃機関であり、
前記シリンダー(12a)の中心軸(12d)と、前記検出部材(70)の中心軸(71b)とは略平行であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のパワーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸を内部に収容するケースを有し、ケース内が潤滑油で潤滑されるパワーユニットにおいて、回転軸を支持する孔の周囲に放射状に配置されるリブによって、潤滑油を回転軸に導くものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−90662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パワーユニットでは、簡単な構造で回転軸に効率良く給油することが望まれる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、パワーユニットにおいて、簡単な構造で回転軸に効率良く給油できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
パワーユニットは、回転軸(35)と、前記回転軸(35)を収容する回転軸室(25)を形成するケース(11)とを備え、前記ケース(11)内が潤滑油で潤滑されるパワーユニットにおいて、前記回転軸(35)は、略水平に配置され、前記ケース(11)は、前記回転軸(35)を軸方向から覆う側壁(21)と、前記回転軸(35)を上方から覆う上壁(22c)とを備え、前記側壁(21)は、前記回転軸(35)の一端を軸支する軸支持部(40)を備え、前記回転軸(35)に向かって指向して前記回転軸(35)を検出する検出部材(70)が、前記上壁(22c)において前記側壁(21)の近傍に設けられ、前記側壁(21)は、前記検出部材(70)の少なくとも一部を収容する収容凹部(75)を前記軸支持部(40)の上方に備え、前記側壁(21)の内面には、前記収容凹部(75)の底面(77)から前記軸支持部(40)まで延びる給油溝(78)が設けられることを特徴とする。
【0006】
また、上述の構成において、前記収容凹部(75)の下端部(77b)は、前記給油溝(78)の上流側端面(78a)よりも下方に位置しても良い。
また、上述の構成において、前記収容凹部(75)の前記下端部(77b)は、前記回転軸(35)の回転方向に上方から対向する位置に配置されても良い。
【0007】
さらに、上述の構成において、前記検出部材(70)の軸方向視で、前記検出部材(70)は、少なくとも一部が前記軸支持部(40)に上方から重なっても良い。
また、上述の構成において、前記側壁(21)の内面には、前記回転軸(35)の軸方向に立設されるリブ(80)が設けられ、前記リブ(80)は、前記回転軸(35)の回転方向(R)に飛散する潤滑油が前記リブ(80)に到達可能な位置に設けられ、前記リブ(80)は、上下方向に延びる縦リブ部(81)と、前記縦リブ部(81)の下端部で折り返して前記回転軸(35)側に延びる折り返し部(82)とを備え、前記折り返し部(82)の先端部(82a)と前記上壁(22c)との間には隙間(83)が設けられても良い。
【0008】
また、上述の構成において、前記縦リブ部(81)は、前記上壁(22c)から下方に延出し、前記折り返し部(82)は、前記回転軸(35)側且つ前記上壁(22c)側に折り返しても良い。
また、上述の構成において、複数の変速軸(35,36)及び前記変速軸(35,36)に支持される複数の変速ギア(38a,38b,38c,38d,39a,39b,39c,39d)を備えて任意の変速段を選択的に確立する変速機(14)が、前記ケース(11)内に設けられ、前記回転軸(35)は、前記変速軸(35)であり、前記リブ(80)は、前記側壁(21)から、前記変速段のうち最も高速回転する変速段の前記変速ギア(38c,39c)の真上まで前記回転軸(35)の軸方向に延出しても良い。
【0009】
さらに、上述の構成において、前記パワーユニットは、シリンダー(12a)内のピストン(17)の直線運動を回転運動に変換する内燃機関であり、前記シリンダー(12a)の中心軸(12d)と、前記検出部材(70)の中心軸(71b)とは略平行であっても良い。
【発明の効果】
【0010】
パワーユニットは、回転軸と、回転軸を収容する回転軸室を形成するケースとを有し、回転軸は、略水平に配置され、ケースは、回転軸を軸方向から覆う側壁と、回転軸を上方から覆う上壁とを備え、側壁は、回転軸の一端を軸支する軸支持部を備え、回転軸に向かって指向して回転軸を検出する検出部材が、上壁において側壁の近傍に設けられ、側壁は、検出部材の少なくとも一部を収容する収容凹部を軸支持部の上方に備え、側壁の内面には、収容凹部の底面から軸支持部まで延びる給油溝が設けられる。
この構成によれば、検出部材の少なくとも一部を収容する収容凹部に、ケース内の潤滑油の一部を集めることができ、ケースの側壁の内面に設けられる給油溝によって、収容凹部の潤滑油を側壁の軸支持部に供給できる。このため、検出部材用の収容凹部、及び給油溝を利用する簡単な構造で回転軸に効率良く給油できる。
【0011】
また、上述の構成において、収容凹部の下端部は、給油溝の上端よりも下方に位置しても良い。この構成によれば、収容凹部の下端部にゴミ等を捕集できるため、給油溝を介し回転軸に適切に給油できる。
また、上述の構成において、収容凹部の下端部は、回転軸の回転方向に上方から対向する位置に配置されても良い。この構成によれば、収容凹部の下端部から落ちる潤滑油を回転軸の回転によって効率良く飛沫給油できる。
【0012】
さらに、上述の構成において、検出部材の軸方向視で、検出部材は、少なくとも一部が軸支持部に上方から重なっても良い。この構成によれば、検出部材は、軸支持部に近い位置で回転軸を検出できる。このため、検出部材は、振れが少ない状態の回転軸を検出でき、回転軸を良好に検出できる。
また、上述の構成において、側壁の内面には、回転軸の軸方向に立設されるリブが設けられ、リブは、回転軸の回転方向に飛散する潤滑油がリブに到達可能な位置に設けられ、リブは、上下方向に延びる縦リブ部と、縦リブ部の下端部で折り返して回転軸側に延びる折り返し部とを備え、折り返し部の先端部と上壁との間には隙間が設けられても良い。
この構成によれば、回転軸によって飛散する潤滑油を、折り返し部の先端部と上壁との間の隙間からリブ内に取り込むことができ、潤滑油をリブに効率良く集めることができる。
【0013】
また、上述の構成において、縦リブ部は、上壁から下方に延出し、折り返し部は、回転軸側且つ上壁側に折り返しても良い。この構成によれば、上壁、縦リブ部、及び折り返し部で囲まれる部分に効率良く潤滑油を溜めることができる。
また、上述の構成において、複数の変速軸及び変速軸に支持される複数の変速ギアを備えて任意の変速段を選択的に確立する変速機が、ケース内に設けられ、回転軸は、変速軸であり、リブは、側壁から、変速段のうち最も高速回転する変速段の変速ギアの真上まで回転軸の軸方向に延出しても良い。
この構成によれば、リブの軸方向の端から、最も高速回転する変速段の変速ギアに潤滑油を効果的に供給できる。
【0014】
さらに、上述の構成において、パワーユニットは、シリンダー内のピストンの直線運動を回転運動に変換する内燃機関であり、シリンダーの中心軸と、検出部材の中心軸とは略平行であっても良い。
この構成によれば、シリンダーの中心軸と、検出部材の中心軸とは略平行であるため、ケースの加工が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るパワーユニットの右側面図である。
図2図1のII−II断面図である。
図3】一側ケースを車幅方向内側から見た側面図である。
図4】一側ケースの単体を車幅方向内側から見た側面図である。
図5】他側ケースの単体を車幅方向内側から見た側面図である。
図6】一側ケースの上壁及び一側軸支持部の周辺部を車幅方向内側から見た側面図である。
図7図6のVII−VII断面図である。
図8】検出部材取付部を検出部材の軸方向に上方側から見た図である。
図9】収容凹部及び一側軸支持部の周辺部を車幅方向内側から見た側面図である。
図10】収容凹部及び一側軸支持部の周辺部を車幅方向内側から見た斜視図である。
図11図1のXI−XI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係るパワーユニットの右側面図である。
パワーユニット10は、不図示の自動二輪車に搭載される。この自動二輪車は、車体フレーム(不図示)と、上記車体フレームの前端部に支持されるフロントフォーク(不図示)と、上記車体フレームの後部に支持されるスイングアーム(不図示)と、上記フロントフォークに支持される前輪(不図示)と、上記スイングアームに支持される後輪(不図示)とを備える。上記自動二輪車は、上記車体フレームに支持される乗員用のシート(不図示)に乗員が跨るようにして着座する鞍乗り型車両である。
パワーユニット10は、上記車体フレームに固定され、車両前後方向では、上記前輪と上記後輪との間に配置される。
【0018】
パワーユニット10は、クランクケース11(ケース)と、クランクケース11の前部の上面から上方に延出するシリンダー部12とを備える。
クランクケース11には、クランク軸13、変速機14、クラッチ15、及びキック軸16が収容される。クランク軸13は、車幅方向(左右方向)に略水平に延びる。
シリンダー部12は、シリンダー12a、シリンダーヘッド12b、及びシリンダーヘッドカバー12cを備える。シリンダー12a内を往復運動するピストン17は、コンロッド18を介してクランク軸13に接続される。シリンダー部12のシリンダー中心軸12dは、やや前傾した姿勢で上下に延びる。パワーユニット10は、ピストン17の直線運動を回転運動に変換する内燃機関である。パワーユニット10は、単気筒の4ストローク内燃機関である。
【0019】
図2は、図1のII−II断面図である。
図1及び図2を参照し、クランクケース11は、クランク軸13の軸方向(車幅方向)に2分割されており、クランク軸13を左右の一方側から支持する一側ケース20Lと、クランク軸13を左右の他方側から支持する他側ケース20Rとを備える。
【0020】
一側ケース20Lは、クランク軸13を車幅方向外側から覆う側壁21と、側壁21の周縁から車幅方向内側に延出する周壁部22とを備える。
他側ケース20Rは、クランク軸13を車幅方向外側から覆う側壁23と、側壁23の周縁から車幅方向内側に延出する周壁部24とを備える。
クランクケース11は、一側ケース20Lの周壁部22の端面と他側ケース20Rの周壁部24の端面とが合わさって結合される合わせ面11aを備える。
クランクケース11の内側には、クランク軸13及び変速機14等を収容する回転軸室25が形成される。
【0021】
クランクケース11の左右の外側面には、一側ケースカバー27と、他側ケースカバー28とが取り付けられる。
一側ケースカバー27は、一側ケース20Lの側壁21の外側面に取り付けられ、側壁21を外側から覆う。一側ケースカバー27と側壁21との間には、発電機室29が形成される。
他側ケースカバー28は、他側ケース20Rの側壁23の外側面に取り付けられ、側壁23を外側から覆う。他側ケースカバー28と側壁23との間には、クラッチ室30が形成される。
【0022】
クランク軸13は、側壁21及び側壁23にそれぞれ設けられる支持孔31a,31bを介し、クランクケース11に軸支される。支持孔31a,31bは、それぞれ軸受31cを介しクランク軸13のジャーナル部を支持する。回転軸室25の前部は、クランク軸13を収容するクランク室25aである。
クランク軸13の一端部は、側壁21を貫通して発電機室29に位置する。クランク軸13の一端部には、不図示の発電機が取り付けられる。
クランク軸13の他端部は、側壁23を貫通してクラッチ室30に位置する。クランク軸13の他端部には、プライマリドライブギア32が固定される。
【0023】
図3は、一側ケース20Lを車幅方向内側から見た側面図である。
図1図3を参照し、変速機14は、クランク軸13によって駆動されるメイン軸35(回転軸、変速軸)と、メイン軸35によって駆動されるカウンタ軸36(変速軸)と、シフトドラム37と、シフトドラム37をメイン軸35及びカウンタ軸36に接続するシフトフォーク34a,34bとを備える。
回転軸室25の後部は、変速機14を収容する変速機室25bである。
【0024】
メイン軸35及びカウンタ軸36は、クランク軸13に対し平行に配置され、車幅方向に略水平に延びる。
メイン軸35には、複数の駆動ギア38a,38b,38c,38d(変速ギア)が軸方向に並んで設けられる。
カウンタ軸36には、駆動ギア38a,38b,38c,38dに対応して順に軸方向配列される複数の被動ギア39a,39b,39c,39d(変速ギア)が設けられる。
変速機14は、駆動ギア38a,38b,38c,38dと被動ギア39a,39b,39c,39dとが常に噛み合う常時噛み合い式である。
【0025】
駆動ギア38a及び被動ギア39dは、メイン軸35及びカウンタ軸36に対してそれぞれ固定される固定ギアである。
駆動ギア38b,38d及び被動ギア39a,39cは、メイン軸35及びカウンタ軸36に対しそれぞれ回転自在に保持されるとともに軸方向に移動不能なフリーギアである。
駆動ギア38c及び被動ギア39bは、メイン軸35及びカウンタ軸36に対して回転不能にスプライン結合され軸方向にスライド可能なシフターギアである。
【0026】
シフターギアである駆動ギア38cは、駆動ギア38cに隣接する駆動ギア38bの側面に係合可能なドグ部38c1と、駆動ギア38cに隣接する駆動ギア38dの側面に係合可能なドグ部38c2とを備える。
シフターギアである被動ギア39bは、被動ギア39bに隣接する被動ギア39aの側面に係合可能なドグ部39b1と、被動ギア39bに隣接する被動ギア39cの側面に係合可能なドグ部39b2とを備える。
【0027】
変速機14は、上記シフターギアをシフトフォーク34a,34bによって軸方向に移動させ、メイン軸35及びカウンタ軸36に対するフリーギアの固定状態を変更する。これにより、メイン軸35とカウンタ軸36との間の動力伝達が可能なギアの組が一組構成され、任意の変速段が選択的に確立される。ここで、図2では、変速機14はニュートラル状態が示される。
シフトフォーク34a,34bは、シフトドラム37の外周に形成されるリード溝37a(図3)に接続される。シフトフォーク34a,34bは、シフトドラム37の回動に伴ってリード溝37aのパターンに沿ってメイン軸35の軸方向に移動し、シフターギアを移動させる。
【0028】
詳細には、駆動ギア38a及び被動ギア39aは、1速の変速段を構成する1速ギアである。1速ギアは、ニュートラル状態に対し被動ギア39bが右に移動してドグ部39b1が被動ギア39aに係合し、被動ギア39aがカウンタ軸36に固定されることで確立される。
駆動ギア38b及び被動ギア39bは、3速の変速段を構成する3速ギアである。3速ギアは、ニュートラル状態に対し駆動ギア38cが右に移動してドグ部38c1が駆動ギア38bに係合し、駆動ギア38bがメイン軸35に固定されることで確立される。
駆動ギア38c及び被動ギア39cは、4速の変速段を構成する4速ギアである。4速ギアは、ニュートラル状態に対し被動ギア39bが左に移動してドグ部39b2が被動ギア39cに係合し、被動ギア39cがカウンタ軸36に固定されることで確立される。
駆動ギア38d及び被動ギア39dは、2速の変速段を構成する2速ギアである。2速ギアは、ニュートラル状態に対し駆動ギア38cが左に移動してドグ部38c2が駆動ギア38dに係合し、駆動ギア38dがメイン軸35に固定されることで確立される。
【0029】
一側ケース20Lは、メイン軸35の一端部を軸支する一側軸支持部40を側壁21に備える。一側軸支持部40は、メイン軸35の一端部が嵌合する穴部である。一側軸支持部40は、一側軸支持部40内に装着される軸受40aを介してメイン軸35の一端部を支持する。
他側ケース20Rは、メイン軸35の他端部を軸支する他側軸支持部42を側壁23に備える。他側軸支持部42は、メイン軸35の他端部が嵌合する孔部である。他側軸支持部42は、他側軸支持部42内に装着される軸受42aを介してメイン軸35の他端部を支持する。
すなわち、メイン軸35は、一側ケース20Lの側壁21及び他側ケース20Rの側壁23によって、両端部を軸支される。
【0030】
メイン軸35の他端部は、側壁23を貫通してクラッチ室30内に延びる。
メイン軸35の他端部においてクラッチ室30内の部分には、クラッチ15が設けられる。クラッチ15は、クランク軸13とメイン軸35との間の動力の伝達の接続及び切断を切り替える。
クラッチ15は、カップ状のクラッチアウタ45と、クラッチアウタ45の径方向内側に設けられ、メイン軸35に一体に固定される円板状のクラッチセンタ46と、クラッチアウタ45の内側に設けられ、メイン軸35の軸方向に移動可能なプレッシャプレート47と、プレッシャプレート47とクラッチセンタ46との間に設けられるクラッチ板48と、クラッチ15を接続する方向にプレッシャプレート47を付勢するクラッチスプリング49と、クラッチスプリング49に抗してプレッシャプレート47をクラッチ15の切断方向に移動させるリフタープレート50と、を備える。
【0031】
クラッチアウタ45は、プライマリドライブギア32に噛み合うとともに、メイン軸35上に、メイン軸35に対し相対回転可能に設けられる。
クラッチ15の接続状態では、クラッチスプリング49の押圧力によってクラッチ板48がクラッチセンタ46とプレッシャプレート47との間に狭持され、クラッチ板48の摩擦によってクラッチアウタ45とクラッチセンタ46とが接続される。
リフタープレート50を介し、クラッチスプリング49に抗してプレッシャプレート47が車幅方向内側に移動させられると、クラッチ板48の摩擦力が小さくなり、クラッチ15が切断される。
【0032】
一側ケース20Lは、カウンタ軸36の一端部を軸支するカウンタ軸支持部51を側壁21に備える。カウンタ軸支持部51は、カウンタ軸36の一端部が嵌合する孔部である。カウンタ軸支持部51は、カウンタ軸支持部51内に装着される軸受51aを介してカウンタ軸36の一端部を支持する。
他側ケース20Rは、カウンタ軸36の他端部を軸支するカウンタ軸支持部52を側壁23に備える。カウンタ軸支持部52は、カウンタ軸36の他端部が嵌合する孔部である。カウンタ軸支持部52は、カウンタ軸支持部52内に装着される軸受52aを介してカウンタ軸36の他端部を支持する。
【0033】
カウンタ軸36の一端部は、側壁21を貫通してクランクケース11の外側に延出する。
クランクケース11の外側に位置するカウンタ軸36の一端部には、駆動スプロケット54が固定される。
パワーユニット10の動力は、駆動スプロケット54と上記後輪とを接続する駆動力伝達部材55を介し、駆動輪である上記後輪に伝達される。駆動スプロケット54は、側壁21に取り付けられるカバー56によって覆われる。
【0034】
図4は、一側ケース20Lの単体を車幅方向内側から見た側面図である。
図3及び図4を参照し、一側ケース20Lの周壁部22は、側壁21の前縁部から車幅方向内側に延出する前壁22aと、側壁21の後縁部から車幅方向内側に延出する後壁22bと、側壁21の上縁部から車幅方向内側に延出する上壁22cと、側壁21の下縁部から車幅方向内側に延出する下壁22dとを備える。
【0035】
クランク軸13用の支持孔31aは、側壁21の前部に設けられる。メイン軸35用の一側軸支持部40は、支持孔31aの後方に位置し、カウンタ軸支持部51は一側軸支持部40の後方に位置する。
シフトドラム37の一端を支持するシフトドラム支持孔58aは、側壁21において一側軸支持部40の下方の部分に設けられる。
【0036】
一側ケース20Lの上壁22cの前部には、コンロッド18が上下方向に通る開口部59aが設けられる。
一側ケース20Lの上壁22cの後部には、一側ブリーザー室60が上壁22cと一体に設けられる。一側ブリーザー室60は、一側軸支持部40及びカウンタ軸支持部51の上方に位置する。
詳細には、上壁22cの後部は、上壁22cの外殻を構成する外側上壁部61と、外側上壁部61における車幅方向の中間部から下方に延びる内側側壁60aと、内側側壁60aの下縁部から車幅方向内側に延びるブリーザー室底壁60bとを備える。
一側ブリーザー室60は、外側上壁部61、内側側壁60a、及びブリーザー室底壁60bによって区画され、側壁21よりも車幅方向内側に位置する。
【0037】
図5は、他側ケース20Rの単体を車幅方向内側から見た側面図である。
他側ケース20Rの周壁部24は、側壁23の前縁部から車幅方向内側に延出する前壁24aと、側壁23の後縁部から車幅方向内側に延出する後壁24bと、側壁23の上縁部から車幅方向内側に延出する上壁24cと、側壁23の下縁部から車幅方向内側に延出する下壁24dとを備える。
【0038】
図2及び図5を参照し、クランク軸13用の支持孔31bは、側壁23の前部に設けられる。メイン軸35用の他側軸支持部42は、支持孔31bの後方に位置し、カウンタ軸支持部52は他側軸支持部42の後方に位置する。
シフトドラム37の他端を支持するシフトドラム支持孔58bは、側壁23において他側軸支持部42の下方の部分に設けられる。
【0039】
他側ケース20Rの上壁24cの前部には、コンロッド18が上下方向に通る開口部59bが設けられる。
他側ケース20Rの上壁24cの後部には、他側ブリーザー室62が上壁24cと一体に設けられる。他側ブリーザー室62は、他側軸支持部42及びカウンタ軸支持部52の上方に位置する。
詳細には、上壁24cの後部は、上壁24cの外殻を構成する外側上壁部63と、外側上壁部63から下方に延びる内側側壁62aと、内側側壁62aの下縁部から車幅方向内側に延びるブリーザー室底壁62bとを備える。
他側ブリーザー室62は、外側上壁部63、内側側壁62a、及びブリーザー室底壁62bによって区画される。なお、内側側壁62aは、側壁23の一部によって構成されても良い。
【0040】
クランクケース11内の上部には、一側ブリーザー室60と他側ブリーザー室62とが車幅方向に繋がることで、ブリーザー室が形成される。このブリーザー室は、パワーユニット10の運転により上昇する回転軸室25内の圧力を外部に逃がす。
回転軸室25から潤滑油と共に上記ブリーザー室に流入する気体は、ブリーザー室内で潤滑油と気体とに分離され、分離された気体は、例えば、当該ブリーザー室とパワーユニット10の吸気装置(不図示)とを接続するブリーザーチューブ(不図示)を介し、上記吸気装置に流れる。
一側ケース20Lの開口部59aと他側ケース20Rの開口部59bとが左右に合わさることで、クランクケース11の上面には、シリンダー12aの筒内に連通する孔部59(図2)が形成される。
【0041】
図6は、一側ケース20Lの上壁22c及び一側軸支持部40の周辺部を車幅方向内側から見た側面図である。
図1及び図6を参照し、クランクケース11には、メイン軸35を検出する検出部材70が取り付けられる。検出部材70は、一側ケース20Lの上壁22cに取り付けられる。
検出部材70は、メイン軸35を非接触で検出するセンサーである。検出部材70は、例えばピックアップコイルであり、メイン軸35の回転に伴う磁束の変化を検出する。
上記自動二輪車の制御部(不図示)は、検出部材70によってメイン軸35の回転を検出し、この検出結果から、例えば、自動二輪車の車速を算出する。
【0042】
図7は、図6のVII−VII断面図である。
図6及び図7を参照し、検出部材70は、上下に長い円柱状に形成されるセンサー本体部71と、センサー本体部71の上端に設けられるフランジ部72とを備える。
センサー本体部71の下面(端面)は、メイン軸35に上方から対向するように配置される検出部71aであり、検出部71aはメイン軸35を検出する。検出部材70は、センサー本体部71の中心軸71bが鉛直線に対しやや前傾する姿勢で配置される。検出部材70は、メイン軸35の軸方向視において、中心軸71bがメイン軸35の中心を通るように配置される。検出部71aは、中心軸71bに略直交する平面であり、メイン軸35の軸方向視では、前下がりに傾斜する。
【0043】
フランジ部72は、センサー本体部71よりも大径である。フランジ部72は、車幅方向内側に延出する延出部72aを備える。
検出部材70は、一側ケース20Lの上壁22cの外側上壁部61に設けられる検出部材取付部65に固定される。
【0044】
図8は、検出部材取付部65を検出部材70の軸方向に上方側から見た図である。
検出部材取付部65は、外側上壁部61を上下に貫通する取付孔である。
検出部材70は、検出部材取付部65に上方から挿通され、フランジ部72が検出部材取付部65の周縁部の上面に当接することで、軸方向に位置決めされる。
検出部材70は、フランジ部72の延出部72aに上方から挿通される固定具66によって、外側上壁部61に締結される。
センサー本体部71は、一側ケース20Lの側壁21と一側ブリーザー室60の内側側壁60aとの間を通って下方に延びる。すなわち、検出部材70は、一側ブリーザー室60よりも車幅方向外側に配置される。
検出部71aは、一側ブリーザー室60のブリーザー室底壁60bよりも下方且つメイン軸35よりも上方に位置する。
【0045】
図7を参照し、検出部材70は、メイン軸35上に配置される複数の駆動ギア38a,38b,38c,38dの内、側壁21に設けられる一側軸支持部40に最も近い位置に配置される駆動ギア38dを検出する。すなわち、検出部材70は、検出部71aが駆動ギア38dの外周面に対向する位置に配置される。駆動ギア38dは、センサー本体部71の中心軸71bの延長線上に位置する。駆動ギア38dに隣接する駆動ギア38cは、駆動ギア38dよりも大径である。
このように、検出部材70は、一側軸支持部40に近い位置の駆動ギア38dを検出するため、メイン軸35の振れが小さい位置で駆動ギア38dを介してメイン軸35の回転を検出でき、メイン軸35の回転を精度良く検出できる。加えて、図7に示すように、検出部材70から検出部材70の軸方向に延びる延長線71dは、軸受40aに重なる。すなわち、検出部材70の軸方向で検出部材70と軸受40aとは重なり、検出部材70は側壁21に沿って配置される。
【0046】
図1に示すように、検出部材70の中心軸71bとシリンダー12aのシリンダー中心軸12dとは略平行である。このため、一側ケース20Lを製造する際に、一側ケース20Lの検出部材取付部65(図6)及び開口部59a(図4)を、例えば機械加工によって、同一の方向から加工でき、一側ケース20Lの加工が容易である。
【0047】
図6図8を参照し、一側ケース20Lの側壁21の内面には、センサー本体部71の下部を収容する収容凹部75が設けられる。
収容凹部75は、側壁21の内面において一側軸支持部40の上方の部分がメイン軸35の軸方向の外側(車幅方向外側)に凹んだ凹部である。
一側軸支持部40の内周部は、側壁21を外側に貫通しない止まり穴である。軸受40aは、一側軸支持部40の内周部に嵌合する。
【0048】
図9は、収容凹部75及び一側軸支持部40の周辺部を車幅方向内側から見た側面図である。図10は、収容凹部75及び一側軸支持部40の周辺部を車幅方向内側から見た斜視図である。
図6図10を参照し、収容凹部75は、側壁21の内面において一側軸支持部40を周囲から囲む部分である周縁部21aに対し、車幅方向外側に凹む。収容凹部75は、駆動ギア38dに対し車幅方向外側に位置する。
収容凹部75は、センサー本体部71の外周面を覆う凹部側面76と、センサー本体部71の下面の検出部71aを下方から覆う凹部底面77とを備える。
収容凹部75は、センサー本体部71の下部における車幅方向外側の部分である外側部71cを収容する。センサー本体部71の下部における車幅方向内側の部分は、下面の検出部71aが駆動ギア38dに対向するように設けられる。
【0049】
図8に示すように、検出部材70の軸方向視では、センサー本体部71の外側部71cは、一側軸支持部40に上方から重なる。
凹部側面76は、センサー本体部71の外側部71cの外周面を覆う。凹部底面77は、センサー本体部71の外側部71c下面を下方から覆う。センサー本体部71の外側部71cは、凹部底面77に上方から重なる。
【0050】
凹部側面76は、センサー本体部71の外周面に沿うように湾曲する。
凹部底面77は、メイン軸35の軸方向視では、一側軸支持部40の内周部に沿う円弧状である。
詳細には、メイン軸35の軸方向視では、凹部底面77の上端部77aは、一側軸支持部40の中心部の上方に位置し、凹部底面77の下端部77bは、一側軸支持部40よりも前方に位置する。上端部77aは、凹部底面77の後端部であり、下端部77bは、凹部底面77の前端部である。凹部底面77は、上端部77aから下端部77bまで、一側軸支持部40の内周部に沿うように円弧状に前下がりに下る傾斜面である。
【0051】
一側ケース20Lの側壁21の内面の一部を構成する上記周縁部21aには、凹部底面77から一側軸支持部40まで延びる給油溝78が設けられる。
給油溝78は、周縁部21aの一部がメイン軸35の軸方向に凹んだ凹部である。給油溝78は、凹部底面77から下方に延びて一側軸支持部40の内周部に繋がる。給油溝78は、下方の一側軸支持部40側に行くに従って幅が小さくなるテーパー状の溝である。
【0052】
給油溝78の上流側端面78aは、凹部底面77において上端部77a寄りに配置される。ここで、上流側端面78aは、給油溝78を流れる潤滑油の流れにおける上流側の端面であり、給油溝78の上端面である。
凹部底面77の下端部77bは、給油溝78の上流側端面78aの前下方に位置する。
メイン軸35の回転方向Rは、図6において反時計回りである。凹部底面77の下端部77bは、メイン軸35の前方側に位置するとともに、回転方向Rに対して上方から対向する位置に配置される。
センサー本体部71の外側部71cは、検出部材70の軸方向視(図8)では、給油溝78に上方から重なる。
【0053】
図3図4図6図7図9、及び図10を参照し、一側ケース20Lの側壁21の内面には、メイン軸35の軸方向に立設される第1のリブ80が設けられる。
第1のリブ80は、メイン軸35及びカウンタ軸36よりも上方に設けられるとともに、前後方向では、メイン軸35とカウンタ軸36との間に設けられる。詳細には、第1のリブ80は、駆動ギア38cと被動ギア39cとの噛み合い部の真上に位置する。
第1のリブ80は、メイン軸35を基準にした場合、凹部底面77の下端部77bとは反対側に配置される。
また、第1のリブ80は、凹部底面77及び給油溝78に対し、後上方に位置する。
【0054】
第1のリブ80は、上下方向に延びる縦リブ部81と、縦リブ部81の下端部で折り返してメイン軸35側へ前方に延びる折り返し部82とを備える。
詳細には、縦リブ部81は、一側ケース20Lの上壁22cのブリーザー室底壁60bの下面から下方に延出する。折り返し部82は、縦リブ部81の下端から、メイン軸35側且つブリーザー室底壁60b側に向かって前上方に折り返す。
折り返し部82の先端部82aと上壁22cのブリーザー室底壁60bの下面との間には、上下方向に隙間83が設けられる。
【0055】
図7には、メイン軸35の軸方向における第1のリブ80の長さが仮想線で示される。
第1のリブ80の軸方向の先端80aは、メイン軸35の軸方向において駆動ギア38c及び被動ギア39cに重なる位置にある。先端80aは、駆動ギア38cと被動ギア39cとの噛み合い部の真上に配置される。
駆動ギア38c及び被動ギア39cは、4速ギアであり、複数の変速段のうちで最も高速回転する変速段の変速ギアである。4速の変速段は、変速機14の変速段のうち、最も減速比が小さい変速段である。
【0056】
図5に示すように、他側ケース20Rの側壁23の内面には、メイン軸35の軸方向に立設される第2のリブ85が設けられる。
第2のリブ85は、メイン軸35及びカウンタ軸36よりも上方に設けられるとともに、前後方向では、メイン軸35とカウンタ軸36との間に設けられる。
【0057】
第2のリブ85は、上下方向に延びる縦リブ部86と、縦リブ部86の下端部で折り返してメイン軸35側へ前方に延びる折り返し部87とを備える。
詳細には、縦リブ部86は、他側ケース20Rの上壁24cのブリーザー室底壁62bの下面から下方に延出する。折り返し部87は、縦リブ部86の下端から、メイン軸35側且つブリーザー室底壁62b側に向かって前上方に折り返す。
折り返し部87の先端部87aとブリーザー室底壁62bの下面との間には、上下方向に隙間88が設けられる。
【0058】
図7には、メイン軸35の軸方向における第2のリブ85の長さが仮想線で示される。
第2のリブ85の軸方向の先端85aは、メイン軸35の軸方向において駆動ギア38b及び被動ギア39bに重なる位置にある。先端85aは、駆動ギア38b及び被動ギア39bの上方に配置される。
【0059】
ここで、クランクケース11内の潤滑について説明する。
クランクケース11内の下部には、潤滑油が貯留され、潤滑油は、クランク軸13の動力によって駆動されるオイルポンプ(不図示)によって、クランクケース11内の各部に圧送される。クランク軸13には、例えば、クランクケース11の壁内に形成される油路を介し、オイルポンプによって潤滑油が供給される。
潤滑油は、クランクケース11、メイン軸35、及びカウンタ軸36の回転による飛沫給油によっても、クランクケース11内の各部に供給される。
【0060】
図6を参照し、飛沫給油によって一側ケース20Lの側壁21の内面に付着する潤滑油の一部は、検出部材70及び収容凹部75に集まる。
収容凹部75の潤滑油の一部は、給油溝78を通って矢印Aのように下方に流れ、一側軸支持部40の軸受40aに供給される。これにより、収容凹部75に集まる潤滑油を給油溝78によってガイドして一側軸支持部40に効率良く供給できる。
【0061】
また、収容凹部75の潤滑油の一部は、凹部底面77の下端部77bから下方に落ちる。
凹部底面77の下端部77bは、メイン軸35の回転方向Rに対して上方から対向するため、凹部底面77の下端部77bから下方に落ちる潤滑油は、メイン軸35の回転によって上方側に飛ばされる。これにより、メイン軸35の回転によって効率良く飛沫給油できる。
また、収容凹部75に集まる潤滑油中のゴミは、低い位置にある凹部底面77の下端部77bに溜まる。凹部底面77の下端部77bは、給油溝78の上流側端面78aよりも下方に位置するため、ゴミを下端部77bに捕集しておくことができ、ゴミが給油溝78に流れることを抑制できる。
【0062】
メイン軸35に供給される潤滑油の一部は、メイン軸35の回転によって後上方に飛ばされる。メイン軸35によって飛ばされる潤滑油の一部L1(図6)は、第1のリブ80の隙間83から第1のリブ80内に入る。すなわち、第1のリブ80は、メイン軸35の回転方向Rに飛散する潤滑油が到達可能な位置に設けられる。第1のリブ80に集まった潤滑油は、第1のリブ80の先端80a(図7)から下方に落ちて駆動ギア38cと被動ギア39cとの噛み合い部に供給される。このため、複数の変速段のうちで最も高速回転する変速段のギアに効果的に給油できる。
【0063】
また、図5を参照し、メイン軸35によって飛ばされる潤滑油の一部は、第2のリブ85の隙間88から第2のリブ85内に入る。第2のリブ85に集まった潤滑油は、第2のリブ85の先端85a(図7)から下方に落ちて駆動ギア38b及び被動ギア39bに供給される。このため、駆動ギア38b及び被動ギア39bに効率良く給油できる。
【0064】
図11は、図1のXI−XI断面図である。
図1及び図11を参照し、他側ケースカバー28の上部の壁内には、車幅方向に延びる油路90が設けられる。油路90には、上記オイルポンプによって潤滑油が圧送される。
油路90は、クラッチ15の上方に位置する。油路90の車幅方向の外端部には、油路90をクラッチ室30に連通させる油路91が設けられる。
油路91は、油路90の下面から下方に延びてクラッチ15の上方の空間に連通する。油路91は、油路90よりも小径である。
詳細には、油路91は、下方に行くに従って車幅方向内側に位置するように傾斜している。油路91の下端91aは、クラッチアウタ45における車幅方向外側の端部に向かって開口する。潤滑油L2は、油路91の下端91aから、下方且つ車幅方向内側に向かって斜めに噴射される。このため、クラッチアウタ45の広い範囲に効果的に給油できる。
【0065】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、パワーユニット10は、回転軸としてのメイン軸35と、メイン軸35を収容する回転軸室25を形成するクランクケース11とを有し、メイン軸35は、略水平に配置され、クランクケース11は、メイン軸35を軸方向から覆う側壁21と、メイン軸35を上方から覆う上壁22cとを備え、側壁21は、メイン軸35の一端を軸支する一側軸支持部40を備え、メイン軸35に向かって指向してメイン軸35を検出する検出部材70が、上壁22cにおいて側壁21の近傍に設けられ、側壁21は、検出部材70の一部である外側部71cを収容する収容凹部75を一側軸支持部40の上方に備え、側壁21の内面には、収容凹部75の凹部底面77から一側軸支持部40まで延びる給油溝78が設けられる。
この構成によれば、検出部材70の少なくとも一部を収容する収容凹部75に、クランクケース11内の潤滑油の一部を集めることができ、クランクケース11の側壁21の内面に設けられる給油溝78によって、収容凹部75の潤滑油を側壁21の一側軸支持部40に供給できる。このため、検出部材70用の収容凹部75、及び給油溝78を利用する簡単な構造でメイン軸35に効率良く給油できる。
【0066】
また、収容凹部75の下端部77bは、給油溝78の上流側端面78aよりも下方に位置する。この構成によれば、給油溝78の上流側端面78aよりも下方に位置する下端部77bにゴミ等を捕集しておくことができるため、給油溝78を介しメイン軸35に適切に給油できる。
また、収容凹部75の下端部77bは、メイン軸35の回転方向Rに上方から対向する位置に配置される。この構成によれば、収容凹部75の下端部77bから落ちる潤滑油を、メイン軸35の回転によって効率良く飛沫給油できる。
【0067】
さらに、検出部材の軸方向視で、検出部材70は、検出部材70の一部である外側部71cが一側軸支持部40に上方から重なる。この構成によれば、検出部材70は、一側軸支持部40に近い位置でメイン軸35を検出できる。このため、検出部材70は、振れが少ない状態のメイン軸35を検出でき、メイン軸35を良好に検出できる。
また、側壁21の内面には、メイン軸35の軸方向に立設される第1のリブ80が設けられ、第1のリブ80は、メイン軸35の回転方向Rに飛散する潤滑油が第1のリブ80に到達可能な位置に設けられ、第1のリブ80は、上下方向に延びる縦リブ部81と、縦リブ部81の下端部で折り返してメイン軸35側に延びる折り返し部82とを備え、折り返し部82の先端部82aと上壁22cとの間には隙間83が設けられる。
この構成によれば、メイン軸35の回転によって飛散する潤滑油を、折り返し部82の先端部82aと上壁22cとの間の隙間83から第1のリブ80に取り込むことができ、潤滑油を第1のリブ80に効率良く集めることができる。
【0068】
また、縦リブ部81は、上壁22cから下方に延出し、折り返し部82は、メイン軸35側且つ上壁22c側に折り返す。この構成によれば、上壁22c、縦リブ部81、及び折り返し部82で囲まれる部分に効率良く潤滑油を溜めることができる。
また、複数の変速軸であるメイン軸35及びカウンタ軸36、メイン軸35に支持される駆動ギア38a,38b,38c,38d、及び、カウンタ軸36に支持される被動ギア39a,39b,39c,39dを備えて任意の変速段を選択的に確立する変速機14が、クランクケース11内に設けられ、第1のリブ80は、側壁22cから、変速段のうち最も高速回転する変速段(4速)の変速ギアである駆動ギア38c及び被動ギア39cの真上までメイン軸35の軸方向に延出する。
この構成によれば、第1のリブ80の軸方向の端から、最も高速回転する変速段の変速ギアである駆動ギア38c及び被動ギア39cに潤滑油を効果的に供給できる。
【0069】
さらに、パワーユニット10は、シリンダー12a内のピストン17の直線運動を回転運動に変換する内燃機関であり、シリンダー12aのシリンダー中心軸12dと、検出部材70の中心軸71bとは略平行である。この構成によれば、略平行なシリンダー中心軸12d及び中心軸71bに沿ってクランクケース11を加工できるため、クランクケース11の加工が容易になる。
【0070】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、パワーユニット10として単気筒の4ストローク内燃機関を例示して説明したが、本発明は、これに限定されるものはない。何らかの軸部材を有すれば2ストローク内燃機関やロータリー内燃機関でも良く、また、多気筒の内燃機関でも良い。さらに、例えば、電動モーターを駆動源とするパワーユニットにおいて、回転軸を収容するケースを備え、ケースは、回転軸を軸方向から覆う側壁と、回転軸を上方から覆う上壁とを備え、側壁は、回転軸の一端を軸支する軸支持部を備え、回転軸に向かって指向して回転軸を検出する検出部材が、上壁において側壁の近傍に設けられ、側壁は、検出部材の少なくとも一部を収容する収容凹部を軸支持部の上方に備え、側壁の内面には、収容凹部の底面から軸支持部まで延びる給油溝が設けられても良い。
また、上記実施の形態では、回転軸としてメイン軸35を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、給油溝によって給油される軸支持部は、回転軸としてのカウンタ軸を支持する軸支持部であっても良い。
また、上記実施の形態では、第1のリブ80は、駆動ギア38cと被動ギア39cとの噛み合い部の真上に位置するものとして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1のリブ80は、駆動ギア38cまたは被動ギア39cのいずれかの真上に位置していても良い。
また、鞍乗り型車両として自動二輪車1を例に挙げて説明したが、鞍乗り型車両は、前輪または後輪を2つ備えた3輪の鞍乗り型車両及び4輪以上を備えた鞍乗り型車両であっても良い。
【符号の説明】
【0071】
10 パワーユニット
11 クランクケース(ケース)
12a シリンダー
12d シリンダー中心軸(シリンダーの中心軸)
14 変速機
17 ピストン
21 側壁
22c 上壁
25 回転軸室
35 メイン軸(回転軸、変速軸)
36 カウンタ軸(変速軸)
38a,38b,38d 駆動ギア(変速ギア)
38c 駆動ギア(変速ギア、最も高速回転する変速段の変速ギア)
39a,39b,39d 被動ギア(変速ギア)
39c 被動ギア(変速ギア、最も高速回転する変速段の変速ギア)
40 一側軸支持部(軸支持部)
70 検出部材
71b 中心軸(検出部材の中心軸)
75 収容凹部
77 凹部底面(底面)
77b 下端部
78 給油溝
78a 上流側端面
80 第1のリブ(リブ)
81 縦リブ部
82 折り返し部
82a 先端部
83 隙間
R 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11