(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779985
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】自動車用のトルク伝達アセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20201026BHJP
F16F 15/133 20060101ALI20201026BHJP
F16D 25/0635 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
F16H45/02 Y
F16F15/133
F16D25/0635
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-512850(P2018-512850)
(86)(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公表番号】特表2018-527528(P2018-527528A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】FR2015052423
(87)【国際公開番号】WO2017042440
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2018年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】503041177
【氏名又は名称】ヴァレオ アンブラヤージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】ラバー、アラブ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス、ロペス−ペレス
(72)【発明者】
【氏名】イバン、デュティエ
【審査官】
小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/096735(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0032767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 45/02
F16D 25/0635
F16F 15/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用のトルク伝達アセンブリであって、
前記トルク伝達アセンブリは、
−一方ではクランクシャフト(1)に、他方ではギヤボックスの入力シャフト(2)に連結可能な流体力学的トルクコンバータと、
−回転軸Xの周りを互いに対して回転移動する第1要素(3、4、11)および第2要素(8)と、
−ダンパ手段(20、22)と、を含み、
前記ダンパ手段が、伝達部材(22)と支持要素(20)とを含み、
前記伝達部材は、前記第1要素または前記第2要素に回転結合される弾性ブレードを含み、
前記支持要素は、前記第2要素または前記第1要素に支持され、
前記弾性ブレードは、屈曲して前記第1要素と前記第2要素との間で回転トルクを伝達可能であり、
前記弾性ブレードの屈曲に付随して前記回転軸(X)により前記第1要素と前記第2要素とが相対回転し、前記第1要素と前記第2要素との間の回転の非対称性を緩和し、
前記流体力学的トルクコンバータは、前記第1要素と前記第2要素との間でそれらが相対的に逸れたときに抵抗トルクを及ぼして前記伝達部材に蓄積されたエネルギーを放散するように構成された摩擦手段を含むことを特徴とする、トルク伝達アセンブリ。
【請求項2】
前記弾性ブレードと前記支持要素が、カムフォロワと、このカムフォロワと協働するように構成されたカム面とをそれぞれ形成する、請求項1に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項3】
前記第1要素が、前記クランクシャフト(1)に連結される前記流体力学的トルクコンバータのトルク入力要素(3、4、11)を形成し、
前記第2要素が、ギヤボックスの入力シャフト(2)に連結するための前記流体力学的トルクコンバータのトルク出力要素(8)を形成し、
前記ダンパ手段(22、20)が、前記トルク入力要素(3、4、30、11)と前記トルク出力要素(8)との間に配置されて、前記トルク出力要素(8)に対する前記トルク入力要素の回転を妨げるように構成されている、請求項1または2に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項4】
前記トルク出力要素が中央ハブ(8)を含んでいる、請求項3に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項5】
前記支持要素が少なくとも1つの転動体(20)を含んでいることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項6】
前記トルク入力要素は、インペラホイール(3)にそれ自体が流体力学的に接続されるタービンホイール(4)により形成され、
前記インペラホイールが、クランクシャフトに連結されるように構成されている、請求項3又は4に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項7】
前記タービンホイール(4)が、中央ハブ(8)を囲む少なくとも1つの環状フランジ(17)に連結可能であり、
前記環状フランジ(17)の半径方向内周が、前記タービンホイール(4)にそれぞれ回転結合されることを特徴とする、請求項6に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項8】
前記支持要素(20)が、前記環状フランジ(17)の半径方向外周に取り付けられることを特徴とする、請求項7に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項9】
前記タービンホイール(4)が、間に内部空間を軸方向に画定する2個のフランジ(17)を含み、
前記内部空間が、少なくとも部分的に前記弾性ブレード(22)および/または前記支持要素(20)のハウジングの役割を果たすことを特徴とする、請求項7または8に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項10】
前記インペラホイール(3)は、該インペラホイール(3)、前記タービンホイール(4)および/または前記ダンパ手段(22、20)を少なくとも部分的に収容するように、カバー(11)に回転結合されていることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項11】
前記流体力学的トルクコンバータが、クラッチ連結位置で前記カバー(11)と前記タービンホイール(4)を連結可能であり、クラッチ遮断位置で前記タービンホイール(4)から前記カバー(11)を解放可能な、クラッチ手段(30)を含んでいることを特徴とする、請求項10に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項12】
前記弾性ブレード(22)は、前記タービンホイール(4)と前記トルク出力要素(8)との、休止位置とは異なる相対的な角度位置で、前記支持要素(20)が前記弾性ブレード(22)に屈曲応力を及ぼして、前記支持要素(20)に前記弾性ブレード(22)の反作用力を発生させ、この反作用力が、前記タービンホイール(4)と前記トルク出力要素(8)とを前記相対的な休止位置に戻そうとする周方向成分を有することを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項13】
前記弾性ブレード(22)は、前記タービンホイール(4)と前記トルク出力要素(8)との、休止位置とは異なる相対的な角度位置で、前記支持要素(20)が前記弾性ブレード(22)に屈曲応力を及ぼして、前記支持要素(20)に前記弾性ブレード(22)の反作用力を発生させ、この反作用力が、前記支持要素(20)と前記弾性ブレード(22)を接触させたままにしようとする半径方向の成分を有することを特徴とする、請求項6から12のいずれか一項に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項14】
前記トルク出力要素(8)に対する前記タービンホイール(4)の角度方向の移動が20°より大きく、好ましくは40°より大きいことを特徴とする、請求項6から13のいずれか一項に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項15】
前記弾性ブレード(22)が、前記トルク出力要素(8)にそれぞれ結合される固定部分(23)と、弾性部分とを含み、
前記弾性部分は、半径方向内側部分(25)と、半径方向外側部分(26)と、これらの半径方向内側部分(25)と半径方向外側部分(26)とを接続するアーチ状または屈曲状の部分(27)とを含んでいることを特徴とする、請求項6から14のいずれか一項に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項16】
前記ダンパ手段が少なくとも2個の弾性ブレード(22)を含み、
前記弾性ブレード(22)の各々が、前記トルク出力要素(8)にそれぞれ結合され、
前記弾性ブレード(22)の各々が、前記タービンホイール(4)にそれぞれ結合される前記支持要素(20)と組み合わされ、
前記弾性ブレード(22)の各々が、対応する前記支持要素(20)で弾性的に支持され、
前記弾性ブレード(22)の各々が、前記トルク出力要素(8)に対する前記タービンホイール(4)の回転時に屈曲することが可能であることを特徴とする、請求項6から15のいずれか一項に記載のトルク伝達アセンブリ。
【請求項17】
−前記第1要素がクラッチ手段(30)とカバー(11)とから形成され、
−前記ダンパ手段が、前記クラッチ手段(30)と前記トルク出力要素(8)とに接続され、
前記クラッチ手段は、クラッチ連結位置で前記カバー(11)と前記トルク出力要素(8)とを回転可能に結合可能であり、クラッチ遮断位置で前記トルク出力要素(8)から前記カバー(11)を解放可能である、請求項3又は4に記載のトルク伝達アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のトルク伝達アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
トルク伝達アセンブリは、公知の流体力学的トルクコンバータを含んでいる。このようなトルクコンバータの一例を
図1に概略的かつ部分的に示した。このコンバータは、自動車の内燃機関の出力シャフト、たとえばクランクシャフト1からギヤボックスの入力シャフト2にトルクを伝達することができる。
【0003】
トルクコンバータは、一般に、リアクタ5を介してタービンホイール4を流体力学的に駆動可能なインペラホイール3を含む。
【0004】
インペラホイール3は、クランクシャフト1に連結され、タービンホイール4は、ガイドリング6に連結されている。
【0005】
圧縮コイルばねタイプの第1のグループの弾性部材7a、7bは、ガイドリング6と、ギヤボックスの入力シャフト2に連結された中央ハブ8との間に取り付けられる。この第1のグループの弾性部材7a、7bは、上記弾性部材7a、7bが互いに位相変形するように位相合わせ部材9を介して直列に配置され、位相合わせ部材9は、ガイドリング6に対しても中央ハブ8に対しても可動式である。
【0006】
第2のグループの弾性部材7cは、ガイドリング6と中央ハブ8との間に隙間を伴って第1のグループの弾性部材7a、7bと並列に接続され、上記弾性部材7cは、特に、中央ハブ8に対するガイドリング6の角度方向の行程終了時に、角度方向の限られた範囲にわたって作動するように構成されている。ハブ8に対するガイドリング6の角度方向の行程あるいは角度方向のオフセットαは、上記弾性部材7a、7bにより形成されたダンパ手段を介して伝達されるトルクが一切ない休止位置(α=0)に対して定義される。
【0007】
トルクコンバータは、さらに、インペラホイール3とタービンホイール4とを介在させずに所定の動作段階でクランクシャフト1からガイドリング6にトルクを伝達可能にするクラッチ手段10を含む。
【0008】
第2のグループの弾性部材7cは、角度方向の行程終了時すなわちハブ8に対するガイドリング6(あるいはその逆)の角度方向のオフセットαが大きいときに、ダンパ手段の剛性を高めることができる。
【0009】
角度方向のオフセットαに応じて装置を介して伝達されるトルクMを決定する関数M=f(a)のグラフは、勾配Kaの第1の線形部分(角度方向のオフセットαの値が小さい場合)と、それよりも大きい勾配Kbの第2の線形部分(角度方向のオフセットαの値が大きい場合)とを含む。KaとKbは、それぞれ角度方向の行程の開始時と終了時とにおける装置の角度方向の剛性である。第1のグループの各組における第1のばねの累積剛性をK1、第1のグループの各組における第2のばねの累積剛性をK2、第2のグループのばねの累積剛性をK3と定義すると、Ka=(K1.K2)/(K1+K2)およびKb=Ka+K3である。
【0010】
この曲線の第1の部分と第2の部分との間の勾配のギャップは、トルクコンバータの動作時に様々な振動と大きなヒステリシスとを発生することがあり、ダンパ手段を用いて得られるフィルタリング品質を損なってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、特に、この問題に対して簡単かつ有効で経済的な解決方法をもたらすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明は、自動車用のトルク伝達アセンブリを提案し、
上記アセンブリは、
−一方ではクランクシャフトに、他方ではギヤボックスの入力シャフトに連結可能な流体力学的トルクコンバータと、
−回転軸Xを中心として互いに回転移動する第1要素および第2要素と、
−ダンパ手段と、を含み、
上記ダンパ手段が伝達部材と支持要素とを含み、
伝達部材は、第1要素または第2要素に回転結合される弾性ブレードを含み、
支持要素は、それぞれ第2要素または第1要素であり、
弾性ブレードは、屈曲して第1要素と第2要素との間で回転トルクを伝達可能であり、
弾性ブレードの屈曲に付随して回転軸(X)により第1要素と第2要素とが相対回転し、第1要素と第2要素との間の回転の非対称性を緩和することを特徴とする。
【0013】
このようなダンパ手段は、勾配のギャップなしになだらかな特徴曲線を提供する。このようにして、本発明は、動作時に発生する振動を減少して良好なフィルタリング品質を保証することができる。
【0014】
弾性ブレードと支持要素は、カムフォロワと、このカムフォロワと協働するように構成されたカム面とをそれぞれ形成する。
【0015】
第1要素は、クランクシャフトに連結するためのトルクコンバータのトルク入力要素を形成し、
第2要素は、ギヤボックスの入力シャフトに連結するためのトルクコンバータのトルク出力要素を形成し、
ダンパ手段は、トルク入力要素とトルク出力要素との間に配置されて、トルク出力要素に対するトルク入力要素の回転を妨げるように構成されている。
【0016】
好ましくは、トルク出力要素が中央ハブを含む。
【0017】
中央ハブの半径方向内周は、ギヤボックスの入力シャフトの補助的な溝と協働可能な溝を含むことができる。
【0018】
好ましくは、支持要素が少なくとも1つの転動体を含む。転動体は、トルク入力要素またはトルク出力要素に回転結合するように取り付け可能である。あるいは、転動体は、トルク入力要素またはトルク出力要素に対してフローティング式に取り付け可能である。
【0019】
本発明の第1の実施形態では、トルク入力要素は、インペラホイールにそれ自体が流体力学的に接続されるタービンホイールにより形成され、インペラホイールが、クランクシャフトに連結されるように構成される。
【0020】
この場合、タービンホイールまたはトルク出力要素は、中央ハブを囲む少なくとも1つの環状フランジに連結可能であり、上記フランジの半径方向内周が、上記タービンホイールまたは上記中央ハブにそれぞれ回転結合される。
【0021】
支持要素は、上記フランジの半径方向外周に取り付け可能である。
【0022】
タービンホイールまたはトルク出力要素は、相互の間で内部空間を軸方向に画定する2個のフランジを含み、この内部空間が、少なくとも部分的に弾性ブレードおよび/または支持要素のハウジングの役割を果たす。
【0023】
インペラホイールは、このインペラホイール、タービンホイールおよび/またはダンパ手段を少なくとも部分的に収容するように、カバーに回転結合可能である。
【0024】
トルクコンバータは、クラッチ連結位置でカバーとタービンホイールを連結可能であり、クラッチ遮断位置でタービンホイールからカバーを解放可能な、クラッチ手段を含んでいる。
【0025】
クラッチ手段は、半径方向外周がタービンホイールに回転結合される環状ピストンを含むことができ、このピストンは、クラッチ連結位置で摩擦によりカバーに連結可能である。
【0026】
ピストンは、カバーとピストンとの摩擦による回転結合を実現するように、たとえば半径方向外側に配置されてクラッチ連結位置でカバーに当接可能な支持エリアを含むことができる。
【0027】
弾性ブレードは、タービンホイールとトルク出力要素との、休止位置とは異なる相対的な角度位置で、支持要素が弾性ブレードに屈曲応力を及ぼして支持要素に弾性ブレードの反作用力を発生するように構成され、この反作用力は、タービンホイールとトルク出力要素とを上記相対的な休止位置に戻そうとする周方向成分を有する。
【0028】
弾性ブレードは、タービンホイールとトルク出力要素との、休止位置とは異なる相対的な角度位置で、支持要素が弾性ブレードに屈曲応力を及ぼして支持要素に弾性ブレードの反作用力を発生するように構成され、この反作用力は、支持要素と弾性ブレードを接触保持しようとする半径方向の成分を有する。
【0029】
1つの実施例では、トルク出力要素に対するタービンホイールの角度方向の移動が20°より大きく、好ましくは40°より大きい。
【0030】
弾性ブレードは、トルク出力要素またはタービンホイールにそれぞれ結合される固定部分と、弾性部分とを含み、この弾性部分は、半径方向内側部分と、半径方向外側部分と、この半径方向内側部分と外側部分とを接続するアーチ状またはクランク状の部分とを含んでいる。
【0031】
ダンパ手段は、少なくとも2個の弾性ブレードを含むことができ、各弾性ブレードが、トルク出力要素またはタービンホイールにそれぞれ結合され、各弾性ブレードが、タービンホイールまたはトルク出力要素にそれぞれ結合される支持要素と組み合わされ、各弾性ブレードが、対応する上記支持要素で弾性的に当接保持され、各弾性ブレードが、トルク出力要素に対するタービンホイールの回転時に屈曲することが可能である。
【0032】
別の1つの実施形態では、第1要素をクラッチ手段とカバーとから形成可能であり、クラッチ手段は、クラッチ連結位置でカバーとトルク出力要素とを回転結合可能であり、クラッチ遮断位置でトルク出力要素からカバーを解放可能であり、ダンパ手段が、クラッチ手段とトルク出力要素との間に配置される。
【0033】
クラッチ手段は、ハブに回転結合される環状ピストンを含むことができ、ピストンは、クラッチ連結位置で摩擦によりカバーに連結可能である。
【0034】
この別の実施形態の場合も同様に、ピストンは、カバーとピストンとの摩擦による回転結合を実現するように、たとえば半径方向外側に配置されて、クラッチ連結位置でカバーに当接可能な支持エリアを含むことができる。あるいは、本発明の第2の実施形態では、トルク入力要素をクラッチ手段から形成可能である。ダンパ手段は、クラッチ手段とトルク出力要素との間に配置される。これらのクラッチ手段は、クラッチ連結位置でカバーとトルク出力要素とを回転結合可能であり、クラッチ遮断位置でトルク出力要素からカバーを解放可能である。ダンパ手段は、本発明の第1の実施形態に対して説明したものと同様である。したがって、トルクは、カバーからダンパ手段を通ってハブに移行する。
【0035】
本発明は、添付図面を参照しながら限定的ではなく例としてなされた説明を読めば、いっそう理解され、本発明の他の細部、特徴および長所が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】従来技術によるトルク伝達アセンブリの概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態によるトルク伝達アセンブリの軸方向断面図である。
【
図3】
図2のトルク伝達アセンブリの軸方向断面図である。
【
図4】トルクコンバータの軸に対して垂直な半径方向の面に沿った、
図2と
図3のトルク伝達アセンブリの断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態によるトルク伝達アセンブリの概略図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態によるトルク伝達アセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の1つの実施形態による流体力学的トルクコンバータを含むトルク伝達アセンブリを
図2から
図4に示した。このものは、たとえばクランクシャフト1などの自動車の内燃機関の出力シャフトのトルクをギヤボックスの入力シャフト2に伝達することができる。トルクコンバータの軸には、参照符号Xを付した。
【0038】
トルクコンバータは、タービンホイール4を流体動力学的に駆動可能なインペラホイール3を含む。この例では、リアクタ5を介して流体動力学的な駆動が実施される。
【0039】
インペラホイール3は、このインペラホイール3と、タービンホイール4と、リアクタ5とを収容する内部容積12を画定する鐘型のカバー11に、溶接により相互に固定される。上記カバー11は、このカバー11をクランクシャフト1に回転可能に連結する固定手段13を含んでいる。
【0040】
トルクコンバータは、さらに中央ハブ8を含み、このハブは、半径方向内周に溝があって軸Xを有し、カバー11の内部容積12に収容されている。中央ハブ8は、半径方向外側に延びる環状鍔14を含んでいる。
【0041】
2個の環状フランジ15が上記内部容積12に取り付けられ、この2個のフランジ15は、それらの半径方向内周により中央ハブ8の環状鍔14に、たとえばリベットまたは溶接により固定される。フランジ15は、半径方向に延び、鍔14の両側に軸方向に配置される。特に、各フランジ15は、半径方向内側部分15aと、半径方向外側部分15bとを含む。2個のフランジ15の半径方向内側部分15aは、2個のフランジ15の半径方向外側部分15bよりも互いに軸方向に接近している。
【0042】
さらに、補助的な2個の環状フランジ17が、カバー11の内部容積12内で中央ハブ8の周囲に取り付けられ、フランジ15の両側に軸方向に配置されている。補助フランジ17は半径方向に延びており、それらの半径方向外周でリベット18により互いに固定される。
【0043】
補助フランジ17の一方は、リベット19によりタービンホイール4に固定される。
【0044】
2個の支持部材または転動体20は、ローラまたは円筒ころの形状を呈しており、補助フランジ17の半径方向外周に固定される。転動体20は、直径方向に対向するように相対的に配置される。特に、転動体20は、2個の補助フランジ17の間に軸方向に延びる軸21の周りに取り付けられ、上記軸21は、それらの端部で補助フランジ17にリベットで留められる。
【0045】
2個の弾性ブレード22は、補助フランジ17の間に取り付けられる。特に
図4からよりよく理解されるように、各弾性ブレード22は、2個のフランジ15の間に取り付けられ、ここでは全部で3個のリベット24によってこれらのフランジに固定される固定部分23と、弾性部分とを含み、弾性部分は、半径方向内側部分25と、半径方向外側部分26と、これらの半径方向内側部分25と外側部分26とを接続するアーチ状または屈曲状の部分27とを含む。アーチ状または屈曲状の部分27の角度は約180°である。換言すれば、弾性ブレード22の弾性変形可能な部分は、互いに半径方向にオフセットされて半径方向のスペースによって隔てられた2個の領域を含んでいる。
【0046】
半径方向内側部分25は、中央ハブ8の鍔14の周囲に周方向に展開されている。半径方向外側部分26は、120°から180°に含まれる角度にわたって周方向に展開されている。
【0047】
半径方向外側部分26は、対応する転動体20に当接する転がり軌道をなす半径方向外面28を含み、上記転動体20は、弾性ブレード22の半径方向外側部分26の半径方向外側に配置される。転がり軌道28は、ほぼ凸状の形状を有する。転がり軌道28は、半径方向外側部分26の1つのエリアから直接形成されてもよいし、あるいは、上記半径方向外側部分26に取り付けられる部品から形成されてもよい。
【0048】
各弾性ブレード22と、対応する転動体20との間では、タービンホイール4と中央ハブ8との間で伝達されるトルクが半径方向の応力と周方向の応力とに分解される。半径方向の応力は、対応するブレード22を屈曲させることができ、周方向の応力は、対応する転動体20をブレード22の転がり軌道28上で移動させてトルクを伝達することができる。
【0049】
タービンホイール4と中央ハブ8との間で伝達されるトルクが変化すると、弾性ブレード22と転動体20との間に及ぼされる半径方向の応力が変化して、弾性ブレード22の屈曲が変更される。弾性ブレード22の屈曲の変更に伴って、転動体20は、周方向の応力の作用下で、対応する転がり軌道28に沿って移動する。
【0050】
転がり軌道28の輪郭は、伝達トルクが増加すると、転動体20が、対応する弾性ブレード22にそれぞれ屈曲応力を及ぼして弾性ブレード22の自由遠位端29を軸Xの方向に接近させ、タービンホイール4とハブ8を相対回転させて、これらが双方の相対休止位置から離れるように構成される。休止位置とは、双方の間でトルクが伝達されないタービンホイール4とハブ8との相対位置であると定義する。
【0051】
したがって、転がり軌道28の輪郭は、転動体20が、半径方向の成分と周方向の成分とを有する屈曲応力を弾性ブレード22に及ぼすように構成される。
【0052】
弾性ブレード22は、転動体20に戻し力を及ぼし、この戻し力は、転動体20を反対の回転方向に回転させてタービンホイール4と中央ハブ8とをそれらの相対的な休止位置に戻そうとする周方向の成分と、対応する転動体20に転がり軌道28を当接させたままにしようとする、外向きの半径方向の成分とを有する。
【0053】
好ましくは、タービンホイール4と中央ハブ8が特に
図4に示した休止位置にあるとき、弾性ブレード22は、この弾性ブレード22を転動体20に当接したままにするように、軸Xに向けて半径方向にプレストレスをかけられ、半径方向外側に向いた反作用力を及ぼすようにされている。
【0054】
転がり軌道28の輪郭は、角度方向の移動に応じたトルク伝達の特徴曲線が休止位置に対して対称または非対称となるように区別なく構成可能である。1つの有利な実施形態によれば、角度方向の移動は、いわば逆方向である反対の回転方向よりも、いわば正方向である回転方向の方を大きくすることができる。
【0055】
中央ハブ8に対するタービンホイール4の角度方向の移動は、20°よりも大きく、好ましくは40°よりも大きくすることができる。
【0056】
弾性ブレード22は、軸Xの周りに規則正しく配分され、トルクコンバータの均衡を保つように軸Xに対して対称である。
【0057】
トルクコンバータは、また、タービンホイール4と中央ハブ8との間でそれらが相対的にそれた時に抵抗トルクを及ぼして弾性ブレードで22に蓄積されたエネルギーを放散するように構成された、摩擦手段を含むことができる。
【0058】
トルクコンバータは、さらに、クラッチ連結位置でカバー11と中央ハブ8とを回転結合し、クラッチ遮断位置で中央ハブ8からカバー11を解放可能なクラッチ手段10を含む。
【0059】
クラッチ手段10は、半径方向に延びてカバー10の内部容積12に収容される環状ピストン30を含み、その半径方向外周が円筒断面形状の歯31を含み、これらの歯は、フランジ17の相補的な形状のノッチ32に係合される。このようにして、ピストン30は、フランジ17とタービンホイール4とに回転結合され、フランジ17に対して、ある程度は軸方向移動自在にされている。
【0060】
ピストン30の半径方向外周は、さらに、摩擦ライニング33を備えた支持エリアを含み、この支持エリアは、クラッチ連結位置でカバー11の部分11bにより当接支持されてカバー11とピストン30とを回転結合させる。
【0061】
このようにして、ピストン30は、クラッチ連結位置と遮断位置との間で軸Xに沿って軸方向移動可能であり、ピストン30の移動は、このピストン30の両側に配置される圧力チャンバにより制御される。
【0062】
こうしたクラッチ手段10は、所定の動作フェーズで、インペラホイール3とタービンホイール4とを介在させずに、クランクシャフト1からギヤボックスの入力シャフト2にトルクを伝達可能である。この場合、トルクは、クランクシャフト1から、カバー11を介して、ピストン30、補助フランジ17、転動体20、弾性ブレード22、フランジ15、中央ハブ8に伝達される。
【0063】
図2と
図3に示した実施例では、ダンパ手段は、タービンホイール4に対し、上記ダンパ手段を介して「流体動力学的」モードでも「クラッチ」モードでもトルクの通過が実施されるように、構成されている。「流体動力学的」モードとは、タービンホイール4を介してカバー11から中央ハブ8までトルクが伝達されるモードを意味する。「クラッチ」モードとは、ピストン30を用いてカバー11から中央ハブ8までトルクが伝達されるモードを意味する。この実施例では、「流体動力学的」モードでも「クラッチ」モードでも、トルクは常にダンパ手段20、22を通過する。実際には、ダンパ手段20、22は、タービンホイール4に常に連結され、ピストン30を介してカバー11から遮断されるようになっている。
【0064】
図示されていない他の実施形態についても考えられ得る。特に、転動体20は、フランジ15により支持可能であり、その一方で、弾性ブレードは補助フランジ17により支持可能である。
【0065】
図示されていない別の実施形態では、ダンパ手段は、「流体動力学的」モードにおいて、ダンパ手段を通らずに直接タービンホイール4から中央ハブ8にトルクが伝達されるように、また、「クラッチ」モードでは、カバー11からピストン30とダンパ手段とを介して中央ハブ8にトルクが伝達されるように構成される。この場合、タービンホイールは、たとえばリベット結合により中央ハブ8に直接接続される。
【0066】
図5の別の実施例では、タービンホイール4と中央ハブ8との間に配置する代わりに、チャンバ36内でピストン37とカバー38との間に、ダンパ手段を収容可能である。
【0067】
あるいは、
図6では別のトルクコンバータ35が示されており、ここでは、トルクコンバータ35のカバー41により画定されるスペースの外部に位置決めされる容積39内にダンパ手段が配置されている。