(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第一実施形態〕
図1は、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1の断面図である。
図2は、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1の斜視図である。
カーボンナノチューブシート構造体1は、カーボンナノチューブシート20と、第一基材10と、カーボンナノチューブシート20と第一基材10とを離間させる第一スペーサー部30と、を含む。カーボンナノチューブシート構造体1において、カーボンナノチューブシート20、第一スペーサー部30、及び第一基材10がこの順で積層されている。
【0023】
(第一基材)
第一基材10は、カーボンナノチューブシート構造体1においてカーボンナノチューブシート20を支持する部材である。第一基材10とカーボンナノチューブシート20との間には第一スペーサー部30が形成されている。
第一基材10は、カーボンナノチューブシート20と向かい合う第一基材面11と、第一基材面11とは反対側の第二基材面12とを有する。
第一基材面11は、第一スペーサー部30が形成された第一領域11aと、第一スペーサー部30が形成されていない第二領域11bと、を有する。なお、本明細書において、基材にスペーサー部が形成されているとは、基材の表面と接触してスペーサー部が直接形成されている場合のほか、基材の表面とスペーサー部との接着性を高めるためにこれらの間に粘着剤層が設けられる場合やこれらの剥離性を高めるために基材とスペーサー部との間に剥離剤層が設けられる場合も該当する。
【0024】
第一基材面11は、少なくとも第一領域11aにおいて、第一基材10と第一スペーサー部30との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、及びプラズマ処理等の少なくともいずれかの表面処理が施されていることが好ましい。
また、第一基材面11は、少なくとも第一領域11aにおいて、粘着剤が塗布されて粘着処理が施されていてもよい。第一基材10やその他の基材の粘着処理に用いられる粘着剤としては、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、及びウレタン系等の粘着剤が挙げられる。
【0025】
第一基材10の厚さは、10μm以上500μm以下であることが好ましく、15μm以上300μm以下であることがより好ましく、20μm以上250μm以下であることがさらに好ましい。第一基材10は、シート片の状態のみならず、長尺の状態であってもよい。
【0026】
第一基材10としては、例えば、シート材料を用いることができる。シート材料の材質としては、例えば、合成樹脂フィルムなどが挙げられる。合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、及びフッ素樹脂フィルム等が挙げられる。その他、第一基材10としては、これらの架橋フィルムや積層フィルム等が挙げられる。
【0027】
第一基材10において、第一基材面11とは反対側の第二基材面12は、剥離性を有することが好ましい。第二基材面12が剥離性を有していることにより、カーボンナノチューブシート構造体1を積層させて形成された積層体からカーボンナノチューブシート構造体1を取出す際、第二基材面12からカーボンナノチューブシート20を容易に剥がすことができる。
第一基材10の第二基材面12に剥離性を付与する方法は特に限定されない。例えば、第一基材10の第二基材面12が剥離剤層を備えることが好ましい。剥離剤層は、例えば、第二基材面12に剥離剤が塗布されて形成される。剥離剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、ゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、及びシリコーン系樹脂からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂を含む剥離剤が挙げられる。ゴム系エラストマーとしては、例えば、ブタジエン系樹脂、及びイソプレン系樹脂が挙げられる。これら剥離剤のうちでも、カーボンナノチューブシート20の剥離性向上の観点から、フッ素系樹脂を含む剥離剤が好ましい。
剥離剤層の厚さは、特に限定されない。剥離剤を含む溶液を塗布して剥離剤層を形成する場合、剥離剤層の厚さは、0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.03μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。
【0028】
第一基材10において、第一基材面11とは反対側の第二基材面12の表面粗さRa
1が、0.05μm以上であることが好ましい。第二基材面12の表面粗さRa
1が0.05μm以上であると、積層体からカーボンナノチューブシート構造体1を取出す際、第一基材10の第二基材面12と接していたカーボンナノチューブシート20を破断することなく、容易に剥離することができる。第二基材面12の表面粗さRa
1は、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.15μm以上である。なお、本明細書における表面粗さは、算術平均粗さを意味し、JIS B0633:2001に準拠して触針式表面粗さ計を用いて測定された値である。第二基材面12の表面粗さRa
1は、10μm以下であることが好ましい。第二基材面12の表面粗さRa
1が10μm以下であると、第二基材面12の平滑性が適度に維持されるため、第二基材面12の凹凸に起因したカーボンナノチューブシート20の破壊等の欠陥の発生が抑制される。第二基材面12の表面粗さRa
1は、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。
【0029】
第二基材面12の表面粗さRa
1を前記範囲に制御する手段としては、例えば、第一基材10を構成する樹脂等の材料に粒子状物質を含有させる方法、第一基材10を構成する樹脂等の材料を溶融成形する際に、溶融した材料を凹凸のあるロール等の上に射出することで、凹凸形状を第二基材面12に形成する方法、物理的な造形手段により第二基材面12に凹凸を設ける方法、並びに相溶性の低い材料同士を混合し、塗布及び乾燥等により被膜を形成し、一方の材料の連続構造中に他方の材料の不連続構造を形成することにより凹凸形状を第二基材面12に設ける方法等の手段を挙げることができる。上記の粒子状物質としては、例えば、シリカフィラー等の無機充填剤、及びポリメチルメタクリレートフィラー等の有機充填剤等が挙げられる。上記の物理的な造形手段としては、例えば、サンドブラスト、及び研磨等が挙げられる。
【0030】
カーボンナノチューブシート構造体1(第一のカーボンナノチューブシート構造体)と、他のカーボンナノチューブシート構造体1(第二のカーボンナノチューブシート構造体)とを重ね合わせた積層体から、第一基材10及び第一スペーサー部30を容易に剥離するために、第二のカーボンナノチューブシート構造体の第二基材面12の所定部分に粘着処理が施されていてもよい。この第二基材面12の所定部分は、第二のカーボンナノチューブシート構造体の第二基材面12側に重ね合わされた第一のカーボンナノチューブシート構造体の第一スペーサー部30と、積層体の平面視において重なる部分である。このような構成とすることにより、第一のカーボンナノチューブシート構造体のカーボンナノチューブシート20は、第二のカーボンナノチューブシート構造体の第一基材10と粘着処理が施された部分において接着されており、第一のカーボンナノチューブシート構造体の第一基材10及び第一スペーサー部30を、カーボンナノチューブシート20から容易に剥離できる。
例えば、
図3Aに、2つのカーボンナノチューブシート構造体1を重ね合わせた積層体100を示す。ここで、積層体100において、一方のカーボンナノチューブシート構造体を第一のカーボンナノチューブシート構造体1aとし、他方のカーボンナノチューブシート構造体を第二のカーボンナノチューブシート構造体1bとする。積層体100においては、第二のカーボンナノチューブシート構造体1bの第二基材面12には粘着処理が施された粘着処理部12Aがある。第二のカーボンナノチューブシート構造体1bの粘着処理部12Aの位置は、積層体100を平面視した際に、第一のカーボンナノチューブシート構造体1aの第一スペーサー部30の位置と重なる。積層体100によれば、第一のカーボンナノチューブシート構造体1aのカーボンナノチューブシート20は、第二のカーボンナノチューブシート構造体1bの第二基材面12の粘着処理部12Aにおいて接着されているので、第一のカーボンナノチューブシート構造体1aの第一基材10及び第一スペーサー部30を、第一のカーボンナノチューブシート構造体1aのカーボンナノチューブシート20から容易に剥離できる。
【0031】
(カーボンナノチューブシート)
カーボンナノチューブシート20は、第一スペーサー部30が形成された第一シート面21と、第一シート面21とは反対側の第二シート面22とを有する。カーボンナノチューブシート構造体1においては、第二シート面22側には特に他の部材は配置されておらず、カーボンナノチューブシート20が露出した状態である。本明細書において、カーボンナノチューブシートのシート面にスペーサー部が形成されているとは、シート面と接触してスペーサー部が直接形成されている場合のほか、シート面とスペーサー部との接着性を高めるためにこれらの間に粘着剤層が設けられる場合やこれらの剥離性を高めるためにカーボンナノチューブシートとスペーサー部との間に剥離剤層が設けられる場合も該当する。
【0032】
カーボンナノチューブシート20は、複数のカーボンナノチューブが、シート面内の一方向に優先的に整列した構造を有する。
本明細書において、「カーボンナノチューブがシート面内の一方向に整列した状態」とは、カーボンナノチューブがシート面内の一方向に沿って整列した状態のことであり、例えば、カーボンナノチューブの長軸が、シート面内の一方向と平行になるように整列した状態が挙げられる。
また、本明細書において、「優先的に整列した状態」とは、当該整列した状態が主流であることを意味する。例えば、上記のように、カーボンナノチューブの長軸が、シート面内の一方向と平行になるように整列した状態である場合、当該整列状態が主流であれば、一部のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの長軸が、シート面内の一方向と平行になるように整列した状態でなくてもよい。
【0033】
カーボンナノチューブシート20は、例えば、カーボンナノチューブのフォレストから、分子間力により集合したカーボンナノチューブをシートの状態で引き出して基板から引き離すことにより得られる。ここで、カーボンナノチューブフォレストとは、カーボンナノチューブを、基板に対して垂直方向に配向するよう、基板上に複数成長させた成長体のことであり、「アレイ」と称される場合もある。
【0034】
カーボンナノチューブシート20は、カーボンナノチューブが繊維状に集合した構造を有していてもよい。カーボンナノチューブが繊維状に集合した構造であれば、単位面積当たりのカーボンナノチューブが存在する面積が減少するために、例えば、カーボンナノチューブシートの20の光線透過性を向上させることができる。
カーボンナノチューブシート20は、例えばカーボンナノチューブのフォレストからの引き出しにより製造した場合には、シート面内の一方向に整列した状態のカーボンナノチューブがカーボンナノチューブシートに均一に含まれている。後述するように、このようなカーボンナノチューブシートに、フリースタンディング状態で蒸気等への暴露をした場合には、カーボンナノチューブシートに均一に含まれているカーボンナノチューブが、局所的に微細な束になり、カーボンナノチューブが繊維状に集合した構造が形成される。
【0035】
カーボンナノチューブが繊維状に集合した構造の平均直径(複数の構造の直径の平均)は、好ましくは1μm以上300μm以下であり、より好ましくは3μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは5μm以上50μm以下である。
なお、本明細書において、カーボンナノチューブが繊維状に集合した構造の平均直径とは、当該構造の外側の円周の平均直径のことを指す。
【0036】
カーボンナノチューブシート20は、高密度化処理が施されたシートであってもよい。
本明細書において「高密度化処理」とは、カーボンナノチューブシート20をバンドリングしたり、カーボンナノチューブシート20の厚さ方向におけるカーボンナノチューブの存在密度を上げたりする処理のことである。ここで、バンドリングとは、カーボンナノチューブシート20を構成するカーボンナノチューブについて、近接する複数のカーボンナノチューブが束になった状態とすることである。
カーボンナノチューブシート20にバンドリングを施すことにより、カーボンナノチューブが繊維状に集合した構造を形成させることができる。
【0037】
高密度化処理としては、例えば、常温液体の物質の蒸気に、フリースタンディングのカーボンナノチューブシート20を晒す(暴露する)処理によるバンドリング、並びに常温液体の物質の粒子(エアロゾル)に、フリースタンディングのカーボンナノチューブシート20を晒す処理によるバンドリング等が挙げられる。高密度化処理に用いる常温液体の物質としては、例えば、水、アルコール類、ケトン類、及びエステル類などが挙げられ、アルコール類としては、例えば、エタノール、メタノール、及びイソプロピルアルコール等が挙げられ、ケトン類としては、例えば、アセトン、及びメチルエチルケトン等が挙げられ、エステル類としては、例えば、酢酸エチル等が挙げられる。
常温液体の物質の粒子により高密度化処理を行う場合、当該常温液体の物質の粒子径は、5nm以上200μm以下であることが好ましく、7.5nm以上100μm以下であることがより好ましく、10nm以上50μm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
また、カーボンナノチューブシート20を製造後に、樹脂フィルム等の基板にカーボンナノチューブシート20を載せ、カーボンナノチューブシート20を液体に浸潤させることによって高密度化処理を行ってもよい。この場合には、カーボンナノチューブシート20に含まれるカーボンナノチューブが基板の方向に集まり、カーボンナノチューブシート20の厚さ方向の高密度化が起こる。
【0039】
また、カーボンナノチューブシート20は、単一のカーボンナノチューブシートが複数積層された積層体であってもよい。カーボンナノチューブシート20が積層体であることで、シート抵抗の低いシートを得ることができる。この場合、カーボンナノチューブシート20は、高密度化処理をしたカーボンナノチューブシートが複数積層された積層体であってもよいし、フォレストから引き出して製造したシートが複数積層された積層体を高密度化処理してもよい。また、高密度化処理をしたカーボンナノチューブシート20が複数積層された積層体をさらに高密度化処理してもよい。
【0040】
カーボンナノチューブシート20の厚さは、用途に応じて(例えば、シート抵抗を低く維持することや、光線透過性を確保する等の観点から)適宜決定される。例えば、カーボンナノチューブシート20の厚さは、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、0.05μm以上75μm以下であることがより好ましい。
【0041】
カーボンナノチューブシート20は、第一基材10と同様に、長尺状とすることができる。
図4には、長尺状のカーボンナノチューブシート20と、長尺状の第一基材10とを含むカーボンナノチューブシート構造体1eが示されている。カーボンナノチューブシート20が長尺状である場合には、第一基材10は長尺状であることが好ましい。
一方、第一基材10が長尺状である場合、カーボンナノチューブシート20はシート片の状態で、間隔を空けて基材上に配列されていてもよいし、長尺状であってもよい。
図5には、シート片の状態の複数のカーボンナノチューブシート20が、長尺状の第一基材10の上に第一スペーサー部30を介して配列されたカーボンナノチューブシート構造体1fが示されている。
なお、本明細書において長尺とは、カーボンナノチューブシート構造体等を平面視した際に、縦方向の長さと横方向の長さとを比べ、一方の長さが他方の長さよりも10倍以上長いことを意味し、好ましくは、一方の長さが他方の長さよりも30倍以上長いことを意味する。
【0042】
(第一スペーサー部)
第一スペーサー部30は、カーボンナノチューブシート20と第一基材10との間に配置されている。第一スペーサー部30により、カーボンナノチューブシート20と第一基材10とを離間させ、カーボンナノチューブシート20と第一基材10とが接触しない部位をカーボンナノチューブシート構造体1に設けることができる。第一スペーサー部30は、第一基材面11の第一領域11aに形成されている。第一スペーサー部30は、第一基材面11の第二領域11bに形成されていない。
第一スペーサー部30は、カーボンナノチューブシート20と第一基材10とを離間させて、カーボンナノチューブシート20と第一基材10とが接触しない領域を形成することができれば、形状や配置は特に限定されない。例えば、カーボンナノチューブシート20が第一基材10や第一スペーサー部30と接触しない領域を出来るだけ広く得られるように第一スペーサー部30の形状や配置を適宜設計することが好ましい。第一スペーサー部30は、例えば、直方体状、立方体状、円柱状、角柱状、球状など種々の形状でもよい。第一スペーサー部30は、長尺状とすることもできる。
カーボンナノチューブシート20がシート片であれば、第一スペーサー部30は、カーボンナノチューブシート20のシート面の外縁部に沿って連続的もしくは不連続的に枠状に形成されていてもよい。
【0043】
図6には、カーボンナノチューブシート構造体1gが示されている。カーボンナノチューブシート構造体1gは、シート片のカーボンナノチューブシート20と、長尺状の第一基材10と、カーボンナノチューブシート20と第一基材10との間に配置された第一スペーサー部30とを有する。カーボンナノチューブシート構造体1gにおいて、第一スペーサー部30は、第一基材10の長手方向に亘って不連続的に形成されている。
【0044】
長尺状のカーボンナノチューブシート20であれば、第一基材10も長尺状とし、第一スペーサー部30は、カーボンナノチューブシート20の長尺状の形状の外縁部に沿って、さらに長手方向に亘って連続的もしくは不連続的に形成されていてもよい。
図4に示したカーボンナノチューブシート構造体1eにおいては、長尺状のカーボンナノチューブシート20と、長尺状の第一基材10との間に、第一スペーサー部30がカーボンナノチューブシート20の長尺状の形状の外縁部に沿って形成されている。第一スペーサー部30は、長手方向に亘って連続的に形成されている。
なお、後述する第二実施形態から第五実施形態までの実施形態、並びに実施形態の変形においても、第一基材だけでなく第一基材以外の基材も長尺状であってもよく、第一スペーサー部だけでなく第一スペーサー部以外のスペーサー部も、カーボンナノチューブシートの形状の外縁部に沿って、さらに長手方向に亘って連続的もしくは不連続的に形成されていてもよい。
【0045】
第一スペーサー部30の材質としては、例えば、合成樹脂フィルムなどが挙げられる。第一スペーサー部30に用いることのできる合成樹脂フィルムとしては、第一基材10と同様である。
【0046】
第一スペーサー部30は、第一基材10と一体に形成されていてもよい。例えば、平坦な合成樹脂フィルムをサンドブラストやエッチング等により削って、第一スペーサー部30を形成することができる。具体的には、合成樹脂フィルムの第二領域11bに対応する位置をサンドブラストやエッチング等により削ることにより、フィルムから突き出た部位を形成し、この突出部位を第一スペーサー部30として利用できる。
また、第一スペーサー部30は、第一基材10とは別部材であってもよく、カーボンナノチューブシート構造体1を形成する際に第一基材10と第一スペーサー部30とを一体化させてもよい。この場合、例えば、第一スペーサー部30の形状を備えたフィルム部材を、第一基材10の第一基材面11に貼り合わせることで、第一スペーサー部30付きの第一基材10を得ることができる。また、第一基材10用の合成樹脂フィルムに3Dプリンター等を用いて第一基材面11の第一領域11aに第一スペーサー部30を形成してもよい。
【0047】
カーボンナノチューブシート20と接触する第一スペーサー部30の表面には、粘着処理が施されていてもよい。このような構成とすることで、カーボンナノチューブシート構造体1を積層させて形成された積層体からカーボンナノチューブシート構造体1を取出す際、第一スペーサー部30と接触するカーボンナノチューブシート20が第一スペーサー部30から剥離しにくい。したがって、第一基材10の第二基材面12と接していたカーボンナノチューブシート20を破断することなく、容易に剥離することができる。粘着処理は、第一基材面11に施す方法と同様の方法により行うことができる。また、粘着処理は、第一スペーサー部30自体を、自己粘着性を有する材料を用いて形成することにより行ってもよい。自己粘着性を有する材料としては、例えば、シリコーンゲル及びウレタンゲルが挙げられる。
図3Bに、2つのカーボンナノチューブシート構造体1を重ね合わせた積層体101を示す。ここで、積層体101において、一方のカーボンナノチューブシート構造体を第一のカーボンナノチューブシート構造体1cとし、他方のカーボンナノチューブシート構造体を第二のカーボンナノチューブシート構造体1dとする。積層体101においては、第一のカーボンナノチューブシート構造体1cのカーボンナノチューブシート20と接触する第一スペーサー部30の表面には粘着処理が施された粘着処理部31がある。積層体101によれば、第一のカーボンナノチューブシート構造体1cのカーボンナノチューブシート20は、第一スペーサー部30から剥離しにくい。したがって、第二のカーボンナノチューブシート構造体1dの第一基材10の第二基材面12と接していた、第一のカーボンナノチューブシート構造体1cのカーボンナノチューブシート20を破断することなく、容易に剥離できる。
【0048】
(カーボンナノチューブシート構造体及び積層体の作製方法)
カーボンナノチューブシート構造体1の製造方法は、特に限定されない。
例えば、カーボンナノチューブシート構造体1は、次のような工程を経て製造される。
まず、公知の方法により、シリコンウエハ等の基板上にカーボンナノチューブのフォレストを形成する。次に、形成したフォレストの端部をよじり、ピンセット等で引き出して基板から引き離すことにより、カーボンナノチューブシートを作製する。
また、第一スペーサー部30を有する第一基材10を作製する。第一基材10は、第一スペーサー部30と一体に形成されていてもよい。また、第一基材10と第一スペーサー部30とは、別部材であってもよく、別部材であった第一基材10と第一スペーサー部30とを一体化させたものを用いてもよい。
作製したカーボンナノチューブシートの一方の面に、第一基材10の第一基材面11(第一スペーサー部30を有する面)を対向させ、第一スペーサー部30にカーボンナノチューブシートを付着させれば、カーボンナノチューブシート構造体1が得られる。
このようにして得たカーボンナノチューブシート構造体1を積層することにより、積層体が得られる。この場合、第一基材10の第一基材面11とは反対側の第二基材面12にカーボンナノチューブシート20が接するように積層する。
【0049】
本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1によれば、フリースタンディング状態の部分を残したままカーボンナノチューブシート20をカーボンナノチューブシート構造体1中に保持できる。そして、使用時には、意図しない場所においてカーボンナノチューブシート20を破断させずに、フリースタンディング状態のカーボンナノチューブシート20を取出すことができる。カーボンナノチューブシート20をフリースタンディング状態のまま取出すには、第一基材10と離間したカーボンナノチューブシート20を、取出したい部分と、第一スペーサー部30と接触するカーボンナノチューブシート20との境界の間のいずれかの位置で切断して取出せばよい。例えば、
図7に示すように、カーボンナノチューブシート20と第一スペーサー部30とが接触する部分よりも内側の位置でカーボンナノチューブシート20を切断して、フリースタンディング状態のカーボンナノチューブシート20を取出すことができる。すなわち、カーボンナノチューブシート20と第一スペーサー部30とが接触している部位を避けて、カーボンナノチューブシート20の第一基材10と離間している部位を取出せばよい。
【0050】
本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1によれば、これを積み重ねて配置することができる。
本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1によれば、第一基材面11の第二領域11bと対向するカーボンナノチューブシート20の領域は、第一基材10及び第一スペーサー部30に接触していない状態(フリースタンディング状態)が維持されている。そして、カーボンナノチューブシート構造体1は、全体としてシート形状となっている。そのため、例えば、シート片の状態であるカーボンナノチューブシート構造体1は、重ね合わせて保管及び搬送が可能になる。また、例えば、長尺状に形成されたカーボンナノチューブシート構造体1は、ロール状に巻き取って保管及び搬送が可能となる。長尺状に形成されたカーボンナノチューブシート構造体1においては、カーボンナノチューブシート構造体1の長手方向に亘って第一基材面11の第二領域11bが連続していることが好ましい。本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1を積み重ねて配置した場合、後述する第二実施形態と同様に、第一基材面11とは反対側の第二基材面12から、カーボンナノチューブシート20を剥離する際の、カーボンナノチューブシート20の破断が防止される。また、積層体においてカーボンナノチューブシート20が圧迫される可能性が低減される。
【0051】
〔第二実施形態〕
第二実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体について説明する。
第二実施形態の説明において、第一実施形態と同一の構成要素は、同一符号や名称を示す等して、説明を省略または簡略にする。また、第二実施形態では、具体例も含め、特に言及されない構成等については、第一実施形態で説明した構成等と同様の構成等を用いることができる。
【0052】
図8は、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Aの断面図である。
第二実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Aは、第二基材200をさらに含む点で、第一実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1と相違する。第二実施形態において、カーボンナノチューブシート20、第一基材10、及び第一スペーサー部30は、第一実施形態と同様である。
【0053】
カーボンナノチューブシート構造体1Aは、カーボンナノチューブシート20と、第一基材10と、第一スペーサー部30と、第二基材200とを含む。カーボンナノチューブシート構造体1Aにおいて、第二基材200、カーボンナノチューブシート20、第一スペーサー部30、及び第一基材10がこの順で積層されている。
【0054】
(第二基材)
第二基材200は、第三基材面210を有し、この第三基材面210とカーボンナノチューブシート20の第二シート面22とが向かい合っている。第二シート面22は、第一スペーサー部30と接している第一シート面21とは反対側の面である。
本実施形態では、第二基材200上にカーボンナノチューブシート20が配置されている。カーボンナノチューブシート構造体1Aにおいては、第二シート面22は、第二基材200に覆われて保護されている状態である。なお、本明細書において、他の部材上にカーボンナノチューブシートが配置されているとは、他の部材の表面と接触してカーボンナノチューブシートが直接設けられている場合のほか、他の部材の表面とカーボンナノチューブシートとの接着性を高めるためにこれらの間に粘着剤層が設けられる場合やこれらの剥離性を高めるためにカーボンナノチューブシートと当該他の部材との間に剥離剤層が設けられる場合も該当する。
【0055】
第三基材面210は、剥離性を有することが好ましい。第三基材面210が剥離性を有していることにより、カーボンナノチューブシート構造体1Aから第二基材200を容易に剥がすことができる。第三基材面210に剥離性を付与する方法は特に限定されない。
【0056】
また、本実施形態では、第二基材200は、剥離基材220と、剥離基材220面に形成された剥離剤層230とを有していてもよい。剥離剤層230の表面が第三基材面210に相当する。剥離剤層230は、剥離基材220の片面のみに形成されていてもよいし、剥離基材220の両面に形成されていてもよい。
【0057】
剥離基材220としては、例えば、紙基材、ラミネート紙、及びプラスチックフィルム等が挙げられる。紙基材としては、グラシン紙、コート紙、及びキャストコート紙等が挙げられる。ラミネート紙としては、前述の紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂がラミネートされた基材が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、並びにポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等が挙げられる。剥離基材220としてプラスチックフィルムを用いる場合、当該プラスチックフィルムの厚さは、10μm以上500μm以下であることが好ましく、15μm以上300μm以下であることがより好ましく、20μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
【0058】
剥離剤層230は、例えば、第一実施形態において述べた剥離剤を含むことが好ましい。剥離剤としては、オレフィン系樹脂、ゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、及びシリコーン系樹脂からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂を含む剥離剤であることが好ましい。剥離剤層230は、剥離剤を剥離基材220に塗布することにより形成される。
剥離剤層230の厚さは、特に限定されない。剥離剤を含む溶液を塗布して剥離剤層230を形成する場合、剥離剤層230の厚さは、0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.03μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。
【0059】
カーボンナノチューブシート構造体の平面視において第三基材面210の第一スペーサー部30と重なる部分には、粘着処理が施されていてもよい。このような構成とすることにより、第二基材200とカーボンナノチューブシート20とが接着されているので、第一基材10及び第一スペーサー部30を、カーボンナノチューブシート20から容易に剥離できる。
さらに、カーボンナノチューブシート構造体の平面視において第三基材面210の第一スペーサー部30と重なる部分には、粘着処理が施されて形成された粘着処理部を有し、かつ当該粘着処理部以外の第三基材面210には剥離性を有する部分(剥離性部)を有することが好ましい。このような構成とすることにより、粘着処理部においてカーボンナノチューブシート20と第三基材面210とが接着されているので、カーボンナノチューブシート構造体1Aから第一基材10及び第一スペーサー部30をカーボンナノチューブシート20から容易に剥離でき、次に、第三基材面210の粘着処理部以外の剥離性を有する部分(剥離性部)からカーボンナノチューブシート20を容易に剥離できる。
【0060】
第二基材200の厚さは、特に限定されない。第二基材200の厚さは、10μm以上500μm以下であることが好ましく、15μm以上300μm以下であることがより好ましく、20μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
【0061】
本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Aによれば、フリースタンディング状態の部分を残したままカーボンナノチューブシート20をカーボンナノチューブシート構造体中に保持できるという効果を除き、第一実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1と同様の効果を奏する。
【0062】
また、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Aによれば、カーボンナノチューブシート20の第二シート面22側が第二基材200によって支持されているので、第一実施形態に比べると、取り扱い性が向上する。また、カーボンナノチューブシート20の第二シート面22側が第二基材200によって覆われているので、第一実施形態に比べると、カーボンナノチューブシート20を保護する効果が高い。
【0063】
また、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Aによれば、カーボンナノチューブシート20は、いずれかの面において第一スペーサー部30または第二基材200と接しており、フリースタンディング状態ではないものの、第一シート面21においては第一スペーサー部30と接しておらず開放された領域S1を有する。なお、カーボンナノチューブシート構造体1Aから、第二基材200を先に剥離すれば、カーボンナノチューブシート20にはフリースタンディング状態の部分が生じる。
カーボンナノチューブシート構造体1Aのような構成は、前述の特許文献1に開示されているようなカーボンナノチューブシートが二つの保護膜の間に挟まれた状態で保管や搬送する構成と比べて、次のような利点がある。
まず、カーボンナノチューブシートが二つの保護膜で挟まれた状態の構造体の場合、カーボンナノチューブシートを保護膜から分離するには、一方の保護膜を剥がし、さらに他方の保護膜を剥がす。この場合、双方の保護膜が互いに異なるカーボンナノチューブシートからの剥離性を有していなければ、後に剥がす他方の保護膜上にカーボンナノチューブシートが付着したままになり、カーボンナノチューブシートが破断してしまうことがある。また、仮に双方の保護膜が互いに異なるカーボンナノチューブシートからの剥離性を有していたとしても、先に剥がす一方の保護膜のカーボンナノチューブシートからの剥離性に比べて、後に剥がす他方の保護膜のカーボンナノチューブシートからの剥離性は、相対的に低いので、他方の保護膜をカーボンナノチューブシートから剥離することが困難な場合がある。
一方、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Aであれば、カーボンナノチューブシート20の一方の面(第一シート面21)の内、第一基材10及び第一スペーサー部30と接していない領域S1は、特許文献1のような保護膜を剥がす際のカーボンナノチューブシートの破断が生じ難い。
【0064】
カーボンナノチューブシートと、支持体及び保護材の少なくともいずれかとが重ね合わされた構造体のような、シート状の物品は、保管スペースの縮小のため、通常、物品がシート片の場合にはスタックして保管し、物品が長尺の場合には巻き取って保管する。シート片の物品の場合には、積み重ねた上部のシートが、下部のシートを圧迫することがある。長尺の物品の場合には、巻き取りの際に生じる圧力、いわゆる巻き圧が生じ、特に中心部に近いシートが圧迫されることがある。これにより、カーボンナノチューブシートに厚さ方向の圧力が掛り、カーボンナノチューブシート内部におけるカーボンナノチューブの集合形態に変化が生じ、特性の変化が生じてしまうおそれがある。
一方で、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Aであれば、カーボンナノチューブシート20の第一シート面21は第一基材10の第二領域11bと接しておらず、積層体においてカーボンナノチューブシート20が圧迫される可能性が第一スペーサー部30の存在により、低減される。そのため、前述したようなカーボンナノチューブシート20に厚さ方向の圧力が掛り、カーボンナノチューブシート20の特性が変わってしまうことを有効に回避できる。
【0065】
〔第三実施形態〕
第三実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体について説明する。
第三実施形態の説明において、前述の実施形態と同一の構成要素は、同一符号や名称を示す等して、説明を省略または簡略にする。また、第三実施形態では、具体例も含め、特に言及されない構成等については、前述の実施形態で説明した構成等と同様の構成等を用いることができる。
【0066】
図9は、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Bの断面図である。
第三実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Bは、カーボンナノチューブシート20の第二シート面22側に配置された第三基材300と、第三基材300及びカーボンナノチューブシート20の間に配置された第二スペーサー部50とをさらに含む点で、第一実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1と相違する。第三実施形態において、カーボンナノチューブシート20、第一基材10、及び第一スペーサー部30は、第一実施形態と同様である。
【0067】
カーボンナノチューブシート構造体1Bは、カーボンナノチューブシート20と、第一基材10と、第一スペーサー部30と、第三基材300と、第二スペーサー部50とを含む。カーボンナノチューブシート構造体1Bにおいて、第三基材300、第二スペーサー部50、カーボンナノチューブシート20、第一スペーサー部30、及び第一基材10がこの順で積層されている。
【0068】
(第三基材)
カーボンナノチューブシート構造体1Bの第三基材300は、カーボンナノチューブシート20を支持する部材であり、第一実施形態の第一基材10と同様の材質で構成される。
第三基材300は、第四基材面310を有する。第四基材面310とカーボンナノチューブシート20の第二シート面22とが向かい合っている。第二シート面22は、第一スペーサー部30と接している第一シート面21とは反対側の面である。
本実施形態の第三基材300の第四基材面310は、第二スペーサー部50が形成された第三領域310aと、第二スペーサー部50が形成されていない第四領域310bと、を有する。第三基材300は、第四基材面310の第四領域310bにおいてカーボンナノチューブシート20と離間している。第三領域310aは、第一基材面11の第一領域11aと同様にプライマー処理等の表面処理が施されていたり、粘着処理が施されていたりしてもよい。
【0069】
(第二スペーサー部)
第三基材300とカーボンナノチューブシート20との間には第二スペーサー部50が配置されている。
カーボンナノチューブシート構造体1Bの第二スペーサー部50は、カーボンナノチューブシート20と第三基材300とを離間させる部材であり、第二スペーサー部50は、第一実施形態の第一スペーサー部30と同様である。
【0070】
第一基材10とカーボンナノチューブシート20との間に配置された第一スペーサー部30の位置と、第三基材300とカーボンナノチューブシート20との間に配置された第二スペーサー部50の位置とが、カーボンナノチューブシート構造体1Bの厚さ方向の断面視で重なっている。ここで、スペーサー部の位置が重なっている状態とは、第一スペーサー部30の位置と第二スペーサー部50の位置とが、完全に重なっている状態だけでなく、少なくとも一部で重なっている状態も含む。なお、スペーサー部の位置の重なりの程度としては、カーボンナノチューブシート20がスペーサー部に押圧されて変形したり、損傷したりすることを抑制できるように重なっていればよく、カーボンナノチューブシート構造体の断面視でスペーサー部の位置が一致するように重なっていることが好ましい。
【0071】
第二スペーサー部50のカーボンナノチューブシート20と接触する表面は、第一スペーサー部30と同様に、粘着処理されていてもよい。この場合、第一スペーサー部30と第二スペーサー部50のいずれか一方のみのカーボンナノチューブシート20と接触する表面が粘着処理されていることが好ましい。このような構成により、カーボンナノチューブシート20と接触する表面が粘着処理されていないスペーサー部をカーボンナノチューブシート20から剥離することが容易となる。また、粘着処理されていないスペーサー部の表面であって、カーボンナノチューブシート20と接触するスペーサー部の表面は、剥離処理されていてもよい。
例えば、
図10には、カーボンナノチューブシート構造体1BXの断面図が示されている。カーボンナノチューブシート構造体1BXにおいては、第二スペーサー部50のカーボンナノチューブシート20と接触する表面に粘着処理が施されて粘着処理部51が形成されており、第一スペーサー部30のカーボンナノチューブシート20と接触する表面には粘着処理が施されていない。カーボンナノチューブシート構造体1BXによれば、第一基材10及び第一スペーサー部30を、カーボンナノチューブシート20から容易に剥離できる。
また、例えば、
図11には、カーボンナノチューブシート構造体1BYの断面図が示されている。カーボンナノチューブシート構造体1BYにおいては、第二スペーサー部50のカーボンナノチューブシート20と接触する表面に粘着処理が施されて粘着処理部51が形成されており、第一スペーサー部30のカーボンナノチューブシート20と接触する表面に剥離処理が施されて剥離処理部32が形成されている。カーボンナノチューブシート構造体1BYによれば、第一基材10及び第一スペーサー部30を、カーボンナノチューブシート20から容易に剥離できる。
【0072】
本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Bによれば、第一実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1と同様の効果を奏する。
【0073】
さらに、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Bによれば、カーボンナノチューブシート20の第一シート面21及び第二シート面22の両面が、スペーサー部を介して第一基材10及び第三基材300によって保護されているため、保管及び搬送の際に外部からの衝撃によるカーボンナノチューブシート20の破壊を防止できる。
また、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Bによれば、カーボンナノチューブシート20の第一シート面21の内、第二領域11bと対向する領域は第一基材10と接触しておらず、第二シート面22の内、第四領域310bと対向する領域は第三基材300と接触しておらず、フリースタンディング状態が維持されている。そして、第一実施形態のカーボンナノチューブシート構造体1を積み重ねた場合と異なり、カーボンナノチューブシート構造体1Bを積み重ねた場合にもカーボンナノチューブシート20のフリースタンディング状態が維持されている。そのため、カーボンナノチューブシート20のフリースタンディング状態を維持したまま、カーボンナノチューブシート構造体1Bを保存や搬送することが容易となる。すなわち、カーボンナノチューブシート構造体1Bを積層させた積層体においても、カーボンナノチューブシート20のフリースタンディング状態を維持できる。
【0074】
第一基材10とカーボンナノチューブシート20との間に配置された第一スペーサー部30の位置と、第三基材300とカーボンナノチューブシート20との間に配置された第二スペーサー部50の位置とが、カーボンナノチューブシート構造体1Bの厚さ方向の断面視で重なっている。このように第一スペーサー部30の位置と第二スペーサー部50の位置とが重なっていることにより、複数のカーボンナノチューブシート構造体1Bが積層されたり、長尺のカーボンナノチューブシート構造体1Bが巻き取られたりした場合に、スペーサー部によって押圧されるカーボンナノチューブシート20の領域を少なくすることができる。
【0075】
〔第四実施形態〕
第四実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体について説明する。
第四実施形態の説明において、前述の実施形態と同一の構成要素は、同一符号や名称を示す等して、説明を省略または簡略にする。また、第四実施形態では、具体例も含め、特に言及されない構成等については、前述の実施形態で説明した構成等と同様の構成等を用いることができる。
【0076】
図12は、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Cの断面図である。
第四実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Cにおいては、カーボンナノチューブシート20Aが第一スペーサー部30上に配置されておらず、第四基材400上に配置されているのに対し、第二実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Aにおいては、カーボンナノチューブシート20が第一スペーサー部30上に配置されている点で相違する。
第四実施形態において、第一基材10、及び第一スペーサー部30は、第一実施形態と同様である。
【0077】
カーボンナノチューブシート構造体1Cは、カーボンナノチューブシート20Aと、第一基材10と、第一スペーサー部30と、第四基材400とを含む。カーボンナノチューブシート構造体1Cにおいて、第四基材400、カーボンナノチューブシート20Aまたは第一スペーサー部30、及び第一基材10がこの順で積層されている。カーボンナノチューブシート20Aは、
図12に示す断面視において、第一基材10と、第一スペーサー部30と、第四基材400とで区画された領域S2内に収容されている。
【0078】
(カーボンナノチューブシート)
本実施形態に係るカーボンナノチューブシート20Aは、前述の領域S2内に収容可能なサイズに形成されている点を除き、第一実施形態等で用いたカーボンナノチューブシート20と同様である。カーボンナノチューブシート20Aは、第一基材10と向かい合う第一シート面21Aと、第一シート面21Aとは反対側の第二シート面22Aとを有する。本実施形態では、カーボンナノチューブシート20Aは、第一基材10及び第一スペーサー部30と離間し、第四基材400上に配置されている。
【0079】
(第四基材)
第四基材400は、第一基材10の第一基材面11と向かい合う第五基材面410を有する。第五基材面410は、第一スペーサー部30が形成された第五領域410aと、第一スペーサー部30が形成されていない第六領域410bと、を有する。カーボンナノチューブシート20Aは、第二シート面22Aにおいて、第五基材面410の第六領域410b上に配置されている。本実施形態においては、第一スペーサー部30の、第四基材400に接触する表面に粘着処理が施されている場合には、第一スペーサー部30と第五基材面410の第五領域410aとが接着され、第一スペーサー部30と第五基材面410とが固定される。例えば、カーボンナノチューブシート構造体が全体として長尺である場合に、カーボンナノチューブシート構造体を巻き取ると第一スペーサー部30と、第五基材面410の第五領域410aとの接触面積が比較的小さくなるが、第一スペーサー部30と第五基材面410の第五領域410aとが接着されていれば、第一スペーサー部30と、第五基材面410の第五領域410aとの間でずれが生じることを回避しやすくなるという効果が得られる。第四基材400とその上に配置されるカーボンナノチューブシート20Aから、第一基材10と第一スペーサー部30を容易に除去する観点から、第一スペーサー部30の表面の粘着処理は、第四基材400の表面から剥離可能となるように施されていることが好ましい。カーボンナノチューブシート構造体1Cにおいては、第二シート面22Aが、第四基材400に覆われて保護されている状態である。
【0080】
第五基材面410は、剥離性を有することが好ましい。第五基材面410が剥離性を有していることにより、カーボンナノチューブシート構造体1Cから第四基材400を容易に剥がすことができる。第五基材面410に剥離性を付与する方法は特に限定されない。なお、第一スペーサー部30の、第四基材400に接触する表面に粘着処理が施されている場合には、第六領域410bのみならず、第五領域410aにも剥離処理が施されていてもよい。これにより、第四基材400とその上に配置されたカーボンナノチューブシート20Aから、第一基材10と第一スペーサー部30とを容易に除去できる。
【0081】
本実施形態では、第四基材400は、剥離基材420と、剥離基材420面に形成された剥離剤層430とを有する。剥離剤層430の表面が第五基材面410に相当する。剥離剤層430は、剥離基材420の片面のみに形成されていてもよいし、剥離基材420の両面に形成されていてもよい。剥離基材420は、前述の剥離基材220と同様の材質等で構成される。剥離剤層430は、前述の剥離剤層230と同様の材質等で構成される。
【0082】
本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Cによれば、フリースタンディング状態の部分を残したままカーボンナノチューブシート20をカーボンナノチューブシート構造体中に保持できるという効果を除き、第一実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1及び第二実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Aと同様の効果を奏する。
【0083】
例えば、スペーサー部上にカーボンナノチューブシートが配置されている場合、スペーサー部の材質等によっては、当該配置されている領域のカーボンナノチューブシートは使用できない場合もある。一方で、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Cによれば、カーボンナノチューブシート20Aは、第一基材10及び第一スペーサー部30上に配置されていない。そのため、スペーサー部上に配置されていた領域を除去する手間を省き、カーボンナノチューブシート20Aを第四基材400から剥離してそのまま使用することができる。
【0084】
〔第五実施形態〕
第五実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体について説明する。
第五実施形態の説明において、前述の実施形態と同一の構成要素は、同一符号や名称を示す等して、説明を省略または簡略にする。また、第五実施形態では、具体例も含め、特に言及されない構成等については、前述の実施形態で説明した構成等と同様の構成等を用いることができる。
【0085】
図13は、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Dが積層されて構成される積層体100Aの断面図である。なお、
図13においては説明の便宜上、2つのカーボンナノチューブシート構造体1D(第一のカーボンナノチューブシート構造体1Da及び第二のカーボンナノチューブシート構造体1Db)が積層された構造が示されているが、3つ以上のカーボンナノチューブシート構造体1Dが積層されていてもよいし、カーボンナノチューブシート構造体1Dが長尺状である場合には3周以上巻回されて積層されていてもよい。
【0086】
第五実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Dは、カーボンナノチューブシート20Bと、第五基材500と、第三スペーサー部80とを含む。カーボンナノチューブシート構造体1Dにおいて、第三スペーサー部80、第五基材500、及びカーボンナノチューブシート20Bがこの順で積層されている。
【0087】
(カーボンナノチューブシート)
本実施形態のカーボンナノチューブシート20Bは、第一シート面21Bと、第一シート面21Bとは反対側の第二シート面22Bとを有する。カーボンナノチューブシート20Bは、第二シート面22Bにおいて第五基材500上に配置されている。カーボンナノチューブシート構造体1Dにおいては、第二シート面22Bが、第五基材500に覆われて保護されている状態である。第一シート面21B側には、カーボンナノチューブシート構造体1D単体の時点では、特に他の部材は配置されておらず、カーボンナノチューブシート20Bの第一シート面21Bが露出した状態である。カーボンナノチューブシート構造体1Dが積層された積層体100Aの状態では、カーボンナノチューブシート20Bは第一シート面21Bの一部領域において第三スペーサー部80上に配置されている。
【0088】
(第五基材)
第五基材500は、カーボンナノチューブシート20Bの第二シート面22Bと向かい合う第六基材面510と、第六基材面510とは反対側の第七基材面520とを有する。第五基材500の第七基材面520に第三スペーサー部80が形成されている。第七基材面520は、第三スペーサー部80が形成されている第七領域520aと、第三スペーサー部80が形成されていない第八領域520bとを有する。
【0089】
第六基材面510は、剥離性を有することが好ましい。第六基材面510が剥離性を有していることにより、カーボンナノチューブシート構造体1Dから第五基材500を容易に剥がすことができる。第六基材面510に剥離性を付与する方法は特に限定されない。
【0090】
本実施形態では、第五基材500は、剥離基材530と、剥離基材530面に形成された剥離剤層540とを有する。剥離剤層540の表面が第六基材面510に相当する。剥離基材530は、前述の剥離基材220と同様の材質等で構成される。剥離剤層540は、前述の剥離剤層230と同様の材質等で構成される。剥離剤層540は、剥離基材530の一方の面のみに形成され、他方の面には、第三スペーサー部80との密着性を高めるための処理が施されていることが好ましい。密着性を高めるための表面処理や粘着処理については、前述と同様の処理を採用できる。第三スペーサー部80が形成されている第七領域520aには、第一実施形態の第一基材面11の第一領域11aと同様にプライマー処理等の表面処理が施されていたり、粘着処理が施されていたりしてもよい。
【0091】
また、カーボンナノチューブシート20Bが第五基材500上に配置されている場合には、第六基材面510の表面粗さRa
1が、0.05μm以上であることが好ましく、0.05μm以上10μm以下であることがより好ましい。
第六基材面510の表面粗さRa
1が0.05μm以上であると、第六基材面510と接していたカーボンナノチューブシート20Bを破断することなく、容易に剥離することができる。第六基材面510の表面粗さRa
1は、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.15μm以上である。
第六基材面510の表面粗さRa
1は、10μm以下であることが好ましい。第六基材面510の表面粗さRa
1が10μm以下であると、第六基材面510の平滑性が適度に維持されるため、第六基材面510の凹凸に起因したカーボンナノチューブシート20の破壊等の欠陥の発生が抑制される。第六基材面510の表面粗さRa
1は、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。
【0092】
(第三スペーサー部)
第三スペーサー部80は、複数のカーボンナノチューブシート構造体1Dを積層させた積層体100Aにおいて、第一のカーボンナノチューブシート構造体1Daにおけるカーボンナノチューブシート20Bと、第一のカーボンナノチューブシート構造体1Daに積層される第二のカーボンナノチューブシート構造体1Dbにおける第五基材500とを離間させる部材である。
図13に示すように、第一のカーボンナノチューブシート構造体1Daにおけるカーボンナノチューブシート20Bの第一シート面21Bは、積層状態において、第二のカーボンナノチューブシート構造体1Dbにおける第五基材500の第八領域520bと離間している。
第三スペーサー部80は、第五基材500の第七基材面520に形成されている点を除き、第一実施形態の第一スペーサー部30と同様である。
【0093】
本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Dによれば、積層体100Aのような積層状態において第一実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1及び第二実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Aと同様の効果を奏する。
すなわち、カーボンナノチューブシート構造体1D単体においては、第一実施形態や第二実施形態における第一基材10に相当する部材を有していないものの、積層状態においては、カーボンナノチューブシート20B上に別のカーボンナノチューブシート構造体1Dが積層されたり、長尺状のカーボンナノチューブシート構造体1Dが巻回されたりした場合に、第三スペーサー部80を介して第五基材500が配置される。そのため、積層体100Aにおいて、カーボンナノチューブシート20Bは、第五基材500によって両面とも保護される。
また、本実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Dによれば、第五基材500の他にカーボンナノチューブシート20Bを保護するための基材を設ける必要がなく、資材や製造の労力を省略できる。
【0094】
〔実施形態の変形〕
本発明は、前述の実施形態で説明した態様に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良等は、本発明に含まれる。なお、以下の説明では、前述の実施形態で説明した部材や構成等と同一であれば、同一符号や名称を付してその説明を省略または簡略化する。
【0095】
(第二実施形態の変形例)
例えば、第二実施形態では、第二基材200が剥離基材220及び剥離剤層230を有する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、
図14に示すカーボンナノチューブシート構造体1Eのように、第二基材200が、剥離剤層を有さず、剥離基材220だけで構成され、剥離基材220が剥離性を有する材質で形成され、第三基材面210として、当該剥離基材220が露出している構成も、本発明の一態様として挙げられる。剥離性を有する材質としては、フッ素樹脂フィルム等が挙げられ、フッ素樹脂フィルムとしては、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、及びエチレン・四フッ化エチレン共重合体等のフィルムが挙げられる。なお、この剥離性を有する材質で形成されるという点に関しては、第一実施形態において、第一基材10の第一基材面11とは反対側の第二基材面12が剥離性を有する場合、第三実施形態において、カーボンナノチューブシート20と接触するスペーサー部の表面が、粘着処理されておらず、剥離処理されている場合、第五実施形態において、第六基材面510が剥離性を有する場合についても同様である。また、これらの基材又はスペーサー部のカーボンナノチューブシートと接触する面であって、剥離処理し得る面の表面粗さRa
1が、0.05μm以上であることが好ましい。この剥離処理し得る面の表面粗さRa
1が0.05μm以上であると、当該剥離処理し得る面と接していたカーボンナノチューブシートを破断することなく、容易に剥離することができる。当該剥離処理し得る面の表面粗さRa
1は、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.15μm以上である。
【0096】
第三基材面210の表面粗さRa
1が0.05μm以上であると、第二基材200(剥離基材220)をカーボンナノチューブシート20から剥離する際に、カーボンナノチューブシート20を破断することなく、容易に剥離することができる。カーボンナノチューブシート構造体1Eにおいて、第三基材面210の表面粗さRa
1は、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.15μm以上である。カーボンナノチューブシート構造体1Eにおいて、第三基材面210の表面粗さRa
1は、10μm以下であることが好ましい。第三基材面210の表面粗さRa
1が10μm以下であると、第三基材面210の平滑性が適度に維持されるため、第三基材面210の凹凸に起因したカーボンナノチューブシート20の破壊等の欠陥の発生が抑制される。第三基材面210の表面粗さRa
1は、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。
【0097】
(第四実施形態の変形例)
例えば、第四実施形態では、第四基材400が剥離基材420及び剥離剤層430を有する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、
図15に示すカーボンナノチューブシート構造体1Fのように、第四基材400が、剥離剤層を有さず、剥離基材420だけで構成され、剥離基材420が剥離性を有する材質で形成され、第五基材面410として、当該剥離基材420が露出している構成も、本発明の一態様として挙げられる。剥離性を有する材質としては、上記の第二実施形態の変形例において挙げた材質と同様である。この態様において、第五基材面410に相当する面、すなわち、剥離基材420のカーボンナノチューブシート20Aが配置されている面の表面粗さRa
1が、0.05μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上であり、さらに好ましくは0.15μm以上である。剥離基材420のカーボンナノチューブシート20Aが配置されている面の表面粗さRa
1が0.05μm以上であると、カーボンナノチューブシート20Aを破断することなく、容易に剥離することができる。
カーボンナノチューブシート構造体1Fにおいて、剥離基材420のカーボンナノチューブシート20Aが配置されている面の表面粗さRa
1は、10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。剥離基材420のカーボンナノチューブシート20Aが配置されている面の表面粗さRa
1が10μm以下であると、第六基材面510の平滑性が適度に維持されるため、剥離基材420のカーボンナノチューブシート20Aが配置されている面の凹凸に起因したカーボンナノチューブシート20の破壊等の欠陥の発生が抑制される。
【0098】
(第五実施形態の変形例)
例えば、第五実施形態に係る積層体100Aにおいては、第一のカーボンナノチューブシート構造体1Daの第五基材500上に配置されているカーボンナノチューブシート20Bは、第二のカーボンナノチューブシート構造体1Dbの第三スペーサー部80上にも配置されている態様を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、
図16に示すカーボンナノチューブシート構造体1G及び積層体100Bのような構成も、本発明の一態様として挙げられる。積層体100Bは、2つのカーボンナノチューブシート構造体1G(第一のカーボンナノチューブシート構造体1Ga及び第二のカーボンナノチューブシート構造体1Gb)が積層された構造を有する。第一のカーボンナノチューブシート構造体1Ga及び第二のカーボンナノチューブシート構造体1Gbのそれぞれは、カーボンナノチューブシート20Aと、第五基材500と、第三スペーサー部80とを含む。ここで、カーボンナノチューブシート構造体1Gのカーボンナノチューブシート20Aは、積層状態において第三スペーサー部80上に配置されておらず、
図16に示す断面視において、2つの第五基材500と、第三スペーサー部80とで区画された領域Sa内に収容されている。そのため、カーボンナノチューブシート構造体1Gによれば、第四実施形態及び第五実施形態と同様の効果を奏する。なお、カーボンナノチューブシート構造体1Gを積層させて得られる積層体に関しても、3つ以上のカーボンナノチューブシート構造体1Gが積層されていてもよいし、カーボンナノチューブシート構造体1Gが長尺状である場合には3周以上巻回されて積層されていてもよい。
【0099】
(第一実施形態の変形例)
例えば、第一実施形態では、第一基材10とカーボンナノチューブシート20との間には第一スペーサー部30が形成されている態様を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。
例えば、
図17に示すカーボンナノチューブシート構造体1Hのような構成も、本発明の一態様として挙げられる。カーボンナノチューブシート構造体1Hにおいては、第一実施形態のカーボンナノチューブシート構造体1の第一基材10の第二基材面12に、さらに第二スペーサー部50が形成されている。第二基材面12は、第二スペーサー部50が形成された第九領域12aと、第二スペーサー部50が形成されていない第十領域12bと、を有する。第九領域12aは、第一基材面11の第一領域11aと同様にプライマー処理等の表面処理が施されていたり、粘着処理が施されていたりしてもよい。
カーボンナノチューブシート構造体1Hの第二スペーサー部50は、カーボンナノチューブシート構造体1Hを複数積層させた場合に、カーボンナノチューブシート20と第一基材10とを離間させる部材である。第二スペーサー部50は、第一実施形態の第一スペーサー部30と同様である。
カーボンナノチューブシート構造体1Hにおいて、第一スペーサー部30の位置と、第二スペーサー部50の位置とが、カーボンナノチューブシート構造体1Hの厚さ方向の断面視で重なっている。なお、スペーサー部の位置の重なりの程度としては、前述と同様、カーボンナノチューブシート構造体1Hを複数積層させた場合に、カーボンナノチューブシート20がスペーサーに押圧されて変形したり、損傷したりすることを抑制できるように重なっていればよく、カーボンナノチューブシート構造体の断面視でスペーサーの位置が一致するように重なっていることが好ましい。
カーボンナノチューブシート構造体1Hによれば、第一実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1と同様の効果を奏する。
【0100】
図18には、カーボンナノチューブシート構造体1Hを複数積層させた積層体100Cの断面図が示されている。なお、積層体100Cの最下段には、
図18に示すようにカーボンナノチューブシート構造体1を積層させてもよい。
積層体100Cによれば、第三実施形態に係るカーボンナノチューブシート構造体1Bにおける第三基材300が省略されていても、カーボンナノチューブシート20のフリースタンディング状態が維持されている。そのため、積層体100Cによれば、カーボンナノチューブシート20のフリースタンディング状態を維持したまま、カーボンナノチューブシート構造体1Hを保存したり搬送したりすることが容易である。さらに、積層体100Cによれば、第一基材10が第三基材300の役割を担っているので、第三基材300に相当する部材を省略でき、積層体を薄型化、及び軽量化できる。
【0101】
(第三実施形態の変形例)
第三実施形態において、第三基材300が第一実施形態の第一基材10と同様の材質で構成される態様を例に挙げて説明したが、その他の態様としては、例えば、第三基材300が第一実施形態の第一基材10と異なる材質で構成されるカーボンナノチューブシート構造体も挙げられる。
【0102】
第一実施形態の変形例や第三実施形態において、第二スペーサー部50が第一実施形態の第一スペーサー部30と同様である態様を例に挙げて説明したが、その他の態様としては、例えば、第二スペーサー部50と第一スペーサー部30とが材質、厚さ、及び形状の少なくともいずれかの要素において互いに異なるカーボンナノチューブシート構造体も挙げられる。