(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
湾曲プロセス中にガラスパネル(I)の表面(O)に正圧を作用させるための隔膜(6)の使用であって、前記隔膜(6)が上方成形ツール(3)の中空室(5)の開放部(4)を閉鎖し、前記上方成形ツール(3)は、前記開放部(4)が形成された壁(12)であって、前記中空室(5)を画定する、下方湾曲型(1)へ向かう壁(12)を有しており、前記隔膜(6)が前記中空室(5)に導入されるガスによって前記ガラスパネル(I)の方向へ変形され、これによって前記ガラスパネル(I)の表面(O)に接触することで正圧が形成され、その際に、前記ガラスパネル(I)は、前記上方成形ツール(3)と前記下方湾曲型(1)との間に配置されていて、前記下方湾曲型(1)は、フレーム状の作用面(2)を有する重力湾曲型として形成されている、使用。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスパネルのための正圧支援による湾曲方法、これに適した装置およびこうした湾曲方法における隔膜の使用に関する。
【0002】
車両用のガラスは、典型的には湾曲部を有する。こうした湾曲部を形成する種々の方法が公知である。いわゆる重力湾曲(gravity bendingまたはsag bendingとも)では、初期状態で平坦なガラスパネルが、湾曲型の載置面に配置され、少なくともその軟化温度まで加熱され、これにより重力の作用のもとで載置面に当接される。いわゆるプレス湾曲法では、協働してパネルに作用する相補的な2つのツール間にパネルが配置され、湾曲部が形成される。狭義のプレス湾曲では、これは、ツール間のプレス作用によって行われる。吸引湾曲法では、変形を達成するためのまたは変形を支援するための少なくとも1つのツールが吸引作用をパネルに作用させる。
【0003】
複雑なパネル形状を実現するために、しばしば、多段階の湾曲法が使用される。典型的には、第1の湾曲ステップにおいて重力湾曲により予湾曲が形成され、第2の湾曲ステップにおいて(しばしばプレス湾曲または吸引湾曲により)最終形状が形成される。こうした多段階の湾曲法は、例えば、欧州特許出願公開第1836136号明細書(EP1836136A1)、欧州特許出願公開第1358131号明細書(EP1358131A1)、欧州特許出願公開第2463247号明細書(EP2463247A1)、欧州特許出願公開第2463248号明細書(EP2463248A1)、米国特許出願公開第2004107729号明細書(US2004107729A1)、欧州特許出願公開第0531152号明細書(EP0531152A2)および欧州特許出願公開第1371616号明細書(EP1371616A1)から公知である。
【0004】
正圧支援による湾曲法も公知である。ここで、上方から、いわばガラスパネルを重力湾曲型内へ押し込む正圧を作用させることにより、重力湾曲を促進させることができる。こうして、低い湾曲温度および/または短い湾曲サイクルを達成することができる。欧州特許出願公開第0706978号明細書(EP0706978A2)には、正圧を形成するために、上方成形ツールにより空気流をガラスパネルへ導入する重力湾曲法が提案されている。
【0005】
車両用の幾つかのガラスは、安全合わせガラス、特にウィンドシールドパネルとして構成されている。これは、ポリマー中間層を介して相互にラミネートされた2つのガラスパネルから形成されている。この場合、その湾曲部が相互に最適に適合して形状一致が得られるよう、2つのガラスパネルを共通に湾曲させると有利でありうる。こうした手法は、欧州特許出願公開第1358131号明細書(EP1358131A1)、欧州特許出願公開第2463247号明細書(EP2463247A1)、欧州特許出願公開第2463248号明細書(EP2463248A1)、欧州特許出願公開第1836136号明細書(EP1836136A1)、欧州特許出願公開第0531152号明細書(EP0531152A2)および欧州特許出願公開第1611064号明細書(EP1611064A1)から公知である。
【0006】
このような対での湾曲法には、2つのガラスパネルの分離の回避、すなわち湾曲過程中のパネル間の空隙の形成の回避も該当する。このことは、パネルの表面に作用する負圧がこうした空隙形成を殊に助長するので、特に吸引湾曲法に関連する。空隙形成の危険に対処するために、吸引作用の対向側から、2つのパネルを相互に押圧する正圧を印加することができる。ここでは、下方のパネルを吸引により変形させ、同時に上方のパネルに空気流を印加することが、韓国登録特許第10−1343631号公報(KR101343631B1)に提案されている。
【0007】
上述した正圧支援による湾曲法では、正圧形成のために、湾曲すべきガラスパネルに直接に空気流が印加される点が共通である。ただし、ここには、ガラスパネルの表面が望ましくない影響を受け、これにより特にガラスパネルの光学品質の損失が生じうるという危険が潜んでいる。つまり、例えばノズルの使用などによって空気流が不均等に印加されると、パネルの不均等な透過特性が生じることがあり、これはウィンドウパネルにとって望ましくなく、きわめて小さな範囲でしか許容されない。
【0008】
米国特許第3473909号明細書(US3473909A)には、ガラスレンズを下方湾曲型へ押し込む隔膜を用いた、ガラスレンズを湾曲させる装置および方法が開示されている。
【0009】
本発明の基礎とする課題は、上述した欠点を回避した、ガラスパネル、特にウィンドウパネルのための、改善された正圧支援による湾曲方法、およびこれに適した装置を提供することである。特に、正圧を印加することによるガラスパネルの光学品質への障害を回避できるようにする。
【0010】
本発明の課題は、本発明にしたがって、少なくとも1つのガラスパネルを湾曲させる装置であって、少なくとも、
・少なくとも1つのガラスパネルの形状に影響を及ぼすように構成された、作用面を有する下方湾曲型と、
・作用面に対向するように配置され、少なくとも1つのガラスパネルの、作用面とは反対側の表面に、正圧を作用させるように構成された上方成形ツールと
を含み、上方成形ツールは、下方湾曲型へ向けられた少なくとも1つの開放部とこの開放部を閉鎖する隔膜とを有する中空室を有し、上方成形ツールには、ガスを中空室内へ導入して隔膜を下方湾曲型の方向へ変形させ、これにより前記正圧を作用させる手段が設けられている、装置により解決される。
【0011】
隔膜とは、本発明においては、(典型的な使用条件のもとで)面法線の方向へ弾性変形可能な、可撓性の材料から成る平坦な要素であると理解される。
【0012】
本発明の課題は、さらに、少なくとも1つのガラスパネルを湾曲させる方法であって、少なくとも、
(a)少なくとも軟化温度まで加熱された少なくとも1つのガラスパネルを、下方湾曲型と、この下方湾曲型の作用面に対向するように配置され、かつ下方湾曲型へ向かう少なくとも1つの開放部とこの開放部を閉鎖する隔膜とを有する中空室が設けられた上方成形ツールとの間に配置する、方法ステップと、
(b)中空室にガスを導入することにより隔膜を下方湾曲型の方向へ変形させ、これにより、隔膜を、少なくとも1つのガラスパネルの、載置面とは反対側の表面に接触させて圧力を作用させ、この表面に正圧を形成する、方法ステップと、
(c)ガラスパネルを冷却する、方法ステップと
を含む方法により解決される。
【0013】
装置および方法を以下に共通して提案する。なお、説明および好ましい構成は装置および方法の双方に同等に関連する。
【0014】
本発明は、本発明の装置および下方湾曲ツールと上方成形ツールとの間に位置決めされるガラスパネルを含む、少なくとも1つのガラスパネルを湾曲させる装置を含む。
【0015】
本発明の装置によって実行される湾曲方法は、正圧支援による湾曲方法とも称することができる。下方湾曲型によるガラスパネルの成形は、上方から正圧をガラスパネルに作用させることで支援される。正圧により、迅速な湾曲を達成可能である。積層される複数のガラスパネルを同時に湾曲させる場合、パネル間の空隙の形成を防止できる。正圧は、本発明によれば、可撓性の隔膜によって形成される。これは保護的手法として有利であると判明しており、これにより、ガラスパネルへの負の影響、特に表面品質および光学特性への障害を回避することができる。このことは本発明の大きな利点である。隔膜の可撓性に基づいて、下方湾曲型の作用によって定められるパネル形状への適合化がつねに行われる。したがって、本発明による上方成形ツールは、各パネル形状に適合するように調整される必要はなく、いわば汎用ツールとして多数の異なるパネル形状に使用可能である。
【0016】
少なくとも1つのガラスパネルを湾曲させる本発明の装置は、少なくとも1つの下方湾曲型と上方成形ツールとを含む。湾曲させるべきガラスパネルは、下方湾曲型と上方成形ツールとの間に配置される。ガラスパネルは、例えば下方湾曲型に配置するかまたは上方成形ツールによって吸引することができる。
【0017】
下方湾曲型とは、本発明においては、ガラスパネルの、地面に面した下方側の表面に接触する型、またはこの下方側の表面に対応してこれに作用する型であると理解されたい。上方湾曲型とは、ガラスパネルの、地面とは反対の上方側の表面に対応してこれに作用する型であると理解されたい。
【0018】
下方湾曲型は、ガラスパネルに割り当てられ、ガラスパネルの成形のためにこれに作用する作用面を有する。作用面は、少なくとも1つのガラスパネルの形状を調整するように構成される。作用面は、少なくとも1つのガラスパネルを上部に配置するかまたはガラスパネルに接触させるように構成されているので、載置面または接触面とも称することができる。作用面は、湾曲したガラスパネルの形状を定める。典型的には、湾曲ステップの開始時には作用面の一部のみがガラスパネルに接触し、湾曲ステップの進行中、ガラスパネルが作用面に当接する。これにより、重力の作用、押圧力の作用または吸引作用を行うことができる。作用面がガラスパネルに直接に接触してもよい。また、作用面に、例えば、本来の作用面とガラスパネルとの間に配置される織物を配置してもよい。
【0019】
本発明は、定められた形式の作用面に限定されない。作用面は、好ましくは凹状に形成される。凹状とは、ここでは、ガラスパネルの角および縁が所期の通りに作用面に接触し、湾曲型から離れる方向に湾曲していることであると理解されたい。
【0020】
有利な構成では、下方湾曲型は全面にわたる作用面を有する。こうした作用面は、中実状とも称することができ、湾曲ステップの終了時に(いわゆるフレーム状の作用面とは異なり)パネル面積の大部分に接触することができる。特に好ましい構成では、全面にわたる作用面には、少なくとも1つのガラスパネルの、作用面に面する側の表面に吸引作用を作用させうる複数の孔もしくは開口が設けられる。こうした湾曲型は、特に吸引湾曲のステップに適する。これらは、縁領域に押圧力を作用させ、中央領域に吸引力を作用させるためにも使用可能である。装置は、この場合さらに、作用面に接続される吸引作用形成手段、例えばベンチュリノズル、ファンまたはポンプを含む。このような下方湾曲型は、吸引湾曲型とも称することができる。下方湾曲型は、当該構成では、欧州特許出願公開第1836136号明細書(EP1836136A1)に説明されている下方型("forme inferieur 5,12")に特に対応する。
【0021】
別の有利な構成では、下方湾曲型はフレーム状の作用面を有する。フレーム状の作用面のみがガラスパネルに直接に接触し、パネルの大部分はツールに直接には接触しない。これにより、特に高い光学品質を有するパネルを形成することができる。こうしたツールは、リング(湾曲リング)またはフレーム(フレーム型)とも称することができる。本発明における「フレーム状の作用面」なる概念は、全面にわたる型に対する区別のためのみに用いられる。作用面は完全なフレームを形成する必要はなく、中断部を有してもよい。作用面は、完全なフレームの形状または中断部を有するフレームの形状に形成される。こうしたフレーム状の作用面は特に重力湾曲型として適しているので、この場合の下方型は、好ましくは重力湾曲型として構成される。パネルは重力湾曲型に配置され、これにより作用面(載置面)が、ガラスパネルの、地面に面する下方側の表面に接触する。通常、ガラスパネルの縁領域が作用面を取り囲む。ガラスパネルが少なくともその軟化温度まで加熱される場合、このガラスパネルは重力の作用のもとで作用面に当接し、これにより所望の形状が達成される。また、フレーム状の作用面はプレス湾曲法にも使用することができる。
【0022】
全面にわたる作用面に対するフレーム状の作用面の利点は、湾曲したパネルにいっそう高い光学品質が得られることにある。パネルの中央領域に、隔膜が作用させる圧力に対する背圧は生じないが、当業者にとって驚くべきことに、こうしたフレーム状の作用面を用いても、本発明の方法は実行可能である。背圧が生じないにもかかわらず、ガラスパネルの確実かつ再現可能な湾曲が可能である。
【0023】
フレーム状の作用面の幅は、好ましくは0.1cmから20cmまでであり、特に好ましくは0.1cmから5cmまでであり、例えば0.3cmである。
【0024】
基本的には、上述した形式の作用面の組み合わせも可能であり、例えば、中央領域に全面にわたる作用面を設け、これをフレーム状の作用面によって取り囲むこともできる。
【0025】
ガラスパネルの、下方湾曲型とは反対側の表面には、本発明によれば、上方成形ツールの隔膜によって正圧が印加される。ガラスパネルの、下方湾曲型とは反対側の表面を上面と称し、下方湾曲型に面する側の表面を下面と称することもある。正圧とは、本発明においては、周囲圧よりも高い圧力をいうものと理解されたい。正圧により、軟化したガラスパネルがいわば下方湾曲型へ押し込まれる。
【0026】
上方成形ツールは、湾曲過程中、下方湾曲型の作用面に対向するように配置されるので、下方湾曲型と上方成形ツールとの間にガラスパネルを配置できる。当該ツールは、載置面上に配置されたガラスパネルの、載置面とは反対側の表面に、正圧を形成するように構成される。
【0027】
上方成形ツールでは種々の実施形態が可能である。各実施形態に共通するのは、成形ツールが中空室を有することである。当該中空室は、閉鎖されていない中空室である。ここで、成形ツールには、一方では、中空室にガスを導入する手段が設けられ、この手段が特に中空室内に通じる流入管または流入開口を含む。他方で、中空室は、下方湾曲型へ向かう少なくとも1つの別の開放部を有する。
【0028】
成形ツールはさらに、下方湾曲型へ向かう少なくとも1つの開放部を覆うかまたは閉鎖する隔膜を有する。ガスが中空室へ導入され、そこに正圧が形成されると、隔膜は弾性によって下方湾曲型の方向へ変形する。隔膜がガラスパネルの上面に直接に接触することにより、本発明のガラスパネルに対する正圧が形成される。
【0029】
有利な構成では、上方成形ツールは、開放部を取り囲む縁部を有するカバーを有する。成形ツールは、この場合、全面にわたる接触面を有する型としてではなく、中空型として構成される。カバーは、例えば、金属薄板から製造される。カバーは、自身が中空室を形成し、下方湾曲型へ向かう開放部が唯一の大面積の開放部となるように成形される。ツールを釣鐘状またはフード状と称することもある。隔膜は、釣鐘状の中空室を閉鎖する。隔膜は、典型的には縁部の領域に固定される。
【0030】
カバーの縁部は、好ましくは成形ツールの所期の通りの配置においては、下方へ向かう縁部である。縁部は、特に好ましくは、ほぼ垂直に配置される。これにより、成形ツールは、有利には、ガラスパネルに接触させることができる。下方へ向かう縁部はしばしばスカートとも称される。カバーの側縁は、下方へ向かう縁部の端に配置可能であり、下方へ向けることができる。ただし、例えば縁部の端が屈曲されて、側縁が下方へ向けられない場合にも、機能は損なわれない。
【0031】
上方成形ツールがガラスパネルへ降下されると、この成形ツールの一部分が好ましくはガラスパネル上に載置され、場合によっては隔膜が当該部分とガラスパネルとの間に位置する。したがって、成形ツールの上記の部分は接触面と称される。接触面は、カバーの側縁または端部によって形成可能であり、または特に側縁の領域でカバーに取り付けてもよい。
【0032】
フード状の構成における上方成形ツールまたはそのカバーの材料厚さは、好ましくは最大5mmであり、特に好ましくは2mmから4mmまでである。こうした小さな材料厚さにより、成形ツールの重量を小さく保つことができる。
【0033】
また、成形ツールは、フード状に形成しなくてもよい。別の有利な構成では、上方成形ツールは、中空室を画定する、下方湾曲型へ向かう壁を有し、この壁に複数の開口が形成される。上方成形ツールは、この場合、フード状のカバーと、このフード状のカバーの開放部を閉鎖する、複数の開口または孔の設けられた壁とを含むフルモールド型として形成される。上記の壁の、中空室とは反対側の表面は、この場合、好ましくはパネルへ降下する接触面を形成する。隔膜は当該接触面を覆い、開口を通して流入するガスによって壁から離れる方向へ押圧され、膨張する。開口の大きさは、好ましくは20mm
2から700mm
2までであり、特に好ましくは30mm
2から100mm
2までである。開口の面積割合は、好ましくは(開口の面積も含めた)壁の全面積の5%から50%まで、特に好ましくは10%から30%までである。これにより、隔膜の特に均等な変形が達成される。
【0034】
フルモールド型としての構成における上方成形ツールまたはそのカバーの材料厚さは、好ましくは10mmから30mmまでである。
【0035】
上方成形ツールまたはそのカバーは、どちらの構成においても、好ましくは鋼または特殊鋼から製造される。
【0036】
上方成形ツールの接触面は、好ましくは下方湾曲型の作用面に対して相補的に形成される。下方湾曲型は好ましくは凹状の作用面を有するので、上方成形ツールの接触面は好ましくは凸状に形成される。
【0037】
正圧は、ガラスパネルの表面のできるだけ大部分に形成しなければならない。少なくとも、正圧は、ガラスパネルの、(湾曲した状態で)下方湾曲型の作用面に載置される領域、ならびに、フレーム状の作用面の場合にはこの作用面に取り囲まれる領域に形成されなければならない。例えば、隔膜は、湾曲させるべきガラスパネルの表面の少なくとも80%または少なくとも90%に接触し、この表面に作用することで正圧を形成できる。ここで、表面の、隔膜に接触しないために正圧が印加されない領域は、縁領域に、特に周りを取り囲むように配置される。
【0038】
有利な構成では、上方成形ツールは、湾曲させるべき少なくとも1つのガラスパネルを保持するように構成される。つまり、上方成形ツールは、本発明の正圧を形成するほか、少なくとも1つのパネルを持ち上げて移動させるためにも使用可能である。ガラスパネルの保持のために、好ましくは、ガラスパネルを上方成形ツールに引きつける吸引作用が作用される。当該吸引作用は、特に好ましくは、後述するいわゆるスカート技術によって形成される。
【0039】
スカート技術では、(初期状態では平坦な)ガラスパネルの平面への隔膜面の投影が完全にパネル面内に位置する状態で(つまり隔膜がパネルの表面を超え出ない状態で)、上方成形ツールの隔膜が設けられた、正圧の形成に必要な部分と、パネル面上方の接触領域とが配置される。この場合、パネル面に、隔膜に接触しない(特に周を取り囲む)縁領域が存在してもよい。上方成形ツールがガラスパネルへ降下されると、その接触面がガラスパネルに載置され、場合によっては隔膜が接触面とガラスパネルとの間に位置する。
【0040】
成形ツールは、吸引作用を形成するために、接触面と隔膜と本発明の中空室へ通じる開放部とを少なくとも部分的に取り囲む、周囲の空気ガイドプレートを有する。このような空気ガイドプレートはしばしばスカートとも称される。空気ガイドプレートは、接触面と開放部とを完全にまたは部分的に取り囲むかまたは包囲する。湾曲過程中、空気ガイドプレートは、好ましくは、ガラスパネルの側縁に対して、3mmから50mmまで、特に好ましくは5mmから30mmまで、例えば20mmの距離を有する。
【0041】
上方成形ツールの接触面にガラスパネルを保持するのに必要な吸引作用は、空気ガイドプレートと接触面(およびこの接触面を支持する本発明の中空室のカバー)との間の空気を吸引することによって形成される。これは、湾曲させるべきガラスパネルの縁を少なくとも部分的に空気流で吸引し、これによりガラスパネルを接触面へ引きつけるのに適する。装置は、空気ガイドプレートに対応する負圧形成手段または吸引作用形成手段、例えばファン、ベンチュリノズルまたはポンプを含む。形成された空気流は、空気ガイドプレートによって、ガラスパネルの側縁が少なくとも部分的に吸引されるように偏向される。空気ガイドプレートおよび吸引作用形成手段により、成形ツールは、少なくとも1つのガラスパネルの縁を空気流で吸引するように構成される。空気流により、ガラスパネルは成形ツールに有効に保持され、接触面に引きつけられるかまたは吸引される。ガラスパネルは、縁を吸引する空気流により、重力の作用に抗して成形ツールに保持される。スカート技術を用いた上方ツールは、例えば欧州特許出願公開第1836136号明細書(EP1836136A1)に説明されている("forme superieure 11")。
【0042】
好ましい構成では、隔膜はガス透過性を有する。これにより一種の圧力補償が生じるので、隔膜の上方および下方の圧力が近似的に等しくなる。これにより、ガラス表面に隔膜の圧痕が生じてパネルの光学品質が低下することを回避できる。隔膜はもちろん、空気流への抵抗が全く生じず、このために膨張および変形がなくなるほどのガス透過性を有してはならない。ガス透過性の適切な大きさは、個々のケースの要求に応じて、例えばシミュレーションまたは簡単な事前試行により、当業者が選定できる。
【0043】
好ましくは、隔膜は、フェルト、不織布または織物から形成される。フェルト、不織布または織物の特性、特に厚さを選定することにより、ガス透過性を調整することができる。
【0044】
フェルト、不織布または織物は、好ましくは金属を含有し、特に好ましくは特殊鋼を含有する。フェルト、不織布または織物は、好ましくは特殊鋼フェルト、特殊鋼不織布または特殊鋼織物である。これらの材料は、一方では産業上の大量生産にとって充分な安定性を有し、他方ではガラス表面を損なわないための充分な軟性を有する。
【0045】
隔膜は、好ましくは0.5mmから10mmまでの厚さ(材料厚さ)、特に好ましくは1mmから5mmまでの厚さ、特に好ましくは2mmから3mmまでの厚さを有する。当該領域では、隔膜の安定性と可撓性との有利な妥結点が得られる。また、隔膜は、ガラスパネルへの圧痕を回避できるよう、充分な薄さおよび軽さを有する。
【0046】
本発明の装置はさらに、下方湾曲型および上方成形ツールを相互に移動させる手段を含む。これにより、下方湾曲型および成形ツールは、ガラスパネルを湾曲のために位置決めした後、相互に接近し、共通にガラスパネルに作用可能となる。当該接近は、下方湾曲型、上方成形ツールまたはその双方の垂直移動によって行うことができる。
【0047】
本発明の装置はさらに、ガラスパネルを軟化温度へ加熱する手段を含む。典型的には、下方湾曲型および上方成形ツールは、加熱可能な湾曲炉内または加熱可能な湾曲チャンバ内に配置される。ガラスパネルは、加熱のために、別個のチャンバ、例えばトンネル炉を通過させてもよい。
【0048】
正圧は、成形ツールの中空室にガスを導入することによって形成される。ガスは、好ましい実施形態では空気、特に圧縮空気である。なぜなら、圧縮空気は低コストに形成可能だからである。しかし、基本的には、他のガス、例えば二酸化炭素または窒素を使用することもできる。ガスは、任意の方式で、例えばベンチュリノズル、ファンまたはポンプによって、中空室へ圧送可能である。
【0049】
流入ガスは、好ましくは、典型的には高い温度で行われる湾曲プロセス中のガラスパネルが冷却されないよう、加熱される。ガスの温度は、好ましくはガラスパネルの温度にほぼ相当する。
【0050】
中空室内では、好ましくは衝突板が管の流出口に対向するように配置され、これにより、流入ガスが衝突板に衝突する。これにより、流入ガスが直接にガラスパネルに当たることが阻止され、中空室内全体に均等な正圧を形成することができる。
【0051】
本発明の方法は、複数の可能な変化形態で実行可能である。ここでは、ガラスパネルを上方成形ツールによって保持、特に吸引し、続いて下方湾曲型を上方成形ツールに対して相対的に移動させ、よって下方からガラスパネルに接近させることにより、軟化したガラスパネルを下方湾曲型と上方成形ツールとの間に配置することができる。当該手法は特にプレス湾曲法および吸引湾曲法において有意である。軟化温度へのガラスパネルの加熱は、ガラスパネルを先に上方成形ツールに固定した状態で行うことができ、または、予備ステップにおいて、加熱された状態となってからガラスパネルを上方成形ツールによって受け取ることもできる。
【0052】
これに代えて、ガラスパネルを下方湾曲型の作用面(載置面)に載置し、続いて上方成形ツールを下方湾曲型に対して相対的に移動させ、よって上方からガラスパネルに接近させることもできる。当該手法は、プレス湾曲法および吸引湾曲法、特に重力湾曲法において有意である。軟化温度へのガラスパネルの加熱は、パネルを下方湾曲型に載置した後に、または、加熱された状態となってからガラスパネルを下方湾曲型に配置する予備ステップにおいて行うことができる。重力湾曲法では、ガラスパネルを下方湾曲型(重力湾曲型)上で加熱するのが通常である。
【0053】
隔膜によってガラスパネルへ作用される正圧は、有利な実施形態では、10mbarから50mbarまでであり、好ましくは20mbarから30mbarまでである。これにより良好な結果が得られる(パネルの成形を有効に促進し、表面の欠陥を回避することができる)。正圧とは、周囲圧に対する正の圧力差をいう。
【0054】
基本的には、ガラスパネルは、加熱中に正圧を印加することもできる。正圧は、軟化温度に達してから効果を発揮させることもできるが、方法技術上の理由から、正圧を先に形成しておくほうがいっそう容易でありうる。
【0055】
有利な実施形態では、本発明により、上方成形ツールは、特にその上述したフード状の実施形態において、上述したスカート技術によってガラスパネルを吸引するように構成される。上方成形ツールを第1の下方型に接近させてガラスパネルを吸引することにより、ガラスパネルが上方成形ツールによって第1の下方型から受け取られ、上方成形ツールはガラスパネルとともに再び第1の下方型から取り外される。
【0056】
特に好ましい実施形態では、上記の第1の下方型は、凹フレーム状の接触面を有する重力湾曲型であり、この下方湾曲型の上でガラスパネルが軟化温度まで加熱され、重力湾曲によって予湾曲される。重力湾曲型は、典型的には、例えば台車上に支持されて可動に構成される。重力湾曲型は加熱のために炉を通過し、その際にガラスパネルが湾曲温度まで加熱され、その後、上方成形ツールの下方まで搬送される。
【0057】
産業上の大量生産の範囲において、有利には、複数のこうした可動の重力湾曲型が相互に接続され、いわゆる台車列が形成されている。台車列は、パネルを湾曲温度へ加熱する炉を通過し、本発明の下方湾曲型および上方成形ツールを備えた湾曲チャンバ内へ走行する。ついで、ガラスパネルは、湾曲チャンバ内で、上方成形ツールにより重力湾曲型から受け取られる。加熱と正圧支援による湾曲とが湾曲炉のそれぞれ異なるチャンバに空間的に分離されることにより、パネルが湾曲チャンバに入ってから加熱を行う場合よりも高いサイクル時間を達成できる。
【0058】
これに代えて、第1の下方型(特にフレーム状の接触面を有する重力湾曲型)と本発明の下方湾曲型とを唯一のツールに組み合わせることもできる。この場合、2つの型は相互に垂直方向に可動でなくてはならず、これにより、どの載置面にガラスパネルが載置されるかを調整できる。このようにすれば、パネルを、上方ツールによる持ち上げを必要とせずに、第1の下方型から本発明の下方湾曲型へ直接に引き渡すことができる。
【0059】
有利な実施形態では、本発明により、下方湾曲型が、上方成形ツールに保持されたガラスパネルに接近される。このために、特に好ましくは、上方成形ツールがガラスパネルとともに垂直に上方へ移動され、ついで下方湾曲型が水平に上方成形ツールの下方へ移動され、続いて上方成形ツールが垂直に下方湾曲型へと降下される。またこれに代えて、必要な水平移動を、上方成形ツールによって、または湾曲型および成形ツールの移動によって行うこともできる。
【0060】
この場合、下方湾曲型は、好ましくは上述した方式で、開口を有する全面にわたる作用面を有する吸引湾曲型として構成される。湾曲させるべき少なくとも1つのガラスパネルは、上方成形ツールの接触面と下方湾曲型の作用面との間の縁領域において押圧される。ガラスパネルの中央領域は、下方湾曲型の吸引作用により作用面へ吸引される。ガラスパネルが下方湾曲型と上方成形ツールとの間に固定されている間、ガラスパネルを保持する上方成形ツールの吸引作用は遮断されてもよいし、または維持されてもよい。
【0061】
下方湾曲型からガラスパネルに作用される吸引作用は、好ましくは100mbarから200mbarまで、特に好ましくは120mbarから150mbarまでである。
【0062】
ガラスパネルの冷却は、任意の方式で行うことができる。その際に、ガラスパネルは、本発明の下方湾曲型上に配置されていてもよいし、または本発明の上方成形ツールによって保持されていてもよいし、またはパネルが引き渡された別の型上に配置されていてもよい。冷却は、周囲温度においてまたは能動的な冷却によって行うことができる。別の下方型は、例えば、重力予湾曲のための第1の下方型と同形式もしくは同タイプであってよい。このようにすれば、一方でパネルを予湾曲させてプレス湾曲チャンバ内へ搬入し、他方でパネルをプレス湾曲チャンバから搬出して冷却するために、同じ台車列を使用することができる。
【0063】
本発明の装置は、複数の上方成形ツールおよび/または複数の下方湾曲型を含むことができる。装置は、本発明の下方湾曲型および本発明の上方成形ツールのほか、例えばスカート技術によって構成された昇降ツールを含むこともできる。これにより、先行の湾曲過程が完全に終了する前に湾曲過程を開始させ、これにより、高いサイクル時間を達成することができる。例えば、
・昇降ツールにより、重力湾曲型からパネルを持ち上げ、
・下方湾曲型を昇降ツールの下方へ移動させ、パネルを下方湾曲型に配置し、
・下方湾曲型をパネルととともに上方成形ツールの下方へ移動させ、
・パネルを下方湾曲型と上方成形ツールとの間で湾曲させ、
・上方成形ツールにより、パネルを下方湾曲型から持ち上げ、
・下方湾曲型を、中間時間において別のパネルを次の重力湾曲型から持ち上げていた昇降ツールの下方へ移動させ、
・パネルを上方成形ツールから重力湾曲型に配置する、
というシーケンスを選択することができる。こうした手法は、欧州特許出願公開第1836136号明細書(EP1836136A1)の
図4a〜
図4dに関連して説明されている。
【0064】
湾曲させるべきガラスパネルは、特には車両用パネル(車両ウィンドウパネル)、好ましくは自動車用パネルとして、またはその要素として設けられる。パネルは、典型的には、少なくとも0.8m
2の寸法、好ましくは1m
2から3m
2の寸法を有する。
【0065】
湾曲させるべきガラスパネルは、好ましい実施形態では、ウィンドウパネルにおいて通常そうであるようにソーダ石灰ガラスから形成される。典型的な湾曲温度は、ここでは500℃から700℃までであり、好ましくは550℃から650℃まで、例えば約630℃である。なお、湾曲させるべきガラスパネルは、ホウケイ酸ガラスまたは石英ガラスなど、異なる種類のガラスを含有してもよい。ガラスパネルの厚さは、典型的には0.2mmから10mmまで、好ましくは0.5mmから5mmまでである。
【0066】
本発明の方法は、また、特に上下に配置された複数のガラスパネル、例えば2つのガラスパネルを同時に形状一致するように湾曲させるように構成されている。このことは、2つ以上の単板を、その形状を相互に最適に調整しつつ、後にラミネートして合わせガラスとする場合に、特に望ましいことでありうる。ガラスパネルは、このために、相互に平面状に配置され、共通に湾曲される。ガラスパネル間には、分離剤、例えば分離パウダーまたは組織が配置され、これにより、湾曲後のガラスパネルを再び相互に解離させることができる。有利な実施形態では、方法は、上下に配置された複数のガラスパネル、特に上下に配置された2つのガラスパネルに適用され、各ガラスパネルが対で同時に湾曲される。
【0067】
当該方法は、特に好ましい実施形態では、欧州特許出願公開第1836136号明細書(EP1836136A1)に詳細に説明されている方法である。ここで、本発明の空気ガイドプレートを有するフード状の構成の上方成形ツールは、上掲明細書に説明されている上方型("forme superieure 11")の代わりに用いられる。本発明の下方湾曲型は、上掲明細書に説明されている下方型("forme inferieure 5,12")である。方法は、好ましくは欧州特許出願公開第1836136号明細書(EP1836136A1)に詳細に説明されている装置によって実行され、同様に、本発明のツールは、上掲明細書に説明されている上方型("forme superieure 11")の代わりに用いられ、本発明の下方湾曲型は、上掲明細書に説明されている下方型("forme inferieure 5,12")である。
【0068】
本発明はさらに、湾曲プロセス中にガラスパネルの表面に正圧を作用させるための隔膜の使用を含む。隔膜は、成形ツールの中空室の開放部を閉鎖しており、ここで、中空室内へ導入されるガスにより隔膜をガラスパネルの方向へ変形させてガラスパネルの表面に接触させることにより、正圧が形成される。
【0069】
以下に、本発明を図および実施例に則して詳細に説明する。図は、略示であり、縮尺通りではない。なお、図は本発明をいかなる意味においても限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】本発明の方法中の本発明の装置を示す断面図である。
【
図2】本発明の上方成形ツールの一構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の上方成形ツールの別の構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の上方成形ツールの別の構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の方法中の本発明の装置の別の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の方法の一実施形態を示すステップ図である。
【
図7】本発明の方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【0071】
図1には、本発明のガラスパネルIを湾曲させる方法における本発明の装置が示されている。
図2には、
図1の上方成形ツール3の詳細図が示されている。
【0072】
初期状態において平坦なガラスパネルIが、下方湾曲型1上に配置される(
図1のa)。下方湾曲型は、例えば、凹フレーム状の作用面または載置面2を有する重力湾曲型である。重力湾曲型において通常そうであるように、ガラスパネルIは、少なくとも軟化温度に相当する湾曲温度まで加熱される。続いて、軟化したガラスパネルIが、重力の作用のもと、載置面2にぴったりと適合する(
図1のb)。
【0073】
重力湾曲は、ガラスパネルIの、載置面2とは反対側の上方へ向かう表面Oに正圧を形成する上方成形ツール3によって支援される。上方成形ツール3は、ガラスパネルIへ向かう大面積の開放部(開口)4を有する中空室5を形成する釣鐘状またはフード状のカバー7を有する。カバー7の縁部は、開放部4を取り囲んでいる。中空室5は、カバー7の縁部に取り付けられた隔膜6によって閉鎖されている。
【0074】
カバー7は、厚さ3mmのみの鋼薄板から形成されており、このため成形ツール3は僅かな重量しか有さない。
【0075】
上方成形ツール3は、ガス、例えば加熱された圧縮空気を中空室5へ流入させることのできる流入管9を備えるように構成されている。可撓性の隔膜6が膨張し、ガラスパネルIの方向へ変形する。隔膜6がガラスパネルを下方湾曲型1へ押圧するので、望ましいパネル形状が純粋な重力湾曲の場合よりも迅速に達成される。流入管9の開口に対向するように、中空室5内に、流入する空気が衝突する衝突板11が配置されている。このようにして、均等な正圧が中空室5内に形成される。
【0076】
隔膜は、特殊鋼フェルトから、材料厚さ3mmで形成される。フェルトは、圧縮空気が隔膜6を通って中空室5から流出しうる箇所に、或る程度の大きさのガス透過性を有する。これにより隔膜の直上の圧力と直下の圧力との差が低減され、よって、ガラス表面Oでの圧痕を回避することができる。
【0077】
図3には、本発明の上方成形ツール3の別の構成が示されている。成形ツール3は、
図2と同様に形成されているが、ここでは、カバー7がガラスパネルIの側縁を超えないよう選定されている。したがって、湾曲させるべきガラスパネルIの周縁部が隔膜6と接触しない状態で、正圧が印加される。
【0078】
上方成形ツール3はさらに、カバー7を取り囲む空気ガイドプレート8を有する。吸入管10を介して、空気ガイドプレート8とカバー7との中間空間から空気を吸い出し、上方へ向かう空気流を形成することができる。成形ツール3は、こうした空気流が湾曲させるべきガラスパネルIの側縁を吸引するように構成されている。したがって、ガラスパネルIは、成形ツール3のカバー7の側縁に位置する接触面に吸着し、多段階の湾曲プロセスにおいて例えば保持または搬送される。こうした技術は、スカート技術とも称される。なお成形ツール3の接触面は、特に下方湾曲型1の作用面2が凹状に形成される場合、凸状に形成可能である。
【0079】
図4には、本発明の上方成形ツール3の別の構成が示されている。上述した構成とは異なり、成形ツール3は、単一の大面積の開放部4ではなく、付加的な凸状壁12を有し、この凸状壁は、下方湾曲型1およびガラスパネルIへ向かっていて、中空室5を画定する。当該壁には複数の開放部(開口)4が設けられており、これらの開放部4を通して、中空室5とは反対側の壁12の表面を覆う隔膜6を変形させるために、中空室5に流入するガスを流出させることができる。開放部4の大きさは例えば50mm
2である。開放部4の面積の割合は、(開放部4の面積を含めた)壁12の全面積の例えば20%である。成形ツールの材料厚さは例えば20mmである。
【0080】
この場合にも、
図3と同様の成形ツールは、吸入管10および空気ガイドプレート8を備える。
【0081】
図5には、本発明の方法中の本発明の装置の別の構成が示されている。上方成形ツールは
図3にしたがって構成されている。
図1とは異なり、下方湾曲型1はフレーム状の作用面2を有するのではなく、パネル表面Uの大部分に接触するように構成された、全面にわたって凹状の作用面2を有する。下方湾曲型1は、重力湾曲型ではなく、プレス湾曲および吸引湾曲のためのツールである。ガラスパネルIは、上方成形ツール3の接触面と作用面2との間の縁領域で押圧される。ガラスパネルIの、当該縁領域によって取り囲まれた中央領域には、作用面2の開放部(開口)を通してパネル表面Uに吸引作用が作用する。プレス作用と吸引作用との組み合わせにより、ガラスパネルIをきわめて迅速かつ効率的に、作用面2によって決定された形状に湾曲させることができる。ここで、吸引作用は、隔膜6の圧力によって支援される。
【0082】
また、図からは、空気ガイドプレート8によって形成された空気流がガラスパネルIの側縁をどのように吸引するかが見て取れる。つまり、ガラスパネルIを例えば成形ツール3に保持して、その間に下方湾曲型1を接近させることができる。
【0083】
図6には、本発明の方法の実施形態の各ステップが概略的に示されている。まず、初期状態では平坦な2つのガラスパネルI,IIが上下に配置され、凹フレーム状の載置面を有する重力湾曲型として構成された予湾曲型13上に位置決めされる(部分a)。予湾曲型13上のパネルは、湾曲温度、例えば600℃まで加熱され、重力によって下方湾曲型13の形状に適合化される(部分b)。すなわち、ガラスパネルI,IIは、重力湾曲によって予湾曲される。このために、予湾曲型13は、好ましくは可動に支持され、他の予湾曲型と接続されて1つの台車列となっている。予湾曲型13は、図示されていないトンネル炉を通過することにより湾曲温度まで加熱され、その後、本発明の装置が配置された、同様に図示されていない湾曲チャンバ内へ走行する。
【0084】
上記の湾曲チャンバ内では、ガラスパネルI,IIが、本発明の上方成形ツール3によって受け取られる。このとき、成形ツール3は上方から、予湾曲型13上のガラスパネルI,IIへ接近する(部分c)。成形ツール3は、
図3に示されるように構成されている。ここで説明しているスカート技術により、ガラスパネルI,IIは、成形ツール3の凸フレーム状の接触面へ吸引される。その後、成形ツール3は上方へ移動し、ガラスパネルI,IIは保持されて、上方へ移動することによって、予湾曲型13から持ち上げられる(部分d)。ガラスパネルI,IIが予湾曲型13から受け取られた後(部分e)、本発明によれば、下方湾曲型1が水平方向に成形ツール3の下方へ移動し、この成形ツール3が下方湾曲型1上へと降下する(部分f)。下方湾曲型1は、
図5と同様に、プレス湾曲型と吸引湾曲型との組み合わせとして構成されている。ガラスパネルI,IIは、本発明の成形ツール3と湾曲型1との間で、
図5に関連して説明したように最終形状へ湾曲させられる。続いて、成形ツール3が下方湾曲型1から再び持ち上げられ(部分g)、下方湾曲型1が水平方向に離脱していく。成形ツール3は続いて再び降下し、ガラスパネルI,IIを再び予湾曲型13上へ下ろして、吸引作用の遮断によりガラスパネルI,IIを予湾曲型13へ引き渡す(部分h)。その後、成形ツール3は上方へ移動し(部分i)、次のパネル対の湾曲プロセスのための準備が行われる。ガラスパネルI,IIは、可動の予湾曲型13上で湾曲チャンバから搬出され、予湾曲型13上で周囲温度まで冷却される。
【0085】
ここに概略的に示した各方法ステップは、欧州特許出願公開第1836136号明細書(EP1836136A1)に詳細に説明されている方法を反映している。ただし、そこで使用されている上方型(forme superieure 11)は本発明の上方成形ツール3によって置換されている。本発明の隔膜6は、方法の効率のいっそうの改善をもたらす。
【0086】
図7には、
図6の実施例のフローチャートが示されている。
【0087】
例
一連の試行において、種々の湾曲プロセスを相互に比較した。ガラスパネルIを配置したフレーム状の載置面2を有する重力湾曲型(下方湾曲型1)上で、湾曲プロセスを実行した。ガラスパネルIをそれぞれ温度Tまで加熱し、変形速度vを測定した。各湾曲プロセスは、上方成形ツールの構成、すなわち、
1.正圧を印加しない(上方成形ツール3なしの)、純粋な重力湾曲、
2.中空室5を形成するカバー7を有するが、隔膜6なしで、ガラスパネルIに直接に空気流を印加する、フード状の構成の上方成形ツールを用いた重力湾曲、
3.隔膜6を備えたフード状の上方成形ツール3を用いた、本発明の重力湾曲(
図2の実施形態)
において区別される。
【0088】
例2,例3では、空気は、同じ速度で中空室5へ導入されている。
【0089】
続いて、湾曲したパネルの光学特性を検査した。これについては、パネルの屈折を、パネルの主視界での位置分解によって測定した。最大値(limit value, max value)および変化率(rate of change, RoC;寸法80mm×80mmの正方形の測定領域での最大値と最小値との差)を求めた。双方とも、特に車両分野で使用される光学品質の評価基準となる値であって、当業者によく知られている。測定値が小さくなるにつれて、パネルの歪みもなくなり、よって相応にパネルの光学品質は良好となる。
【0090】
結果を表1にまとめる。
【0091】
【表1】
【0092】
表から理解されるように、本発明の方法によって著しい時間節約を達成できる。湾曲速度は、本発明の隔膜を使用した場合、それ以外を同じ試行条件として、空気流を直接に印加する場合に比べ、また純粋な重力湾曲の場合に比べてももちろん、格段に大きくなる。また、光学品質への障害は、空気流を直接に印加する場合に比べて格段に小さくなる。これらの結果は当業者には予測できない驚くべきことであった。