(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特開2011−076527号公報で提案される手法では、グループの代表的な評価値(ここでは、TTC)を用いて干渉性を予測するため、例えば、グループを構成する複数の物体における位置関係が考慮されていない。このように、干渉性に関する予測のきめ細かさという観点で、改良の余地が十分に残されている。
【0006】
本発明は上記した問題を解決するためになされたものであり、物体同士のグループ化による利便性を活かしつつも、きめ細かな干渉性の予測を行うことが可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明
の一態様に係る車両制御装置は、車両の外界状態を検出する外界状態検出部と、前記外界状態検出部による検出結果に基づいて1つ又は複数の物体を認識する物体認識部と、前記物体認識部により認識された1つ又は複数の前記物体が、前記車両に対して接触又は接近する可能性を予測する干渉性予測部を備える装置であって、前記物体認識部により認識された複数の前記物体のうち、所定の距離範囲内にある2つ以上の物体同士の位置関係から境界線が決定される、一体物としての統合物体を形成する統合物体形成部をさらに備え、前記干渉性予測部は、前記統合物体を構成する各々の前記物体に代わって、前記統合物体形成部により形成された前記統合物体が、前記車両に対して接触又は接近する可能性を予測
し、前記統合物体形成部は、前記所定の距離範囲内にある2つ以上の物体同士をすべて包含し、ポリゴンの形状を有する前記統合物体を形成し、前記統合物体形成部は、前記統合物体を構成する2つ以上の物体の中から、前記車両の位置を中心とする角度方向に対して所定の角度間隔おきに代表物体を抽出し、前記代表物体の位置から前記ポリゴンをなす少なくとも2つの頂点を決定する。
【0008】
このように構成したので、所定の距離範囲内にある2つ以上の物体同士の位置関係が考慮された境界線を有する統合物体を用いて、車両に対する干渉(接触又は接近)の可能性を予測可能である。これにより、物体同士のグループ化による利便性を活かしつつも、きめ細かな干渉性の予測を行うことができる。
また、ポリゴンの境界線が複数の直線成分の集合体であるので、干渉性の判定に要する演算量が少なくなる。また、所定の角度間隔にある位置にポリゴンの頂点を配置することができる。
【0009】
また、前記統合物体形成部は、前記車両の形状に応じて前記所定の距離範囲を設定し、前記統合物体を形成してもよい。車両が物体同士の隙間を通過できるか否かの判定結果が車両の形状に応じて異なる傾向を踏まえて、きめ細かな予測を行うことができる。
【0010】
また、前記統合物体形成部は、同一の半径であって各々の前記物体の位置を中心とする複数の円領域を画定し、前記円領域の重複部分を有する2つ以上の物体同士による前記統合物体を形成してもよい。これにより、簡易な演算方法を用いて物体同士のグループ化を行うことができる。
【0013】
また、前記統合物体形成部は、前記外界状態検出部の検出性能に応じて前記所定の角度間隔を設定し、前記ポリゴンをなす少なくとも2つの頂点を決定してもよい。物体同士を識別可能である角度方向の検出分解能が外界状態検出部の検出性能に応じて異なる傾向を踏まえて、適切な位置にポリゴンの頂点を配置することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る車両制御装置は、車両の外界状態を検出する外界状態検出部と、前記外界状態検出部による検出結果に基づいて1つ又は複数の物体を認識する物体認識部と、前記物体認識部により認識された1つ又は複数の前記物体が、前記車両に対して接触又は接近する可能性を予測する干渉性予測部を備える装置であって、前記物体認識部により認識された複数の前記物体のうち、所定の距離範囲内にある2つ以上の物体同士の位置関係から境界線が決定される、一体物としての統合物体を形成する統合物体形成部をさらに備え、前記干渉性予測部は、前記統合物体を構成する各々の前記物体に代わって、前記統合物体形成部により形成された前記統合物体が、前記車両に対して接触又は接近する可能性を予測し、前記統合物体形成部は、前記所定の距離範囲内にある2つ以上の物体同士をすべて包含し、ポリゴンの形状を有する前記統合物体を形成し、前記統合物体形成部は、前記統合物体を構成する2つ以上の物体の中から、前記車両に相対的に近い位置にある物体を代表物体として抽出し、前記代表物体の位置から前記ポリゴンをなす少なくとも1つの頂点を決定
する。これにより、車両との位置関係の観点から注意度が高い物体の存在を、ポリゴンの境界線の形状に反映させることができる。
【0015】
また、前記統合物体形成部は、前記代表物体の位置を中心とする円上であって、前記車両の位置に最も近い点を前記ポリゴンの頂点として決定してもよい。これにより、2つ以上の物体がある距離範囲(車両にとって手前側)をすべて網羅可能な境界線が設けられると共に、代表物体と境界線の間の距離を必ず所定値(円の半径)以上に保つことができる。
【0016】
また、前記統合物体形成部は、角度方向の最端側に対応する前記代表物体の位置を中心とする円上であって、最大角度又は最小角度に相当する位置にある1点ずつを前記ポリゴンの頂点として決定してもよい。これにより、2つ以上の物体がある角度範囲をすべて網羅可能な境界線が設けられると共に、代表物体と境界線の間の距離を必ず所定値(円の半径)以上に保つことができる。
【0017】
また、前記統合物体形成部は、角度方向の最端側に対応する前記代表物体の位置を中心とする円上に前記ポリゴンの頂点が複数存在する場合、隣接する頂点の間を円弧状に補間して得た1つ以上の補間点を前記ポリゴンの頂点として決定してもよい。これにより、角度分解能の観点から、代表物体と部分境界線の間の距離が短い箇所が生じるのを抑制できる。
【0018】
また、前記統合物体形成部は、前記統合物体を構成するすべての物体の位置よりも奥側にある少なくとも1点を前記ポリゴンの頂点として決定してもよい。これにより、2つ以上の物体がある距離範囲(車両にとって奥側)をすべて網羅可能な境界線が設けられる。
【0019】
また、前記統合物体形成部は、角度方向の最端側に対応する前記代表物体の位置と前記車両の位置の2点を結ぶ直線上であって、前記代表物体の位置から所定の長さだけ奥側にある1点を前記ポリゴンの頂点として決定してもよい。これにより、2つ以上の物体がある角度範囲をすべて網羅可能な境界線(ここでは、車両にとって奥側)が設けられる。
【0020】
また、前記統合物体形成部は、前記代表物体の位置から所定の長さだけ奥側にある1点が、前記車両が走行しようとするレーンの上に存在する場合、前記所定の長さを短縮することで、前記レーンの上に存在しない別の1点を前記ポリゴンの頂点として決定してもよい。これにより、境界線により画定される範囲を、レーンの他部分にまで不必要に拡大するのを防止できる。
【0021】
本発明の更に他の態様に係る車両制御装置は、車両の外界状態を検出する外界状態検出部と、前記外界状態検出部による検出結果に基づいて1つ又は複数の物体を認識する物体認識部と、前記物体認識部により認識された1つ又は複数の前記物体が、前記車両に対して接触又は接近する可能性を予測する干渉性予測部を備える装置であって、前記物体認識部により認識された複数の前記物体のうち、所定の距離範囲内にある2つ以上の物体同士の位置関係から境界線が決定される、一体物としての統合物体を形成する統合物体形成部をさらに備え、前記干渉性予測部は、前記統合物体を構成する各々の前記物体に代わって、前記統合物体形成部により形成された前記統合物体が、前記車両に対して接触又は接近する可能性を予測し、前記干渉性予測部は、前記統合物体の境界線のうち前記車両に面する部分と前記車両の間の位置関係から、前記車両に対して接触又は接近する可能性を予測
する。統合物体の境界線のうち干渉性の判定に最も効果的な部分を用いることで演算時間が短縮され、その分だけ早期に判定することができる。
【0022】
本発明の更に他の態様に係る車両制御装置は、車両の外界状態を検出する外界状態検出部と、前記外界状態検出部による検出結果に基づいて1つ又は複数の物体を認識する物体認識部と、前記物体認識部により認識された1つ又は複数の前記物体が、前記車両に対して接触又は接近する可能性を予測する干渉性予測部を備える装置であって、前記物体認識部により認識された複数の前記物体のうち、所定の距離範囲内にある2つ以上の物体同士の位置関係から境界線が決定される、一体物としての統合物体を形成する統合物体形成部をさらに備え、前記干渉性予測部は、前記統合物体を構成する各々の前記物体に代わって、前記統合物体形成部により形成された前記統合物体が、前記車両に対して接触又は接近する可能性を予測し、前記干渉性予測部による予測結果に応じて前記車両の挙動を制御する車両制御部をさらに備え
る。
【0023】
本発明に係る車両制御装置によれば、物体同士のグループ化による利便性を活かしつつも、きめ細かな干渉性の予測を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明に係る車両制御装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0026】
[車両制御装置10の構成]
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る車両制御装置10の構成を示すブロック図である。車両制御装置10は、車両100(
図4等)に組み込まれ、且つ、車両100の自動運転又は自動運転支援を実行可能に構成される。車両制御装置10は、制御システム12と、入力装置と、出力装置と、を備える。入力装置及び出力装置はそれぞれ、制御システム12に通信線を介して接続されている。
【0027】
入力装置は、外界センサ14と、ナビゲーション装置16と、車両センサ18と、通信装置20と、自動運転スイッチ22と、操作デバイス24に接続された操作検出センサ26と、を備える。
【0028】
出力装置は、図示しない車輪を駆動する駆動力装置28と、前記車輪を操舵する操舵装置30と、前記車輪を制動する制動装置32と、を備える。
【0029】
<入力装置の具体的構成>
外界センサ14は、車両100の外界状態を示す情報(以下、外界情報)を取得する複数のカメラ33と複数のレーダ34を備え、取得した外界情報を制御システム12に出力する。外界センサ14は、さらに、複数のLIDAR(Light Detection and Ranging;光検出と測距/Laser Imaging Detection and Ranging;レーザ画像検出と測距)装置を備えてもよい。
【0030】
ナビゲーション装置16は、車両100の現在位置を検出可能な衛星測位装置と、ユーザインタフェース(例えば、タッチパネル式のディスプレイ、スピーカ及びマイク)を含んで構成される。ナビゲーション装置16は、車両100の現在位置又はユーザによる指定位置に基づいて、指定した目的地までの経路を算出し、制御システム12に出力する。ナビゲーション装置16により算出された経路は、経路情報として記憶装置40の経路情報記憶部44に記憶される。
【0031】
車両センサ18は、車両100の速度(車速)を検出する速度センサ、加速度を検出する加速度センサ、横Gを検出する横Gセンサ、垂直軸周りの角速度を検出するヨーレートセンサ、向き・方位を検出する方位センサ、勾配を検出する勾配センサを含み、各センサからの検出信号を制御システム12に出力する。これらの検出信号は、自車状態情報Ivhとして記憶装置40の自車状態情報記憶部46に記憶される。
【0032】
通信装置20は、路側機、他車、及びサーバを含む外部装置と通信可能に構成されており、例えば、交通機器に関わる情報、他車に関わる情報、プローブ情報又は最新の地図情報を送受信する。なお、地図情報は、ナビゲーション装置16に記憶されると共に、地図情報として記憶装置40の地図情報記憶部42にも記憶される。
【0033】
操作デバイス24は、アクセルペダル、ステアリングホイール(ハンドル)、ブレーキペダル、シフトレバー、及び方向指示レバーを含んで構成される。操作デバイス24には、ドライバによる操作の有無や操作量、操作位置を検出する操作検出センサ26が取り付けられている。
【0034】
操作検出センサ26は、検出結果としてアクセル踏込量(アクセル開度)、ハンドル操作量(操舵量)、ブレーキ踏込量、シフト位置、右左折方向等を車両制御部60に出力する。
【0035】
自動運転スイッチ22は、例えば、インストルメントパネルに設けられ、ドライバを含むユーザが、マニュアル操作により、非自動運転モード(手動運転モード)と自動運転モードを切り替えるための押しボタンスイッチである。
【0036】
この実施形態では、自動運転スイッチ22が押される度に、自動運転モードと非自動運転モードが切り替わるように設定されている。これに代わって、ドライバの自動運転意思確認の確実化のために、例えば、2度押しで非自動運転モードから自動運転モードに切り替わり、1度押しで自動運転モードから非自動運転モードに切り替わるように設定することもできる。
【0037】
自動運転モードは、ドライバが、操作デバイス24(具体的には、アクセルペダル、ステアリングホイール及びブレーキペダル)の操作を行わない状態で、車両100が制御システム12による制御下に走行する運転モードである。換言すれば、自動運転モードは、制御システム12が、逐次決定される行動計画(短期的には、後述する短期軌道St)に基づいて、駆動力装置28、操舵装置30、及び制動装置32の一部又は全部を制御する運転モードである。
【0038】
なお、自動運転モード中に、ドライバが、操作デバイス24の操作を開始した場合には、自動運転モードは自動的に解除され、非自動運転モード(手動運転モード)に切り替わる。
【0039】
<出力装置の具体的構成>
駆動力装置28は、駆動力ECU(電子制御装置;Electronic Control Unit)と、エンジン・駆動モータを含む駆動源から構成される。駆動力装置28は、車両制御部60から入力される車両制御値Cvhに従って車両100が走行するための走行駆動力(トルク)を生成し、トランスミッションを介し、或いは直接的に車輪に伝達する。
【0040】
操舵装置30は、EPS(電動パワーステアリングシステム)ECUと、EPS装置とから構成される。操舵装置30は、車両制御部60から入力される車両制御値Cvhに従って車輪(操舵輪)の向きを変更する。
【0041】
制動装置32は、例えば、油圧式ブレーキを併用する電動サーボブレーキであって、ブレーキECUと、ブレーキアクチュエータとから構成される。制動装置32は、車両制御部60から入力される車両制御値Cvhに従って車輪を制動する。
【0042】
<制御システム12の構成>
制御システム12は、1つ又は複数のECUにより構成され、各種機能実現部の他、記憶装置40等を備える。なお、機能実現部は、この実施形態では、CPU(中央処理ユニット)が記憶装置40に記憶されているプログラムを実行することにより機能が実現されるソフトウエア機能部であるが、集積回路等からなるハードウエア機能部により実現することもできる。
【0043】
制御システム12は、記憶装置40及び車両制御部60の他、外界認識部52と、認識結果受信部53と、局所環境マップ生成部54と、統括制御部70と、長期軌道生成部71と、中期軌道生成部72と、短期軌道生成部73と、を含んで構成される。ここで、統括制御部70は、認識結果受信部53、局所環境マップ生成部54、長期軌道生成部71、中期軌道生成部72、及び短期軌道生成部73のタスク同期を制御することで、各部の統括制御を行う。
【0044】
外界認識部52は、車両制御部60からの自車状態情報Ivhを参照した上で、外界センサ14からの外界情報(画像情報を含む)に基づき、車両100の両側のレーンマーク(白線)を認識すると共に、停止線までの距離、走行可能領域を含む「静的」な外界認識情報を生成する。これと併せて、外界認識部52は、外界センサ14からの外界情報に基づき、障害物(駐停車車両を含む)、交通参加者(人、他車両)、及び信号機の灯色{青(緑)、黄(オレンジ)、赤}等の「動的」な外界認識情報を生成する。
【0045】
なお、静的及び動的な外界認識情報はそれぞれ、外界認識情報Iprとして記憶装置40の外界認識情報記憶部45に記憶される。
【0046】
認識結果受信部53は、演算指令Aaに応答して、所定の演算周期Toc(基準周期又は基準演算周期)内に受信した外界認識情報Iprを更新カウンタのカウント値と共に、統括制御部70に出力する。ここで、演算周期Tocは、制御システム12の内部での基準の演算周期であり、例えば、数10ms程度の値に設定されている。
【0047】
局所環境マップ生成部54は、統括制御部70からの演算指令Abに応答して、自車状態情報Ivh及び外界認識情報Iprを参照し、演算周期Toc内に局所環境マップ情報Iemを生成して、更新カウンタのカウント値と共に、統括制御部70に出力する。すなわち、制御の開始時には、局所環境マップ情報Iemが生成されるまでに、演算周期2×Tocを要する。
【0048】
概略的に言えば、局所環境マップ情報Iemは、外界認識情報Iprに対して自車状態情報Ivhを合成した情報である。局所環境マップ情報Iemは、記憶装置40の局所環境マップ情報記憶部47に記憶される。
【0049】
長期軌道生成部71は、統括制御部70からの演算指令Acに応答して、局所環境マップ情報Iem(外界認識情報Iprのうち静的な成分のみ利用)、自車状態情報Ivh、及び地図情報記憶部42に記憶されている道路地図(カーブの曲率等)を参照して、相対的に最も長い演算周期(例えば、9×Toc)で長期軌道Ltを生成する。そして、長期軌道生成部71は、生成した長期軌道Ltを更新カウンタのカウント値と共に、統括制御部70に出力する。なお、長期軌道Ltは、軌道情報として記憶装置40の軌道情報記憶部48に記憶される。
【0050】
中期軌道生成部72は、統括制御部70からの演算指令Adに応答して、局所環境マップ情報Iem(外界認識情報Iprのうち、動的な成分及び静的な成分の両方を利用)、自車状態情報Ivh、及び長期軌道Ltを参照して、相対的に中位の演算周期(例えば、3×Toc)で中期軌道Mtを生成する。そして、中期軌道生成部72は、生成した中期軌道Mtを更新カウンタのカウント値と共に、統括制御部70に出力する。なお、中期軌道Mtは、長期軌道Ltと同様に、軌道情報として軌道情報記憶部48に記憶される。
【0051】
短期軌道生成部73は、統括制御部70からの演算指令Aeに応答して、局所環境マップ情報Iem(外界認識情報Iprのうち、動的な成分及び静的な成分の両方を利用)、自車状態情報Ivh、及び中期軌道Mtを参照し、相対的に最も短い演算周期(例えば、Toc)で短期軌道Stを生成する。そして、短期軌道生成部73は、生成した短期軌道Stを更新カウンタのカウント値と共に、統括制御部70及び車両制御部60に同時に出力する。なお、短期軌道Stは、長期軌道Lt及び中期軌道Mtと同様に、軌道情報として軌道情報記憶部48に記憶される。
【0052】
なお、長期軌道Ltは、例えば10秒間程度の走行時間における軌道を示し、乗り心地・快適性を優先した軌道である。また、短期軌道Stは、例えば1秒間程度の走行時間における軌道を示し、車両ダイナミクスの実現及び安全性の確保を優先した軌道である。中期軌道Mtは、例えば5秒間程度の走行時間における軌道を示し、長期軌道Lt及び短期軌道Stに対する中間的な軌道である。
【0053】
短期軌道Stは、短周期Ts(=Toc)毎の、車両100の目標挙動を示すデータセットに相当する。短期軌道Stは、例えば、縦方向(X軸)の位置x、横方向(Y軸)の位置y、姿勢角θz、速度Vs、加速度Va、曲率ρ、ヨーレートγ、操舵角δstをデータ単位とする軌道点列(x,y,θz,Vs,Va,ρ,γ,δst)である。また、長期軌道Lt又は中期軌道Mtは、周期がそれぞれ異なるものの、短期軌道Stと同様に定義されたデータセットである。
【0054】
車両制御部60は、短期軌道St(軌道点列)にて特定される挙動に従って車両100が走行可能となる車両制御値Cvhを決定し、得られた車両制御値Cvhを駆動力装置28、操舵装置30、及び制動装置32に出力する。
【0055】
<主要な特徴部>
図2は、
図1の車両制御装置10における主要な特徴部を示す機能ブロック図である。車両制御装置10は、外界状態検出部80と、物体認識部82と、統合物体形成部84と、情報合成部86と、干渉性予測部88と、軌道生成部90と、車両制御部60と、を備える。
【0056】
外界状態検出部80は、
図1に示す外界センサ14に相当し、車両100の外界状態を検出する。物体認識部82は、
図1に示す外界認識部52に相当し、外界状態検出部80による検出結果に対して公知の認識手法を適用することで、1つ又は複数の物体を認識する。
【0057】
統合物体形成部84及び情報合成部86は、
図1に示す局所環境マップ生成部54に相当する。統合物体形成部84は、物体認識部82による認識結果を含む外界認識情報Iprと、車両100に関する自車状態情報Ivhを用いて、複数の物体のうち特定の物体同士を統合する。情報合成部86は、車両100の外界にある物体に関する情報(以下、物体情報)又はレーンに関する情報(以下、車線情報)を含む外界認識情報Iprを合成し、局所環境マップ情報Iemを作成する。
【0058】
干渉性予測部88及び軌道生成部90は、
図1に示す短期軌道生成部73(又は中期軌道生成部72)に相当する。干渉性予測部88は、局所環境マップ情報Iemと自車状態情報Ivhを用いて、1つ又は複数の物体が車両100に対して接触又は近接する可能性(以下、「干渉可能性」ともいう)を予測する。軌道生成部90は、干渉性予測部88による予測結果を考慮して、車両100の挙動制御に供される走行軌道を生成する。
【0059】
[車両制御装置10の動作]
この実施形態における車両制御装置10は、以上のように構成される。続いて、車両制御装置10(特に、
図2に示す機能ブロック図)の動作について、
図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0060】
図3のステップS1において、外界状態検出部80(具体的には、カメラ33又はレーダ34)は、車両100の外界状態を検出する。以下、外界状態検出部80による検出結果について、
図4を参照しながら説明する。
【0061】
図4に示すように、レーン102上を走行する車両100の周辺には、複数のパイロン104が配置されている。二点鎖線で囲む領域は、車両100上の検出基準位置106を中心とする概略扇形状を有し、車両100の外界にある物体を検出可能な領域(以下、検出可能領域108という)に相当する。本図の例では、外界状態検出部80は、検出可能領域108内にある13個のパイロン104を検出する。
【0062】
図3のステップS2において、物体認識部82は、ステップS1での検出結果に対して公知の認識手法を適用することで、1つ又は複数の物体(ここでは、13個のパイロン104)を認識する。以下、物体認識部82による認識結果について、
図5を参照しながら説明する。
【0063】
図5に示す仮想空間110は、例えば、車両100の位置・姿勢を基準とするローカル座標系によって定義される平面空間である。仮想空間110上では、13個のパイロン104(
図4)が物体集合112として認識される。二点鎖線で示す円弧は、検出基準位置106からの等距離線に相当する。つまり、13個のパイロン104はいずれも、車両100から略等距離に配置されている。以下、
図5以降の図面において、説明及び図示の便宜上、各々の物体の形状を単なる記号(例えば、「×」「△」)で表記する場合がある。
【0064】
図3のステップS3において、統合物体形成部84は、ステップS2で認識された物体集合112(1つ又は複数の物体)のうち特定の物体同士を統合し、一体物としての統合物体U1、U2を形成する。具体的には、統合物体形成部84は、所定の距離範囲内にある2つ以上の物体同士をすべて包含し、ポリゴンの形状を有する統合物体U1、U2を形成する。以下、統合物体U1、U2の形成方法について、
図6A−
図12を参照しながら詳細に説明する。
【0065】
[1]先ず、統合物体形成部84は、車両100の形状に応じて所定の距離範囲を設定する。具体的には、統合物体形成部84は、同一の半径R1であって各々の位置を中心とする複数の円領域114を画定し、重複部分115、116を有する2つ以上の物体同士をグループ化する。
【0066】
図6Aに示すように、仮想空間110上には、物体D1、D2、D3の位置を中心とし、半径がいずれもR1である3つの円領域114が画定されている。物体D1、D2の関係において、2つの円領域114、114は、部分的に重なり合う重複部分115(ハッチングを付した領域)を有する。物体D2、D3の関係において、2つの円領域114、114は、部分的に重なり合う重複部分116(ハッチングを付した領域)を有する。
【0067】
他の物体についても同様にして、任意の1つの円領域114に関して、少なくとも1つの円領域114が重なる位置関係にある場合、これらの物体同士(ここでは、物体D1−D3)は、1つのグループとして分類される。
【0068】
図6Bに示すように、半径R1は、車両100の車幅2・Wに一定のマージン値M1を加算した値である。つまり、物体同士の間隔がR1よりも大きい場合に車両100がその隙間を通過できる一方、物体同士の間隔がR1以下である場合に車両100がその隙間を通過できないと考えられる。なお、半径R1は、車幅に限られず、車長、或いはこれらの組み合わせを含む、車両100の形状に応じて任意に設定してもよい。
【0069】
図7に示すように、物体集合112をなす13個の物体は、車両100の正面前方にある9個で構成される統合グループ118と、車両100の右斜め前方にある4個で構成される統合グループ120に分類される。以下、説明の便宜上、統合グループ118に属する9個の物体を「物体D1−D9」と表記し、統合グループ120に属する4個の物体を「物体E1−E4」と表記する。
【0070】
このように、統合物体形成部84は、同一の半径R1であって各々の物体D1−D9、E1−E4の位置を中心とする複数の円領域114を画定し、円領域114の重複部分115、116を有する2つ以上の物体同士による統合物体U1、U2を形成してもよい。これにより、簡易な演算方法を用いて物体同士のグループ化を行うことができる。
【0071】
また、統合物体形成部84は、車両100の形状に応じて所定の距離範囲(円領域114の半径R1)を設定し、統合物体U1、U2を形成してもよい。車両100が物体同士の隙間を通過できるか否かの判定結果がその車両100の形状に応じて異なる傾向を踏まえて、きめ細かな予測を行うことができる。
【0072】
[2]次いで、統合物体形成部84は、各々の統合グループ118、120を構成する2つ以上の物体D1−D9、E1−E4の中から、検出基準位置106を中心とする角度方向に対して、所定の角度間隔おきに代表物体を抽出する。ここで、「代表物体」とは、ポリゴンの頂点Vd1−Vd7、Ve1−Ve7(
図12)を決定するための代表的な物体であり、この代表物体の位置がポリゴンの形状を特徴付ける。
【0073】
図8に示すように、仮想空間110上において、車両100の車体中心線を基準とする角度方向(θ)を定義する。例えば、時計回り(右旋回方向)を「正方向」とし、反時計回り(左旋回方向)を「負方向」とする。本図では、他の物体「×」と明確に区別するため、代表物体を「△」で表記する。
【0074】
統合グループ118に属する物体D1−D9のうち、最小角度(負方向)にある物体D1と、最大角度(正方向)にある物体D9と、物体D1、D9の中間位置にある物体D5が、代表物体としてそれぞれ抽出される。同様に、統合グループ120に属する物体E1−E4のうち、最小角度(負方向)にある物体E1と、最大角度(正方向)にある物体E4が、代表物体としてそれぞれ抽出される。
【0075】
ここで、隣接する代表物体同士、具体的には(1)代表物体D1と代表物体D5、(2)代表物体D5と代表物体D9、(3)代表物体E1と代表物体E4、の角度間隔はいずれも、Δθ(例えば、10[deg])に等しい値又はΔθに近い値である。なお、Δθは、外界状態検出部80が物体同士を識別可能である角度方向の検出分解能に相当する。
【0076】
このように、統合物体形成部84は、統合物体U1、U2を構成する2つ以上の物体D1−D9、E1−E4の中から、車両100の位置(検出基準位置106)を中心とする角度方向(θ)に対して所定の角度間隔Δθおきに代表物体D1、D5、D9、E1、E4を抽出し、代表物体の位置からポリゴンをなす少なくとも2つの頂点を決定してもよい。これにより、所定の角度間隔Δθにある位置にポリゴンの頂点を配置することができる。
【0077】
また、統合物体形成部84は、外界状態検出部80の検出性能に応じて所定の角度間隔Δθを設定し、ポリゴンをなす少なくとも2つの頂点を決定してもよい。物体同士を識別可能である角度方向の検出分解能が外界状態検出部80の検出性能に応じて異なる傾向を踏まえて、適切な位置にポリゴンの頂点を配置することができる。
【0078】
[3]次いで、統合物体形成部84は、必要に応じて、残りの物体(D2−D4、D6−D8、E2、E3)の中から代表物体を追加的に抽出する。
【0079】
図9に示すように、物体E3は、統合グループ120に属する物体E1−E4の中で、車両100に最も近い位置にある。この場合、先に抽出されていた2つの代表物体E1、E4の他に、未だ抽出されていなかった物体E3が代表物体として新たに追加される。
【0080】
このように、統合物体形成部84は、統合物体U1、U2を構成する2つ以上の物体D1−D9、E1−E4の中から、車両100に相対的に近い位置にある物体E3を代表物体として抽出し、代表物体の位置からポリゴンをなす少なくとも1つの頂点を決定してもよい。これにより、車両100との位置関係の観点から注意度が高い物体の存在を、ポリゴンの境界線136、138の形状に反映させることができる。
【0081】
[4]次いで、統合物体形成部84は、抽出した代表物体(統合グループ118の3つ、統合グループ120の3つ)の位置に基づいて、ポリゴンの境界線136、138(
図12)の一部を決定する。
【0082】
図10Aに示すように、仮想空間110上には、代表物体D1、D5の位置を中心とし、半径がいずれもR2である2つの円122が描画されている。線分124は、検出基準位置106を一端とし、代表物体D1の位置を他端とする直線である。線分126は、検出基準位置106を一端とし、代表物体D5の位置を他端とする直線である。線分128は、検出基準位置106を通り、代表物体D1に対応する円122に接する直線(いわゆる接線)である。
【0083】
図10Bに示すように、半径R2は、車両100の車幅半分Wに一定のマージン値M2を加算した値である。つまり、車体中心線を基準とする場合、車両100の車幅方向端部(ここでは、右側端部)が代表物体D1に接触しないための必要最小限の幅と考えられる。なお、半径R2は、車幅に限られず、車長、或いはこれらの組み合わせを含む、車両100の形状に応じて任意に設定してもよい。
【0084】
図11に示すように、統合グループ118に対応するポリゴンの頂点の一部が決定される。頂点Vd1は、角度方向の最端側(負方向)に対応する代表物体D1の位置を中心とする円122上であって、最小角度に相当する位置にある点である。頂点Vd2は、代表物体D1の位置を中心とする円122上であって、車両100の位置(ここでは、検出基準位置106)に最も近い点である。頂点Vd3は、代表物体D5の位置を中心とする円122上であって、検出基準位置106に最も近い点である。頂点Vd4は、代表物体D9の位置を中心とする円122上であって、検出基準位置106に最も近い点である。頂点Vd5は、角度方向の最端側(正方向)に対応する代表物体D9の位置を中心とする円122上であって、最大角度に相当する位置にある点である。
【0085】
また、頂点Ve1は、角度方向の最端側(負方向)に対応する代表物体E1の位置を中心とする円122上であって、最小角度に相当する位置にある点である。頂点Ve2は、代表物体E1の位置を中心とする円122上であって、検出基準位置106に最も近い点である。頂点Ve3は、代表物体E3の位置を中心とする円122上であって、検出基準位置106に最も近い点である。頂点Ve4は、代表物体E4の位置を中心とする円122上であって、検出基準位置106に最も近い点である。頂点Ve5は、角度方向の最端側(正方向)に対応する代表物体E4の位置を中心とする円122上であって、最大角度に相当する位置にある点である。
【0086】
このように、統合物体形成部84は、代表物体の位置を中心とする同じ半径R2の円122上であって、車両100の位置に最も近い点をポリゴンの頂点Vd2−Vd4、Ve2−Ve4として決定してもよい。これにより、2つ以上の物体がある距離範囲(車両100にとって手前側)をすべて網羅可能な境界線136、138が設けられると共に、代表物体と境界線136、138の間の距離を必ず所定値(円122の半径R2)以上に保つことができる。
【0087】
また、統合物体形成部84は、角度方向の最端側に対応する代表物体の位置を中心とする同じ半径R2の円上であって、最大角度又は最小角度に相当する位置にある1点ずつをポリゴンの頂点Vd1、Vd5、Ve1、Ve5として決定してもよい。これにより、2つ以上の物体がある角度範囲をすべて網羅可能な境界線136、138が設けられると共に、代表物体と境界線136、138の間の距離を必ず所定値(円122の半径R2)以上に保つことができる。
【0088】
[5]次いで、統合物体形成部84は、抽出した代表物体(統合グループ118の3つ、統合グループ120の3つ)の位置に基づいて、ポリゴンの境界線136、138(
図12)の残り部分を決定する。
【0089】
図12に示すように、統合グループ118に対応するポリゴンの頂点の全部が決定される。頂点Vd6は、角度方向の最端側(正方向)に対応する代表物体D9の位置と、検出基準位置106の2点を結ぶ直線131上であって、代表物体D9の位置から所定の長さだけ奥側にある点である。頂点Vd7は、角度方向の最端側(負方向)に対応する代表物体D1の位置と、検出基準位置106の2点を結ぶ直線132上であって、代表物体D1の位置から所定の長さだけ奥側にある点である。
【0090】
また、頂点Ve6は、角度方向の最端側(正方向)に対応する代表物体E4の位置と、検出基準位置106の2点を結ぶ直線133上であって、代表物体E4の位置から所定の長さだけ奥側にある点である。頂点Ve7は、角度方向の最端側(負方向)に対応する代表物体E1の位置と、検出基準位置106の2点を結ぶ直線134上であって、代表物体E1の位置から所定の長さだけ奥側にある点である。
【0091】
統合グループ118に関して、決定された頂点Vd1−Vd7を線分で順次接続することで、七角形状の境界線136が画定される。同様に、統合グループ120に関して、決定された頂点Ve1−Ve7を線分で順次接続することで、七角形状の境界線138が画定される。つまり、統合物体形成部84は、物体集合112(
図5)のうち特定の物体同士を統合し、一体物としての統合物体U1、U2を形成する。
【0092】
ここで、統合物体形成部84は、統合物体U1、U2を構成するすべての物体D1−D9、E1−E4の位置よりも奥側にある少なくとも1点をポリゴンの頂点Vd6、Vd7、Ve6、Ve7として決定してもよい。これにより、2つ以上の物体がある距離範囲(車両100にとって奥側)をすべて網羅可能な境界線136、138が設けられる。
【0093】
また、統合物体形成部84は、角度方向(θ)の最端側に対応する代表物体の位置と車両100の位置の2点を結ぶ直線131−134上であって、代表物体の位置から所定の長さだけ奥側にある1点をポリゴンの頂点Vd6、Vd7、Ve6、Ve7として決定してもよい。これにより、2つ以上の物体がある角度範囲をすべて網羅可能な境界線136、138(ここでは、車両100にとって奥側)が設けられる。
【0094】
図3のステップS4において、情報合成部86は、物体情報(ステップS2での認識結果、ステップS3での形成結果)及び車線情報を含む各種情報を合成することで、局所環境マップ情報Iemを生成する。この局所環境マップ情報Iemには、[1]統合物体U1、[2]統合物体U2、[3]物体集合112のうち、物体D1−D9、E1−E4を除く個別物体、に関する物体情報が含まれる点に留意する。
【0095】
図3のステップS5において、干渉性予測部88は、ステップS4での合成により得られる局所環境マップ情報Iemを用いて、物体集合112が車両100に対して接触又は近接する可能性を予測する。ここで、統合物体U1、U2が形成されている場合、干渉性予測部88は、統合物体U1、U2を構成する各々の物体D1−D9、E1−E4に代わって、統合物体U1、U2が車両100に対して接触又は接近する可能性を予測する。
【0096】
図13に示すように、仮想空間110上では、いずれも七角形状である2つの統合物体U1、U2が配置されている。統合物体U1の境界線136のうち、太線で示した箇所は、車両100に面する部分(以下、対面部分140)である。統合物体U2の境界線138のうち、太線で示した箇所は、車両100に面する部分(以下、対面部分142)である。
【0097】
ここで、干渉性予測部88は、統合物体U1、U2の境界線136、138のうち車両100に面する部分(対面部分140、142)と、車両100の間の位置関係から、車両100に対して接触又は接近する可能性を予測してもよい。統合物体U1、U2の境界線136、138のうち干渉性の判定に最も効果的な部分を用いることで演算時間が短縮され、その分だけ早期に判定することができる。
【0098】
特に、R2>W(
図10B)の大小関係を満たしており、車両100の車体幅が予め考慮された境界線136、138が設けられている。これにより、車両100が点形状であるとみなして、線状の走行軌道との位置関係に基づいて、統合物体U1、U2に対する干渉性を予測・評価することができる。
【0099】
図3のステップS6において、短期軌道生成部73(又は中期軌道生成部72)は、ステップS5での予測結果に基づいて、車両100の挙動制御に供される短期軌道St(又は中期軌道Mt)を生成する。その後、車両制御部60は、短期軌道生成部73により生成された短期軌道Stに基づいて、換言すれば、干渉性予測部88による予測結果に応じて、車両100の挙動を制御する。
【0100】
図13に示す短期軌道Stは、自車位置144にある車両100が、統合物体U1、U2の隙間146を円滑に通過可能となる軌道を示す。これにより、車両100は、車両制御部60の自動運転制御により、複数のパイロン104(
図4)との接触を回避しながら、レーン102上を円滑に走行できる。
【0101】
[この車両制御装置10による効果]
以上のように、車両制御装置10は、[1]車両100の外界状態を検出する外界状態検出部80と、[2]外界状態検出部80による検出結果に基づいて1つ又は複数の物体D1−D9、E1−E4を認識する物体認識部82と、[3]認識された物体D1−D9、E1−E4が、車両100に対して接触又は接近する可能性を予測する干渉性予測部88と、を備える。
【0102】
そして、車両制御装置10は、[4]複数の物体D1−D9、E1−E4のうち、所定の距離範囲(R1)内にある2つ以上の物体同士の位置関係から境界線136、138が決定される、一体物としての統合物体U1、U2を形成する統合物体形成部84をさらに備え、[5]干渉性予測部88は、統合物体U1、U2を構成する各々の物体D1−D9(E1−E4)に代わって、統合物体U1、U2が車両100に対して接触又は接近する可能性を予測する。
【0103】
また、車両制御装置10を用いた車両制御方法は、[4]複数の物体D1−D9、E1−E4のうち、所定の距離範囲(R1)内にある2つ以上の物体同士の位置関係から境界線136、138が決定される、一体物としての統合物体U1、U2を形成する形成ステップ(S3)と、[5]統合物体U1、U2を構成する各々の物体D1−D9(E1−E4)に代わって、統合物体U1、U2が車両100に対して接触又は接近する可能性を予測する予測ステップ(S5)と、を1つ又は複数のコンピュータが実行する。
【0104】
このように構成したので、所定の距離範囲(R1)内にある2つ以上の物体同士の位置関係が考慮された境界線136、138を有する統合物体U1、U2を用いて、車両100に対する干渉(接触又は接近)の可能性を予測可能である。これにより、物体同士のグループ化による利便性を活かしつつも、きめ細かな干渉性の予測を行うことができる。
【0105】
特に、統合物体形成部84は、物体D1−D9同士、物体E1−E4同士をすべて包含し、ポリゴンの形状を有する統合物体U1、U2を形成することが一層好ましい。ポリゴンの境界線136、138が複数の直線成分の集合体であるので、干渉性の判定に要する演算量が少なくなるためである。
【0107】
<第1改良例>
図14に示すように、車両100が、逆C字状に湾曲するレーン150上を走行している場合を想定する。レーン150の湾曲内側にあるレーン外領域152には、5つの物体F1−F5(「×」印で表記)が配置されている。5つの物体F1−F5は、所定の位置関係を満たすため、上記したグループ化(つまり、統合物体U3の形成)が可能であったとする。
【0108】
頂点Vf1、Vf2は、代表物体F1の位置から決定された2点である。頂点Vf3は、代表物体F3の位置から決定された1点である。頂点Vf4は、代表物体F5の位置から決定された1点である。頂点Vf6は、角度方向の最端側(負方向)に対応する代表物体F1の位置と、検出基準位置106の2点を結ぶ直線154上であって、代表物体F1の位置から所定の長さだけ奥側にある1点である。
【0109】
頂点候補158は、角度方向の最端側(正方向)に対応する代表物体F5の位置と、検出基準位置106の2点を結ぶ直線156上であって、代表物体F5の位置から所定の長さだけ奥側にある1点である。ところが、頂点候補158がレーン150の上に位置するので、車両100の走行可能範囲を不必要に制限する可能性がある。
【0110】
そこで、統合物体形成部84は、代表物体F5の位置から所定の長さだけ奥側にある1点(頂点候補158)が、車両100が走行しようとするレーン150の上に存在する場合、所定の長さを短縮することで、レーン150の上に存在しない別の1点をポリゴンの頂点Vf5として決定してもよい。これにより、境界線160により画定される範囲を、レーン150の他部分にまで不必要に拡大するのを防止できる。
【0111】
<第2改良例>
図15Aに示すように、仮想空間110上には、代表物体D1の位置を中心とする1つの円122(半径R2)が描画されている。頂点Vd1、Vd2はそれぞれ、
図10Aの場合と同様に定義された点である。ここで、頂点Vd1、Vd2がなす扇形の中心角をφと定義する。
【0112】
例えば、境界線136(
図12)を決定する際に2つの頂点Vd1、Vd2を直線状に結ぶ場合、中心角φの値が大きいほど、扇状の領域が忠実に表現されない傾向がある。このとき、代表物体D1と部分境界線162の間の距離が短い箇所(部分境界線162の中点)が存在するので、予測結果に反して統合物体U1との干渉が生じる懸念がある。
【0113】
そこで、統合物体形成部84は、代表物体D1に関して、2つの頂点Vd1、Vd2の間を円弧状に沿って補間し、ポリゴンの頂点Vd8、Vd9を追加してもよい。この場合、隣接する頂点同士がなす中心角φが閾値φthを超えないように、1つ以上の補間点を追加する。なお、閾値φthは、予め設定された正値(例えば、φth=45[deg])である。
【0114】
例えば、「閾値φthを超えずに、且つ、閾値φthに最も近い角度になるように、中心角φを等分割する」という決定規則を適用することができる。中心角φと閾値φthが、2・φth<φ<3・φthの大小関係を満たす場合、中心角φを3等分すればよい。
【0115】
図15Bに示すように、円122上には、扇形の中心角がそれぞれ(φ/3)である4つの頂点Vd1、Vd8(補間点)、Vd9(補間点)、Vd2が配置されている。決定された頂点Vd1、Vd8、Vd9、Vd2を線分で順次接続することで、円122の形状に沿った部分境界線164が画定される。
【0116】
このように、統合物体形成部84は、角度方向の最端側に対応する代表物体D1の位置を中心とする円122上に頂点Vd1、Vd2が複数存在する場合、隣接する頂点Vd1、Vd2の間を円弧状に補間して得た1つ以上の補間点をポリゴンの頂点Vd8、Vd9として決定してもよい。これにより、角度分解能の観点から、代表物体D1と部分境界線164の間の距離が短い箇所が生じるのを抑制できる。
【0117】
ここでは、代表物体D1について説明したが、角度方向の最端側に対応する他の代表物体D9、E1、E4についても、上記と同様に取り扱ってもよい。
【0118】
[補足]
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0119】
例えば、境界線136、138、160の決定方法は、上記した実施形態及び改良例に限られることなく、2つ以上の物体同士の位置関係に基づく任意の手法を採用してもよい。また、統合物体の形状は、七角形の他、頂点数が6つ以下又は8つ以上の多角形でもよいし、例えば、円形、楕円形を含む幾何学的形状であってもよい。