特許第6780007号(P6780007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780007
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】高周波電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 9/06 20060101AFI20201026BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20201026BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20201026BHJP
【FI】
   H02M9/06 Z
   H02M1/00 E
   !H05H1/46 R
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-542033(P2018-542033)
(86)(22)【出願日】2017年9月1日
(86)【国際出願番号】JP2017031597
(87)【国際公開番号】WO2018061617
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2019年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-189689(P2016-189689)
(32)【優先日】2016年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】押田 善之
(72)【発明者】
【氏名】那須 健二
(72)【発明者】
【氏名】藤本 直也
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/029937(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/056509(WO,A1)
【文献】 特開2014−175218(JP,A)
【文献】 特開2011−217482(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/080696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 9/06
H02M 1/00
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の高周波信号を出力する発振回路と、
前記回路から出力される高周波信号を、ON状態とOFF状態とを繰り返すパルス状に変調し、パルス状高周波信号として出力する変調回路と、
前記変調回路から出力されるパルス状高周波信号のレベルを調整して出力する可変減衰回路と、
前記変調回路から出力されるパルス状高周波信号の電力を増幅してパルス状高周波電力を出力する増幅回路と、
前記増幅回路から出力されるパルス状高周波電力の出力電力値を検出する出力電力検出部と、
前記出力電力検出部で検出したパルスの先頭部分の最大の出力電力値に対応する第一電圧値が入力され、該入力された第一電圧値と予め出力電力に対応する電圧値として設定された設定電圧値とに基づき、前記可変減衰回路で調整されるパルス状高周波信号のレベルを制御する第一レベル制御信号を出力する第一比較演算回路と、
前記出力電力検出部で検出したパルスの前記先頭部分より後半部分の平均レベルの出力電力値に対応する第二電圧値が入力され、該入力された第二電圧値と前記設定電圧値とに基づき、前記可変減衰回路で調整されるパルス状高周波信号のレベルを制御する第二レベル制御信号を出力する第二比較演算回路と、
切替えタイミング設定値に応じて、前記第一レベル制御信号と前記第二レベル制御信号の値を切替る切替え回路と、
前記第一レベル制御信号または前記第二レベル制御信号が更新された際の遷移時間を所望の時定数に設定する時定数回路と、を備える高周波電源装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第一比較演算回路は、下限値より演算結果が小さくならないように制限を設けている高周波電源装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第一比較演算回路は、前記第一電圧値が前記設定電圧値よりも大きい場合は、前記第一レベル制御信号を小さくし、前記第一電圧値が前記設定電圧値よりも小さい場合は、前記第一レベル制御信号を大きくする高周波電源装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記第二比較演算回路は、前記第二電圧値が前記設定電圧値よりも大きい場合は、前記第二レベル制御信号を小さくし、前記第二電圧値が前記設定電圧値よりも小さい場合は、前記第二レベル制御信号を大きくする高周波電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は高周波電源装置に関し、例えばパルス変調型の高周波電源装置に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
高周波電源装置は、プラズマやレーザ等の負荷装置に対して高周波エネルギーを供給し、発生したプラズマやレーザ等を利用して表面処理や加工を行う産業用機器として利用されている(例えば、特開2014−175218号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−175218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波電源装置は、負荷のインピーダンスが変動する際、負荷のインピーダンスにより出力レベルが変動し、過出力となる場合がある。 本開示の課題は、出力電力の変動を低減する高周波電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。 すなわち、高周波電源装置は、所定の周波数の高周波信号を出力する発振回路と、前記回路から出力される高周波信号を、ON状態とOFF状態とを繰り返すパルス状に変調し、パルス状高周波信号として出力する変調回路と、前記変調回路から出力されるパルス状高周波信号のレベルを調整して出力する可変減衰回路と、前記変調回路から出力されるパルス状高周波信号の電力を増幅してパルス状高周波電力を出力する増幅回路と、前記増幅回路から出力されるパルス状高周波電力の出力電力値を検出する出力電力検出部と、前記出力電力検出部で検出したパルスの先頭部分の最大の出力電力値に対応する第一電圧値が入力され、該入力された第一電圧値と予め出力電力に対応する電圧値として設定された設定電圧値とに基づき、前記可変減衰回路で調整されるパルス状高周波信号のレベルを制御する第一レベル制御信号を出力する第一比較演算回路と、前記出力電力検出部で検出したパルスの前記先頭部分より後半部分の平均レベルの出力電力値に対応する第二電圧値が入力され、該入力された第二電圧値と前記設定電圧値とに基づき、前記可変減衰回路で調整されるパルス状高周波信号のレベルを制御する第二レベル制御信号を出力する第二比較演算回路と、切替えタイミング設定値に応じて、前記第一レベル制御信号と前記第二レベル制御信号の値を切替る切替え回路と、前記第一レベル制御信号または前記第二レベル制御信号が更新された際の遷移時間を所望の時定数に設定する時定数回路と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
上記高周波電源装置によれば、出力電力の変動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】比較例に係るパルス変調型の高周波電源装置の概略構成図
図2A図1の比較演算回路の処理のフロー図
図2B】高周波出力レベルおよび可変減衰回路の制御電圧のタイミング図
図3】高周波電源装置をレーザ等の負荷装置に接続した際の高周波出力波形の例を示す図
図4】実施形態に係るパルス変調型の高周波電源装置の概略構成図
図5図4の2段階レベル制御回路のフロー図
図6】凹みのある高周波出力の波形図
図7】1段目のレベル制御ができない例を示す高周波出力の波形図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、比較例および実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。
【0009】
<比較例> 本願発明者らが検討した技術(以下、比較例という。)係るパルス変調型の高周波電源装置について図1を用いて説明する。図1は比較例に係るパルス変調型の高周波電源装置の概略構成図である。比較例に係るパルス変調型の高周波電源装置は、発振回路(001)と、高周波スイッチ(002)と、可変減衰回路(003)と、増幅回路(004)と、方向性結合器(005)と、レベル制御回路(000)と、を備える。レベル制御回路(000)は、検波回路(006)と、AD変換回路(007)と、比較演算回路(008)と、DA変換回路(009)と、を備える。
【0010】
発振回路(001)は高周波電源装置の出力周波数の源振にあたり固定レベルのサイン波を出力する回路である。すなわち、所定の周波数の高周波信号を出力する。
【0011】
変調部である高周波スイッチ(002)は、外部または内部からのパルス変調信号に応じてON/OFFするスイッチで、このスイッチにより発振回路(001)からの高周波出力信号をON状態とOFF状態を繰り返すパルス状に変調し、パルス状高周波信号として出力する。ON状態とは、高周波信号が出力される状態であり、OFF状態とは、高周波信号が出力されない状態である。すなわち、高周波スイッチ(002)は、図1に示すようなパルス状の変調信号のON期間にのみ、高周波信号を出力する。
【0012】
レベル調整部である可変減衰回路(003)は、高周波スイッチ(002)から出力されるパルス状高周波信号のレベル(大きさ)を調整して高周波電源装置の出力レベルを可変する回路素子であり、減衰量はアナログ信号でレベル制御(000)から供給される。
【0013】
増幅回路(004)は、可変減衰回路(003)から出力されるパルス状高周波信号の電力を所定の増幅度で増幅する(固定増幅する)回路であり、高周波電源装置の装置出力レベルにまで増幅する。増幅回路(004)にはレベルの可変機能はない。
【0014】
方向性結合器(005)は高周波電源装置の出力段に位置し、パルス状高周波電力を負荷装置に出力すると共に、伝送路を伝わる進行波電力および反射波電力(図では省略)を減衰して取り出すもので、高周波電源装置の出力レベルの監視のために使用する。方向性結合器(005)から出力した進行波電力はレベル制御回路(000)内の検波回路(006)に入力し、高周波信号の電力を電圧信号に変換した後、AD変換回路(007)に入力して、デジタルデータに変換する。方向性結合器(005)、検波回路(006)およびAD変換回路(007)は出力電力検出部ともいう。検波回路、AD変換回路の構成等については、これらに限定されるものではなく、最終段の出力電力レベルが測定できる回路であればよい。
【0015】
比較演算回路(008)では、デジタルデータに変換された進行波のレベルと高周波電源装置の出力レベル設定値(018)(100W設定の高周波電源装置の場合は100Wに相当するデジタル値)とを比較する。そして比較結果に応じて、次のパルスに対するレベル制御値を決定して更新する機能を有する。検出した進行波のレベルが出力レベル設定値(018)より高い場合はレベル制御値を下げ、検出した進行波のレベルが出力レベル設定値(018)より低い場合はレベル制御値を上げるようなフィードバック制御を行い、進行波のレベルを所望の設定値に収束させる制御機能を有する。
【0016】
比較演算回路(008)で決定した次のパルス状高周波信号に対するレベル制御値をDA変換回路(009)によりアナログ電圧に変換し、前述した可変減衰回路(003)の制御入力として高周波電源装置の出力制御を実施する。
【0017】
可変減衰回路(003)への制御値の更新は1つのパルス状高周波信号(パルス状高周波信号がハイ(HIGH)となりロー(LOW)となるまでの1波形)に対して、複数回実施してパルス状高周波信号内で複数回フィードバックしてもよいが本比較例では説明のために、1つのパルス状高周波信号に対してレベル制御値の更新は1回として説明をする。1つのパルス状高周波信号に対してレベル制御値の更新を1回とする際は、比較演算回路(008)の動作も1つのパルス状高周波信号に1回となる。
【0018】
次に、図1の比較演算回路(008)の動作について図2A、2Bを用いて説明する。図2A図1の比較演算回路の処理のフロー図であり、図2Bは高周波出力レベルおよび可変減衰回路の制御電圧のタイミング図である。図2Aのフロー図の符号(ステップ番号)と図2Bのタイミング図の符号(タイミング番号)は共通のものを示している。
【0019】
パルス変調信号がONになって高周波信号パルスがON(ステップ(010))となりパルス状高周波信号(017)の出力が開始すると、パルス状高周波信号(017)内のレベルが安定した部分の進行波レベルを検出(ステップ(011))する。進行波のレベルを検出した後は、出力レベル設定値(018)と検出した進行波のレベルを比較(ステップ(012))し、進行波のレベルが小さい場合は制御値を増加(ステップ(013))、進行波のレベルが大きい場合は制御値を減少(ステップ(014))する。この図2A、2Bでは、1つのパルス状高周波信号に1回のレベル制御であるので、このタイミングでは制御値を更新しない。その後、パルス変調信号がOFFになって高周波信号パルスがOFF(ステップ(015))となったことを確認した後に、可変減衰回路(003)の制御電圧(019)のアナログ電圧を更新(ステップ(016))し、次の高周波信号パルスがONするのを待つ。このフローを繰り返し、1つのパルス状高周波信号に1回のレベル制御を実施し、出力の安定化制御を行っている。図2Bでは、最初のパルス状高周波信号(017)の進行のレベルは出力レベル設定値(018)よりも大きいので、高周波信号パルスがOFF後に可変減衰回路(003)の制御電圧(019)を低くしている。また、2つ目のパルス状高周波信号(017)の進行のレベルは出力レベル設定値(018)よりも小さいので、高周波信号パルスがOFF後に可変減衰回路(003)の制御電圧(019)を高くしている。
【0020】
図3は高周波電源装置をレーザ等の負荷装置に接続した際の高周波出力波形の例を示す図である。
【0021】
図3はパルス状高周波電力の出力パルス先頭付近の検波回路(006)で検波後の波形であり、縦軸の単位はWattである。点線で囲った部分が出力レベル設定値に対して大きくなっている。これはパルス先頭付近の負荷インピーダンスが変動するため、出力レベルが変動するためである。前述のように1つのパルス状高周波信号内のレベル制御値が固定の場合は負荷インピーダンスの変動に応じて出力も変動してしまい、その負荷インピーダンスの位相条件によっては、図3の点線で囲った部分に示すように過出力となってしまう場合がある。図2A、2Bで説明したパルス状高周波信号内の進行波レベル検出(ステップ(011))は図3の波形で負荷インピーダンスが十分に安定したポイントでレベル検出をしているため、パルスの先頭以外の安定した部分においては出力の安定化制御が機能している。
【0022】
(課題) 比較例に係る高周波電源装置は、パルス状高周波信号内は同じレベル制御値のため、負荷インピーダンスが変動するパルスの先頭部分でもRF回路としてはパルス状高周波信号内で同じレベルで出力しようとする。負荷のインピーダンスが変動する際は、負荷のインピーダンスにより出力レベルが変動し、過出力となる場合がある。
【0023】
この過出力は、高周波電源の装置内部の回路および部品に対しては過電圧状態となり、過出力の程度によっては、回路や部品の耐電圧に対するリスクが高まり、ワーストケースとしては部品破損、放電が生じる可能性がある。
【0024】
また、同様に過出力が継続すると、高周波電源の装置内部の回路や部品に過電圧・過電力のストレスを与え続けることとなるため、経年劣化が加速するリスクがある。このため、過出力の程度により、レーザ負荷等の着火タイミングが変動する。過出力の程度が高いほど着火タイミングが早くなり、過出力の程度が低いほど着火タイミングが遅くなる傾向がある。装置によりインピーダンスが異なり過出力の程度が異なる場合は、装置毎に着火タイミングがバラつく可能性がある。
【0025】
<実施形態> 実施形態に係る高周波電源は、パルス状高周波信号内でレベル制御を2段階に切り替える方式を採用する。(a)1段階目はパルスの先頭付近で負荷インピーダンスが変動する部分に対するレベル制御(b)2段階目は負荷インピーダンスが安定し、出力が安定化した部分に対するレベル制御 上記2段階のレベル制御を可変減衰回路の制御電圧を切り替えることで実現する。
【0026】
実施形態によれば、負荷インピーダンス(レーザ等)の変化による過出力を抑制し、出力を安定化し、高周波電源の破損を防ぎ経年劣化を抑制することが可能である。
【実施例】
【0027】
本実施形態の実施例について図4を用いて説明する。図4は実施例に係るパルス変調型の高周波電源装置の概略構成図である。実施例に係るパルス型高周波電源装置は、発振回路(001)と、高周波スイッチ(002)と、可変減衰回路(003)と、時定数回路(021)と、増幅回路(004)と、方向性結合器(005)と、2段階レベル制御回路(020)と、を備える。2段階レベル制御回路(020)は、検波回路(006)と、AD変換回路(007)と、比較演算回路1(022)と、比較演算回路2(023)と、切替え部(024)と、DA変換回路(009)と、を備える。
【0028】
発振回路(001)は高周波電源装置の出力周波数の源振にあたり固定レベルのサイン波を出力する回路である。すなわち、所定の周波数、例えば30MHz程度の高周波信号を出力する。
【0029】
変調部である高周波スイッチ(002)は、外部または内部からのパルス変調信号に応じてON/OFFするスイッチで、このスイッチにより発振回路(001)からの高周波出力信号をON状態とOFF状態を繰り返すパルス状に変調し、パルス状高周波信号として出力する。ON状態とは、高周波信号が出力される状態であり、OFF状態とは、高周波信号が出力されない状態である。すなわち、高周波スイッチ(002)は、図4に示すようなパルス状の変調信号のON期間にのみ、高周波信号を出力する。
【0030】
レベル調整部である可変減衰回路(003)は、高周波スイッチ(002)から出力されるパルス状高周波信号のレベル(大きさ)を調整して高周波電源装置の出力レベルを可変する回路素子であり、減衰量はアナログ信号で2段階レベル制御回路(020)から供給される。可変減衰回路(003)の後段には時定数回路(021)があり、可変減衰回路(003)の制御電圧が更新された際の遷移時間を所望の時定数に設定している。この回路は可変素子を用いて調整ができてもよい。
【0031】
増幅回路(004)は、時定数回路(021)を介して可変減衰回路(003)から出力されるパルス状高周信号の電力を所定の増幅度で増幅する(固定増幅する)回路であり、高周波電源の装置出力レベルにまで増幅する。増幅回路(004)にはレベルの可変機能はない。
【0032】
方向性結合器(005)は高周波電源装置の出力段に位置し、パルス状高周波電力を負荷装置に出力すると共に、伝送路を伝わる進行波電力および反射波電力(図では省略)を減衰して取り出すもので、高周波電源装置の出力レベルの監視のために使用する。方向性結合器(005)から出力した進行波電力は2段階レベル制御回路(020)内の検波回路(006)に入力し、高周波信号の電力を電圧信号に変換した後、AD変換回路(007)に入力して、デジタルデータに変換する。方向性結合器(005)、検波回路(006)およびAD変換回路(007)は出力電力検出部ともいう。検波回路、AD変換回路の構成等については、これらに限定されるものではなく、最終段の出力電力レベルが測定できる回路であればよい。
【0033】
比較演算回路1(022)では、デジタルデータに変換された進行波のレベルのうち、パルスの先頭部分(負荷インピーダンスが変動し安定化するまで)の最大レベルと高周波電源装置の出力レベル設定値(018)(100W設定の高周波電源装置の場合は100Wに相当するデジタル値)とを比較する。そして比較結果に応じて、次のパルスに対するレベル制御値(1段目用)を決定して更新する機能を有する。検出した進行波のレベルが出力レベル設定値(018)より高い場合はレベル制御値を下げ、検出した進行波のレベルが出力レベル設定値(018)より低い場合はレベル制御値を上げるようなフィードバック制御を行い、進行波のレベルを所望の設定値に収束させる制御機能を有する。また、比較演算回路1(022)は、演算結果が小さくなりすぎないように1段目下限値(026)より演算結果が小さくならないように制限を設けている。
【0034】
比較演算回路2(023)では、デジタルデータに変換された進行波のレベルのうち、パルスの先頭部分より後半部分(負荷インピーダンスが50Ω付近に安定化している区間)の平均レベルと高周波電源装置の出力レベル設定値(018)(100W設定の高周波電源の場合は100Wに相当するデジタル値)とを比較する。そして比較結果に応じて、次のパルスに対するレベル制御値(2段目用)を決定して更新する機能を有する。検出した進行波のレベルが出力レベル設定値(018)より高い場合はレベル制御値を下げ、検出した進行波のレベルが出力レベル設定値(018)より低い場合はレベル制御値を上げるようなフィードバック制御を行い、進行波のレベルを所望の設定値に収束させる制御機能を有する。
【0035】
比較演算回路1(022)および比較演算回路2(023)で決定した次のパルスに対するレベル制御値は、切替え部(024)で切り替えてDA変換回路(009)によりアナログ電圧に変換し、前述した可変減衰回路(003)の制御入力として高周波電源装置の出力制御を実施する。切替え部(024)では切替えタイミング設定値(025)に応じて、比較演算回路1(022)と比較演算回路2(023)の値を切替る。比較演算回路1(022)、比較演算回路2(023)および切替え部(024)は、専用ハードウェアで構成してもよいし、CPUとCPUの動作プログラムを格納する記憶部とで構成してもよい。
【0036】
図5図4の2段階レベル制御回路(020)のフロー図である。
【0037】
パルス変調信号がONになって高周波信号パルスがON(ステップ(030))となりパルス状高周波信号の出力が開始すると、パルス状高周波信号内の進行波レベルの検出が2つの処理に分かれる。1つは、パルス先頭付近の進行波のレベル検出(ステップ(031))でパルス先頭付近用の出力レベル制御のために実施する。もう1つは安定した後の進行波のレベル検出(ステップ(035))で負荷インピーダンスが安定した後の出力レベルの制御のために実施する。
【0038】
それぞれ進行波のレベルを検出したのち、出力レベル設定値と比較(ステップ(032)(036))し、比較例と同様に、進行波のレベルが小さい場合は制御値を増加(ステップ(033)(037))、進行波のレベルが大きい場合は制御値を減少(ステップ(034)(038))する。
【0039】
決定した制御値は後段で切替えタイミング設定値(025)に応じて切替えを実施する(ステップ(039))。具体的には、高周波信号パルスがOFFとなった時点で1段階目(パルス先頭用)の制御値に切り替えておき、高周波信号パルスがONした後に、負荷インピーダンスが変動し安定するタイミングに合わせて2段階目(パルス安定後用)の制御値に切り替える。この動作を毎パルス実施する。
【0040】
可変減衰回路(003)への制御値の更新は1つのパルス状高周波信号(パルス状高周波信号がハイ(HIGH)となりロー(LOW)となるまでの1波形)に対して、2回実施することになるが、フィードバック回路としても2つ有する形態となり、各フィードバック回路を切り替えて動作することとなる。各フィードバック回路は独立して制御動作することとなる。
【0041】
2段階でレベル制御すると、下記の2つが問題になる可能性があるが、実施例ではそれらを解決することができる。
【0042】
(1)凹みのある波形となる。図6は凹みのある高周波出力の波形図である。図6のAはパルス先頭部分の出力を制御した際の波形であり、Bは比較例の波形である。2段階制御をしたものは、パルス先頭部分のレベルを安定化した部分のレベルと同等のレベルに制御することができるが、図6のように途中で凹みのある波形となる。
【0043】
しかし、可変減衰回路(003)の切替え時の遷移波形と過出力状態から安定状態への遷移波形が相殺する関係となると、波形として凹みが少ない波形となる。これにより、負荷に供給する高周波電力が安定化する。切替えタイミングと可変減衰回路(003)の時定数を調整することで凹みを抑制することができる。切替えタイミングは図4の切替えタイミング設定値(025)のように切替え部(024)に与えられて2つの制御値を切り替える。
【0044】
また、可変減衰回路(003)の後段の時定数回路は図4の時定数回路(021)のように配置し、負荷インピーダンスの動作を相殺するようの時定数に固定定数で作成しもよいし、可変素子を用いて調整できる機構を用意してもよい。
【0045】
(2)上記(1)では切替えタイミングと可変減衰回路の時定数を調整するが、RF出力波形に遅延が発生し、1段目のレベル制御ができない状態となる可能性がある。図7は1段目のレベル制御ができない例を示す高周波出力の波形図である。
【0046】
図7に示すように、実線のような波形となるべきであったものが、1段目の出力レベル制御値が低下すると、点線で示すように立ち上がり時間が発生して波形としては遅延し、1段目の制御時間に対して遅延すると、図7のように負荷インピーダンスの変動が遅延し過出力が発生するようなことがある。
【0047】
1段目のレベル制御値が著しく低下しパルス状高周波信号の立ち上がりが遅延し、それに伴い負荷インピーダンスが変動する区間も遅延することが原因である。1段目のレベル制御値に対して低下しすぎないようにする制限(下限値)を設け、負荷インピーダンスが変動する部分が1段目のレベル制御の区間に入るようにする。これは図4の1段目下限値(026)として実施している。(効果) 2段階のレベル制御により、パルス先頭付近の負荷インピーダンスが変動する区間に対して過出力とならないようレベル制御が可能となり、その結果、装置内部の回路および部品に対する過電圧状態となりうるリスクを取り除くことができ、部品破損、放電の発生を抑制することができる。
【0048】
また、同様に過出力が継続することによる装置内部の回路や部品に過電圧・過電力のストレスが抑制されるので、経年劣化を遅く抑制することができる。
【0049】
また、負荷インピーダンスの変動の程度によらず、出力レベルが安定するので、レーザ負荷等の着火タイミング等と特性が安定化することができる。
【0050】
また、2つの調整(切替えタイミング、1段目の下限値の決定)をレーザ等の負荷装置と接続した際の初期調整で実施することで、本実施例の上記効果が得られる。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、高周波電源装置、または、高周波電源装置を用いた半導体製造装置などに適用可能である。この出願は、2016年9月28日に出願された日本出願特願2016−189689を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。
【符号の説明】
【0053】
001…発振回路002…高周波スイッチ003…可変減衰回路004…増幅回路005…方向性結合器006…検波回路007…AD変換回路009…DA変換回路020…2段階レベル制御回路021…時定数回路022…比較演算回路1023…比較演算回路2024…切替え回路025…切替えタイミング設定値026…1段目下限値
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7