【実施例】
【0027】
本実施形態の実施例について
図4を用いて説明する。
図4は実施例に係るパルス変調型の高周波電源装置の概略構成図である。実施例に係るパルス型高周波電源装置は、発振回路(001)と、高周波スイッチ(002)と、可変減衰回路(003)と、時定数回路(021)と、増幅回路(004)と、方向性結合器(005)と、2段階レベル制御回路(020)と、を備える。2段階レベル制御回路(020)は、検波回路(006)と、AD変換回路(007)と、比較演算回路1(022)と、比較演算回路2(023)と、切替え部(024)と、DA変換回路(009)と、を備える。
【0028】
発振回路(001)は高周波電源装置の出力周波数の源振にあたり固定レベルのサイン波を出力する回路である。すなわち、所定の周波数、例えば30MHz程度の高周波信号を出力する。
【0029】
変調部である高周波スイッチ(002)は、外部または内部からのパルス変調信号に応じてON/OFFするスイッチで、このスイッチにより発振回路(001)からの高周波出力信号をON状態とOFF状態を繰り返すパルス状に変調し、パルス状高周波信号として出力する。ON状態とは、高周波信号が出力される状態であり、OFF状態とは、高周波信号が出力されない状態である。すなわち、高周波スイッチ(002)は、
図4に示すようなパルス状の変調信号のON期間にのみ、高周波信号を出力する。
【0030】
レベル調整部である可変減衰回路(003)は、高周波スイッチ(002)から出力されるパルス状高周波信号のレベル(大きさ)を調整して高周波電源装置の出力レベルを可変する回路素子であり、減衰量はアナログ信号で2段階レベル制御回路(020)から供給される。可変減衰回路(003)の後段には時定数回路(021)があり、可変減衰回路(003)の制御電圧が更新された際の遷移時間を所望の時定数に設定している。この回路は可変素子を用いて調整ができてもよい。
【0031】
増幅回路(004)は、時定数回路(021)を介して可変減衰回路(003)から出力されるパルス状高周信号の電力を所定の増幅度で増幅する(固定増幅する)回路であり、高周波電源の装置出力レベルにまで増幅する。増幅回路(004)にはレベルの可変機能はない。
【0032】
方向性結合器(005)は高周波電源装置の出力段に位置し、パルス状高周波電力を負荷装置に出力すると共に、伝送路を伝わる進行波電力および反射波電力(図では省略)を減衰して取り出すもので、高周波電源装置の出力レベルの監視のために使用する。方向性結合器(005)から出力した進行波電力は2段階レベル制御回路(020)内の検波回路(006)に入力し、高周波信号の電力を電圧信号に変換した後、AD変換回路(007)に入力して、デジタルデータに変換する。方向性結合器(005)、検波回路(006)およびAD変換回路(007)は出力電力検出部ともいう。検波回路、AD変換回路の構成等については、これらに限定されるものではなく、最終段の出力電力レベルが測定できる回路であればよい。
【0033】
比較演算回路1(022)では、デジタルデータに変換された進行波のレベルのうち、パルスの先頭部分(負荷インピーダンスが変動し安定化するまで)の最大レベルと高周波電源装置の出力レベル設定値(018)(100W設定の高周波電源装置の場合は100Wに相当するデジタル値)とを比較する。そして比較結果に応じて、次のパルスに対するレベル制御値(1段目用)を決定して更新する機能を有する。検出した進行波のレベルが出力レベル設定値(018)より高い場合はレベル制御値を下げ、検出した進行波のレベルが出力レベル設定値(018)より低い場合はレベル制御値を上げるようなフィードバック制御を行い、進行波のレベルを所望の設定値に収束させる制御機能を有する。また、比較演算回路1(022)は、演算結果が小さくなりすぎないように1段目下限値(026)より演算結果が小さくならないように制限を設けている。
【0034】
比較演算回路2(023)では、デジタルデータに変換された進行波のレベルのうち、パルスの先頭部分より後半部分(負荷インピーダンスが50Ω付近に安定化している区間)の平均レベルと高周波電源装置の出力レベル設定値(018)(100W設定の高周波電源の場合は100Wに相当するデジタル値)とを比較する。そして比較結果に応じて、次のパルスに対するレベル制御値(2段目用)を決定して更新する機能を有する。検出した進行波のレベルが出力レベル設定値(018)より高い場合はレベル制御値を下げ、検出した進行波のレベルが出力レベル設定値(018)より低い場合はレベル制御値を上げるようなフィードバック制御を行い、進行波のレベルを所望の設定値に収束させる制御機能を有する。
【0035】
比較演算回路1(022)および比較演算回路2(023)で決定した次のパルスに対するレベル制御値は、切替え部(024)で切り替えてDA変換回路(009)によりアナログ電圧に変換し、前述した可変減衰回路(003)の制御入力として高周波電源装置の出力制御を実施する。切替え部(024)では切替えタイミング設定値(025)に応じて、比較演算回路1(022)と比較演算回路2(023)の値を切替る。比較演算回路1(022)、比較演算回路2(023)および切替え部(024)は、専用ハードウェアで構成してもよいし、CPUとCPUの動作プログラムを格納する記憶部とで構成してもよい。
【0036】
図5は
図4の2段階レベル制御回路(020)のフロー図である。
【0037】
パルス変調信号がONになって高周波信号パルスがON(ステップ(030))となりパルス状高周波信号の出力が開始すると、パルス状高周波信号内の進行波レベルの検出が2つの処理に分かれる。1つは、パルス先頭付近の進行波のレベル検出(ステップ(031))でパルス先頭付近用の出力レベル制御のために実施する。もう1つは安定した後の進行波のレベル検出(ステップ(035))で負荷インピーダンスが安定した後の出力レベルの制御のために実施する。
【0038】
それぞれ進行波のレベルを検出したのち、出力レベル設定値と比較(ステップ(032)(036))し、比較例と同様に、進行波のレベルが小さい場合は制御値を増加(ステップ(033)(037))、進行波のレベルが大きい場合は制御値を減少(ステップ(034)(038))する。
【0039】
決定した制御値は後段で切替えタイミング設定値(025)に応じて切替えを実施する(ステップ(039))。具体的には、高周波信号パルスがOFFとなった時点で1段階目(パルス先頭用)の制御値に切り替えておき、高周波信号パルスがONした後に、負荷インピーダンスが変動し安定するタイミングに合わせて2段階目(パルス安定後用)の制御値に切り替える。この動作を毎パルス実施する。
【0040】
可変減衰回路(003)への制御値の更新は1つのパルス状高周波信号(パルス状高周波信号がハイ(HIGH)となりロー(LOW)となるまでの1波形)に対して、2回実施することになるが、フィードバック回路としても2つ有する形態となり、各フィードバック回路を切り替えて動作することとなる。各フィードバック回路は独立して制御動作することとなる。
【0041】
2段階でレベル制御すると、下記の2つが問題になる可能性があるが、実施例ではそれらを解決することができる。
【0042】
(1)凹みのある波形となる。
図6は凹みのある高周波出力の波形図である。
図6のAはパルス先頭部分の出力を制御した際の波形であり、Bは比較例の波形である。2段階制御をしたものは、パルス先頭部分のレベルを安定化した部分のレベルと同等のレベルに制御することができるが、
図6のように途中で凹みのある波形となる。
【0043】
しかし、可変減衰回路(003)の切替え時の遷移波形と過出力状態から安定状態への遷移波形が相殺する関係となると、波形として凹みが少ない波形となる。これにより、負荷に供給する高周波電力が安定化する。切替えタイミングと可変減衰回路(003)の時定数を調整することで凹みを抑制することができる。切替えタイミングは
図4の切替えタイミング設定値(025)のように切替え部(024)に与えられて2つの制御値を切り替える。
【0044】
また、可変減衰回路(003)の後段の時定数回路は
図4の時定数回路(021)のように配置し、負荷インピーダンスの動作を相殺するようの時定数に固定定数で作成しもよいし、可変素子を用いて調整できる機構を用意してもよい。
【0045】
(2)上記(1)では切替えタイミングと可変減衰回路の時定数を調整するが、RF出力波形に遅延が発生し、1段目のレベル制御ができない状態となる可能性がある。
図7は1段目のレベル制御ができない例を示す高周波出力の波形図である。
【0046】
図7に示すように、実線のような波形となるべきであったものが、1段目の出力レベル制御値が低下すると、点線で示すように立ち上がり時間が発生して波形としては遅延し、1段目の制御時間に対して遅延すると、
図7のように負荷インピーダンスの変動が遅延し過出力が発生するようなことがある。
【0047】
1段目のレベル制御値が著しく低下しパルス状高周波信号の立ち上がりが遅延し、それに伴い負荷インピーダンスが変動する区間も遅延することが原因である。1段目のレベル制御値に対して低下しすぎないようにする制限(下限値)を設け、負荷インピーダンスが変動する部分が1段目のレベル制御の区間に入るようにする。これは
図4の1段目下限値(026)として実施している。(効果) 2段階のレベル制御により、パルス先頭付近の負荷インピーダンスが変動する区間に対して過出力とならないようレベル制御が可能となり、その結果、装置内部の回路および部品に対する過電圧状態となりうるリスクを取り除くことができ、部品破損、放電の発生を抑制することができる。
【0048】
また、同様に過出力が継続することによる装置内部の回路や部品に過電圧・過電力のストレスが抑制されるので、経年劣化を遅く抑制することができる。
【0049】
また、負荷インピーダンスの変動の程度によらず、出力レベルが安定するので、レーザ負荷等の着火タイミング等と特性が安定化することができる。
【0050】
また、2つの調整(切替えタイミング、1段目の下限値の決定)をレーザ等の負荷装置と接続した際の初期調整で実施することで、本実施例の上記効果が得られる。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。