(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780016
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】家具駆動装置
(51)【国際特許分類】
E05F 1/10 20060101AFI20201026BHJP
【FI】
E05F1/10
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-556371(P2018-556371)
(86)(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公表番号】特表2019-515162(P2019-515162A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】AT2017060045
(87)【国際公開番号】WO2017185113
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2018年12月26日
(31)【優先権主張番号】A50380/2016
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ズィーモン フローガウス
(72)【発明者】
【氏名】フランツ コールヴァイス
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
オーストリア国特許発明第00515661(AT,B)
【文献】
特表2017−536492(JP,A)
【文献】
特開2011−244932(JP,A)
【文献】
特開2001−061567(JP,A)
【文献】
実開平04−138333(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00 − 13/04,17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具本体(2)に対して可動に支持された家具部分(3)のための家具駆動装置(4)であって、
前記可動の家具部分(3)を移動させるための、少なくとも1つの旋回可能に支持された作動アーム(6)と、
前記作動アーム(6)に力を加えるためのばね装置(10)と、
前記ばね装置(10)の力を前記作動アーム(6)に伝達するための伝達機構(33)であって、該伝達機構(33)は、第1のトルク変化過程を有する第1の調節輪郭(24)と、前記ばね装置(10)によって力が加えられる押圧部材(26)とを有しており、該押圧部材(26)は、前記作動アーム(6)の移動時に前記第1の調節輪郭(24)に沿って走行可能である、伝達機構(33)と、
を備える家具駆動装置(4)において、
前記第1のトルク変化過程とは異なる第2のトルク変化過程を有する少なくとも1つの第2の調節輪郭(27)と、切換え装置(9)とが設けられており、該切換え装置(9)によって、前記少なくとも1つの第2の調節輪郭(27)は前記押圧部材(26)と係合することができ、したがって、前記押圧部材(26)は、前記作動アーム(6)の移動時に前記第2の調節輪郭(27)に沿って走行可能であることを特徴とする、家具駆動装置(4)。
【請求項2】
前記切換え装置(9)は、少なくとも1つのスイッチ(18)を有しており、該スイッチ(18)は、第1の位置と第2の位置とを有しており、前記第1の調節輪郭(24)は、前記スイッチ(18)の前記第1の位置において当該スイッチ(18)と係合しており、前記スイッチ(18)の前記第2の位置において当該スイッチ(18)との係合が解除される、請求項1記載の家具駆動装置(4)。
【請求項3】
前記第1の調節輪郭(24)に、戻しばね(28)によって、前記第1の調節輪郭(24)が前記スイッチ(18)と係合する前記第1の位置の方向に、予荷重が加えられている、請求項2記載の家具駆動装置(4)。
【請求項4】
前記第1の調節輪郭(24)は、回転軸(25)の周りに旋回可能に支持されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の家具駆動装置(4)。
【請求項5】
前記第2の調節輪郭(27)は、前記作動アーム(6)の回転軸(12)に対して位置固定に形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の家具駆動装置(4)。
【請求項6】
前記家具駆動装置(4)は、取付け位置において、少なくとも1つのばねエレメント(38)によって、前記家具本体(2)に対して制限された範囲で高さ方向可動に支持されており、これによって前記可動の家具部分(3)は、第1の重量および/または第1の負荷状態によって、前記家具本体(2)に対して第1の高さ位置をとり、前記第1の重量に対して大きな第2の重量および/または前記第1の負荷状態に対して大きな第2の負荷状態によって、前記家具本体(2)に対して第2の高さ位置をとり、該第2の高さ位置は、前記第1の高さ位置と比べて低い位置にある、請求項1から5までのいずれか1項記載の家具駆動装置(4)。
【請求項7】
前記切換え装置(9)は、前記第2の高さ位置において、前記少なくとも1つの第2の調節輪郭(27)を前記押圧部材(26)と係合させる、請求項6記載の家具駆動装置(4)。
【請求項8】
前記切換え装置(9)は、手動で、前記少なくとも1つの第2の調節輪郭(27)を前記押圧部材(26)と係合させ、かつ/または、前記可動の家具部分(3)の異なる重量によっておよび/または前記可動の家具部分(3)の異なる負荷状態によって自動的に、前記少なくとも1つの第2の調節輪郭(27)を前記押圧部材(26)と係合させる、請求項1から7までのいずれか1項記載の家具駆動装置(4)。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の家具駆動装置(4)と、家具本体(2)に前記家具駆動装置(4)を取り付けるための保持構造(11)と、を備えるアセンブリ。
【請求項10】
前記保持構造(11)は、前記家具本体(2)に固定すべき第1の保持体(16)と、該第1の保持体(16)に対して、鉛直方向に移動可能に支持された第1の保持レール(17)とを有しており、前記家具駆動装置(4)は、前記第1の保持レール(17)に支持されている、請求項9記載のアセンブリ。
【請求項11】
切換え装置(9)のスイッチ(18)が、前記第1の保持体(16)に配置されている、請求項10記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記保持構造(11)は、前記家具本体(2)に固定すべき第2の保持体(16a)と、該第2の保持体(16a)に対して、鉛直方向に移動可能に支持された第2の保持レール(17a)とを有しており、第2の家具駆動装置(4a)が、前記第2の保持レール(17a)に支持されている、請求項10または11記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記第1の保持体(16)に対する前記家具駆動装置(4)の鉛直方向運動が、前記第2の保持体(16a)に対する前記第2の家具駆動装置(4a)の鉛直方向運動と、第1の同期ロッド(19)を介して互いに同期可能である、請求項12記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記第1の同期ロッド(19)は、第1の歯車(36)を備えた第1の端部領域と、第2の歯車(36)を備えた第2の端部領域とを有しており、前記第1の歯車(36)および前記第2の歯車(36)はそれぞれ、前記第1の同期ロッド(19)に回動不能に結合されており、前記第1の歯車(36)は、前記第1の保持体(16)の第1の歯列(37)と共働し、前記第2の歯車(36)は、前記第2の保持体(16a)の第2の歯列(37)と共働する、請求項13記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記家具駆動装置(4)の前記作動アーム(6)の旋回運動が、前記第2の家具駆動装置(4a)の作動アーム(6a)の旋回運動と、第2の同期ロッド(20)を介して互いに同期可能である、請求項12から14までのいずれか1項記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具本体に対して可動に支持された家具部分のための家具駆動装置であって、
可動の家具部分を移動させるための、少なくとも1つの旋回可能に支持された作動アームと、
作動アームに力を加えるためのばね装置と、
ばね装置の力を作動アームに伝達するための伝達機構であって、伝達機構は、第1のトルク経過を有する第1の調節輪郭と、ばね装置によって力が加えられる押圧部材とを有しており、押圧部材は、作動アームの移動時に第1の調節輪郭に沿って走行可能である、伝達機構と、
を備える家具駆動装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、上に記載された形式の家具駆動装置と、家具本体に家具駆動装置を取り付けるための保持構造とを備えた、アセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
このような形式の家具駆動装置は、例えば国際公開第2006/005086号に基づいて既に公知である。
【0004】
このような家具駆動装置の使用時における特別な要求は、ばね装置の、作動アームに加えられるトルクを、可動の家具部分のその都度の重量に、かつ/または可動の家具部分の異なる負荷状態に合わせられるということにある。このトルクが、家具部分の重量に関して、かつ/または家具部分の負荷状態に関して低すぎる場合には、可動の家具部分は、家具本体に対して上昇した終端位置に、まったく上昇することができない。これに対して、作動アームに作用するトルクが高すぎる状態に調節されていると、可動の家具部分は、不快なほど大きな力で、家具本体に対して上昇した終端位置に素早く上昇することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の家具駆動装置を改良して、可動の家具部分の異なる重量への、かつ/または可動の家具部分の異なる負荷状態への改善された適合が可能である、家具駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴によって解決される。本発明の別の好適な構成は、従属請求項に記載されている。
【0007】
つまり、本発明によれば、第1のトルク経過とは異なる第2のトルク経過を有する少なくとも1つの第2の調節輪郭と、切換え装置とが設けられており、切換え装置によって、少なくとも1つの第2の調節輪郭は押圧部材と係合することができ、これによって押圧部材は、作動アームの移動時に第2の調節輪郭に沿って走行可能であることが提案される。
【0008】
切換え装置は、例えば手動でまたは工具を用いて操作することができる少なくとも1つのスイッチを有しており、スイッチの操作によって、第1の調節輪郭とは異なるトルク経過を有する少なくとも1つの第2の調節輪郭が、押圧部材と係合することができる。スイッチは、機械式のスイッチとして形成されていてもよいし、かつ/または電気式のスイッチとして形成されていてもよく、このスイッチは、家具駆動装置のハウジングに、家具本体に、または可動の家具部分に配置可能である。
【0009】
1つの実施形態によれば、家具駆動装置は、取付け位置において家具本体に対して、少なくとも1つのばねエレメントによって、制限された範囲で高さ方向可動に支持されており、これによって可動の家具部分は、第1の重量および/または第1の負荷状態によって、家具本体に対して第1の高さ位置をとり、かつ第1の重量に対して大きな第2の重量および/または第1の負荷状態に対して大きな第2の負荷状態によって、家具本体に対して第2の高さ位置をとり、第2の高さ位置は、第1の高さ位置に比べて低い位置にあることが提案されてよい。切換え装置は、第2の高さ位置において、好ましくは自動的に解除可能であることが提案されてよく、このように構成されていると、押圧部材は、作動アームの移動時に第2の調節輪郭に沿って走行可能となる。
【0010】
したがって、家具駆動装置は、少なくとも1つのばねエレメントを介して、家具本体に対して高さ方向可動に支持されていてよく、ばねエレメントは、可動の家具部分の異なる重量によって、かつ/または可動の家具部分の異なる負荷状態によって、異なって圧縮可能または伸長可能であり、切換え装置は、ばねエレメントの予め設定された圧縮状態または伸長状態の超過時に、好ましくは自動的に解除可能であり、押圧部材は、作動アームの移動時に第2の調節輪郭に沿って走行可能である。
【0011】
1つの実施形態によれば、切換え装置のスイッチは、第1の位置と第2の位置とを有しており、第1の調節輪郭は、スイッチの第1の位置においてロック可能であり、かつスイッチの第2の位置においてロック解除可能であることが提案されてよい。少なくとも1つのスイッチは、家具駆動装置のハウジングに対して可動に配置されていてよい。
【0012】
1つの実施形態によれば、第2の調節輪郭の、作動アームの移動時に押圧部材と接触する領域が、第1の調節輪郭の、作動アームの移動時に押圧部材と接触する領域よりも、作動アームの回転軸に関して、小さな半径方向間隔および/または大きな曲率を有することが提案されてよい。
【0013】
本発明に係るアセンブリは、上述した形式の家具駆動装置と、家具本体に家具駆動装置を取り付けるための保持構造とを有している。保持構造は、家具本体に固定すべき第1の保持体と、第1の保持体に対して、好ましくは取付け位置において鉛直方向に移動可能に支持された第1の保持レールとを有しており、家具駆動装置は、第1の保持レールに支持されていることが提案されてよい。切換え装置のスイッチは第1の保持体に支持されていることが提案されてよい。
【0014】
本発明のさらなる詳細および利点については、以下における図面を参照した説明において述べる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】家具本体と、特定の重量を有している可動の家具部分を移動させるための家具駆動装置とを備えた家具を示す斜視図である。
【
図1b】家具本体と、特定の重量を有している可動の家具部分を移動させるための家具駆動装置とを備えた家具を示す斜視図である。
【
図2a】家具本体に対して家具部分を、上昇した閉鎖位置と下降した開放位置との間で高さ方向可動に支持している、家具駆動装置の別の使用分野を示す図である。
【
図2b】家具本体に対して家具部分を、上昇した閉鎖位置と下降した開放位置との間で高さ方向可動に支持している、家具駆動装置の別の使用分野を示す図である。
【
図3】家具本体に固定するための保持構造を備えた家具駆動装置を示す図である。
【
図4】切換え装置によって第1の調節輪郭がロックされており、これによって作動アームの移動時に第1の調節輪郭に沿って押圧部材が走行可能である家具駆動装置を示す斜視図である。
【
図5】切換え装置によって第1の調節輪郭がロック解除されており、これによって作動アームの移動時に第2の調節輪郭に沿って押圧部材が走行可能である家具駆動装置を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示した家具駆動装置を、押圧部材が第2の調節輪郭に沿ってさらに移動した状態で示す図である。
【
図7】作動アームのさらなる旋回位置とともに家具駆動装置を示す図である。
【
図8】
図8a−8cは、家具本体に対して第1の高さ位置にある家具駆動装置と、2つの拡大詳細図とを示す図である。
【
図9】
図9a−9cは、家具本体に対して第2の下降した高さ位置にある家具駆動装置と、2つの拡大詳細図とを示す図である。
【
図10a】押圧部材が第1の調節輪郭に沿って走行可能である場合の家具駆動装置を示す側面図である。
【
図10b】押圧部材が第2の調節輪郭に沿って走行可能である場合の家具駆動装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1aおよび
図1bには、それぞれ家具本体2を備えた家具1が示されており、家具部分3が、家具駆動装置4によって家具本体2に対して可動に支持されている。家具駆動装置4は、それぞれ1つの、家具本体2に固定すべきハウジング13と、ハウジング13に対して旋回可能な作動アーム6とを備えており、これによって可動の家具部分3はそれぞれ、鉛直の閉鎖位置を起点として、家具本体2に対して上昇した位置に可動である。
図1bに示した可動の家具部分3は、
図1aに示した可動の家具部分3よりも、比較的大きな面積および/または比較的大きな材料厚D2を有しており、かつ/または比較的重い材料から形成されており、したがって、
図1bに示した可動の家具部分3は、
図1aに示した比較的小さな材料厚D1を有する家具部分3よりも、全体として比較的大きな重量を有している。可動の家具部分3の異なる重量および/または異なる負荷状態によって、家具部分3のそれぞれの重量に対応するトルクを、同一の家具駆動装置4によって旋回可能な作動アーム6に与えることが必要である。家具駆動装置4の、ここに図示されていない切換え装置9によって、可動の家具部分3の重量および/または負荷状態に応じて、互いに異なるトルク経過を有する少なくとも2つの調節輪郭24,27(
図4)を、好ましくは自動的に切り換えることができる。この切り換えによって例えば、作動アーム6に加えられるトルクの第1の粗調節を行うことができ、その後で、家具駆動装置4の(通常設けられている)調節装置によって、作動アーム6に加えられるトルクの精密調節を行うことができる。
【0017】
図2aおよび
図2bには、家具駆動装置4の別の使用分野が示されている。図示の実施形態では、家具1は、ブラインド22によって閉鎖されている外側本体2aを備えた家具本体2を有している。(ここでは見ることができない)家具駆動装置4によって、内側本体3aとして形成された可動の家具部分3は、外側本体2aに対して、上昇した閉鎖位置と下降した開放位置との間で高さ方向可動に配置されている。内側本体3aは、貯蔵品を収容するために形成されており、グリップ8を介して外側本体2aに対して、鉛直に延びる方向に昇降可能である。
【0018】
図3には、
図2aに示した家具1が示されている。外側本体2aと、外側本体2aを覆うブラインド22とは図示されていない。家具駆動装置4は、互いに平行に延びる2つのハウジング部分13a,13bを備えたハウジング13を有しており、両ハウジング部分13a,13bの間には、ばね装置10(好ましくは、コイルばねとして形成された少なくとも1つの圧縮ばね)によって力が加えられた作動アーム6が、回転軸12の周りに旋回可能に支持されている。ハウジング部分13a,13bを備えた家具駆動装置4は、保持レール17に固定されており、この保持レール17は、外側本体2aに固定すべき保持体16に対して、ばねエレメント38(
図8c,
図9c)を介して、制限された範囲で高さ方向可動に支持されている。図示の実施形態では、保持体16に結合された少なくとも1つのスイッチ18を有する切換え装置9によって、家具駆動装置4は、可動の家具部分3の予め設定された重量および/または負荷状態を超過した時に、変化したトルク経過を有する運転モードに切換えることができる。旋回可能に支持された作動アーム6は、内側本体3aを取り付けるための固定装置15を有しており、内側本体3aは、外側本体2aに固定すべきリニアガイド21に沿った作動アーム6の移動時に、鉛直に延びる方向に移動可能に支持される。
【0019】
外側本体2aの互いに向かい合って位置する側壁には、第2の家具駆動装置4aが配置されており、この第2の家具駆動装置4aは、第1の家具駆動装置4と同一の構成を有している。第2の家具駆動装置4aを固定するために設けられた保持装置11もまた、同じ構成を有している。第1の家具駆動装置4または保持装置11の部材13,14,15等は、第2の家具駆動装置4aまたは保持装置11の部材13a,14a,15a等に相当する。第1の家具駆動装置4の作動アーム6の旋回運動は、第2の同期ロッド20を介して、第2の家具駆動装置4aの作動アーム6aの旋回運動と同期可能である。保持構造11は、さらに、外側本体2aに固定すべき第2の保持体16aと、第2の保持体16aに対して移動可能に支持された第2の保持レール17aとを備えており、第2の家具駆動装置4aは、第2の移動可能な保持レール17aに支持されている。第1の保持体16に対する第1の家具駆動装置4の鉛直運動は、第1の同期ロッド19を介して、第2の保持体16aに対する第2の家具駆動装置4aの鉛直運動と同期可能である。
【0020】
図4には、保持レール17に固定された家具駆動装置4が斜視図で示されている。保持体16は、外側本体2aの側壁に固定することができ、保持レール17は、家具駆動装置4のハウジング部分13a,13bと一緒に、位置固定に支持された保持体16に対して制限された範囲で高さ方向可動に支持されている。保持体16に対する家具駆動装置4のそれぞれの高さ位置は、軸31を介して第1の同期ロッド19(
図3)に伝達可能である。保持レール17は、切換え装置9を貫通させるための切欠き23を有しており、これによって、切換え装置9の両スイッチ18はそれぞれ、外側本体2aに取り付けるべき外側の保持体16に結合されている。したがって、切換え装置9の両スイッチ18は、図示の実施形態では、外側本体2aに対して位置固定に配置されている。両スイッチ18はそれぞれ、スイッチ18に対応して配置されたハウジング部分13a,13bのガイド32内に係合しており、それぞれ、第1の予め設定されたトルク経過を有する第1の調節輪郭24の縁部29をロックする。
図3に示したばね装置10の力を回転軸12の周りに旋回可能な作動アーム6に伝達するための伝達機構33が設けられており、この伝達機構33は、第1のトルク経過を有する第1の調節輪郭24と、ばね装置10によって力が加えられた押圧部材26とを備えている。押圧部材26は、作動アーム6の移動時に、第1の調節輪郭24に沿って走行可能である。図示の実施形態では、押圧部材26は、回転可能に支持された押圧ローラとして形成されており、この押圧ローラは、作動アーム6の移動時に、第1の調節輪郭24に沿って転動可能である。第1の調節輪郭24は、回転軸25の周りに旋回可能に支持されており、第1の調節輪郭24には、引張りばねとして形成された戻しばね28によって比較的小さなばね力が加えられ、したがって、ロック解除が行われた後で(つまり、第1の調節輪郭24の縁部29がスイッチ18から連結解除された後で)、第1の調節輪郭24を再びロック位置の方向に押圧することができる。図示の図面において、作動アーム6は、可動の家具部分3(内側本体3a)の下降位置に相当する旋回位置にあり、押圧部材26は、作動アーム6の上方旋回時に第1の調節輪郭24に沿って走行可能である。作動アーム6は、第2の同期ロッド20を固定するためのアダプタ30を有しており、第2の同期ロッド20によって、作動アーム6の旋回運動は、第2の家具駆動装置4a(
図3)の、向かい合って位置している作動アーム6aの旋回運動に同期することができる。可動の家具部分3(内側本体3a)の予め設定された重量および/または予め設定された負荷状態を下回っている場合、押圧部材26は、作動アーム6の移動時に第1の調節輪郭24に沿って走行可能に支持されている。
【0021】
図5に示した家具駆動装置4は、内側本体3aに対する追加的な荷重によって、位置固定の保持体16に対して下降している。ハウジング部分13a,13bはそれぞれガイド32を備えており、これらのガイド32内には、切換え装置9のスイッチ18が係合しており、ひいてはスイッチ18と家具駆動装置4のハウジング13との間の鉛直運動を可能にする。保持体16に対する家具駆動装置4の下降によって、第1の調節輪郭24の縁部29は、スイッチ18から連結解除可能であり、このとき、第1の調節輪郭24は、ばね装置10(
図6)によって力が加えられた押圧部材26によって、反時計回り方向に離反押圧され、押圧部材26はいまや、第1の調節輪郭24とは異なるトルク経過を有する第2の調節輪郭27と係合することができる。第1の調節輪郭24が、作動アーム6の回転軸12に対して、好ましくは回転軸25の周りに可動に支持されているのに対して、第2の調節輪郭27は、作動アーム6の回転軸12に対して位置固定に形成されている。好ましくは、第2の調節輪郭27は、家具駆動装置4のハウジング部分13a,13bとともに一体に形成されている。
【0022】
図7には、上側の終端位置にある作動アーム6を備えた家具駆動装置4が示されており、上側の終端位置は、外側本体2aに対して内側本体3aが閉鎖された位置に対応する。つまり、押圧部材26は、
図5を起点として第2の調節輪郭27に沿って走行している。作動アーム6は長孔35を有しており、この長孔35に沿って、ばね装置10によって力が加えられた押圧部材26が、制限された範囲で移動可能に支持されている。
【0023】
図8aには、互いに向かい合って位置している両家具駆動装置4,4aが示されており、両家具駆動装置4,4aは、保持構造11を介して家具本体2(
図2b)に固定することができる。左側(第2)の保持レール17aからはカバーが取り外されているので、第1の同期ロッド19の第2の端部領域に配置された歯車36を見ることができる。第1の同期ロッド19の第1の端部領域には、(ここでは見えない)第1の歯車36が配置されている。第1の歯車36および第2の歯車36はそれぞれ、第1の同期ロッド19に回動不能に結合されており、それぞれ保持体16aの歯列37と共働する。このようにして、保持レール17,17aの鉛直運動(ひいては家具駆動装置4,4aの鉛直運動)は、第1の同期ロッド19を介して互いに同期可能である。
図8bには、
図8a中の円で囲まれた領域Aが拡大されて示されている。第1の調節輪郭24は、縁部29を介して切換え装置9のスイッチ18によってロックされており、これによって、押圧部材26は、作動アーム6の移動時に第1の調節輪郭24に沿って走行可能である。
図8cには、
図8a中の円で囲まれた領域Bが拡大されて示されている。保持レール17aは、少なくとも1つのばねエレメント38を介して保持体16aに対して支持されており、したがって、保持レール17a(ひいては家具駆動装置4,4a)は、保持体16に対して、制限された範囲で高さ方向可動に支持されている。可動の家具部分3は、第1の重量時および/または第1の負荷状態時に、家具本体2(ひいては保持体16,16a)に対して第1の高さ位置をとる。
【0024】
図9aには、家具本体2に対して、
図8aと比べて下降した位置にある両家具駆動装置4,4aが示されている。可動の家具部分3(内側本体3a)に、貯蔵品39(本実施形態では、積み重ねられた皿によって象徴的に示されている)によって荷重が加えられると、保持レール17,17aに結合された家具駆動装置4,4aは、ばねエレメント38(本実施形態では、2つまたはそれ以上の互いに平行に配置された圧縮ばねによって形成されている)の力に抗して、位置固定の保持体16,16aに対して下降し、家具本体2に対して下降した第2の高さ位置をとる。
図9bに示した詳細図から分かるように、貯蔵品39による追加的な荷重によって、第1の調節輪郭24は、保持体16に結合されたスイッチ18から連結解除され、これによって第1の調節輪郭24の縁部29は、スイッチ18からロック解除される。ロック解除された調節輪郭24は、ばね装置10(
図3)によって力が加えられた押圧部材26によって、回転軸25の周りに旋回し、したがって押圧部材26は、第2の調節輪郭27に沿って走行可能になる。第2の調節輪郭27は、第1の調節輪郭24に対して高いトルク経過を有するようになっていてよく、このように構成されていると、可動の家具部分3は、貯蔵品39による追加的な荷重時にも、リニアガイド21に沿って、家具本体2に対して上昇した終端位置に走行可能である。
【0025】
図10aには家具駆動装置4が示されており、押圧部材26は、回転軸12周りの作動アーム6の移動によって第1の凸面状の調節輪郭24に沿って走行可能に支持されている。押圧部材26と第1の調節輪郭24との間の接線40に対して垂直に延びる垂線が、作動アームの回転軸12に関する第1のてこ腕aを発生させる。
【0026】
図10bには、これに対して、スイッチ18から連結解除された第1の調節輪郭24が示されており、したがって押圧部材26は、回転軸12周りの作動アーム6の移動によって、第2の凸面状の調節輪郭27に沿って走行可能である。押圧部材26と第2の調節輪郭27との間の接線40aに対して垂直に延びる垂線が、作動アーム6の回転軸12に関する第2のてこ腕aを発生させる。直接的な比較から認識できるように、
図10bに示した第2のてこ腕aは、
図10a中の第1のてこ腕aよりも長い。その時々のトルクは、力×てこ腕(式M=F・a)によって発生するので、比較的長い第2のてこ腕aを備えた、
図10bに示した第2の調節輪郭27の使用時には、
図10aに示した第1の調節輪郭24の使用時よりも大きなトルク経過が発生する。