特許第6780060号(P6780060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6780060
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20201026BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   H01M2/20 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-104141(P2019-104141)
(22)【出願日】2019年6月4日
【審査請求日】2020年7月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】西沼 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓人
(72)【発明者】
【氏名】下舞 明誉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慶一
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−049013(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/230879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極及び第2電極を有する単セルを複数個収容したケースと、前記ケースに設けられたコネクタとを備えるバッテリパックにおいて、
前記単セルを複数個保持するとともに、前記ケース内で互いに対向するように収容された第1コアパック及び第2コアパックを備え、
前記第1コアパック内及び前記第2コアパック内で、第1電極が同一方向を指向する姿勢とされた複数個の前記単セルによって第1セル群が形成され、且つ第1電極が前記第1セル群の前記単セルの第1電極と逆方向を指向する姿勢とされた複数個の前記単セルによって第2セル群が形成されるとともに、前記第1セル群と前記第2セル群が交互に配置され、
さらに、前記第1コアパック内又は前記第2コアパック内で、前記第1セル群の前記単セルと、前記第2セル群の前記単セルとを電気的に接続する第1バスバーと、
前記第1コアパックの前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルと、前記第2コアパックの前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルとを電気的に接続する第2バスバーと、
前記第1コアパック又は前記第2コアパックの、前記コネクタに最も近接する前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルと、前記コネクタとを電気的に接続する第3バスバーと、
前記第1コアパック又は前記第2コアパックの、前記コネクタから最も離間する前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルと、前記コネクタとを電気的に接続する第4バスバーと、
を備えるバッテリパック。
【請求項2】
請求項1記載のバッテリパックにおいて、前記第2バスバーが1個であり、且つ該第2バスバーは、前記第1コアパックの、前記コネクタに最も近接した前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルと、前記第2コアパックの、前記コネクタから最も離間した前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルとを電気的に接続するバッテリパック。
【請求項3】
請求項1記載のバッテリパックにおいて、前記第2バスバーが複数個であり、且つ該第2バスバーの各々は、前記第1コアパックの前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルと、前記第2コアパックの前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルとの、互いに対向するもの同士を電気的に接続するバッテリパック。
【請求項4】
請求項3記載のバッテリパックにおいて、前記第2バスバーは、前記第1コアパックの前記第1セル群の前記単セル同士、又は前記第2セル群の前記単セル同士に電気的に接続された第1並列部材と、前記第2コアパックの前記第2セル群の前記単セル同士、又は前記第1セル群の前記単セル同士に電気的に接続された第2並列部材と、前記第1並列部材と前記第2並列部材とを電気的に接続する直列部材とを有するバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のコアパックがケースに収容されて構成されるバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な機器において、バッテリパックが電源として着脱可能に設けられる。この種のバッテリパックは、特許文献1に記載されるように、複数個の単セルを有するコアパックがケースの中空内部に収容されることで構成されている。単セルは、例えば、複数列に整列されるとともに、任意のセル列(任意列)の単セルは各々の正極が同一方向を指向する姿勢とされる。また、該任意列に隣接するセル列(隣接列)の単セルは、各々の正極が、前記任意列の単セルの正極と逆方向を指向する姿勢とされる。
【0003】
このため、任意列の単セルの正極と、隣接列の単セルの負極とが同一方向を指向する。そして、正極と負極がバスバーを介して電気的に接続される。すなわち、任意列の単セルと隣接列の単セルとが電気的に直列接続された状態となる。
【0004】
ケースの、例えば、底面にはコネクタが設けられており、該コネクタは、電動車両等の外部機器に設けられたコネクタに係合される。すなわち、コネクタ同士が電気的に接続される。そして、バッテリパックからの電力が前記2個のコネクタを介して外部機器に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−216366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放電容量や電圧を大きくするべく、ケース内に複数個のコアパックを収容することが想定される。この構成を具現化するに際し、互いに対向するコアパックの、コネクタから最も離間したセル列同士を、バスバーを介して電気的に直列接続することが考えられる(図4参照)。この場合、コネクタの正極に最も近接するセル列と、この隣接列とに橋架されたバスバーは、全バスバーの中で電位が最高となる。一方、コネクタの負極に最も近接するセル列と、この隣接列とに橋架されたバスバーでは、全バスバーの中で電位が最低となる。そして、ケース内では、電位が最低であるバスバーと、電位が最高であるバスバーとが対向する。
【0007】
ここで、バッテリパック自体はシールがなされているものの、万一、バッテリパック内に雨水等が浸入した場合、電位が最低であるバスバーと、電位が最高であるバスバーとの間で短絡が起こる懸念がある。特に、これら2個のバスバーの電位差が大きいときには、短絡の可能性が大きくなると予想される。
【0008】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、バッテリパック内に水が浸入した場合等においても、バスバー同士の間の短絡電流を可及的に低減し得るバッテリパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、第1電極及び第2電極を有する単セルを複数個収容したケースと、前記ケースに設けられたコネクタとを備えるバッテリパックにおいて、
前記単セルを複数個保持するとともに、前記ケース内で互いに対向するように収容された第1コアパック及び第2コアパックを備え、
前記第1コアパック内及び前記第2コアパック内で、第1電極が同一方向を指向する姿勢とされた複数個の前記単セルによって第1セル群が形成され、且つ第1電極が前記第1セル群の前記単セルの第1電極と逆方向を指向する姿勢とされた複数個の前記単セルによって第2セル群が形成されるとともに、前記第1セル群と前記第2セル群が交互に配置され、
さらに、前記第1コアパック内又は前記第2コアパック内で、前記第1セル群の前記単セルと、前記第2セル群の前記単セルとを電気的に接続する第1バスバーと、
前記第1コアパックの前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルと、前記第2コアパックの前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルとを電気的に接続する第2バスバーと、
前記第1コアパック又は前記第2コアパックの、前記コネクタに最も近接する前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルと、前記コネクタとを電気的に接続する第3バスバーと、
前記第1コアパック又は前記第2コアパックの、前記コネクタから最も離間する前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルと、前記コネクタとを電気的に接続する第4バスバーと、
を備えるバッテリパックが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コネクタに最も近接する第1セル群又は第2セル群の単セルを、第3バスバーを介して前記コネクタに電気的に接続する一方、コネクタから最も離間した第1セル群又は第2セル群の単セルを、第4バスバーを介して前記コネクタに電気的に接続するようにしている。従って、セル群同士を電気的に接続するバスバーの中で、電位が最高となるバスバーと、電位が最低となるバスバーとが対向することがない。
【0011】
すなわち、互いに対向するバスバー同士の電位差が小さい。このため、仮にバッテリパックのケース内に水が浸入した場合であっても、両バスバーの電位差によっては、短絡が起こることが回避される。また、短絡が起こったとしても、互いに対向するバスバー同士の電位差が、電位が最高となるバスバーと、電位が最低となるバスバーとが対向した場合に比して十分に小さい。従って、短絡電流が小さくなる。このため、単セルの発熱量が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るバッテリパックの概略全体斜視図である。
図2図1のバッテリパックの概略分解斜視図である。
図3図1のバッテリパックの長手方向に沿った概略縦断面図である。
図4】コネクタから最も離間するセル群に第2バスバーが橋架されたバッテリパックの概略縦断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るバッテリパックの概略分解斜視図である。
図6図5のバッテリパックの長手方向に沿った概略縦断面図である。
図7】3個の部材からなる第2バスバーを有するバッテリパックの概略分解斜視図である。
図8】直線上に配置された複数個の単セルで形成されたセル群の模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るバッテリパックにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1図3は、それぞれ、本実施の形態に係るバッテリパック10の概略全体斜視図、概略分解斜視図、長手方向に沿った概略縦断面図である。このバッテリパック10は、両端が開口した中空四角柱形状のケース12と、該ケース12の中空内部に収容される第1コアパック14、第2コアパック16とを有する。この中のケース12は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる素材に対して押出成形を施すことで作製される。この場合、ケース12は、強度に優れるとともに軽量であり、且つ熱伝導度が高いために伝熱効率に優れる。しかも、安価であるので、ケース12を低コストで得ることができる。
【0015】
ケース12の底側の開口は、ボトムケース18で閉塞される。該ボトムケース18の底面には、放電時に第1コアパック14、第2コアパック16から電力を取り出す一方、充電時に第1コアパック14、第2コアパック16に電力を供給するためのコネクタ20が設けられる。コネクタ20は、正極端子部と負極端子部(いずれも図示せず)を有する。
【0016】
さらに、ボトムケース18と第1コアパック14、第2コアパック16の間には、これら第1コアパック14、第2コアパック16の温度や電圧を管理するコントロールユニットであるバッテリマネージメントユニット(BMU)24が挿入される。BMU24は、外部機器(電動車両等)や充電装置と通信を行う通信部を兼ねる。
【0017】
一方、ケース12の天井側の開口は、トップケース26で閉塞される。該トップケース26には、ユーザがバッテリパック10を持ち上げたり、搬送したりするときに把持するための取っ手28がアーチ形状に形成される。
【0018】
第1コアパック14は、複数の単セル30が第1セルホルダ32a、第2セルホルダ32bに保持されることで構成される。この場合、単セル30は円柱形状をなし、軸方向の両端部に正極端子、負極端子がそれぞれ設けられている。正極は、例えば、第1電極であり、この場合、負極は、正極とは逆の極性の第2電極である。このような単セル30の構成は周知であり、従って、正極端子及び負極端子の図示や詳細な説明は省略する。
【0019】
単セル30の好適な例としては、リチウムイオン二次電池が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。その他の好適な例としては、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等が挙げられる。
【0020】
第1セルホルダ32a、第2セルホルダ32bには、複数個の収容孔34a、34bがそれぞれ貫通形成される。これら収容孔34a、34bは、第1セルホルダ32aと第2セルホルダ32bが重ね合わせられることに伴って互いに連なる。収容孔34a、34bの直径は、単セル30の直径に対応する。また、連なった収容孔34a、34bの長さは、単セル30の高さに対応する。単セル30は、その長手方向がバッテリパック10の長手方向(上下方向)に対して直交する姿勢とされ、この状態で、収容孔34a、34bに個別に挿入されて保持される。
【0021】
収容孔34a、34b内に挿入された単セル30は、その長手方向に直交する横方向に沿って並列される。以下、横方向に並ぶ複数個の単セル30によって形成される一列を「セル群」と表記する。
【0022】
第1セルホルダ32a及び第2セルホルダ32bにおいて、コネクタ20に最近接する最下のセル群では、単セル30は、負極が第2コアパック16に臨む姿勢とされている。また、該最下の直上のセル群では、単セル30は、正極が第2コアパック16に臨む姿勢とされている。以下、負極が第2コアパック16に臨む姿勢の単セル30からなるセル群を「第1セル群」、正極が第2コアパック16に臨む姿勢の単セル30からなるセル群を「第2セル群」と指称する。
【0023】
最下の第2セル群の直上は第1セル群であり、この第1セル群の直上は第2セル群である。このように、第1セル群と第2セル群は交互に配設される。すなわち、隣接するセル群同士では、逆極性の電極端子が同一方向を臨む。
【0024】
本実施の形態では、第1コアパック14に4個の第1セル群と3個の第2セル群が設けられている。以下、区別を容易にするべく、第1セル群の参照符号を、下方から上方に向かう順に40a、40b、40c、40dとする。また、第2セル群の参照符号を、下方から上方に向かう順に42a、42b、42cとする。なお、以下において、「第1セル群の正極(又は負極)」は「第1セル群を形成する単セル30の正極(又は負極)」を意味し、同様に、「第2セル群の正極(又は負極)」は「第2セル群を形成する単セル30の正極(又は負極)」を意味する。
【0025】
第1セル群40aの正極と第2セル群42aの負極は、隣接するセル群同士に跨がるセル群間連絡バスバー44(第1バスバー)を介して電気的に直列接続される。なお、セル群間連絡バスバー44は、第1セル群40aを形成する単セル30の正極同士、第2セル群42aを形成する単セル30の負極同士を電気的に並列接続する役割も果たす。
【0026】
同様に、第2セル群42aの正極と第1セル群40bの負極、第1セル群40bの正極と第2セル群42bの負極、第2セル群42bの正極と第1セル群40cの負極、第1セル群40cの正極と第2セル群42cの負極、第2セル群42cの正極と第1セル群40dの負極が、セル群間連絡バスバー44を介して電気的に直列接続される。勿論、セル群間連絡バスバー44により、同一のセル群を形成する単セル30同士が電気的に並列接続される。
【0027】
なお、最上の第1セル群40dの正極は、コネクタ20の正極端子部に対し、正極側連絡バスバー46(第4バスバー)を介して電気的に接続されている。すなわち、正極側連絡バスバー46は、コネクタ20から最も離間した第1セル群40dの正極と、コネクタ20の正極端子部とを電気的に接続するべく、第1セル群40dから垂下するように延在する。正極側連絡バスバー46は、第1セル群40dを形成する単セル30の正極同士を電気的に並列接続する。
【0028】
第2コアパック16も同様に、複数の単セル30が第3セルホルダ32c、第4セルホルダ32dに保持されることで構成される。すなわち、第3セルホルダ32c、第4セルホルダ32dにそれぞれ貫通形成された複数個の収容孔34c、34dは、第3セルホルダ32cと第4セルホルダ32dが重ね合わせられることに伴って互いに連なる。単セル30は、その長手方向がバッテリパック10の長手方向(上下方向)に対して直交する姿勢とされた状態で、収容孔34c、34dに個別に挿入されて保持される。
【0029】
以下、正極が、第1コアパック14の第1セル群40a〜40dの正極と同一方向を指向するセル群を「第1セル群」と指称し、負極が第1コアパック14の第2セル群42a〜42cの負極と同一方向を指向するセル群を「第2セル群」と指称する。従って、第2コアパック16内で第1セル群を形成する単セル30の正極と、第2セル群を形成する単セル30の負極は、第1コアパック14に臨む。
【0030】
第2コアパック16において、コネクタ20に最近接する最下のセル群は第1セル群であり、その直上は、最下の第2セル群である。また、この第2セル群の直上は第1セル群である。すなわち、第2コアパック16においても、第1セル群と第2セル群が交互に配設される。本実施の形態では、第2コアパック16に4個の第1セル群と3個の第2セル群が設けられている。以下、区別を容易にするべく、第1セル群の参照符号を、下方から上方に向かう順に40e、40f、40g、40hとする。また、第2セル群の参照符号を、下方から上方に向かう順に42d、42e、42fとする。
【0031】
コネクタ20の負極端子部は、負極側連絡バスバー48(第3バスバー)を介して、コネクタ20に最も近接する第1セル群40eの負極に電気的に接続される。また、この第1セル群40eの正極は、第2セル群42dの負極に対し、セル群間連絡バスバー44を介して電気的に直列接続される。
【0032】
同様に、第2セル群42dの正極と第1セル群40fの負極、第1セル群40fの正極と第2セル群42eの負極、第2セル群42eの正極と第1セル群40gの負極、第1セル群40gの正極と第2セル群42fの負極、第2セル群42fの正極と第1セル群40hの負極が、セル群間連絡バスバー44を介して電気的に直列接続される。第1コアパック14と同様に、セル群間連絡バスバー44により、同一のセル群を形成する単セル30同士が電気的に並列接続される。
【0033】
さらに、第2コアパック16の最上に位置する第1セル群40hの正極は、第1コアパック14の最下に位置する第1セル群40aの負極に対し、コアパック間連絡バスバー50(第2バスバー)を介して電気的に直列接続される。すなわち、コアパック間連絡バスバー50は、第2コアパック16内の、コネクタ20から最も離間した第1セル群40hの正極と、第1コアパック14内の、コネクタ20に最も近接する第1セル群40aの負極とを電気的に接続するべく、第1セル群40hから垂下するように延在する。
【0034】
なお、コアパック間連絡バスバー50は、第1セル群40hを形成する単セル30の正極同士を電気的に並列接続する。また、コアパック間連絡バスバー50の垂下部と、正極側連絡バスバー46の垂下部は互いに平行である。
【0035】
このような構成において、全てのセル群間連絡バスバー44の電位を比較すると、後述する理由から、コネクタ20の負極端子部に最も近接する第1セル群40eと、その直上の第2セル群42dとを接続するものの電位が最低となる。その一方で、コネクタ20の正極端子部から最も離間する第1セル群40dと、その直下の第2セル群42cとを接続するセル群間連絡バスバー44が、全てのセル群間連絡バスバー44の中で電位が最高となる。以下、他のセル群間連絡バスバー44との区別を容易にするべく、電位が最低となるセル群間連絡バスバー44を「最低電位バスバー44a」、電位が最高となるセル群間連絡バスバー44を「最高電位バスバー44b」と表記する。
【0036】
第1セルホルダ32a〜第4セルホルダ32dには、枠状部52を形成するための壁部がそれぞれ突出形成される。各セル群間連絡バスバー44、正極側連絡バスバー46の垂下部以外の部位、負極側連絡バスバー48の大部分は、枠状部52に収容される。
【0037】
ケース12の内壁と、該ケース12に臨むセル群間連絡バスバー44との間には、放熱部材としての放熱シート54が介挿される。放熱シート54は、弾性に富み且つ第1セルホルダ32a又は第4セルホルダ32dと、ケース12の内壁との間で圧縮された状態を維持し得るものが好適に選定される。この場合、放熱シート54が、第1コアパック14又は第2コアパック16と、ケース12の内壁とに対して広面積で密着するからである。
【0038】
第1実施形態に係るバッテリパック10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0039】
バッテリパック10を電動車両等の外部機器に装着する場合、ユーザは、取っ手28を把持してバッテリパック10を当該外部機器まで搬送し、コネクタ20と外部機器のコネクタとが電気的に接続されるようにしてバッテリパック10を外部機器のバッテリ装着部に収容する。コネクタ20がボトムケース18の底面に設けられている(図1参照)ので、バッテリパック10は、通常、長手方向が重力方向に沿って延在する姿勢、又は、長手方向が重力方向に対して若干傾斜した姿勢となる。そして、外部機器のスタータスイッチをONにすることにより、ケース12内の各単セル30から外部機器に電力が供給される。すなわち、各単セル30からの放電がなされる。
【0040】
ここで、上下に隣接するセル群同士はセル群間連絡バスバー44を介して電気的に直列接続されており、また、コネクタ20の負極端子部には負極側連絡バスバー48を介して第1セル群40eの負極が接続されるとともに、正極端子部には、正極側連絡バスバー46を介して第1セル群40dの正極が接続されている。さらに、第2コアパック16内の第1セル群40hの正極と、第1コアパック14内の第1セル群40aの負極とが、コアパック間連絡バスバー50を介して接続されている。従って、電子は、負極端子部→第1セル群40e→第2セル群42d→第1セル群40f→第2セル群42e→第1セル群40g→第2セル群42f→第1セル群40h→第1セル群40a→第2セル群42a→第1セル群40b→第2セル群42b→第1セル群40c→第2セル群42c→第1セル群40d→正極端子部の順に移動する。
【0041】
このため、全てのセル群間連絡バスバー44の中では、コネクタ20の負極端子部に最も近接する第1セル群40eと、その直上の第2セル群42dとを接続するものの電位が最低となる。すなわち、当該セル群間連絡バスバー44は最低電位バスバー44aである。その一方で、コネクタ20の正極端子部から最も離間した第1セル群40dと、その直下の第2セル群42cとを接続するセル群間連絡バスバー44が、全てのセル群間連絡バスバー44の中で電位が最高となる。すなわち、当該セル群間連絡バスバー44は最高電位バスバー44bである。
【0042】
ここで、コネクタ20の負極端子部から最も離間した第1セル群40hの正極と、コネクタ20の正極端子部から最も離間した第1セル群40dの負極との間にコアパック間連絡バスバー60を設けたバッテリパック100を図4に示す。なお、理解を容易にするべく、バッテリパック10の構成要素に対応する構成要素には同一の参照符号を付している。
【0043】
このバッテリパック100では、電子は、負極端子部→第1セル群40e→第2セル群42d→第1セル群40f→第2セル群42e→第1セル群40g→第2セル群42f→第1セル群40h→第1セル群40d→第2セル群42c→第1セル群40c→第2セル群42b→第1セル群40b→第2セル群42a→第1セル群40a→正極端子部の順に移動する。従って、全てのセル群間連絡バスバー44の中では、バッテリパック10と同様に、コネクタ20の負極端子部に最も近接する第1セル群40eと、その直上の第2セル群42dとを接続するものの電位が最低となる。
【0044】
その一方で、コネクタ20の正極端子部に最も近接する第1セル群40aと、その直上の第2セル群42aとを接続するセル群間連絡バスバー44が、全てのセル群間連絡バスバー44の中で電位が最高となる。このことから諒解されるように、バッテリパック100では、最低電位バスバー44aと最高電位バスバー44bが対向する位置関係にある。
【0045】
このような構成では、万一、バッテリ装着部からバッテリパック100のケース12内に水が浸入した場合、最低電位バスバー44aと最高電位バスバー44bの間で大きな短絡電流が流れる懸念がある。最低電位バスバー44aと最高電位バスバー44bの電位差が、互いに対向するその他のセル群間連絡バスバー44同士の電位差よりも大きく、しかも、これら最低電位バスバー44a及び最高電位バスバー44bが、セル群間連絡バスバー44の中でボトムケース18に最近接しているからである。
【0046】
これに対し、バッテリパック10では、最低電位バスバー44aがボトムケース18に最近接しているものの、最高電位バスバー44bがボトムケース18から最も離間している。このように、コネクタ20から最も離間した第1セル群40dに、該第1セル群40dとコネクタ20を電気的に接続する正極側連絡バスバー46を設けたことにより、最低電位バスバー44aと最高電位バスバー44bを、互いが対向しない位置関係とすることができる。
【0047】
最低電位バスバー44aと、該最低電位バスバー44aに対向するセル群間連絡バスバー44との電位差は、最低電位バスバー44aと最高電位バスバー44bとの電位差の約1/2である。このように、ボトムケース18に最近接する最低電位バスバー44aとセル群間連絡バスバー44との電位差が小さいことから、バッテリ装着部からバッテリパック10のケース12内に水が浸入した場合であっても、最低電位バスバー44aと、これに対向するセル群間連絡バスバー44との間の短絡電流が小さくなる。
【0048】
以上のように、最低電位バスバー44aと最高電位バスバー44bを、互いが対向しない位置関係としたことにより、仮に短絡が起こったとしても、大きな短絡電流が流れる懸念を払拭することができる。ボトムケース18に最近接する最低電位バスバー44aとセル群間連絡バスバー44との電位差が小さいからである。このため、単セル30の発熱量が小さくなる。従って、バッテリパック10の温度が過度に上昇することを回避することができる。
【0049】
次に、図5及び図6を参照し、第2実施形態に係るバッテリパック70につき説明する。なお、図1図3に示される構成要素に対応する構成要素には、基本的には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
第2実施形態に係るバッテリパック70は、コアパック間連絡バスバー72(第2バスバー)を複数個有する。このコアパック間連絡バスバー72は、平板形状をなす素材の2箇所が折曲されることで略U字形状に折曲されるとともに、第1コアパック14内の第1セル群と第2コアパック16内の第1セル群同士、又は、第1コアパック14内の第2セル群と第2コアパック16内の第2セル群同士を電気的に直列接続する。
【0051】
一層具体的には、第1コアパック14には、ボトムケース18(コネクタ20)に近接する下方から上方に向かって、第1セル群40a、第2セル群42a、第1セル群40b、第2セル群42b、第1セル群40c、第2セル群42c、第1セル群40dがこの順序で配設されている。一方、第2コアパック16には、ボトムケース18(コネクタ20)に近接する下方から上方に向かって、第1セル群40e、第2セル群42d、第1セル群40f、第2セル群42e、第1セル群40g、第2セル群42f、第1セル群40hがこの順序で配設されている。そして、第1セル群40eの負極がコネクタ20の負極端子部に対して負極側連絡バスバー48により電気的に接続される。一方、該第1セル群40eの正極は、コアパック間連絡バスバー72を介して第1セル群40aの負極に電気的に接続される。
【0052】
第1セル群40aの正極は、その直上の第2セル群42aの負極に対し、セル群間連絡バスバー44(第1バスバー)を介して電気的に接続される。また、第2セル群42aの正極は、コアパック間連絡バスバー72を介して第2セル群42dの負極に電気的に接続される。
【0053】
さらに、第2セル群42dの正極は、その直上の第1セル群40fの負極に対し、セル群間連絡バスバー44を介して電気的に接続される。第1セル群40fの正極は、コアパック間連絡バスバー72を介して第1セル群40bの負極に電気的に接続される。
【0054】
以降も同様に、下方に位置するセル群と上方に位置するセル群はセル群間連絡バスバー44を介して電気的に接続され、一方、第1コアパック14内のセル群と、これに対向する第2コアパック16内のセル群とは、コアパック間連絡バスバー72を介して電気的に接続される。そして、コネクタ20から最も離間した第1セル群40hの正極がコアパック間連絡バスバー72を介して第1セル群40dの負極に接続され、該第1セル群40dの正極が、正極側連絡バスバー46(第4バスバー)を介してコネクタ20の正極端子部に電気的に接続される。
【0055】
このバッテリパック70では、放電時、電子は、負極端子部→第1セル群40e→第1セル群40a→第2セル群42a→第2セル群42d→第1セル群40f→第1セル群40b→第2セル群42b→第2セル群42e→第1セル群40g→第1セル群40c→第2セル群42c→第2セル群42f→第1セル群40h→第1セル群40d→正極端子部の順に流れる。従って、全てのコアパック間連絡バスバー72の中では、コネクタ20に最も近接するもの(第1セル群40eと第1セル群40aを接続するもの)が最低電位バスバー72aとなる。コアパック間連絡バスバー72の電位は、上方に向かうに従って大きくなる。すなわち、コネクタ20から最も離間する(第1セル群40hと第1セル群40dを接続する)コアパック間連絡バスバー72が最高電位バスバー72bとなる。
【0056】
すなわち、このバッテリパック70においても、最低電位バスバー72aがボトムケース18に最近接しているものの、最高電位バスバー72bがボトムケース18から最も離間している。このように、コアパック間連絡バスバー72を複数個設けた第2実施形態においても、コネクタ20から最も離間した第1セル群40dに、該第1セル群40dとコネクタ20を電気的に接続する正極側連絡バスバー46を設けたことにより、最低電位バスバー72aと最高電位バスバー72bを、互いが対向しない位置関係とすることができる。
【0057】
最低電位バスバー72aの上方に位置するコアパック間連絡バスバー72における電位は、全てのコアパック間連絡バスバー72中、最低電位バスバー72aの次に大きい。このように、バッテリパック70では、最低電位バスバー72aと、電位が2番目に小さいコアパック間連絡バスバー72とが上下に対向する。このように、ボトムケース18に最近接する最低電位バスバー72aと、これに対向するコアパック間連絡バスバー72の電位差が小さいことから、バッテリ装着部からバッテリパック70のケース12内に水が浸入した場合であっても、最低電位バスバー72aと、この上方に位置するコアパック間連絡バスバー72との間で短絡が起こることが抑制される。
【0058】
以上のように、第2実施形態においても、最低電位バスバー72aと最高電位バスバー72bを、互いが対向しない位置関係としている。従って、第1実施形態と同様に、短絡が起こる懸念を払拭することができる。また、仮に短絡が起こったとしても、短絡電流が小さいので発熱量が小さくなる。このため、バッテリパック70の温度が過度に上昇することを回避することができる。
【0059】
図5及び図6に示されるコアパック間連絡バスバー72は、上記したように平板形状の単一部材が折曲されることで形成されたものであるが、これに代替し、図7に示すコアパック間連絡バスバー80を採用するようにしてもよい。このコアパック間連絡バスバー80は、第1並列部材82と、第2並列部材84と、これら第1並列部材82と第2並列部材84を電気的に接続する直列部材86とを有する。
【0060】
第1並列部材82は、第1本体部88と第1タブ部90によって略L字形状をなす。第1本体部88は、第1セル群40a、第1セル群40b、第1セル群40c、第1セル群40dのいずれかの負極同士、又は、第2セル群42a、第2セル群42b、第2セル群42cのいずれかの正極同士を並列接続する。また、第1タブ部90は、第2セルホルダ32bの外方に露呈し、第1セルホルダ32a側に向かって約90°折曲される。
【0061】
第2並列部材84も同様に、第2本体部92と第2タブ部94によって略L字形状をなす。第2本体部92は、第1セル群40e、第1セル群40f、第1セル群40g、第1セル群40hのいずれかの正極同士、又は、第2セル群42d、第2セル群42e、第2セル群42fのいずれかの負極同士を並列接続する。また、第2タブ部94は、第3セルホルダ32cの外方に露呈し、第4セルホルダ32d側に向かって約90°折曲される。
【0062】
直列部材86は、第1並列部材82から第2並列部材84にわたって橋架される。従って、第1並列部材82を介して並列接続された正極又は負極と、第2並列部材84を介して並列接続された負極又は正極とが、直列部材86を介して直列接続される。
【0063】
このコアパック間連絡バスバー80を備えるバッテリパック96では、バッテリパック70と同様の経路で電子が移動する。従って、このバッテリパック96においても、最低電位バスバー80aと最高電位バスバー80bを、互いが対向しない位置関係とすることができるので、上記と同様に大きな短絡電流が流れる懸念を払拭することができる。また、たとえ短絡が起こったとしても、発熱量が小さいので、単セル30やバッテリパック96の温度が過度に上昇することが回避される。
【0064】
そして、この場合、コアパック間連絡バスバー80を得るに際して平板を複数回折曲する必要がない。この分、コアパック間連絡バスバー80の金属疲労に対する耐久性が大きくなる。また、コアパック間連絡バスバー80は、コアパック間連絡バスバー72に比して折曲部の個数が少ないので、発熱量が低減するという利点がある。
【0065】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、各単セル30の負極を第1電極とし、且つ正極を第2電極とするようにしてもよい。また、第3バスバー、第4バスバーは、それぞれ、正極側連絡バスバー46、負極側連絡バスバー48であってもよい。
【0067】
さらに、セル群は、複数個の単セル30がいわゆる千鳥配置されたものに限定されるものではなく、図8に示すように、直線上に配置されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10、70、96、100…バッテリパック 12…ケース
14、16…第1、第2コアパック 20…コネクタ
24…BMU 30…単セル
32a〜32d…第1〜第4セルホルダ 40a〜40h…第1セル群
42a〜42f…第2セル群
44…セル群間連絡バスバー(第1バスバー)
46…正極側連絡バスバー(第4バスバー)
48…負極側連絡バスバー(第3バスバー)
50、60、72、80…コアパック間連絡バスバー(第2バスバー)
52…枠状部
44a、72a、80a…最低電位バスバー
44b、72b、80b…最高電位バスバー
82…第1並列部材 84…第2並列部材
86…直列部材
【要約】
【課題】複数個の単セルがケース内に収容されたバッテリパックにおいて、ケース内に水が浸入したような場合であっても、バスバー同士の間の短絡電流を可及的に小さくする。
【解決手段】バッテリパック10は、複数個の単セル30を保持した第1コアパック14、第2コアパック16を有する。コネクタ20に最も近接する第1セル群又は第2セル群の単セル30は、第3バスバー48を介してコネクタ20に電気的に接続される。その一方で、コネクタ20から最も離間する第1セル群又は第2セル群の単セル30が、第4バスバー46を介してコネクタ20に電気的に接続される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8