特許第6780107号(P6780107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6780107タイヤ保持装置、これを備えるタイヤ試験システム、及びタイヤ保持装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780107
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】タイヤ保持装置、これを備えるタイヤ試験システム、及びタイヤ保持装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20201026BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   G01M17/02
   B60C19/00 H
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-523242(P2019-523242)
(86)(22)【出願日】2017年6月6日
(86)【国際出願番号】JP2017020982
(87)【国際公開番号】WO2018225154
(87)【国際公開日】20181213
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 達也
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠
【審査官】 川瀬 正巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−197368(JP,A)
【文献】 特開2016−148672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両サイドウォールが鉛直方向に向いている状態のタイヤの上ビード部に嵌り込む上リムと、
前記上リムの下側に配置され、前記タイヤの下ビード部に嵌り込んで、前記上リムとで前記タイヤを保持する下リムと、
前記タイヤの上サイドウォールに接することが可能な上支持体と、
前記タイヤの下サイドウォールに接して前記タイヤを支持する下支持体と、
前記下リムに対して前記下支持体を相対的に鉛直方向に移動させる下支持体移動機構と、
前記下支持体移動機構の動作を制御する制御器と、
を備え、
前記制御器は、
前記上リムが前記タイヤの上ビード部から外れている一方で、前記下リムが前記タイヤの下ビード部に嵌り込んでおり、且つ前記上支持体が前記タイヤの上サイドウォールに接している状態で、前記下支持体を前記タイヤの下サイドウォールに接触させて、前記タイヤを前記下支持体と前記上支持体とで挟み込む挟み込み工程と、
前記タイヤを前記下支持体と前記上支持体とで挟み込んでいる状態を継続しつつ、前記下支持体移動機構を駆動させて、前記下支持体に対して相対的に前記下リムを鉛直下方に移動させ、前記タイヤを前記下リムから引き剥がすタイヤ取外工程と、を実行する、
タイヤ保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤ保持装置において、
記上リムに対して前記上支持体を相対的に鉛直方向に移動させる上支持体移動機構を備え、
前記制御器は、
前記上リムと前記下リムとにより前記タイヤが保持されている状態から、前記上支持体移動機構を駆動させて、前記上リムに対して相対的に前記上支持体を鉛直下方に移動させ、前記上支持体を前記タイヤの上サイドウォールに接触させ、前記上リムに対して相対的に前記タイヤを前記上支持体と共に鉛直下方に移動させて、前記タイヤを前記上リムから引き剥がす引き剥がし工程を、少なくとも前記タイヤ取外工程前に実行する、
タイヤ保持装置。
【請求項3】
両サイドウォールが鉛直方向に向いている状態のタイヤの上ビード部に嵌り込む上リムと、
前記上リムの下側に配置され、前記タイヤの下ビード部に嵌り込んで、前記上リムとで前記タイヤを保持する下リムと、
前記下リムに対して前記上リムを相対的に鉛直方向に移動させるリム移動機構と、
前記タイヤの下サイドウォールに接して前記タイヤを支持する下支持体と、
前記タイヤの上サイドウォールに接することが可能な上支持体と、前記上リムに対して前記上支持体を相対的に鉛直方向に移動させる上支持体移動機構とを有するタイヤストリッパと、
前記リム移動機構及び前記タイヤストリッパのそれぞれの動作を制御する制御器と、
を備え、
前記制御器は、
前記下リムが前記タイヤの下ビード部から外れている一方で、前記上リムが前記タイヤの上ビード部に嵌り込んでおり、且つ前記下支持体が前記タイヤの下サイドウォールに接している状態で、前記タイヤストリッパを駆動させて、前記上支持体を前記タイヤの上サイドウォールに接触させて、前記タイヤを前記上支持体と前記下支持体とで挟み込む挟み込み工程と、
前記タイヤを前記下支持体と前記上支持体とで挟み込んでいる状態を継続しつつ、前記リム移動機構を駆動させて、前記上支持体に対して相対的に前記上リムを鉛直上方に移動させ、前記タイヤを前記上リムから引き剥がすタイヤ取外工程と、を実行する、
タイヤ保持装置。
【請求項4】
請求項3に記載のタイヤ保持装置において、
前記下リムに対して前記下支持体を相対的に鉛直方向に移動させる下支持体移動機構を備え、
前記制御器は、
前記上リムと前記下リムとにより前記タイヤが保持されている状態から、前記下支持体移動機構を駆動させて、前記下リムに対して相対的に前記下支持体を鉛直上方に移動させ、前記下支持体を前記タイヤの下サイドウォールに接触させ、前記下リムに対して相対的に前記タイヤを前記下支持体と共に鉛直上方に移動させて、前記タイヤを前記下リムから引き剥がす引き剥がし工程を、少なくとも前記タイヤ取外工程前に実行する、
タイヤ保持装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のタイヤ保持装置において、
前記上支持体移動機構は、エアシリンダであり、
前記エアシリンダは、鉛直方向に延びるピストンロッドと、前記ピストンロッドの第一端が入り込み、前記ピストンロッドをエア圧で鉛直方向に進退させるシリンダケースとを有し、前記ピストンロッドの第二端に前記上支持体が固定されている、
タイヤ保持装置。
【請求項6】
請求項5に記載のタイヤ保持装置において、
前記シリンダケース内のエア圧を調節するエア圧調節器を備え、
前記制御器は、前記エア圧調節器により、前記タイヤ取外工程中の前記シリンダケース内のエア圧よりも、前記挟み込み工程中の前記シリンダケース内のエア圧を低圧にする、
タイヤ保持装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のタイヤ保持装置において、
前記上リム及び前記下リムは、いずれも、鉛直方向に延びる軸線を中心として配置され、
前記上支持体は、前記軸線に対する径方向で互いに離れている第一上支持体と第二上支持体とを有し、
前記下支持体は、前記軸線に対する径方向で互いに離れている第一下支持体と第二下支持体とを有し、
さらに、前記第一上支持体と前記第二上支持体との間の径方向の距離を変える上支持体間隔変更機構と、前記第一下支持体と前記第二下支持体との間の径方向の距離を変える下支持体間隔変更機構と、を備える、
タイヤ保持装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のタイヤ保持装置において、
前記下支持体は、両サイドウォールが鉛直方向に向いている状態の前記タイヤが載置され、水平方向にタイヤを搬送するコンベアである、
タイヤ保持装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のタイヤ保持装置と、
前記上リムと前記下リムとで保持されている前記タイヤに対して各種計測を行うタイヤ計測器と、
を備えるタイヤ試験システム。
【請求項10】
両サイドウォールが鉛直方向に向いている状態のタイヤの上ビード部に嵌り込む上リムと、
前記上リムの下側に配置され、前記タイヤの下ビード部に嵌り込んで、前記上リムとで前記タイヤを保持する下リムと、
前記タイヤの上サイドウォールに接することが可能な上支持体と、
前記タイヤの下サイドウォールに接して前記タイヤを支持する下支持体と、
前記下リムに対して前記下支持体を相対的に鉛直方向に移動させる下支持体移動機構と、
を備えるタイヤ保持装置の制御方法において、
前記上リムが前記タイヤの上ビード部から外れている一方で、前記下リムが前記タイヤの下ビード部に嵌り込んでおり、且つ前記上支持体が前記タイヤの上サイドウォールに接している状態で、前記下支持体を前記タイヤの下サイドウォールに接触させて、前記タイヤを前記下支持体と前記上支持体とで挟み込む挟み込み工程と、
前記タイヤを前記下支持体と前記上支持体とで挟み込んでいる状態を継続しつつ、前記下支持体移動機構を駆動させて、前記下支持体に対して相対的に前記下リムを鉛直下方に移動させ、前記タイヤを前記下リムから引き剥がすタイヤ取外工程と、を実行する、
タイヤ保持装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載のタイヤ保持装置の制御方法において、
前記タイヤ保持装置は、前記上リムに対して前記上支持体を相対的に鉛直方向に移動させる上支持体移動機構を備えており、
前記上リムと前記下リムとにより前記タイヤが保持されている状態から、前記上支持体移動機構を駆動させて、前記上リムに対して相対的に前記上支持体を鉛直下方に移動させ、前記上支持体を前記タイヤの上サイドウォールに接触させ、前記上リムに対して相対的に前記タイヤを前記上支持体と共に鉛直下方に移動させて、前記タイヤを前記上リムから引き剥がす引き剥がし工程を、少なくとも前記タイヤ取外工程前に実行する、
タイヤ保持装置の制御方法。
【請求項12】
両サイドウォールが鉛直方向に向いている状態のタイヤの上ビード部に嵌り込む上リムと、
前記上リムの下側に配置され、前記タイヤの下ビード部に嵌り込んで、前記上リムとで前記タイヤを保持する下リムと、
前記下リムに対して前記上リムを相対的に鉛直方向に移動させるリム移動機構と、
前記タイヤの下サイドウォールに接して前記タイヤを支持する下支持体と、
前記タイヤの上サイドウォールに接することが可能な上支持体と、前記上リムに対して前記上支持体を相対的に鉛直方向に移動させる上支持体移動機構とを有するタイヤストリッパと、
を備えるタイヤ保持装置の制御方法において、
前記下リムが前記タイヤの下ビード部から外れている一方で、前記上リムが前記タイヤの上ビード部に嵌り込んでおり、且つ前記下支持体が前記タイヤの下サイドウォールに接している状態で、前記タイヤストリッパを駆動させて、前記上支持体を前記タイヤの上サイドウォールに接触させて、前記タイヤを前記上支持体と前記下支持体とで挟み込む挟み込み工程と、
前記タイヤを前記下支持体と前記上支持体とで挟み込んでいる状態を継続しつつ、前記リム移動機構を駆動させて、前記上支持体に対して相対的に前記上リムを鉛直上方に移動させ、前記タイヤを前記上リムから引き剥がすタイヤ取外工程と、を実行する、
タイヤ保持装置の制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載のタイヤ保持装置の制御方法において、
前記タイヤ保持装置は、前記下リムに対して前記下支持体を相対的に鉛直方向に移動させる下支持体移動機構を備えており、
前記上リムと前記下リムとにより前記タイヤが保持されている状態から、前記下支持体移動機構を駆動させて、前記下リムに対して相対的に前記下支持体を鉛直上方に移動させ、前記下支持体を前記タイヤの下サイドウォールに接触させ、前記下リムに対して相対的に前記タイヤを前記下支持体と共に鉛直上方に移動させて、前記タイヤを前記下リムから引き剥がす引き剥がし工程を、少なくとも前記タイヤ取外工程前に実行する、
タイヤ保持装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上リム及び下リムを用いてタイヤを上下から挟みこんで、このタイヤを保持するタイヤ保持装置、これを備えるタイヤ試験システム、及びタイヤ保持装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いられるゴムタイヤを製造する場合、タイヤの品質を担保するために、試験装置によってタイヤを疑似的に膨張(エアインフレート)させた状態で、このタイヤに対して各種の試験が行われる。この種のタイヤ試験システムにおいては、ベルトコンベアを用いてタイヤを試験領域まで搬送した後、この試験領域に配置されている上リム及び下リムによってタイヤのビード部を挟み込むことでタイヤを保持する。そして、タイヤを保持した状態で、このタイヤに対する各種試験を実行する。各種試験が実行された後、このタイヤは、上リム及び下リムから外され、ベルトコンベアにより下流側へ搬送される。
【0003】
以下の特許文献1には、タイヤに対する各種試験が実行された後、上リム及び下リムからタイヤを外す方法が開示されている。この方法では、上リムとベルトコンベアとでタイヤを上下から挟んだ状態で、下リムに対して上リム及びベルトコンベアを一体的に鉛直上方に移動させて、まず、下リムからタイヤが外される。下リムからタイヤが外されると、ベルトコンベアの上昇を停止させる。一方、上リムの上昇は継続する。この結果、上リムに嵌り込んでいるタイヤは、上リムの上昇に伴って上昇して、ベルトコンベアから離れる。このタイヤの上昇過程で、タイヤストリッパがこのタイヤの上サイドウォールに接する。上リムは、その後も、上昇し続ける。タイヤストリッパに対して相対的に上リムが上昇すると、上リムからタイヤが外れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−197368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法では、下リムからタイヤを外した後に、上リムからタイヤを外す際、このタイヤはベルトコンベアから離れているため、上リムからタイヤが外れた瞬間に、タイヤが落下する。この結果、タイヤは、ベルトコンベア上でバウンドする。タイヤがベルトコンベア上でバウンドすると、このタイヤがベルトコンベアから落下して、このタイヤをベルトコンベアで搬送できなくなる場合がある。また、タイヤがベルトコンベアから落下しなくても、ベルトコンベア上の目的の位置に落下しなければ、ベルトコンベアによる搬送後の後処理で不都合が生じる場合もある。
【0006】
そこで、本発明は、タイヤを上リム又は下リムから外した際、このタイヤのバウンドを抑え、水平方向へのタイヤの移動を抑えることができるタイヤ保持装置、これを備えるタイヤ試験システム、及びタイヤ保持装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための発明に係る第一態様のタイヤ保持装置は、
両サイドウォールが鉛直方向に向いている状態のタイヤの上ビード部に嵌り込む上リムと、前記上リムの下側に配置され、前記タイヤの下ビード部に嵌り込んで、前記上リムとで前記タイヤを保持する下リムと、前記タイヤの上サイドウォールに接することが可能な上支持体と、前記タイヤの下サイドウォールに接して前記タイヤを支持する下支持体と、前記下リムに対して前記下支持体を相対的に鉛直方向に移動させる下支持体移動機構と、前記下支持体移動機構の動作を制御する制御器と、を備える。前記制御器は、前記上リムが前記タイヤの上ビード部から外れている一方で、前記下リムが前記タイヤの下ビード部に嵌り込んでおり、且つ前記上支持体が前記タイヤの上サイドウォールに接している状態で、前記下支持体を前記タイヤの下サイドウォールに接触させて、前記タイヤを前記下支持体と前記上支持体とで挟み込む挟み込み工程と、前記タイヤを前記下支持体と前記上支持体とで挟み込んでいる状態を継続しつつ、前記下支持体移動機構を駆動させて、前記下支持体に対して相対的に前記下リムを鉛直下方に移動させ、前記タイヤを前記下リムから引き剥がすタイヤ取外工程と、を実行する。
【0008】
当該タイヤ保持装置では、タイヤ取外工程において、タイヤが下支持体と上支持体とで挟まれた状態で、タイヤを下リムから引き剥がす。このため、タイヤを下リムから引き剥がす過程で、下支持体に対してタイヤがバウンドすることを抑えることができる。しかも、当該タイヤ保持装置では、タイヤが下支持体と上支持体とで挟まれた状態で、タイヤを下リムから引き剥がすため、この引き剥がす過程で、タイヤが水平方向に移動することも防ぐことができる。
【0009】
前記目的を達成するための発明に係る第二態様のタイヤ保持装置は、
前記第一態様のタイヤ保持装置において、前記上リムに対して前記上支持体を相対的に鉛直方向に移動させる上支持体移動機構を備える。前記制御器は、前記上リムと前記下リムとにより前記タイヤが保持されている状態から、前記上支持体移動機構を駆動させて、前記上リムに対して相対的に前記上支持体を鉛直下方に移動させ、前記上支持体を前記タイヤの上サイドウォールに接触させ、前記上リムに対して相対的に前記タイヤを前記上支持体と共に鉛直下方に移動させて、前記タイヤを前記上リムから引き剥がす引き剥がし工程を、少なくとも前記タイヤ取外工程前に実行する。
【0010】
当該タイヤ保持装置では、引き剥がし工程において、タイヤが上支持体と下リムとで挟まれた状態で、タイヤを上リムから引き剥がす。このため、タイヤが安定した状態で、このタイヤを上リムから引き剥がすことができる。
【0011】
前記目的を達成するための発明に係る第三態様のタイヤ保持装置は、
両サイドウォールが鉛直方向に向いている状態のタイヤの上ビード部に嵌り込む上リムと、前記上リムの下側に配置され、前記タイヤの下ビード部に嵌り込んで、前記上リムとで前記タイヤを保持する下リムと、前記下リムに対して前記上リムを相対的に鉛直方向に移動させるリム移動機構と、前記タイヤの下サイドウォールに接して前記タイヤを支持する下支持体と、前記タイヤの上サイドウォールに接することが可能な上支持体と、前記上リムに対して前記上支持体を相対的に鉛直方向に移動させる上支持体移動機構とを有するタイヤストリッパと、前記リム移動機構及び前記タイヤストリッパのそれぞれの動作を制御する制御器と、を備える。前記制御器は、前記下リムが前記タイヤの下ビード部から外れている一方で、前記上リムが前記タイヤの上ビード部に嵌り込んでおり、且つ前記下支持体が前記タイヤの下サイドウォールに接している状態で、前記タイヤストリッパを駆動させて、前記上支持体を前記タイヤの上サイドウォールに接触させて、前記タイヤを前記上支持体と前記下支持体とで挟み込む挟み込み工程と、前記タイヤを前記下支持体と前記上支持体とで挟み込んでいる状態を継続しつつ、前記リム移動機構を駆動させて、前記上支持体に対して相対的に前記上リムを鉛直上方に移動させ、前記タイヤを前記上リムから引き剥がすタイヤ取外工程と、を実行する。
【0012】
当該タイヤ保持装置では、タイヤ取外工程において、タイヤが下支持体と上支持体とで挟まれた状態で、タイヤを上リムから引き剥がす。このため、タイヤを上リムから引き剥がす過程で、下支持体に対してタイヤがバウンドすることを抑えることができる。しかも、当該タイヤ保持装置では、タイヤが下支持体と上支持体とで挟まれた状態で、タイヤを上リムから引き剥がすため、この引き剥がす過程で、タイヤが水平方向に移動することも防ぐことができる。
【0013】
前記目的を達成するための発明に係る第四態様のタイヤ保持装置は、
前記第三態様のタイヤ保持装置において、前記下リムに対して前記下支持体を相対的に鉛直方向に移動させる下支持体移動機構を備える。前記制御器は、前記上リムと前記下リムとにより前記タイヤが保持されている状態から、前記下支持体移動機構を駆動させて、前記下リムに対して相対的に前記下支持体を鉛直上方に移動させ、前記下支持体を前記タイヤの下サイドウォールに接触させ、前記下リムに対して相対的に前記タイヤを前記下支持体と共に鉛直上方に移動させて、前記タイヤを前記下リムから引き剥がす引き剥がし工程を、少なくとも前記タイヤ取外工程前に実行する。
【0014】
当該タイヤ保持装置では、引き剥がし工程において、タイヤが下支持体と上リムとで挟まれた状態で、タイヤを下リムから引き剥がす。このため、タイヤが安定した状態で、このタイヤを下リムから引き剥がすことができる。
【0015】
前記目的を達成するための発明に係る第五態様のタイヤ保持装置は、
前記第二態様から前記第四態様のいずれかのタイヤ保持装置において、前記上支持体移動機構は、エアシリンダである。前記エアシリンダは、鉛直方向に延びるピストンロッドと、前記ピストンロッドの第一端が入り込み、前記ピストンロッドをエア圧で鉛直方向に進退させるシリンダケースとを有する。前記ピストンロッドの第二端に前記上支持体が固定されている。
【0016】
当該タイヤ保持装置では、シリンダケース内に適切な圧力のエアを供給しておけば、弾性体であるタイヤを上支持体で確実に押え付けることができる。よって、エアシリンダを上支持体移動機構として用いることにより、上支持体移動機構の制御が容易になる。
【0017】
前記目的を達成するための発明に係る第六態様のタイヤ保持装置は、
前記第五態様のタイヤ保持装置において、前記シリンダケース内のエア圧を調節するエア圧調節器を備える。前記制御器は、前記エア圧調節器により、前記タイヤ取外工程中の前記シリンダケース内のエア圧よりも、前記挟み込み工程中の前記シリンダケース内のエア圧を低圧にする。
【0018】
当該タイヤ保持装置では、シリンダケース内の圧力を調節することにより、挟み込み工程中、タイヤに上支持体が強く押し付けられて、このタイヤの一部が大きく変形することを抑制することができる。
【0019】
前記目的を達成するための発明に係る第七態様のタイヤ保持装置は、
前記第一態様から前記第六態様のいずれかのタイヤ保持装置において、前記上リム及び前記下リムは、いずれも、鉛直方向に延びる軸線を中心として配置されている。前記上支持体は、前記軸線に対する径方向で互いに離れている第一上支持体と第二上支持体とを有する。前記下支持体は、前記軸線に対する径方向で互いに離れている第一下支持体と第二下支持体とを有する。さらに、前記第一上支持体と前記第二上支持体との間の径方向の距離を変える上支持体間隔変更機構と、前記第一下支持体と前記第二下支持体との間の径方向の距離を変える下支持体間隔変更機構と、を備える。
【0020】
当該タイヤ保持装置では、タイヤサイズが変わった場合でも、第一上支持体及び第二上支持体をタイヤの上サイドウォールに接触させることができると共に、第一下支持体及び第二下支持体をタイヤの下サイドウォールに接触させることができる。
【0021】
前記目的を達成するための発明に係る第八態様のタイヤ保持装置は、
前記第一態様から前記第七態様のいずれかのタイヤ保持装置において、前記下支持体は、両サイドウォールが鉛直方向に向いている状態の前記タイヤが載置され、水平方向にタイヤを搬送するコンベアである。
【0022】
前記目的を達成するための発明に係る第九態様のタイヤ試験システムは、
前記第一態様から前記第八態様のいずれかのタイヤ保持装置と、前記上リムと前記下リムとで保持されている前記タイヤに対して各種計測を行うタイヤ計測器と、を備える。
【0023】
前記目的を達成すための発明に係る第十態様のタイヤ保持装置の制御方法は、以下のタイヤ保持装置の制御方法である。
タイヤ保持装置は、両サイドウォールが鉛直方向に向いている状態のタイヤの上ビード部に嵌り込む上リムと、前記上リムの下側に配置され、前記タイヤの下ビード部に嵌り込んで、前記上リムとで前記タイヤを保持する下リムと、前記タイヤの上サイドウォールに接することが可能な上支持体と、前記タイヤの下サイドウォールに接して前記タイヤを支持する下支持体と、前記下リムに対して前記下支持体を相対的に鉛直方向に移動させる下支持体移動機構と、を備える。
当該制御方法では、前記上リムが前記タイヤの上ビード部から外れている一方で、前記下リムが前記タイヤの下ビード部に嵌り込んでおり、且つ前記上支持体が前記タイヤの上サイドウォールに接している状態で、前記下支持体を前記タイヤの下サイドウォールに接触させて、前記タイヤを前記下支持体と前記上支持体とで挟み込む挟み込み工程と、前記タイヤを前記下支持体と前記上支持体とで挟み込んでいる状態を継続しつつ、前記下支持体移動機構を駆動させて、前記下支持体に対して相対的に前記下リムを鉛直下方に移動させ、前記タイヤを前記下リムから引き剥がすタイヤ取外工程と、を実行する。
【0024】
前記目的を達成すための発明に係る第十一態様のタイヤ保持装置の制御方法は、
前記第十態様のタイヤ保持装置の制御方法において、前記タイヤ保持装置は、前記上リムに対して前記上支持体を相対的に鉛直方向に移動させる上支持体移動機構を備える。
当該制御方法では、前記上リムと前記下リムとにより前記タイヤが保持されている状態から、前記上支持体移動機構を駆動させて、前記上リムに対して相対的に前記上支持体を鉛直下方に移動させ、前記上支持体を前記タイヤの上サイドウォールに接触させ、前記上リムに対して相対的に前記タイヤを前記上支持体と共に鉛直下方に移動させて、前記タイヤを前記上リムから引き剥がす引き剥がし工程を、少なくとも前記タイヤ取外工程前に実行する。
【0025】
前記目的を達成すための発明に係る第十二態様のタイヤ保持装置の制御方法は、以下のタイヤ保持装置の制御方法である。
タイヤ保持装置は、両サイドウォールが鉛直方向に向いている状態のタイヤの上ビード部に嵌り込む上リムと、前記上リムの下側に配置され、前記タイヤの下ビード部に嵌り込んで、前記上リムとで前記タイヤを保持する下リムと、前記下リムに対して前記上リムを相対的に鉛直方向に移動させるリム移動機構と、前記タイヤの下サイドウォールに接して前記タイヤを支持する下支持体と、前記タイヤの上サイドウォールに接することが可能な上支持体と、前記上リムに対して前記上支持体を相対的に鉛直方向に移動させる上支持体移動機構とを有するタイヤストリッパと、を備える。
当該制御方法では、前記下リムが前記タイヤの下ビード部から外れている一方で、前記上リムが前記タイヤの上ビード部に嵌り込んでおり、且つ前記下支持体が前記タイヤの下サイドウォールに接している状態で、前記タイヤストリッパを駆動させて、前記上支持体を前記タイヤの上サイドウォールに接触させて、前記タイヤを前記上支持体と前記下支持体とで挟み込む挟み込み工程と、前記タイヤを前記下支持体と前記上支持体とで挟み込んでいる状態を継続しつつ、前記リム移動機構を駆動させて、前記上支持体に対して相対的に前記上リムを鉛直上方に移動させ、前記タイヤを前記上リムから引き剥がすタイヤ取外工程と、を実行する。
【0026】
前記目的を達成すための発明に係る第十三態様のタイヤ保持装置の制御方法は、
前記第十二態様のタイヤ保持装置の制御方法において、前記タイヤ保持装置は、前記下リムに対して前記下支持体を相対的に鉛直方向に移動させる下支持体移動機構を備える。
当該制御方法では、前記上リムと前記下リムとにより前記タイヤが保持されている状態から、前記下支持体移動機構を駆動させて、前記下リムに対して相対的に前記下支持体を鉛直上方に移動させ、前記下支持体を前記タイヤの下サイドウォールに接触させ、前記下リムに対して相対的に前記タイヤを前記下支持体と共に鉛直上方に移動させて、前記タイヤを前記下リムから引き剥がす引き剥がし工程を、少なくとも前記タイヤ取外工程前に実行する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、タイヤを上リム又は下リムから外した際、このタイヤのバウンドを抑え、水平方向へのタイヤの移動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第一実施形態におけるタイヤ試験システムの平面図である。
図2図1におけるII−II線断面図である。
図3図1におけるIII−III線断面図である。
図4】本発明の第一実施形態におけるタイヤストリッパ及びストリッパ間隔変更機構の正面図である。
図5図4におけるV−V線断面図である。
図6】本発明の第一実施形態における制御器の機能ブロック図である。
図7】本発明の第一実施形態におけるタイヤ取外方法の手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の第一実施形態で、タイヤがセンタコンベアで試験領域内に搬送されてきたときの状態を示す説明図である。
図9】本発明の第一実施形態で、タイヤに上リム及び下リムが嵌り込む工程を示す説明図である。
図10】本発明の第一実施形態における引き剥がし工程を示す説明図である。
図11】本発明の第一実施形態における挟み込み工程を示す説明図である。
図12】本発明の第一実施形態におけるタイヤ取外工程を示す説明図である。
図13】本発明の第二実施形態におけるタイヤ取外方法の手順を示すフローチャートである。
図14】本発明の第二実施形態における引き剥がし工程及び挟み込み工程を示す説明図(その1)である。
図15】本発明の第二実施形態における引き剥がし工程及び挟み込み工程を示す説明図(その2)である。
図16】本発明の第二実施形態におけるタイヤ取外工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るタイヤ試験システムの各種実施形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
「第一実施形態」
本発明に係るタイヤ試験システムの第一実施形態について、図1図12を参照して説明する。
【0031】
本実施形態のタイヤ試験システムは、図1図3に示すように、試験対象のタイヤTに前処理を施す前処理装置10と、このタイヤTに対して各種試験を行う試験装置20と、試験後のタイヤTに後処理を施す後処理装置50と、これらの装置10,20,50の動作を制御する制御器100(図6参照)と、を備える。
【0032】
前処理装置10は、入口コンベア11と、センタリング機構12と、図示されていない潤滑剤塗布機構と、を備える。入口コンベア11は、タイヤTを所定の方向に搬送する。以下のこの方向をタイヤ搬送方向Xとする。また、このタイヤ搬送方向Xの一方の側を下流側(+)X、この下流側(+)Xの反対側を上流側(−)Xとする。この入口コンベア11には、両サイドウォールTwu,Twdが鉛直方向に向けられた状態のタイヤTが載置される。この入口コンベア11は、載置されたタイヤTを上流側(−)Xから下流側(+)Xへ搬送する。
【0033】
センタリング機構12は、入口コンベア11上の入口搬送経路の所定位置に、タイヤTの中心を位置させる。この所定位置は、入口搬送経路の経路幅方向Yにおける中央である。よって、このセンタリング機構12は、タイヤTをセンタリングする。図示されていない潤滑剤塗布機構は、センタリングされたタイヤTの上ビード部Tbu及び下ビード部Tbdに潤滑剤を塗布する。
【0034】
試験装置20は、タイヤ保持装置30と、タイヤ計測器39と、これらを支えるフレーム21と、を備える。タイヤ保持装置30は、タイヤTを回転可能に保持する。タイヤ保持装置30は、センタコンベア22を備える。このセンタコンベア22は、入口コンベア11の下流側(+)Xに配置され、入口コンベア11のタイヤ搬送方向Xと同じ方向にタイヤTを搬送する。よって、このセンタコンベア22のセンタ搬送経路の経路幅方向Yも、入口搬送経路の経路幅方向Yと同じ方向である。タイヤ計測器39は、タイヤ保持装置30で保持されているタイヤTに関する各種計測を行う。
【0035】
後処理装置50は、出口コンベア51と、図示されていないマーキング機構と、を備える。出口コンベア51は、センタコンベア22の下流側(+)Xに配置され、入口コンベア11及びセンタコンベア22のタイヤ搬送方向Xと同じ方向にタイヤTを搬送する。よって、この出口コンベア51の出口搬送経路の経路幅方向Yも、入口搬送経路及びセンタ搬送経路の経路幅方向Yと同じ方向である。出口搬送経路の鉛直方向のレベルは、入口搬送経路の鉛直方向のレベルと同じである。
【0036】
試験装置20におけるタイヤ保持装置30は、図2及び図3に示すように、前述のセンタコンベア22の他、上スピンドル31uと、上リムチャック機構32uと、下スピンドル31dと、下リムチャック機構32dと、リムエレベータ37と、コンベア昇降装置25と、二つのタイヤストリッパ40と、ストリッパ間隔変更機構45と、を備える。
【0037】
上スピンドル31u及び下スピンドル31dは、いずれも、鉛直方向に延びる回転軸線Lrを中心として、円柱状の部材である。下スピンドル31dは、フレーム21のベース21a上にて、回転軸線Lrを中心として回転駆動される。下リムチャック機構32dは、タイヤTの下ビード部Tbdに嵌り込む下リム33dを保持する。下リム33dは、下リムチャック機構32dに保持されることで、下スピンドル31dに装着された状態になる。上リムチャック機構32uは、タイヤTの上ビード部Tbuに嵌り込む上リム33uを保持する。上リム33uは、上リムチャック機構32uに保持されることで、上スピンドル31uに装着された状態になる。
【0038】
タイヤストリッパ40及びストリッパ間隔変更機構45については、後述する。
【0039】
リムエレベータ(リム移動機構)37は、フレーム21のメインフレーム21bに、鉛直方向に移動可能に支持されている。このリムエレベータ37には、前述の上スピンドル31uが支持されている。
【0040】
リムエレベータ37は、上スピンドル31uの回転軸線Lrを、下スピンドル31dの回転軸線Lrと一致させた状態で昇降する。リムエレベータ37が下降すると、上スピンドル31uの下部が下スピンドル31dの内部に挿入される。上スピンドル31uは、下スピンドル31d内に設けられたロック機構(図示せず)により、所定の挿入位置で下スピンドル31dに結合される。上スピンドル31uは、ロック機構により下スピンドル31dと結合されると、下スピンドル31dの回転に伴って一体回転する。
【0041】
前述のセンタコンベア22は、リニアガイド等の案内手段25aを介してメインフレーム21bに、鉛直方向に移動可能に支持されている。このセンタコンベア22は、サーボモータ(図示せず)を備えるコンベア昇降装置(下支持体移動機構)25により、上限位置と下限位置との間で鉛直方向に昇降する。センタコンベア22の上限位置は、図2及び図3中の想像線で示すように、センタコンベア22の上面のレベル、言い換えるとセンタ搬送経路のレベルが、入口搬送経路及び出口搬送経路のレベルと同じレベルになる位置である。センタコンベア22の下限位置は、図2及び図3中の実線で示すように、センタコンベア22の上面のレベルが、下スピンドル31dに装着されている下リム33dより下になる位置である。
【0042】
センタコンベア22のセンタ搬送経路が上限位置に位置している際、上スピンドル31u及び下スピンドル31dの回転軸線Lrを通り、このセンタ搬送経路上でタイヤ搬送方向Xに延びる仮想線が経路中心線Lcである。前処理装置10のセンタリング機構12は、この経路中心線Lc上にタイヤTの中心を位置させる。
【0043】
センタコンベア(下支持体)22は、経路幅方向Yで、互いに所定距離離間した一対のベルト23を有している。一対のベルト23のうち、一方のベルト23と他方のベルト23とは、回転軸線Lrを通る経路中心線Lcを基準にして、経路幅方向Yで対称な位置に配置されている。一対のベルト23の経路幅方向Yにおける両者の間隔は、公知のベルト間隔変更機構(下支持体間隔変更機構)24により調整可能である。このため、下スピンドル31d及び下リム33dは、センタコンベア22の昇降の際に、一対のベルト23間を通過可能である。
【0044】
前述した二つのタイヤストリッパ40は、いずれも、上リム33uに嵌り込んでいるタイヤTを、この上リム33uに対して相対的に鉛直方向に移動させて、上リム33uからタイヤTを外す。ストリッパ間隔変更機構(上支持体間隔変更機構)45は、二つのタイヤストリッパ40のそれぞれを前述の回転軸線Lrに対する径方向に移動させる。
【0045】
タイヤストリッパ40は、図4及び図5に示すように、押付板(上支持体)42と、押付板移動機構(上支持体移動機構)41と、を有する。押付板移動機構41は、本実施形態ではエアシリンダである。この押付板移動機構41は、シリンダケース41cと、ピストンロッド41rと、ピストン41pと、を有する。ピストンロッド41rの基端には、ピストン41pが固定されている。ピストンロッド41rの基端及びピストン41pは、シリンダケース41c内に入っている。ピストンロッド41rの先端には、板状の押付板42が固定されている。ピストンロッド41rの先端及び押付板42は、シリンダケース41cから露出している。シリンダケース41c内は、ピストン41pにより、第一室と第二室とに仕切られている。シリンダケース41cには、第一室に連通する第一エアライン43l1と、第二室に連通する第二エアライン43l2とが接続されている。第一エアライン43l1には、エア圧調節器43rが設けられている。第一エアライン43l1は、切替弁43vの第一ポートに接続され、第二エアライン43l2は、切替弁43vの第二ポートに接続されている。この切替弁43vの第三ポートには、エア供給源43sから延びるエア供給ライン43lsが接続されている。本実施形態では、このエア圧調節器43rにより、シリンダケース41c内の圧力が所定の圧力に調整される。シリンダケース41c内に、エア供給源43sからエア供給ライン43ls、切替弁43v、及び第一エアライン43l1を介して、所定圧力のエアが供給されると、ピストン41pと共に、ピストンロッド41r及び押付板42が移動する。押付板42は、上リム33uに嵌り込んでいるタイヤTの上サイドウォールに接して、このタイヤTを鉛直下方に押す。
【0046】
ストリッパ間隔変更機構45は、ネジ軸46、レール46r、ガイド46g、ナット部材47、軸受48b、モータ48mと、間隔変更機構ベース49a、シリンダ取付プレート49bを有する。ネジ軸46及びレール46rは、いずれも、上スピンドル31u及び下スピンドル31dの回転軸線Lrに対して垂直な水平方向に延びている。なお、本実施形態では、ネジ軸46及びレール46rは、いずれも、水平方向であるタイヤ搬送方向Xに延びている。ナット部材47には、雌ネジが形成されている。このナット部材47は、ネジ軸46に捩じ込まれている。軸受48bは、ネジ軸46をその中心軸線回りに回転可能に支持する。モータ48mは、ネジ軸46をその中心軸線回りに回転させる。モータ48m及び軸受48bは、いずれも、間隔変更機構ベース49aに固定されている。この間隔変更機構ベース49aは、前述のリムエレベータ37に固定されている。シリンダ取付プレート49bは、間隔変更機構ベース49aに対して、鉛直方向に離間して対向している。このシリンダ取付プレート49bには、タイヤストリッパ40のピストンロッド41rが鉛直方向に進退するよう、タイヤストリッパ40のシリンダケース41cが固定されている。このシリンダ取付プレート49bは、ナットブラケット49cによりナット部材47と接続されている。シリンダ取付プレート49bと間隔変更機構ベース49aとの間には、レール46r及びガイド46gが配置されている。レール46rは、間隔変更機構ベース49aに固定されている。ガイド46gは、このレール46rに対してスライド可能に、このレール46rに装着されている。このガイド46gは、シリンダ取付プレート49bに固定されている。
【0047】
以上の構成により、モータ48mが駆動して、ネジ軸46がその中心軸線回りに回転すると、ナット部材47及びこのナット部材47に連結されているタイヤストリッパ40が水平方向に移動する。
【0048】
本実施形態において、二つのタイヤストリッパ40のピストンロッド41rは、前述の経路中心線Lcの上方に位置している。また、二つのタイヤストリッパ40は、上スピンドル31u及び下スピンドル31dの回転軸線Lrを基準にして、搬送方向Xで対称な位置に配置されている。二つのタイヤストリッパ40のうち、第一タイヤストリッパ40uに接続されているナット部材47の雌ネジは、第二タイヤストリッパ40dに接続されているナット部材47の雌ネジに対して逆ネジである。このため、ネジ軸46が回転して、第一タイヤストリッパ40uが上スピンドル31u及び下スピンドル31dの回転軸線Lrに対して遠ざかる方向に移動すると、第二タイヤストリッパ40dもこの回転軸線Lrに対して遠ざかる方向に移動する。逆に、ネジ軸46が回転して、第一タイヤストリッパ40uが回転軸線Lrに対して近づく方向に移動すると、第二タイヤストリッパ40dもこの回転軸線Lrに対して近づく方向に移動する。以上のように、二つのタイヤストリッパ40が移動することで、二つのタイヤストリッパ40で外径の異なるタイヤTのサイドウォールを押すことができる。
【0049】
制御器100は、前述したように、前処理装置10、試験装置20、及び後処理装置50の動作を制御する。この制御器100は、図6に示すように、前処理装置10の動作を制御する前処理制御部110と、試験装置20の動作を制御する試験制御部120と、後処理装置50の動作を制御する後処理制御部130と、を有する。試験制御部120は、下スピンドル31dを回転させるサーボモータの動作を制御するスピンドル回転制御部121と、センタコンベア22の動作を制御するセンタコンベア制御部122と、リムエレベータ37の動作を制御するリム移動制御部123と、コンベア昇降装置25の動作を制御するコンベア昇降制御部124と、タイヤストリッパ40の動作を制御するストリッパ駆動制御部125と、ベルト間隔変更機構24の動作を制御するベルト間隔制御部126と、ストリッパ間隔変更機構45の動作を制御するストリッパ間隔制御部127と、を有する。
【0050】
次に、以上で説明したタイヤ試験システムの動作について説明する。
入口コンベア11上にタイヤTが載置されると、前処理装置10のセンタリング機構12が動作して、このタイヤTの中心を入口搬送経路の中心、言い換えると、経路中心線Lc上に位置させる。センタリング機構12が動作した後、前処理装置10の潤滑剤塗布機構は、タイヤTの上ビード部Tbu及び下ビード部Tbdに潤滑剤を塗布する。
【0051】
タイヤTへの潤滑剤塗布が終了すると、入口コンベア11及びセンタコンベア22が駆動開始し、このタイヤTを下流側(+)Xへ搬送する。制御器100のセンタコンベア制御部122は、センタコンベア22の駆動量又はセンタコンベア22の駆動時間等から、タイヤTが、図8に示す試験領域Rt内に搬送されてきたか否かを判断する。この試験領域Rtは、回転軸線Lrを中心とした、外径がタイヤTの外径とほぼ同じ外径の円柱の領域である。センタコンベア制御部122は、図8に示すように、タイヤTが試験領域Rt内に搬送されてきたと判断すると、センタコンベア22を停止させる。なお、センタコンベア制御部122は、タイヤTの位置を検知する位置センサからの信号に基づいてセンタコンベア22の駆動量を制御してもよい。
【0052】
センタコンベア22が停止すると、コンベア昇降制御部124がコンベア昇降装置25を駆動させて、図9に示すように、センタコンベア22及びこの上に載置されているタイヤTを下降させると共に、リムエレベータ37を駆動させて、上スピンドル31u及び上リム33uを下降させる。リム移動制御部123は、上スピンドル31u及び上リム33uの下降速度がセンタコンベア22の下降速度と同じになるよう、若しくはほぼ同じになるよう、リムエレベータ37を駆動制御する。この下降過程で、タイヤTの上ビード部Tbuに上リム33uが嵌り込み、このタイヤTの下ビード部Tbdに下スピンドル31dに装着されている下リム33dが嵌り込む。この結果、タイヤTは、上リム33uおよび下リム33dによって挟み込まれる。また、上スピンドル31uの下部が、下スピンドル31d内に入り込む。この上スピンドル31uは、下スピンドル31d内に設けられたロック機構(図示せず)により、下スピンドル31dに結合される。この段階では、センタコンベア22がタイヤTから下方に離れる。
【0053】
その後、外部から上スピンドル31u又は下スピンドル31d内を経て、タイヤTの内部にエアが供給される。タイヤTの内部にエアが供給されると、スピンドル回転制御部121が下スピンドル31dを回転させる。この下スピンドル31dの回転に伴って、この下スピンドル31dに装着されている下リム33d、この下スピンドル31dに結合されている上スピンドル31u、この上スピンドル31uに装着されている上リム33uが、下スピンドル31dと一体回転する。この結果、上リム33uおよび下リム33dによって挟み込まれているタイヤTも回転する。計測制御部128は、このタイヤTの回転中、このタイヤTに関する各種計測を実行させる。
【0054】
以上の各種計測が終了すると、タイヤTからエアが排気される。さらに、ロック機構による上スピンドル31uと下スピンドル31dとの結合状態が解除される。
【0055】
タイヤTに関する各種計測が終了し、上スピンドル31uと下スピンドル31dとの結合状態が解除されると、上スピンドル31u及び下スピンドル31dからタイヤTを取外すタイヤ取外処理が実行される。
【0056】
このタイヤ取外処理について、図7に示すフローチャートに従って説明する。
【0057】
まず、タイヤTを下リム33dから引き剥がす引き剥がし工程(S1)が実行される。この引き剥がし工程(S1)の実行前、タイヤTは、図9に示すように、上リム(第一リム)33uと下リム(第二リム)33dとにより保持されている。この引き剥がし工程(S1)では、図10に示すように、まず、コンベア昇降制御部124が、コンベア昇降装置(下支持体移動機構、第二移動機構)25を駆動させ、センタコンベア(第二支持体)22を上昇させて、このセンタコンベア22の上面をタイヤTの下サイドウォールTwdに接触させる。または、センタコンベア22でタイヤTを支持させる。その後、コンベア昇降制御部124がコンベア昇降装置25を継続駆動させて、センタコンベア22を上昇させると共に、リム移動制御部123がリムエレベータ37を駆動させて、リムエレベータ37と共に上スピンドル31u及び上リム33uを上昇させる。リム移動制御部123は、上スピンドル31u及び上リム33uの上昇速度がセンタコンベア22の上昇速度と同じになるよう、若しくはほぼ同じになるよう、リムエレベータ37を駆動制御する。よって、タイヤTは、センタコンベア22と上リム33uとで挟まれた状態のまま上昇する。このタイヤTの上昇により、下リム33dがタイヤTの下ビード部Tbdから抜ける。すなわち、タイヤTは下リム(第二リム)33dから引き剥がされる。以上のように、本実施形態では、タイヤTがセンタコンベア(下支持体、第二支持体)22と上リム(第一リム)33uとで挟まれた状態で、タイヤTを下リム(第二リム)33dから引き剥がす。よって、本実施形態では、タイヤTが安定した状態で、このタイヤTを下リム(第二リム)33dから引き剥がすことができる。
【0058】
引き剥がし工程(S1)が完了した時点で、上リム(第一リム)33uが未だタイヤTの上ビード部Tbuに嵌り込んでおり、センタコンベア(下支持体、第二支持体)22がタイヤTの下サイドウォールTwdに接している状態である。
【0059】
引き剥がし工程(S1)が完了すると、図11に示すように、タイヤTを押付板(上支持体、第一支持体)42とセンタコンベア(下支持体、第二支持体)22とで挟み込む挟み込み工程(S2)が実行される。この挟み込み工程(S2)では、ストリッパ駆動制御部125が押付板移動機構(上支持体移動機構、第一移動機構)41を駆動させて、タイヤストリッパ40の押付板(上支持体、第一支持体)42を下降させて、押付板42をタイヤTの上サイドウォールTwuに接触させる。この結果、タイヤTは押付板42とセンタコンベア22とで鉛直方向から挟まれた状態になる。
【0060】
次に、図12に示すように、タイヤTを押付板(上支持体)42とセンタコンベア(下支持体)22とで挟み込んでいる状態を継続しつつ、押付板(上支持体、第一支持体)42に対して相対的に上リム(第一リム)33uを鉛直上方に移動させ、タイヤTを上リム33uから引き剥がすタイヤ取外工程(S3)が実行される。このタイヤ取外工程(S3)では、コンベア昇降制御部124がコンベア昇降装置25を駆動させて、センタコンベア22を上昇させると共に、リム移動制御部123がリムエレベータ37を駆動させて、リムエレベータ37と共に、上スピンドル31u及び上リム33uを上昇させる。センタコンベア22が上限位置に至ると、コンベア昇降制御部124がコンベア昇降装置25を停止させる。一方、リム移動制御部123は、その後も、リムエレベータ37を駆動させて、リムエレベータ37と共に、上スピンドル31u及び上リム33uを上昇させる。よって、センタコンベア22と上リム33uとの間の鉛直方向の距離は、センタコンベア22が上限位置で停止した後、大きくなる。センタコンベア22と上リム33uとの間の鉛直方向の距離が大きくなっている間、押付板42はタイヤTを下方に押し付けている状態を維持する。このため、押付板(上支持体、第一支持体)42に対して上リム(第一リム)33uが相対的に鉛直上方に移動することになる。この上リム33uの上昇により、上リム33uがタイヤTの上ビード部Tbuから抜ける。すなわち、タイヤTは上リム(第一リム)33uから引き剥がされる。以上で、タイヤ取外工程(S3)が完了する。
【0061】
タイヤ取外工程(S3)の完了で、上スピンドル31u及び下スピンドル31dからタイヤTを取外すタイヤ取外処理が終了する。
【0062】
タイヤ取外処理が終了すると、センタコンベア22が駆動して、センタコンベア22上のタイヤTを下流側(+)Xに搬送する。センタコンベア22の上限位置は、前述したように、センタ搬送経路Pcのレベルが入口搬送経路及び出口搬送経路のレベルと同じレベルの位置である。このため、センタコンベア22上のタイヤTは、このセンタコンベア22から出口コンベア51に乗り移る。タイヤTは、出口コンベア51上で、図示されていないマーキング機構により、計測結果等の各種情報がマーキングされる。
【0063】
以上で、このタイヤ試験システムの動作が完了する。
【0064】
以上のように、本実施形態では、タイヤTがセンタコンベア22と押付板42とで挟まれた状態で、タイヤTを上リム33uから引き剥がす(S3:タイヤ取外工程)。このため、タイヤTを上リム33uから引き剥がす過程で、このタイヤTが一時的に上リム33uと一体的に上昇して、センタコンベア22から離れることを防ぐことができる。従って、本実施形態では、タイヤ取外工程(S3)で、タイヤTがセンタコンベア22上でバウンドすることを抑えることができる。しかも、本実施形態では、タイヤTがセンタコンベア22と押付板42とで挟まれた状態で、タイヤTを上リム33uから引き剥がすため、タイヤTが試験領域Rtから水平方向に外れることを防ぐことができる。
【0065】
なお、本実施形態では、エアシリンダを押付板移動機構41として用いている。しかしながら、リニアアクチュエータを押付板移動機構41として用いてもよい。但し、リニアアクチュエータを押付板移動機構41として用いる場合、リニアアクチュエータのベース部分に対するリニアアクチュエータの駆動端の相対位置を制御する必要が生じるため、弾性体であるタイヤを押え付けるためには、このリニアアクチュエータの制御が複雑になる。一方、本実施形態のように、エアシリンダを押付板移動機構41として用いる場合、シリンダケース41c内にエア圧をかけておけば、弾性体であるタイヤTを容易に且つ確実に押え付けることができる。
【0066】
挟み込み工程(S2)で、タイヤTをセンタコンベア22と押付板42とで挟み込むのは、主としてタイヤTを安定させるためである。一方、タイヤ取外工程(S3)で、押付板(第一支持体)42に対して相対的に上リム(第一リム)33uを鉛直上方に移動させるのは、タイヤTを上リム33uから引き剥がすためである。このため、エア圧調節器43rにより、挟み込み工程(S2)中のシリンダケース41c内のエア圧よりも、タイヤ取外工程(S3)中のシリンダケース41c内のエア圧を高圧にすることが好ましい。このように、シリンダケース41c内の圧力を調節することにより、タイヤ取外工程(S3)でタイヤTを上リム33uから確実に引き剥がすと共に、挟み込み工程(S2)中、タイヤTに押付板42が強く押し付けられて、このタイヤTの一部が大きく変形することを抑制することができる。以上、本実施形態では、シリンダケース41c内の圧力を調整すれば、タイヤ取外工程(S3)中のタイヤTへの押付力と、挟み込み工程(S2)中のタイヤTへの押付力とを容易に変更することができる。したがって、このような観点からも、押付板移動機構41としてリニアアクチュエータを用いるよりも、エアシリンダを用いる方が好ましい。
【0067】
また、以上の実施形態では、センタコンベア22及び上リム33uを上昇させている状態から、センタコンベア22の上昇のみを停止させて、センタコンベア22と上リム33uとの間の鉛直方向の距離を大きくしている。そして、センタコンベア22と上リム33uとの間の鉛直方向の距離を大きくしている過程で、上リム33uからタイヤTを引き剥がしている。しかしながら、センタコンベア22の上昇に先立って上リム33uを上昇させ、センタコンベア22と上リム33uとの間の鉛直方向の距離を大きくしてよい。そして、このセンタコンベア22と上リム33uとの間の鉛直方向の距離を大きくしている過程で、上リム33uからタイヤTを引き剥がしてもよい。すなわち、上リム33uからのタイヤTの引き剥がしは、センタコンベア22の上昇開始前に行っても、センタコンベア22の上昇停止後に行ってもよい。
【0068】
また、本実施形態では、センタコンベア(下支持体)22を構成する二つのベルト23の間隔を変更するベルト間隔変更機構(下支持体間隔変更機構)24と、二つの押付板(上支持体)42の間隔を変更するストリッパ間隔変更機構(上支持体間隔変更機構)45と、を備えている。このため、タイヤサイズが変わった場合でも、センタコンベア22を構成する二つのベルトをタイヤTの下サイドウォールTwdに接触させることができると共に、二つの押付板42をタイヤTの上サイドウォールTwuに接触させることができる。
【0069】
「第二実施形態」
本発明に係るタイヤ試験システムの第二実施形態について、図13図16を参照して説明する。
【0070】
本実施形態のタイヤ試験システムのハードウェア構成は、第一実施形態のタイヤ試験システムのハードウェア構成と同じである。本実施形態と第一実施形態とでは、タイヤ取外処理におけるタイヤ保持装置の動作が異なる。具体的に、第一実施形態のタイヤ取外処理では、下リム33dからタイヤTを引き剥がした後、上リム33uからタイヤTを引き剥がす。一方、本実施形態のタイヤ取外処理では、上リム33uからタイヤTを引き剥がした後、下リム33dからタイヤTを引き剥がす。
【0071】
なお、第一実施形態では、先にタイヤTから引き剥がされる下リム33dが第二リムであり、後からタイヤTから引き剥がされる上リム33uが第一リムである。この関係で、下リム33dと同様に下からタイヤTに接近するセンタコンベア22が第二支持体で、上リム33uと同様に上からタイヤTに接近する押付板42が第一支持体である。また、第二支持体であるセンタコンベア22を移動させるコンベア昇降装置25が第二移動機構で、第一支持体である押付板42を移動させる押付板移動機構41が第一移動機構である。
【0072】
一方、本実施形態では、先にタイヤTから引き剥がされる上リム33uが第二リムであり、後からタイヤTから引き剥がされる下リム33dが第一リムである。この関係で、上リム33uと同様に上からタイヤTに接近する押付板42が第二支持体で、下リム33dと同様に下からタイヤTに接近するセンタコンベア22が第一支持体である。また、第二支持体である押付板42を移動させる押付板移動機構41が第二移動機構で、第一支持体であるセンタコンベア22を移動させるコンベア昇降装置25が第一移動機構である。
【0073】
以下、本実施形態でのタイヤ取外処理について、図13に示すフローチャートに従って説明する。
【0074】
このタイヤ取外処理では、まず、図14及び図15に示すように、タイヤTを上リム33uから引き剥がす引き剥がし工程(S1a)が実行される。この引き剥がし工程(S1a)の実行前、タイヤTは、図9に示すように、上リム(第二リム)33uと下リム(第一リム)33dとにより保持されている。この引き剥がし工程(S1a)では、まず、コンベア昇降制御部124が、コンベア昇降装置(第一移動機構)25を駆動させ、図14に示すように、センタコンベア22を上昇させて、このセンタコンベア22の上面をタイヤTの下サイドウォールTwdに接触させる。または、センタコンベア22でタイヤTを支持させる。さらに、ストリッパ駆動制御部125が、押付板移動機構(第二移動機構)41を駆動させ、押付板(第二支持体)42を下降させて、この押付板42をタイヤTの上サイドウォールTwuに接触させる。
【0075】
その後、ストリッパ駆動制御部125が押付板移動機構41を継続駆動させて、図15に示すように、押付板(第二支持体)42でタイヤTを下方に押し付けつつ、リム移動制御部123がリムエレベータ37を駆動させて、リムエレベータ37と共に上スピンドル31u及び上リム(第二リム)33uを上昇させる。言い換えると、上リム(第二リム)33uに対して、相対的に、タイヤTを押付板(第二支持体)42と共に鉛直方向に移動させる。タイヤTが下リム33d及びセンタコンベア(下支持体)22と押付板(上支持体)42とで挟まれた状態のまま、上リム(第二リム)33uのみが上昇する。この上リム33uのみの上昇により、上リム33uがタイヤTの上ビード部Tbuから抜ける。すなわち、タイヤTは上リム(第二リム)33uから引き剥がされる。以上のように、本実施形態では、タイヤTが押付板(第二支持体)42と下リム(第一リム)33dとで挟まれた状態で、タイヤTを上リム(第二リム)33uから引き剥がす。よって、本実施形態では、タイヤTが安定した状態で、このタイヤTを上リム(第二リム)33uから引き剥がすことができる。
【0076】
引き剥がし工程(S1a)が完了した時点で、図15に示すように、下リム(第一リム)33dが未だタイヤTの下ビード部Tbdに嵌り込んでおり、押付板42(第二支持体)がタイヤTの上サイドウォールTwuに接している状態である。また、センタコンベア22がタイヤTの下サイドウォールTwdに接している状態である。よって、引き剥がし工程(S1a)が完了した時点で、タイヤTをセンタコンベア(第一支持体)22と押付板(第二支持体)42とで挟み込む挟み込み工程(S2a)が完了している。
【0077】
なお、本実施形態では、引き剥がし工程(S1a)で、センタコンベア(第一支持体)22を上昇させて、このセンタコンベア22の上面をタイヤTの下サイドウォールTwdに接触させる。しかしながら、引き剥がし工程では、センタコンベア(第一支持体)22の上面をタイヤTの下サイドウォールTwdに接触させず、この引き剥がし工程が実行された後、センタコンベア(第一支持体)22を上昇させ、このセンタコンベア22の上面をタイヤTの下サイドウォールTwdに接触させて、タイヤTをセンタコンベア(第一支持体)22と押付板(第二支持体)42とで挟み込んでもよい。すなわち、引き剥がし工程が完全に完了した後、挟み込み工程を実行してもよい。
【0078】
次に、図16に示すように、タイヤTを押付板(上支持体)42とセンタコンベア(下支持体)22とで挟み込んでいる状態を継続しつつ、下リム(第一リム)33dに対して相対的にセンタコンベア(第一支持体)22を鉛直上方に移動させ、タイヤTを下リム33dから引き剥がすタイヤ取外工程(S3a)が実行される。このタイヤ取外工程(S3a)では、コンベア昇降制御部124がコンベア昇降装置25を駆動させて、センタコンベア22を上限位置まで上昇させる。この間、押付板42はタイヤTを下方に押し付けている状態を維持する。このため、下リム(第一リム)33dに対してセンタコンベア(第一支持体)22が相対的に鉛直上方に移動することになる。このセンタコンベア22の上昇により、下リム33dがタイヤTの下ビード部Tbdから抜ける。すなわち、タイヤTは下リム(第一リム)33dから引き剥がされる。以上で、タイヤ取外工程(S3a)が完了する。なお、本実施形態でも、第一実施形態と同様、エア圧調節器43rにより、挟み込み工程(S2a)中のシリンダケース41c内のエア圧よりも、タイヤ取外工程(S3a)中のシリンダケース41c内のエア圧を高圧にすることが好ましい。
【0079】
タイヤ取外工程(S3a)の完了で、上スピンドル31u及び下スピンドル31dからタイヤTを取外すタイヤ取外処理が終了する。
【0080】
以上のように、本実施形態では、タイヤTがセンタコンベア22と押付板42とで挟まれた状態で、タイヤTを下リム33dから引き剥がす(S3a:タイヤ取外工程)。このため、タイヤTを下リム33dから引き剥がす過程で、センタコンベア22から離れることを防ぐことができる。従って、本実施形態でも、第一実施形態と同様、タイヤ取外工程(S3a)で、タイヤTがセンタコンベア22上でバウンドすることを抑えることができる。しかも、本実施形態でも、タイヤTがセンタコンベア22と押付板42とで挟まれた状態で、タイヤTを下リム33dから引き剥がすため、タイヤTが試験領域Rtから水平方向に外れることを防ぐことができる。
【0081】
また、本実施形態でも、第一実施形態と同様、エアシリンダを押付板移動機構41として用いている。このため、本実施形態でも、押付板移動機構41の制御が容易になる。
【0082】
「変形例」
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、各実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0083】
以上の実施形態の上支持体は、板状の押付板42である。しかしながら、上支持体は、板状でなくても、例えば、円柱状又は球状であってもよい。この上支持体は、タイヤTの上サイドウォールTwuとの間での摩擦力、及びタイヤTを押し付ける押付力を維持しつつ、タイヤTの局部的な変形をできる限り抑えられることが好ましい。このために、上支持体は、タイヤTの上サイドウォールTwuとの接触面積を大きくすることができる板状であることが好ましい。
【0084】
以上の実施形態のストリッパ間隔変更機構(上支持体間隔変更機構)45は、水平方向で且つ経路中心線Lcに平行な方向にタイヤストリッパ40を移動させる。しかしながら、ストリッパ間隔変更機構45は、水平方向で且つ経路中心線Lcに捩じれた方向にタイヤストリッパ40を移動させてもよい。
【0085】
以上の各実施形態では、センタコンベア22を下降させることで、センタコンベア22を下リム33dに対して相対移動させる。しかしながら、例えば、下リム33dを上昇させることで、センタコンベア22を下リム33dに対して相対移動させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の一態様によれば、タイヤを上リム又は下リムから外した際、このタイヤのバウンドを抑え、水平方向へのタイヤの移動を抑えることができる。
【符号の説明】
【0087】
10:前処理装置
11:入口コンベア
12:センタリング機構
20:試験装置
21:フレーム
21a:ベース
21b:メインフレーム
22:センタコンベア(下支持体)
23:ベルト
24:ベルト間隔変更機構(下支持体間隔変更機構)
25:コンベア昇降装置(下支持体移動機構)
25a:案内手段
29:ブラケット
30,30a:タイヤ保持装置
31u:上スピンドル
31d:下スピンドル
32u:上リムチャック機構
32d:下リムチャック機構
33u:上リム
33d:下リム
37:リムエレベータ(リム移動機構)
39:タイヤ計測器
40:タイヤストリッパ
40u:第一タイヤストリッパ
40d:第二タイヤストリッパ
41:押付板移動機構(上支持体移動機構)
41c:シリンダケース
41r:ピストンロッド
41p:ピストン
42:押付板(上支持体)
43s:エア供給源
43l1:第一エアライン
43l2:第二エアライン
43ls:エア供給ライン
43r:エア圧調節器
43v:切替弁
45:ストリッパ間隔変更機構(上支持体間隔変更機構)
46:ネジ軸
46r:レール
46g:ガイド
47:ナット部材
48b:軸受
48m:モータ
49a:間隔変更機構ベース
49b:シリンダ取付プレート
50:後処理装置
51:出口コンベア
100:制御器
110:前処理制御部
120:試験制御部
121:スピンドル回転制御部
122:センタコンベア制御部
123:リム移動制御部
124:コンベア昇降制御部
125:ストリッパ駆動制御部
126:ベルト間隔制御部
127:ストリッパ間隔制御部
128:計測制御部
130:後処理制御部
T:タイヤ
Tbu:上ビード部
Tbd:下ビード部
Twu:上サイドウォール
Twd:下サイドウォール
Lc:経路中心線
Rt:試験領域
Lr:回転軸線
X:タイヤ搬送方向
(−)X:上流側
(+)X:下流側
Y:経路幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16