特許第6780134号(P6780134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6780134内視鏡、先端カバーおよび内視鏡システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780134
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】内視鏡、先端カバーおよび内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20201026BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   A61B1/00 715
   A61B1/00 652
   G02B23/24 A
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-558897(P2019-558897)
(86)(22)【出願日】2018年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2018030799
(87)【国際公開番号】WO2019116637
(87)【国際公開日】20190620
【審査請求日】2020年4月28日
(31)【優先権主張番号】特願2017-237898(P2017-237898)
(32)【優先日】2017年12月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 文俊
【審査官】 冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−204774(JP,A)
【文献】 特開平09−299316(JP,A)
【文献】 特開平10−155732(JP,A)
【文献】 特開2007−289434(JP,A)
【文献】 特開2002−301011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
G02B 23/24 − 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸方向に延びる挿入部、前記挿入部の先端部に配置された先端部材、および前記先端部材の基端側に配置され、前記軸周りに沿ったリング状の絶縁部、を備えた内視鏡と、
前記先端部に装着され、前記先端部材の一部を露呈させる開口、および前記開口よりも基端側に配置され、前記絶縁部の外周面に密着する内周面、を備えた先端カバーと、
を具備しており、
前記絶縁部の外周面とこれに密着する前記先端カバーの内周面とは、前記軸周りに全周に亘り径方向外側に向かって凸となる異なる曲率を有する複数の曲面が接続された形状で構成されることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記先端カバーは弾性が低く、塑性変形や破壊されやすい樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記先端カバーの前記開口は、前記先端部材における前記軸に沿って延びる面を露呈させることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記先端部材は導電性を備えていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記先端カバーは、外力により破壊されることで前記先端部への装着が解除されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記先端部材は、前記先端カバーの前記開口を介して、前記軸に対し交差する方向を観察するための観察手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記複数の曲面の隣接する曲線同士の接続部分は前記曲線同士の接線が一致しており、屈曲無く滑らかに接続された形状で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
内視鏡に設けられ所定の軸に沿って延びる挿入部の先端部に装着される先端カバーであって、
前記先端部の一部を露呈させる開口と、
前記開口よりも前記挿入部の基端側に配置され、前記先端部の外周面と密着する内周面を有し、当該内周面が前記軸周りに全周に亘って径方向外側に向かって凸となる異なる曲率を有する複数の曲面が接続された形状で形成された環状部と、
を具備することを特徴とする先端カバー。
【請求項9】
弾性が低く、塑性変形や破壊されやすい樹脂により形成されていることを特徴とする請求項8に記載の先端カバー。
【請求項10】
前記開口は、前記先端部における前記所定の軸に沿って延びる面を露呈させることを特徴とする請求項8に記載の先端カバー。
【請求項11】
外力により破壊されることで前記先端部への装着が解除されることを特徴とする請求項8に記載の先端カバー。
【請求項12】
前記複数の曲面の隣接する曲線同士の接続部分は前記曲線同士の接線が一致しており、屈曲無く滑らかに接続された形状で構成されていることを特徴とする請求項8に記載の先端カバー。
【請求項13】
所定の軸に沿って延びる挿入部の先端に配置された、カバーが装着される先端部材と、
前記先端部材の基端側に配置され、前記軸周りに沿ったリング状の絶縁部と、
を備え、
前記絶縁部の外周面は、前記カバーの内周面に密着すると共に、前記軸周りに全周に亘り径方向外側に向かって凸となる異なる曲率を有する複数の曲面が接続された形状で構成されることを特徴とする内視鏡。
【請求項14】
前記先端部材は導電性を備えていることを特徴とする請求項13に記載の内視鏡。
【請求項15】
前記先端部材は、前記軸に対し交差する方向を観察するための観察手段を備えていることを特徴とする請求項13に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡と内視鏡の挿入部の先端部に装着される先端カバー、およびこれらを備える内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば国際公開WO2016/021234号公報に開示されているように、挿入部の先端部にカバーを装着する型式の医療用の内視鏡が知られている。被検体内における内視鏡を用いた電気メス等の高周波焼灼の実施時における、高周波電流の漏出を防止するために、カバーは電気絶縁性の樹脂からなる。カバーは、先端部の外周に密着する内周面を有する。
【0003】
また、国際公開WO2016/021234号公報には、使用者が力を加えることによって破断が生じる破断部をカバーに設けることによって、先端部からのカバーの取り外しを容易とし、かつカバーの再使用を防止する技術が開示されている。
【0004】
国際公開WO2016/021234号公報に開示されている内視鏡では、理想的にはカバーが内視鏡の先端部の外周面に密着するものの、実際の使用時においては、先端部の外周面とカバーとの間に液体が浸入する可能性がある。これは、カバーを人の手指による入力によって容易に破断可能とするためには、カバーをゴム等に比べて弾性が低く、塑性変形や破断しやすい樹脂によって構成する必用があるため、カバーが先端部の外周面の形状に合わせて変形しにくいからである。被検体内における高周波焼灼の実施時において、カバーと先端部の外周面との間に液体が浸入すれば、当該液体を経由して高周波電流が漏出する可能性がある。
【0005】
本発明は、前述した問題を解決するものであり、高周波焼灼の実施時における高周波電流の漏出を防止することができる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による内視鏡システムは、所定の軸方向に延びる挿入部、前記挿入部の先端部に配置された先端部材、および前記先端部材の基端側に配置され、前記軸周りに沿ったリング状の絶縁部、を備えた内視鏡と、前記先端部に装着され、前記先端部材の一部を露呈させる開口、および前記開口よりも基端側に配置され、前記絶縁部の外周面に密着する内周面、を備えた先端カバーと、を具備しており、前記絶縁部の外周面とこれに密着する先端カバーの内周面とは、前記軸周りに全周に亘り径方向外側に向かって凸となる異なる曲率を有する複数の曲面が接続された形状で構成される。
【0007】
本発明の一態様による先端カバーは、内視鏡に設けられ所定の軸に沿って延びる挿入部の先端部に装着される先端カバーであって、前記先端部の一部を露呈させる開口と、前記開口よりも前記挿入部の基端側に配置され、前記先端部の外周面と密着する内周面を有し、当該内周面が前記軸周りに全周に亘って径方向外側に向かって凸となる異なる曲率を有する複数の曲面が接続された形状で形成された環状部と、具備する。
【0008】
本発明の一態様による内視鏡は、所定の軸に沿って延びる挿入部の先端に配置された、カバーが装着される先端部材と、前記先端部材の基端側に配置され、前記軸周りに沿ったリング状の絶縁部と、を備え、前記絶縁部の外周面は、前記カバーの内周面に密着すると共に、前記軸周りに全周に亘り径方向外側に向かって凸となる異なる曲率を有する複数の曲面が接続された形状で構成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】内視鏡システムの概略的な構成を示す図である。
図2】挿入部の先端部の斜視図である。
図3】先端カバーと先端部とを分離した状態で示す斜視図である。
図4】先端カバーを上方向から下方向に向かって見た部分断面図である。
図5】先端部の絶縁部が設けられた箇所における、挿入軸に直交する平面による断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0011】
図1は、内視鏡システム100の概略的な構成を示す図である。本実施形態の内視鏡システム100は、内視鏡1および先端カバー30を備える。本実施形態では一例として、内視鏡1は、側視型の内視鏡である。
【0012】
内視鏡1は、被検体内に挿入される挿入部2と、挿入部2の基端側に設けられた操作部3と、操作部3から延出するユニバーサルコード4と、を備えて構成されている。
【0013】
操作部3には、湾曲操作装置11と、送気送水釦12と、吸引釦13と、起上台操作レバー14と、操作スイッチ15と、が設けられている。
【0014】
操作スイッチ15は、フリーズ信号を発生させるフリーズスイッチ、写真撮影を行なう際のレリーズ信号を発生させるレリーズスイッチ、観察モードの切り換え指示を行うための観察モード切り換えスイッチ等である。
【0015】
操作部3には、処置具(不図示)を体内に導入するための処置具挿入口16が設けられている。処置具挿入口16にはチャンネルチューブ17の一端側が接続されている。チャンネルチューブ17の他端側は、挿入部2の先端部5を構成する先端部材20に接続されている。
【0016】
挿入部2は、先端側から順に先端部5と、湾曲部6と、可撓管部7と、を連設して構成されている。先端部5には、先端カバー30が装着される。先端部5および先端カバー30の構成の詳細は後述する。
【0017】
可撓管部7は、図示されていない例えば、螺旋管と、螺旋管を被覆する網状管と、最外層を構成する熱収縮チューブと、を設けて構成されている。
【0018】
湾曲部6は、例えば上下左右の4方向に湾曲するように構成された湾曲駒組と、湾曲駒組を被覆する金属製の網状管と、外皮である湾曲ゴムと、を設けて構成されている。湾曲部6は、操作部3に設けられた湾曲操作装置11の上下湾曲ノブ11aを回動操作することにより上方向又は下方向に湾曲し、左右湾曲ノブ11bを回動操作することにより左方向又は右方向に湾曲する構成になっている。
【0019】
図2は、先端部5の斜視図である。図2に示すように、先端部5には、先端カバー30が装着される。先端カバー30は、先端部5の所定の外表面を覆う鞘状の部材であり、先端部5に着脱可能である。
【0020】
先端カバー30は、一度先端部5に装着された後に先端部5から取り外される際に不可逆な変形である破断が生じる箇所である破断予定部30jが設けられている。図3は、先端カバー30と先端部5とを分離した状態で示す斜視図である。図3においては、先端部5に一度も装着されたことのない状態(未使用状態)の先端カバー30を示している。
【0021】
先端カバー30は、電気絶縁性を有する樹脂製であって、予め定めた弾発性を有する。先端カバー30を構成する樹脂の種類は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、先端カバー30は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等の樹脂のうち、ゴム等に比べて弾性が低く、塑性変形や破断しやすい樹脂により形成される。このような樹脂で先端カバー30を形成することにより、先端部5から取り外す際に先端カバー30に不可逆な変形や破壊(破断)を生じやすくすることができる。先端部5から取り外された先端カバー30に不可逆な変形や破壊(破断)を生じさせることにより、先端カバー30の再利用を防止することができる。
【0022】
なお、先端カバー30は、半透明または透明な樹脂製であることが好ましい。先端カバー30が半透明または透明な樹脂製であることにより、内視鏡1の使用者による先端カバー30が先端部材20に対して所定の位置に正しく装着されているか否かの視認が容易となる。
【0023】
なお、以下の説明において、細長な挿入部2の長手方向に沿う軸を長手軸2aと称する。また、長手軸2aに沿って挿入部2の先端側に向かう方向を先端方向Aと称し、先端方向Aの反対の方向を基端方向Bと称する。また、長手軸2aに直交する平面上において互いに直交する2つの直線軸をX軸およびY軸と定義する。そして、X軸に沿って一方の側に向かう方向を右方向Rと称し、右方向Rの反対方向を左方向Lと称する。また、Y軸に沿って一方の側に向かう方向を上方向Uと称し、上方向Uの反対方向を下方向Dと称する。X軸およびY軸は、湾曲部6の湾曲方向と略平行である。
【0024】
本実施形態では一例として、長手軸2aに沿って基端側から先端側に向かって見た場合であって、X軸を水平とした場合において、右側が右方向Rであり上側が上方向であるとする。
【0025】
図3に示すように、先端部5は、金属製の先端部材20と、電気絶縁性を有する樹脂またはセラミック製の絶縁部21と、を備える。
【0026】
先端部材20は、湾曲部6の先端に固定される基部20aと、基部20aから先端方向Aに向かって突出する一対の腕部である第1腕部20bおよび第2腕部20cと、第1腕部20bおよび第2腕部20cの間に形成された空間である起上台収容空間20dと、を有している。起上台収容空間20d内には、起上台40が回動自在に配置されている。
【0027】
第1腕部22の外周面のうちの上方向Uに面する上面には、照明レンズ41、観察レンズ42および洗浄ノズル43が配設されている。観察レンズ42は、被写体を撮像するためのものであり、照明レンズ41は被写体に向かって照明光を出射するためのものである。観察レンズ42の視野は、概ね上方向Uを中心としている。すなわち、観察レンズ42は、挿入部2の側方を視野に入れている。洗浄ノズル43は、照明レンズ41および観察レンズ42に向かって流体を噴出する部位である。
【0028】
起上台40は、起上台収容空間24内において、X軸と概ね平行な回動軸周りに回動可能に配設されている。起上台40の回動操作は、操作部3に設けられた起上台操作レバー14によって行われる。第2腕部20cの内部には、起上台操作レバー14の動きを起上台40に伝達するためのワイヤ等の機構が配置されている。
【0029】
第1腕部20bの先端付近および第2腕部20cの先端付近には、係合溝20eおよび20fが彫設されている。係合溝20eは、第1腕部20bの左側面から内側(右方向R)に向かう凹形状である。また、係合溝20fは、第2腕部20cの右側面から内側(左方向L)に向かう凹形状である。先端部材20の外表面に形成された係合溝20eおよび20fは、先端カバー30の内面に形成された後述する一対の係止爪30gと係合する部位である。
【0030】
絶縁部21は、前述のように、電気絶縁性の樹脂またはセラミックからなる。絶縁部21は、先端部材20の基部20aの外周を覆うリング状の部材である。基部20aは、長手軸2aに沿った柱状である。絶縁部21は、長手軸2aの軸周りに沿ったリング状であり、基部20aの外周面を周方向全体に亘って覆う。
【0031】
絶縁部21の外周面のうちの上方向Uに面する上面には、上方向Uに向かって突出する係止爪21aが設けられている。係止爪21aは、先端カバー30の後述する環状部30eと係合する部位である。
【0032】
次に、以上に説明した先端カバー30の構成について説明する。図4は、先端カバー30を上方向Uから下方向Dに向かって見た部分断面図である。
【0033】
先端カバー30は、先端方向A側が閉じており基端方向B側が開口している鞘状の部材である。
【0034】
先端カバー30の基端方向B側に設けられた開口を、挿入口30dと称する。先端カバー30を先端部5に装着する際には、挿入口30dを経由して先端カバー30内に先端部5が挿入される。
【0035】
先端カバー30には、先端部5に装着された状態において、起上台収容空間20dを上方向Uのみに向かって露呈させる開口部30aを有する。また、先端カバー30が先端部材20に装着されている状態において、照明レンズ41、観察レンズ42および洗浄ノズル43も、開口部30aを介して上方向Uに向かって露出する。
【0036】
先端カバー30の外表面において、開口部30aは、挿入口30dと接続していない。よって、先端カバー30の基端30bには、長手軸2a周りに全周が環状に繋がった環状部30eが形成されている。
【0037】
先端カバー30が先端部材20に装着されている状態では、環状部30eは、絶縁部21に設けられた係止爪21aよりも基端方向B側において絶縁部21の外周面に密接する。またこの状態において、係止爪21aは開口部30a内に突出する。すなわち、先端カバー30が先端部5に装着されている状態において、係止爪21aは、環状部30eと係合し、先端カバー30が先端部5に対して相対的に先端方向Aに移動することを抑止する。
【0038】
また、先端カバー30には、一対の係止爪30gと、破断予定部30jが設けられている。一対の係止爪30gは、先端カバー30の内周面から内側に向かって突出する凸形状の部位である。一対の係止爪30gは、先端カバー30が先端部5に装着されている状態において、先端部材20の係合溝20eおよび20f内にはまり込む。
【0039】
係合溝20eおよび20f内に、一対の係止爪30gが係合することによって、先端カバー30が先端部材20に装着されている状態において先端カバー30が先端部材20に対して相対的に先端方向Aに移動することが抑止される。
【0040】
破断予定部30jは、開口部30aの周縁部の一部をV字状またはU字状に切り欠いた切れ込みと、当該切れ込みから先端カバー30の内周面に沿って延在する溝と、を備える。破断予定部30jは、一対の係止爪30gの間に配設されている。なお、破断予定部30jの基端方向B側の端部は、図3に示すように、開口部30aの基端方向B側の端部とほぼ同じ位置まで延長される。すなわち、先端カバー30の環状部30eにおける内周面30fには破断予定部30jが形成されていない。したがって、環状部30eの内周面30fと絶縁部21との密着性がより高まる。
【0041】
先端カバー30は、例えば使用者の手指によって破断予定部30jを引き裂く外力が加えられることにより、破断予定部30jが破断する。先端カバー30が先端部5に装着された状態において、破断予定部30jが破断すると、一対の係止爪30gの離間距離が大きくなるため、先端カバー30の先端部5への装着が解除される。また、破断予定部30jが破断した先端カバー30を先端部5に装着しようとしても、一対の係止爪30gが係合溝20eおよび20f内にはまり込まないため、先端カバー30を先端部に固定することは不可能となる。
【0042】
図5は、先端部5の絶縁部21における、長手軸2aに直交する平面による断面図である。図5は、先端カバー30が先端部5に装着された状態を示している。
【0043】
前述のように、先端カバー30が先端部5に装着された状態において、先端カバー30の環状部30eの内周面30fは、先端部5の絶縁部21の外周面に密着する。したがって、絶縁部21の外周面21bおよび環状部30eの内周面30fの挿入軸2aに直交する平面による断面形状は、相似形である。また先端カバー30が先端部5に装着されていない状態においては、環状部30eの内周面30fの内周形状の方が、絶縁部21の外周面21bの外周形状よりも若干小さい。環状部30eと絶縁部21とは、いわゆるしまり嵌めの関係にある。
【0044】
本実施形態では、絶縁部21の外周面21bおよび環状部30eの内周面30fは、単純な円筒形状ではなく、挿入軸2a周りに異なる曲率を有する複数の曲面が接続された形状を有している。
【0045】
そして、図5に示すように、本実施形態の絶縁部21の外周面21bは、挿入軸2a周りに全周に亘り径方向外側に向かって凸となる曲面で構成されている。また、絶縁部21の外周面21bを構成する複数の曲率からなる曲面は全て滑らかに接続されている。
【0046】
すなわち、外周面21bの挿入軸2aに直交する平面による断面形状は、挿入軸2a周りに全周に亘り径方向外側に向かって凸となる曲率を有し、直線および変曲点を有していない閉曲線となる。また、当該閉曲線は、異なる曲率を有する複数の曲線が接続されてなるが、隣接する曲線同士の接続部では両者の接線が一致しており、両者が屈曲無く滑らかに接続されている。
【0047】
同様に、先端カバー30の環状部30eの内周面30fも、挿入軸2a周りに全周に亘り径方向外側に向かって凹となる曲面で構成されている。また、環状部30eの内周面30fを構成する複数の曲率からなる曲面は全て滑らかに接続されている。
【0048】
すなわち、内周面30fの挿入軸2aに直交する平面による断面形状は、挿入軸2a周りに全周に亘り径方向外側に向かって凸となる曲率を有し、直線および変曲点を有していない閉曲線となる。また、当該閉曲線は、異なる曲率を有する複数の曲線が接続されてなるが、隣接する曲線同士の接続部では両者の接線が一致しており、両者が屈曲無く滑らかに接続されている。
【0049】
以上のように構成された本実施形態の内視鏡システム100では、絶縁部21の外周面21bが、全周に亘り径方向外側に向かって凸となる滑らかな曲面で構成されていることにより、当該周面12bを覆う先端カバー30の環状部30eを、外周面21bに全周に亘って隙間無く密着させることができる。
【0050】
より詳細に説明すると、例えば、絶縁部の外周面に平面や凹面が存在した場合、絶縁部の外周面と環状部の内周面を相似形に形成したとしても、絶縁部の平面や凹面に環状部の内周面を押し付ける力が弱くなってしまうため、絶縁部と環状部との間に液体が浸入しやすくなる。特に、先端カバー(環状部)をゴム等に比べて弾性が低く、塑性変形や破断しやすい樹脂によって構成した場合には、絶縁部の平面や凹面の形状に沿って環状部を弾性変形させて密着させることが困難であるため、絶縁部と環状部との間に隙間が生じてしまう可能性がある。また、絶縁部の外周面において、異なる曲率を有する曲面の接続部が屈曲している場合も、当該屈曲に合わせて環状部を変形させることが困難であるため、絶縁部と環状部との間に隙間が生じてしまう可能性がある。
【0051】
一方、本実施形態では、絶縁部21の外周面21bに平面や凹面が存在せず、また屈曲も存在しないため、環状部30e内に絶縁部21を嵌入した場合、環状部30eの内周面30fの全周を、絶縁部21の外周面21bに押し付ける力が発生する。
【0052】
このため本実施形態では、先端カバー30をポリエチレンまたはポリプロピレン等の樹脂のうち、ゴム等に比べて弾性が低く、塑性変形や破断しやすい樹脂によって構成しているにもかかわらず、環状部30eを、絶縁部21の形状に合わせて変形させ、環状部30eを挿入軸2a周りに全周に亘り絶縁部21に押し付けて密着させることができる。
【0053】
したがって、本実施形態の内視鏡システム100は、絶縁部21と先端カバー30との間への液体の浸入を防止し、高周波焼灼の実施時における高周波電流の漏出を防止することができる。
【0054】
本発明は、前述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内視鏡システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0055】
本出願は、2017年12月12日に日本国に出願された特願2017−237898号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものとする。
図1
図2
図3
図4
図5