(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溝部および前記挿入部の間の距離が所定値以下とならないように、前記第1ペンチ片および前記第2ペンチ片の回動動作を規制する規制部材をさらに備える、請求項1または2に記載の工具。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0016】
図1および
図2は、工作機械の配管工程を示す断面図である。
図1および
図2を参照して、まず、本実施の形態における工具61が用いられる配管工程の技術的背景について説明する。
【0017】
工作機械の組み立て工程の1つとして、ベッド等の構造物12に対して、油圧機器の作動油、アクチュエータの潤滑油、空気圧機器で用いられる圧縮空気、または、エアパージ用の空気などを供給するためのパイプ31を接続する配管工程がある。この配管工程に、ニップル21、スリーブ41および締め付けプラグ51からなる継手セットが用いられている。
【0018】
パイプ31は、ナイロン等の樹脂製である。パイプ31は、黄銅等の金属製であってもよい。パイプ31は、可撓性を有する。パイプ31は、円筒状に延び、その一端に先端部32を有する。パイプ31は、先端部32において開口している。
【0019】
ニップル21は、黄銅等の金属製である。ニップル21は、全体として、仮想上の中心軸110を中心とする円筒形状を有する。
【0020】
ニップル21は、内ネジ部22と、外ネジ部27とを有する。内ネジ部22は、ニップル21の内周面に設けられている。外ネジ部27は、ニップル21の外周面に設けられている。内ネジ部22および外ネジ部27は、それぞれ、中心軸110の軸方向におけるニップル21の両端に設けられている。外ネジ部27は、構造物12に設けられた内ネジ部16に締め込み可能な外ネジからなる。
【0021】
ニップル21は、テーパ部23と、第1円筒部24と、段差部25と、第2円筒部26とをさらに有する。内ネジ部22、テーパ部23、第1円筒部24、段差部25および第2円筒部26は、ニップル21の内周面に設けられている。内ネジ部22、テーパ部23、第1円筒部24、段差部25および第2円筒部26は、挙げた順に、中心軸110の軸方向に並んでいる。第2円筒部26の外周側には、外ネジ部27が配置されている。
【0022】
テーパ部23は、中心軸110の軸方向において内ネジ部22から第1円筒部24に近づくほど直径が小さくなる円筒面からなる。第1円筒部24は、中心軸110の軸方向においてテーパ部23および段差部25の間で延在し、一定の直径を有する円筒面からなる。第2円筒部26は、中心軸110の軸方向において段差部25から遠ざかる方向に延在し、一定で、かつ、第1円筒部24よりも小さい直径を有する円筒面からなる。段差部25は、第1円筒部24および第2円筒部26の間において、中心軸110の半径方向の段差形状をなしている。段差部25は、中心軸110の軸方向に直交し、中心軸110を中心に環状に延在する平面からなる。
【0023】
なお、
図1および
図2中には、一例として、ストレートタイプのニップル21が示されているが、これに限られず、たとえば、内ネジ部22および外ネジ部27の間で折れ曲がったエルボータイプのニップルが用いられてもよい。
【0024】
スリーブ41は、黄銅等の金属製である。スリーブ41は、全体として、中心軸120を中心とするリング形状を有する。
【0025】
スリーブ41は、第1テーパ部42と、大径部44と、第2テーパ部43とを有する。第1テーパ部42、大径部44および第2テーパ部43は、スリーブ41の外周面に設けれている。第1テーパ部42、大径部44および第2テーパ部43は、挙げた順に、中心軸120の軸方向に並んでいる。大径部44は、一定の直径を有する円筒面からなる。大径部44は、スリーブ41の外周面において最大径をなす部分である。第1テーパ部42は、中心軸120の軸方向において大径部44から遠ざかるほど直径が小さくなるテーパ状の円筒面からなる。第2テーパ部43は、中心軸120の軸方向において大径部44から遠ざかるほど直径が小さくなるテーパ状の円筒面からなる。第1テーパ部42および第2テーパ部43は、大径部44を挟んで対称となるように設けられている。
【0026】
締め付けプラグ51は、黄銅等の金属製である。締め付けプラグ51は、全体として、中心軸130を中心とする円筒形状を有する。
【0027】
締め付けプラグ51は、頭部52と、外ネジ部53とを有する。頭部52および外ネジ部53は、締め付けプラグ51の外周面に設けられている。頭部52および外ネジ部53は、それぞれ、中心軸130の軸方向における締め付けプラグ51の両端に設けられている。頭部52は、スパナを引っ掛けることが可能な六角形状を有する。外ネジ部53は、ニップル21における内ネジ部22に締め込み可能な外ネジからなる。
【0028】
図1に示されるように、構造物12に対してパイプ31を接続する配管工程においては、まず、構造物12に設けられた内ネジ部16に対してニップル21の外ネジ部27を締め込むことによって、ニップル21を構造物12に接続する。
【0029】
パイプ31の外周上に、締め付けプラグ51を配置し、次に、スリーブ41を配置する。この際、パイプ31の先端部32から見て、締め付けプラグ51の外ネジ部53が頭部52よりも手前側に配置される。パイプ31の先端部32から見て、スリーブ41の第1テーパ部42が第2テーパ部43よりも手前側に配置される。
【0030】
なお、第1テーパ部42および第2テーパ部43は、大径部44を挟んで対称となる形状を有するため、パイプ31の外周上にスリーブ41を配置する方向が限定されるわけではない。パイプ31の先端部32から見て手前側に配置されるスリーブ41のテーパ部分を、「第1テーパ部42」といい、パイプ31の先端部32から見て奥側に配置されるスリーブ41のテーパ部分を、「第2テーパ部43」といっている。
【0031】
図2に示されるように、外周上に締め付けプラグ51およびスリーブ41が配置されたパイプ31を、ニップル21に挿入する。スパナ等を用いて締め付けプラグ51の頭部52を回し、締め付けプラグ51の外ネジ部27をニップル21の内ネジ部22に対して締め込むことによって、締め付けプラグ51をニップル21に接続する。
【0032】
この際、パイプ31の先端部32をニップル21の段差部25に当接させる。締め付けプラグ51の外ネジ部27をニップル21の内ネジ部22に対して締め込む動作に伴って、スリーブ41の第1テーパ部42がニップル21のテーパ部23と当接し、スリーブ41の第2テーパ部43が締め付けプラグ51と当接する。スリーブ41は、ニップル21および締め付けプラグ51から、中心軸120の軸方向において圧縮方向の力を受け、縮径方向に塑性変形する。これにより、スリーブ41は、先端部32から所定長さSだけ離れた位置において、パイプ31にかしめられる。
【0033】
このような構成において、スリーブ41は、パイプ31がニップル21から抜けることを防ぐ抜け止めとして機能する。
【0034】
図3および
図4は、この発明の実施の形態における工具を示す図である。
図3および
図4を参照して、上記の配管工程において、ニップル21に対するパイプ31の接続作業を容易にするために、パイプ31にスリーブ41を仮止めする事前の作業が行なわれる。本実施の形態における工具61は、外周上にスリーブ41および締め付けプラグ51が配置されたパイプ31にスリーブ41を仮止めするための工具である。
【0035】
続いて、工具61の構造について説明する。工具61は、第1ペンチ片71と、第2ペンチ片81とを有する。第1ペンチ片71および第2ペンチ片81は、回転支持部62により回動可能に連結されている。
【0036】
第1ペンチ片71は、一方向に延びる金属製のステーからなる。第1ペンチ片71は、第1把持部72と、第1動作部73とを有する。第1把持部72は、回転支持部62を挟んで一方の側に配置され、第1動作部73は、回転支持部62を挟んで他方の側に配置されている。
【0037】
第2ペンチ片81は、一方向に延びる金属製のステーからなる。第2ペンチ片81は、第2把持部82と、第2動作部83とを有する。第2把持部82は、回転支持部62を挟んで一方の側に配置され、第2動作部83は、回転支持部62を挟んで他方の側に配置されている。
【0038】
回転支持部62は、仮想上の回転中心軸101を中心とする軸形状を有する。回転支持部62は、第2ペンチ片81と一体に設けられている。回転支持部62は、第1ペンチ片71および第2ペンチ片81を互いに、回転中心軸101を中心に回動可能なように連結している。回転中心軸101は、回転支持部62における回転軸に対応している。
【0039】
第1動作部73は、第1内面75と、第1外面74とを有する。第2動作部83は、第2内面85と、第2外面84とを有する。第1内面75および第2内面85は、回転中心軸101の周方向において互いに対向している。第1外面74は、第1内面75の裏側に配置されている。第2外面84は、第2内面85の裏側に配置されている。
【0040】
第1把持部72および第2把持部82は、パイプ31に対するスリーブ41の仮止め作業時に、作業者により把持される。第1把持部72および第2把持部82が作業者により握り締められると、第1動作部73および第2動作部83は、回転中心軸101の周方向において互いに近づくように回動動作する。このとき、第1内面75および第2内面85の間の距離が徐々に減少する。第1把持部72および第2把持部82が作業者により開かれると、第1動作部73および第2動作部83は、回転中心軸101の周方向において互いに遠ざかるように回動動作する。このとき、第1内面75および第2内面85の間の距離が徐々に増大する。
【0041】
第1ペンチ片71には、溝部76が設けられている。溝部76は、第1動作部73に設けられている。
【0042】
溝部76は、回転中心軸101の周方向において開通している。溝部76は、回転中心軸101の周方向に延び、第1内面75および第1外面74において開口している。溝部76は、回転中心軸101の半径方向外側を向いて開放されている。溝部76は、第1動作部73において、回転中心軸101の半径方向内側に向けて凹む溝形状をなしている。
【0043】
溝部76は、パイプ31の挿通が可能で、かつ、締め付けプラグ51の挿通が不可であるように構成されている。
図1に示されるように、締め付けプラグ51の直径は、D1である。直径D1は、締め付けプラグ51の最大径に対応しており、より具体的には、頭部52が有する六角形状において互いに対向する2頂点間の長さに対応している。パイプ31の直径は、D2である。
図4に示されるように、回転中心軸101の軸方向における溝部76の開口幅は、Bである。この場合に、溝部76の開口幅Bは、パイプ31の直径D2よりも大きく(B>D2)、締め付けプラグ51の直径D1よりも小さい(B<D1)。
【0044】
図5は、第2ペンチ片を示す断面図である。
図5中には、
図4中の第2ペンチ片81(第2動作部83)が回転中心軸101に直交する平面により切断された場合の断面形状が示されている。
【0045】
図6は、第1ペンチ片および第2ペンチ片と、パイプ、スリーブおよび締め付けプラグとを示す断面図である。
図6中には、後出の
図9中の第1ペンチ片71(第1動作部73)および第2ペンチ片81(第2動作部83)が回転中心軸101に直交する平面により切断された場合の断面形状と、第1ペンチ片71および第2ペンチ片81に装着されたパイプ31、スリーブ41および締め付けプラグ51の断面形状とが示されている。
【0046】
図3から
図6を参照して、第2ペンチ片81には、挿入部92と、パイプ当接部95と、スリーブ当接部93とが設けられている。
【0047】
挿入部92は、回転中心軸101の周方向において、溝部76と対向して開口している。挿入部92は、パイプ31およびスリーブ41の挿入が可能なように構成されている。
【0048】
パイプ当接部95およびスリーブ当接部93は、挿入部92の内側に配置されている。パイプ当接部95は、パイプ31の先端部と当接可能なように構成されている。スリーブ当接部93は、回転中心軸101の周方向において、パイプ当接部95よりも挿入部92がなす開口92a寄りに位置している。スリーブ当接部93は、スリーブ41と当接可能なように構成されている。
【0049】
以下において、第2ペンチ片81の構造をより具体的に説明する。第2ペンチ片81には、取り付け孔86が設けられている。取り付け孔86は、第2動作部83に設けられている。取り付け孔86は、第2内面85および第2外面84の間で貫通する貫通孔からなる。
【0050】
工具61は、仮止め部材91と、ナット64とをさらに有する。仮止め部材91は、第2内面85の側から取り付け孔86に挿入され、第2外面84の側からナット64が締め込まれることによって、第2ペンチ片81(第2動作部83)に取り付けられている。
【0051】
仮止め部材91は、黄銅等の金属製である。仮止め部材91は、全体として、中心軸140を中心とする円筒形状を有する。中心軸140は、回転中心軸101を中心とする円周の接線方向に延びている。
【0052】
仮止め部材91は、頭部98と、外ネジ部97とを有する。頭部98および外ネジ部97は、それぞれ、中心軸140の軸方向において仮止め部材91の両端に設けられている。頭部98は、スパナを引っ掛けることが可能な六角形状を有する。外ネジ部53は、ナット64を締め込み可能な外ネジからなる。仮止め部材91が取り付け孔86に挿入された状態において、頭部98は、第2内面85上に配置されている。外ネジ部53は、第2外面84から突出するように設けられている。外ネジ部53には、ナット64が螺合されている。
【0053】
仮止め部材91は、上記の挿入部92、パイプ当接部95およびスリーブ当接部93を有する。仮止め部材91は、大径内周部94と、小径内周部96とをさらに有する。
【0054】
挿入部92、スリーブ当接部93、大径内周部94、パイプ当接部95および小径内周部96は、仮止め部材91の内周面に設けられている。挿入部92、スリーブ当接部93、大径内周部94、パイプ当接部95および小径内周部96は、挙げた順に、中心軸140の軸方向に並んでいる。挿入部92は、頭部98の内周側に位置し、小径内周部96は、外ネジ部97の内周側に位置している。
【0055】
挿入部92は、開口92aを有する。開口92aは、回転中心軸101の周方向において、第2外面84および第2内面85のうちの第2内面85の側に開口している。開口92aは、中心軸140を中心とする円形の開口形状をなしている。開口92aは、回転中心軸101を中心とする周方向において、第1内面75において溝部76がなす開口面と対向している。開口92aを回転中心軸101の周方向において第1動作部73に向けて投影した場合に、開口92aの少なくとも一部は、第1内面75において溝部76がなす開口面の少なくも一部と重なり合う。
【0056】
挿入部92は、中心軸140を中心とする円筒面からなる。挿入部92は、中心軸140の軸方向における開口92aおよびスリーブ当接部93の間で一定の直径で延在する円筒面からなる。
【0057】
挿入部92は、パイプ31と、パイプ31の外周上に配置されたスリーブ41との挿入が可能なように構成されている。挿入部92の直径は、パイプ31の直径D2よりも大きい。挿入部92の直径は、スリーブ41(大径部44)の直径よりも大きい。
【0058】
挿入部92は、締め付けプラグ51の外ネジ部53の挿入が可能なように構成されている。挿入部92の直径は、締め付けプラグ51の外ネジ部53の直径よりも大きい。さらに本実施の形態では、挿入部92が、締め付けプラグ51の外ネジ部53をガイドするガイド部99として設けられている。挿入部92の直径は、挿入部92および外ネジ部53の間に、外ネジ部53の挿入が可能で、かつ、外ネジ部53をその挿入方向にガイド可能な程度の隙間が生じるように設定されている。一例として、挿入部92の直径は、挿入部92および外ネジ部53の間に直径0.05mm以上0.5mm以下の隙間が生じるように設定されている。
【0059】
スリーブ当接部93は、中心軸140の軸方向において、挿入部92に挿入されたスリーブ41(第1テーパ部42)と当接可能なように構成されている。スリーブ当接部93は、中心軸140を中心とするテーパ状の円筒面からなる。スリーブ当接部93は、中心軸140の軸方向において挿入部92から大径内周部94に近づくほど直径が小さくなるテーパ状の円筒面からなる。スリーブ当接部93の最大径は、前述の挿入部92の直径に対応し、スリーブ当接部93の最小径は、後述の大径内周部94の直径に対応している。
【0060】
大径内周部94は、中心軸140を中心とする円筒面からなる。大径内周部94は、中心軸140の軸方向におけるスリーブ当接部93およびパイプ当接部95の間で一定の直径で延在する円筒面からなる。
【0061】
大径内周部94は、パイプ31の挿入が可能で、かつ、スリーブ41の挿入が不可となるように構成されている。大径内周部94の直径は、パイプ31の直径D2よりも大きい。大径内周部94の直径は、スリーブ41(大径部44)の直径よりも小さい。
【0062】
小径内周部96は、パイプ当接部95から、中心軸140の軸方向において大径内周部94とは反対方向に延在する円筒面からなる。小径内周部96は、大径内周部94よりも小さい直径を有する円筒面からなる。
【0063】
パイプ当接部95は、中心軸140の軸方向において、挿入部92に挿入されたパイプ31の先端部32と当接可能なように構成されている。パイプ当接部95は、中心軸140の軸方向に直交する平面からなる。パイプ当接部95は、大径内周部94および小径内周部96の間において、中心軸140の半径方向の段差形状をなしている。パイプ当接部95は、中心軸140を中心に環状に延在する平面からなる。
【0064】
仮止め部材91と、
図1中のニップル21とを対比した場合、仮止め部材91におけるスリーブ当接部93、大径内周部94およびパイプ当接部95の各寸法および相互の位置関係は、それぞれ、ニップル21におけるテーパ部23、第1円筒部24および段差部25の各寸法および相互の位置関係と対応している。
【0065】
なお、仮止め部材91において、小径内周部96は必須の構成ではない。仮止め部材91に小径内周部96が設けられない場合、大径内周部94は、有底の孔として設けられ、パイプ当接部95は、大径内周部94の底面から構成される。
【0066】
また、本実施の形態では、第2ペンチ片81と、スリーブ当接部93、大径内周部94およびパイプ当接部95が設けられる仮止め部材91とが別体である場合を説明したが、スリーブ当接部93、大径内周部94およびパイプ当接部95が、第2ペンチ片81の第2動作部83に直接設けられる構成であってもよい。
【0067】
工具61は、規制部材66をさらに有する。規制部材66は、溝部76および挿入部92の間の距離が所定値以下とならないように、第1ペンチ片71および第2ペンチ片81の回動動作を規制する。
【0068】
第2ペンチ片81には、ネジ孔67が設けられている。ネジ孔67は、第2動作部83に設けられている。ネジ孔67は、第2内面85および第2外面84の間において、第2ペンチ片81(第2動作部83)を貫通するように設けられている。規制部材66は、ボルトからなる。規制部材66は、ネジ孔67に螺合されている。規制部材66は、第2内面85から突出するように設けられている。
【0069】
図3に示されるように、作業者により第1把持部72および第2把持部82が握り締められた場合に、第1動作部73および第2動作部83は、回転中心軸101を中心に、互いに近接するように回動動作する。このとき、第2内面85から突出する規制部材66の先端部が第1動作部73の第1内面75と当接することによって、第1動作部73および第2動作部83の回動動作が規制される。
【0070】
なお、第2内面85からの規制部材66の突出長さを変化させることによって、第1動作部73および第2動作部83の回動動作が規制される時の溝部76および挿入部92の間の距離を調整可能である。また、本実施の形態では、規制部材66が第2ペンチ片81に設けられる場合を説明したが、規制部材66が第1ペンチ片71に設けられる構成であってもよい。
【0071】
続いて、工具61を用いて、外周上にスリーブ41および締め付けプラグ51が配置されたパイプ31にスリーブ41を仮止めする作業の工程について説明する。
図7から
図11は、
図3および
図4中の工具を用いて、外周上にスリーブおよび締め付けプラグが配置されたパイプにスリーブを仮止めする作業の工程を示す図である。
【0072】
図7を参照して、まず、パイプ31の外周上に、締め付けプラグ51を配置し、次に、スリーブ41を配置する。次に、外周上に締め付けプラグ51およびスリーブ41が配置されたパイプ31を、溝部76に配置する。この際、パイプ31の先端部32、スリーブ41およびプラグ51が、第1動作部73および第2動作部83の間に位置決めされる。
【0073】
図6および
図8を参照して、右手で第1把持部72および第2把持部82を把持しながら、左手で、パイプ31を挿入部92に対して、先端部32がパイプ当接部95に当接する位置まで挿入する。
【0074】
図6および
図9を参照して、左手で、先端部32がパイプ当接部95に当接する位置まで挿入されたパイプ31を支持しながら、右手で第1把持部72および第2把持部82を握り締める。プラグ51の頭部52が第1動作部73の第1内面75に押されることによって、スリーブ41およびプラグ51の外ネジ部53が挙げた順に挿入部92に挿入される。
【0075】
本実施の形態では、ガイド部99によって、外ネジ部53が挿入部92における挿入方向に沿ってガイドされるため、挿入部92の内部で引っ掛かり等が生じることを防止できる。
【0076】
図6に示されるように、パイプ31の先端部32がパイプ当接部95に当接した状態で、スリーブ41の第1テーパ部42がスリーブ当接部93と当接し、締め付けプラグ51がスリーブ41の第2テーパ部43と当接する。スリーブ41は、ニップル21および締め付けプラグ51から、中心軸140の軸方向において圧縮方向の力を受けることによって、縮径方向に塑性変形する。
【0077】
図10を参照して、右手で第1把持部72および第2把持部82を開きながら、左手に持ったパイプ31を第1動作部73および第2動作部83から離脱させる。
図11を参照して、以上の工程により、先端部32から所定長さSだけ離れた位置においてスリーブ41が仮止めされたパイプ31が得られる。
【0078】
図12は、比較例における工具を用いて、外周上にスリーブおよび締め付けプラグが配置されたパイプにスリーブを仮止めする作業の工程を示す斜視図である。
図12を参照して、比較例における工具200は、把持部210と、ニップル221とを有する。把持部210は、作業者が把持可能な棒形状を有する。ニップル221は、
図1中のニップル21のエルボータイプに対応している。ニップル221(外ネジ部27)は、把持部210に接続されている。
【0079】
このような工具200を用いて、外周上にスリーブ41および締め付けプラグ51が配置されたパイプ31にスリーブ41を仮止めする場合、左手で把持部210を把持しながら、右手で、外周上にスリーブ41および締め付けプラグ51が配置されたパイプ31を、ニップル221の内ネジ部22に差し込み、さらに、右手から左手に替わって、パイプ31を先端部32がパイプ当接部95に当接する位置まで押し込んだまま、右手に持ったスパナ等により、締め付けプラグ51の頭部52を回す必要がある。この場合、スパナの操作が困難になったり、パイプ31を押し込む作業が不確かとなって、スリーブ41が仮止めされる位置がずれたりする可能性がある。
【0080】
一方、本実施の形態における工具61を用いた場合、左手で、先端部32がパイプ当接部95に当接する位置まで挿入されたパイプ31を支持しながら、右手で第1把持部72および第2把持部82を握り締める作業で足りる。このため、外周上にスリーブ41および締め付けプラグ51が配置されたパイプ31にスリーブ41を仮止めする際の作業性を良好にできる。
【0081】
以上に説明した、この発明の実施の形態における工具61の構造についてまとめると、本実施の形態における工具61は、外周上にスリーブ41および締め付けプラグ51が配置されたパイプ31に、スリーブ41を仮止めするための工具である。工具61は、回転支持部62により回動可能である第1ペンチ片71および第2ペンチ片81を備える。第1ペンチ片には、回転支持部62における回転軸としての回転中心軸101の周方向において開通し、パイプ31の挿通が可能で、かつ、締め付けプラグ51の挿通が不可である溝部76が設けられる。第2ペンチ片81には、回転支持部62における回転中心軸101の周方向において溝部76と対向して開口し、パイプ31およびスリーブ41の挿入が可能である挿入部92と、挿入部92の内側に配置され、パイプ31の先端部32と当接可能なパイプ当接部95と、挿入部92の内側に配置され、回転支持部62における回転中心軸101の周方向において、パイプ当接部95よりも挿入部92がなす開口92a寄りに位置し、スリーブ41と当接可能なスリーブ当接部93とが設けられる。
【0082】
このように構成された、この発明の実施の形態における工具61によれば、外周上にスリーブ41および締め付けプラグ51が配置されたパイプ31にスリーブ41を仮止めする作業時に良好な作業性を得ることができる。
【0083】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】工具は、外周上にスリーブ41および締め付けプラグ51が配置されたパイプ31に、スリーブ41を仮止めするための工具である。工具は、第1ペンチ片71および第2ペンチ片81を備える。第1ペンチ片には、パイプ31の挿通が可能で、かつ、締め付けプラグ51の挿通が不可である溝部76が設けられる。第2ペンチ片81には、溝部76と対向して開口し、パイプ31およびスリーブ41の挿入が可能である挿入部92と、挿入部92の内側に配置され、パイプ31の先端部32と当接可能なパイプ当接部95と、挿入部92の内側に配置され、パイプ当接部95よりも挿入部92がなす開口92a寄りに位置し、スリーブ41と当接可能なスリーブ当接部93とが設けられる。