【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるひな鳥の餌付け方法は、飼育エリアの床上に、おが粉、あるいは切断した藁、又は籾殻等の素材を敷き、その上に、餌と異なる明度を有する餌付けシートを敷いて当該餌付けシート上に餌をばら撒いてひな鳥を生育するひな鳥の餌付け方法において、
前記餌付けシートとして、明度の高い部分となる地色の中に明度の低い色を付した部分を設けた餌付けシートを、前記素材の上に敷いて、その上に、前記餌を撒いて餌付けすることを特徴とする。
【0010】
前述のように構成されたひな鳥の餌付け方法によれば、屋根がある鶏舎の中は一般に暗いが、かかる場合にも、前記餌付けシートの地色の明度が高いことに起因して餌付けシート全体が比較的明るくなる。
このため、ひな鳥は従来の餌付けシートを用いた場合に比べて活動が活発になり、この結果、餌を食べる量が増加する。
また,部分的に明度の低い色を付した部分が配置されていることから、冬季や寒冷地において、ブルーダー( Bruder:鶏舎の加温装置)で加熱する際にも、輻射熱の吸収性が高まり、餌付けシート面上の温度をより迅速に且つ低エネルギーで所定温度にすることができる。
また、前記明度の低い色を付した部分が存在すると、ひな鳥の習性として休むときは暗いところを好むため、この部分がひな鳥に安心感を与えることができる。また、前記明度の低い色を付した部分では、餌とのコントラストを強くすることができるため、視力が弱いひな鳥にとっても餌を見つけ易くなる。このため、さらに餌を食べる量が増加する。
さらに、前記餌の色を前記明度の高い部分より少なくともマンセルカラーシステムにおいて「2」以上低く設定すると、かかる明度の高い部分においても、ひな鳥は餌を見つけ易くなる。
このように、餌と餌付けシートとの色(明度)の差があることによって、前記「餌が視認し易い」という理由に加えて、ひな鳥の場合、休むときに陰を好むことから、このことと同じ理由によって、黒色又はダークグレーの部位では精神的な面で、ひな鳥に安心感を与えるのではないかと推測される。
また、前記明度の低い色を付した部分を黒色又はダークグレーとすると、一般的に黄色い色をしたひな鳥がその部分において目立ち易くなる。このため、生産者(飼育者)がひな鳥の動きを把握し易く、従って、弱っているひな鳥を発見し保護又は隔離し易くなる。この結果、ひな鳥の斃死率を低減させることができ、また、疫病の感染の拡大を未然に防止することができる点でも好ましい。
さらに加えて、本発明のように「飼育エリアの床上に、おが粉や切断した藁等の素材を敷きその上に餌付けシートを敷かれている」と、ひな鳥が餌付けシート上を歩く度に、堆積した形状がくずれ易い前記おが粉や切断した藁等の素材とひな鳥の体重により変形する餌付けシートとの間で、大きな「ガサガサ」という音が生じる。
このような状況を呈すると、観察の結果、ひな鳥の特徴として、前記「ガサガサ」という音に対して他のひな鳥が反応して、全てのひな鳥が活発に動き回りはじめる、ことが判明した。
この結果、「音」による刺激で、ひな鳥の運動量が増加して、餌を食べる量も増える。
【0011】
前記ひな鳥の餌付け方法において、前記餌付けシートが、前記明度の高い部分となる地色の中に明度の低い色を付した部分を飛び石状に配置させた平面模様を形成したシートであると、好ましい。つまり、飛び石状に配置されている明度の低い色を付した部分を、自身又は他のひな鳥の影と思って刺激を受け、当該刺激を受けたひな鳥が活発に動くようになる。
【0012】
前記ひな鳥の餌付け方法において、前記餌付けシートの、前記飛び石状に配置されている明度の低い色を付した部分の角が、ラウンド状の形状であると、その形状に起因してひな鳥に安心感を与えることでき、より好ましい構成となる。
【0013】
さらに、前記ひな鳥の餌付け方法において、前記明度の高い部分に対して、その中に配置されている明度の低い色を付した部分の面積比率が、15パーセント〜40パーセントであると、明度の高い部分と明度の低い色を付した部分から得られる作用効果がバランスよく作用して、全体として前記作用効果を顕著に得ることができる点で好ましい。
【0014】
また、前記ひな鳥の餌付け方法において、前記明度の高い部分の地色がオフホワイトあるいはベージュ、又は黄色であり、前記明度の低い色を付した部分が、黒色又はダークグレーであると、これらの色の明度と明度の異なる色の餌を用いれば、例えば、明度の高い部分を、前記餌の明度に比べてマンセルカラーシステムにおいて「2」以上明度を高くすることも好ましく、特に、餌の明度に比べてマンセルカラーシステムにおいて「2」以上明度を高くすると、かかる明度の高い部分においても、餌を識別し易くなる点で好ましい。また、給水器を配置する場合にも、前記餌と同じく、前記明度の高い部分および明度の低い色を付した部分の明度に比べて当該給水器の明度がマンセルカラーシステムにおいて「2」以上異なる明度の赤色や黄色やオレンジ色にして目立ち易くすることが好ましい。
【0015】
また、前記ひな鳥の餌付け方法において、前記飛び石状に配置されている明度の低い色を付した部分のいくつかが、入雛後1週間目のひな鳥の投影面積に略等しい面積であると、この部分が、他のひな鳥の影と思って、当該ひな鳥がこれに刺激されて活発に動くようになる。
【0016】
また、前記ひな鳥の餌付け方法において、前記明度の低い色を付した部分を形成するべく着色するための着色剤として炭あるいは食品衛生法上使用が認められている着色剤が用いられていると、ひな鳥が仮に餌付けシートを食しても無害であり、また生育後鶏肉として出荷される際にも悪い影響を与えない。
【0017】
また、本発明にかかる餌付けシートは、飼育エリアの床上に、おが粉、あるいは切断した藁、又は籾殻等の素材を敷き、その上に、餌付けシートを敷いて当該餌付けシート上に餌をばら撒いてひな鳥を生育する方法に使用する餌付けシートであり、
前記餌付けシートが、明度の高い部分となる地色の中に明度の低い色を付した部分を設けたシートであると、前記ひな鳥の餌付け方法に用いる餌付けシートを実現できる。
【0018】
前記ひな鳥の餌付けシートにおいて、前記明度の高い部分となる地色が、オフホワイトあるいはベージュ、又は黄色であり、前記明度の低い色を付した部分が前記地色の中に飛び石状に配置され、且つその明度の低い色を付した部分のいくつかが、1週間目のひな鳥の投影面積(餌付けシート上への投影面積)に略等しい面積であると、好ましい構成となる。
【0019】
前記ひな鳥の餌付けシートにおいて、前記餌付けシートが、その上で飼育されるひな鳥が踏むことによって1日〜10日程度、好ましくは2日〜4日程度でばらばらになるように、繊維組織の粗い紙で構成されていると、好ましい構成となる。
【0020】
前記ひな鳥の餌付けシートおいて、前記餌付けシートが、1平米あたり30g〜55gの重量の古紙によって構成されていると、使用に際し敷き易く又使用において適度な耐久性と吸水性を有する。また、経済的にも安価に供給できる点で好ましい。
【0021】
前記ひな鳥の餌付けシートにおいて、前記餌付けシートの前記ばらばらになる期間が、当該餌付けシートにミシン目加工(穿孔加工)あるいはエンボス加工(凹凸加工)が施された当該ミシン目あるいはエンボス加工の各穴あるいは凸部の大きさと当該穴あるいは凸部の間隔およびミシン目のライン(複数の穴(針穴)が列状に形成するライン)あるいは凸部のライン(複数の凸部が列状に形成するライン)の間隔のいずれか一方あるいは両方によって調整されていてもよい。かかる構成では、古紙自体の耐久性が、所望する「ばらばら」になる期間を上回るときにも、前記ミシン目加工あるいはエンボス加工の適宜形成で「ばらばら」になる期間を自在に設定することができる。
また、前記ミシン目の各穴やエンボス加工の凹部からひな鳥の尿を下方に通過させることができ、また餌付けシート下への通風性を得ることができる。
なお、この明細書および特許請求の範囲において「ミシン目」とは、穿孔された針穴群を言い、必ずしも1列又は複数列状に形成されているものに限定する意味で使用するものではない。
【0022】
また、前記ミシン目のラインあるいは凸部のラインが、シートの長手方向に、相互に所定の間隔を有して並んで設けられていると、当該間隔を適宜設定することによって、前記餌付けシートが「ばらばらになる」期間が調整可能な構成を実現できる。
【0023】
さらに、前記ミシン目のラインあるいは凸部のラインが、シートの長手方向に対して交角を有する方向に、間隔を有して並んで設けられていると、当該間隔を変更させることによって、前記餌付けシートが「ばらばらになる」期間が調整可能な構成を実現できる。しかも、シートを長手方向に引っ張っても、容易に破れに難い構成となる。
【0024】
前記餌付けシートにおいて、前記餌付けシートの明度の低い色を付した部分を、前記餌の明度に比べてマンセルカラーシステムにおいて「2」以上低くすることが好ましく、特に、前記明度の低い色を付した部分が、餌の色に比べてマンセルカラーシステムにおいて「2」以上低い、黒色又はダークグレー(具体的には、マンセルカラーシステムの明度「1」〜「3」に属する黒色又はグレー)であるときに、餌の摂取量が多く顕著な飼育結果が得られることが判明した。推測するところ、餌と餌付けシートとの色の差があることによって、前記「餌が視認し易い」という理由に加えて、ひな鳥の場合、休むときに陰を好むことから、このことと同じ理由によって、黒色又はダークグレーの背景色の場合に精神的な面からひな鳥に安心感を与えるのではないかと推測される。
また、餌付けシートの一部を黒色又はダークグレーとすると、黄色をしたひな鳥がその上にいるときは目立ちやすいため、生産者(飼育者)がひな鳥の動きを把握し易く、従って、弱っているひな鳥を発見し保護又は隔離し易くなる。このため、ひな鳥の斃死率を低減させることができ、また、疫病の感染を未然に防止することができる点でも好ましい。
さらに、前記餌付けシートの明度の高い部分を、前記餌の明度に比べてマンセルカラーシステムにおいて「2」以上高くすることも好ましく、特に、餌に比べてマンセルカラーシステムにおいて「2」以上高い、オフホワイトあるいはベージュ、又は黄色であると、前記した理由と同じ理由により好ましい結果を得ることができる。
【0025】
前記餌付けシートは、ひな鳥の飼育において鶏舎の床に敷く餌付けシートであって、かかる餌付けシートの明度の低い色を付した部分の色が、餌の色と異なる色で構成されていると好ましい構成となる。
【0026】
前記餌付けシートの明度の低い色を付した部分の色が、黒色又はダークグレーであると、餌を見つけ易くなり、その結果、餌を食べる量が多くなるものと推測される。
【0027】
そして、前記餌付けシートとしては、所定期間、つまり餌付けシートの所定の使用期間が経過すると、ひな鳥がシート上を踏むことにより、あるいは糞尿等を吸収することにより、又はその両方によって、餌付けシートが、細かく砕ける状態が得られることが望ましい。
そのような餌付けシートとして、ダンボールや新聞紙を主原料とする古紙(再生紙)を用いることがリサイクルによる環境の点からも好ましい構成となる。