(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第2工程が、押出機の上流(ホッパー)側から下流(押出機出口)側にエアブロー清掃する工程であり、さらに取り外したダイスとブレーカープレートをエアブロー清掃する工程である、請求項1記載の押出機の洗浄および清掃方法。
先行使用の熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であるとき、前記洗浄用樹脂組成物が(A)成分としてHDPEを含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項記載の押出機の洗浄および清掃方法。
先行使用の熱可塑性樹脂がスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれるものであるとき、前記洗浄用樹脂組成物が(A)成分としてAS樹脂を含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項記載の押出機の洗浄および清掃方法。
【背景技術】
【0002】
樹脂加工に使用する押出機は、先行樹脂から次の樹脂に切り替える際は、洗浄用樹脂組成物で洗浄した後、押出機の分解清掃を行うことが多い。
【0003】
特許文献1は、溶融押出機中の熱可塑性樹脂をパージするにあたり、高級脂肪酸塩をパージング剤として用いるパージング方法の発明である。
特許文献2は、掃除具5と、押出機のスクリュウ駆動力源3により駆動され、前記掃除具5をシリンダー1の軸方向に移動させるスクリュウジャッキ6と、掃除具5がシリンダー1の前後端部に到達したことを検出してその移動方向を逆転させる制御機構7を備えている押出機シリンダーの内部樹脂除去装置の発明である。押出機のシリンダー1内壁に掃除具5の先端を接触させて、シリンダー1内壁に付着している樹脂10を取り除くものである。
特許文献3の二軸押出機は、2箇所の材料供給口があり、材料供給口に対向するバレル内径面およびスクリュー径が他部分より太径であっても材料切換時の分解掃除の際、バレルの内径面およびスクリューが解放され、掃除が容易にできることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、樹脂加工に使用した押出機の洗浄および清掃が容易な押出機の洗浄および清掃方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、押出機により先行使用の熱可塑性樹脂を押し出した後、洗浄用樹脂組成物を押し出して前記押出機を洗浄する第1工程と、
第1工程後、前記押出機のシリンダー内部に残留する前記洗浄用樹脂組成物を排出させる第2工程を有している押出機の洗浄および清掃方法であって、
前記第1工程で使用する洗浄用樹脂組成物が、(A)HDPEまたはAS樹脂を含む熱可塑性樹脂および(B)界面活性剤、必要に応じてさらに(C)無機フィラーを含むものであり、
前記第1工程が、前記第1工程にて先行使用の熱可塑性樹脂を押し出すときのQ/N比(Qは単位時間当たりの押出量〔kg/hr〕であり、Nは押出機のスクリュー回転数〔r/m〕である。)に対して20〜50%のQ/N比で前記洗浄用樹脂組成物を押し出す工程であり、
前記第2工程が、前記押出機からダイスとブレーカープレートを取り外した状態でシリンダー内部をエアブロー清掃することによって、前記シリンダー内部に残留する前記洗浄用樹脂組成物を排出させる工程である、押出機の洗浄および清掃方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の押出機の洗浄および清掃方法を適用すれば、押出機内部の洗浄および清掃作業が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1工程>
第1工程は、押出機により先行使用の熱可塑性樹脂を押し出した後、洗浄用樹脂組成物を押し出して前記押出機を洗浄する工程である。
第1工程では、先行使用の熱可塑性樹脂を押し出すときのQ/N比に対して20%〜80%のQ/N比で前記洗浄用樹脂組成物を押し出す。
Q/N比のQは単位時間当たりの押出量〔kg/hr〕であり、Nは押出機のスクリュー回転数〔r/m〕である。
洗浄用樹脂組成物を押し出すときのQ/N比(以下「洗浄Q/N比」という)は、基本Q/N比の25%〜70%がより好ましく、25%〜60%がさらに好ましい。このように洗浄用樹脂組成物を押し出すときに基本Q/N比と洗浄Q/N比を関連づけることによって、押出機内部の洗浄用樹脂組成物を小さな塊状に変化させることができるようになるため、洗浄用樹脂組成物の排出性が向上される。
【0010】
第1工程では、押出機に洗浄用樹脂を供給して、シリンダーの外部から加熱しながらスクリューにて溶融混練して押し出すことで押出機内部を洗浄する。
押出機は、各種熱可塑性樹脂の加工に使用する公知の単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機である。
押出機は、バレル(シリンダー)内にスクリュー、ブレーカープレートなどが内蔵され、押出機出口にダイスが取り付けられているものである。ダイスは、アダプター、ダイホルダーなどと共に取り付けられていてもよい。
【0011】
第1工程で使用する洗浄用樹脂組成物は、(A)HDPEまたはAS樹脂を含む熱可塑性樹脂、(B)界面活性剤および必要に応じて(C)無機フィラーを含むものである。
(A)成分は、HDPEまたはAS樹脂のみからなるものでもよいし、他の熱可塑性樹脂を含むものでもよい。
他の熱可塑性樹脂としては、公知の洗浄用樹脂組成物で使用されているものを挙げることができる。
(A)成分中のHDPEまたはAS樹脂の含有割合は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0012】
(B)成分の界面活性剤は、特開2009-197216号公報に記載されている、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩(好ましくは炭素数8〜20)、アルカンスルホン酸塩類、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルフォ脂肪酸塩、α−スルフォ脂肪酸エステル、炭素数が12〜20の飽和又は不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩等から選ばれる1又は2以上のアニオン界面活性剤が好ましい。
【0013】
(C)成分の無機フィラーとしては、周知のガラス繊維や金属繊維のほか、特開2009-197216号公報に記載の溶融スラグ、鉄鋼スラグ又はこれらの破砕物、人造鉱物繊維から選ばれるものを挙げることができ、繊維状のもの、非繊維状のもの(粉末状、粒状、破砕物等)を用いることができる。
ガラス繊維としては、一般に市販されているものが使用可能であり、例えば日本電気硝子(株)、日本板硝子(株)、日東紡績(株)のプラスチック用ガラス繊維メーカーで製造されているものが入手可能である。これらは、繊維を束ねるための集束剤、および樹脂との密着性を向上させるためのカップリング剤が配合されているが、必要に応じて、ガラス繊維の樹脂からの脱落を防止したり、洗浄剤樹脂組成物の加工性を向上させたりする目的でカップリング剤を増量してもよい。
人造鉱物繊維としては、ロックウール(岩綿)、スラグウール(鉱さい綿)から選ばれるものを用いることができる。
【0014】
第1工程で使用する組成物には、本発明の課題を解決できる範囲内で、公知の各種添加剤を含有することができる。公知の添加剤としては、例えば、特開2009-197216号公報に記載のアルキレングリコール脂肪酸エステル、有機燐化合物、多価アルコール、金属石鹸などを挙げることができる。
【0015】
洗浄用樹脂組成物は、MFR(220℃/10kg)が0.5〜30g/10minであることが好ましく、1〜20g/10minがより好ましい。
【0016】
洗浄用樹脂組成物は、上記各成分をヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、ニーダーなどの混合機で予備混合した後、押出機で混練したり、加熱ロール、バンバリーミキサーで溶融混練したりすることによって製造することができる。
【0017】
第1工程では、先行使用の熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であるとき、洗浄性能を高めるため、洗浄用樹脂組成物は(A)成分としてHDPEを含んでいるものを使用することが好ましい。
第1工程では、先行使用の熱可塑性樹脂がスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれるものであるとき、洗浄性能を高めるため、洗浄用樹脂組成物は(A)成分としてAS樹脂を含んでいるものを使用することが好ましい。
【0018】
<第2工程>
第2工程は、第1工程後、前記押出機のシリンダー内部に残留する前記洗浄用樹脂組成物を排出させる工程である。
第2工程では、押出機からダイスとブレーカープレートを取り外した状態でシリンダー内部をエアブロー清掃することによって、シリンダー内部に残留する洗浄用樹脂組成物を排出させる。
エアブロー清掃は、押出機のホッパー、ベント孔またはそれらの両方(上流)側から押出機出口(下流)側に向かってエアブロー清掃することで、内部に残留している洗浄剤樹脂組成物を排出する処理である。このとき、第1工程の処理により残留している洗浄剤樹脂組成物は小さな塊状になっているため、エアブロー清掃により簡単に排出させることができる。
エアブロー清掃時の風圧は、0.4〜0.7MPaが好ましく、0.4〜0.6MPaがより好ましい。
また取り外したダイスとブレーカープレートもエアブロー清掃することが好ましい。
【0019】
その後、押出機のシリンダーからスクリューを取り出し、依然として洗浄剤樹脂組成物が残留している場合にはさらに清掃する。
本発明の洗浄および清掃方法では、第2工程までの処理で洗浄用樹脂組成物は除去されているため、スクリューの取り出し作業も容易であり、さらに清掃する場合であっても、ブラシなどで軽く擦ったり、布で拭いたりする程度の簡単な仕上げ清掃を実施すればよい。
【実施例】
【0020】
実施例および比較例
表1に示す組成の各成分をタンブラーブレンダーで混合後、押出機にて溶融混練し、ペレット状の洗浄用樹脂組成物を得た。これらの組成物を使用し、下記の方法で洗浄試験を行った。
【0021】
<先行使用の熱可塑性樹脂>
PP黒 :サンアロマー(株) PM900A(黒着色:カーボンブラック濃度0.25%)
ABS黒 :ダイセルポリマー(株) セビアン-V510(黒着色:カーボンブラック濃度0.25%)
<洗浄剤樹脂組成物>
(A)熱可塑性樹脂
HDPE:東ソー(株) ニポロンハード 6000(MFR=0.15)
AS:AN=27wt%(MFR=4)
(B)界面活性剤
α−オレフィンスルホン酸Na:ライオン(株)ルボランPB−800
アルカンスルホン酸Na:クラリアントジャパン(株) HOSTAPUR SAS93
(C)無機フィラー
ガラス繊維:日本電気硝子(株) ECS03 T-120
(その他)
リン酸エステル−1:大八化学工業(株)TPP
リン酸エステル−2:大八化学工業(株)PX−200
トリス(2,4-ジ゛-t-ブチルフェニル)フォスファイト:BASFジャパン(株)イルガフォス168
【0022】
(第1工程)
表1に示す先行使用の熱可塑性樹脂1kgをスクリュー回転数200r/m(基本Q/N比=0.1)で押出した。
その後、洗浄用樹脂組成物1kgをスクリュー回転数250r/m(洗浄Q/N比=0.04,基本Q/N比の40%)で置換排出した後、ダイスとブレーカープレートを取り外した。
押出機:(株)日本製鋼所 TEX−30、口径32mm
シリンダー温度:C1=220℃、C2〜C8=230℃(C1が上流側、C8が下流側)、ダイ温度:230℃
【0023】
(第2工程)
押出機のフィード口及びベント孔(C5,C8にある)に送風機の空気排出口を接続して、ベント孔(上流)側からダイスを取り外した押出機出口(下流)側に風圧約0.5MPaで2分間エアブロー清掃した。
【0024】
(残留性)
第2工程終了後に押出機を分解してスクリューを取り出し、シリンダー内部に残った洗浄用樹脂組成物の状態とスクリューへの洗浄用樹脂組成物の残留性を目視で評価した。
○:洗浄用樹脂組成物がたくさんの小さな塊でシリンダー内に存在しており、スクリューには付着していない(
図1、
図2)。
△:洗浄用樹脂組成物が小さな塊でシリンダー内に存在しているが、一部はスクリューにも付着した状態で残留している。
×:洗浄用樹脂組成物がスクリューに付着した状態で残留している(
図3)。
【0025】
(洗浄および清掃性)
第2工程終了後において、ブレーカープレートやダイスのオリフィスに残った洗浄用樹脂組成物を取り除く際の作業性を評価した。
○:エアブローで取り除くことができた。
×:ブレーカープレートやダイスのオリフィスに密着しており、エアブローでは取り除くことができなかった。
(スクリューの抜きやすさ)
第2工程終了後に押出機を分解してスクリューを取り出す際のスクリューの抜きやすさを評価した。
○:スクリューを容易に抜くことができる。
×:シリンダー内に洗浄用樹脂組成物が充満しており、スクリューを容易に抜くことができない。
【0026】
【表1】