特許第6780235号(P6780235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6780235-パール調印刷物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780235
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】パール調印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/28 20060101AFI20201026BHJP
   B41M 7/02 20060101ALI20201026BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   B41M1/28
   B41M7/02
   B41M3/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-225677(P2015-225677)
(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公開番号】特開2017-94500(P2017-94500A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堤 阿紀子
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−139927(JP,A)
【文献】 米国特許第05333549(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/28
B41M 3/00
B41M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属光沢を有する基材上に印刷インキ層が配置されている印刷物であって、
前記印刷インキ層が白色インキとメジウムとを混合した混合インキで構成されており、
これら白色インキとメジウムとが、これらを1:1の重量比で混合した混合インキを印刷した場合の白色度が、メジウムを混合することなく前記白色インキを印刷した場合の白色度の70%であるものであり、
前記混合インキが、これら白色インキとメジウムとを、重量比が14:86〜57:43の割合で混合したものであることを特徴とするパール調印刷物。
【請求項2】
前記基材が、紙上に金属蒸着層が積層されているものであることを特徴とする請求項1に記載のパール調印刷物。
【請求項3】
前記基材が、紙上に金属箔が積層されているものであることを特徴とする請求項1に記載のパール調印刷物。
【請求項4】
前記紙が板紙であることを特徴とする請求項2又は3に記載のパール調印刷物。
【請求項5】
前記印刷インキ層上に透明保護層が積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパール調印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパール光沢を有する印刷物に関する。この印刷物は、例えば、紙を基材として、紙箱に製函して使用することができる。
【背景技術】
【0002】
パール光沢は、一般に、光の多重干渉によってもたらされる。例えば、多層構造を有する雲母等の粉末を顔料として印刷インキを調整したものはパールインキとして知られている。このパールインキを紙等の基材に印刷すれば、パール光沢を有するパール調印刷物を得ることができる(特許文献1)。
【0003】
また、紙等の基材に多層構造の透明蒸着膜を真空蒸着することによって、パール光沢を有するパール紙を製造できることも知られている。透明蒸着膜の代わりに透明な塗布膜を多層構造に積層した場合にもパール紙を製造することができる。
【0004】
しかしながら、例えば、この基材上にオフセット印刷によって印刷絵柄を施す場合には、様々な困難がある。例えば、基材上にパールインキを板グラビアで印刷する場合には、そのインキ中に含まれる溶剤が残留して溶剤の臭気が残り、食品等を収容する紙箱には剥かない。
【0005】
また、パールインキをグラビア印刷する場合には、このパールインキ層の上にアンカーコートを施した後印刷絵柄をオフセット印刷する必要があり、その工程数が多くなる。また、グラビア印刷は大量印刷に適する印刷方法であるため、少ロットの印刷には適しておらず、コストの増加を引き起こし易い。
【0006】
また、パールインキをオフセット印刷する場合には、インキの厚盛りが困難であり、パール光沢が発揮できない。
【0007】
また、市販のパール紙を基材に張り合わせる方法もあるが、この場合にはコスト高と成る上、部分的に張り合わせることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭59−59935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、光の多重干渉を利用することなく、パール光沢を有する印刷物を提供することを目的とする。この印刷物は、市販のパール紙を使用することなく、印刷技術を用いることで容易に製造できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、金属光沢を有する基材上に印刷インキ層が配置されている印刷物であって、
前記印刷インキ層が白色インキとメジウムとを混合した混合インキで構成されており、
これら白色インキとメジウムとが、これらを1:1の重量比で混合した混合インキを印刷した場合の白色度が、メジウムを混合することなく前記白色インキを印刷した場合の白色度の70%であるものであり、
前記混合インキが、これら白色インキとメジウムとを、重量比が14:86〜57:43の割合で混合したものであることを特徴とするパール調印刷物である。
【0011】
次に、請求項2に記載の発明は、前記基材が、紙上に金属蒸着層が積層されているものであることを特徴とする請求項1に記載のパール調印刷物である。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記基材が、紙上に金属箔が積層されているものであることを特徴とする請求項1に記載のパール調印刷物である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記紙が板紙であることを特徴とする請求項2又は3に記載のパール調印刷物である。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記印刷インキ層上に透明保護層が積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパール調印刷物である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の印刷物は、金属光沢を有する基材上に白色度の低い印刷インキ層が配置されており、金属光沢面で正反射された反射光が、印刷インキ層に含まれるわずかな白色顔料によって散乱される。そして、この散乱光同士が互いに干渉するため、この印刷物はパール調を呈することとなる。
【0016】
印刷インキ層は任意の印刷方法によって印刷でき、例えば、オフセット印刷法によって印刷できるから、この上にアンカーコート層を設けることなく、そのままオフセット印刷法で印刷絵柄を印刷することができる。もちろん、市販のパール紙を別途準備する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の印刷物の例を示し、図1(a)はその第1の例の断面説明図、図1(b)は第2の例の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の印刷物は基材と印刷インキ層とを必須の構成要素とするものである。この他、印刷インキ層上に透明保護層が積層されていてもよいし、有彩色又は無彩色の印刷絵柄を有していてもよい。
【0019】
図1(a)は、基材1上に印刷インキ層2及び透明保護層3をこの順に積層して構成されるパール調印刷物100の断面説明図である。
【0020】
基材1は、その表面が金属光沢を有する必要がある。このような基材としては、紙11の上に金属蒸着層12が積層されたものが例示できる。また、プラスチックフィルムに金属蒸着層を設けて蒸着フィルムとし、この蒸着フィルムを紙11に張り合わせたものも使用できる。この他、紙11に金属箔を積層したものを基材1とすることも可能である。金属箔としてはアルミニウム箔を好適に使用できる。紙11としては、板紙を好適に使用することができ、このように板紙を使用して製造したパール調印刷物は食品用紙箱の素材として使用できる。
【0021】
印刷インキ層2は、市販の白色インキにメジウムを混合して、その濃度を薄くしたものが使用できる。市販の白色インキとしては、例えば、東洋インキ製造(株)製FDコンク白UTKを使用できる。
【0022】
この白色インキとメジウムとを1:1の重量比で混合した混合インキを印刷した場合、その印刷インキ層の白色度は、メジウムを混合することなく白色インキを印刷した印刷イ
ンキ層の白色度の約70%(半調70%)である。そこで、このように白色インキとメジウムとの混合比が1:1の重量比である場合を半調70%として、印刷インキ層2は半調20〜80%の混合インキで構成する必要がある。印刷インキ層2がこれに満たない場合には、基材1で正反射された反射光に散乱が不十分でパール光沢が得られない。他方、これより多い場合には、印刷インキ層2の隠蔽力が強いため、やはり、パール光沢が得られない。なお、白色インキとメジウムとを1:1の重量比が14:86の場合半調20%、57:43の場合半調80%である。
【0023】
この印刷インキ層2は任意の印刷方法によって印刷することができる。例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、板グラビア印刷法、フレキソ印刷法等である。印刷絵柄を設ける場合には、この印刷絵柄と同じ印刷方法で印刷することが望ましい。例えば、印刷絵柄をオフセット印刷法で印刷する場合には、印刷インキ層2の印刷方法もオフセット印刷法である。
【0024】
また、この印刷インキ層2は、基材1の全面に設けることもできるが、パターン状に、すなわち、部分的に設けることもできる。図1(a)に示す印刷物は、基材1に中央に部分的に印刷インキ層2を設けたものである。
【0025】
次に、透明保護層3は、印刷インキ層2を傷や汚れから保護する機能を有するもので、透明なオーバープリントニスを塗布して形成することができる。このようなオーバープリントニスとしては、例えば、東洋インキ製造(株)製FDクリアSHを挙げることができる。なお、このオーバープリントニスとして紫外線硬化型の高光沢ニスを使用することも可能である。また、透明なフィルムを貼り合わせて透明保護層3としてもよいし、透明樹脂を溶融状態で押出しコーティングして透明保護層3としてもよい。
【0026】
この透明保護層3は印刷インキ層2を被覆して積層することが望ましい。基材1の全面に積層してもよいが、部分的であってもよい。図1(a)は、印刷インキ層2を被覆して、しかも、部分的に透明保護層3を積層した例である。
【0027】
次に、図1(b)は、印刷絵柄4を有するパール調印刷物100の例を示す断面説明図である。この例は、印刷絵柄4を有する他、図1(a)の印刷物と同様である。印刷絵柄4は有彩色であってもよいし、無彩色であってもよい。また、その位置は、印刷インキ層2と透明保護層3との間、あるいは透明保護層3の上に配置することができる。望ましくは印刷インキ層2と透明保護層3との間であり、この位置に印刷絵柄4を配置することにより、傷や汚れから印刷絵柄4を守ることができる。なお、印刷絵柄4の印刷方法は前述のとおりである。
【実施例】
【0028】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0029】
基材1として、板紙に蒸着フィルムを積層したシートを使用した。板紙は京王製紙(株)製ブリリアンSB(坪量310g/m)である。
【0030】
次に、白色インキとして東洋インキ製造(株)製FDコンク白UTKを使用し、この白色インキにメジウムを混合して、濃度の薄い印刷インキを調製した。混合比(重量比)は、半調(%)と共に表1に示す。
【0031】
そして、この印刷インキを前記基材1上に印刷して印刷インキ層2を形成した。印刷方法はオフセット印刷法で、基材1の中央に部分的に印刷した。
【0032】
そして、東洋インキ製造(株)製FDクリアSHをオーバープリントニスとして使用し、印刷インキ層2を被覆して、しかも、部分的に塗布して、透明保護層3を形成した。
【0033】
得られた印刷物100を肉眼で観察して、パール光沢の有無を判定した。パール光沢が観察できたものを「○」、パール光沢が感じられなかったものを「×」として、表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
この結果から分かるように、半調20〜80%の混合インキを使用した場合にはパール光沢を観察することができるが、これに満たない混合インキを使用した場合、あるいは、これを超える混合インキを使用した場合は、いずれの場合にも、パール光沢が観察できなかった。このため、半調20〜80%の混合インキを使用して、金属光沢を有する基材1上に印刷インキ層2を形成した場合には、パール調の印刷物が得られることが理解できる。
【符号の説明】
【0036】
100:パール調印刷物
1:基材 11:紙 12:金属蒸着層
2:印刷インキ層
3:透明保護層
4:印刷絵柄
図1