(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状部材と、この筒状部材に内装されている光学要素とを含み、前記光学要素を前記筒状部材内において筒軸方向と直交する面上で移動させて当該光学要素の偏芯調整を行う偏芯調整構造であって、前記光学要素の周面の少なくとも1箇所に着脱可能に設けた固定ピンと、前記筒状部材に設けられて前記固定ピンの一部が内挿されるピン固定穴を備え、前記固定ピンは接着剤により前記ピン固定穴に接着され、接着された状態では前記光学要素は前記筒状部材に固定され、接着状態を崩して前記固定ピンを前記ピン固定穴から前記筒状部材の外部に離脱したときに前記光学要素は前記筒状部材に対して移動可能とされることを特徴とする偏芯調整構造。
前記光学要素を前記筒軸と直交する面上において所定の第1方向に位置調整する第1の調整ビスと、これに直交する第2方向に位置調整する第2の調整ビスと、前記光学要素を前記第1方向の反対方向に付勢する第1の付勢ばねと、前記光学要素を前記第2方向の反対方向に付勢する第2の付勢ばねを備える請求項1ないし3のいずれかに記載の偏芯調整構造。
前記光学要素を前記第1方向又は第2方向に移動可能に規制する移動規制板を備え、この移動規制板は前記筒状部材に対して前記第2方向又は第1方向に移動可能に規制される構成である請求項4に記載の偏芯調整構造。
前記移動規制板は前記筒状部材の筒形状に対応した半円環状に形成され、前記光学要素に対して前記第1方向又は第2方向に相対移動可能に係合される係合部と、前記筒状部材に対して前記第2方向又は第1方向に相対移動可能に係合される係合部を備える請求項5に記載の偏芯調整構造。
レンズ鏡筒に設けられたベース筒と、このベース筒に内装されたレンズ群を含み、前記レンズ群を前記ベース筒内においてレンズ鏡筒の光軸方向と直交する面上で移動させて当該レンズ群の偏芯調整を行う偏芯調整構造であって、前記レンズ群の周面の少なくとも1箇所に着脱可能に設けた固定ピンと、前記ベース筒に設けられて前記固定ピンの一部が内挿されるピン固定穴を備え、前記固定ピンは前記ピン固定穴に接着され、接着された状態では前記レンズ群は前記ベース筒に固定され、接着状態を崩して前記ピン固定穴から前記ベース筒の外部に離脱したときに前記レンズ群は前記ベース筒に対して移動可能であることを特徴とする偏芯調整構造。
光学機器に設けられたベース筒と、このベース筒に内装された光学要素を含み、前記光学要素を前記ベース筒内において光軸方向と直交する面上で移動させて当該光学要素の光軸位置に対する位置調整を行う光学機器であって、前記光学要素の少なくとも1箇所に着脱可能に設けた固定ピンと、前記ベース筒に設けられて前記固定ピンの一部が内挿されるピン固定穴を備え、前記固定ピンは前記ピン固定穴に接着され、接着された状態では前記光学要素は前記ベース筒に固定され、接着状態を崩して前記ピン固定穴から前記ベース筒の外部に離脱したときに前記光学要素は前記ベース筒に対して移動可能であることを特徴とする光学機器。
前記光学要素を前記光軸と直交する面上でY方向と、これに直交するX方向に位置調整する第1と第2の調整ビスと、前記光学要素を前記Y方向とX方向に付勢する第1と第2の付勢ばねと、前記光学要素を前記X方向に移動可能に規制する移動規制板を備え、この移動規制板は前記ベース筒に対して前記Y方向に移動可能に規制される構成である請求項8に記載の光学機器。
前記移動規制板は、前記光軸回りに延長される半円環状に形成されており、その延長方向の両端部と、当該延長方向の中間部の3箇所において前記光学要素と前記ベース筒の移動を規制する構成である請求項9に記載の光学機器。
前記移動規制板は、前記中間部において前記光学要素又は前記ベース筒の移動を規制し、前記両端部において前記ベース筒又は前記光学要素の移動を規制する請求項10に記載の光学機器。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1及び
図2は本発明の光学機器の一例としての偏芯調整構造を備えたズームレンズ鏡筒の光軸に沿った縦断面図の上半分を示しており、
図1はワイド(短焦点距離)時の拡大断面図、
図2はテレ(長焦点距離)時の縮小断面図である。各図はいずれも無限遠焦点位置の状態である。このズームレンズ鏡筒は、第1ないし第5の各レンズ群L1〜L5で構成されており、ズーミングと同時にフォーカシングを行うバリフォーカルズームレンズ鏡筒として構成されている。なお、各レンズ群L1〜L5はそれぞれ単体レンズであってもよい。
【0015】
図1において、固定筒は第1固定筒1Aと第2固定筒1Bを有しており、第2固定筒1Bの背面に図示されないカメラボディに装着されるマウント部1Cを備えている。第1固定筒1Aの外周にはズーミング(焦点距離を変更)するためのズーム操作リングZRが配設され、第2固定筒1Bの周面にフォーカシング(焦点合わせ)を行うためのフォーカス操作リングFRが配設され、それぞれ撮影者が手操作で回転操作可能に構成されている。
【0016】
前記ズーム操作リングZRの内周にはズームカム筒2が一体に形成されており、ズーム操作リングZRと共に前記第1固定筒1Aの外周で光軸(レンズ鏡筒の筒軸と同じ)回りに回転操作される。また、前記フォーカス操作リングFRにはフォーカス歯車3aが一体に形成されており、このフォーカス歯車3aには説明を省略する歯車機構が歯合され、この歯車機構の出力部材3bを介して前記第2固定筒1Bの内径領域に光軸方向に延長配置されたフォーカス連係レバー3が連結され、このフォーカス連係レバー3で後述するバリフォーカル補償機構を動作するようになっている。
【0017】
前記第1固定筒1Aの内周には図には表れないガイド部材によって第1固定筒1Aの内部で光軸方向に移動可能に支持された第1ベース筒4Aが内装されている。この第1ベース筒4Aは外周面にカムピン4aが半径方向に突出されており、このカムピン4aは前記第1固定筒1Aに設けた光軸方向の直線ガイド溝1aを貫通して前記ズームカム筒2に設けたカム溝2aに嵌入してカム係合されている。そのため、ズーム操作リングZRによりズームカム筒2が回転されると、カム溝2aとカムピン4aとのカム係合によって第1ベース筒4Aは光軸方向に移動されることになる。
【0018】
前記第1ベース筒4Aの内周位置にはベース内筒4Bが配設されており、第1ベース筒4Aと一体に光軸回りに回転されるように構成されている。第1ベース筒4Aとベース内筒4Bとの間には第1レンズ群L1の第1レンズ枠LF1と一体に設けられた第1レンズ筒5が第1ベース筒4Aに対して光軸方向に移動可能に嵌装されている。また、ベース内筒4Bの内周位置には、当該ベース内筒4Bと光軸方向には一体で光軸回りには回転可能な第1サブズームカム筒6Aが内装されている。この第1サブズームカム筒6Aは
図1には示されていない連結手段によって前記ズームカム筒2に連結され、ズームカム筒2と一体に回転するが光軸方向には相対移動可能に構成されている。
【0019】
前記第1レンズ筒5は内径方向に突出形成したカムピン5aを有しており、このカムピン5aは前記ベース内筒4Bに設けた図には表れない光軸方向の直線ガイド溝を貫通され、第1サブズームカム筒6Aに設けた図には表れないカム溝に嵌入してカム係合されている。そのため、ズームカム筒2が回転操作され、これと一体に第1サブズームカム筒6Aが回転されるとそのカム係合によって第1レンズ筒5、すなわち第1レンズ群L1が光軸移動されることになる。
【0020】
前記第1ベース筒4Aの後端側領域の内径位置には、前記第1ベース筒4Aに連結されて当該第1ベース筒4Aと一体的に回転される第2ベース筒4Cが設けられている。この第2ベース筒4Cには第3レンズ群L3、第4レンズ群L4、第5レンズ群L5が組み付けられている。この第2ベース筒4Cの構成については後述する。
【0021】
前記第2レンズ群L2はフォーカシング補償を行うためのレンズであり、第2レンズ枠LF2によって支持されるとともに前記第1サブズームカム筒6Aの回転と前記フォーカス操作リングFRの回転によって光軸移動するバリフォーカル補償機構を備えている。
【0022】
このバリフォーカル補償機構は、ズーミング動作によってフォーカス点が変化することを補償すべく、ズーミング動作に対応して第2レンズ群L2を光軸方向に位置調整するための機構であるが、本発明との関連は少ないので、ここでは説明は簡略する。このバリフォーカル補償機構として、例えば、特許文献3に記載された構造が採用可能である。
【0023】
すなわち、バリフォーカル補償機構は、光軸方向に分離された筒状の主レンズ枠7Aと副レンズ枠7Bを備えており、第2レンズ群L2の第2レンズ枠LF2は主レンズ枠7Aに支持されている。主レンズ枠7Aと副レンズ枠7Bは回転方向に一体化されるが光軸方向には所定長さ範囲で相対移動可能とされている。また、第1サブズームカム筒6Aが回転されたときには副レンズ枠7Bは光軸方向に移動される。
【0024】
前記副レンズ枠7Bの内周側には所要形状のカム溝を有するフォーカムカム筒8が内装されている。このフォーカスカム筒8は連結ピン8aが第1サブズームカム筒6Aに設けた光軸方向の案内溝6aに係合されており、第1サブズームカム筒6Aが回転したときには一体に回転するが、第1サブズームカム筒6Aとは独立して光軸方向に移動可能とされている。
【0025】
前記フォーカムカム筒8の内周側にはレンズ枠移動筒9が内装されている。このレンズ枠移動筒9は光軸方向に一体で主レンズ枠7Aに対して相対回転可能とされている。前記レンズ枠移動筒9の一部には前記フォーカス操作リングFRに連結されている前記フォーカス連係レバー3の先端部が光軸方向に内挿されている。この内挿によりレンズ枠移動筒9はフォーカス連係レバー3が回転されたときには一体に回転されるが、光軸方向にはフォーカス連係レバー3とは独立して光軸移動することができる。
【0026】
前記フォーカムカム筒8に設けたカム溝8bに前記副レンズ枠7Bのカムピン7aがカム係合されている。また、このカム溝8bには、前記レンズ枠移動筒9の外周面に設けられたカムピン9aがカム係合されている。
【0027】
図3は前記第2ベース筒4Cと、これに組み付けられる光学要素を含む構体の部分分解斜視図である。ここでは光学要素として前記第3ないし第5レンズ群L3〜L5と絞り機構11を備えている。前記第2ベース筒4Cの外周面の周方向の3箇所には、前記第1ベース筒4Aに連結されるための3つの連結片10が外径方向に突出形成されており、この連結片10を介して前記第1ベース筒4Aと一体に光軸方向に移動される。また、前記第2ベース筒4Cの周方向の3箇所には光軸方向に延びる案内溝4bが径方向に貫通され、
図1に示しかつ後述する第4レンズ群L4のカムピン12が径方向に挿通されるようになっている。
【0028】
前記第2ベース筒4Cの外周位置には第2サブズームカム筒6Bが配設され、当該第2ベース筒4Cに回転可能に支持されている。この第2サブズームカム筒6Bは
図1には示されていない連結手段によって第1サブズームカム筒6Aに連結されており、当該第1サブズームカム筒6Aと一体に回転する構成とされている。
【0029】
前記第2ベース筒4Cの前端部には絞り機構11が内装支持されている。この絞り機構11は、所定の開口径を有して前記第2ベース筒4Cの前端部に取着された押え環11aを有しており、この押え環11aの内部に複数の絞り羽根を有する絞り羽根部11b(
図1参照)が内装されている。この絞り羽根部11bには後方から円環状の絞り回転環11cが係合されており、この絞り回転環11cは図には表れない絞り駆動部材に係合されている。この絞り駆動部材によって絞り回転環11cが回転されたときに絞り羽根部11bで形成される絞り開口の開口径が変化されるようになっている。
【0030】
前記絞り機構11の後側の領域には、前記第3レンズ群L3が第3レンズ枠LF3により内装支持されている。この第3レンズ群L3は第2ベース筒4Cに対して偏芯調整が可能であり、偏芯調整後には第2ベース筒4Cに対して固定され、第2ベース筒4Cと一体的に光軸移動するようになっている。この第3レンズ群L3の詳細は後述する。
【0031】
前記第4レンズ群L4は第4レンズ枠LF4に支持され、前記第2ベース筒4C内に内挿されて光軸方向に移動可能とされている。前記第4レンズ枠LF4には半径方向に突出されたカムピン12が設けられており(
図1参照)、このカムピン12は前記第2ベース筒4Cに設けられた案内溝4bを貫通され、前記第2サブズームカム筒6Bに形成されているカム溝6bに係合される。これにより、第2サブズームカム筒6Bが回転されるとそのカム係合によって第4レンズ群L4が光軸移動されることになる。
【0032】
前記第5レンズ群L5は第2ベース筒4Cに対して通常の偏芯調整構造によって偏芯調整が可能であり、偏芯調整された後は説明を省略する固定手段により第2ベース筒4Cに固定される。この第5レンズ群L5の偏芯調整及び固定の各作業は、第2ベース筒4Cの後端側から容易に行うことができるので、ここでは本発明の偏芯調整構造は備えていない。
【0033】
本発明の偏芯調整構造は前記第3レンズ群L3に設けられており、前記第3レンズ群L3の第3レンズ枠LF3は光軸方向に隣接配置された移動規制板13を介して前記第2ベース筒4Cに内装支持されている。前記第3レンズ群L3は第2ベース筒4Cの内部において前記絞り機構11と前記第4レンズ群L4によって光軸方向に挟まれた領域に内装されているので、偏芯調整と固定支持の作業は必ずしも容易ではなく、本発明の偏芯調整構造が適用されている。
【0034】
図4は前記第2ベース筒4Cと、前記第3レンズ群L3と、前記移動規制板13の部分分解斜視図であり、
図5は前記第3レンズ群L3と、前記移動規制板13を反対方向(後方)から見た部分分解斜視図である。前記移動規制板13は概ね半円環状の板材で形成されており、円周方向の両端の各端位置と、円周方向の中央位置においてそれぞれ第1方向(図の±Y方向)に延びる長穴からなる3つの第1案内穴13aが開口されている。また、同じ両端位置にはそれぞれ前記第1方向と直交する第2方向(図の±X方向)に延びる長穴からなる2つの第2案内穴13bが開口されている。これらの第1案内穴13aと第2案内穴13bは本発明における係合部として構成される。
【0035】
図6(a)は前記移動規制板13を前記第3レンズ群L3に組み付けた状態の後面図であり、前記移動規制板13の第1案内穴13aには、前記第3レンズ枠LF3の後面に設けられて光軸方向に突出した3つの第1突起14aがそれぞれ嵌入状態に係合されている。これにより、第3レンズ枠LF3は移動規制板13に対して第1方向(±Y方向)に微小寸法だけ移動が可能とされている。
【0036】
図6(b)は前記移動規制板13を前記第2ベース筒4Cに組み付けた状態の前面図であり、前記移動規制板13の第2案内穴13bには、前記第2ベース筒4Cに設けられて光軸方向に突出した2つの第2突起14bがそれぞれ嵌入状態に係合されている。これにより移動規制板13は第2ベース筒4Cに対して第2方向(±X方向)に微小寸法だけ相対移動が可能とされている。
【0037】
このように前記第2ベース筒4Cと、前記第3レンズ群L3と、前記移動規制板13が組み付けられることにより、第3レンズ枠LF3、すなわち第3レンズ群L3は移動規制板13を介して第2ベース筒4Cに対して第1方向及び第2方向にそれぞれ相対移動可能とされている。
【0038】
ここで、移動規制板13は周方向の3箇所の第1案内穴13aと第1突起14aにおいて第3レンズ枠LF3に支持されているので、移動規制板13を薄い板部材で形成した場合でも、半円環状をした板部材に生じ易い撓み変形が防止され、第1案内穴13aと第1突起14aによる第2ベース筒4Cに対する移動規制板13の支持状態と、第3レンズ群L3を移動する際の案内の信頼性が高められる。
【0039】
図7は前記第3レンズ群L3の光軸と垂直な方向の断面図である。前記第3レンズ枠LF3の外周面を周方向に4等分する箇所、すなわち前記移動規制板13によって第3レンズ群L3が相対移動される第1方向(±Y方向)と第2方向(±X方向)にそれぞれ対応する周方向の各領域は接線方向に沿った平坦面15(15a〜15d)として形成されている。これらの平坦面15のうち周方向に隣り合った2つの平坦面、すなわち第3レンズ枠の中心に対して直角をなす2つの平坦面15a,15bにそれぞれ内径方向に向けてばね穴16a,16bが開口されている。
【0040】
これらのばね穴16a,16b内には、それぞれコイルばねからなる第1付勢ばね17aと第2付勢ばね17bが径方向に内装されており、各付勢ばね17a,17bは外径側の端部が第3レンズ枠LF3の外周面から幾分突出された状態とされている。また、前記第2ベース筒4Cの内周面の前記付勢ばね17a,17bに対応する2箇所には、接線方向の平坦面からなるばね当接部23a,23bが形成されており、前記付勢ばね17a,17bの外径側の端部が径方向に当接されるようになっている。
【0041】
前記第3レンズ枠LF3の外周面を周方向に3等分する箇所には、それぞれ内径方向に向けてピン穴18(18a,18b,18c)が開口されている。これら3つのピン穴18は、2つの前記ばね穴16a,16bと2つの調整ビス当接部15c,15dとは干渉しない位置に設けられ、各ピン穴18には外径方向から固定ピン19(19a,19b,19c)が密接状態に内挿されている。これら固定ピン19はピン穴18の深さよりも長く形成されており、それぞれピン穴18に内挿されたときには外径側の端部は第3レンズ枠LF3の外周面よりも径方向に突出されている。
【0042】
前記第2ベース筒4Cの周面には、前記第3レンズ枠LF3の前記調整ビス当接部15c,15dに対応する2箇所に径方向の穴20c,20dが貫通され、この穴20c,20dには内周面にねじ溝が形成された内ネジカラー21c,21dが圧入されている。一方の内ネジカラー21cには第1調整ビス22cが外径方向から螺合され、他方の内ネジカラー21dには第2調整ビス22dが外径方向から螺合されている。前記した第3レンズ枠LF3の外周面の4つの前記平坦面15のうち、前記ばね穴が設けられていない平坦面15c,15dは調整ビス当接部として構成されており、前記内ネジカラー21c,21dにそれぞれ螺合された調整ビス22c,22dの内径端部はこれら調整ビス当接部15c,15dに径方向に当接される。
【0043】
さらに、前記第2ベース筒4Cの周面には、前記第3レンズ枠LF3の3つピン穴18に対応する周方向の3箇所にピン固定穴24(24a,24b,24c)が径方向に開口されている。これらのピン固定穴24は前記ピン穴18よりも大きな開口面積とされており、ここでは矩形のピン固定穴として開口されている。これにより、前記3つのピン穴18及びこれに内挿されている固定ピン19はそれぞれピン固定穴24を通して第2ベース筒4Cの外周面側に露呈されることになる。また、固定ピン19の外径側の端部はピン固定穴24の外周面に突出されない範囲で当該ピン固定穴内に配設されている。
【0044】
以上の構成のレンズ鏡筒の動作を
図1と
図2を再度参照して説明する。先ず、ズーミングについて説明する。
図1のワイド状態からズーム操作リングZRをテレ方向に回転操作すると、ズームカム筒2が回転され、これにカム係合している第1ベース筒4Aが前方に光軸移動される。また、これと同時にズームカム筒2に連結されている第1と第2のサブズームカム筒6A,6Bが回転される。第1サブズームカム筒6Aの回転により、カム係合している第1レンズ枠LF1と共に第1レンズ群L1が光軸移動される。
【0045】
これと同時に、第1サブズームカム筒6Aにカム係合している第2レンズ群L2の副レンズ枠7Bが前方に光軸移動され、これに係合している主レンズ枠7Aも光軸方向に移動され、第2レンズ群L2が光軸方向に移動される。第3レンズ群L3と第5レンズ群L5は第1ベース筒4Aの光軸方向の移動に伴って移動される第2ベース筒4Cと一体に光軸方向に移動される。また、第1サブズームカム6Aと一体的に回転される第2サブズームカム筒6Bの回転により、これにカム係合している第4レンズ枠LF4と共に第4レンズ群L4が光軸移動される。これにより、
図2のテレ状態にズーミングされることになる。
【0046】
前記したようにズーミング時に第1ないし第5レンズ群が光軸移動されてズームミング動作が行われ、同時にフォーカシング動作も行われる。このフォーカシング動作においては、第2レンズ群L2が光軸移動されるが、バリフォーカルレンズであるためフォーカス操作リングFRを操作してフォーカシングを行う必要がある。このときバリフォーカル補償機構によって撮影距離の違いにかかわらずフォーカス操作リングFRの回転角を一定にするバリフォーカル補償を行っている。
【0047】
このバリフォーカル補償機構の動作は前記した特許文献3に記載されている動作と略同じであるのでここでは簡略に説明する。ズーミング時の第1サブズームカム筒の回転6Aによりフォーカスカム8が一体的に回転される。このときフォーカスレンズ群L2の副レンズ枠7Bは第1サブズームカム筒6Aによって光軸移動され、同時にフォーカスカム筒8は所定距離だけ光軸移動されることになる。
【0048】
この状態でフォーカス操作リングFRを回転操作するとフォーカス歯車3a及び出力部材3bを介してフォーカス連係レバー3が回転され、これに連結している主レンズ枠移動筒9は回転されると同時に所定距離だけ光軸方向に移動される。この主レンズ枠移動筒9の移動により、主レンズ枠7Aは光軸方向に移動される。フォーカスカム筒8に設けたカム溝8bを所要の形状に設計しておくことにより、主レンズ枠移動筒9の光軸方向の移動量が調整され、これに支持されている第2レンズ群L2が光軸移動されてフォーカシングが行われることになる。これにより、バリフォーカルレンズにおいてもフォーカス操作リングFRの一定の回転角でのフォーカシングが実現できる。
【0049】
以上の構成のレンズ鏡筒を組み立てる際には、第2ベース筒4Cに第3レンズ群L3と第4レンズ群L4と第5レンズ群L5を組み込み、さらに第2サブズームカム筒6Bを組み込んだサブアッシー構体を構成し、このサブアッシー構体をレンズ鏡筒内に組み込んでいる。
【0050】
第3レンズ群L3を第2ベース筒4Cに組み込んだときには、
図7に示したように、第3レンズ群L3は第3レンズ枠LF3の2つの付勢ばね17a,17bの外径側の端部が第2ベース筒4Cの内周面のばね当接部23a,23bに当接される。同時に、第2ベース筒4Cの第1調整ビス22cと第2調整ビス22dの内径側の端部がそれぞれ第3レンズ枠LF3の2つの調整ビス当接部15c,15dに当接される。これにより、第3レンズ枠LF3はこれら第1と第2の調整ビス22c,22dと、第1と第2の付勢ばね17a,17bとによって周方向の4箇所において第1方向と第2方向の各径方向に挟持された状態で保持される。
【0051】
このように第2ベース筒4C内において保持されている第3レンズ群L3を偏芯調整する際には、第2ベース筒4Cの外側からドライバ(ねじ回し)等の治具で第1調整ビス22cと第2調整ビス22dを回転操作する。第1調整ビス22cを内径方向に螺入させることによって第3レンズ群L3は第1付勢ばね17aを撓めながら第2方向(−X方向)に移動される。反対に第1調整ビス22cを外径方向に螺進させることで第3レンズ群L3は第1付勢ばね17aのばね力によって反対の第2方向(+X方向)に移動される。このとき、第3レンズ群L3は移動規制板13の第2案内穴13bによって当該移動規制板13と共に第2ベース筒4Cに対して第2方向(±X方向)に案内される。
【0052】
同様に、治具で第2調整ビス22dを内径方向に螺入させることによって第3レンズ群L3は第2付勢ばね17bを撓めながら第1方向(−Y方向)に移動される。反対に第2調整ビス22dを外径方向に螺進させることで第3レンズ群L3は第2付勢ばね17bのばね力によって反対の第1方向(+Y方向)に移動される。このとき、第3レンズ群L3は移動規制板13の第1案内穴13aによって当該移動規制板13に対して、すなわち第2ベース筒4Cに対して第1方向(±Y方向)に案内される。以上により、第3レンズ群L3を第2ベース筒4Cに対して第1方向(±Y方向)及び第2方向(±X方向)に位置調整して偏芯調整が行われる。
【0053】
第3レンズ群L3の偏芯調整が完了したときには、第2ベース筒4Cの外部から3つのピン固定穴24を通してそれぞれ固定ピン19を径方向に内挿し、第3レンズ枠LF3の各ピン穴18に嵌入させる。各固定ピン19はそれぞれピン穴18に密接状態に内挿支持される。このとき、各固定ピン19の外径側の端部は第3レンズ枠LF3の外周面から突出されており、ピン固定穴24の内部に位置される。
【0054】
しかる上で、
図8(a),(b)に、1つのピン固定穴24aを外径方向から見た平面図と、光軸に垂直方向の断面図をそれぞれ示すように、第2ベース筒4Cの外側から3つのピン固定穴24aにそれぞれ接着剤cを注入し、固定ピン19aの外径側の端部をピン固定穴24aの内部に接着固定する。3つのピン固定穴24(24a〜24c)においてそれぞれ固定ピン19(19a〜19c)を接着固定することにより、第3レンズ群L3は第2ベース筒4Cに対して固定支持される。したがって、偏芯調整された状態に安定に固定されることになる。
【0055】
ここで、固定ピン19には、
図8(b)の固定ピン19aのように、外径側に向けられる端部の周面に環状溝tが形成されている。この環状溝tはピン固定穴24に内挿された状態では、当該ピン固定穴24を通して外部に露呈される位置に設けられている。また、この実施形態では環状溝tは接着剤cによって埋設されるようになっている。
【0056】
第2ベース筒4Cに対して第3レンズ群L3を偏芯調整して固定した後は、第5レンズ群L5の偏芯調整を行い第2ベース筒4Cに対して固定させる。この第5レンズ群L5は第2ベース筒4Cの後端側から露呈された状態にあるので、偏芯調整及び固定を容易に行うことができることは前記したとおりである。
【0057】
第5レンズ群L5の偏芯調整の結果に基づいて第3レンズ群L3の再度の偏芯調整が必要とされた場合、あるいはメンテナンスにおいて第3レンズ群L3の再度の偏芯調整が必要とされた場合には、
図8(b)に鎖線で示すように、ドライバ等の工具Tの先端をピン固定穴24aに差し込み、接着剤cの接着状態を崩しながら当該先端を固定ピン19aの環状溝tに係合させる。係合した後に、ドライバTを梃子操作させることにより、固定ピン19aをピン固定穴24aおよびピン穴18aから無理抜きする。このようにして3つの固定ピン19a〜19cを無理抜きすることにより、第3レンズ群L3の固定が解除される。したがって、前記したように第1と第2の調整ネジ22c,22dによる再度の偏芯調整が可能になる。偏芯調整後は再びピン固定穴24a〜24cに接着剤を注入して固定すればよい。
【0058】
このように、第3レンズ群L3の再度の偏芯調整に際しては、ピン固定穴24に注入した接着剤cの接着状態を崩して固定ピン19を無理抜きする操作を行えばよいので、比較的に容易に第3レンズ群L3の固定状態を解除することができる。したがって、第3レンズ枠LF3や第2ベース筒4C、さらには第1と第2の付勢ばね17a,17bや調整ビス22c,22dにダメージを与えることなく、あるいは固定ピン19(19a〜19c)を再利用することも可能であり、容易にかつ低コストで再度の偏芯調整が実現できる。
【0059】
ここで、前記固定ピン19は内ネジピンとして構成されてもよい。
図9はその一例であり、内ネジピン19Aは、外周面は円筒面であり、内周面に雌ネジsが形成されている。この内ネジピン19Aを前記実施形態の固定ピンと同様に用いることにより、すなわち、ピン穴18aに挿入した後、ピン固定穴24aに接着剤cを注入して内ネジピン19Aを接着することにより第3レンズ群L3を第2ベース筒4Cに固定支持することができる。
【0060】
再度の偏芯調整を行う場合には、ねじ部を有する工具T1を内ネジピン19Aの端部から雌ネジsに螺合させ、その上で工具T1を外径方向に引っ張ることで接着剤cの接着状態を崩しながら内ネジピン19Aをピン固定穴24a及びピン穴18aから無理抜きする。これにより、第3レンズ群L3の固定を解除し、再度の偏芯調整が可能になる。この内ネジピン19Aは治具T1に対して螺合により連結状態とされるので、無理抜きを確実かつ容易に行うことができる。
【0061】
前記実施形態では、第3レンズ群L3は第1と第2の付勢ばね17a,17b及び調整ビス22c,22dによって偏芯調整されているので、これら付勢ばね17a,17bと調整ビス22c,22dによってもある程度の強度で第3レンズ群L3の調整位置を保持することは可能である。したがって、固定ピン19は第3レンズ枠LF3の周面の少なくとも1箇所に設けても第3レンズ群L3を第2ベース筒4Cに対して固定支持することは可能である。しかし、第3レンズ群L3が光軸と直交する面に対して傾斜することを防止して安定な固定支持を確保するためには、固定ピン19は円周方向の異なる2箇所に配設した2つ、あるいは実施形態のように異なる3箇所に配設した3つの固定ピンでの固定支持を行うことが好ましい。
【0062】
以上説明した実施形態では本発明を5群レンズ構成のズームレンズ鏡筒に適用した例を示したが、本発明はこのレンズ鏡筒に限られるものではなく、偏芯調整が必要とされるレンズ群を備えるレンズ鏡筒や光学機器であれば本発明が適用できる。すなわち、筒状部材にレンズ群を内装して偏芯調整を行う構成を備える交換式レンズ鏡筒、レンズ一体型カメラ、プロジェクタ、望遠鏡、双眼鏡等の光学機器に本発明が適用できる。
【0063】
本発明における固定ピンは、必ずしも実施形態に記載の形状のものに限られるものではなく、筒状部材に内装される光学要素の周面に径方向に突出した状態に取着でき、その外径側の端部が筒状部材に設けられた開口内において接着固定することが可能な構造であればよい。したがって、固定ピンをねじ部材で構成し、光学要素の周面に径方向に螺合させる構成とすることも可能である。